JP4062259B2 - 戸建て住宅建物の変位増幅型制振構造 - Google Patents
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Description
その対策として建物に制振装置を組み込み、地震のエネルギーをその制振装置で減衰し、建物の揺れを抑制するようになしたものが各種提案されている。
例えば下記特許文献1には、オイルダンパを含む制振装置を建物に組み込み、そのオイルダンパによる減衰によって建物の揺れを小さく抑制するようになした点が開示されている。
この特許文献1に開示のものではまた、制振装置に変位増幅機能も付与しており、外部から加わる振動を増幅してオイルダンパに入力させ、オイルダンパによる制振の機能を高めるようになした点も開示されている。
これら特許文献2及び特許文献3に開示の制振構造は、簡易的に建物の振動を抑制できるもので必要なスペースも少なくて済み、また複雑且つ面倒なメンテナンス作業を必要とせず、従って戸建て住宅建物用の制振構造として適している。
この場合、建物構築部材間の相対変位を変位増幅機構を用いて増幅し制振材に入力するようにできれば、制振材による減衰の機能を十分に発揮させ得て望ましい。
即ちそのような微震動が建物に加わった場合であっても、十分に制振材を変形させ得て建物の振動を良好に抑制することができる。
本発明における制振材としては減衰定数が0.2以上、好ましくは0.3以上の高減衰を有するものを好適に用いることができる。
図1において10,12は戸建て住宅建物における柱で、14は上梁、16は基礎梁、18はそれら柱10,12,上梁14,基礎梁16にて構成された軸組(フレーム)である。
この実施形態では、その軸組18のコーナ部に制振装置20が組み込まれている。
変位作用部22には、図2(B)に示しているように剛性の挟持部26が設けてある。
一方柱10には、これに対応する剛性の挟持部28が設けてあり、それら挟持部26と28とによって制振材30が挟持されている。
尚場合によって何れか一方の面のみを接着により固定し、他方の面を高摩擦圧接しておくこともできるし、或いはまた場合によって両面を高摩擦圧接状態としておくこともできる。
但しこの実施形態において、熱可塑性エラストマーには未加硫ゴムが配合されており、その未加硫ゴムの配合によって振動減衰性能が高められている。
本実施形態では減衰定数0.2以上の高減衰の熱可塑性エラストマーが用いられている。この減衰定数は更に高い値、例えば0.3以上としておくことがより望ましい。
この熱可塑性エラストマーとしては従来種々のものが知られているが、その代表的なスチレン系熱可塑性エラストマーの場合、ポリスチレンブロックと柔軟なポリオレフィン構造のエラストマーブロックとで構成されており、ポリスチレンのガラス転位温度(Tg)以下の温度でポリスチレンが架橋点としての役割を果し、分子と分子とを疑似橋架け結合する。
そしてエラストマーブロックがゴム的な働きをし、全体として使用状態で粘弾性挙動を示す。
図8(イ)に示すように、エラストマー(A)を金具(B)で挟み且つそれらを接着する。
エラストマー(A)の大きさは25mm×20mm,厚み4mmである。
これを矢印方向に加振して、図8(ロ)に示す動的荷重−歪みループ曲線を求める。
尚測定条件は、剪断歪み量:±16mm(エラストマー(A)の厚みに対して200%),周波数(f):0.5Hz,測定温度:常温とする。
等価剛性:Keq=Qd/δ(kN/m)・・・(1)
等価減衰係数:Ceq=ΔW/πωδ2(kN・s/m)・・・(2)
減衰定数:Heq=ΔW/4πW・・・(3)
(但し式中ω=2πf,W=Keqδ2/2,ΔWは荷重−歪みループで囲まれた面積を表す)。
レバーリンク32は、図2にも示しているように長手方向の中心位置から図中下側に偏心した位置において、柱10に設けられた剛性の支持部材34に対し軸36によって相対回転可能に固定されている。
その結果としてこのレバーリンク32は、アーム長の短い短アーム部38及びアーム長の長い長アーム部40を有している。
またその先端部が、軸46によって上記レバーリンク32における短アーム部38の端部に相対回転可能に連結されている。
