JP4060470B2 - ねじ固定プラグとこのプラグとねじの組合せ体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、コンクリートやモルタル等の建築物にねじを用いて器具や器材を取り付けるために使用するねじ固定プラグとこのプラグとねじの組合せ体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンクリートやモルタル等の建築物にねじを用いて器具や器材を取り付ける方法は、コンクリートやモルタルに下孔を穿設した後、この下孔内に円筒状のプラグを挿入し、コンクリートやモルタルに重ねた器具や器材にねじを挿通し、このねじを下孔内のプラグにねじ込むことにより、ねじがプラグを拡張し、コンクリートやモルタルに対して器具や器材を締結するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような従来のプラグは、ねじのねじ込みで均等に拡張して下孔の内周面に圧着し、ねじと下孔の間の空間の発生をなくすことにより締結力を得ようとするものであるが、拡張したプラグの外面と、コンクリート又はモルタルの内壁面の摩擦によって、プラグとコンクリート又はモルタルとの滑りを防ぐ構造であるために、材質的に脆くて壊れやすい性質のコンクリートやモルタルに対して空転が発生しやすいという問題がある。
【0004】
そこで、この発明の課題は、下孔に挿入したプラグに対してねじをねじ込むことにより、プラグが不均一に変形移動し、ねじ山が下孔とプラグの両者にそれぞれ直接食い込み、材質的に脆くて壊れやすい性質のコンクリートやモルタルに対してねじ山の食い込み量を十分に確保でき、しかも、プラグによる締結力の強化が図れるねじ固定プラグと、このプラグとねじの組合せ体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記のような課題を解決するため、請求項1の発明は、柔軟性のある材質を用いた胴部の一端に該胴部の外周よりも外方に突出した頭部を連成し、この頭部にねじを差し込むことのできる開口部を設け、前記胴部が軸方向に沿って二分され、この胴部の分割された部分の対向面が外広がりで中心に向かって狭くなる傾斜面になっている構成を採用したものである。
【0006】
請求項2の発明は、柔軟性のある材質を用いた胴部の一端に該胴部の外周よりも外方に突出した頭部を連成し、この頭部にねじを差し込むことのできる開口部を設け、前記胴部が先端部分が連なる状態で軸方向に沿って二分され、この胴部の分割された部分の対向面が外広がりで中心に向かって狭くなる傾斜面になっている構成を採用したものである。
【0007】
請求項3の発明は、柔軟性のある材質を用いた胴部の一端に該胴部の外周よりも外方に突出した頭部を連成し、この頭部にねじを差し込むことのできる開口部を設け、前記頭部から胴部が該胴部の先端部分が連なる状態で軸方向に沿って二分され、この胴部の分割された部分の対向面が外広がりで中心に向かって狭くなる傾斜面になっている構成を採用したものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の発明において、胴部の分割された部分が、対向面間に設けた薄い可破壊膜で接続されている構成を採用したものである。
【0009】
請求項5の発明は、柔軟性のある材質を用いた胴部の一端に該胴部の外周よりも外方に突出した頭部を連成し、この頭部にねじを差し込むことのできる開口部を設け、前記頭部から胴部の先端までが軸方向に沿って二分され、胴部の分割された部分が、対向面間に設けた薄い可破壊膜で接続され、該胴部の分割された部分の対向面が外広がりで中心に向かって狭くなる傾斜面になっている構成を採用したものである。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の発明において、胴部の軸心に対し、頭部が偏心して設けられている構成を採用したものである。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れかに記載のねじ固定プラグとねじとの組合せからなり、ねじの先端をねじ固定プラグの頭部に設けた開口部に螺合し、ねじの先端にねじ固定プラグを延長状にセットした構成を採用したものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0013】
