JP4061165B2 - プラズマ処理装置における絶縁樹脂シート貼付方法 - Google Patents

プラズマ処理装置における絶縁樹脂シート貼付方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマ処理装置における絶縁樹脂シート貼付方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の半導体製造装置および液晶製造装置における基板のプラズマ処理方法では、チャンバ内にガスを供給しつつチャンバ内を排気し、チャンバ内を所定の圧力に制御しながら、プラズマソースまたはチャンバ内の電極もしくはその両方に高周波電力を供給し、チャンバ内に電界を発生させ、その電界により、反応ガスをプラズマ化することにより、チャンバ内の電極上に載置された基板のプラズマ処理が行われる。このような方法によりプラズマ処理を行う場合、チャンバ内の電極部材は、耐プラズマ性を有し、電気的絶縁性ないしは高誘電性を有する表面処理や上記特性を有する樹脂シートで被覆されている。樹脂シートで電極部材を被覆することにより、シートの高誘電性を利用した電界の均一化によるプラズマ処理特性の均一化(例えば特許文献1、特許文献2)、シートの耐腐食性・高誘電性を利用したチャンバ内部材の腐食劣化防止や基板の静電チャック性を向上(例えば特許文献3)するという利点を有する。
【0003】
また、通常5インチ以下の基板サイズに対応したプラズマ処理装置において、電極に樹脂シートを貼付する場合には、クリーンルームなどのパーティクル混入に対して配慮した環境下で、接着剤が塗布された樹脂シートを、人手で対象物に貼付する方法が一般的に行われていた。しかし近年、液晶表示装置用のプラズマ処理装置の電極は、大型化の一途をたどり、現在ではメーター角基板サイズに対応した電極も存在し、このような大型電極に、大気中で人手で樹脂シートを貼付しようとすると、気泡が混入したり、貼付面に皺が発生するため、人手による貼付けは不可能であった。
【0004】
そこで、気泡の混入や、貼付面での皺の発生を回避するため、チャンバ内やチャンバ内に設置された部材に樹脂をコーティングするものとして、蒸着により成膜を形成するもの(例えば特許文献4)や、減圧下でホットプレスにより圧着するもの(例えば特許文献5)や、減圧下で、ローラで押圧して接着剤により貼付するもの(例えば特許文献6)等が挙げられる。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−198356号公報(第3〜5頁・第1図)
【特許文献2】
特開2001−217229号公報(第2〜3頁・第1図)
【特許文献3】
特開平9−289201号公報(第3〜6頁・第3図)
【特許文献4】
特開平11−236447号公報(第6〜7頁・第1図)
【特許文献5】
特開平6−151265号公報(第2〜3頁・第1図)
【特許文献6】
特開平6−115530号公報(第2〜3頁・第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記した特許文献1〜6に記載されたものは、いずれも樹脂シートを電極に貼付するために、貼付専用の設備を備えなければならず、多額の設備投資が必要であり、また、樹脂シートをメンテナンス毎に適宜貼りかえることは不可能であるため、電極に貼付された樹脂シートが劣化した場合には、電極ごとに交換せねばならず、メンテナンス時のコストアップになるという課題を有していた。
【0007】
本発明は、プラズマ処理装置のメンテナンス時に、樹脂シートの貼り替えが可能で、かつ、既存のプラズマ処理装置を用いて、気泡の混入や、皺の発生を回避でき、さらに簡便に樹脂シートを貼り替えて、メンテナンスを行うことができるプラズマ処理装置における絶縁樹脂シート貼付方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記した課題を解決するもので、駆動機構により駆動され、電極全面に対向して開口を設けた板状部材に絶縁樹脂シートを張架し、その状態で、チャンバ内を減圧し、所望の減圧下で、駆動機構を用いて、板状部材に張架された絶縁シートを、電極表面または電極表面より下方まで移動させ、樹脂シートの粘弾性により、電極面に樹脂シートをラッピングし、次に、減圧状態から、大気圧近傍までパージすることを特徴とする。