JP4058274B2 - 燻煙乾燥処理方法と装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原木を燻煙乾燥処理する燻煙乾燥処理方法と装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
木材は、建築用材・家具用材等として使用され、森林から伐採されると乾燥した後加工される。そして、木材を乾燥不十分なまま使用すると、乾燥するのに伴って割れやねじれ等による狂いが生じて使用後の建築に悪影響を及ぼしてしまう。従って、乾燥工程を十分に行なうことが重要とされてきた。しかも、木材を乾燥させることによって木材自体に強度を増すことになり、十分な乾燥を行なうことが、建築構造の品質を向上させることとなっていた。
【0003】
近年、木材を乾燥させる方法としては、蒸気乾燥による方法、高周波乾燥による方法等が開発されて利用されている。しかし、建築用材として広く使用される杉は、伐採された個々の杉における水分のばらつきが多いだけでなく、材中に含まれる水分が多く、心材部分と辺材部分とでは乾燥にばらつきを生じやすく乾燥を困難にしていた。
【0004】
このことから、割れや反り等の原因となる残留応力を除去させる効果のある燻煙乾燥処理方法が注目されてきている。この燻煙乾燥処理は、木質系バイオマスを燃焼させて、その燃焼ガスを乾燥室へ導入し、熱と煙により木材を乾燥処理するものである。これによって、乾燥効果を向上した原木を提供できるとともに、製材時に発生する木屑や端材を燃料として利用できることから化石燃料の消費を抑制できるとともに資源の有効利用を図ることができる。
【0005】
しかも、化学薬品を使用しないことによって環境の悪化を防止でき、さらに、燻煙処理によって、木材の防腐・防カビ・防蟻性能を有して耐久性を向上させることができる。
【0006】
従来の燻煙乾燥処理としては、燃焼室の上方に乾燥室を配置して行なう上下配列方法や、特公平4−72151号に示されるような、燃焼室と乾燥室とを左右方向に並設する左右配列方法とが知られている。一般に、上下配列方法では、燃焼して発生した煙がそのまま上方に移動して乾燥室内の原木を直接燻すことができることから、煙の流れをつくることにその利点があり、左右配列方法では設置が容易で廉価に施工できること、また移動式としても有効であるという利点を備えている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし前述の上下配列方法の場合では、煙を下方から上方に導入することについては有効であるものの、上方の乾燥室に原木を収納するために地面を掘削した状態で燃焼室を下方に配置しなければならず、施工費用が莫大にかかるとともに、燃料の投入に手間がかかることとなっていた。
【0008】
また、特公平4−72151号に示される左右並列方式の場合、処理装置40においては、図8に示すように、燃焼室41と乾燥室42とは、燃焼室41からの熱風を上下に折り返して移動しながら乾燥室42に導入するための4枚の仕切り板43を間に配置させて並設されている。一方、乾燥室42の前方扉44には、開口部45が形成され、外部からの冷風を乾燥室42内の下部に導入できるようにしている。そして、冷風は、乾燥室42内の下部から仕切り板43の下部に形成された通路46を通って燃焼室41内に流入するように構成されている。
【0009】
従って、この処理方法では、熱風と冷風とを接触することによって、木材の乾燥を効率よく行なうようにしている。
【0010】
しかし、乾燥室42内において、上下の対流が起きず高温の煙は室内の上部に貯留され、低温の煙は室内の下部に貯留することとなっていた。従って、乾燥室42内には上下左右に載積した多数の原木48が収納されていることから、上方に配置されている原木48aと下方に配置されている原木48bとでは、乾燥温度にムラが生じて乾燥のばらつきが発生することとなっていた。
