JP4059706B2 - 高温低圧過熱蒸気供給システム - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は高温低圧過熱蒸気供給システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
蒸気は温度の制御が簡単であり、熱源として広く利用されている。飽和蒸気の温度は蒸気圧力によって定まり、蒸気の圧力を調節することで温度の制御を行うことができる。最も普及している小型貫流ボイラーは、法律で定まっている最高使用圧力が0.98MPaであり、最高使用圧力の飽和蒸気温度は180℃程度であるため、その温度を越える熱を供給することはできない。そのため、それ以上の高温蒸気が必要な場合は、必要温度に合わせて最高使用圧力を高めたボイラーを使用することになる。貫流ボイラーの場合、法律の区分では、最高使用圧力が0.98MPa未満のものは小型ボイラーとなり、0.98MPaを越えるとボイラーの区分となる。
【0003】
蒸気圧力を高めることで蒸気温度は高めることができるが、蒸気圧力を高くすると蒸気が保有する潜熱が少なくなる。蒸気の熱を間接加熱に使用する場合、蒸気は保有する潜熱を放出して凝縮することで熱を伝えており、被加熱物の加熱には潜熱のみを利用する。蒸気圧力が高まって潜熱が少なくなると、熱交換に寄与できる熱量が少なくなるため、エネルギー的見地からは低圧蒸気を使用する方がよい。例えば、1.47MPaの飽和蒸気が保有する潜熱量は463.1kcal/kgであるのに対し、0.735MPaの飽和蒸気が保有する潜熱量は487.8kcal/kgとなり、潜熱量は0.735MPaの方が24.7kcal/kg大きくなる。
また、飽和蒸気温度を高めると、缶水を沸点まで上昇させるのに要する熱量が大きくなるため、ボイラーの効率は低下する。蒸気圧力が低ければ、潜熱量が大きくなるため、必要な蒸気量が少なくなり、蒸気供給量を少なくすることができる上に、ボイラー効率が向上するために同じ蒸気量を発生する場合でも燃焼量が少なくてすむため、ランニングコストの低減ができる。
【0004】
さらに、蒸気圧力を高くすると、高圧のボイラー内へ給水する給水ポンプの電力使用量増大や、蒸気漏れ確率の増大といった問題を招き、蒸気供給経路の耐圧性を高める必要もある。また、法区分上のボイラーは、年1回の性能検査が必要であるなどの規制が多いが、万一事故が発生したとしても影響が小さい小型ボイラーの場合は、普通ボイラーに比べて規制が少ないという利点もある。そのため、蒸気供給システムでは低圧ボイラーで低圧蒸気を供給する方がよいが、必要な蒸気温度を得るために高圧ボイラを使用して蒸気圧力を高めていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、供給蒸気の温度は必要温度を保ちながら蒸気の圧力を低くすることにより、高圧蒸気を供給していた蒸気供給システムの欠点をなくすことにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、低圧の蒸気を発生する低圧ボイラーと、低圧ボイラーで発生した低圧蒸気を蒸気使用部へ送る蒸気供給経路からなる蒸気供給システムにおいて、低圧ボイラーで発生する低圧蒸気よりも高い高圧蒸気を発生する高圧ボイラーと、前記の低圧蒸気を過熱する過熱器を設け、高圧ボイラーと過熱器の間を過熱用蒸気配管で接続し、高圧ボイラーの高圧蒸気を過熱器へ供給することで高圧蒸気によって低圧蒸気を過熱するようにしておき、低圧蒸気を過熱した高温低圧過熱蒸気を蒸気使用部へ供給するようにした高温低圧過熱蒸気供給システムにおいて、蒸気供給経路の過熱器よりも上流側にスチームヘッダーを設け、高圧ボイラーとスチームヘッダーの間を補給用蒸気配管で接続し、補給用蒸気配管途中にスチームヘッダー側の蒸気圧力が設定圧力より低いと、高圧ボイラーから補給用蒸気配管へ蒸気を送るバックアップ供給弁を設けておき、低圧ボイラーによる蒸気供給が不足した場合には、高圧ボイラーで発生した蒸気を低