JP4060736B2 - ガス拡散層およびこれを用いた燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子電解質型燃料電池用のガス拡散層、およびこれを用いた高分子電解質型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子電解質型燃料電池は、水素などの燃料ガスと空気などの酸化剤ガスとを白金などの触媒層を有するガス拡散電極で電気化学的に反応させ、電気と熱を同時に供給するものである。このような高分子電解質型燃料電池の一般的な構成を図1に示す。
【0003】
図1において、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜1の両面には、白金系の金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする触媒層2が密着して配置されている。さらに、触媒層2の外面には、ガス透過性と導電性とを兼ね備えた、ガス拡散層3をこれに密着して配置されている。このガス拡散層3と触媒層2とにより電極4が構成される。また、電極4と高分子電解質膜1とにより電解質膜電極接合体(MEA)5が構成される。
【0004】
電極4の外側には、MEA5を機械的に接合するとともに、隣接するMEA同士を互いに電気的に直列に接続する導電性セパレータ板7が配置されている。この導電性セパレータ板7の一方の面には、電極4に反応ガスを供給し、反応により発生した水および余剰のガスを運び去るためのガス流路6が形成されている。このようにして作製される単電池を一方向に積み重ねて積層体を構成し、所定の締結圧で積層方向に締結されている。
【0005】
ここで、前記ガス拡散層3としては、従来からカーボン繊維不織布またはカーボン繊維織布などが用いられ、例えば特許文献1および2においては、カーボン繊維織布またはカーボン繊維織布にフッ素樹脂とカーボンブラックとを含む層をコーティングして構成されたガス拡散層が用いられている。このガス拡散層は、カーボン繊維不織布と比較するとガス拡散性および余剰な水分の排出能力に優れており、高性能な高分子電解質型燃料電池を実現し得ると提唱されている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭58−165254号公報
【特許文献2】
特開平10−261421号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図1に示す従来の高分子電解質型燃料電池の電極におけるガス拡散層3の役割は、▲1▼反応ガスを電極4に供給すること、▲2▼高分子電解質膜1や触媒層2を湿潤状態に保つこと、▲3▼過剰な反応生成水をMEA5の外に排出すること、および▲4▼MEA5とセパレータ7との間の導電性を確保することの4点が挙げられる。
【0008】
カーボン繊維織布を基材として用いるガス拡散層を含む高分子電解質型燃料電池は、上記▲1▼および▲3▼に優れ、高加湿ガスを用いて作動させてもフラッディングを起こさずに高い性能を示す。しかし、カーボン繊維織布の面内においては、織りの状況に起因して粗密分布が大きく、高分子電解質膜に局所的に大きな圧力をかけ、大きなダメージを与えてしまうことがある。そのため、経時的に高分子電解質膜が破壊され、最終的にはピンホールが発生し発電不能となる可能性がある。
【0009】
また、カーボン繊維不織布を基材とするガス拡散層を含む高分子電解質型燃料電池においては、カーボン繊維織布を用いた場合より、高分子電解質膜へのダメージは少ない。しかし、特に▲3▼に優れない傾向にあるため、高加湿ガスを用いた作動には適さない。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来技術における問題点を解決し、高加湿条件における作動にも優れ、高分子電解質膜に対するダメージが少なく、かつ耐久性にも優れるガス拡散層、ならびにこのようなガス拡散層を用いた高分子電解質型燃料電池を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シート状のガス拡散層であって、前記ガス拡散層の面内において、カーボン繊維織布からなる部分と、カーボン繊維不織布からなる部分とが存在しており、前記カーボン繊維織布からなる部分が、前記面内において、前記カーボン繊維不織布からなる部分で挟まれもしくは囲まれていることを特徴とするガス拡散層を提供する。