【0011】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、廉価な費用で施工できる左右配列方法を採用するとともに、煙を万遍なく対流させて乾燥室内における温度ムラをなくして均一な品質で乾燥処理できる燻煙乾燥処理方法と装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかわる燻煙乾燥処理方法では、上記の課題を解決するために、以下のように行なうものである。すなわち、請求項1記載の発明の燻煙乾燥処理方法は、収納されている原木に如何に均一に煙を燻して乾燥させることができるかという課題を解決するものであり、この発明の燻煙乾燥処理方法は、木質燃料による煙で燻しながら乾燥するものであって、煙を発生させる燃焼室と原木を収納して燻煙乾燥処理するための乾燥室とが隔壁を間にして水平方向に並設されるとともに、前記乾燥室の上部には、室内から室外に向かって煙突が配設され、前記乾燥室の下部には前記燃焼室から連通する煙道が配設され、かつ、前記煙突の少なくとも1本が前記乾燥室から前記燃焼室を通って室外に向かって突出して配置されるようにし、前記燃焼室から発生する煙が、前記燃焼室から前記乾燥室内の前記煙道に流入した後、前記煙突に向かって流動して室外に排出されることによって、前記煙道に流入した後の煙が前記煙道から上昇し、前記煙道の上方で対流して、前記煙突から外部に排出するように流れる一方、前記少なくとも1本の煙突が前記乾燥室から前記燃焼室を通ってこの燃焼室内で加熱されることによって、加熱された煙突内を通る煙が外気に向かって加速して排出されるようにする、ことを特徴とするものである。
【0013】
請求項2記載の発明の燻煙乾燥処理装置は、収納されている原木に、如何に均一に煙を燻して乾燥させるように構成することができるか、そして、上下に載積されている原木をさらに均一に燻煙するために乾燥室内における煙の対流を如何に向上させることができるかという課題を解決するものであり、この発明にかかわる燻煙乾燥処理装置では、木質燃料による煙で燻しながら乾燥するものであって、煙を発生させる燃焼室と原木を収納して燻煙処理するための乾燥室とが隔壁を間にして水平方向に並設され、前記隔壁の下部に、前記燃焼室と前記乾燥室とを連通する煙通路が形成され、前記乾燥室には、上部に前記原木を載置する原木収納室が配置されるとともに、下部に仕切り板を間にして前記燃焼室から流入する煙が流通する煙道が配置され、前記原木収納室には、煙の対流を促すための煙突が、前記原木収納室から外部に向かって配置されて、前記燃焼室で発生する煙が前記煙通路から前記煙道に流入され、さらに前記煙道から前記原木収納室内を対流して前記煙突から外部に流出するように構成され、かつ、前記乾燥室内に配置される少なくとも1本の煙突が、前記乾燥室から前記燃焼室を通って室外に向かって突出するように配置されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2の発明に基づいて、さらに向上された煙の対流を行なえるかの課題を解決するものであり、この燻煙乾燥処理装置は、前記少なくとも1本の煙突に吸熱用板を装着すればよい。
【0016】
請求項4記載の発明は、収納されている原木の上下に配置された原木はもちろんのこと、原木の長手方向に沿って、如何に均一に燻煙処理できるかという課題を解決するために、この燻煙乾燥処理装置は、前記乾燥室内の仕切り板には、前記隔壁側から反隔壁側に向かって、開口量が増加するように開口部が形成されていればなおよい。
【0017】
請求項5記載の発明は、燃料の燃焼速度を如何に効率的に管理できるかという課題を解決するものであり、この発明の燻煙乾燥処理装置は、前記煙突には、熱と煙の吐出し量を調整する開閉装置が配置されていればよい。
【0018】
請求項6記載の発明は、燻煙乾燥中に原木の表面割れを如何に防止できるかという課題を解決するものであり、この発明の燻煙乾燥処理装置では、前記乾燥室には、前記原木に熱水又は蒸気を噴き付け可能な加湿装置が配管されていればよい。
【0019】
【発明の効果】