圧ボイラーで発生した蒸気とともに蒸気使用部へ供給することを特徴とする高温低圧過熱蒸気供給システムである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、低圧の蒸気を発生する低圧ボイラーと、低圧ボイラーで発生した低圧蒸気を蒸気使用部へ送る蒸気供給経路からなる蒸気供給システムにおいて、低圧ボイラーで発生する低圧蒸気よりも高い高圧蒸気を発生する高圧ボイラーと、前記の低圧蒸気を過熱する過熱器を設け、高圧ボイラーと過熱器の間を過熱用蒸気配管で接続し、高圧ボイラーの高圧蒸気を過熱器へ供給することで高圧蒸気によって低圧蒸気を過熱するようにしておき、低圧蒸気を過熱した高温低圧過熱蒸気を蒸気使用部へ供給するようにした高温低圧過熱蒸気供給システムにおいて、蒸気供給経路の過熱器よりも上流側にスチームヘッダーを設け、高圧ボイラーとスチームヘッダーの間を補給用蒸気配管で接続し、補給用蒸気配管途中に高圧ボイラー側の蒸気圧力が設定圧力より高いと高圧ボイラーから補給用蒸気配管へ蒸気を送る圧力調整弁を設けておき、高圧ボイラーの圧力が上昇した場合には、高圧ボイラーの蒸気を補給用蒸気配管へ逃がすことで、圧力上昇によって高圧ボイラーが燃焼を停止することをなくし、高圧蒸気による低圧蒸気の過熱を常時行えるようにしたことを特徴とする高温低圧過熱蒸気供給システムである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を実施している蒸気供給システムのフロー図である。本実施例は、最高使用圧力が0.98MPaである低圧ボイラー1を2台と、最高使用圧力が1.96MPaの高圧ボイラー3を1台設置し、200℃の蒸気を供給するものである。なお、ボイラーによっては上記圧力よりもはるかに高いものや低いものがある。本明細書における低圧と高圧の用語は、絶対値によるものではなく、相対的な意味によるものである。
【0011】
低圧ボイラー1と蒸気使用部(図示せず)の間を蒸気供給経路2で接続し、蒸気供給経路2の途中にスチームヘッダー5と過熱器4を設ける。高圧ボイラー3と過熱器4の間を過熱用蒸気配管12で接続し、過熱用蒸気配管12は過熱器4の熱媒側へ接続する。蒸気供給経路2の過熱器4より下流側に供給蒸気温度検出装置9を設け、過熱用蒸気配管12の途中に温調弁10を設ける。温調弁10は、供給蒸気温度検出装置9と接続しておき、供給蒸気温度検出装置9で検出した蒸気温度に基づき、過熱用蒸気配管12を通して過熱器4へ供給している高圧蒸気の供給を制御する。
【0012】
過熱用蒸気配管12の温調弁10よりも上流側に分岐点を設けておき、過熱用蒸気配管12の分岐点に補給用蒸気配管8を接続する。補給用蒸気配管8の他端はスチームヘッダー5に接続しており、補給用蒸気配管8の途中にはバックアップ供給弁6と圧力調整弁7を並列に設け、圧力調整弁7よりもスチームヘッダー5側に吹き出し弁11を設けておく。バックアップ供給弁6は、補給用蒸気配管8の下流側圧力に基づいて弁の開閉を行うものであり、補給用蒸気配管8はスチームヘッダー5に接続しているため、バックアップ供給弁6はスチームヘッダー5の圧力に基づいて弁の開閉を制御することになる。逆に圧力調整弁7は、補給用蒸気配管8の上流側圧力を検出するものであり、圧力調整弁7は高圧ボイラー3部分における蒸気圧力に基づいて弁の開閉を制御する。スチームヘッダー5の圧力がバックアップ供給弁6の設定圧力より低い場合にはバックアップ供給弁6を開き、高圧ボイラー3の蒸気圧力が圧力調整弁7の設定圧力より高い場合には圧力調整弁7を開くことで、高圧ボイラー3で発生した蒸気をスチームヘッダー5へ送るようにしておく。
【0013】