前記ガス拡散層においては、前記カーボン繊維不織布の厚みTPの前記カーボン繊維織布の厚みTClに対する比TP/TClが、0.7〜0.9であるのが好ましい。
【0012】
また、前記カーボン繊維織布の面積SClの前記ガス拡散層の全面積Sに対する比SCl/Sが、0.5〜0.9であるのが好ましい。
また、前記カーボン繊維不織布が格子の形状を有し、前記格子の窓状開口部に前記カーボン繊維織布が組み合わされているのが好ましい。
【0013】
さらに本発明は、水素イオン伝導性高分子電解質膜、ならびに前記電解質膜を挟む燃料電極および酸化剤電極で構成され、
前記燃料電極および前記酸化剤電極が、触媒層と上記ガス拡散層とを含むことを特徴とする高分子電解質型燃料電池をも提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、シート状のガス拡散層であって、前記ガス拡散層の面内において、カーボン繊維織布からなる部分と、カーボン繊維不織布からなる部分とが存在しており、前記カーボン繊維織布からなる部分が、前記面内において、前記カーボン繊維不織布からなる部分で挟まれもしくは囲まれていることを特徴とするガス拡散層に関する。
【0015】
そして、本発明は、水素イオン伝導性高分子電解質膜、ならびに前記電解質膜を挟む燃料電極および酸化剤電極で構成され、前記燃料電極および前記酸化剤電極が、触媒層と上記ガス拡散層とを含むことを特徴とする高分子電解質型燃料電池をも提供する。
【0016】
ここで、本発明に係る高分子電解質型燃料電池の構造は、図1を用いて上述した従来のものと同じでよい。すなわち、高分子電解質膜1の両面に、白金系の金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする触媒層2が密着して配置されている。さらに、触媒層2の外面には、本発明のガス拡散層3をこれに密着して配置される。このガス拡散層3と触媒層2とにより電極4が構成される。また、電極4と高分子電解質膜1とにより電解質膜電極接合体(MEA)5が構成される。
【0017】
電極4の外側には、MEA5を機械的に接合するとともに、隣接するMEA同士を互いに電気的に直列に接続する導電性セパレータ板7が配置されている。この導電性セパレータ板7の一方の面には、電極4に反応ガスを供給し、反応により発生した水および余剰のガスを運び去るためのガス流路6が形成されている。このようにして作製される単電池を一方向に積み重ねて積層体を構成し、所定の締結圧で積層方向に締結される。
【0018】
本発明に係る高分子電解質型燃料電池においては、カーボン繊維不織布と、カーボン繊維不織布で挟まれもしくは囲まれたカーボン繊維織布と、から構成されるガス拡散層を具備することにより、カーボン繊維織布と接する触媒層が高い耐フラッディング性を有する。したがって、本発明に係る高分子電解質型燃料電池は、高加湿ガスによる作動に適している。
【0019】
また、カーボン繊維不織布の部分がセパレータと触媒層との間の適度なスペーサーとして存在するため、過剰な局所圧力が高分子電解質膜にかかるのを抑制することができる。したがって、本発明に係る高分子電解質型燃料電池は耐久性に優れている。
【0020】
また、本発明に係るガス拡散層では、燃料電池に組み込む前の段階、すなわち、電解質膜電極接合体(MEA)を作成する前の段階において、前記カーボン繊維不織布の厚みTPの前記カーボン繊維織布の厚みTClに対する比TP/TClが、0.7〜0.9を満たすのが好ましい。
【0021】
この範囲が満たされれば、圧縮されにくいカーボン繊維不織布の部分が適度なスペーサーとしての役割を果たし、圧縮されやすいカーボン繊維織布の部分が過剰に圧縮され、高分子電解質膜に局所部的な圧力がかかることを抑制することができ、耐久性に優れる高分子電解質型燃料電池が得られる。
【0022】
さらに、前記カーボン繊維織布の面積SClの前記ガス拡散層の全面積Sに対する比SCl/Sが、0.5〜0.9であるの好ましい。この範囲が満たされると、耐フラッディング性が高くなり、高加湿ガスを用いる燃料電池の作動に適し、好ましい。
