JP4059549B2 - 基板支持装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願の発明は、基板の表面に所定の処理を施す基板処理装置等において基板を支持する目的で使用される基板支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
基板の表面に所定の処理を施すことは、LSI(大規模集積回路)、LCD(液晶ディスプレイ)、情報記録ディスク等の製作において盛んに行われている。このうち、ハードディスク等の情報記録ディスクの製作の分野では、中央に開口を有する円形の基板を垂直に支持する基板支持装置が使用される場合がある。
【0003】
図9は、従来の基板支持装置の構成を示す正面概略図、図10は図9に示す基板支持装置の動作を説明する斜視概略図である。図9及び図10に示す基板支持装置は、垂直に立てて配置されたベース板11と、このベース板11に設けられた固定支持爪12及び可動支持爪13によって主に構成されている。
【0004】
図9及び図10に示すように、ベース板11は、方形の板部材に「J」の字の形状の切り欠きを設けたような形状のものである。そして、その「J」の字の切り欠きの曲線部分(以下、曲線部)に四つの固定支持爪12が設けられている。四つの固定支持爪12は、図9及び図10に示すように、「J」の字の最下点を通る垂直な線(以下、中心軸線10)に対して線対称となる位置関係で配置されている。
【0005】
各々の固定支持爪12は、短い帯板状の部材を曲げてL字状にしたような形状の部材である。ベース板11の切り欠き部分には、段差が設けられており、この段差に係止させるようにして各固定支持爪12が配置され、ネジ止め等の方法によってベース板11に対して固定されている。そして、各固定支持爪12の先端は、曲線部の曲率の中心点に向かっており、その先端部分は、図10に示すようなV字状の凹部が形成されている。
【0006】
一方、可動支持爪13はベース板11の上面に固定されている。可動支持爪13は、帯板状の部材の先端をL字状に曲げた形状を有する。可動支持爪13の後端はベース板11の上端面にネジ止め等によって固定されており、L字状の先端部分はちょうど中心軸線10上に位置して下方に向いている。そして、下方に向いた先端部分には、固定支持爪12と同様にV字状の凹部が形成されている。
【0007】
上記従来の基板支持装置の動作について説明する。
上記基板支持装置は、ハードディスク用の基板のような円形の板状で中央に開口20を有する基板2を支持するよう構成され、図10に示すように、基板2を保持する基板ピックアップ3を備えた搬送機構4によって基板2が着脱されるようになっている。
また、図10に示すように、基板支持装置1の付近には、基板支持装置1の可動支持爪13を開閉する開閉装置5が設けられる。上述した可動支持爪13は板バネになっており、開閉装置5は、可動支持爪13の先端を上方に変位させて可動支持爪13を撓ませる開閉ピン51と、開閉ピン51を水平方向及び垂直方向に移動させる移動機構52とから構成されている。
【0008】
まず、上記基板支持装置1に基板2を装着する場合について説明する。基板ピックアップ3は基板2の中央の開口20に先端を挿入させて基板2を保持しながら、基板2を基板支持装置1の近傍まで水平に搬送する。この際、開閉装置5の開閉ピン51は移動機構52によって予め水平に移動して基板支持装置1の可動支持爪13の下方に進入し、さらに所定距離上方に移動して図9に点線で示すように可動支持爪13を撓ませて可動支持爪13が開いた状態にしている。
【0009】
基板ピックアップ3は、基板支持装置1のベース板11の位置まで基板2を移動させ、可動支持爪13と固定支持爪12との間の位置に基板2を位置させる。そして、搬送機構4が基板ピックアップ3を少し下降させ、基板2が固定支持爪12の上に載って支持されるようにする。
【0010】
次に、開閉装置5の移動機構52が開閉ピン51を所定距離下降させ、可動支持爪13の撓みを解消させて可動支持爪13がほぼ水平な姿勢になるようにする。この結果、可動支持爪13の先端部分が基板2の上縁に当接し、基板2を上から抑える状態となる。その後、基板ピックアップ3は後退し、別の基板2の保持等のため、搬送機構4によって所定の位置まで送られる。また、開閉ピン51も後退して所定の退避位置に退避する。
【0011】
基板2を基板支持装置1から取り外す場合は上記の手順と逆であり、まず開閉装置5の移動機構52が開閉ピン51を水平移動させて可動支持爪13の下方に進入させ、所定距離上昇させて可動支持爪13を撓ませる。そして、搬送機構4が基板ピックアップ3を駆動し、基板ピックアップ3の先端を基板2の中央の開口20に挿入させる。この状態で基板ピックアップ3が少し上昇して基板2を保持して持ち上げ、基板ピックアップ3が後退して基板2を基板支持装置1から引き抜くことで取り外しが完了する。
【0012】
次に、上述したような基板支持装置1を使用した基板処理装置について説明する。図11は、図9及び図10に示す基板支持装置を使用した基板処理装置の例の概略構成を示す平面図である。
図11に示す基板処理装置は、基板着脱チャンバー61と処理チャンバー62とをゲートバルブ66を介在させて隣接して配置した構造である。処理される基板2は基板着脱チャンバー61で基板支持装置1に装着され、基板支持装置1ごと処理チャンバー62に送られる。そして、処理チャンバー62で処理を行った後、再び基板着脱チャンバー61に戻され、基板支持装置1から取り外される。
【0013】
図11には、基板処理装置の一例として、磁性薄膜を作成するスパッタリング装置が示されている。即ち、処理チャンバー62内には、スパッタリングカソード63が設けられている。スパッタリングカソード63は、スパッタされるターゲット631と、ターゲット631の背後に設けられた磁石機構633とから構成されている。また、ターゲット631にターゲット所定の電圧を印加するスパッタ電源632が設けられている。
【0014】
磁石機構633は、中央に設けられた柱状の中心磁石634と中心磁石634を取り囲むリング状の周辺磁石635とからなる構成であり、ターゲット631を貫くアーチ状の磁力線636を設定するようになっている。この磁力線636によってマグネトロンスパッタリングが可能となり、高効率の成膜が行える。
【0015】
処理チャンバー62は、排気系64や内部に所定のガスを導入するガス導入手段65を備えている。処理チャンバー62内を所定のガスを導入しながら、スパッタ電源632を動作させると、ターゲット633を臨む空間にスパッタ放電が生じ、プラズマPが形成される。
図11に示すように、スパッタリングカソード63は、基板支持装置1に支持された基板2の両側に位置するように一対設けられている。従って、プラズマPは基板2の両側に形成され、基板2の両側の面に対して同時に成膜できるようになっている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の基板支持装置が使用される基板処理装置では、基板の表面に対して隅々まで良質な処理が行えることが要請されている。例えば、情報記録媒体用の基板に対する磁性薄膜の作成処理においては、一枚の基板への記録容量を大きくするため、なるべく基板の周縁に近い領域まで良質な磁性薄膜を作成することが要請されている。
