JP4065345B2 - 時計の機械式作動機構を調速するための電子回路の安定化 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転子及び回転子の回転に応えて電気エネルギーを供給するための手段を含む電気エネルギー発生機を含んで成り、しかも発電機の回転子の制御手段を含む電子回路によって調速される時計に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、このような時計において、電気エネルギー供給源は電子回路に電力供給するべく電気エネルギー発生機を駆動する。発電機自体の回転子は、例えば水晶の周波数に従属させることによって機械式作動機構を調速するべく電子回路によって制動され得る。このような時計の利点は、寿命の制限された電池又は蓄電池を必要とすることなく水晶又はその他によって調速される非常に精確な作動機構が得られることにある。
【0003】
このような時計は、例えば、米国特許第3,937,001号に記述され、ここでは発電機の交流電圧の角周波数が水晶の周波数と比較される。この装置においては、発電機の角周波数が水晶のパルスとの関係において先行し始めた時点で、回転子は、抵抗器を介して発電機を短絡させることによって制動される。しかし、作動機構が或る程度進んでいる場合、発電機の回転子の制動時間はかなり長いものとなる可能性がありこのことのもつリスクとして発電機から来る供給電圧が電子回路にとって不充分になるかもしれないということがある。
【0004】
欧州公開公報第0679968号は、回転子をその回転周期との関係において短かく固定された時間的間隔の間制動することを提案することによって上述の欠点を克服するようなもう1つの時計について記述している。この文献は特に、発電機から来る交流電圧の値が小さい時間において制動を行なわなくてはならないということを示している。したがって制動パルスは、1つの基準電圧つまりゼロ電圧に固定された閾値をもつ比較器によって検出される交流電圧の正負符号が変化する瞬間において印加される。
【0005】
しかしながら、このような時計は再調整を必要とするものであるということが判明した。すなわちこれらの時計を震動させたり反復的に衝撃を加えると、時計の遅れをひき起こし、これは従属制御回路によって補正することができない。
図1及び2は、従来の2つの閾値比較器で得た交流電圧Ug及び測定パルスSMの挙動を例示している。図1は、ゼロ電圧閾値比較器で実施された測定の結果を例示する。図1(a)は、時間の関数としての電圧Ugの推移を表わしており、電圧のゼロ値はゼロ閾値に対応している。図1(b)は、時間の関数としてゼロ閾値比較器の出力端におけるパルスSMを表わし、測定信号SMは、比較の結果に従って状態「0」から状態「1」まで変化する。さらに特定的に言うと、時刻t1における電圧Ug上の電気的ノイズが測定信号SM上の寄生パルスI1の出現を誘発することがわかる。この電気的ノイズは、単に接地ノイズからのものであるかもしれない。
【0006】
従って、観察される機能不良は寄生パルスI1が回転子の正規パルスI2又はI3であるものとして電子回路により認識されることによってひき起こされると思われる。
信号平滑化フィルタを設ければこれらの寄生パルスを抑制することができる。しかし、このろ波は正規のパルスの出現を遅らせる。しかしながら、前記説明した通り電圧Ugが低い間にいかなる遅延も無く制動パルスを印加しなければならない。この解決法はさらに、電子回路の望ましい小型化及び集積化に逆行する大型フィルタコンデンサを必要とする。
【0007】
考慮することのできるもう1つの解決法は、比較器の閾値をひき上げることにある。しかしながら、比較器の閾値は2つの矛盾する条件を満たさなければならない。つまり一方では、これは寄生パルスを隠すほどに充分高いものでなくてはならない。又他方では、これは、前述したとおり、発電機の電圧が低いときに制動パルスが出するように充分低いものでなくてはならない。
【0008】
図2は、高い閾値を持つ比較器で得られた測定結果を図1と同じ態様で表わしている。比較器の代わりに2つの別々の閾値をもつシュミット増幅器を用いた場合も同様である。閾値Utは、発電機の電圧Ugの時間図又は波形図の中で破線として表わされている(図2(a)参照)。図示されているとおり、発電機電圧Ugは時刻t4における制動の間に降下し、2重パルスI4及びI5が出現して(図2(b)参照)、これは望まれている結果に反している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、電子回路によって調速される機械式作動機構を伴う時計の機能を安定化することにある。
