JP4059335B2 - 空隙充填グラウト材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空隙充填グラウト材に関し、地盤内の大間隙やトンネル等の構造物周辺における空洞、敷設管内等の充填や、ダブルパッカー工法等の注入工法における前処理としての注入に適した空隙充填グラウト材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、地盤内の大間隙やトンネル等の構造物の周辺に発生している空洞、敷設管内等においてこれを充填したり、ダブルパッカー工法等のような注入工法においてその前処理のために注入するグラウトとしては、粘着性を持たせてセメント懸濁液のブリージングを防止するようにセメントとベントナイトとを組合せたセメントーベントナイト液(以下CBグラウトと称する)が使われていた。
【0003】
CBグラウトの注入充填は、通常、ベントナイトを水に膨潤させた後、これにセメントを加えてブリージングを1〜5%に抑えた粘着性グラウトを作り、1台のポンプで注入充填する一液性方式で行なわれている。
【0004】
このCBグラウトは、主材のセメントとして通常に使用されている普通セメントが、簡単に入手することが可能であり、硬化発現も8〜9時間程度で施工性にすぐれていることから、多くの使用実績を重ねている。
【0005】
このCBグラウトは、ベントナイトを水で膨潤させて粘着性を与えた後にセメントを加えると、ベントナイトがセメント中の水酸化カルシウムを主にするアルカリ成分とある種のゲル化反応を起こして粘着性を増大させることから、ブリージングの少ない粘着性グラウトを得ることができる。
【0006】
しかし、通常に使われているベントナイトは、カリウム系ベントナイトを使用せずに、膨潤性の高いナトリウム系ベントナイトを採用するのが一般的であるが、ナトリウム系ベントナイト膨潤液は、ナトリウム成分の影響を受けて、セメントとの相性が悪くセメントの硬化発現を阻害する傾向にある。
【0007】
このために、CBグラウトが一定の強度を得るためには多くのセメントを必要とすることになるが、配合上からは多量のセメントを用いることができないために、結果的に高強度のグラウトを得られないという問題がある。
【0008】
しかるに、最近のように地盤内の大間隙やトンネル等の構造物の周辺に存在する空洞、敷設管内等においてこれを充填する必要性が高くなってくると、上述のような問題を早急に改善して、セメントと同等程度もしくはそれ以上の早期強度の発現が可能になると同時に、セメント以上の長期間に亘って所望の強度が維持されるグラウト材の開発が求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の状況に鑑みて提案するものであり、ベントナイトと相性の悪いセメントの代わりに、高炉水砕スラグ粉末等のスラグの採用を基本にして、スラグが本来的に備えている潜在水硬性の性質を有効に活用すべく、石灰をアルカリ刺激剤として加えることで活性化し、これによって、スラグの硬化を効率的に促進するナトリウム系ベントナイトとの相性も良好にして、グラウト材としての硬化発現を阻害する要因を排除している。
【0010】
又、アルカリ性を呈するが、スラグを硬化するためのアルカリ刺激剤としての効果は殆ど無い水ガラスを添加することで、早期強度の発現を促進させると同時に粘着性を高めることができるという、発明者等が新規に解明した知見をこれに加味することで上述した問題点を完全に解消している。
【0011】
即ち、本発明は、スラグ、石灰及びベントナイトから成る粘着性懸濁液を構成し、これに水ガラスを添加することによって、ブリージングを少なくして粘着性を高めながらセメント系に比べても早期強度の発現が遅くならない状態で硬化を促進させ、最終的にも高い固結強度を得ることができる空隙充填グラウト材を提供している。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明である空隙充填グラウト材は、スラグ、石灰及びベントナイトから成る粘着性懸濁液で構成する空隙充填グラウト材であって、SiO2換算値で1.7〜8.4kg/m3の水ガラスを添加することを特徴としており、早期強度の発現が遅くならない状態で硬化を促進させると共に、ブリージングを少なくして粘着性を高めて最終的に高い固結強度を得ることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明である空隙充填グラウト材は、請求項1に記載の空隙充填グラウト材において、スラグと石灰から成る粘着性A懸濁液とベントナイトと水ガラスとから成る粘着性B懸濁液との2液を混合して、フロー値を13cm未満にし、ブリージングを0%にした可塑状に構成することを特徴としており、上記機能に加えて、グラウト材自体は自立していながらポンプ等の加圧によって液体状に変態し容易に流動化できる。