しかしながら、上述した従来の装置では、基板の垂直支持に用いる支持爪12,13の存在が原因で、基板2の周縁に近い領域まで広く良質な処理を行うことができなかった。この点を、同様に磁性薄膜の作成処理を例にして説明する。
【0017】
上述した通り、図9に示す従来の基板支持装置では、四つの固定支持爪13と一つの可動支持爪12で基板2を支持している。これらの支持爪12,13の先端は浅いV字状に形成されており、基板2はその周縁がこのV字に落とし込まれた状態で支持されるようになっている。この構成は、基板2が板厚方向に移動してしまうのを抑制するものとして意義がある。
【0018】
しかしながら、これら支持爪12,13の先端部分は、基板2の周縁に近い領域に対しては“影”を作ることになり、周縁に近い領域に対する処理を悪化させる原因となる。例えば磁性薄膜の作成では、ターゲット633から飛来するスパッタ粒子がこれら支持爪12,13の先端部分で遮蔽されるため、支持爪12,13が存在する周縁に近い領域で膜厚が局所的に減少する問題がある。
このような特定の部材が被処理表面に対して“影”となって処理の質を低下させる問題は、一般にシャドー効果と呼ばれる。上述した基板支持装置でも、高密度記録化の要請等を背景として、シャドー効果の問題が顕在化してきている。
【0019】
支持爪の存在によって引き起こされるシャドー効果を低減させるには、支持爪の数を少なくすればよい。上述したように基板を垂直に支持するには、最低限三つの支持爪があれば良い。
四つ以上の支持爪があった場合、よほど精度良く取り付けられていない限り四つめ以降の支持爪は基板の縁には接触しない。この場合、どの三つの支持爪に接触するするかによって基板の支持位置が変化してしまう。つまり、支持爪が四つ以上あるとかえって基板の支持位置の精度が低下してしまう。従って、支持爪の数は三つであることが好ましい。
【0020】
三つの支持爪によって基板を垂直に支持する基板支持装置としては、実公平5−23570号公報、実開平5−94267号公報、特開平8−274142号公報等に開示された構成が知られている。しかしながら、これらの公報に開示された基板支持装置では、基板の下縁を支持する支持爪が板バネの先端部分であるため、基板の自重や板バネのばね定数の如何によってこの下縁を支持する支持爪の位置が変化してしまう。このため、基板を支持する位置を常に一定にすることが困難であるという問題があった。
【0021】
また、実公平5−23570号公報や実開平5−94267号公報に開示された基板支持装置では、基板の上縁に当接する支持爪は、基板の中心の高さの位置よりも45度以上の高い位置で基板の縁に当接している。このため、その支持爪から発生するパーティクルによって基板の表面が汚損される可能性が高いという問題があった。
【0022】
より具体的に説明すると、スパッタリング等の成膜処理では、薄膜は基板の表面のみならず支持爪の表面にも堆積する。この支持爪の表面に堆積した薄膜がある程度の厚さになると、薄膜の内部応力によって剥離し、パーティクルが発生することがある。特に、支持爪に基板が当接した弾みで支持爪から薄膜が剥離し、パーティクルが発生する可能性が高い。
このようなパーティクルが基板の表面に付着すると、局所的な膜厚異常等の欠陥を生じさせる。実公平5−23570号公報や実開平5−94267号公報に開示された装置では、基板の中心の高さに対して45度以上の高い位置で基板の縁に支持爪が当接するようになっているため、発生したパーティクルが落下する際に基板の表面に付着する確率が高く、上記欠陥が生じやすいという問題があった。
【0023】
一方、特開平8−274142号公報に開示された基板支持装置では、左右の支持爪が基板の丁度中心の高さの位置で基板の縁に当接している。このため、上述したようなパーティクルの付着の確率は少なくなっている。しかしながら、この装置では、左右の支持爪が基板の丁度中心の高さの位置で基板の縁に当接することから、基板を下方に押さえつける力が本質的に存在しない。このため、何らかの弾みで基板は跳ね上がってしまうという恐れがあり、確実な基板の支持という点では問題があった。
【0024】
本願発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、基板の周縁に近い表面領域まで十分に良質な処理が行えるとともに基板の支持が不安定になることがないように改良された実用的な基板支持装置を提供することを目的にしている。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、円形の基板を垂直に保持しながらその円形の基板に所定の処理を施す基板処理装置においてその基板の支持のために使用される基板支持装置であって、垂直な姿勢で取り付けられるベース板と、基板の周縁に当接して基板を垂直に支持するようベース板に取り付けられた三つの支持爪とを備え、これら三つの支持爪の一つは、基板の下縁に当接して基板を支えるものであって基板の支持の際には弾性によって位置が変化することのない固定支持爪であり、他の二つの支持爪は、基板の着脱の際に開閉される可動支持爪であって基板が所定の上昇位置から下降して固定支持爪の上に載せられる際に基板の側縁に当接して基板を挟み込むものであり、さらに、この二つの可動支持爪は、基板が固定支持爪に支持された状態において基板の中心の高さの位置よりも高い位置の側縁を当接にするよう設けられており、
二つの可動支持爪は、開閉機構により開閉が行われる部材であって、開閉機構を構成する部材が各可動支持爪又は各可動支持爪を保持した部材に当接して押すことで開閉が行われるようになっており、この当接位置は、基板の中心の高さよりも低い位置となっているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2の発明は、請求項1記載の構成において、前記可動支持爪は、基板が所定の上昇位置から垂直な姿勢を保って下降して固定支持爪の上に載せられる際に、基板の中心に対して5度から45度高い側縁の位置で基板に当接し始めるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3の発明は、請求項1又は2記載の構成において、前記可動支持爪は、板バネの先端に設けられているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4の発明は、請求項1、2又は3記載の構成において、前記基板が前記固定支持爪の上に載せられた際に前記可動支持爪が所定位置で停止するようにする内側ストッパが設けられているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5の発明は、請求項1又は2記載の構成において、前記可動支持爪は板バネの先端に設けられているか又は全体が板バネであり、この可動支持爪の開きが所定の位置で停止するようにする外側ストッパが設けられているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6の発明は、請求項1、2、3、4又は5記載の構成において、前記固定支持爪及び前記可動支持爪はすべて前記ベース板から着脱自在となっているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項7の発明は、請求項1、2、3、4、5又は6記載の構成において、前記ベース板は、前記基板の直径より大きいほぼ円形の開口を有して前記基板がこの開口内で下降して前記固定支持爪の上に載せられる構造であるとともに、前記固定支持爪及び前記可動支持爪はこのほぼ円形の開口の縁から内側に突出して基板の周縁に当接するよう設けられており、基板が装着された状態では、前記固定支持爪及び前記可動支持爪が設けられている部分を除き基板は前記ほぼ円形の開口の周縁によって取り囲まれており、基板の周囲の空間が所定の隙間を残してベース板又はベース板に取り付けられた部材によって埋められる構造であるいう構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項8の発明は、請求項7記載の構成において、前記基板の周縁と前記ほぼ円形の開口の周縁又はベース板に取り付けられた部材の基板側の縁との隙間は、7mm以下であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項9の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の構成において、前記三つの支持爪及びこれらの支持爪をベース板に取り付ける部材は、ベース板の厚み以下の幅を有しており、ベース板の板面から突出していないという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項10の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の構成において、前記三つの支持爪は、基板の厚さ方向が幅方向である帯板状の部材からなるものであり、これら支持爪の少なくとも基板に当接する先端部分の厚さは0.2mm〜2mmであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項11の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の構成において、前記固定支持爪の先端は、基板の縁の方向に長い形状になっているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項12の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の構成において、前記固定支持爪は、基板の中心の直下の位置で基板を支持するよう設けられているという構成を有する。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。
図1は、本願発明の第一の実施形態の基板支持装置の概略構成を示す正面図、図2は、図1のX−Xでの断面概略図である。
本実施形態の基板支持装置は、例えばハードディスク用の基板のような直径95mm程度の円形の基板2を支持するものである。基板2の板厚は0.8mm程度、重さは14グラム程度である。
図1に示す基板支持装置は、ベース板11と、基板2の周縁に当接して基板2を垂直に支持するようベース板11に取り付けられた三つの支持爪141,142,143とを備えている。
【0027】
ベース板11は、全体がほぼ方形の板状である。ベース板11の下部には、不図示の搬送キャリアに取り付ける取り付け部110が形成されている。搬送キャリアは、基板2を支持した基板支持装置を水平方向に搬送させる機構である。
ベース板11には、図1に示すように、ほぼ円形の開口が形成されている。そして、基板2は、この開口内に位置した状態で基板支持装置に支持されるようになっている。
三つの支持爪141,142,143のうち、一つの支持爪141は、基板2の下縁を支持する固定支持爪141であり、他の二つは基板2の側縁に当接する可動支持爪142,143になっている。
【0028】
図1及び図2を使用して、まず、固定支持爪141の形状及び取付構造について説明する。固定支持爪141は、第一の取付具151によって着脱自在にベース板11に固定されている。固定支持爪141は、図2に示すように、基板2の厚さよりも少し幅の広いほぼ帯板状の部材であり、幅方向を基板2の板厚方向にして設けられている。図1に示すように、固定支持爪141は、基板の中心の直下の位置で基板を支持するよう設けられている。
【0029】
また、図2に示すように、固定支持爪141の先端は、浅いV字状になっている。そして、このV字の部分に基板2の下縁が落とし込まれるようになっている。この構成は、基板2がその板厚方向に動いてしまうのを抑制している。尚、V字の深さを深くすると基板2の支持動作はより安定するが、固定支持爪141の先端が“影”になる面積が大きくなるので、シャドー効果の問題が大きくなるという欠点がある。
【0030】
固定支持爪141は、ステンレスやインコネル等の剛性の高いもので形成され、図1に示すように垂直に配置される。従って、基板2を支持した際に弾性によって撓んだりして支持位置が変化するようなことはない。このため、基板2の支持位置が常に一定にできる。尚、基板2が載せられた反動で固定支持爪141が多少撓む場合でも、すぐに弾性により真っ直ぐ垂直な状態に復帰するようであれば、特に問題はないことも多い。
【0031】
そして、図1に示すように、ベース板11のほぼ円形の開口の下縁の中央位置から下方に垂直に延びるようにして、第一の隘路152がベース板11に形成されている。第一の隘路152の下側には、図1に示すようにほぼ方形の開口が連続して形成されている。取付具151は、この方形の開口の下縁の部分でベース板11に取り付けられている。
【0032】
図2から分かるように、ベース板11の方形の開口の下縁には段差が設けられており、この段差の上に載るようにして取付具151が配置されている。そして、ネジ153によって取付具151がベース板11に固定されている。
取付具151は、上方に垂直に延びる突出部分を有する。この突出部分には、固定支持爪141を差し込む差込穴が形成されている。固定支持爪141は、この差込穴に差し込まれ、ネジ154によって固定されるようになっている。
【0033】
次に、二つの可動支持爪142,143の形状及び取付構造について説明する。まず、左側の可動支持爪142は、図1に示す通り、ほぼ帯板状の部材をほぼL字状に曲げた形状の部材である。可動支持爪142の折り曲げた先端側の部分は、基板2が固定支持爪141の上に支持された際、基板2の中心に向かう状態となるよう構成されている。尚、可動支持爪142の先端も固定支持爪141と同様に浅いV字状になっており、基板2がその板厚方向に移動するのを抑制している。
【0034】
可動支持爪142は、板バネ155の先端部分に取り付けられている。図1に示すように、板バネ155は、ほぼ垂直な姿勢で配置された部材である。板バネ155は、その下端がベース板11にネジ156によって固定されている。従って、板バネ155は、ネジ156で固定された部分を中心として所定角度範囲内で揺動するようになっている。
【0035】
板バネ155は、可動支持爪142とともに埋め込みブロック16を固定している。図1に示すように、板バネ155と埋め込みブロック16との間に可動支持爪142の後端部分を間に挟み込んだ状態で、ネジ157がねじ込まれており、これによって、可動支持爪142と埋め込みブロック16が一体に板バネ155の先端に固定されている。
【0036】