特に、本発明の目的はこのような機能不良の原因を知りそれを補正することにある。
【0010】
もう1つの目的は、簡潔で信頼性の高い電子回路をもつ小型の時計を得ることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
これらの目的を達成しようとして、本発明者は、このような時計についての入念かつ困難な実験の間に驚くべき現象を認識した。
実際、本発明者は、以前に使用されていた検出回路の閾値が実際には電源電圧の値によって左右されるということを観察したのである。驚くべきことに、回転子の制動中、発電機の電圧の降下は、発電機の閾値を変動させるのに充分なものであり、かくして新たなパルスが生成される。従って、低い正の閾値Uthと低い負の閾値Utbをもつシュミット増幅器といった通常の比較器の場合、この比較器は、ただ1つのパルスではなくて2重パルスをもたらすのである。実際、発電機が供給する電圧Ugが降下しても比較器の正の閾値Uthよりも大きい値になり、かくしてノイズパルスの出現を誘発する可能性がある。この現象は制動指令の間、従って第1のパルスの出現の直後にのみ発生する。
【0012】
この未評価の問題を認識することで本発明者は、次のものを含む時計によりこの問題を解決することができたのである:
−回転子及びこの回転子の回転に応えて電気エネルギーを提供するための手段を含む電気エネルギー発電機、
−前記回転子の前記回転をひき起こすため前記回転子に機械的に結合された機械的エネルギー供給源、前記発電機に結合され回転子の角周波数に対応する発電機により供給された交流電圧の角周波数の測定パルスを生成する測定手段、
−前記回転子に対して制動トルクを付加するための制動指令信号に対する応答性をもつ制動手段、及び
−基準周波数をもつ信号を生成するための基準手段及び前記測定パルスが基準信号との関係において先行している場合に基準周波数が前記回転子及び前記機械的供給源の角周波数を調速するような形で、前記制動手段を制御するように配置された従属制御手段を含む電気回路。
【0013】
なおこの時計は、前記電気回路にさらに前記測定パルスと同期しかつこの測定パルスの分割を回避するように配置されている抑止手段が含まれていることを特徴とする。
従って、本発明によれば、制動指令中、測定パルスの検出は、発電機電圧の正負符号変更に関して制動を実質的に遅延させることなくこのようなパルス分割を抑制する目的で抑止される。
【0014】
有利にも、本発明は、抑止手段が従属制御ループによって供給される制動指令に相関される、としている。
好ましい実施形態は、抑止手段が制動指令を生成、この指令の時間的遅延が従属制御ループによって制御されていることを特徴とする。
もう1つの実施形態は、タイムベースをもち測定パルスの出現又は消失に対する応答性をもつ抑止手段を提供する。
【0015】
本発明のその他の目的、特長又は利点は、添付図面を参照しながら以下の記述を読むことによって明らかになるだろう。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係る時計の電気機械部分は、図3に概略的に表わされている。これには、時計面の針といったような時刻表示手段6に対して一点鎖線で表わされた歯車装置4を介して結合されたバレル型バネから成る機械的エネルギー供給源2が含まれており、この機械的エネルギー供給源2はさらに、電気エネルギー発生機3の回転子3aに結合されている。この発電機3はさらに、誘導コイル3bを含み、回転子3aは、矢印によって従来通り示されているように、双極磁石を含んでいる。この部分は、専門家にとって既知のさまざまな方法で作ることができるためここでは詳述しない。
【0017】
作動中、機械的エネルギー供給源2は回転子3aを回転駆動し、コイル3bの端子B0,B1には、交流電圧Ugが現われる。この例では、端子B0は、基準電圧V0の基準端子であるとみなされる。発電機の電圧Ugは、端子B0の基準電圧V0=0ボルトを基準にして、端子B1で測定されることになる(図3参照)。
【0018】
この交流電圧Ugは、作動機構の電子調速回路1に対し恒常な電圧を供給するために、整流器5に対して印加される。整流器の好ましい実施例については以下で詳しく示す。
以下でわかるように、電子回路1は、専用に具備されている発電機3の回転子3aの制動手段に作用することによって時計の機械的作動機構を調速することができる。
【0019】
時計の作動機構は、以下正規速度と呼ぶ一定の与えられた速度で回転子が回転するとき実際の時刻を表示する。
