JP4065610B2 - 薬剤供給カートリッジ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、脱塩素剤等の薬剤を供給水中に溶出させてその薬剤の溶け込んだ供給水を散水する薬剤供給装置のカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、脱塩素剤等の薬剤を充填したカートリッジをシャワーヘッド内に組み込み、シャワーの使用時に供給水中に薬剤を溶出させるようにした薬剤供給シャワーが案出されている。
【0003】
このシャワーは、図5に示すように、シャワーヘッド1内に装填されるカートリッジ2に過飽和状態の薬剤液が充填されており、そのカートリッジ2はカートリッジケース3の下面に薬剤導出口4が設けられ、この薬剤導出口4にカートリッジ2内の薬剤液を溶出させる滲出膜5が被着された構造となっている。この滲出膜5は、薬剤液の重量ヘッド圧に耐え得る濾膜によって構成され、シャワー使用時に供給水の動圧を受けたときにだけカートリッジ2内の薬剤液を滲出させるようになっている。そして、このシャワーの場合、供給水はカートリッジ2の内部を通過するのではなく、その動圧(供給水の流速によって滲出膜5上に生じる圧力分布差。)に応じた量の薬剤液を滲出膜5から溶出させた後にカートリッジ2の外周側に回り込んで散水部6から吐出される。
【0004】
そして、ここで用いられるカートリッジ2は、図6に示すように、カートリッジケース3の薬剤導出口4以外の部分が密閉状態に形成されており、その内部に過飽和状態の薬剤液を充填し、薬剤導出口4部分をゴムキャップ7で強固にシールしてその状態において市場に出荷される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この従来のカートリッジ2は、薬剤液をカートリッジケース3内に充填した状態で市場に出荷されるため、流通や保管の際の環境変化、とりわけ、雰囲気温度の上昇によってカートリッジケース3内の薬剤液の内圧が上昇し、その内圧によって薬剤液が外部に漏出することが考えられる。このため、上記の従来のカートリッジ2においては、流通・保管時の管理がむずかしいという不具合があった。
【0006】
これに対し、カートリッジケース3内に薬剤を粉末や固形のまま水分を入れずに出荷することも考えられるが、この場合には、カートリッジケース3の滲出膜5以外の部分が完全に密閉されているため、シャワーでの実使用時に供給水がカートリッジケース3内に入り込まず、カートリッジケース3内の薬剤が供給水中に溶出しなくなってしまう。
【0007】
また、上記従来のカートリッジ2においては、カートリッジケース3の滲出膜5以外の部分が完全に密閉されていることから、気泡が何等かの原因によってカートリッジケース3内に一度侵入すると、その気泡がカートリッジケース3の外部に排出されなくなる。そして、気泡がカートリッジケース3内に入り込むと、シャワーの使用時にその気泡が供給水の圧力によって圧縮され、その後にシャワーを停止したときに、気泡がカートリッジケース3内の薬剤液を必要外に外部に押し出し、カートリッジ2の寿命を縮めるという不具合を招く。
【0008】
そこで、この発明は、実使用時の不具合を招くことなく、流通・保管時の管理を容易にし、しかも、使用寿命をも伸ばすことのできる薬剤供給カートリッジを提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するための手段として、この発明は、供給水路中に装填され、供給水の動圧を受けて下端の滲出膜から内部の薬剤を溶出させる薬剤供給カートリッジにおいて、カートリッジケースの下端の薬剤導出口に滲出膜を付設する一方で、カートリッジケースの上端にエア排出口を設け、カートリッジケース内のこのエア排出口の近傍に複数の疎水性通気膜を離間させて配置してこの隣接する疎水性通気膜間に空気室を形成すると共に、この空気室の下端の疎水性通気膜と滲出膜の間の空間に粉末若しくは固形の薬剤を充填するようにした。
【0010】
この発明の場合、最初にカートリッジを供給水路中にセットしたときに、カートリッジの滲出膜部分に供給水が導入されると、供給水の圧力によってカートリッジケース内の空気が疎水性通気膜を通してエア排出口から外部に排出され、それと同時に供給水が滲出膜を通してカートリッジケース内に流入する。このとき、カートリッジケース内の液面は供給水の圧力によって次第に上昇するが、その液面が空気室の下端の疎水性通気膜部分に達すると、それ以上の液面の上昇がその疎水性通気膜によって阻止される。つまり、疎水性通気膜には微細な通気孔が形成されているが、疎水性通気膜の片側の面に空気が接していれば、通気孔を通した供給水の流通はその液体のもつ表面張力によって阻止されることとなる。したがって、この結果カートリッジケース内の薬剤充填空間には最初に流入した供給水が水溶液として充填されることとなる。