請求項1記載の発明の燻煙乾燥処理方法によれば、燃焼室で燃焼されて発生した煙は、乾燥室に流入されると、乾燥室の下部に配設された煙道を通って乾燥室内を対流した後、乾燥室の上部に配設された煙突から外部に排出される。つまり、煙突から煙を外部に排出することによって、乾燥室の下部に流入されている煙は、下部から上部に移動して乾燥室内での煙の流れを作り対流が生じることとなる。
【0020】
一方、乾燥室には、煙道上に多数の原木が上下左右方向に載積されていることから、乾燥室内で対流される煙は、上部に配置された原木、下部に配置された原木とも煙で燻されることとなって、収納されている全ての原木が均一に乾燥される。この際に、少なくとも1本の煙突が温度の高い燃焼室を通って外部に突出されていることから、煙突内を通る煙は外気に向かって加速して排出され、乾燥室内の煙を牽引する力を増加させる。このことは、乾燥室内での煙をさらに積極的に対流させることとなって、乾燥室内の全ての原木がさらに均一に乾燥される。
【0021】
しかも、燃焼室と乾燥室とは左右方向に並設されていることから、地面を掘削して施工することなく廉価な費用で本装置を製作することができる。
【0022】
また、燻煙処理に必要となる燃料は、製材時に発生する木屑や端材を利用できる。さらに燻煙処理製品自体が廃棄される場合も、燃料としての再利用が可能である。これらの燃料は化学薬品処理を施していないため、有害な煙を発生することがない。従って、資源の再利用や、有害物質廃棄の防止等の環境問題を解決することができる。
【0023】
さらには、燻煙処理を行なうことにより、防腐・防カビ・防蟻対策にも役立つことができる。
【0024】
また、請求項2記載の発明の燻煙乾燥処理装置によれば、燃焼室と乾燥室との間に隔壁が設けられ、燃焼室で発生した煙は、隔壁の下部に形成された煙通路から、乾燥室の下部に配置された煙道に流入する。一方、乾燥室には、煙道の上方に原木収納室が設けられ、原木収納室には仕切り板上に原木が載積されている。
【0025】
煙道に流入した煙は、乾燥室の上方に配置された煙突が、煙を室内から室外へと流出するように設けられていることから、原木収納室内で煙が対流を起こしながら煙突内に流入することとなる。従って、載積された原木は、上部に配置された原木・下部に配置された原木とも煙に燻されることとなって、全ての原木が均一に乾燥されることとなる。しかも、燃焼室と乾燥室とは左右方向に並設されていることから、地面を掘削して施工することなく廉価な費用で本装置を製作することができる。
【0026】
しかも、請求項1による効果と同様に、燻煙処理を行なうことから、製材時に発生する木屑や端材を燃料として利用できるとともに、化学薬品処理を施していないため、廃棄時においてもこれらの燃料から有害な煙を発生しない。従って、資源の再利用や、有害物質廃棄の防止等の環境問題を解決することができる。
【0027】
さらには、燻煙処理を行なうことにより、防腐・防カビ・防蟻対策にも役立つことができる。
【0028】
その上に、前記の請求項2記載の発明の燻煙乾燥処理装置によれば、乾燥室内に配置された少なくとも1本の煙突が、燃焼室を通って外部に突出されていることから、乾燥室内で対流する煙の一部は、温度の高い燃焼室内を通ることとなって、乾燥室内の煙を牽引する力を増加させる。このことは、乾燥室内での煙をさらに積極的に対流させることとなって、乾燥室内における上下左右の温度を均一化する効果を発生していることから、原木収納室内の全ての原木をさらに均一に乾燥させることができる。
【0029】
請求項3記載の発明の燻煙乾燥処理装置によれば、前述の燃焼室内を通る少なくとも1本の煙突に装着する吸熱用板によって、煙突の表面積を増やすこととなることから、この煙突から排出される煙がさらに加熱されて排出速度を増すこととなり、原木収納室内の対流をさらに向上させることができる。
【0030】
請求項4記載の発明の燻煙乾燥処理装置によれば、乾燥室内の仕切り板が、煙の流入する方向に向かって徐々に開口量を増加するように開口部を形成していることから、燃焼室から煙道に達した煙が原木の長手方向に沿って煙道から上方に移動することができるとともに、煙道の奥側に達した煙の量を増加できることとなって、均一に煙を燻すことができ乾燥させることができる。