回転子の自由速度すなわちいかなる制動も無い速度はこの正規速度よりもわずかに速い。作動機構が低速で作動するか又は遅れ始めた時点で、回転子は、この遅れを補うようその自由速度で回転できるようになる。逆に、作動機構が高速で作動又は進み始めた時点で、電子回路1によって提供される制動指令は回転子の速度を正規速度未満に制限して、作動機構がこの進みを失うようにする。これらの速度及び制動モードの選択に関するその他の詳細は、以前に言及しその内容が参考として本書に内含され必要に応じて参照すべきである欧州公開公報第0679968号の中で示されている。
【0020】
時計はさらに、作動機構の速度を測定するための測定手段を含んで成る。これらの手段は、好ましくは回転子の角周波数の測定手段から成る。本発明は、例えば一回転につき一回のパルスといった回転子の各々の角周波数に対応する測定パルスを得ることを目指している。これらの測定パルスは実際には、作動機構の変動を測定し必要とあらば制動指令を提供する目的で、電子回路1によって処理される。これらの測定手段及びパルスの処理については、電子回路と共に以下で詳述する。
【0021】
制動は、発電機3のコイル3bの短絡によって得られる。このときこの短絡路を通して流れる電流は、かくしてそれ自体この電流の原因及び回転子の運動に反する磁界の出現を誘発することになる。電流を低い値の抵抗へ再度導く又は分岐させることも考慮できる。しかしながら、本発明の好ましい実施形態は、発電機のコイル3bの2つの端子B0,B1の間に直接接続された電子断続器又はスイッチKを提供している。こうして非常に強力な制動を得ることができる。
【0022】
電子スイッチKは、有利には、上述の欧州公開公報第0679968号の中で説明されているようにバイポーラトランジスタ又はFETトランジスタで構成されている。その他の等価物も専門家にとって周知のものであることから、ここではこの電子スイッチKの作動について詳述はしない。
当然のことながら、このような短絡は、発電機の電圧Ugの降下を誘発し、電圧は、制動指令の間に実質的にゼロとなる。
【0023】
すでに前に記述した図2(a)は、例として、制動サイクル中の交流電流Ugのペースを示し、それはいかなる制動もない電圧Ugを表わす図1(a)に比較できる。半周期t0−t6の間に、制動が指令される時間的間隔t4−t5が存在することがわかり、ここで、短絡させられた発電機はその全エネルギーをスイッチKに提供している。
【0024】
欧州公開公報第0679968号は、電圧Ugがゼロに近い時点で、好ましくは交流電圧Ugの角周波数の1/8未満である短かい時間中、制動指令を加え、整流器5に対して提供される供給電圧V+,V−が連続的に降下するのを避けなければならない、ということを記している。
1つの実施形態においては、回転子3aは1秒につき4回転という正規速度を有し、スイッチKに加えられる制動パルスの持続時間は、電圧Ugの250msという角周波数の1/50である約5msに制限される。
【0025】
図3の中で例示したような時計の作動機構の電子調速回路1は、主として、基本周波数F0をもつ信号を提供する発振器Osc,回転子3aの角周波数の測定手段(Trig及びInhとして示されている)及び回転子の制動指令を制御する周波数従属制御回路で形成されている。
周波数従属制御回路は、発振器Oscから提供され、例えば基準周波数をもつ信号を得るべく信号F0を分周することによって、発振器Oscの基本周波数F0から得られた基準周波数をもつFRというパルスに対して、回転子の角周波数に対応する周波数をもち測定手段Trig,Inhにより提供される測定パルスINが進んでいる場合に、制動を指令する。
【0026】
この目的で好ましくは、従属制御回路には、基本周波数F0をもつ信号に対し作用しかつ基準周波数FRでパルスを提供する周波数補正器Divが含まれている。補正器Divは単に専門家に周知の分周回路であってよく、従ってここでは詳述しない。
しかしながら、このような回路から中間周波数パルスF1も同様に抽出できるということも言及しておくべきであろう。
【0027】
図3に示されている実施形態においては、発振器Oscは、32,768Hzの固有周波数F0をもつ水晶である。分周器Divは、回転子の正規角周波数に対応する4Hzの基準周波数をもつ一連のパルスFRを得るべく周波数F0をもつ信号を分周する。最終的に、分周器から、4,096Hzの中間周波数をもつパルスF1も同様に抽出することができる。理解できるように、これらの値は、一例として示されているにすぎないものである。
【0028】