図1と図2に示す第1の実施の形態において、ねじ固定プラグ1は、プラスチック等の柔軟性のある材質を用いた胴部2の一端に、短い円軸部3とその上端に胴部2よりも大径の頭部4を連成し、この頭部4の上面中央にねじ5を差し込むことのできる内径と深さの開口部6を設け、前記胴部2を軸方向に沿って頭部4の下面から先端の全長にわたって二分割し、胴部2を胴部単体2aと2aにした構造になっている。この胴部単体2aと2aは、二分されているが、上端が頭部4につながることによって対向状の配置となる。なお、頭部4は図示のようなものだけでなく、胴部2の周囲に対して分断された状態で突出するものであってもよい。
【0014】
上記胴部2は、円軸部3と略等しい外径の一本の軸体を軸心に沿って対向面に隙間が生じるように二分割して、所定の長さを有するストレート部7の先端側にテーパ部8を介して小径で先鋭状となる先端部9を連ねた形状の胴部単体2a、2aとし、分割された胴部単体2aと2aの対向面が外広がりで中心に向かって狭くなる傾斜面10に形成されている。この傾斜面10は図示のような円弧状傾斜面以外に、中心部から逆方向の直線的な傾斜面であってもよく、従って、胴部単体2aと2aは、外径の弧状面と内側の傾斜面を備えた断面形状になっている。
【0015】
前記円軸部3の上端に設けた頭部4は、円軸部3より大径となる円錐台形状に形成され、この頭部4から円軸部にわたる外周面には複数の回り止め用突条11が設けられ、この頭部4に設けた開口部6は、図示の場合、胴部単体2aと2aの傾斜面10に達する深さとし、ねじ5の先端をねじ固定プラグ1の頭部4に設けた開口部6に螺合して、ねじ5の先端にねじ固定プラグ1を延長状にセットした組合せ体の形成が安定よく保持できるようにしている。
【0016】
図3に示す第2の実施の形態のねじ固定プラグ1は、先の第1の実施の形態において、胴部単体2aと2aを対向面間に設けた薄い可破壊膜12で接続したものである。この可破壊膜12は胴部2と一体の材料で形成され、図示のように、対向する傾斜面10の中央だけでなく、傾斜面10間の任意の位置において胴部単体2aと2aを接続すればよく、この可破壊膜12の接続によって胴部単体2aと2aが不用意に開脚するようなことがなくなる。
【0017】
図4に示す第3の実施の形態のねじ固定プラグ1は、先の第2の実施の形態において、胴部2の隙間に連続した隙間で頭部4と円軸部3を二分割したものであり、胴部単体2aと2aが可破壊膜12によって接続されているので、頭部4と円軸部3を二分割しても分離することはない。なお、この第3の実施の形態では、頭部4から円軸部3にわたる外周面の回り止め用突条は省略されている。
【0018】
図5に示す第4の実施の形態のねじ固定プラグ1は、上記第3の実施の形態において、二分割した胴部単体2aと2aの先端を互いに接続したものであり、胴部単体2aと2aを先端で接続することにより分離することがないので、図示では胴部単体2aと2a間の可破壊膜を省略しているが、該可破壊膜を設けてもよい。
【0019】
図6に示す第5の実施の形態のねじ固定プラグ1は、前記第1の実施の形態において、二分割した胴部単体2aと2aの先端を互いに接続すると共に、胴部単体2aと2aを可破壊膜12によって接続したものである。
【0020】
上記した1から5の各実施の形態において、図7(A)の側面図のように、胴部2の軸心に対して頭部4と円軸部3を同軸心状に設けても、また、図7(B)のように、胴部2の軸心に対して頭部4と円軸部3を偏心させて設けてもよい。
【0021】