減圧状態から、大気圧近傍までパージすると、樹脂シート表面から電極面に対して圧力が加わる。例えば、減圧状態から大気圧近傍までパージすると、最大で0.1MPaの押圧力が樹脂シート表面から電極面に加わることになり、従来の押圧機構に比べはるかに高い押圧力で、シートを電極面に押圧することができ、さらに、樹脂シートは、粘弾性特性を有するため、この押圧力は、樹脂シート面の中心からシート外周にかけて広がり、パージ工程において、皺や気泡の混入も回避でき、また、プラズマ処理装置のメンテナンス時には、樹脂シートの貼り替えが可能で、かつ、簡便に貼り替えることができるプラズマ処理装置における絶縁樹脂シート貼付方法を提供することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、チャンバ内を所定の圧力に制御しながら、プラズマソースまたはチャンバ内の電極もしくはその両方に高周波電力を供給してプラズマを発生させ、チャンバ内の電極上に載置された基板を処理するプラズマ処理装置において、チャンバ内を所望の圧力まで減圧する工程と、電極面に対向して張架された絶縁樹脂シートを電極表面もしくは電極表面下まで移動させ、樹脂シートを電極表面にラッピングする工程と、チャンバ内を減圧から大気圧近傍までパージする工程を有することを特徴とするプラズマ処理装置における絶縁樹脂シート貼付方法であり、電極面に対向して張架された絶縁樹脂シートを電極表面またはその下方まで移動させて、電極表面に絶縁樹脂シートをラッピングさせた状態で、減圧状態から大気圧近傍までパージすると、樹脂シート表面から電極面に対して従来の押圧機構に比べはるかに高い押圧力が加わり、樹脂シートを電極面に押圧することができ、さらに、樹脂シートは、粘弾性特性を有するため、この押圧力は、樹脂シート面中心からシート外周にかけて広がり、パージ工程において、皺や気泡の混入も回避でき、また、プラズマ処理装置のメンテナンス時には、樹脂シートの貼り替えが可能でかつ、簡便に貼り替えることができるプラズマ処理装置における絶縁樹脂シート貼付方法を提供することができる作用を有する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、絶縁樹脂シートを、電極に対して上下方向に駆動する駆動部材にて駆動され、電極寸法より大きな開口を有して、電極に対向して設けられた板状部材に張架したことを特徴とするもので、プラズマ処理装置が備える既存の駆動部材により開口部を有する板状部材を駆動することで、専用の貼付設備を必要としないため、コストを低減化できるという作用を有する。
【0011】
請求項3に記載された発明は、チャンバ内を1.0×10-4Pa以上1.0×10-2Pa以下の範囲で減圧することを特徴とするもので、チャンバ内は減圧時には高真空であるため、気泡や皺の発生しない貼付を実現できる作用を有する。
【0012】
請求項4に記載された発明は、チャンバ内を所望の減圧到達時から1秒以内で、1.0Pa以上までパージすることを特徴とするもので、短時間で1.0Pa以上までパージするので、気泡や皺の発生しない貼付を実現できる作用を有する。
【0013】
請求項5に記載された発明は、板状部材は、周縁部に設けた枠部により区画された開口、または、格子状にスリットされた開口を有することを特徴とするもので、簡単な装置により絶縁樹脂シートを貼付できる作用を有する。
【0014】
請求項6に記載の発明は、電極形状は円形で、直径が500mm以上であることを特徴とするもので、大型電極の絶縁樹脂シートの貼付に用いた場合に特に顕著な効果を奏する作用を有する。
【0015】
請求項7に記載の発明は、電極形状は方形で、対角間距離が500mm以上であることを特徴とするもので、請求項6に記載の発明と同じ作用を有する。
【0016】
請求項8に記載の発明は、絶縁樹脂シートの材質がポリイミド系樹脂材料であることを特徴とするもので、気泡や皺が少ない貼着を実現できる作用を有する。
【0017】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