ここで回動リンク33は、基礎梁16に対し所定角度βだけ傾いた状態で設けられている。
尚、基礎梁16と柱10との成す角度αは90°である。
図4にその原理が模式的に表してある。
このときレバーリンク32は、その下端部が回動リンク33の回動を伴って図中左方向に押されることによって、柱10よりも大きい角度で時計方向に回転(傾動)させられる。
詳しくは、図3(B)に示しているように柱10に固定の挟持部28よりも、変位作用部22に設けた挟持部26が図中右方向により大きく変位する。
その結果として、柱10に固定の挟持部28に対し変位作用部22に設けた挟持部26が図3中右方向に相対変位する。
そしてその相対変位に基づいて制振材30が剪断方向に変形させられて減衰作用をなし、挟持部28と26との間で即ち柱10と基礎梁16との間で変位抑制する。
その結果として軸組18ひいては建物の揺れないし振動が抑制される。
但しこのとき、回動リンク33は図中右回り即ち時計方向に回動してレバーリンク32の下端部を右方向に移動させ、これによりレバーリンク32を柱10よりも大きい角度で図中左向きに回転(傾動)させる。
また図7は、図5のY,X,L1の比率をそれぞれ0.1,0.4,0.025に固定し、そして変形角θで柱10を変位させた(傾けた)ときの変位増幅率(ΔD/A)を、図5中Wの寸法を種々変えて表したものである。
但し軸36と軸46と軸44とは同一直線状に位置しないように配置しておくのが良い。
また僅かな振動でも制振材30を大きく変形させて減衰の機能を発揮させ得ることから、交通振動のような微振動に対しても十分に効果を発揮することができる。
上記実施形態は、柱10と基礎梁16とが交叉する1コーナ部に制振装置20を設けた例であるが、この図10に示す実施形態はこれとは対角にある上梁14と柱12とが交叉するコーナ部に同様の構成の制振装置20を設けた例である。
この図10に示す実施形態では、一対の制振装置20による制振効果によって軸組18、ひいては建物全体の揺れないし振動をより効果高く制振することができる。
この例は柱10と上梁14との交叉部に制振装置20を組み込んだ例である。
制振装置20の基本的構成は上記と同様である。
但しこの実施形態では回動リンク33が柱10とほぼ平行に設けられている。
14 上梁(フレーム部材)
16 基礎梁(フレーム部材)
18 軸組(フレーム)
20 制振装置
22 変位作用部
24 変位増幅機構
30 制振材
32 レバーリンク(リンク機構)
33 回動リンク(リンク機構)
36,44,46 軸
38 短アーム部
40 長アーム部
Claims (1)
- 軸組のコーナ部で互いに交叉する柱及び梁の一方から成る第1のフレーム部材と、外部から加わる振動によって該第1のフレーム部材に対して相対変位する、該柱及び梁の他方から成る第2のフレーム部材とにまたがって、該第2のフレーム部材の該相対変位をてこ作用で増幅する、リンク機構にて構成した変位増幅機構を該コーナ部に設けるとともに、該変位増幅機構の増幅作用によって該第2のフレーム部材に対し増幅変位する変位作用部を設け、該変位作用部と該第2のフレーム部材との間に、粘弾性体エラストマーにて構成したシート状の制振材をそれら変位作用部と第2のフレーム部材との相対変位によって該制振材を剪断変形させる状態に挟持状態に介装してあり、
且つ前記変位増幅機構は、(イ)長手方向両端間の回転中心部で前記第2のフレーム部材に軸周りに回転可能に固定されたレバーリンクと、(ロ)前記第1のフレーム部材に基端部で軸周りに回転可能に固定され、先端部で前記レバーリンクに軸周りに回転可能に連結された回動リンクと、を有しており、該レバーリンクの前記回転中心部に対して該回動リンクとの連結部と反対側に前記変位作用部が構成されているとともに、該レバーリンクは該回転中心部から該変位作用部までの長さが前記連結部までの長さよりも長くされており、該回転中心部から該変位作用部までがアーム長の長い長アーム部として、また該回転中心部から前記連結部までがアーム長の短い短アーム部として構成してあることを特徴とする戸建て住宅建物の変位増幅型制振構造。
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