埋め込みブロック16は、後述するように、基板2の空間を埋め込んでプラズマの進入を防止するためのものである。埋め込みブロック16は正面から見るとほぼ台形の形状の部材であり、ベース板11の厚さとほぼ同様の厚さの板状である。埋め込みブロック16の基板2側の面は、図1に示す通り円周状の局面(より正確には円筒面)になっている。この円周の中心は、固定支持爪141の上に支持されて装着された際の基板2の中心に一致するよう構成されている。
【0037】
尚、可動支持爪142、板バネ155及び埋め込みブロック16が配置された場所には、これらが一体に揺動できるよう揺動用開口111がベース板11に形成されている。揺動用開口111は、円形の開口に連続して形成され、図1に示すように下方に折れ曲がって形成されている。尚、揺動用開口111には、後述する開閉機構の開閉アームが動作する空間であるアーム動作用開口112が連続して形成されている。
【0038】
右側の可動支持爪143は、図1に示す通り、上述した左側の可動支持爪142に対して線対称な構成というだけであり、左側の可動支持爪142と本質的に同様の構成になっている。つまり、同一の可動支持爪142,143によって基板2が左右から挟み込まれるよう構成されている。
【0039】
次に、上記可動支持爪142,143を開閉する開閉機構について説明する。図3は、図1に示す可動支持爪142,143を開閉する開閉機構の構成を説明する斜視概略図である。
図3に示すように、可動支持爪142,143を開閉する開閉機構は、垂直な回転軸に軸支された開閉アーム71と、開閉アーム71に当接して開閉アーム71を所定角度回転させるカム72と、カム72を先端に固定したカムホルダー73と、カムホルダー73に固定された駆動棒74と、駆動棒74を水平方向に駆動してカムホルダー73を水平に移動させるエアシリンダ等の直線移動源75とから主に構成されている。
【0040】
まず、可動支持爪142を開く場合について説明すると、直線移動源75が動作して駆動棒74を介してカムホルダー73が移動し、カム72が所定の待機位置から前進して開閉アーム71に当接した状態となり、カム72が開閉アーム71を押して90度程度回転させる。この結果、開閉アーム71が可動支持爪142を固定した板バネ155のほぼ真ん中の高さの部分を押し、板バネ155が外側に揺動して開かれる。この結果、可動支持爪142及び埋め込みブロック156も一体に外側に向けて移動する。これで、可動支持爪142が開いた状態となる。
【0041】
また、可動支持爪142を閉じる場合には、直線移動源75が動作して駆動棒74を介してカムホルダー73を所定位置まで後退させる。開閉アーム71には復帰バネ76が設けられており、カムホルダー73の後退によってカム72が後退する結果、開閉アーム71が反対方向に回転して当初の姿勢に復帰する。これによって、板バネ155がその弾性力により当初の垂直な姿勢に復帰する。
図3では、可動支持爪142を開閉するための開閉アーム71及びカム72が描かれているが、開閉機構は左右対称であり、カムホルダー73にはもう一方のカムが設けられてもう一方の開閉アームを開閉するようになっている。これによって、可動支持爪143の開閉が行われるようになっている。
【0042】
上記構成に係る開閉機構は、板バネ155のほぼ真ん中の高さの位置で開閉アーム71を板バネ155に当接させて開閉動作を行っている。この構成は、開閉に伴って発生するパーティクルが基板2に付着するのを効果的に防止している。即ち、板バネ155に開閉アーム71が当接すると、板バネ155に堆積していた薄膜を剥離させたり、板バネ155自体の表面が摩耗したりしてパーティクルが発生する恐れがある。開閉アーム71の当接位置が基板2の中心の高さより高い位置に設定されていると、発生するパーティクルが基板2の表面に付着する確率が高くなる。しかしながら、本実施形態では、開閉アーム71の当接位置が、基板2の中心の高さよりも低い位置になるので、このような問題が効果的に防止されている。尚、開閉アーム71が板バネ155への当接する動作を行う空間をカバーで覆うようにすると、基板2へのパーティクルの付着の問題がさらに防止される。
【0043】
また、本実施形態の装置では、支持爪141,142,143によるシャドー効果を極力小さくするため、0.5mm程度の薄いものが使用されている。発明者の検討によると、支持爪141,142,143の厚さが2mmを越えると、シャドー効果が大きくなり、実用上の問題が生ずる。
また、支持爪141,142,143には、耐プラズマ性を考慮してステンレスやインコネル等の鋼製のものが使用されるが、10〜15グラム程度の基板2を支持する場合、厚さが0.2mmより小さくなると、支持爪141,142,143の機械的強度が限度以上に低下し、固定支持爪141が撓んでしまって支持位置が変化したり、基板2を十分支持できなかったりする問題が生ずる。
従って、支持爪141,142,143の厚さは0.2〜2mmであることが好ましい。尚、シャドー効果は支持爪141,142,143の先端部分が大きく影響するので、先端部分以外のところでは2mmを越える厚さでも実用上問題がない場合が多い。
【0044】
また、図2から類推されるように、本実施形態の基板支持装置では、三つの支持爪141,142,143及びこれらの支持爪141,14,2,143を固定した取付具151等のすべての部材は、ベース板11の厚み以下の幅を有しており、ベース板11の板面から突出していない。この構成は、基板支持装置が狭い空間を通って搬送される場合等に特に好適な構成となっている。
【0045】
例えば、インライン式のマルチチャンバータイプの基板処理装置では、各チャンバーの境界部分にゲートバルブを設けて各チャンバーを気密に接続した構造が採用される。この場合、基板支持装置は、ゲートバルブを通って各チャンバーに順次搬送されるが、各チャンバーの雰囲気の相互汚損を防止する等の理由から、ゲートバルブの開口面積は極力小さく設定される。つまり、基板支持装置は狭いゲートバルブの開口を通過して搬送される。
このような場合、ベース板11の板面から突出した部材があると、何らかの弾みでゲートバルブの開口の縁に突出した部材が引っかかり易くなり、搬送エラーの原因となる恐れがある。これを防止するには、ゲートバルブを開口を大きくする必要が生じてしまう。しかしながら、本実施形態の装置では、ベース板11の板面から突出した部材がないので、このような問題はなく、狭い空間でも安定して搬送動作が行える。
【0046】
次に、上記構成に係る基板支持装置の全体の動作について説明する。最初に、基板支持装置に基板2を装着する動作について説明する。
まず、基板2が基板ピックアップ3に支持され、不図示の移動機構によって基板支持装置の場所まで搬送される。移動機構は、基板2が図1の点線で示す位置に位置するよう基板ピックアップ3を精度よく停止させる。この位置は、基板2の着脱の際に基板2が一時的に位置する所定の上昇位置である。
【0047】
この上昇位置に基板2を位置させた後、不図示の移動機構は基板ピックアップ3を所定距離下降させ、図1に実線で示すように、基板2を固定支持爪141の上に載せる。この際、基板ピックアップ3が下降を開始した後、所定のタイムラグをおいて開閉機構が動作し、基板2の下降の途中で可動支持爪142,143が基板2の側縁に当接するようになっている。
【0048】
この動作について、図4を使用してさらに詳しく説明する。図4は、可動支持爪142,143の動作を説明する図である。
