JP4061052B2 - 画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法、およびこの表面処理を施されたフェースパネルを備えた画像表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パネル表面に塗料をスプレー塗布して膜を形成する方法に関するもので、特に陰極線管やプラズマディスプレイ、液晶ディスプレイなどの画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
陰極線管や液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル等の画像表示装置において、帯電防止性や外光反射防止性等の機能を有する膜を画像表示装置用フェースパネルの表面に形成することが一般的に行われている。
【0003】
例えば、帯電防止機能を備えた反射防止膜を形成する場合、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)やITO(スズドープ酸化インジウム)などの微粒子(一般に、平均粒径が0.01μm〜0.1μmのもの)や、シリカのような固形分を含む塗料を画像表示装置のフェースパネル表面にスプレー塗布し、これを乾燥後に焼成する。
【0004】
スプレーコーティング法と呼ばれるこのような方法を用いると、塗料が基板上に衝突する際に微細な凹凸を形成しやすい。図5にモデル的に示すこのような凹凸を持った膜13は、反射光を散乱させて反射像をぼかす役割を果たすので、反射低減効果に優れており、従来、コンピュータモニタ用の画像表示装置などに形成されていた。
【0005】
また、スプレーコーティング法は、製造装置も比較的簡単であり、安価に膜を形成できるという利点もあり、従来から広く用いられてきた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フェースパネル表面に微細な凹凸を形成された画像表示装置は、高い反射低減効果を有していながら、近年好まれない傾向になってきた。この理由は、膜の微細な凹凸により、表示される画像そのものがぼかされて解像度の優れた画質が得られなかったり、膜が外光を拡散的に反射させることでフェースパネル全体が白っぽく曇って見え、画像のコントラストが劣化するためである。特に、帯電防止処理を施すための導電性微粒子や、画面のコントラストを向上させるための顔料等の微粒子を塗料に含ませる場合にスプレーコーティング法を用いると、フェースパネル表面に凹凸がより形成されやすい。
【0007】
このような理由から、最近では、凹凸の少ない塗膜を形成する技術が必要となってきた。
【0008】
塗料を用いて凹凸の少ない塗膜を形成する方法としては、フェースパネルを回転させることで塗料を薄く延べ拡げて塗布させるスピンコーティングという方法があるが、この方法では工程数が増えたり、装置が複雑になることに加え、塗料をまんべんなく拡げるために実際に塗布する量よりも多くの塗料が必要となるため材料利用率が悪いという問題がある。
【0009】
また、塗料を用いない方法では、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング、真空蒸着等の方法が知られているが、これらも装置が複雑で大がかりになるため、画像表示装置などの広範囲の面積を処理するにはあまり実用的ではない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、画像表示装置のフェースパネル表面に、帯電防止性や外光反射防止性等の機能性を持たせるために微粒子を含ませた塗料によって膜を形成する技術において、比較的簡単な装置で実現できるスプレーコーティング法を用いながら、凹凸の少ない膜を形成するものである。これによって、表面に帯電防止性や外光反射防止性等の機能性を有し、かつ解像度やコントラストの優れた画質を提供することのできる画像表示装置用フェースパネル、およびそれを備えた画像表示装置を、低コストで効率良く実現することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法は、パネルの表面に微粒子を含む塗料をスプレー塗布して一層以上の塗膜を形成する画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法であって、前記塗料の溶剤が、エチレングリコールと、プロピレングリコールエーテルと、水と、炭素数が1以上3以下のアルコールとを含み、かつ溶剤全量に対して、前記エチレングリコールを5〜10質量%、前記プロピレングリコールエーテルを30〜50質量%、前記水を20〜30質量%含むことを特徴とする。