かくしてここで0.244msの周期をもつこれらのパルスF1は、タイムベースとして又は以上で言及した制動指令の時間的遅延制御として役立ち、かつ論理全体のクロック同期化として役立つよう意図されている。
従属制御回路にはさらに、基準周波数FRに対する作動機構の進み(又は遅れ)を表わす信号AVを提供するCmpと記された比較器が含まれている。この比較器Cmpは例えば、上述の欧州公開公報第679,968号に記述されているように、その「+」入力端で受理した測定パルスINの数とその「−」入力端で受理した基準パルスFRの数の差を計数するアップダウンカウンタ又は可逆カウンタであってよい。かくして比較器Cmpの出力端で利用可能であるこの信号AVの状態又はレベルは、回転子の角周波数が基準周波数FRに対して進んでいるか否かを表わす。
【0029】
従属制御回路には、最後に、規定の持続時間のパルスを提供するTmrと記された時間遅延回路又はレジスタが含まれる。時間遅延回路Tmrの2つの入力端のうちの第1のものは、回路Inhの出力端に接続され、もう1つの入力端は分周器Divから、その出力パルスの持続時間を決定するのに用いられるパルスF1を受理する。時間遅延回路はさらに、比較器Cmpの信号AVを受理する妥当性検査端子を含んでいる。時間遅延回路Tmrは、回転子の角周波数が基準周波数FRに対して進んでいることを信号AVが表示した場合には、信号INの出現後一定の遅延を伴って、IFと呼ばれる制動パルスをその出力端で提供する。
【0030】
この実施形態においては、制動は5msより短かい持続時間を有し、これは各々0.244msの周期をもつ20個のパルスF1をカウントダウンする時間遅延回路Tmrの内部カウンタをプログラミングして4.88msの持続時間をもつ制動パルスIFを生成することによって達成される。
回転子の角周波数の測定手段の記述に続いて、時間遅延回路Tmrの好ましい実施形態について記述する。
【0031】
図4(a)は、制動パルスが付加された時点で発電機3により提供される交流電圧Ugの波形図の例を表わす。図4(a)では、破線により、電圧Ugの振幅よりも小さい値をもつしきい電圧の2つのレベルUth及びUtbが示されている。閾値Uthは正であり、交流電圧Ugの基準値0ボルトよりもわずかに大きい。閾値Utbは負であり、好ましくは0Vのこの電圧に関して閾値Uthに対し対称である。
【0032】
好ましくは、実際には本発明は、角周波数の測定手段が、ヒステリシス増幅器つまりシュミットトリガー(図3でTrigとして記載)を含むことを許容している。図4(b)は、増幅器Trigの出力端で得られるパルスIMの波形図を示す。増幅器の出力IMは、入力電圧Ugが低い閾値Utbよりも小さくなる時刻b2の後第1のレベル(「0」状態)へと変化する、ということがわかる;出力IMは、電圧Ugが高い閾値Uthより大きくならないかぎり、この第1のレベルにとどまる。時刻h3において電圧Ugはこの閾値Uthをしのぎ、出力IMは第2のレベル(「1」状態)まで変化し、かくして、電圧Ugが逆に低い方の閾値Utbより下まで降下する時刻b4まで持続するパルスH3を生成する。このような増幅器(シュミットフリップフロップ又はシュミットトリガーとも呼ばれる)の実現は、専門家にとって周知のことであり、従ってここでは詳述しない。
【0033】
このようなヒステリシス増幅器の利点は、それが、従来の単一閾値比較器(図1参照)とは異なり電気的雑音に対しほとんど感応しないということにある。特に、2重閾値Uth,Utbを有するトリガーTrigは、閾値Uth−Utbの間の差よりも小さいノイズ電圧を認識しない。
その上、正の閾値Uth及び負の閾値Utbをもつシュミットトリガーは、制動周期中の電圧Ugのゼロ復帰を検知してはならない。
【0034】
2つの相対するしきい電圧Uth及びUtbを有するために、電子回路1は好ましくは直流の対称な電源V−,V0,V+を有する。従来のやり方では、一定水準の対称電源は、中央の発電機及び2つの出力端V+及びV−の各々の間にコンデンサを伴う単一の整流器を有し、基準出力V0は中央にとられている。この解決法の1つの欠点は、小型コイル3bの端子においてすでに低い振幅である、測定可能な交流電圧Ugの振幅を半減させてしまうということにある。
【0035】
本発明の好ましい実施形態には、図3に示されているような対称整流器5が含まれている。この整流器は、特に、発電機3の基準端子B0に接続された基準出力端V0,及び電圧出力端V+又はV−と出力端V0の間にそれぞれ配置された2つのコンデンサを含んでいる。電気回路1の直流電源を安定化することを意図した整流回路5の機能については、それが専門家にとっては周知の複数の方法で得られることから、ここでは詳述しない。
【0036】