【0031】
請求項5記載の発明の燻煙乾燥処理装置によれば、開閉装置を開放することによって、乾燥室内の煙をより多く煙突から外部に排出させることができ、その結果燃焼を促進させることができて目標温度に早く達することができる。また、乾燥室内の温度が目標温度に達すると、開閉装置を絞ることによって、燃焼室の燃焼スピードを抑えることができ、その結果、乾燥室内の温度を目標温度で維持して長時間の乾燥処理を行なうことができる。従って、燃料を過剰に消費することなく効率的な燃焼を行なうことができる。
【0032】
請求項6記載の発明の燻煙乾燥処理装置によれば、燻煙乾燥処理中に、原木に熱水又は蒸気を噴き付けるための加湿装置を配置することによって、表面がより乾燥しかけてきた原木に再度水分を付与させる。これを繰り返し行なうことによって、原木表面の急激な乾燥を防止できる。従って、原木の表面と内部の含水率差が拡大することから発生する表面割れを防止することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0034】
実施形態の燻煙乾燥処理装置(以下、処理装置という。)Mは、図1〜4に示すように、耐火煉瓦で形成されて下部に隔壁3を間に配置して燃焼室1と乾燥室2とを水平方向に並設して構成されている。隔壁3の下部には、燃焼室1で発生した煙が乾燥室2に流入するために開口された煙通路31が形成されている。
【0035】
燃焼室1は、耐火煉瓦11で囲まれた燃焼炉12と、燃焼炉12の周りから乾燥室2に向かって配置される第1の煙道13と、を備えて構成されている。燃焼炉12で燃焼される燃料は製材時に発生した大量の木屑や端材を利用することが望ましく、燃焼室1の上部の一部に形成された投入口14に開閉可能に配置された投入扉15を開けてから燃焼炉13内に投入される。
【0036】
乾燥室2は、上下方向を2分割するように支持された仕切り板22を配置するとともに、隔壁3の反対側には、原木5を載積したトロッコ6を搬入・搬出するための搬入搬出扉23が配置されている。そして仕切り板22の下方に第2の煙道24を形成し、上方に原木収納室25を形成している。そして、外部から原木収納室25内に搬入されたトロッコ6は仕切り板22上で支持されることとなる。
【0037】
仕切り板22は、隔壁3の煙通路31の上方から煙を斜め下方に誘導するためのガイド部22aを形成するとともに、第2の煙道24と原木収納室25との間で煙を流通するための、複数の開口部26が形成されている。開口部26は第2の煙道24に流入した煙を、上下左右に載積された原木5に向かって下方から万遍なく燻すとともに、原木の長手方向に沿って均一に燻すことができるようにするため、図2に示すように、隔壁3側の開口部26から搬入搬出扉23側の開口部26に向かって、徐々にその数を増加させるようにして形成している。なお、仕切り板22の右端は、第2の煙道24内を流通する煙のうち仕切り板22の開口部26を通過しない煙が原木収納室25内に流入するための通路26aが形成されている。
【0038】
そして、乾燥室2の上部には、図1または図3に示すように、複数の煙突27が配置されている。少なくとも1本の煙突27aは乾燥室2から燃焼室1を通って屋根から外部に突出するように配置され、他の煙突27bは、搬入搬出扉23側における搬入搬出扉23を間にして両隅部辺りに配置することが、煙を乾燥室2内でバランスよく対流させるために望ましい。
【0039】
各煙突27には、図5〜6に示すように熱と煙との吐出し量を調整する開閉装置28がそれぞれ配置されている。開閉装置28は、煙突27内の煙の通路を開閉できるものであればその構成について限定するものではないが、本実施形態では、煙突27内に水平方向と垂直方向に傾倒可能に配置される円板状の開閉プレート29と、開閉プレート29に連結して煙突27の外周面に配置される連結プレート30と、連結プレート30に形成されたガイド溝30aに沿って揺動可能な開閉レバー31とを備えて構成され、燃焼時においては、開閉プレート29を垂直状態に傾倒させ、乾燥室2内の室内温度が目標温度(120〜130℃)に達すると開閉プレート29を水平方向に向かって傾倒させて開口を小さくするように作用される。