【0012】
このようにすることで、画像表示装置用フェースパネル表面の膜の凹凸を少なくすることができる。
【0014】
このようにすることで、塗膜のムラやシミを抑制することができる。
【0015】
さらに、本発明の画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法では、前記塗料をスプレー塗布する際の前記パネルの外表面の温度が50〜90℃である。
【0016】
また、本発明の画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法では、前記塗料が前記パネルに衝突する際のスプレー圧を、0.2MPa〜0.6MPaとする。
【0017】
またさらに、本発明の画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法では、圧力が印加されたエアーによって前記塗料を噴出させるスプレーノズルを備えたエアースプレー装置を用いて前記スプレー塗布を施す。
【0018】
また、本発明の画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法では、前記パネルと前記エアースプレー装置のスプレーノズルとの距離を150mm〜220mmとし、かつ、前記スプレーノズルから噴出される前記エアーの圧力を0.3MPa〜0.6MPaとする。
【0019】
このようにすることで、簡単な装置、設定で画像表示装置用フェースパネル表面の膜の凹凸を少なくすることができる。
【0020】
本発明の画像表示装置は、パネルの表面に微粒子を含む塗料をスプレー塗布して一層以上の塗膜を形成する表面処理を施されたフェースパネルを備えた画像表示装置であって、前記塗料の溶剤が、エチレングリコールと、プロピレングリコールエーテルと、水と、炭素数が1以上3以下のアルコールとを含み、かつ溶剤全量に対して、前記エチレングリコールを5〜10質量%、前記プロピレングリコールエーテルを30〜50質量%、前記水を20〜30質量%含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の表面処理を施されたフェースパネルを備えることで、解像度やコントラストの高い画像表示装置とすることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
図2に、コンピュータモニタやテレビジョン受像機に用いられる陰極線管を示す。陰極線管1は、パネル部2の内面に画像を映し出すための蛍光体スクリーンを形成されたフェースパネル3と、ネック部4の内側に電子銃を備えたファンネル5とから構成された外囲器内にシャドウマスク等の管内部品を備えている。ここで、フェースパネル3のパネル部2の外表面には、反射防止機能を有する膜が形成されている。
【0024】
以下に、このような陰極線管のフェースパネル2の外表面に膜を形成する方法について説明する。
【0025】
予め研摩、洗浄、予熱といった処理を施したパネル部2の外表面に、スプレー装置を用いて所定の塗料を霧状に吐出させる。エアースプレー装置は、一例として図3に示すように、スプレーノズル6の内側に塗料7とエアー8とを内蔵しており、塗料吐出口9から吐出される塗料7を、エアー出口10から圧力を印加されて吹き出されるエアー8によって霧化して噴出させるものである。塗料7がパネル部2の外表面全体に均一に塗布されるよう、スプレーノズルは図4で示す矢印線11のようにパネル部2の外表面上を走査させる。
【0026】
塗料として用いる材料は、色味、導電性、硬化性といった塗膜の諸特性や塗膜の厚みを所望のものとするため、固形分1〜5質量%を含む。ここで、固形分は、コントラストを向上させる着色剤としてのカーボンブラック微粒子(平均粒径が0.08μm)、帯電防止性をもたす導電性材料としてのATO微粒子(平均粒径が0.1μm)を含んでおり、さらに硬化性をもたすためのエチルシリケートの加水分解物(シリカ分)を含んでいる。
【0027】
さらに、塗料の溶剤としては、エチレングリコール5〜10質量%、プロピレングリコールエーテル30〜50質量%、水20〜30質量%とし、残りを炭素数1以上3以下のアルコール10〜45質量%を含む。
【0028】