【0014】
請求項3に記載の発明である空隙充填グラウト材は、請求項1に記載の空隙充填グラウト材において、スラグ、石灰及びベントナイトから成る粘着性懸濁液の1液であって、フロー値を13cm以上にし、ブリージングを1〜5%にした流動状に構成することを特徴としており、上記機能に加えて、従来のCBグラウトと同様な施工を可能にしている。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明による空隙充填グラウト材は、基本的に、スラグ、石灰及びベントナイトから成る粘着性懸濁液で構成する空隙充填グラウト材であって、SiO2換算値で1.7〜8.4kg/m3の水ガラスを添加することを特徴としており、具体的には、スラグと石灰から成る粘着性A懸濁液とベントナイトと水ガラスとから成る粘着性B懸濁液との2液を混合した後に充填して、フロー値を13cm未満にしブリージングを0%にした可塑状に構成したり、スラグ、石灰及びベントナイトから成る粘着性懸濁液の1液であって、フロー値を13cm以上にしブリージングを1〜5%にした流動状に構成している。
【0016】
以下に、本発明を検証するための実験結果に基づいて、その実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
本発明の基本は、ベントナイトと相性の悪いセメントの代わりに、高炉水砕スラグ粉末等のスラグを採用した粘着性懸濁液を構成し、スラグが本来的に備えている潜在水硬性の性質を有効に活用すべく、石灰をアルカリ刺激剤として加えることで活性化し、これによって、スラグの硬化を効率的に促進するナトリウム系ベントナイトとの相性も良好にして、グラウト材としての硬化発現を阻害する要因を排除すると共に、併せてスラグを硬化するためのアルカリ刺激剤としての効果は殆ど無い水ガラスをこれに添加することで、早期強度の発現を促進させると同時に粘着性を高めることができるという知見から構築されている。
【0018】
そこで、最初の実験では、スラグと石灰をベースにして懸濁液を構成し、これにベントナイトもしくは水ガラスを添加することによって、所望の粘着性が発現されるか否かを確認した。
【0019】
従来から、スラグは、アルカリ刺激剤を加えると、潜在水硬性を発揮して、硬化することは公知であり、アルカリ刺激剤として代表的なものには、セメント、石灰、苛性ソーダが挙げられてきたが、本実験に用いた材料は、スラグとして「セラメント」(第一セメント株式会社製、商品名)を、アルカリ刺激剤として上記の中から石灰としては、「特上」(消石灰)(同和カルフィン株式会社製、商品名)を採用している。
【0020】
そして、これに添加するベントナイトには、「スーパークレー」(商品名)を使用し、水ガラスには、SiO2、25.3%、Na2O、8.3%、比重、1.33で、水ガラスが1リットル中にSiO2 が336g含有される、モル比約2.5以上の高アルカリ性(PH11〜12)でありながら、スラグのアルカリ刺激剤としては実用的に殆ど効果がないものを使用しており、比較例としてのセメント懸濁液には、普通セメントを用いて構成している。
【0021】
本実験では、スラグ−石灰懸濁液と比較例であるセメント懸濁液に、ベントナイトもしくは水ガラスを加えた場合のブリージング量によって、粘着発生量を確認した。実験結果は、図1の表に示す通りであるが、同表では、ブリージングが少ない程、粘着力(量)が大きいことを意味している。
【0022】
本実験において、ベントナイトを加える場合は、水にベントナイトを入れて充分攪拌・膨潤した後に、スラグ−石灰もしくはセメントを投入すようにしており、良く攪拌することで調整した。又、水ガラスを加える場合は、水ガラスをスラグー石灰懸濁液もしくはセメント懸濁液に入れて良く攪拌することで粘着生成物(含水ケイ酸ゲル)を調整している。
【0023】
実験後の結果を示すブリージングは、200mlメスシリンダーに配合液を入れて密閉し、24時間後の離しょう水を測定して(ml)で示している。
【0024】