【0023】
ここで、本発明に係るガス拡散層の好ましい態様について説明する。
図2は、本発明に係るガス拡散層の一実施の形態を示す上面図である。図2に示すように、カーボン繊維不織布からなる部分25が格子の形状を有し、格子の窓状開口部にカーボン繊維織布からなる部分24が組み合わされている。
【0024】
このように、カーボン繊維不織布からなる部分25が格子状に形成され、その窓状開口部にカーボン繊維織布からなる部分24が組み合わされていることにより、耐フラッディング性を保持しつつ、カーボン繊維不織布からなる部分25がセパレータ−触媒層間のより適度なスペーサーとして存在するため、圧力分布が均一化され、耐久性により優れた高分子電解質型燃料電池を得ることができる。
【0025】
この場合、格子状の部分25の面積の、窓状の部分24の部分の面積に対する比は、上述のように、窓状のカーボン繊維織布の部分24の面積SClのガス拡散層の全面積Sに対する比SCl/Sが、0.5〜0.9となるように設定すればよい。この範囲が満たされると、耐フラッディング性が高くなり、高加湿ガスを用いる燃料電池の作動に適し、好ましい。なお、部分25と部分24の厚さは同じである。
【0026】
また、組み合わせる方法ついては、単に格子の窓部分にカーボン繊維織布からなる部分24をはめ込むだけでもよい。また、ハンドリングおよび密着性向上の観点から、ホットプレスによる熱圧着を行ってもよい。
【0027】
そして、図3は、図2に示す本発明に係るガス拡散層を用いた電解質膜電極接合体(MEA)の概略縦断面図である。図3に示すように、水素イオン伝導性の高分子電解質膜23の両側には触媒層22が設けられており、触媒層22に面してガス拡散層21が配置されている。ガス拡散層21が触媒層22に面する部分には撥水層21aが設けられている。そして、ガス拡散層21は、カーボン繊維不織布の部分25とカーボン繊維織布の部分24を有する。
【0028】
つぎに、図4は、本発明に係るガス拡散層の別の実施の形態を示す上面図である。図4に示すように、カーボン繊維不織布からなる細い帯状の部分25’と、カーボン繊維織布からなる太い帯状の部分24’とが組み合わされている。
【0029】
組合せる場合は、細い帯状部分25’と太い帯状部分24’を交互に配置すればよい。また、ハンドリングおよび触媒層との密着性の観点から、ホットプレスによる熱圧着を行ってもよい。
この構造によれば、格子状の組合せに比べ、シート状またはロール状で供給されるカーボン繊維基材を有効に使用でき、コストダウンできるというメリットがある。
【0030】
この場合も、細い帯状の部分25’の面積の、太い帯(短冊)状の部分24’の部分の面積に対する比は、上述のように、太い帯状のカーボン繊維織布の部分24’の面積SClのガス拡散層の全面積Sに対する比SCl/Sが、0.5〜0.9となるように設定すればよい。この範囲が満たされると、耐フラッディング性が高くなり、高加湿ガスを用いる燃料電池の作動に適し、好ましい。なお、この場合の部分25’と部分24’の厚さも同じであればよい。
【0031】
そして、図5は、図4に示す本発明に係るガス拡散層を用いた電解質膜電極接合体(MEA)の概略縦断面図である。図5に示すように、水素イオン伝導性の高分子電解質膜23’の両側には触媒層22’が設けられており、触媒層22’に面してガス拡散層21’が配置されている。ガス拡散層21’が触媒層22’に面する部分には撥水層21a’が設けられている。そして、ガス拡散層21’は、カーボン繊維不織布の部分25’とカーボン繊維織布の部分24’を有する。
【0032】
本発明においてはガス拡散層の構成に特徴を有するため、これを用いる高分子電解質型燃料電池のその他の構成要素については、従来公知のものを用いることができる。
以下に、図面を参照しながら実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0033】
【実施例】
《実験例1》
導電性カーボン粒子であるケッチェンブラックECに、平均粒径約30Åの白金粒子を担持させた触媒担持粒子(田中貴金属(株)製のTEC10E50E、白金量50重量%)を酸化剤電極(カソード)側に用いた。この触媒担持粒子を、高分子電解質分散液に、高分子電解質とカーボンとの重量比が1:1となるように分散させ、スラリーを得た。
【0034】
ここで、高分子電解質分散液としては10重量%濃度のパーフルオロカーボンスルホン酸(米国デュポン社製のSE10072)を用いた。上記スラリーを、厚さ50μmのポリプロピレンシートに白金重量が0.50mg/cm2となるようバーコーターで塗布し、室温で乾燥し、カソード側の触媒層を形成した。
【0035】
一方、ケッチェンブラックECに、白金とルテニウムの合金を担持させた触媒担持粒子(田中貴金属(株)製のTEC61E54、白金量30wt%、ルテニウム量24wt%)を燃料電極(アノード)側の触媒担持粒子として用いた。この触媒担持粒子を、高分子電解質分散液に、高分子電解質とカーボンとの重量比が1:1.2となるように分散させ、スラリーを得た。
【0036】
ここで、高分子電解質分散液としては、10重量%濃度のパーフルオロカーボンスルホン酸(デュポン社製のSE10072)を用いた。上記スラリーを、厚さ50μmのポリプロピレンシートに白金重量が0.35mg/cm2となるようバーコーターで塗布し、室温で乾燥し、アノード側の触媒層を形成した。
【0037】
次に、上述のように塗布後のプロピレンシートを打ち抜き型で所定の電極サイズ(120mm角)に切断し、切断後のプロピレンシートを、水素イオン電導性高分子電解質膜(米国ゴア社製のGore select膜)のそれぞれの面に、130℃および20kg/cm2の条件で圧接し、カソード側の触媒層とアノード側の触媒層をポリプロピレンシートから高分子電解質膜に熱転写した。
【0038】
一方、ガス拡散層を形成するために、厚さ450mのカーボン繊維織布と厚さ360μmのカーボン繊維不織布(東レ(株)製のTGP−H−120)とを、フッ素樹脂含有の水性ディスパージョン(ダイキン工業(株)製のネオフロンND1)に含浸した。その後、前記カーボン繊維織布およびカーボン繊維不織布を乾燥し、400℃および30分間の条件で加熱することにより撥水性を与えた。
【0039】
さらに、前記カーボン繊維織布およびカーボン繊維不織布のそれぞれの一方の面に、ポリテオラフルオロエチレン(PTFE)微粉末の分散液に導電性カーボン粉末を混合して得られたインクを、スクリーン印刷法を用いて塗布し、撥水層を形成した。このとき、撥水層の一部を、ガス拡散層の中に埋め込んだ。撥水層形成後のカーボン繊維織布およびカーボン繊維不織布の厚みはそれぞれ表1に示した。このときのカーボン繊維織布の厚み(TCl)およびカーボン繊維不織布の厚み(TP)の関係はTP/TCl=0.82であった。
【0040】
【表1】
【0041】
次に、図2に示すように、前記カーボン繊維不織布は格子状に打ち抜き、前記カーボン繊維織布を格子に組み合わさる窓状に打ち抜いた。窓の一辺の長さ(窓辺)aおよび格子の幅(枠幅)bを表2に示した。そして、両者を組み合わすことによって、本発明に係るガス拡散層を作製した。
【0042】
【表2】
【0043】
上述のようにして得られたガス拡散層を所定のサイズに打ち抜き、両面に触媒層を備えた高分子電解質膜を2枚のガス拡散層で挟持した。得られた積層体の構成は図3の概略縦断面図に示したとおりであった。そして、ガス拡散層を構成する不織布部分の外周部には、シリコンゴム/ポリエチレンテレフタレート/シリコンゴムの3層積層構造を有する複合材料で構成されたガスケットを位置合わせし、130℃および10kgf/cm2の条件で10分間熱圧着して電解質膜電極接合体(MEA)を得た。このMEAを用いて構成した単電池を電池Aとした。
【0044】
ガス拡散層をカーボン繊維織布のみを用いて構成した以外は、実施例1と同様にして単電池を作製した。この単電池を電池Bとした。
また、ガス拡散層をカーボン繊維不織布のみを用いて構成した以外は、実施例1と同様にして単電池を作製した。この単電池を電池Cとした。
【0045】
[評価]
電池A〜Cについて放電試験を行った。電池運転条件については、アノード側に水素を流し、カソード側に空気を流し、電池温度は70℃に保持した。加湿条件としては、水素ガスが70℃の露点を有するように設定し、空気が70℃の露点を有するように設定した。燃料利用率80%および酸素利用率40%で、電流密度を変化させたときの電圧変化(IV曲線)および電流密度0.2A/cm2での電圧の経時的変化を測定した。