ここで、アルコールとは、炭素数が1以上3以下のものを言い、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール等を挙げることができる。これらのアルコールは、単独で用いても任意の割合で混合して用いてもよい。
【0029】
エチレングリコールは、沸点が197℃と非常に高く、また、表面張力が高い。本来、塗料に微粒子を混ぜると、塗膜の表面積が大きくなり乾燥が速くなるので塗料がフェースパネルに吹きつけられた瞬間の膜表面の凹凸がそのまま硬化しがちだが、前述のようにエチレングリコールの沸点が高いため、膜の乾燥過程において長時間残留して乾燥を遅らせることができる。またさらに、エチレングリコールは、その高い表面張力の作用により、塗料がパネル部に衝突した際にできる微細な凹凸を均す働きをする。ただし、その添加量は、10質量%を越える場合には、乾燥が著しく遅くなるため膜に白斑状のシミが発生する等の弊害が生じてしまう。
【0030】
プロピレングリコールエーテルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等を挙げることができるが、膜表面の凹凸を均す効果がより大きいことから、プロピレングリコールモノエチルエーテルが最も好ましい。
【0031】
そこで、プロピレングリコールモノエチルエーテルを塗料に混合させる。プロピレングリコールモノエチルエーテルは、沸点が133℃と比較的高いが、エチレングリコールほど高くはない。このことから、主に乾燥速度を調整するために用いることができ、エチレングリコールや他の溶剤との適切な割合によって、膜表面の凹凸を均しながらシミの発生を抑える役割を果たす。また、プロピレングリコールモノエチルエーテルは、霧滴状態の塗料がフェースパネルに到達するまでの間に乾燥することを抑制するので、スプレー塗布する際の塗料の塗着効率を上げる役割も果たしている。一方、また、プロピレングリコールエーテルの添加料は、50質量%を越える場合は、乾燥が著しく遅くなるため膜の塗布ムラが発生する等の弊害が生じてしまう。
【0032】
ここで、これらアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテルは、いずれも水およびそれぞれの溶剤に対して自由に混合する特徴を持ち、さらに、いずれの溶剤も比較的安価で入手が容易であるという利点も有する。
【0033】
また、水は、沸点がエチレングリコールやプロピレングリコールモノエチルエーテルほど高くないにもかかわらず、エチレングリコールよりも表面張力が高く、これも他の溶剤との適切な割合によって、塗料がフェースパネルに衝突した際にできる微細な凹凸を均す働きをする。一方、水の添加量は、30質量%を超える場合は、乾燥が著しく遅くなるため膜に白斑状のシミが発生する等の弊害が生じてしまう。
【0034】
塗布後の塗料は自然乾燥するが、この乾燥過程では沸点の低い溶剤から先に蒸発が進み、沸点の高いものが長時間塗料中に残る。最も長く塗料中に残るのはエチレングリコールであり、塗布時にスプレーノズルから噴出された塗料がフェースパネルに衝突する際に生じる凹凸を均すのに十分な乾燥時間をもつ。したがって、図1にモデル的に示すように、膜12の表面は凹凸の少ないなめらかなものとなる。
【0035】
このような膜の乾燥・焼成後の厚みを約100nm程度とすると、光透過率が70%、屈折率が約1.46となる。フェースパネル自体の屈折率が約1.54であるのに対して膜の屈折率の方が低いので、干渉作用により反射低減効果を得ることができる。この場合、JIS規格R3106に規定される分光反射率は波長560nmで最低反射率を示し、その値は、パネル部の外表面に何も膜を持たないフェースパネルでは約4.5%であるのに比べて、パネル部の外表面に膜を有するフェースパネルでは約2.0%と低くなる。つまり、このような塗料を用いて形成された膜を有するフェースパネルは反射低減効果に優れたものとなる。また膜の表面抵抗は1×109Ω/□程度であり、実用上、十分な帯電防止効果が得られる値である。
【0036】
このように、本発明によれば、設備が簡単なスプレーコーティングによって凹凸の少ないなめらかな表面の機能性膜を形成することができる。
【0037】
また、本発明の表面処理方法では、塗料の材料条件に加えて、塗料のスプレー塗布条件によっても、膜表面のなめらかさを得ることができる。
【0038】
例えば、スプレー塗布する際のパネル部の外表面の温度が低過ぎると、塗料の乾燥が遅くなり、帯状の走査ムラやシミなどの欠点が発生しやすい。またフェースパネルの外表面の温度が高過ぎると、塗料が瞬時に乾燥するため、凹凸を均すのに十分な時間がとれない。スプレー塗布する際のフェースパネルの外表面の温度は、50〜90℃の範囲であることが望ましい。