〔実施の形態1〕
図1、図2に、本発明の実施の形態1のシート貼付方法を示す。
【0018】
図において、チャンバ1に設けられた上下動する駆動部材3には、電極2の全面に対向した開口を有する板状部材4が設置されている。板状部材4には、予じめ電極2に接着する面に接着剤が塗布された樹脂シート5が張架されている。この状態から、真空ポンプ6によりチャンバ1を所望の圧力まで減圧し、所望の圧力まで減圧した後に、図2に示すように、駆動部材3を電極面か電極面より下方まで移動させる。その後、パージバルブ7により大気圧近傍までパージすることにより、樹脂シート5を電極面に対して押圧し、気泡の混入や、皺の発生を回避して樹脂シートを電極面に貼付することができる。接着剤に剥離可能な材質を用いれば、この方法を利用して、簡便にメンテナンス時に貼り替えることができ、また既存のプラズマ処理装置が備える駆動部材により板状部材を駆動することで、専用の貼付設備を用いないため、コストを低減化できる。
〔実施の形態2〕
図3および図4は、本発明のシート貼付方法に用いる板状部材4の形状を示し、図3は、板状部材4の周縁部に枠部8を設けた形態を示す。半導体用のプラズマ処理装置では、電極が円形であるため、板状部材は円形になる。
【0019】
また、図4は、方形電極に樹脂シートを貼付する際に用いる板状部材4の形態を示し、格子状のスリットまたは穴の開口部9を有する。また、半導体用のプラズマ処理装置では、電極が円形になるため、板状部材4は円形になる。
【0020】
図5および図6は、550mm×670mm基板対応の液晶表示装置用のドライエッチング装置を用い、その下部電極に、あらかじめ接着剤を塗布したポリイミドシートを貼付する際に、本発明の請求項1および請求項2に記載の方法を用いて貼付した場合の効果を示す。図5は、所望の減圧時の圧力から0.1秒で1.0Paまでパージした場合の、所望の減圧時の圧力に対する、ポリイミドシートの気泡・皺の面積占有率を示すグラフである。この図から明らかな通り、減圧時の圧力が、高真空であるほど、気泡や皺の無い貼付が実現できる。また図6は、減圧時の圧力を1.0×10-4Paとし、1.0Paまでパージした時間に対する、ポリイミドシートの気泡・皺の面積占有率を示すグラフである。この図から明らかな通り、パージ時間が短いほど、気泡や皺の無い貼付が実現できることを示している。
【0021】
プラズマ処理装置には、例えばフォーカスリング等の電極に対して上下する部材が設置されているのが通常で、その駆動機構を利用して駆動部材3を駆動し、電極全面に対向して開口を設けた板状部材4を駆動する。板状部材4に絶縁樹脂シート5を張架し、その状態で、チャンバ内を減圧し、所望の減圧下で駆動機構を用いて、板状部材4に張架された絶縁樹脂シート5を電極表面または電極表面より下方まで移動させ、樹脂シートの粘弾性により、電極面に樹脂シートをラッピングする。この状態では樹脂シート5は板状部材4に押圧されていないため密着性に欠けるが、その後、減圧状態から、大気圧近傍までパージする工程を有することで、押圧機構を設けることなく、樹脂シート5を板状部材4に密着させることができる。つまり、チャンバ内には、電極にラッピングされた樹脂シートの表面上のチャンバ容積に近い空間と、電極−樹脂シート間の微小空間が存在しているが、減圧状態から大気圧近傍までパージする工程では、この空間の容積の差により、電極にラッピングされた樹脂シートの表面上の空間に対して、電極−樹脂シート間の微小空間では、コンダクタンスが大きくなり、減圧状態から大気圧近傍までパージすると、樹脂シート表面から電極面に対して圧力が加わることになる。例えば、減圧状態から大気圧近傍までパージすると、最大で0.1MPaの押圧力が樹脂シート表面に加わり、従来の押圧機構に比べはるかに高い押圧力で、シートを押圧することができる。さらに、樹脂シートは、粘弾性特性を有するため、この押圧力は、樹脂シート面の中心からシート外周にかけて広がり、これにより、減圧状態から、大気圧近傍までパージする工程において、皺や気泡の混入も回避することができる。
【0022】
以上の手段を用いることで、プラズマ処理装置のメンテナンス時には、樹脂シートの貼り替えが可能で、かつ、簡便に貼り替えることができる絶縁樹脂シート貼付方法を提供することができる。