【0046】
まず、IV曲線を図6に示した。電流密度0A/cm2での開回路電圧を比較すると、電池C>電池A>>電池Bであることがわかる。これは、カーボン繊維織布のみで構成されるガス拡散層では、カーボン繊維織布の面内において織りに起因して生じる粗密分布が存在し、織りが重なっている密な部分が触媒層に接する部分には局所圧力がかかり、高分子電解質膜にダメージを与えていたためであると考えられた。
【0047】
このように局所圧力が生じている部分では、電気的な微小短絡が生じ、また高分子電解質膜が極端に薄層化しているため、対極へのガスリークが大きくなり、開回路電圧が低下した。また、電流密度が0.1〜0.8A/cm2の範囲において、電池電圧は、電池B>電池A>>電池Cとなった。これは、カーボン繊維不織布のみで構成されるガス拡散層は、ガス拡散性および電極中の余剰な水分を電池外への排出性が低く、電池電圧が低下したためであった。
【0048】
次に、電流密度0.2A/cm2での経時的電圧変化を図7に示した。本発明の実施例に係る電池Aは、初期電圧に対して10000時間で約7mV低下という非常に低い劣化率を示し、長期の連続運転において優れた性能を示した。これに比較して、電池Cの電圧は急激に低下し、5000時間後には0.4Vまで低下した。電池Cではガス拡散性および排水性に劣るカーボン繊維不織布をガス拡散層に用いているため、ガス拡散層からフラッディングが進行し、急激に電圧が低下したと考えられた。
【0049】
また、電池Bの電圧は、徐々にではあるが低下しており、初期電圧に対して10000時間で約50mV低下した。電池Bはカーボン繊維織布をガス拡散層に用いたため、ガス拡散性および排水性に優れ初期電圧は非常に高いが、初期より発生している微小短絡および対極へのガスリークにより、経時的に高分子電解質膜が劣化したと考えられた。
【0050】
以上のように、本実施例に基づくガス拡散層を用いて燃料電池を構成すると、初期電圧が高く、経時的な電圧低下が非常に小さい優れた燃料電池を実現することができる。
【0051】
《実験例2》
実施例1と同様にして撥水化処理を施しかつ撥水層を設けたカーボン繊維織布およびカーボン繊維不織布を用い、図2に示す構造を有する本発明に係るガス拡散層を作製した。ここで、カーボン繊維不織布およびカーボン繊維織布の厚み、TP/TCl、カーボン繊維不織布からなる部分25の幅bおよびカーボン繊維織布からなる部分24の幅a、ならびにSCl/Sを表3および4に示すように設定した。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
電池の放電試験を行った。電池運転条件は、アノード側に水素を、カソード側に空気を流し、電池温度は70℃に保持した。加湿条件は、水素ガスは70℃の露点に、空気は70℃の露点に設定した。燃料利用率80%、酸素利用率40%、電流密度0.2A/cm2での経時的電圧変化を測定した。
各組合せによる電池の初期電圧および10000時間後の電圧をそれぞれ表5に示した。
【0055】
【表5】
【0056】
組み合わせるガス拡散層の厚みの比率(TP/TCl)が小さくなるとカーボン繊維織布への圧力分布が大きくなるため、格子状のカーボン繊維不織布の部分のスペーサーとしての効果が減少するため、微小短絡および対極へのガスリークが起こり、耐久性が低下した。またTP/TClが大きすぎると、カーボン繊維織布への圧力分布が小さくなり、電池抵抗が増大し電池電圧が低下した。
【0057】
次に、組み合わせるガス拡散層の全面積に占めるカーボン繊維織布の比率(SCl/S)が小さくなりすぎるとガス拡散層全体としてフラッディング傾向が大きくなり劣化率が増大した。またSCl/Sが大きくなりすぎるとカーボン繊維織布への圧力分布が大きくなるため、格子状カーボン繊維不織布のスペーサーとしての効果が減少するため、微小短絡および対極へのガスリークが起こり、耐久性が低下した。
【0058】
以上より、本発明において、組み合わせるガス拡散層の厚みの比率(TP/TCl)は0.7以上0.9以下が好ましく、面積の比率(SCl/S)は0.5以上0.9以下が好ましい。
【0059】
《実験例3》