なお、図示省略したが、2から5の各実施の形態におけるねじ固定プラグ1も、頭部4の開口部6にねじ5を螺合して、ねじ5の先端にねじ固定プラグ1を延長状にセットした組合せ体を形成することができる。
【0022】
この発明のねじ固定プラグ1は上記のような構成であり、その使用の方法を図2に示す第1の実施の形態のねじ固定プラグを例にして説明する。
【0023】
コンクリートやモルタル等の建築物Aに、ねじ固定プラグ1の胴部2から頭部4が納まる内径と深さの下孔Bをドリルで穿設し、この下孔Bにねじ固定プラグ1の胴部2を挿入した後、建築物Aの表面に機器や器材等の被固定物Cを重ね、被固定物Cに穿設した貫通孔Dから上記ねじ固定プラグ1の開口部6から胴部単体2aと2a間に向けて焼きの入った硬質でピッチのあらいねじ5をねじ込む。
【0024】
ねじ込んだねじ5が、頭部4から円軸部3を貫通して胴部単体2aと2a間に進入すると、胴部単体2aと2aの対向面は外広がりで中心に向かって狭くなる傾斜面になっているので、ねじ5の進入に対して胴部単体2aと2aは異形断面形状と傾斜面の作用でねじ5の回転方向の一方に押しやられ、この結果、胴部2の軸心に対してねじ5は偏心した配置になり、これにより、ねじ5のねじ山5aはコンクリートやモルタル面と胴部単体2aと2aの双方にわたってねじ山を切りつつ進入し、ねじ5の頭部5bで被固定物Cを締めつけて締結が完了する。
【0025】
上記ねじ5による締結時において、ねじ固定プラグ1を柔軟性のあるプラスチックで形成することにより、胴部単体2aと2a間へのねじ5のねじ込み回転時に高熱が発生し、この熱で胴部単体2aと2aが解けてねじ5に接着し、ねじ5の緩み止め効果が増大すると共に、プラスチック製のねじ固定プラグ1は微振動を吸収することができる。
【0026】
また、プラスチック製の胴部単体2aと2aが保護パッキンの役目を果たし、ねじ込み締結後のオーバートルクを吸収し、胴部単体2aと2aに形成されたねじ山が壊れるのを防止することができると共に、圧縮を受けて変形した胴部単体2aと2aは、コンクリートやモルタル面に圧着するので、ねじ5の数回の取り外しが可能で、締結強度の低下もない。
【0027】
なお、第3の実施の形態のねじ固定プラグ1のように、胴部2の隙間に連続して頭部4と円軸部3を二分割したものにおいては、ねじ5のねじ込み開始直後に頭部4が開いて拡開し、コンクリートやモルタル面との摩擦によって、ねじ固定プラグ1の空転を防止することができる。
【0028】
さらに、胴部単体2aと2aを可破壊膜12で接続した実施の形態のねじ固定プラグ1の場合、胴部単体2aと2a間へのねじの進入時に、可破壊膜12が胴部2の軸心に対してねじ5を一方に偏心させる誘導部となると共に、この可破壊膜12はねじ5のねじ込みによる圧力で切れることにより、役目を終わることになる。
【0029】
また、ねじ固定プラグ1とねじ5の組合せ体をそのままの状態で使用するときは、コンクリートやモルタル等の建築物Aと被固定物Cに等しい下孔を穿設し、建築物Aに被固定物Cを重ねて該被固定物Cの下孔から建築物Aの下孔に組合せ体のねじ固定プラグ1を挿入し、ねじ固定プラグ1の頭部4を被固定物Cの表面に当接させ、この状態でねじ5をねじ込めばよく、上記頭部4が被固定物Cを押さえ込んだ状態で締結が行われることになる。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、この発明によると、柔軟性のある材質を用いた胴部の一端に該胴部よりも大径の頭部を連成し、この頭部にねじを差し込むことのできる開口部を設け、前記胴部が軸方向に沿って二分され、この胴部の分割された部分の対向面を外広がりで中心に向かって狭くなる傾斜面にしてねじ固定プラグを形成したので、ねじの進入に対して胴部は異形断面形状と傾斜面の作用でねじの回転方向の一方に押しやられ、この結果、胴部の軸心に対してねじは偏心した配置になり、これにより、ねじのねじ山はコンクリートやモルタル面と胴部の双方にわたってねじ山を切りつつ進入し、緩みのない強固な締結が得られると共に、胴部が保護パッキンの役目を果たし、ねじ込み締結後のオーバートルクを吸収し、胴部に形成されたねじ山が壊れるのを防止することができると共に、圧縮を受けて変形した胴部は、コンクリートやモルタル面に圧着するので、ねじの数回の取り外しが可能で、締結強度の低下もない。