【0011】
また、疎水性通気膜はその表裏両側に液体(供給水)が接すると通気孔部分に作用する液体の表面張力が低下するが、この発明の場合、カートリッジケース内には複数の疎水性通気膜が離間して配置され、隣接する疎水性通気膜間に空気室が形成確保されているため、いずれの疎水性通気膜も片側の面が常に空気室内の空気に確実に接し、液体の表面張力が疎水性通気膜部分で確実に機能するようになる。このため、供給水がエア排出口側に回り込むことがあっても、カートリッジケース内の液面は空気室の下端の疎水性通気膜以上に上昇しなくなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の一実施例を図1〜図4に基づいて説明する。
【0013】
図2はこの発明にかかるカートリッジ9を用いる薬剤供給シャワーの全体構成を示すものであり、同図中10は、このシャワーのシャワーヘッドである。このシャワーヘッド10は、下端に給水口11を備えたロアボディ10aと、上端に散水部12を備えたアッパボディ10bがパッキン13を介してネジ止めされて成り、その内側に形成された中空部内にはこの発明にかかるカートリッジ9がスプリング15によって下方に付勢された状態で収容されている。
【0014】
この実施例の場合、カートリッジ9の内部には、強い塩素還元作用をもつ脱塩素剤としてのアスコルビン酸が充填されており、このアスコルビン酸をシャワーヘッド10内で溶出させることで水道水中の残留塩素を除去するようになっている。
【0015】
また、シャワーヘッド10内の基部には、先端にゴム製のシールを備えた弁座16がシャワーヘッド10の中心位置において上方に向かって突設され、さらにこの弁座16を囲繞するように円筒状のガイド壁17が固設されている。弁座16はカートリッジが下方変位した状態で同カートリッジの下端の薬剤導出口18の周縁部に密接して、この薬剤導出口18を完全に閉塞するようになっている。
【0016】
さらに、シャワーヘッド10内の基部には、給水口11から流入した供給水をカートリッジ9の薬剤導出口18部分に誘導する水流ガイド19が摺動自在に収容されている。この水流ガイド19は、図3に示すように円板状のベース部20の中央部に長孔状の吐出孔21が形成され、このベース部20の下面に一対の案内羽根22,22が延設されると共に、ベース部20の上面に吐出孔21の周縁を取り囲むように4つのストッパ突起23…が突設されている。
【0017】
ベース部20に形成された吐出孔21は供給水をカートリッジ9の薬剤導出口18部分に集めて吐出する部分であるが、水流ガイド19とカートリッジ9が下方に変位した状態では、弁座16の先端部が上方に向かって遊挿されるようになっている。したがって、このとき弁座16の先端部は吐出孔21を貫通してカートリッジ9の薬剤導出口18を閉塞する。また、案内羽根22はガイド壁17内に収容され、水流ガイド19の変位に拘わらず給水口11から供給された水を常時確実に吐出孔21に誘導できるようになっている。さらに、ベース部20の上面に突設された4つのストッパ突起23…はカートリッジ9の下面に当接し、隣接するストッパ突起23,23とカートリッジ9の下面の間に径方向に沿った誘導路24を形成するようになっている。
【0018】
一方、この発明にかかるカートリッジ9は、図1及び図4に詳細に示すように樹脂によって形成された有底円筒状のケース本体25aとアッパカバー25bを溶着することによりカートリッジケース25が構成されており、ケース本体25aの下部壁には前記薬剤導出口18が長孔状に形成されている。そして、この導出口18には、シャワーヘッド10内に導入される供給水の動圧を受けてカートリッジ9内の薬剤を溶出させる滲出膜26が取り付けられている。この滲出膜26は、例えば、セルロースアセテートの上下にポリエステルを積層した濾膜によって形成され、シャワーの不使用時に少なくともカートリッジ9内の薬剤液の重量ヘッド圧に耐えられる(漏れが生じない)ようになっている。
【0019】