【0039】
また、塗料がパネル部に衝突する際のスプレー圧が低すぎる場合には、塗料の霧化が不十分なためできた膜の凹凸が大きくなり、光沢感のない膜となる。一方、スプレー圧が高すぎる場合には、塗料の乾燥が速まるため凹凸を均すのに十分な時間がとれず、これも膜の凹凸の原因となる。塗料がフェースパネルに衝突する際のスプレー圧は0.2MPa〜0.6MPaの範囲であることが望ましい。
【0040】
またさらに、スプレーノズルとフェースパネルとの距離も重要な要素である。スプレーノズルがフェースパネルに近すぎる場合には、膜に帯状の走査ムラが発生してしまう。反対に、スプレーノズルがフェースパネルから離れすぎる場合には、フェースパネルに到達するまでの間に乾燥してしまう霧滴の割合が高くなるため、塗着効率が悪くなり、適切な膜厚が得られない。スプレーノズルとフェースパネルとの間の距離は、150〜220mmの範囲であることが望ましい。この場合、スプレーノズルから噴出されるエアーの圧力は、0.3MPa〜0.6MPaとすることが好ましい。
【0041】
次に、塗料の材料条件によって得られる膜表面のなめらかさについて、実施例を用いて説明する。なお、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0042】
【実施例】
(実施例1)
本実施の形態の効果を調べるために、数種類の塗料を用いてフェースパネルのパネル部外表面に膜を形成し、それぞれの塗料について完成した膜の曇り度合いの比較を行った。塗布条件は、フェースパネル温度65℃、塗料がスプレーノズルから噴出される際のスプレー圧0.4MPa、塗料の吐出量10ml/min、フェースパネルとスプレーノズルとの距離200mm、スプレーノズル走査速度300mm/s、スプレーノズル走査ピッチ12.5mmとした。また、塗布時の雰囲気は、室温22℃、湿度56%とし、ここで用いるスプレーノズルは、直径0.5mmの円状の塗料吐出口の周りに、外径2.4mm、内径1.5mmのドーナツ状のエアー出口を有するものとした。
【0043】
膜の表面のなめらかさを左右するエチレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、水について、これらの割合による作用の違いを確認するため、表1〜3に示すよう各4種類ずつ計12種類の異なる塗料を用い、それぞれを塗布および自然乾燥の後、焼成炉または電気炉で160℃、20分間の焼成を行い、完成した膜の表面のなめらかさを調べた。ここでは、なめらかさを比較するための指標として膜の曇り度合いを確認することとし、JIS規格K7105に規定されるヘーズ(曇価)を測定した。また、見た目のムラやシミの有無についても調べた。なお、表中のEGはエチレングリコールを、またPGEはプロピレングリコールモノエチルエーテルを示す。
【0044】
まず、エチレングリコールの添加量による効果を確認するため、表1に示すように、プロピレングリコールモノエチルエーテル、水、固形分(例えば、ATOが30質量%、カーボンブラックが25質量%、シリカ分が45質量%の割合で混合されたもので、混合された状態においてこれらの平均粒径が90nm)を一定割合に固定し、エチレングリコールの添加量の割合を0質量%、5質量%、10質量%、15質量%と変化させた4種類の塗料1〜4を用いた。なお、エチレングリコールの添加量の割合に応じて、アルコールについても割合を変化させた。アルコールとしては、エタノール88質量%、メタノール12質量%の混合物を用いた。
【0045】
【表1】
【0046】
エチレングリコールが0質量%の塗料1の場合、ヘーズが8.2%と極端に大きく、見た目にも曇り感が強い。エチレングリコールが5質量%以上である塗料2〜4では、ヘーズが3.0%以下となり光沢感のある膜が得られるが、この内、エチレングリコールが15質量%の塗料4ではムラやシミが発生してしまう。
次に、プロピレングリコールモノエチルエーテルの添加量による効果を確認するため、表2に示すように、エチレングリコール、水、固形分を一定割合に固定し、プロピレングリコールモノエチルエーテルの添加量の割合を20質量%、30質量%、50質量%、60質量%と変化させた4種類の塗料5〜8を用いた。なお、プロピレングリコールモノエチルエーテルの添加量の割合に応じて低級アルコールについても割合を変化させた。
【0047】
【表2】
【0048】