【0031】
また、胴部の隙間に連続して頭部と円軸部を二分割したものにおいては、ねじのねじ込み開始直後に頭部が開いて拡開し、コンクリートやモルタル面又は被固定物との摩擦によって、ねじ固定プラグの空転を防止することができ、さらに、胴部の対向面を可破壊膜で接続したねじ固定プラグは、胴部間へのねじの進入時に、可破壊膜が胴部の軸心に対してねじを一方に偏心させる誘導部となる。
【0032】
さらに、ねじ固定プラグとねじの組合せ体は、そのままの状態でねじ固定プラグを下孔に挿入して使用することができ、ねじのねじ込みによる締結作業が能率よく行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は第1の実施の形態のねじ固定プラグとねじの組合せ体を示す正面図、(B)はねじ固定プラグの平面図、(C)は(A)の矢印c−cの拡大平面図
【図2】(A)は同上のねじ固定プラグとねじを用いた締結状態の縦断面図、(B)は(A)の矢印b−bに沿う断面図
【図3】(A)は第2の実施の形態のねじ固定プラグを示す斜視図、(B)はねじ固定プラグの胴部の断面図
【図4】(A)は第3の実施の形態のねじ固定プラグを示す正面図、(B)は同平面図
【図5】(A)は第4の実施の形態のねじ固定プラグを示す正面図、(B)は同平面図
【図6】(A)は第5の実施の形態のねじ固定プラグを示す正面図、(B)は同平面図
【図7】(A)は胴部と頭部が同軸心となるねじ固定プラグを示す側面図、(B)は胴部に対して頭部が偏心したねじ固定プラグを示す側面図
【符号の説明】
1 ねじ固定プラグ
2 胴部
2a 胴部単体
3 円軸部
4 頭部
5 ねじ
6 開口部
10 傾斜面
12 可破壊膜
Claims (7)
- 柔軟性のある材質を用いた胴部の一端に該胴部の外周よりも外方に突出した頭部を連成し、この頭部にねじを差し込むことのできる開口部を設け、前記胴部が軸方向に沿って二分され、この胴部の分割された部分の対向面が外広がりで中心に向かって狭くなる傾斜面になっているねじ固定プラグ。
- 柔軟性のある材質を用いた胴部の一端に該胴部の外周よりも外方に突出した頭部を連成し、この頭部にねじを差し込むことのできる開口部を設け、前記胴部が先端部分が連なる状態で軸方向に沿って二分され、この胴部の分割された部分の対向面が外広がりで中心に向かって狭くなる傾斜面になっているねじ固定プラグ。
- 柔軟性のある材質を用いた胴部の一端に該胴部の外周よりも外方に突出した頭部を連成し、この頭部にねじを差し込むことのできる開口部を設け、前記頭部から胴部が該胴部の先端部分が連なる状態で軸方向に沿って二分され、この胴部の分割された部分の対向面が外広がりで中心に向かって狭くなる傾斜面になっているねじ固定プラグ。
- 胴部の分割された部分が、対向面間に設けた薄い可破壊膜で接続されている請求項1乃至3の何れかに記載のねじ固定プラグ。
- 柔軟性のある材質を用いた胴部の一端に該胴部の外周よりも外方に突出した大径の頭部を連成し、この頭部にねじを差し込むことのできる開口部を設け、前記頭部から胴部の先端までが軸方向に沿って二分され、胴部の分割された部分が、対向面間に設けた薄い可破壊膜で接続され、該胴部の分割された部分の対向面が外広がりで中心に向かって狭くなる傾斜面になっているねじ固定プラグ。
- 胴部の軸心に対し、頭部が偏心して設けられている請求項1乃至5の何れかに記載のねじ固定プラグ。
- 請求項1乃至6の何れかに記載のねじ固定プラグとねじとの組合せからなり、ねじの先端をねじ固定プラグの頭部に設けた開口部に螺合し、ねじの先端にねじ固定プラグを延長状にセットしたことを特徴とするねじ固定プラグとねじの組合せ体。
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