ただし、各々のコンデンサは各交番時点で、実質的に交流電圧Ugの最大値に対応するレベルまで反復的に充電される、ということに留意しておくべきである。
図4(b)によれば、電圧UgがトリガーTrigの低い閾値Utbより低い場合、従って時刻b4以降、トリガーTrigの出力信号IMは低レベル(「0」状態)にとどまらず、この信号IMはパルスH3がパルスH3とH5に分割されることを示している、ということがわかる。
【0037】
本発明者は、困難な実験の間に、この驚くべき現象が、図4に例示されているような負の半交番の間の制動中に発生することを発見した。制動サイクルは、図4(e)に、信号AVの「1」状態によって表わされている。この現象は、シュミット−トリガーTrigの閾値Uth及びUtbの変動によってひき起こされると思われる。実際、制動サイクルの開始時点ではいかなる分割パルスも存在しないことに留意されたい、例えば図4(b)は、図4(f)に概略的に表わされている第1の制動パルスF3の瞬間において、パルスH3の開始時の分割が存在しないことを示している。パルスH3−H5の分割は、第2の制動パルスF4においてのみ現われる。実際、交流電圧Ugの最大値は第1の制動パルスF3の後に減少する。同様に、整流器電圧V+の値はより小さくなる。この供給電圧の変動は、トリガーTrigの閾値Uth及びUtbの変動をひき起こすと思われる。従って、後続の制動パルスF4において、電圧Ugが降下してもそれにより閾値Uthの値よりも大きい値を獲得することになりそれによって、図4(b)に表わされた寄生パルスH5の出現をひき起こすことになる、ということが認められた。この現象は又、スイッチKの端子における或るノイズ又はノイズ電圧の存在によって誘発され得る(図3参照)。このノイズ電圧は、電圧Ugが完全にゼロの値まで復帰するのを妨げる可能性がある。
【0038】
本発明は、この問題を回避するべく測定パルスの同期的抑止手段を提供する。
このために、本発明に係る電子回路1はさらに、閾値比較器Trigにより提供される測定パルスIMを受理する同期抑止回路Inhも含んでおり、かくしてこのInh,Trigの組み合わせは、回転子3aの角周波数の測定手段を構成している。
【0039】
同期抑止という一般的表現は、ここでは時計、その発電機、電子回路及びその発振器によって形成されたシステムの内部の信号好ましくはパルスによってトリガされる抑止を意味するものとして解釈される。特に、測定パルスの抑止をパルス自体に同期化することができ、最初のパルスが次のパルスの出現の抑止を開始する。専門家にはいくつかの等価物が知られていることから、本発明は、同期化源を特定することなく全ての既知の同期抑止に向けられていると考えられる。
【0040】
第1の実施態様によれば、抑止回路Inhはタイムベース(内部又は外部)を含み、通常増幅器Trigから来る測定パルスIMを直接時間遅延回路Tmrに伝送する。しかしながら、抑止回路Inhが活性化された時点で、回路はそれ以上抑止持続時間中に測定パルスIMを伝送しない。抑止はパルスの出現及び/又は消失時点で開始する、すなわち抑止回路はパルスIMの上昇側面及び下降側面で反応し、その活性化持続時間tiはそのタイムベースにより時間遅延される。例えば、図4(a)並びに図4(b)、及び図4(c)を参照すると、後二者はそれぞれ増幅器Trig(図4(b))及び抑止回路Inh(図4(c))によって伝送された異なるパルスを表わす図であるが、時刻b2,h3,b4,h7における遷移は抑止時間の長さtiよりも長い時間的間隔により分離されていることから、抑止回路はそれぞれパルスM1,M3及びM5を介して測定パルスH1,H3及びH7を伝送するが、この抑止回路は、パルスH3の後縁(時刻b4)で開始する抑止時間tiの間に出現する寄生パルスH5を伝送しない(図4(c)参照)。
【0041】
第1の実施形態の図示していない変形形態に従うと、抑止回路は、その前縁が正規パルスINの期間中に出現するのでないかぎり、測定パルスIMの各々の前縁において規定の持続時間の正規パルスINを生成する。このような抑止回路は、以前に言及した時間遅延回路Tmrと類似の要領で得ることができる。例えば、回路Inhは、その入力端に付加された測定パルスIMの遷移に対し感応する単安定マルチバイブレータを含んでいる。パルスIMの上昇側面において、単安定アルケバイブレータはその出力端で規定の持続時間の正規パルスINを提供する。同様に、パルスIMの下降側面において単安定マルチバイブレータは規定の持続時間のもう1つの正規パルスINを提供する。かかる単安定マルチバイブレータは回転子の各々の角周波数において2つの正規パルスINを提供し、そのため正規パルスINの周波数を倍増した基準周波数FRと比較しなければならなくなる、ということに留意すべきである。又、専門家にとっては周知のその他の同等の抑止回路も同様に使用できるということが理解できる。