【0023】
【発明の効果】
本発明の絶縁樹脂シート貼付方法によれば、電極面に対向して張架された絶縁樹脂シートを電極表面またはその下方まで移動させて、電極表面に絶縁樹脂シートをラッピングさせた状態で、減圧状態から、大気圧近傍までパージすることにより、樹脂シート表面から電極面に対して従来の押圧機構に比べはるかに高い押圧力が加わり、シートを電極面に押圧することができ、さらに、樹脂シートは、粘弾性特性を有するため、押圧力が樹脂シート面の中心からシート外周にかけて広がっていくことになり、パージ工程において、皺や気泡の混入も回避でき、また、プラズマ処理装置のメンテナンス時には、樹脂シートの貼り替えが可能で、かつ、簡便に貼り替えることができ、さらに従来のプラズマ処理装置が備える駆動部材により板状部材を駆動することで、コストを低減化できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示し、樹脂シートを電極に貼付する工程の前状態を示す図。
【図2】本発明の実施の形態を示し、樹脂シートを電極に貼付する工程の後状態を示す図。
【図3】本発明の電極面に対向して開口を設けた板状部材であって、電極寸法よりも大きな開口を有する部材を示す平面図。
【図4】本発明の電極面に対向して開口を設けた板状部材であって、格子状にスリットまたは穴の開口を有する板状部材を示す平面図。
【図5】減圧時の圧力に対する気泡・皺の面積占有率を示す図。
【図6】パージ時間に対する気泡・皺の面積占有率を示す図。
【符号の説明】
1 チャンバ
2 電極
3 駆動部材
4 板状部材
5 樹脂シート
6 真空ポンプ
7 パージバルブ
8 枠部
9 開口部

Claims (8)

  1. チャンバ内を所定の圧力に制御しながら、プラズマソースまたはチャンバ内の電極もしくはその両方に高周波電力を供給してプラズマを発生させ、チャンバ内の電極上に載置された基板を処理するプラズマ処理装置において、チャンバ内を所望の圧力まで減圧する工程と、電極面に対向して張架された絶縁樹脂シートを電極表面もしくは電極表面下まで移動させ、樹脂シートを電極表面にラッピングする工程と、チャンバ内を減圧から大気圧近傍までパージする工程を有することを特徴とするプラズマ処理装置における絶縁樹脂シート貼付方法。
  2. 絶縁樹脂シートを、電極に対して上下方向に駆動する駆動部材にて駆動され、電極寸法より大きな開口を有して、電極に対向して設けられた板状部材に張架したことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置における絶縁樹脂シート貼付方法。
  3. チャンバ内を1.0×10-4Pa以上1.0×10-2Pa以下の範囲で減圧することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置における絶縁樹脂シート貼付方法。
  4. チャンバ内を所望の減圧到達時から1秒以内で、1.0Pa以上までパージすることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置における絶縁樹脂シート貼付方法。
  5. 板状部材は、周縁部に設けた枠部により区画された開口、または、格子状にスリットされた開口を有することを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置における絶縁樹脂シート貼付方法。
  6. 電極形状は円形で、直径が500mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ処理装置における絶縁樹脂シート貼付方法。
  7. 電極形状が方形で、対角間距離が500mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ処理装置における絶縁樹脂シート貼付方法。
  8. 請求項1〜7に記載の絶縁樹脂シートの材質がポリイミド系樹脂材料であることを特徴とするシート貼付方法。
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