JP4062126B2 - 酸素インジケーターおよび包装材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は食品や医薬品の窒素または炭酸ガス置換包装や脱酸素包装において、ガス置換状態や脱酸素状態の保持を検知するための酸素インジケーターおよびそれを用いた包装材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品や医薬品の酸素による劣化を防止する目的で、窒素または炭酸ガス置換包装や脱酸素包装が利用されている。これには、ガスバリアー性の包装材料で食品や医薬品等の内容物を密封包装する際に、包装内に窒素ガスや炭酸ガスを吹き込みながら密封シールすることで包装内のヘッドスペースガスを窒素や炭酸ガスに置換する方法や、包装内に酸素吸収剤を内容物と一緒に封入することで脱酸素状態にする方法等がとられる。
【0003】
このような包装においては、内容物が包装されてから開封されるまでの間、ガス置換状態や脱酸素状態が保持される必要があるが、ガス置換が不十分であったり、脱酸素剤の能力が低下していたり、包装材料のバリアー性が低下していたり、ピンホールが発生したり、密封シールが不完全であったり等様々な要因によって、ガス置換状態や脱酸素状態が保持されない可能性がある。しかもこのように包装内のガス状態が変化したとしても、外観的にそれを察知できない場合が多い。
【0004】
そこで、ガス置換状態や脱酸素状態が保持されていることを視覚的に認識できるようにするために、酸素の有り無しで変色するすなわち酸素検知機能を有する酸素インジケーターが利用されている。従来より利用されている酸素インジケーターは錠剤タイプのものがほとんどで、内容物と一緒に包装内に錠剤タイプの酸素インジケーターを投入して利用していた。
【0005】
しかし、このような錠剤タイプのインジケーターを利用する場合、食品や医薬品を充填包装するメーカーにおいては包装材料の他に別途インジケーターを用意して充填するという手間がかかることになり、また消費者においてはインジケーターを誤飲、誤食する恐れがあるなどの問題があった。
【0006】
そのため、出願人および発明者らは包装材に酸素インジケータが一体となって設けらるように、酸素検知機能を有するインキ及び当該インキが印刷されている包装体を鋭意研究開発してきた(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開昭53−39866号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、印刷タイプの酸素インジケーターにおいては、錠剤タイプの酸素インジケーターに比べて変色に要する時間が長くなるという問題がでてきた。
酸素インジケーターインキの変色原理は、大気下ではインキ中の酸化還元色素が酸素による酸化反応を受けて、酸化型に偏ることで酸化色を示し、脱酸素下では酸化反応が停止し、インキ中に存在する還元剤の働きで色素が還元型に偏って還元色を示すというものである。よって、酸化還元色素と酸素の反応を速めることが、インジケーターの変色スピードを高める手段のひとつとなる。
【0009】
一方、遷移金属イオンは酸化触媒としてはたらくことが知られている。すなわち、遷移金属イオンによりラジカル生成が促進され、それにより酸化反応が促進されるれが、遷移金属イオンによるラジカルの生成機構は、遷移金属イオンが過酸化物を分解することによってラジカルを生成する場合や基質から直接水素原子を引き抜くことによってラジカルを生成する場合および酸素分子が金属イオンと反応することで活性化してラジカルを生じるなどの機構があるといわれている。
【0010】
そこで、本発明においては、遷移金属イオンを酸素インジケーターインキに添加することで、酸素分子による酸化還元色素の酸化反応を促進させて、変色速度を向上させた印刷タイプの酸素インジケーターおよびそれを用いた包装材料を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成とした。
本発明による酸素インジケーターは、
酸素検知機能を有するインキを基材上に印刷して成る酸素インジケーターにおいて、酸素検知機能を有するインキが、メチレンブルー及びアスコルビン酸を酸素検知反応の主成分とするインキであって、酸素検知機能を有するインキ中に、塩化第一鉄、塩化コバルト、塩化マンガン、塩化銅、硫酸第一鉄の少なくともいずれか一つが濃度50ppm〜500ppmの範囲で含まれることを特徴とする。
【0012】
また、全体或いは一部分を、請求項1記載の酸素インジケーターで構成したことを特徴とする包装材料としたものである。
【0013】