【0042】
図3に例示されているもう1つの実施形態に従うと、抑止回路は、各々時間遅延回路Tmrによって発出された発電機の回転子を制動するための制動指令である図4(f)に表わされたパルスIFを1つの入力端で受理し、抑止期間は制動持続時間tfに対応する(図4(f)参照)。実際、観察された通り、分割に起因する寄生パルスは制動中にのみ出現する。きわめて単純な同期抑止がかくして得られる。
【0043】
しかしながら、本発明の好ましい実施形態は、制動指令IFよりも長い持続時間をもつ抑止指令IIを含んでおり、それは全ての制動の瞬間を網羅する。すなわち抑止パルスIIは、制動パルスIFの終期に続く瞬間を網羅し、パルスIIの出現はこのパルスIFの出現に先行する。この「散逸」により、抑止又は制動の伝播遅延又は電圧Ugの遅延による寄生パルスの発生が確実に防止される。本発明の好ましい実施形態においては、時間遅延回路Tmrは、相関関係にある抑止パルスII及び制動パルスIFを提供する2つの出力端を含んでいる。
【0044】
「相関」という概念は、信号又はパルスといった2つの物理的現象の同時出現又は実質的に恒常な時間的遅延を伴った出現のことを表わしている。しかしながら、これらの2つの現象が異なる持続時間をもち得るということに留意すべきである。例えば、相関関係にある時間遅延パルスは、当業者には周知のものであるように、異なる幅をもつ可能性がある。
【0045】
好ましい実施形態の時間遅延回路Tmrによって発出されたパルスの相関を例示するために、時間遅延回路Tmrが分周器Divの出力端に連結された第1の入力端で周期0.244msをもつパルスF1を受理するような例をとり上げてみよう。正規パルスINが、抑止手段の出力端に持続されているもう一方の入力端に出現した時点で、進み信号AVの状態が時間遅延回路の妥当性検査入力端にパルスを供給することによってそれを制御する場合(図3参照)、時間遅延回路Tmrは直ちに抑止パルスIIを提供する。抑止パルスIIの開始との関係において0.244msという周期F1だけ遅延して、時間遅延回路Tmrの出力端に制動パルスIFも出現し、内部カウンタが、5.124msに対応する21個のパルスF1にその持続時間を制限する。実際、内部カウンタは、制動持続時間が確実に5ms前後であるようにしなければならない。もう1つの内部カウンタは、パルスIIの持続時間を、6.1msに対応する25パルスF1に制限する。かくして抑止パルスIIは、制動パルスIFの終りから0.723ms後に終る。
【0046】
ここで、このような抑止パルスII及び制動パルスIFを提供する時間遅延回路Tmrの電子回路の一実施形態について、図5を参照しながら詳細に記述する。ここで表わされている回路は、前述の中間周波数F1をもつパルス信号、進み信号AV(又は遅れ信号)及び測定パルスを受理し、上述のような制動パルス信号IF、抑止パルス信号II及び正規パルス信号INを提供する論理回路である。
【0047】
図5の論理回路は、そのクロック入力端でパルスF1を受理するシフトレジスタReg、つまりパルスが順次的に出現する4つの出力端R0,R1,R2及びR3をもつレジスタを含んでいる。
前述の一実施形態の例によれば、パルスF1は0.244msの周期をもつ。したがって出力端R3は、出力端R2のパルスに類似しているもののそれとの関係において0.244msだけ遅延した0.976msの周期をもつパルスを生成する。さらに、レジスタRegは、進み信号AVと測定パルス信号IMの間で論理演算「and」を実行するAndと記されたANDゲートの出力端に接続されている活性化端子Sを含んでいる。端子Sが状態「1」に変化した時点で、レジスタRegは活性化され、出力端R1は状態「1」に変わる。次のパルスF1において、出力端R2は状態「1」に変わり、出力端R1は状態「0」にリセットされる。
【0048】
出力端R3は、パルスIF,II及びINの持続時間を制限できるようにするカウンタCptrに接続されている。例えばカウンタは、5の値まで計数することができ、保留出力端Qは、5つのパルスR3のカウントダウンの後、状態「1」へと変わる。初期化端子Rが状態「1」にある場合、計数が開始され、出力端Qは状態「0」にリセットされる。カウンタCptrの出力端Qは、DタイプフリップフロップFliのクロック入力端に接続される。このフリップフロップはさらに、状態「0」を受理するデータ入力端を含む。「1」への設定のための端子Sにより出力端Q及びNQの状態をそれぞれ状態「1」及び「0」へと強制することが可能となる。「1」への設定のための端子Sも、論理ゲートAndの出力端に接続されている。