表―1に示す実験結果によると、実験No.4のスラグ−石灰懸濁液と実験No.1のセメント懸濁液のみの場合には、95(ml)、99(ml)と、ブリージングは約50%の値を示して非常に多くなっているが、少量のベントナイトや水ガラスを加えると、スラグー石灰懸濁液、セメント懸濁液のいずれの場合にも、多量の粘着生成物ができることから、ブリージングの各値は大幅に少なくなることが確認されている。
【0025】
このことから、従来から公知のように、スラグがアルカリ刺激剤を加えられて潜在水硬性を発揮し硬化することに加えて、スラグー石灰懸濁液にベントナイトもしくは水ガラスが加えられることで、石灰とベントナイトもしくは水ガラスとの間に別途の作用効果が発生していることが、比較実験例の実験No.2、3と、スラグー石灰懸濁液にベントナイトを添加した実験No.5〜7、水ガラスを添加した実験No.8〜10を比べると、ブリージングの値を少なくしていることから明らかにしている。、
【0026】
特に、一般に膨潤度が非常に高いと言われているベントナイトよりも、アルカリ刺激剤としての効果が殆どない水ガラスの方が、ブリージングが少なくなって多くの粘着生成物を生成していることが明らかであり、次のような作用効果が発揮されているものと推考される。
【0027】
(1)石灰に少量の水ガラスを併用することによって、スラグの潜在水硬性反応を刺激して早期強度の発現を促進する。
(2)グラウト中の石灰と水ガラスが、ゲルタイムとしては1〜2秒以下のほと んど瞬時に反応して、含水ケイ酸ゲルを生成する。
【0028】
しかして、生成された含水ケイ酸ゲルは、多量の水を包含した粘着性物質であって、ベントナイトと同様に粘着性を増加させることから、ベントナイトの粘着性と石灰と水ガラスの反応による含水ケイ酸ゲルとの相乗効果によって、上記の実験結果のようなブリージングの少ないグラウトを得ることができるものである。
【0029】
以上の実験結果から明らかなように、スラグ、石灰及びベントナイトから成る懸濁液に少量の水ガラスを添加することは、ブリージングを少なくしながら粘着性を高めるように機能することが明らかであるから、本発明による空隙充填グラウトは、所望の粘着性を発現することを検証できる。
【0030】
しかして、スラグが石灰のアルカリ刺激剤によって潜在水硬性を発揮するものの、その硬化反応は非常に緩慢であって、早期強度の発現はセメント系よりも劣るという問題も知られていたが、本発明では、発明者等の新規な知見によって、水ガラスをこれに添加することで早期強度の発現を促進させると同時にその粘着性を高めている。
【0031】
そこで、次の実験では、スラグ、石灰及びベントナイトとから成る粘着性懸濁液に水ガラスを加えたグラウト材についてのブリージング、フロー値、硬化が発現するまでの時間及び長期の一軸圧縮強度を測定して、本発明による空隙充填グラウトが、セメント系における早期強度の発現よりも同等以上の速さで所望の硬化として発現されるか否かを確認した。
【0032】
本実験では、スラグと石灰をベースにして粘着性懸濁液と成し、これにベントナイトもしくは水ガラスを添加することによって、本発明による空隙充填グラウト材を構成しており、CBグラウトを比較例として同時に実験している。
【0033】
グラウトの粘性は、アクリル板上に置いた内径80mm、高さ80mmの円筒の中にCBグラウトを満たした後に、円筒を静かに持ち上げて、その時のグラウトの広がり(直径)を測定して、単位(cm)で表示する、円筒フローン方法で測定した。
【0034】
又、グラウトの硬化が発現するまでの時間判定は、アスファルト針入度試験法(JIS K2530−1961)に準じて行なっており、質量180g、先端角度15°の貫入コーンを用いて静的貫入抵抗を測定して、貫入値が250mm(推定圧縮強度0.5N/cm2)値を以って示している。
【0035】
尚、ブリージングは、上記実験と同様に500mlメスシリンダーにグラウト材を入れて密閉して置き、3時間後の離しょう水を測定して%で表示している。
【0036】
図2の表に示す実験結果は、フロー値を13cm未満にしブリージングを0%にして可塑状に構成したグラウト材の実施形態における測定の代表的な結果であり、図3の表に示す実験結果は、フロー値を13cm以上にしブリージングを1〜5%の範囲にして流動状に構成したグラウト材の実施形態における測定の代表的な結果を示している。
【0037】