低圧ボイラー1は、スチームヘッダー5での蒸気圧力を設定圧力(例えば0.735MPa)に保つために必要な台数分のボイラーを燃焼する。スチームヘッダー5での蒸気圧力を検出しておき、検出した蒸気圧力値が低ければ、ボイラーの燃焼量を大きくして蒸気発生量を増加し、検出した蒸気圧力値が高ければ、ボイラーの燃焼量を小さくして蒸気発生量を減らすことで、蒸気圧力を一定範囲内に保つように制御する。高圧ボイラー3の設定圧力は、低圧ボイラー1の設定圧力より高い圧力(例えば1.764MPa)に設定しておく。高圧ボイラー3の燃焼量制御も低圧ボイラ1と同様であり、過熱用蒸気配管12内の蒸気圧力を検出しておき、検出した蒸気圧力値に基づいて燃焼量を制御することで、蒸気圧力を一定範囲内に保つように制御する。
【0014】
低圧ボイラー1で発生した低圧蒸気は、蒸気供給経路2の途中に設けた過熱器4で過熱して蒸気使用部へ送る。高圧ボイラー3で発生した高圧蒸気は、過熱用蒸気配管12を通して過熱器4へ送り、過熱器4を通る低圧蒸気の過熱に利用する。低圧ボイラー1で発生している低圧蒸気の圧力が0.735MPaであった場合、低圧蒸気の飽和蒸気温度は約172℃となる。また、高圧ボイラー3で発生している高圧蒸気の圧力が1.764MPaであった場合、高圧蒸気の飽和蒸気温度は約208℃となる。低圧蒸気と高圧蒸気を過熱器4へ導入し、高圧蒸気と低圧蒸気で熱交換を行うと、高圧蒸気の熱によって低圧蒸気の温度が上昇する。飽和蒸気温度であった低圧蒸気は圧力一定のままで温度は飽和蒸気温度よりも高くなって、高温低圧過熱蒸気となる。
【0015】
過熱器4で加熱した高温低圧過熱蒸気の温度は、供給蒸気温度検出装置9で検出しておき、供給蒸気温度検出装置9で検出した温度に基づいて温調弁10の開閉を制御する。本実施例は200℃の蒸気を供給するものであるため、供給蒸気温度検出装置9で検出している過熱蒸気の温度が200℃を保つように温調弁10の制御を行う。低圧蒸気を過熱器4で過熱して高温低圧過熱蒸気とするので、蒸気使用部へは200℃の蒸気を供給することができる。
【0016】
ただし、高圧蒸気による過熱を行うためには、高圧ボイラー3による高圧蒸気の供給が途切れないようにする必要がある。高圧ボイラー部分で蒸気圧力が燃焼停止圧力まで上昇してボイラーの燃焼が停止すると、過熱器4への高圧蒸気の供給が途切れることになるため、圧力調整弁7と吹き出し弁11を設けておき、高圧ボイラー3は連続燃焼するようにしている。圧力調整弁7の設定圧力は、高圧ボイラー3の設定圧力より高い値であって、高圧ボイラー3が最小燃焼量で燃焼を継続できる圧力(例えば1.813MPa)とする。
【0017】
高圧ボイラー3の部分における蒸気圧力が上昇すると、圧力調整弁7が開いて高圧蒸気を補給用蒸気配管8の下流側へ向けて送る。補給用蒸気配管8はスチームヘッダー5と接続しているため、補給用蒸気配管8を通った蒸気はスチームヘッダー5に入り、低圧ボイラ1で発生した蒸気とともに蒸気使用部へ供給する蒸気となる。また、圧力調整弁7の下流側には、吹き出し弁11を設けているため、補給用蒸気配管8での圧力が吹き出し弁11の設定圧力より高くなると、吹き出し弁11が開いて蒸気を吹き出す。蒸気圧力が圧力調整弁7の設定圧力以上にまで高まると、蒸気を補給用蒸気配管8へ送り、補給用蒸気配管8の圧力が高まれば吹き出し弁11から蒸気を吹き出すことで、高圧ボイラー3での蒸気圧力が燃焼停止圧力まで高まることを防ぐことができる。高圧ボイラー3は最小燃焼量で燃焼を継続するので、低圧蒸気を常時過熱することができる。
【0018】
低圧ボイラー1及び蒸気供給経路2は、蒸気圧力が0.98MPa以下の仕様としていると、高圧ボイラー3による高圧蒸気をそのまま送り込むことはできない。そのため、高圧蒸気の圧力を0.98MPa以下にまで低下する必要がある。吹き出し弁11の吹き出し圧力を0.98MPaに設定しておくと、補給用蒸気配管8の蒸気圧力が0.98MPaを越えていれば蒸気を放出して圧力を0.98MPa以下とするため、スチームヘッダー5へ送る蒸気は0.98MPa以下の蒸気とすることができる。
【0019】