まず、基板2を装着しない状態では、図4に二点鎖線で示すように、可動支持爪142は、垂直な姿勢よりも少し外側に開いた状態で待機している。この状態では、図3に示す開閉機構のカム72は所定の前進待機位置であり、開閉アーム71が板バネ155を押し広げた状態である。
【0049】
この状態で、上述の通り基板2が上昇位置から下降を開始すると、所定のタイムラグをおいて開閉機構が動作し、カム72が後退して開閉アーム71が元の位置に復帰する。この結果、板バネ155が弾性力によって内側に向けて揺動する。この際、可動支持爪142の先端は、図4に点線で示すように、上昇位置から下降してくる基板2の側縁に当接する。この際の可動支持爪142の先端の当接位置(以下、当接開始位置)は、当接の瞬間の基板2の中心O’を基準とした角度θ’で示すと、中心O’に対して5〜45度程度高い位置である。
【0050】
上記可動支持爪142の当接開始後も基板ピックアップ3は少し下降を続け、図1及び図4に実線で示すように、基板2が固定支持爪141に載置される。この間、可動支持爪142の先端は基板2の縁に当接し続けており、従って、可動支持爪142の先端は、基板2の縁を少し滑ることになる。
尚、基板2が固定支持爪141の上に載置されて装着が終了した状態では、可動支持爪142の先端の当接位置(以下、装着時当接位置)は、装着状態の基板2の中心Oを基準とした角度θで示すと、中心Oに対して4〜45度程度高い位置である。
【0051】
このように、第一の実施形態の基板支持装置では、基板2の中心の高さに対して45度以下の角度の当接開始位置で可動支持爪142が基板の縁に当接を開始し、装着完了時には基板2の中心の高さよりも高い位置で当接した状態となるよう構成されている。従って、パーティクルの問題を抑制しながら基板2の支持状態が安定化した構成になっている。
【0052】
即ち、基板2の中心の高さに対して45度を越える角度で可動支持爪142が当接すると、当接した弾みで放出されるパーティクルが基板2の表面に付着する確率が高くなるが、本実施形態では45度以下であるのでこのような問題は抑制される。また、装着完了状態で可動支持爪142が基板2の中心以下の高さで基板2の縁に当接していると、基板2を上から押さえつける力が存在しないので、基板2は何らかの弾みで跳ね上がる恐れがある。しかしながら、本実施形態では、このような問題はない。
【0053】
尚、図4には、右側の可動支持爪143は示されていないが、可動支持爪143も可動支持爪142と同様の動作をする。つまり、基板ピックアップ3の下降開始から所定のタイムラグをおいて左右の可動支持爪142,143が閉じて基板2が挟持され、さらに基板ピックアップ3が下降して左右の可動支持爪142,143の先端が基板2の縁を滑りながら基板2が下降し、その後、基板2が固定支持爪141に載るという動作になる。
【0054】
上記のようにして基板2が装着されると、基板ピックアップ3は少し下降して基板2の中央の開口の真ん中に位置した後、不図示の移動機構によって後退して開口から引き抜かれ、所定の待機位置まで移動される。これで、基板2の装着動作がすべて終了する。
【0055】
基板2の取り外し動作は、上記装着動作と逆の手順で行われる。即ち、基板ピックアップ3が不図示の移動機構によって移動されて基板2の中央の開口内に位置した後、所定のストロークで上昇する。この上昇の際、基板ピックアップ3の上に基板2の中央の開口の縁が載り、基板2の下縁が固定支持爪141から離れる。
【0056】
さらに基板ピックアップ3が上昇すると、所定のタイムラグをおいて開閉機構が駆動され、板バネ155が開く。即ち、カム71が所定の後退位置から前進して開閉アーム71を押し、開閉アーム71が回転して板バネ155を外側に揺動させる。この結果、可動支持爪142,143が外側に向けて円弧運動して移動して開いた状態となる。
基板ピックアップ3は、基板2が所定の上昇位置まで上昇した状態で停止する。その後、不図示の移動機構は基板ピックアップ3を水平に移動させて、基板2を基板支持装置から引き抜き、所定位置まで搬送する。
【0057】
上記説明から分かる通り、本実施形態では、基板ピックアップ3が基板2を保持し始めてから可動支持爪142,143が開くようになっている。このため、基板2を固定支持爪141から持ち上げる際に基板2が倒れてしまうような問題が未然に防止されている。即ち、基板ピックアップ3が基板2を保持する瞬間や保持する前に可動支持爪142,143が開くと、固定支持爪141のみでは基板2は自立できないので、基板ピックアップ3に保持される前に基板2が倒れてしまう問題がある。しかしながら、本実施形態では、基板ピックアップ3が基板2を保持し始めてから可動支持爪142,143が開くので、このような問題は未然に防止されている。
【0058】
また、本実施形態の装置では、三つの支持爪141,142,143は、ベース板11に対して着脱自在に取り付けられている。即ち、固定支持爪141を取り外す場合には、ネジ153を緩めて取付具151をベース板11から取り外し、その後、ネジ154を緩めて固定支持爪141を取付具151から引き抜く。その後、新しい固定支持爪141を取付具151に差し込んでネジ止めした後、その取付具151をベース板にネジ止めする。また、可動支持爪142,143は、ネジ156を緩めて板バネ155をベース板11から取り外し、その後、ネジ157を緩めて可動支持爪157を板バネ155から取り外す。そして、新しい可動支持爪142,143を同様にネジ止めして、ベース板11に取り付ける。
【0059】
このような支持爪141,142,143の交換は、基板支持装置がスパッタリング装置等の成膜装置に使用される場合、所定回数処理を繰り返した後に行われる。処理を相当回数繰り返すと、支持爪141,142,143にも厚く薄膜が堆積する。本実施形態の装置では、上述したように可動支持爪142,143に堆積した薄膜から放出されるパーティクルの問題は抑制されているが、膜厚が厚くなると、内部応力によって剥離して基板2の周囲を浮遊するパーティクルの量が多くなるので、ある限度の処理回数を定めてそれを越えたら支持爪141,142,143を新しいものと交換する必要がある。
【0060】
使用済みの支持爪141,142,143は、サンドブラスト法等により表面の堆積膜を除去すると、再利用できる。但し、除去の際に支持爪141,142,143の表面が大きく削れる場合には、寸法精度が悪くなるので、再利用はできない。ステンレス等で支持爪141,142,143が形成されている場合、数回程度のサンドブラスト法による薄膜除去の後は、再利用できなくなる場合が多い。
いずれにしても、本実施形態の装置では、ベース板11をそのままにして支持爪141,142,143のみを交換できるので、薄膜除去等のメンテナンスが容易であり、また、ランニングコストの点でも有利である。
【0061】
また、本実施形態の装置では、基板2はベース板11のほぼ円形の開口内に位置して装着され、基板2の周囲の空間がベース板11又はベース板11に取り付けられた部材(本実施形態では埋め込みブロック16)によって埋められる構成となっている。そして、ほぼ円形の開口の縁と基板2の縁との距離は、3mm程度であり、埋め込みブロック16の基板2側の縁と基板2の縁との距離は2mm程度になっている。つまり、基板の周囲に形成された隙間は、2〜3mm程度の小さいものになっている。
このような構成は、本実施形態の基板支持装置が、前述したスパッタリング装置のようなプラズマを形成して基板2を処理する基板処理装置に使用される場合に特に好適なものになっている。