【0049】
ここで、回転子の角周波数が高速であることすなわち基準周波数FRとの関係において進んでいる場合を考慮する。進み信号AVは状態「1」にある。時刻「h」において、電圧Ugが上昇しながら閾値Uthをしのいだ時点で、測定パルスIMは状態「1」に変わる。レジスタReg及びフリップフロップFliの端子Sはかくして状態「1」にある。フリップフロップFliは活性化され、その出力端Qは状態「1」に変わる。フリップフロップFliの出力信号Qは、Ouと記されたORゲートの入力端に付加され、このゲートの出力端は抑止パルスIIを提供する。時刻「h」以降、抑止パルス信号IIはかくして状態「1」に変わる。ORゲートOuはフリップフロップFliの出力端Qともう1つのフリップフロップFloの出力端Qとの間で論理演算「OR」を実行する。同じくDタイプフリップフロップであるこの第2のフリップフロップFloはそのデータ入力端でフリップフロップFliの出力信号Qを受理する。しかしながらシフトレジスタRegの出力信号R2はフリップフロップFloのクロック入力端に適用される。フリップフロップFloの出力端へのデータQの転送はかくして、信号R2の次の遷移まで遅延されることになる。フリップフロップFli及びFloの2つの出力Qはまた、論理演算「AND」を実行するEtと記されたANDゲートの2つの入力端にも付加される。ANDゲートの出力端は制動パルス信号IFを提供する。
【0050】
一実施形態の前述の例を再度考慮すると、信号R2の遷移は、時刻「h」から0.244ms後に発生している。かくして、制動パルスIFは、抑止パルスIIの出現から0.244後に現われる。
同様に、フリップフロップFliの出力端NQは、カウンタCptrの初期化端子Rに接続されている。時刻「h」において、出力端NQは状態「0」へと変わる。カウンタは活性化され、レジスタRegにより発生されたパルスF1を計数し始める。計数例に従うと、5つのパルス周期R3の後、カウンタCptrの出力端Qは状態「1」に変わる。クロック入力端上のこの遷移により、フリップフロップFliはそのQ出力端でデータの状態「1」を複製することになる。かくして、出力端「NQ」は、カウンタCptr及びその出力端Qを初期化することによって状態「1」へと移行する。かくして、カウンタCptr及びフリップフロップFliの出力端Qは状態「1」にとどまり、この状態は、フリップフロップFliの設定端子上に状態「0」から「1」の遷移が出現しないかぎり持続する。
1つの実施形態の前述の例においては、カウンタCptrの計数は、時刻「h」から0.488ms後の信号R3と同期化されている。計数は前述のとおり4.88ms続く。かくして時刻「h」から5.368ms後に、カウンタCptrの出力端Qは状態「1」へと変わる。このすぐ後に、フリップフロップFliの出力端Q及びNQはそれぞれ状態「0」及び「1」へと戻る。計数が再度初期化され、この要領で次の測定パルスIMまでとどまる。かくして制動パルス信号IFは時刻「h」+5.368msの時点で状態「0」に戻る。
【0051】
しかしながら、フリップフロップFloの出力端Qは、レジスタRegの出力端R2の次の遷移までなおも状態「1」にある。
この実施形態に従うと、この遷移はカウンタCptrの再初期化から0.732ms後、すなわち時刻「h」+6.1msで発生する。こうして抑止パルスIIは、制動パルスIFの消失から0.732ms後に消失する。
【0052】
時間遅延回路Tmrの信号は、新しい測定パルスIMが出現しないかぎり、この状態にとどまる。
最後に、時間遅延回路Tmrが、相関関係にある抑止パルスII及び制動パルスIFを提供し、抑止パルスIIの持続時間は制動パルスIFの持続時間よりも長く従ってこれに対し「散逸」しておりそのため切替えの際のエラーがことごとく回避されている、ということがわかる。
【0053】
図5の回路は同様に、抑止回路Inhの一実施形態も例示している。この例に従うと、抑止回路Inhは、妥当性検査入力端Eの状態に対し感応するDタイプフリップフロップである。抑止パルス信号IIはこの入力端Eに付加され、データ入力端は測定パルスIMを受理し、データ出力端は正規パルスINを提供する。
【0054】
作動中、このような回路Inhの正規パルスINの出力端は、妥当性検査Eが状態「0」にある場合にのみ測定パルス信号IMの状態を複写する。抑止中、すなわち抑止信号IIが状態「1」にある時(この実施形態に従うと、時刻「h」と時刻「h」+6.1msの間)、出力端の状態は、測定パルス信号IMの遷移とは無関係に不変の状態にとどまる。