図2の表に示すように、可塑状グラウトに構成したグラウト材の実施の形態では、スラグと石灰から成る粘着性A懸濁液(0.5m3)とベントナイトと水ガラスとから成る粘着性B懸濁液(0.5m3)との2液を混合した後に充填する2液性注入方式を採用している。
【0038】
図2の表に示すブリージングを0%、フロー値を13cm未満にして可塑状に構成したグラウト材の実験結果では、グラウトの硬化が発現するまでの時間が、比較例であるベントナイト単味の場合には、実験No.11、12が示すように、CBグラウト材が8〜9時間である。これに対して、実験No.13に示すスラグ、石灰及びベントナイトから成る粘着性懸濁液は、15.5時間を要して硬化反応が非常に緩慢になっており、このような傾向は、実験No.20のように石灰を増量しても14.0時間と改善できないことを示している。
【0039】
さらに、ベントナイト量を減らすしながら水ガラスを添加して上記のブリージングとフロー値に調整している場合であっても、水ガラスの添加が0.84kgと少ない場合には、実験No.14、21の測定値が示すように、13.5時間、13.0時間に縮減するのみであり、CBグラウト材のレベルには達していないばかりでなく、実験No.14のように石灰が20kgと少ない場合には粘着力が低下してフロー値が大きくなることも判明した。
【0040】
しかして、水ガラスの添加量を増やすことで硬化の発現時間を短縮しようとしても、添加量が多くなるに従って硬化の発現時間が早くなり、実験No.15、22の測定値が示すように、SiO2量が3.36kgの程度でCBグラウトとほぼ同じ時間となりながら、さらに多く添加して行くと実験No.18、25の測定値のように3時間になって非常に早くなるが、SiO2量が8.7kgを超越して増やされても、実験No.19、26の測定値が示すように、それ程に効果が認められないばかりでなくフロー値が大きくなって粘着力が低下することも確認されている。
【0041】
一方、一軸圧縮強度の測定値をみると、CBグラウトに比べて本実施の形態であるスラグ、石灰及びベントナイトから成る粘着性懸濁液の一軸圧縮強度は、大幅に高くなっており、28日の長期では、実験No.11の比較例で示したセメント500kgよりも少ない量になる、スラグ400kg、石灰20〜40kgにもかかわらず、約1.5〜2倍と高くなっており、最終的な固結強度に優れていることが検証されている。
【0042】
尚、水ガラスの添加に関しては、7日後において無添加よりも高い一軸圧縮強度を呈しているが、実験No.19、26の測定値がその傾向を示すように、長期的(28日)には水ガラスの添加量が多くなると、グラウト材の強度が若干低下しその傾向も大きくなる。
【0043】
以上の実験結果から明らかなように、スラグ、石灰及びベントナイトから成る粘着性懸濁液で構成する空隙充填グラウト材は、SiO2換算値で1.7〜8.4kg/m3の水ガラスを添加することで、セメント系における早期強度の発現時間以上の速さで所望の硬化を発現し、長期の一軸圧縮強度においても高い値を呈しており、ブリージングを0%にしフロー値を13cm未満にした可塑状に構成しても、所期の目的が達成できることを確認できる。
【0044】
そして、この実施の形態では、スラグと石灰から成る粘着性A懸濁液とベントナイトと水ガラスとから成る粘着性B懸濁液との2液を混合した後に充填する、2液性注入方式を採用することで上記の実験結果を測定しており、2液性注入方式での充填が可能であることを明らかにしている。
【0045】
又、図3の表に示している実験結果は、ブリージングを1〜5%の範囲にしフロー値を13cm以上にして流動状に構成したグラウト材の実施形態における測定の代表的な結果を示している。
【0046】
図3の表に示すように、流動状グラウトに構成したグラウト材の実施の形態では、1液性注入方式を採用している。
【0047】
図3の表に示す流動状グラウトは、図2の表に示した可塑状グラウトとほぼ同様な性質を示すことから詳しい実験例は示していないが、流動状で用いることから、実験No.27の測定値がその傾向を示すように、石灰を少なくしながらベントナイトを23kgにして水ガラスを1.68kgに調整して、ブリージングを1〜5%にし、フロー値は13cm以上にすることでグラウトの硬化が発現するまでの時間をCBグラウトより若干遅くし、一軸圧縮強度も若干低い程度にしている。
【0048】
これに対して、実験No.28の測定値は、石灰を40kgに多くしながらベントナイトと水ガラスとを15kgにすることで、水ガラスをSiO2換算値で5.04kgに調整し、ブリージングを3.3%にしてフロー値を18.4cmにすることで、グラウトの硬化が発現するまでの時間を大幅に短縮し、一軸圧縮強度もCBグラウトより高い値に設定できることを示唆している。