また、酸素検知機能を有するインキをグラビア印刷機で印刷用基材フィルムにパターン印刷したことを特徴とする請求項2記載の包装材料としたものである。
【0014】
さらに、 酸素検知機能を有するインキを印刷した面にポリエチレンフィルムを貼り合わせたことを特徴とする請求項3記載の包装材料としたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を具体的に説明する。
本発明における酸素インジケーターインキは、酸化還元色素と還元剤およびバインダー樹脂を主成分とし、これに酸化触媒として遷移金属イオンを供給するための遷移金属塩を加え、さらに保湿剤としてグリセリンを加えたもので、溶媒としては、色素および還元剤の溶解性から水およびアルコールの混合系が適する。このような構成にすることで、インキを印刷した後、溶媒が揮発してバインダー樹脂による塗膜が形成され、塗膜中に酸化還元色素と還元剤および遷移金属塩さらに多少の水分が分散した状態になる。よって、酸素の存在下では色素が酸化色を示し、無酸素下では還元剤の働きで色素が還元色を示すことになり、酸素の検知が可能となる。
【0016】
酸化還元色素としては、メチレンブルー、ニューメチレンブルー、ニュートラルレッド、インジゴカルミン、サフラニンT、フェノサフラニン、カプリブルー、ナイルブルー、ジフェニルアミン、キシレンシアノール、ニトロジフェニルアミン、フェロイン、N−フェニルアントラニル酸等が使用できるが、特にメチレンブルーが好適である。還元剤としては、アスコルビン酸、エリソルビン酸やその塩、アスコルビン酸塩、D−アラビノース、D−エリスロース、D−ガラクトース、D−キシロース、D−グルコース、D−マンノース、D−フラクトース、D−ラクトースなどの還元糖、第一スズ塩、第一鉄塩等の金属塩等が使用できる。バインダー樹脂は、各インキ成分を基材上に固着するために用いられ、親水基と疎水基を合わせ持つ樹脂が好ましい。具体的にはポリビニルアセタール樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、親水基を導入したポリエステル樹脂等があげられるが、特にポリビニルアセタール樹脂が好ましい。
【0017】
酸化触媒となる遷移金属イオンを提供するための遷移金属塩としては、水中で容易に溶けてイオン化するために塩化物および硫酸塩が好ましく、遷移金属は触媒活性の高い鉄、コバルト、マンガンが好ましい。
【0018】
本発明の酸素インジケーターは、これと一体となった包装体を提供することができる。このため、全体或いは一部分を、本発明の酸素インジケーターを用いた包装材料を用意する。本発明による酸素インジケーターインキを印刷する基材としては、一般に包装材料として用いられる透明性のフィルム材料であれば特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム等が適当である。また、セラミック蒸着フィルムに代表される透明バリアーフィルムに直接印刷されても良い。当然、酸素インジケーターを必要とする包装においては、包装内が脱酸素状態や窒素置換状態に保たれる必要があるから、酸素バリアー性の高くないフィルムに印刷した場合は、透明バリアーフィルムと積層して包装材料とし、酸素バリアー性を持たせる必要がある。
【0019】
また、酸素インジケーターインキが印刷されたフィルムを袋にしたり容器にしたりして包装体として用いるためには、フィルムがヒートシール性を持つ必要があり、よって基材フィルム上に印刷された本発明によるインジケーターの上にヒートシール層すなわち熱融着性の樹脂層が形成された包装材料とする必要がある。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
透明バリアーフィルム
セラミック蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム12μm
印刷用基材
ポリエチレンテレフタレートフィルム12μ
酸素インジケーターインキ基準液
メチレンブルー・・・・・・・・・・・・・・1.0部
アスコルビン酸・・・・・・・・・・・・・・2.5部
ポリビニルアセタール樹脂・・・・・・・・・10部
n−プロパノール・・・・・・・・・・・・・36.3部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50 部
【0021】
<実施例1>
上記酸素インジケーターインキ基準液に塩化第一鉄を重量比で100ppm添加し、ミキサーで十分に攪拌混合した。このインキを用いて、グラビア印刷機で上記印刷用基材フィルムに、直径1cmの円形柄でパターン印刷した。