【0055】
最後に、抑止手段が、時計の未補正の遅れをひき起こす寄生パルスの排除を可能にするということがわかる。
さらに又ヒステリシス増幅器を含む測定手段と組合わせた場合に抑止手段が、一般的な電気的ノイズに対する優れた免疫性をもつ時計を提供する、ということもわかる。
【0056】
有利にも、整流器5のコンデンサは、ここでは測定手段に対し極度に安定したしきい電圧を提供する必要がないことから、比較的低い容量を有していてよい。
当業者であれば本発明の範囲から逸脱することなく上述の時計に対しいくつかの修正を加えることができる、ということは容易に理解できるだろう。
特に、基準パルスFRとの関係における測定パルスIMの進みの大きさに従って、制動パルスIFの持続時間を調整することができる、ということを述べておくべきである。この変形形態は、位相ロックループを含む従属制御回路に特に適しており、回路は、制動パルスIFとの関係においてパルスINの位相変移に比例して変動しうるレベルをもつ信号AVを提供し、かくしてこの信号AVのレベルは時間遅延回路Tmrによって提供される制動パルスIFの持続時間を調整することになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の電子回路によって調速される機械式作動機構を伴う時計によって得られる交流電圧及び測定パルスの波形図である。
【図2】従来の他の電子回路によって調速される機械式作動機構を伴う時計によって得られる交流電圧及び測定パルスの波形図である。
【図3】本発明に係る時計の機械式作動機構を調速するための電子回路の原理図である。
【図4】図3の時計の発電機の極における交流電圧及び図3の回路のいくつかの点において得られるパルスの波形図である。
【図5】図3の電子調速回路の電子時間遅延回路Tmrの一実施形態を概略的に表わす図である。
【符号の説明】
1…電子回路
2…機械的エネルギー供給源
3…電気エネルギー発生機(発電機)
Trig…測定手段
K…制動手段
Osc…基準手段
Inh…抑止手段
Div,Cmp,Tmr…従属制御手段

Claims (6)

  1. 回転子(3a)及びこの回転子(3a)の回転に応えて電気エネルギーを供給するための手段を含む電気エネルギー発電機(3)、
    −前記回転子の前記回転をひき起こすため前記回転子(3a)に機械的に結合された機械的エネルギー供給源(2)、
    前記発電機(3)に結合され回転子(3a)の角周波数に対応する発電機(3)により供給された交流電圧の角周波数の測定パルスを生成する測定手段(Trig)、
    −前記回転子(3a)に対して制動トルクを付加するための制動指令信号に対する応答性をもつ制動手段(K)、及び
    −基準周波数(FR)をもつ信号を発生するための基準手段(Osc)及び前記測定パルスが基準信号との関係において先行している場合に基準周波数が前記回転子及び前記機械的供給源の角周波数を調速するような形で、前記制動手段(K)を制御するように配置された従属制御手段(Div,Cmp,Tmr)を含む電気回路(1)、を具備する時計において、
    前記電気回路(1)はさらに、前記測定パルス(IM)と同期しかつこの測定パルスの分割を回避するように配置されている抑止手段(Inh)をさらに具備することを特徴とする時計。
  2. 前記抑止手段(Inh)が前記制動手段(K)に同期して制御され、各制動持続時間が抑止持続時間で網羅されること、を特徴とする請求項1に記載の時計。
  3. 前記抑止手段は制動指令をも生成し、各制動パルス(IF)は抑止パルス(II)の開始に関して所定期間(F1)だけ遅延されることを特徴とする請求項2記載の時計。
  4. 前記抑止手段(Inh)が各抑止持続期間測定パルスの伝送を抑止し、抑止は測定パルスの出現又は消失によってトリガされることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の時計。
  5. 前記測定手段(Trig)は、シュミット増幅器のようなヒステリシスフィルタを具備することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の時計。
  6. 発電機が、対称的電源を提供する整流器に接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の時計。
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