そして、アッパカバー25bの上部壁にはエア排出口27が形成され、このエア排出口27の上部とアッパカバー25bの下端部には疎水性通気膜28a,28bが夫々熱溶着あるいはインパルス溶着により取り付けられている。したがって、カートリッジケース25の上部には2つの疎水性通気膜28a,28bによって隔成される空間が空気室29を形成している。ここで使用される疎水性通気膜28a,28bは四フッ化エチレン樹脂膜で形成されており、図4に拡大して示すような微細な通気孔30が形成されているが、この通気孔30の孔径は、シャワー使用時の比較的低い供給水の圧力でもって空気を容易に流通させ、しかも、シャワー使用時の高い供給水の圧力が作用した場合であっても供給水の表面張力によってその供給水が浸入しないような径(0.1μ〜3μ)に設定されている。尚、疎水性通気膜28a,28bとしては、四フッ化エチレン樹脂膜以外に三フッ化エチレン樹脂膜等でも良い。
【0020】
また、カートリッジケース25内の滲出膜26と下方側の疎水性通気膜28bに挟まれた空間は薬剤充填空間31とされ、この空間31内にアスコルビン酸の粉末32、若しくは、その粉末32を圧し固めた固形物が水分なしの状態で充填されている。
【0021】
そして、このカートリッジ9は、薬剤充填空間31に水分を入れない状態で製造・出荷され、そのまま流通・保管されて消費者に提供され、以下のようにしてシャワーでの実使用に供される。
【0022】
最初に、新しいカートリッジ9をシャワーヘッド10内に組み込み、その状態で供給水が給水口11からシャワーヘッド10内に導入されると、水流ガイド19とカートリッジ9が図2に示すように供給水の圧力を受け、スプリング15を押し縮めて上昇変位する。このとき、供給水は水流ガイド19を介してカートリッジ9の滲出膜26部分に導入され、さらにカートリッジ9の外周側を回り込んで散水部12からシャワーヘッド10の外部に散水されるが、滲出膜26に導入された供給水はその圧力でもって薬剤充填空間31内の空気を押し上げ、その空気を疎水性通気膜28b,28aを通してエア排出口27からカートリッジ9の外部に排出し、それと同時に供給水が薬剤充填空間31内に流入する。
【0023】
これにより、薬剤充填空間31内の供給水の液面は次第に上昇することとなるが、その液面上昇は、図4に示すように液面が下方側の疎水性通気膜28bの下面に達したところでその疎水性通気膜28bによって阻止される。これは、供給水の液面が疎水性通気膜28bの下面に達すると、疎水性通気膜28bの持つ疎水性によって疎水性通気膜28bの通気孔30部分に液体の表面張力が作用し、その表面張力が通気孔30に対する液体の流通を阻止することによるものである。したがって、この結果カートリッジ9の薬剤充填空間31は供給水によって満たされると同時に、滲出膜26以外の部分が実質的に密閉状態に保たれるようになり、このとき薬剤充填空間31の内部はアスコルビン酸の過飽和水溶液を充填されることとなる。
【0024】
また、カートリッジ9は供給水の流通するシャワーヘッド10内に組み込まれるため、図4に示すようにカートリッジ9の上部側にも供給水が回り込むことが考えられるが、カートリッジ9の上部側には別の疎水性通気膜28aが被着されて、この疎水性通気膜28aと下方側の疎水性通気膜28bとの間に空気室29が形成確保されているため、疎水性通気膜28bの上面側には供給水が流入することがない。つまり、疎水性通気膜28a,28bの片側の面は常に供給水と非接触となるため、疎水性通気膜28a,28bの通気孔30部分での供給水の表面張力維持は確保され、疎水性通気膜28a,28bにおける供給水の遮断はより確実なものとなる。
【0025】
このようにしてカートリッジ9内にアスコルビン酸の過飽和溶液が充填されると、これ以後滲出膜26に供給される供給水の動圧によってカートリッジ9内のアスコルビン酸溶液が滲出膜26を通して溶出され、ここで薬剤の溶け込んだ供給水がシャワーヘッド10の先端の散水部12を通って外部に散水される。
【0026】
そして、この状態から供給水が止められると、カートリッジ9と水流ガイド19がスプリング15の力によって下降変位し、カートリッジ9の薬剤導出口18が弁座16によって閉塞されるようになる。
【0027】
ところで、シャワーの使用時にはカートリッジ9からのアスコルビン酸溶液の溶出に伴って新たな供給水がカートリッジ9内に僅かずつ流入するが、この新たに流入した供給水に含まれている溶存空気はシャワー放置時の温度変化によって成長して気泡となる。この気泡は従来のカートリッジにおいてはカートリッジケース内に一度入り込むと決して抜けることはなかったが、本発明にかかるこのカートリッジ9の場合、カートリッジケース25内に入り込んだ気泡はシャワーの使用時に供給水の圧力を受けると、疎水性通気膜28b,28aを通ってエア排出口27から自然に抜け出る。このため、このカートリッジ9においては、カートリッジケース25内に入り込んだ気泡の圧縮と膨張によってアスコルビン酸溶液が必要外に外部に押し出されるといった不具合は生じない。したがって、このカートリッジ9の場合、従来のカートリッジに比較して使用寿命が確実に伸びる。