【0040】
乾燥室2から燃焼室1を通って上方に突出する煙突27aは、燃焼室1内で加熱することによって、煙を積極的に外部に排出でき、乾燥室2内の煙の対流を向上させる。
【0041】
なお、燃焼室1を通る煙突27aには、図7に示すように、煙突27aの外周に円環状の吸熱用板32を複数装着してもよい。吸熱用板32を煙突27aの周りに、例えば溶接して取り付けることによって、煙突27aの表面積を増やすこととなって、煙突27aの加熱速度を高めることになる。従って、煙突27a内を通って排出する煙の排出速度を高めて、乾燥室2における原木収納室25内の煙や熱の対流をさらに向上させることができる。この吸熱用板32の数あるいは取り付けピッチ等は図例に限定するものではない。
【0042】
さらに、乾燥室2内には、加湿装置33が配置されている。加湿装置33は、室外に配置された図示しないボイラーから配管された配管部材34と、配管部材34の各所に形成されて原木5の各部に向かって熱水または蒸気を噴き付ける複数の噴出し口35を備えて構成されている。そして、原木5の表面が完全に乾燥する前に、再度蒸気又は熱水を噴きつけることによって原木5を加湿させて、原木5の急激な乾燥による表面割れを防止するようにしている。
【0043】
この配管部材34の装着位置は、特に限定するものではなく、載積された原木のすべてに噴き付けることができるように、原木5の周りに、乾燥室2の外周壁に支持されて複数配置されることが望ましい。また、配管部材34に熱水を送給する手段としては、前述のボイラーではなく、例えば、燃焼炉12で加熱されたタンクから送給されるものであってもよい、いずれにしても、熱水を送給するタイミングは、別に装備する操作手段により操作することが望ましい。
【0044】
次に、上記のように構成された処理装置Mの作用について説明する。
【0045】
まず、乾燥室2の搬入搬出扉23を開けて、トロッコ6に載積した原木5を原木収納室25内に搬入した後、搬入搬出扉23を閉じて乾燥室2内を密閉する。そして、製材時に発生した大量の木屑や端材を投入口14から燃焼炉12内に投入して燃焼する。
【0046】
燃焼室1内の温度が120〜130℃になるまで燃焼を続けると、燃焼炉12から煙が発生して燃焼室12内を充満する。煙は熱とともに第1の煙道13を通って隔壁3の煙通路31から乾燥室2内の第2の煙道24に導入される。
【0047】
第2の煙道24は、乾燥室2における仕切り板22の下方に配置されていることから、第2の煙道24に導入された煙と熱は、仕切り板22に形成された開口部26及び仕切り板22の右端の通路26aから仕切り板22の上方に配置されている原木収納室25に向かって上昇する。
【0048】
この際、第2の煙道24は、仕切り板22の長手方向に沿って配置されていて、第2の煙道24の元部側24aと先端側24bとは、距離の差が生じていることから煙や熱は元部側24aに貯留しやすい。ところが、煙突27から室外に熱が排出されることによって煙や熱は煙突27に向かって流動するとともに、仕切り板22に形成された開口部26は、第2の煙道24の元部側24aから先端側24bに向かって、順次開口量を増加するように形成されていることから、煙や熱は、仕切り板22から長手方向に沿ってほぼ均一な量を維持して原木収納室25に上昇移動することとなる。このことは、原木5の長手方向に沿って均一に煙と熱で燻すこととなる。
【0049】
原木収納室25内に移動された煙や熱は、乾燥室2の周辺に配置された複数本の煙突27から内気が室外に排出されることによって、乾燥室2内での対流が生じて、仕切り板22上に載積されている原木5を煙によってほぼ均一に燻し、また熱によって均一に乾燥することとなる。
【0050】
特に、1本の煙突27aは乾燥室2から燃焼室1を通って室外に突出することによって燃焼室1内の高い温度で加熱されている。加熱されて高い温度となった煙突27a内を通る煙や熱は、外気に向かって加速して排出されることとなって、乾燥室2内の煙と熱を室外に引き出すことになる。これによって、乾燥室2内の煙と熱をさらに勢いを持って対流させ、上方の原木5、下方の原木5を均一に燻して乾燥することになる。