さらにこの印刷基材のインジケーターインキを印刷していない面に、上記透明バリアーフィルムを貼り合せ、インジケーターインキを印刷している面には、厚さ25μmの直鎖上低密度ポリエチレンフィルムを貼り合わせて、本発明による酸素インジケーターインキが印刷されたバリアー性包装材料を得た。
【0022】
<実施例2>
酸素インジケーターインキ基準液に塩化コバルトを重量比で100ppm添加し、その他は実施例1と同様にして、本発明による酸素インジケーターインキが印刷されたバリアー性包装材料を得た。
【0023】
<実施例3>
酸素インジケーターインキ基準液に塩化マンガンを重量比で100ppm添加し、その他は実施例1と同様にして、本発明による酸素インジケーターインキが印刷されたバリアー性包装材料を得た。
【0024】
<実施例4>
酸素インジケーターインキ基準液に硫酸第一鉄を重量比で100ppm添加し、その他は実施例1と同様にして、本発明による酸素インジケーターインキが印刷されたバリアー性包装材料を得た。
【0025】
<実施例5>
酸素インジケーターインキ基準液に塩化第二銅を重量比で100ppm添加し、その他は実施例1と同様にして、本発明による酸素インジケーターインキが印刷されたバリアー性包装材料を得た。
【0026】
<実施例6>
酸素インジケーターインキ基準液に塩化第一鉄を重量比で50ppm添加し、その他は実施例1と同様にして、本発明による酸素インジケーターインキが印刷されたバリアー性包装材料を得た。
【0027】
<実施例7>
酸素インジケーターインキ基準液に塩化第一鉄を重量比で500ppm添加し、その他は実施例1と同様にして、本発明による酸素インジケーターインキが印刷されたバリアー性包装材料を得た。
【0028】
<実施例8>
酸素インジケーターインキ基準液に塩化第一鉄を重量比で10ppm添加し、その他は実施例1と同様にして、本発明による酸素インジケーターインキが印刷されたバリアー性包装材料を得た。
【0029】
<実施例9>
酸素インジケーターインキ基準液に塩化第一鉄を重量比で1000ppm添加し、その他は実施例1と同様にして、本発明による酸素インジケーターインキが印刷されたバリアー性包装材料を得た。
【0030】
<比較例1>
酸素インジケーターインキ基準液をそのまま用いて、その他は実施例1と同様にして、本発明による酸素インジケーターインキが印刷されたバリアー性包装材料を得た。
【0031】
上記実施例及び比較例の酸素インジケーターインキが印刷されたバリアー性包装材料を用いて、これを10cm×20cmのパウチに製袋し、パウチ内に酸素吸収剤を投入するとともにパウチ内を窒素置換して密封し、インジケーターの無酸素色を戻したあと、パウチを開封して酸化色への変色速度を測定した。
【0032】
その結果、表1に示すように実施例での変色スピードが比較例に比べて速く、いずれも24時間未満で変色完了した。
特に塩化第一鉄及び塩化コバルトをインキ中に100ppm濃度で添加した場合が変色スピード5時間と最も速く、同じ100ppm濃度で塩化マンガン、硫酸第一鉄も10時間以内であった。塩化第二銅は若干遅く12時間であった。
塩化第一鉄の濃度を変えて、50ppm、500ppmでは9〜10時間と100ppmの場合より多少遅くなった。10ppmと1000ppmではさらに遅くなった。
【0033】
表1 酸素インジケーターインキの変色速度
【表1】
Figure 0004062126
【0034】
【発明の効果】
本発明の酸素インジケーターおよびそれを用いた包装材料は、以上のような作用を有するから、遷移金属イオンを酸素インジケーターインキに添加することで、酸素分子による酸化還元色素の酸化反応を促進させて、変色速度を向上させた印刷タイプの酸素インジケーターおよびそれを用いた包装材料とすることができる。

Claims (4)

  1. 酸素検知機能を有するインキを基材上に印刷して成る酸素インジケーターにおいて、酸素検知機能を有するインキが、メチレンブルー及びアスコルビン酸を酸素検知反応の主成分とするインキであって、
    酸素検知機能を有するインキ中に、塩化第一鉄、塩化コバルト、塩化マンガン、塩化銅、硫酸第一鉄の少なくともいずれか一つが濃度50ppm〜500ppmの範囲で含まれることを特徴とする酸素インジケーター。
  2. 全体或いは一部分を、請求項1記載の酸素インジケーターで構成したことを特徴とする包装材料。
  3. 酸素検知機能を有するインキをグラビア印刷機で印刷用基材フィルムにパターン印刷したことを特徴とする請求項記載の包装材料。
  4. 酸素検知機能を有するインキを印刷した面にポリエチレンフィルムを貼り合わせたことを特徴とする請求項3記載の包装材料。
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