【0062】
発明者の研究によると、プラズマを形成しながら基板2に所定の処理を施す基板処理装置において基板2の周囲に大きな隙間が形成される場合、プラズマがこの隙間にも進入してきて処理の均一性に影響を与えることが分かってきた。特に、基板2に負のバイアス電圧を印加したとき、この影響が大きいことが分かってきた。
即ち、圧力等の因子によっても影響を受けるが、プラズマは、ある程度大きな空間があると、その空間を満たすように拡散する性質がある。従って、基板2の周囲に隙間が形成されている場合、その隙間がある程度大きくなると、その隙間にもプラズマが進入してくる。
【0063】
基板2の周囲の隙間にプラズマが進入する場合、その進入の仕方が不均一であると、基板2の表面への処理が不均一になる問題がある。例えば、図9に示す従来の基板支持装置のようにベース板11にJ字状の切り欠きがあってこの切り欠きの内部で基板2が支持される場合、基板2の周囲の空間は基板2の周方向で一定でなく、不均一である。つまり、ベース板11の切り欠きの縁と基板2の縁とによって形成される隙間であったり、ベース板11によって囲まれていない開放空間であったりしている。
【0064】
このように基板2の周囲が不均一な空間である場合、その空間へのプラズマの進入の仕方が不均一になる。例えば、広い開放空間にはプラズマが薄く拡散するであろうし、狭い空間についてはホロー放電と同様な効果が生じて濃いプラズマが進入したり、さらに空間が狭くなると全くプラズマが進入しなかったりすることが考えられる。
プラズマの不均一性は、スパッタリングの場合にはスパッタ放電の不均一性となり、結果的に膜厚の不均一性につながる。その他、プラズマ中の生成種を利用した各種処理でも、プラズマの不均一性は処理の不均一性につながる。
【0065】
図5は、プラズマの進入によってもたらされる処理の不均一性を確認した実験の結果を示す図であり、図9に示す従来の基板支持装置を使用して基板2に−300Vの直流バイアス電圧を印加しながら磁性薄膜を作成した基板2のモジュレーション特性を示す図である。モジュレーション特性とは、モジュレーション即ち出力信号の異常な変動がないかどうかの特性を意味し、ここでは、基板2に作成された磁性薄膜の磁気特性が周方向での均一であるかどうかを意味している。具体的には、図5は、基板2の周方向での保持力及び残留磁束の大きさを電気信号に置き換えて表している。図5中の(A)が半径40mmでのモジュレーション特性を、(B)は半径46.5mmでのモジュレーション特性を示している。
【0066】
まず、図5の(A)に示すように、従来の装置を使用した場合、中心に近い半径40mmの位置では出力信号はほぼ均一でありモジュレーションはないが、(B)に示すように、半径46.5mmの位置では出力信号は不均一でありモジュレーションが発生している。これは、前述したように、基板2の周囲の空間が基板2の周方向で不均一であるために起きているものと推測される。基板2の周縁に近い領域でモジュレーションが発生するのは、その周囲のプラズマの不均一性が原因していると推測されるのである。
【0067】
このようなプラズマの不均一性が原因する処理の不均一性を防止するには、大きく分けて二つの方法がある。一つは、基板2の周囲の空間の大きさをできるだけ均一にし、進入するプラズマの量(プラズマ密度)を均一にする方法である。本実施形態の装置において、ベース板11が装着状態の基板2と同心のほぼ円形の開口を有しているのは、このような考え方に基づいている。即ち、基板2の周縁とベース板のほぼ円形の開口の縁との距離を、基板2の周方向に沿ってできるだけ均一にする技術思想である。このようにすると、基板2の周囲の隙間にプラズマが進入したとしてもその量が基板2の周方向で均一になるので、上述したような処理の不均一性が抑制される。
【0068】
プラズマの不均一性が原因する処理の不均一性を防止する二つめの方法は、基板2の周囲の隙間を出来るだけ小さくしてプラズマが進入してしないようにしてしまうことである。プラズマが進入しなければ、上記のようなプラズマの進入の仕方の不均一さからくる処理の不均一性はもとより発生しない。本実施形態の装置は、このような考え方から、前述した通り、基板2の周囲に形成される隙間を2〜3mm程度の小さいものにしている。
【0069】
図6は、このように改良された第一の実施形態の基板支持装置の効果を示す図である。この図6は、第一の実施形態の基板支持装置を使用して磁性薄膜が作成された基板のモジュレーション特性を示す図である。同様に、図5中の(A)が半径40mmでのモジュレーション特性を、(B)が半径46.5mmでのモジュレーション特性を示している。図5と図6を比較すると分かるように、第一の実施形態の装置を使用した場合、いずれの半径の位置でも出力信号は均一でありモジュレーションは観察されていない。
【0070】
尚、図1に示す通り、支持爪141,142,143が配置されている部分には、支持爪141,142,143が挿通される第一の隘路152等の空間が形成されるため、基板2の周囲の空間を完全な円弧状の狭い空間とすることはできない。これは、例えば可動支持爪142,143の移動のために、ある程度の隙間をもって挿通される必要があったり、接地されるベース板11に対して支持爪141,142,143に所定のバイアス電圧を与える必要があるために離間させる必要があるという事情に基づいている。しかしながら、この場合も、支持爪141,142,143が挿通されている部分の隙間をできるだけ小さくしてプラズマの進入を防止を防止することが肝要である。
【0071】
次に、基板2の周囲に形成される隙間の大きさとモジュレーションの大きさとの関係について説明する。図7は、基板2の周囲に形成される隙間の大きさとモジュレーションの大きさとの関係について説明した図であり、隙間の大きくするに従ってモジュレーションがどの程度大きくなるのかを調べた実験の結果を示している。図7の横軸の隙間の大きさは、ほぼ円形の開口の縁と基板2の縁との離間距離(図1にdで示す)であり、縦軸のモジュレーションの大きさは、図5に示す出力の平均値cに対する最大値と最小値の差(a−b)/2c×100(±%)である。
【0072】
前述した通り、隙間が小さくなれば隙間にプラズマが進入しなくなり、モジュレーションは十分に小さくなる。どの程度隙間が小さくなればモジュレーションが十分小さくなるかは、プラズマの条件が影響するので一概には言えない。最も大きく影響を与える因子は、プラズマの圧力である。図7には、圧力が3mTorrのアルゴンガスのプラズマの条件の場合が示されている。
【0073】
図7に示す通り、隙間が3mmぐらいまではモジュレーションの大きさは±3%以下に抑えられ、実用上殆ど問題とならない。また、隙間が7mmより大きくなると、モジュレーションの大きさは±5%を越えるようになり、実用上の問題が発生してくる。
一般に、圧力が高くなると、より狭い隙間でもプラズマは進入し易くなる。しかしながら、発明者の研究によると、隙間が3mm以下である場合、モジュレーションはいずれの圧力やバイアス電圧の条件でも殆ど問題とならない程度に十分小さくなる。また、隙間が7mm以下である場合でも、基板処理で採用されるであろう多くの圧力条件においてはモジュレーションは実用上問題とならない程度に十分小さくなる。従って、隙間は理想的には3mm以下であるが、実用的には隙間は7mm以下であることが好ましい。
【0074】