【0028】
以上のようにこのカートリッジ9は、カートリッジケース25内に水分を入れない状態で製造・出荷するため、流通・保管時に温度上昇等の環境変化によってアスコルビン酸溶液が外部に流出する心配がなく、流通・保管時の管理が容易になると共に、カートリッジ9を厳重に密閉する必要がないことから製造コストをも低減することができる。
【0029】
また、このカートリッジ9においては、シャワーの実使用時に薬剤充填空間31から疎水性通気膜28bの上方側に供給水が抜け出ることがないため、常時供給水の流量に応じた量(供給水の動圧に応じた量)のアスコルビン酸溶液を供給水中に安定して溶出させることができる。
【0030】
尚、この発明の実施例は以上で説明したものに限るものではなく、例えば、疎水性通気膜は三つ以上設けて空気室を二つ以上にするようにしても良い。このようにした場合には、何らかの原因によって一つの疎水性通気膜を供給水が通り抜けることがあってもその供給水がエア排出口から流出するのをより確実に防止することができ、初期の性能を長期にわたって維持しつづけることが可能である。また、以上の実施例においては、カートリッジに充填する薬剤として脱塩素機能を持つアスコルビン酸を用いたが、勿論、脱塩素剤以外の芳香剤,殺菌剤,漢方薬,乳液,PH調整剤等の薬剤をカートリッジに充填することも可能である。さらにまた、カートリッジはシャワーヘッドに組み込むだけでなく、配管途中や専用水栓等に組み込むことも可能である。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、この発明はカートリッジケースの下端の薬剤導出口に滲出膜を付設する一方で、カートリッジケースの上端にエア排出口を設け、カートリッジケース内のこのエア排出口の近傍に複数の疎水性通気膜を離間させて配置してこの隣接する疎水性通気膜間に空気室を形成すると共に、この空気室の下端の疎水性通気膜と滲出膜の間の空間に粉末若しくは固形の薬剤を充填するようにしたため、流通・保管時にはカートリッジケース内に水分を入れずにおき、最初の実使用によって供給水を薬剤充填空間内に自動的に充填することができ、しかも、その充填した供給水を薬剤の水溶液として以後カートリッジケース内に確実に貯留しつづけることができる。したがって、この発明によれば、流通・保管時における温度上昇等の環境変化によってカートリッジケース内から薬剤液が漏出する不具合を完全に無くし、かつ、実使用時には従来のものとまったく同様に薬剤液を供給水中に確実に溶出させられるようになり、その結果、実使用時の不具合を招くことなく、流通・保管時の管理負担を確実に軽減することが可能になる。
【0032】
また、この発明は、実使用時にカートリッジケース内に気泡が侵入することがあっても、疎水性通気膜を通してその気泡をエア排出口からカートリッジケースの外部に排出することができるため、カートリッジケース内に侵入した気泡によって薬剤液が必要外に外部に押し出される不具合が無くなり、カートリッジの使用寿命が確実に伸びるという効果も得られる。
【0033】
さらに、この発明においては、製造・出荷時にカートリッジケース内に水分を充填しないため、カートリッジケースの滲出膜部分等に厳重なシールを施す必要がなく、その点から製造コストの低減をも図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示すカートリッジの断面図。
【図2】同実施例を示すシャワー全体の断面図。
【図3】同実施例を示すシャワー部品の斜視図。
【図4】同実施例を示すカートリッジの断面図。
【図5】従来の技術を示すシャワーの模式断面図。
【図6】同技術を示すカートリッジの断面図。
【符号の説明】
9…カートリッジ
18…薬剤導出口
25…カートリッジケース
26…滲出膜
27…エア排出口
28a,28b…疎水性通気膜
29…空気室
31…空間

Claims (1)

  1. 供給水路中に装填され、供給水の動圧を受けて下端の滲出膜から内部の薬剤を溶出させる薬剤供給カートリッジにおいて、
    カートリッジケースの下端の薬剤導出口に滲出膜を付設する一方で、カートリッジケースの上端にエア排出口を設け、カートリッジケース内のこのエア排出口の近傍に複数の疎水性通気膜を離間させて配置してこの隣接する疎水性通気膜間に空気室を形成すると共に、この空気室の下端の疎水性通気膜と滲出膜の間の空間に粉末若しくは固形の薬剤を充填したことを特徴とする薬剤供給カートリッジ。
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