【0049】
一方、実験No.29の比較例が示すように、水ガラスを添加しない場合には、石灰とベントナイトとを実験No.27とほぼ同程度にしても、ブリージングと値及び一軸圧縮強度が大きくなってもグラウトの硬化が発現するまでの時間が20.5時間と極端に延長することになって、充填グラウト材としては不適当である。
【0050】
以上の実験結果から明らかなように、スラグ、石灰及びベントナイトから成る粘着性懸濁液で構成する空隙充填グラウト材は、SiO2換算値で1.7〜8.4kg/m3の水ガラスを添加して、ブリージングを1〜5%にしフロー値を13cm以上にした流動状に構成することで、従来のCBグラウトと同様な施工を可能にしながら最終的に固結強度を優れたものにできることを確認できた。
【0051】
以上の実験結果から確認されたところによって、空隙充填グラウト材は、スラグ、石灰及びベントナイトから成る粘着性懸濁液の中に加えられる水ガラス量が、グラウト材1m3単位に対してSiO2換算において0.8kgでは早期強度の発現がみられず、1.7kg以上の水ガラスを加えることによって従来のCBグラウトと同程度以上の時間での早期強度の発現がみられる。
【0052】
一方、SiO2量を増やしていくに従って、早期強度の発現はSiO2量が8.4kgまでは促進されるが、それ以上ではそれ程効果はなく、加えて粘着力が低下する傾向を示す。これに加えて、空隙充填グラウト材の強度は、水ガラスを加えると7日後の早期強度は大きいが、28日後の長期では、反対に低下する傾向を示すようになり、SiO2量が8.4kg以上になるとその傾向が大きくなる。
【0053】
従って、本発明による空隙充填グラウト材は、粘着性、フロー値、グラウトの効果が発現するまでの時間及び固結強度面を綜合的に判断して、グラウト中に加えられる水ガラス量を、SiO2換算値で1.7〜8.4kg/m3の範囲に限定している。
【0054】
尚、石灰の添加量は、グラウト1m3を単位にして20〜40kgあるいはスラグの5〜10%程度にすることでスラグの硬化が確認されているので、その範囲を特定していない。
【0055】
加えて、本発明におけるスラグは、実施の形態として特に限定するものではないが、セメント程度の粉末度以上のものを用いることが適当であり、石灰は、生石灰であっても採用可能であるが消石灰の使用が好ましく、産地による品質の相違に関しては特に限定するものではない。
【0056】
同様に、ベントナイトは、モンモリロナイト粘土鉱物を主成分としたものを採用しているが、これに限定するものではない。
【0057】
さらに、水ガラスに関しても、モル比2.5以上であれば特に限定するものではないが、好ましくはモル比2.8〜4.0のものが最適である。
【0058】
この他にも、本発明による空隙充填グラウト材は、砂、フライアッシュ、岩石、石灰石、ドロマイト等の一次鉱物微粉末、ベントナイトを除く陶土等の粘土鉱物、添加剤として分散剤、起泡剤やアルミニウム粉末等の発泡剤、遅延剤、早期強度発現材等を、それぞれの状況や充填の目的に合わせて加えることができるものである。
【0059】
以上のように、本発明による空隙充填グラウト材は、スラグ、石灰及びベントナイトから成る粘着性懸濁液で構成する空隙充填グラウト材において、SiO2換算値で1.7〜8.4kg/m3の水ガラスを添加することで、早期強度の発現が遅くならない状態で硬化を促進させると共に、ブリージングを少なくして粘着性を高めて最終的に高い固結強度を得ることができる。
【0060】
又、本発明による空隙充填グラウト材は、フロー値を13cm未満にしブリージングを0%に粘着剤を調整した可塑状に構成することが可能であり、この場合には、スラグと石灰から成る粘着性A懸濁液とベントナイトと水ガラスとから成る粘着性B懸濁液との2液とし、粘着性A懸濁液と粘着性B懸濁液とを別々のポンプで圧送し、注入ホースや注入管等を通じて注入口付近で合流混合して充填する2液性注入方式で施工するのが適当である。
【0061】
但し、水ガラスは粘着性B懸濁液として加えることに限定されるものでなく、配合によっては粘着性A懸濁液に加えることも可能である。
【0062】
しかして、上記の可塑状に構成された空隙充填グラウト材は、グラウト材それ自体では自立しているが、ポンプ等で加圧されることで容易に流動化する特性を備えており、注入は可塑状に変質させたグラウトを目的の地盤内の大間隙や構造物周辺の空洞に注入充填している。