次に、本願発明の第二の実施形態について説明する。図8は、第二の実施形態の基板支持装置の概略構成を示す正面図である。
この第二の実施形態の装置も、ベース板11と、基板2の周縁に当接して基板2を垂直に支持するようベース板11に取り付けられた三つの支持爪141,142,143とを備えている。そして、支持爪141は、基板2の下縁を支持する固定支持爪141であり、支持爪142,143が基板2の側縁に当接する可動支持爪142,143になっている。
【0075】
この第二の実施形態の装置が第一の実施形態の装置と大きく異なるのは、固定支持爪141の先端が基板2の縁の方向に長い形状になっている点である。具体的に説明すると、固定支持爪141は、図8に示すようなほぼ方形の板状の部材である。固定支持爪141の上辺部は、図8に示すように上方に少し突出している。そして、その突出した部分の先端が基板2の縁に沿った形状、即ち、円弧状の形状になっている。尚、この固定支持爪141の円弧の曲率と基板2の周縁の円弧の曲率とはほぼ等しい。
【0076】
また、上記固定支持爪141の先端は、板厚方向で見ると浅いV字状になっている。つまり、V溝が円弧状に延びた先端形状になっている。そして、このV溝に基板2の下縁が落とし込まれるようになっている。
固定支持爪141は上記のような構成であるため、基板2の左右方向の支持位置の精度がより向上している。即ち、図1に示すような構成の固定支持爪141であると、左右の可動支持爪142,143を保持した板バネ155の弾性力のバランスによっては、基板2の支持位置が僅かに左右にずれる可能性がある。しかしながら、この第二の実施形態によると、円弧状の溝の内部に基板2の下縁が落とし込まれるので、左右方向での基板2の支持位置がより一定にできる。
【0077】
尚、固定支持爪141は、取付具158を介してベース板11に取り付けられている。取付具158は、ほぼ方形な板状の部材であり、その上辺に固定支持爪141が填め込まれる溝が形成されている。そして、取付具158は、その下側の両隅がベース板11に形成された凹部に差し込まれることによりベース板11に取り付けられる。このような構造により、本実施形態の固定支持爪141も、ベース板に対して着脱自在となっている。
【0078】
また、可動支持爪142,143の構成は、前述した第一の実施形態のものと若干異なっている。本実施形態の可動支持爪142,143は、全体が一つの板バネになっている。つまり、帯板状の部材の先端部分を図8に示すように折り曲げて、その折り曲げた先端が基板2の側縁に当接するようになっている。尚、この可動支持爪142,143を開閉する開閉機構としては、図3に示すものと同様のものが使用できる。
【0079】
また、第二の実施形態の装置では、第一の実施形態の装置におけるような埋め込みブロック16は採用されていない。そして、図8に示すように、可動支持爪142,143が配置された場所には、中央のほぼ円形の開口から連続して第二の隘路171がベース板11の形成され、可動支持爪142,143はこの第二の隘路171内に位置して開閉動作を行うようになっている。
第二の隘路171及び上記固定支持爪141が設けられた部分を除き、基板2の周囲はほぼ円形の開口の縁によって取り囲まれている。そして、このほぼ円形の開口の縁と基板2の縁の間は3mm程度の狭い隙間になっている。このため、第一の実施形態と同様に、基板2の周囲へのプラズマの進入がなく、また進入したとしても進入の仕方が均一であるために、基板2に対する処理が不均一になることがなくなっている。
【0080】
また、ベース板11には、第二の隘路171のほぼ円形の開口とは反対側の出口から下方に延びるようにして、長い揺動用開口172が形成されている。この揺動用開口172は、板バネが揺動するための空間として形成されているものである。
【0081】
図8中、右側の可動支持爪143の図示状態は、可動支持爪143が当初予定された位置で基板2の側縁に当接している状態である。一方、図8中に実線で示された左側の可動支持爪142の図示状態は、何らかの原因で、予定された位置よりさらに内側に揺動してしまった状態を示している。この状態では、可動支持爪142は、揺動用開口172の基板2に近い側の縁に当接した状態となる。つまり、揺動用開口172の基板2に近い側の縁は可動支持爪142,143の内側ストッパとして機能する。この内側ストッパが存在するため、可動支持爪142,143が何らかの弾みで限度以上に基板2を押してしまうことがなく、水平方向の基板の位置精度が高く保たれる。
【0082】
また、図8中の二点鎖線で示された左側の可動支持爪142の図示状態は、可動支持爪142が、何らかの理由で、予定された位置よりさらに外側に開いてしまった状態を示している。この状態では、可動支持爪142は、揺動用開口172の基板2から遠い側の縁に当接した状態となる。つまり、揺動用開口172の基板2から遠い側の縁は可動支持爪142,143の外側ストッパとして機能する。この外側ストッパが存在するため、可動支持爪142,143が限度以上に開いて塑性変形してしまうのが防止される。
尚、このような内側ストッパや外側ストッパは、第一の実施形態においても設けることは可能である。
【0083】
また、第一第二の実施形態では、三つの支持爪141,142,143を使用しているが、四つ以上の支持爪を使用することを本願発明は排除するものではない。
【0084】
尚、前述した第一の実施形態において支持爪141,142,143の厚さが0.2〜2mmになっている構成は、第一の実施形態の構成に限定されず、基板2の厚さ方向が幅方向である帯板状の部材からなる支持爪を使用するすべての基板支持装置について有効である。
【0085】
また、上述した基板支持装置は、図11に示すような薄膜作成装置に採用されるが、これ以外にも、エッチング装置や表面改質装置等の処理装置に採用することが可能である。
【0086】
【発明の効果】
以上説明した通り、本願の請求項1の発明によれば、基板の下縁が固定支持爪で支持され、二つの可動支持爪が基板の中心の高さの位置よりも高い位置の側縁を当接にするよう設けられているので、この三つの支持爪のみで高い位置精度で安定して基板の支持が可能となるとともに、シャドー効果が低減されて基板処理の質が高くなるという効果が得られる。また、基板の中心の高さよりも低い位置で開閉機構が可動支持爪又は可動支持爪を保持した部材に当接して開閉動作を行うので、開閉動作に伴って発生するパーティクルが基板の表面に付着するのが低減される。
また、請求項2の発明によれば、上記効果に加え、基板が所定の上昇位置から下降して固定支持爪の上に載せられる際に可動支持爪が基板の中心に対して5度から45度高い側縁の位置で基板に当接し始めるので、可動支持爪の当接によって発生するパーティクルの基板への付着を抑制しながら、可動支持爪からの基板の跳ね上がりを効果的に抑制できるという効果が得られる。
また、請求項3の発明によれば、上記効果に加え、可動支持爪が板バネの先端に設けられるので、板バネの厚さを所定の厚さに設定しながら、可動支持爪の厚さを所定の厚さに薄くすることが可能となる。このため、可動支持爪によるシャドー効果がさらに抑制される。
また、請求項4の発明によれば、上記効果に加え、可動支持爪が限度以上に内側に位置するのが抑制されるので、水平方向での基板の装着位置の精度が高く保たれるという効果が得られる。
また、請求項5の発明によれば、上記効果に加え、可動支持爪が限度以上に開くのが防止されるので、板バネの塑性変形が防止されるという効果が得られる。