この4種類の塗料5〜8については、いずれの場合においてもヘーズは3.0%以下と小さい。しかし、プロピレングリコールモノエチルエーテルが20重量%の塗料5では、塗着効率が悪いため適切な膜厚が得られず、目標とする特性の膜とならない。プロピレングリコールモノエチルエーテルが30質量%の塗料6および50質量%の塗料7では、光沢感のある美しい膜を形成することができる。また、プロピレングリコールモノエチルエーテルが60質量%の塗料8では、光沢感はあるものの、ムラやシミが発生する。
【0049】
次に、水の添加量による効果を確認するため、表3に示すように、エチレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、固形分を一定割合に固定し、水の添加量の割合を10質量%、20質量%、30質量%、35質量%と変化させた4種類の塗料9〜12を用いた。なお、水の添加量の割合に応じて低級アルコールについても割合を変化させた。
【0050】
【表3】
【0051】
水が10%の塗料9の場合、塗着効率が悪く、適切な膜厚が得られない。またヘーズが若干高くなる。20%以上の塗料10〜12ではヘーズが低く、見た目にも光沢感のある膜が得られるが、この内、水が35質量%の塗料12では、ムラやシミが発生する。
【0052】
このように、塗料中に含まれる溶剤を、エチレングリコール、プロピレングリコールエーテル、水、炭素数3以下のアルコールの混合物とし、それぞれの材料の添加量を規定することにより、表面がなめらかで曇りがなく、また、ムラやシミのない膜を得ることができることがわかる。前述のように、最も理想的なのは、固形分1〜5質量%としたとき、エチレングリコール5〜10質量%、プロピレングリコールモノエチルエーテル30〜50質量%、水20〜30質量%とし、残りの10〜45質量%をアルコールとすることである。
【0053】
なお、本実施の形態では、溶剤のうちのプロピレングリコールエーテルとして、プロピレングリコールモノエチルエーテルを用いた例を示したが、この代わりに、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル等を用いた場合においても、同様の効果が得られる。
【0054】
また、本実施の形態では、塗料の溶剤を、エチレングリコール、プロピレングリコールエーテル、水、炭素数が1以上3以下のアルコールからなるものとしたが、これら以外に別の材料が混合されている場合を妨げるものではない。例えば、レベリング剤や界面活性剤等が添加されていてもよい。
【0055】
またさらに、本実施の形態では、塗料中の固形分として、着色剤であるカーボンブラックの微粒子、および導電性材料であるATOの微粒子を含ませたが、これらに限るものではない。着色剤として染料や顔料を用いてもよく、また、導電性材料としてITOの微粒子を用いてもよい。さらに、例えば、銀とパラジウムの合金のように、膜の電気伝導度を下げるような材料を塗料の中に含ませることによって電磁波遮蔽機能を持たせることもできる。なお、このように塗料に含ませる材料の微粒子は、平均粒径が0.01μm〜0.1μmであるものが望ましい。
【0056】
またさらに、本実施の形態では、本発明の表面処理方法による膜をフェースパネルのパネル部の外表面に直接形成し、一層のみの膜構成とする例を示したが、例えば、本発明の表面処理方法による膜を形成した上に、別の何らかの方法で上層の膜を形成したり、あるいは既に別の何らかの方法で形成された膜の表面上に重ねて本発明の表面処理方法による膜を上層として形成するなどして、二層以上の膜構成にしてもよい。ここで、本発明の表面処理方法によって形成する膜を下層として用い、上層に別の方法によって膜を形成する場合には、下層を特に硬化させる必要がないため、下層には本実施の形態で用いたようなシリカ分を必ずしも必要とはしない。
【0057】
また、本実施の形態のように膜をフェースパネルのパネル部の外表面に直接形成するものに限らず、フェースパネルとは別部材の板状パネルやシート状パネルの上にこのような膜を形成したものをフェースパネルのパネル部に貼付してもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、本発明の表面処理を施す画像表示装置として陰極線管を例に挙げて説明したが、これに限らず、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等、他の画像表示装置のフェースパネルにも本発明は適用され得る。