【0063】
そして、本発明における粘着性A懸濁液と粘着性B懸濁液との注入比は、特に限定するものではなく、添加剤の有無等の配合や粘性の高低等によって、等量注入あるいはいずれかの懸濁液が他方の懸濁液より多い比例注入で行うことも任意である。
【0064】
以上のように、本発明による空隙充填グラウト材は、上記の空隙充填グラウト材において、スラグと石灰から成る粘着性A懸濁液とベントナイトと水ガラスとから成る粘着性B懸濁液との2液を混合した後に充填して、フロー値を13cm未満にし、ブリージングを0%にした可塑状に構成することを特徴としており、上記機能に加えて、グラウト材自体は自立していながらポンプ等の加圧によって液体状に変態し容易に流動化させて、目的の地盤内の大間隙や構造物周辺の空洞に注入可能にしている。
【0065】
加えて、本発明による空隙充填グラウト材は、スラグ、石灰及びベントナイトから成る粘着性懸濁液で構成し、SiO2換算値で1.7〜8.4kg/m3の水ガラスを添加する上記の空隙充填グラウト材において、ブリージングを1〜5%にしフロー値を13cm以上にした流動状に構成しており、従来のCBグラウトと同様な施工を可能にしながら、最終的に優れた固結強度を発揮している。
【0066】
以上、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明してきたが、本発明による空隙充填グラウト材は、上記実施の形態に何ら限定されるものでなく、スラグ、石灰、ベントナイト及び粘着性懸濁の種類等に関して、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
【0067】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明である空隙充填グラウト材は、スラグ、石灰及びベントナイトから成る粘着性懸濁液で構成する空隙充填グラウト材であって、SiO2換算値で1.7〜8.4kg/m3の水ガラスを添加することを特徴としているので、早期強度の発現が遅くならない状態で硬化を促進させると共に、ブリージングを少なくして粘着性を高め、最終的に高い固結強度を得ることができる効果を発揮している。
【0068】
請求項2に記載の発明である空隙充填グラウト材は、請求項1に記載の空隙充填グラウト材において、スラグと石灰から成る粘着性A懸濁液とベントナイトと水ガラスとから成る粘着性B懸濁液との2液を混合して、フロー値を13cm未満にし、ブリージングを0%にした可塑状に構成することを特徴としており、上記効果に加えて、グラウト材自体は自立していながらポンプ等の加圧によって液体状に変態し容易に流動化できる効果を発揮している。
【0069】
請求項3に記載の発明である空隙充填グラウト材は、請求項1に記載の空隙充填グラウト材において、スラグ、石灰及びベントナイトから成る粘着性懸濁液の1液であって、フロー値を13cm以上にし、ブリージングを1〜5%にした流動状に構成することを特徴としており、上記効果に加えて、従来のCBグラウトと同様な施工を可能にする効果を発揮している。
【図面の簡単な説明】
【 図1】本発明による空隙充填グラウト材を検証するために、粘着性生成物の発生を確認する実験結果の表
【 図2】可塑状に構成した本発明による空隙充填グラウト材を検証するために、フロー値、硬化発現までの時間及び一軸圧縮強度を確認する実験結果の表
【 図3】流動状に構成した本発明による空隙充填グラウト材を検証するために、フロー値、硬化発現までの時間及び一軸圧縮強度を確認する実験結果の表
Claims (3)
- スラグ、石灰及びベントナイトから成る粘着性懸濁液で構成する空隙充填グラウト材であって、SiO2換算値で1.7〜8.4kg/m3の水ガラスを添加することを特徴とする空隙充填グラウト材。
- スラグと石灰から成る粘着性A懸濁液とベントナイトと水ガラスとから成る粘着性B懸濁液との2液を混合して、フロー値を13cm未満にし、ブリージングを0%にした可塑状に構成することを特徴とする請求項1に記載の空隙充填グラウト材。
- スラグ、石灰及びベントナイトから成る粘着性懸濁液の1液であって、フロー値を13cm以上にし、ブリージングを1〜5%にした流動状に構成することを特徴とする請求項1に記載の空隙充填グラウト材。
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