また、請求項6の発明によれば、上記効果に加え、三つの支持爪がすべてベース板から着脱自在となっているので、支持爪に堆積した薄膜の除去等のメンテナンスを容易に行うことができ、基板支持装置全体を交換する場合に比べて、ランニングコストも安くできるという効果が得られる。
また、請求項7の発明によれば、上記効果に加え、基板の周囲の隙間がほぼ均一な空間になるので、その隙間にプラズマが進入してもそのプラズマの進入によって基板の処理が不均一になるのが抑制されるという効果が得られる。
また、請求項8の発明によれば、上記効果に加え、基板の周囲の隙間が7mm以下になるので、実用的な圧力条件においてその隙間にプラズマが進入するのが抑制される。このため、プラズマの進入に伴う問題が生じない。
また、請求項9の発明によれば、上記効果に加え、三つの支持爪及びこれらの支持爪をベース板に取り付ける部材がベース板の厚み以下の幅を有しており、ベース板の板面から突出していないので、狭い空間を通って基板支持装置が搬送される場合に特に好適な構成となるという効果が得られる。
また、請求項10の発明によれば、上記効果に加え、支持爪の先端部分が0.2〜2mmの厚さであるので、十分な機械的強度を有しつつ支持爪によるシャドー効果が防止されるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の第一の実施形態の基板支持装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1のX−Xでの断面概略図である。
【図3】図1に示す可動支持爪142,143を開閉する開閉機構の構成を説明する斜視概略図である。
【図4】可動支持爪142,143の動作を説明する図である。
【図5】プラズマの進入によってもたらされる処理の不均一性を確認した実験の結果を示す図であり、図9に示す従来の基板支持装置を使用して磁性薄膜が作成された基板2のモジュレーション特性を示す図である。
【図6】第一の実施形態の基板支持装置の効果を示す図である。
【図7】基板2の周囲に形成される隙間の大きさとモジュレーションの大きさとの関係について説明した図であり、隙間の大きくするに従ってモジュレーションがどの程度大きくなるのかを調べた実験の結果を示している。
【図8】第二の実施形態の基板支持装置の概略構成を示す正面図である。
【図9】従来の基板支持装置の構成を示す正面概略図である。
【図10】図9に示す基板支持装置の動作を説明する斜視概略図である。
【図11】図9及び図10に示す基板支持装置を採用した基板処理装置の例の概略構成を示す平面図である。
【符号の説明】
1 基板支持装置
11 ベース板
141 固定支持爪
142 可動支持爪
143 可動支持爪
151 取付具
152 第一の隘路
155 板バネ
16 埋め込みブロック
171 第二の隘路
3 基板ピックアップ
71 開閉アーム
Claims (12)
- 円形の基板を垂直に保持しながらその円形の基板に所定の処理を施す基板処理装置においてその基板の支持のために使用される基板支持装置であって、垂直な姿勢で取り付けられるベース板と、基板の周縁に当接して基板を垂直に支持するようベース板に取り付けられた三つの支持爪とを備え、これら三つの支持爪の一つは、基板の下縁に当接して基板を支えるものであって基板の支持の際には弾性によって位置が変化することのない固定支持爪であり、他の二つの支持爪は、基板の着脱の際に開閉される可動支持爪であって基板が所定の上昇位置から垂直な姿勢を保って下降して固定支持爪の上に載せられる際に基板の側縁に当接して基板を挟み込むものであり、さらに、この二つの可動支持爪は、基板が固定支持爪に支持された状態において基板の中心の高さの位置よりも高い位置の側縁を当接にするよう設けられており、
二つの可動支持爪は、開閉機構により開閉が行われる部材であって、開閉機構を構成する部材が各可動支持爪又は各可動支持爪を保持した部材に当接して押すことで開閉が行われるようになっており、この当接位置は、基板の中心の高さよりも低い位置となっていることを特徴とする基板支持装置。 - 前記可動支持爪は、基板が所定の上昇位置から垂直な姿勢を保って下降して固定支持爪の上に載せられる際に、基板の中心に対して5度から45度高い側縁の位置で基板に当接し始めるものであることを特徴とする請求項1記載の基板支持装置。
- 前記可動支持爪は、板バネの先端に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の基板支持装置。
- 前記基板が前記固定支持爪の上に載せられた際に前記可動支持爪が所定位置で停止するようにする内側ストッパが設けられていることを特徴する請求項1、2又は3記載の基板支持装置。
- 前記可動支持爪は板バネの先端に設けられているか又は全体が板バネであり、この可動支持爪の開きが所定の位置で停止するようにする外側ストッパが設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の基板支持装置。
- 前記固定支持爪及び前記可動支持爪はすべて前記ベース板から着脱自在となっていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の基板支持装置。
- 前記ベース板は、前記基板の直径より大きいほぼ円形の開口を有して前記基板がこの開口内で下降して前記固定支持爪の上に載せられる構造であるとともに、前記固定支持爪及び前記可動支持爪はこのほぼ円形の開口の縁から内側に突出して基板の周縁に当接するよう設けられており、基板が装着された状態では、前記固定支持爪及び前記可動支持爪が設けられている部分を除き基板は前記ほぼ円形の開口の周縁によって取り囲まれており、基板の周囲の空間が所定の隙間を残してベース板又はベース板に取り付けられた部材によって埋められる構造であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の基板支持装置。
- 前記基板の周縁と前記ほぼ円形の開口の周縁又はベース板に取り付けられた部材の基板側の縁との隙間は、7mm以下であることを特徴とする請求項7記載の基板支持装置。
- 前記三つの支持爪及びこれらの支持爪をベース板に取り付ける部材は、ベース板の厚み以下の幅を有しており、ベース板の板面から突出していないことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の基板支持装置。
- 前記三つの支持爪は、基板の厚さ方向が幅方向である帯板状の部材からなるものであり、これら支持爪の少なくとも基板に当接する先端部分の厚さは0.2mm〜2mmであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の基板支持装置。
- 前記固定支持爪の先端は、基板の縁の方向に長い形状になっていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の基板支持装置。
- 前記固定支持爪は、基板の中心の直下の位置で基板を支持するよう 設けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の基板支持装置。
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