【0059】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、微粒子を含む塗料中の溶剤に、エチレングリコールと、プロピレングリコールエーテルと、水と、炭素数1以上3以下の低級アルコールを含ませ、かつ溶剤全量に対して、前記エチレングリコールを5〜10質量%、前記プロピレングリコールエーテルを30〜50質量%、前記水を20〜30質量%含ませることにより、反射防止効果を有しかつ表面がなめらかな膜を、スプレーコーティング法により実現することができる。これにより、反射防止や帯電防止等の機能性を有することに加え、解像度やコントラストの優れた画質を提供するフェースパネル、およびこのフェースパネルを備えた画像表示装置を、材料利用率の問題や装置の複雑さといったことなく低コストで効率良く実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態によって形成されるパネル部と膜の部分断面モデル図。
【図2】本発明の実施の形態に画像表示装置の一つとして挙げられた陰極線管の外観概略図。
【図3】本発明の実施の形態で用いられるスプレーノズルの部分断面図。
【図4】本発明の実施の形態で用いられるスプレーノズルの走査の一例を示す図。
【図5】従来の方法で形成されるパネル部と膜の部分断面モデル図。
【符号の説明】
1 陰極線管
2 パネル部
3 フェースパネル
4 ネック部
5 ファンネル
6 スプレーノズル
7 塗料
8 エアー
9 塗料吐出口
10 エアー出口
12,13 膜
Claims (9)
- パネルの表面に微粒子を含む塗料をスプレー塗布して一層以上の塗膜を形成する画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法であって、
前記塗料の溶剤が、エチレングリコールと、プロピレングリコールエーテルと、水と、炭素数が1以上3以下のアルコールとを含み、かつ溶剤全量に対して、前記エチレングリコールを5〜10質量%、前記プロピレングリコールエーテルを30〜50質量%、前記水を20〜30質量%含むことを特徴とする画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法。 - 前記塗料が、固形分を1〜5質量%含むことを特徴とする請求項1記載の画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法。
- 前記微粒子が、導電性微粒子を含むことを特徴とする請求項1記載の画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法。
- 前記微粒子の平均粒径が、0.01μm〜0.1μmである請求項1記載の画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法。
- 前記塗料をスプレー塗布する際の前記パネルの表面の温度が、50〜90℃であることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法。
- 前記塗料が前記パネルに衝突する際のスプレー圧を、0.2MPa〜0.6MPaとすることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法。
- 圧力が印加されたエアーによって前記塗料を噴出させるスプレーノズルを備えたエアースプレー装置を用いて、前記スプレー塗布を施すことを特徴とする請求項1記載の画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法。
- 前記パネルと前記エアースプレー装置のスプレーノズルとの距離を150mm〜220mmとし、かつ、前記スプレーノズルから噴出される前記エアーの圧力を0.3MPa〜0.6MPaとすることを特徴とする請求項7記載の画像表示装置用フェースパネルの表面処理方法。
- パネルの表面に微粒子を含む塗料をスプレー塗布して一層以上の塗膜を形成する表面処理を施されたフェースパネルを備えた画像表示装置であって、
前記塗料の溶剤が、エチレングリコールと、プロピレングリコールエーテルと、水と、炭素数が1以上3以下のアルコールとを含み、かつ溶剤全量に対して、前記エチレングリコールを5〜10質量%、前記プロピレングリコールエーテルを30〜50質量%、前記水を20〜30質量%含むことを特徴とする表面処理を施されたフェースパネルを備えた画像表示装置。
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