バックアップ供給弁6は、低圧ボイラー1による蒸気供給が間に合わずに、蒸気使用部へ供給する蒸気が不足した場合に、バックアップとして高圧ボイラー3で発生している蒸気を蒸気使用部へ送るためのものである。高圧ボイラー3は蒸気を過熱することを目的として設置したものであるが、蒸気使用部へ供給する蒸気量自体が不足している場合には、蒸気使用部へ供給する蒸気の過熱よりも、蒸気使用部へ供給する蒸気量を多くすることが重要となる。スチームヘッダー5での蒸気圧力が設定圧力以下まで低下した場合には、バックアップ供給弁6を開くことで、高圧ボイラー3で発生した蒸気をスチームヘッダー5へ送る。低圧ボイラー1及び高圧ボイラー3の両方で発生した蒸気を蒸気使用部へ送ることで、蒸気使用部への蒸気供給量を多くすることができる。
【0020】
【発明の効果】
本発明を実施することで、以下の効果を得ることができる。
▲1▼高温の蒸気が必要な場合であっても、潜熱の大きな低圧の蒸気を供給することができ、熱を効率的に使用することができる。
▲2▼高温蒸気が必要であって、蒸気の過熱は行っていない場合は、すべてのボイラーを高圧ボイラーとしなければならなかったが、高圧ボイラは過熱に必要な台数のみでよくなる。高圧ボイラーの設置を少なくし、低圧ボイラーを設置するようにすれば、ボイラー全体での効率が向上し、イニシャルコストは低減することができる。
▲3▼蒸気供給経路内を通す蒸気の圧力が低いため、蒸気供給経路の耐圧性能を高める必要がなくなり、蒸気供給経路や蒸気使用部で蒸気漏れが発生する可能性も少なくなる。
▲4▼高温低圧過熱蒸気は、飽和蒸気を直接供給する場合に比べて温度の変動が少なく、設備側安定操業に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施している蒸気供給システムのフロー図
【符号の説明】
1 低圧ボイラー
2 蒸気供給経路
3 高圧ボイラー
4 過熱器
5 スチームヘッダー
6 バックアップ供給弁
7 圧力調整弁
8 補給用蒸気配管
9 供給蒸気温度検出装置
10 温調弁
11 吹き出し弁
12 過熱用蒸気配管
Claims (2)
- 低圧の蒸気を発生する低圧ボイラーと、低圧ボイラーで発生した低圧蒸気を蒸気使用部へ送る蒸気供給経路からなる蒸気供給システムにおいて、低圧ボイラーで発生する低圧蒸気よりも高い高圧蒸気を発生する高圧ボイラーと、前記の低圧蒸気を過熱する過熱器を設け、高圧ボイラーと過熱器の間を過熱用蒸気配管で接続し、高圧ボイラーの高圧蒸気を過熱器へ供給することで高圧蒸気によって低圧蒸気を過熱するようにしておき、低圧蒸気を過熱した高温低圧過熱蒸気を蒸気使用部へ供給するようにした高温低圧過熱蒸気供給システムにおいて、蒸気供給経路の過熱器よりも上流側にスチームヘッダーを設け、高圧ボイラーとスチームヘッダーの間を補給用蒸気配管で接続し、補給用蒸気配管途中にスチームヘッダー側の蒸気圧力が設定圧力より低いと、高圧ボイラーから補給用蒸気配管へ蒸気を送るバックアップ供給弁を設けておき、低圧ボイラーによる蒸気供給が不足した場合には、高圧ボイラーで発生した蒸気を低圧ボイラーで発生した蒸気とともに蒸気使用部へ供給することを特徴とする高温低圧過熱蒸気供給システム。
- 低圧の蒸気を発生する低圧ボイラーと、低圧ボイラーで発生した低圧蒸気を蒸気使用部へ送る蒸気供給経路からなる蒸気供給システムにおいて、低圧ボイラーで発生する低圧蒸気よりも高い高圧蒸気を発生する高圧ボイラーと、前記の低圧蒸気を過熱する過熱器を設け、高圧ボイラーと過熱器の間を過熱用蒸気配管で接続し、高圧ボイラーの高圧蒸気を過熱器へ供給することで高圧蒸気によって低圧蒸気を過熱するようにしておき、低圧蒸気を過熱した高温低圧過熱蒸気を蒸気使用部へ供給するようにした高温低圧過熱蒸気供給システムにおいて、蒸気供給経路の過熱器よりも上流側にスチームヘッダーを設け、高圧ボイラーとスチームヘッダーの間を補給用蒸気配管で接続し、補給用蒸気配管途中に高圧ボイラー側の蒸気圧力が設定圧力より高いと高圧ボイラーから補給用蒸気配管へ蒸気を送る圧力調整弁を設けておき、高圧ボイラーの圧力が上昇した場合には、高圧ボイラーの蒸気を補給用蒸気配管へ逃がすことを特徴とする高温低圧過熱蒸気供給システム。
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