【0051】
また、複数の吸熱用板32を周りに装着した煙突27aであれば、さらに煙と熱の排出速度を増して乾燥室2内の対流を向上させる。
【0052】
さらに、乾燥室2内の温度を目標温度に達するまでには、煙突27(27a・27b)には位置された開閉装置28の開閉プレート29を、開閉レバー31の操作で垂直方向に傾倒させる(開状態)。これによって乾燥室2内の煙と熱は、排気スピードを上げることとなって、燃焼室1の燃焼スピードを速めて乾燥室2内の室内温度を早く目標温度に達成させる。
【0053】
そして、乾燥室2の室内温度が目標温度に達成すると、開閉装置28の開閉レバーを操作して開閉プレート29を水平方向に傾倒させる(閉状態)。これによって、煙突27から排出される煙と熱が抑えられ、燃焼室1内の燃焼スピードを抑えることができる。従って、乾燥室2内の室内温度が目標温度を維持した状態で燻煙乾燥処理を持続させることができる。
【0054】
なお、乾燥室2の室内温度を維持させる際には、複数の煙突27のうち、乾燥室2から燃焼室1を通る煙突27aだけ、開閉装置28を半開状態にして、燃焼室1を通らない煙突27bの開閉装置28を閉状態にしておくことが、乾燥室2内の煙と熱の対流を妨げないことから望ましい。
【0055】
上記のように、実施形態の処理装置1は、燃焼室1と乾燥室2とを隔壁を間にして左右方向に配置する左右並列方式に構成することにより、燃焼室の上方に乾燥室を配置した上下配列方式の欠点であった地面を掘削するような莫大な費用のかかる施工をしなくてすむことになり、また、乾燥室2内に導入した煙や熱を、乾燥室2の下方に配置した第2の煙道24に移動させて上昇させるように構成することによって、上下配列タイプの利点である燻煙処理方法を行なえることとなる。
【0056】
さらに、乾燥室2の上部に配置する煙突27の配置によって、乾燥室2内の煙と熱の対流を向上させて上方の原木と下方の原木とに万遍なく煙と熱とを行き渡らせることによって、すべての原木を均一な温度で乾燥させて品質を向上させることができる。
【0057】
又、燻煙処理に必要となる燃料は、製材時に発生する木屑や端材を利用できる。さらに、燻煙処理製品自体が廃棄される場合も、燃料としての再利用が可能である。これらの燃料は、化学薬品処理を施していないため、有害な煙を発生することがない。従って、資源の再利用や、有害物質廃棄の防止等の環境問題を解決することができる。
【0058】
さらには、燻煙処理を行なうことにより、防腐・防カビ・防蟻対策にも役立つことができる。
【0059】
また、処理装置1によれば、乾燥室2内に配置された少なくとも1本の煙突27aが、燃焼室1を通って外部に突出されていることから、乾燥室2内で対流する煙の一部は、温度の高い燃焼室1内を通ることとなって、乾燥室2内の煙を牽引する力を増加させる。このことは、乾燥室2内での煙をさらに積極的に対流させることとなって、原木収納室内25の全ての原木5をさらに均一に乾燥させることができる。
【0060】
さらに、燃焼室1を通る煙突27aに吸熱用板32を取り付けることによって、煙突の表面積を増やすこととなって、煙や熱の排出速度を増ことができる。そのために、乾燥室2内における原木収納室25の対流をさらに向上させることができることとなる。
【0061】
しかも、実施形態の処理装置1によれば、乾燥室2内の仕切り板22が、煙の流入する方向に向かって徐々に開口量を増加するように開口部26を形成していることから、燃焼室1から第2の煙道24に達した煙が原木5の長手方向に沿って第2の煙道24から上方に移動することができるとともに、第2の煙道24の先端側24bに達した煙の量を増加できることとなって、均一に煙を上昇させて原木5の長手方向に沿って燻すことができる。
【0062】