実施例1と同様にして撥水化処理を施しかつ撥水層を設けたカーボン繊維織布およびカーボン繊維不織布を用い、図4に示す構造を有する本発明に係るガス拡散層を作製した。ここで、カーボン繊維不織布およびカーボン繊維織布の厚み、TP/TCl、カーボン繊維不織布からなる部分25の幅b’およびカーボン繊維織布からなる部分24の幅a’、ならびにSCl/Sを表6および7に示すように設定した。なお、得られた積層体の構成は図5の概略縦断面図に示したとおりであった。
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
電池の放電試験を行った。電池運転条件は、アノード側に水素を、カソード側に空気を流し、電池温度は70℃に保持した。加湿条件は、水素ガスは70℃の露点に、空気は70℃の露点に設定した。燃料利用率80%、酸素利用率40%、電流密度0.2A/cm2での経時的電圧変化を測定した。
各組合せによる電池の初期電圧および10000時間後の電圧をそれぞれ表8に示した。
【0063】
【表8】
【0064】
表8からわかるように、ほぼ実験例2と同様の結果が示された。これよりガス拡散層が、TP/TClが0.7以上0.9以下であり、さらにSCl/Sが0.5以上0.9以下であれば組合せのレイアウトにかかわらず同様の効果が得られる。
【0065】
【発明の効果】
以上のように、本発明により、本発明は上記従来技術の課題を解決する高加湿作動にも優れ、水素イオン電導性高分子電解質膜にダメージが少なく耐久性にも優れたガス拡散層および上記ガス拡散層からなる高分子電解質型燃料電池を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】高分子電解質型燃料電池の一般的な構成を示す概略縦断面図である。
【図2】本発明に係るガス拡散層の一実施の形態を示す上面図である。
【図3】図2に示す本発明に係るガス拡散層を用いた電解質膜電極接合体(MEA)の概略縦断面図である。
【図4】本発明に係るガス拡散層の別の実施の形態を示す上面図である。
【図5】図4に示す本発明に係るガス拡散層を用いた電解質膜電極接合体(MEA)の概略縦断面図である。
【図6】本発明の実施例において得られたIV曲線である。
【図7】本発明の実施例において得られた電圧の経時的変化を示す図である。
【符号の説明】
1 高分子電解質膜
2 触媒層
3 ガス拡散層
4 電極
5 電解質膜電極接合体(MEA)
6 ガス流路
7 セパレータ
21 ガス拡散層
21a 撥水層
22 触媒層
23 高分子電解質膜
24 カーボン繊維織布
25 カーボン繊維不織布
Claims (5)
- シート状のガス拡散層であって、
前記ガス拡散層の面内において、カーボン繊維織布からなる部分と、カーボン繊維不織布からなる部分とが存在しており、
前記カーボン繊維織布からなる部分が、前記面内において、前記カーボン繊維不織布からなる部分で挟まれもしくは囲まれていることを特徴とするガス拡散層。 - 前記カーボン繊維不織布の厚みTPの前記カーボン繊維織布の厚みTClに対する比TP/TClが、0.7〜0.9であることを特徴とする請求項1記載のガス拡散層。
- 前記カーボン繊維織布の面積SClの前記ガス拡散層の全面積Sに対する比SCl/Sが、0.5〜0.9であることを特徴とする請求項1または2記載のガス拡散層。
- 前記カーボン繊維不織布が格子の形状を有し、前記格子の窓状開口部に前記カーボン繊維織布が組み合わされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガス拡散層。
- 水素イオン伝導性高分子電解質膜、ならびに前記電解質膜を挟む燃料電極および酸化剤電極で構成され、
前記燃料電極および前記酸化剤電極が、触媒層と請求項1〜4のいずれかに記載のガス拡散層とを含むことを特徴とする高分子電解質型燃料電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003061512A JP4060736B2 (ja) | 2003-03-07 | 2003-03-07 | ガス拡散層およびこれを用いた燃料電池 |
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