また、煙突27に配置された開閉装置28操作することによって、乾燥室2の室内温度を目標温度に早く達するようにしたり、また、室内温度を目標温度に維持したりして、燃料を過剰に消費することなく効率的な燃焼を行なうことができる。
【0063】
さらに、本処理装置1によれば、燻煙乾燥処理中に、原木に熱水又は蒸気を噴き付ける加湿装置33を配置することによって、表面がより乾燥しかけてきた原木に再度水分を付与させて、原木の急激な乾燥を防止できる。従って、原木の表面と内部との含水率差が拡大することにより発生する表面割れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一形態の燻煙乾燥処理装置を示す縦断面図である。
【図2】図1における仕切り板を示す平面図である。
【図3】図1におけるA矢視図である。
【図4】図1におけるIV−IV断面図である。
【図5】図1における開閉装置を示す簡略断面図である。
【図6】図5におけるB矢視図である。
【図7】図1における煙突に吸熱用板を装着した形態を示す簡略図である。
【図8】従来の燻煙乾燥処理装置を示す簡略図である。
【符号の説明】
M 処理装置(燻煙乾燥処理装置)
1 燃焼室
2 乾燥室
3 隔壁
5 原木
12 燃焼炉
22 仕切り板
23 搬入搬出扉
24 第2の煙道
25 原木収納室
26 開口部
27 煙突
28 開閉装置
29 開閉プレート
32 吸熱用板
33 加湿装置
Claims (6)
- 木質燃料による煙で燻しながら乾燥させる燻煙乾燥処理方法であって、煙を発生させる燃焼室と原木を収納して燻煙乾燥処理するための乾燥室とが隔壁を間にして水平方向に並設されるとともに、前記乾燥室の上部には、室内から室外に向かって煙突が配設され、前記乾燥室の下部には前記燃焼室から連通する煙道が配設され、かつ、前記煙突の少なくとも1本が前記乾燥室から前記燃焼室を通って室外に向かって突出して配置されるようにし、前記燃焼室から発生する煙が、前記燃焼室から前記乾燥室内の前記煙道に流入した後、前記煙突に向かって流動して室外に排出されることによって、前記煙道に流入した後の煙が前記煙道から上昇し、前記煙道の上方で対流して、前記煙突から外部に排出するように流れる一方、前記少なくとも1本の煙突が前記乾燥室から前記燃焼室を通ってこの燃焼室内で加熱されることによって、加熱された煙突内を通る煙が外気に向かって加速して排出されるようにする、ことを特徴とする燻煙乾燥処理方法。
- 木質燃料による煙で燻しながら乾燥させる燻煙乾燥処理装置であって、煙を発生させる燃焼室と原木を収納して燻煙乾燥処理するための乾燥室とが隔壁を間にして水平方向に並設され、前記隔壁の下部に、前記燃焼室と前記乾燥室とを連通する煙通路が形成され、前記乾燥室には、上部に前記原木を載置する原木収納室が配置されるとともに、下部に仕切り板を間にして前記燃焼室から流入する煙が流通する煙道が配置され、前記原木収納室には、煙の対流を促すための煙突が、前記原木収納室から外部に向かって配置されて、前記燃焼室で発生する煙が前記煙通路から前記煙道に流入され、さらに前記煙道から前記原木収納室内を対流して前記煙突から外部に流出するように構成され、かつ、前記乾燥室内に配置される少なくとも1本の煙突が、前記乾燥室から前記燃焼室を通って室外に向かって突出するように配置されていることを特徴とする燻煙乾燥処理装置。
- 前記少なくとも1本の煙突が吸熱用板を装着していることを特徴とする請求項2記載の燻煙乾燥処理装置。
- 前記乾燥室内の仕切り板には、前記隔壁側から反隔壁側に向かって、開口量が増加するように開口部が形成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の燻煙乾燥処理装置。
- 前記煙突には、熱と煙の吐出し量を調整する開閉装置が配置されていることを特徴とする請求項2,3又は4のいずれかに記載の燻煙乾燥処理装置。
- 前記乾燥室には、前記原木に熱水又は蒸気を噴き付け可能な加湿装置が配管されていることを特徴とする請求項2,3,4又は5のいずれかに記載の燻煙乾燥処理装置。
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