JP4057669B2 - 歯車ラック駆動装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピニオンハウジング領域に配置されたピニオンに噛み合う歯車ラックを孔内に案内するように構成された駆動ハウジングをもつ歯車ラック駆動装置に関する。
この種の歯車ラック駆動装置は既知である。歯車ラックの操作装置においては、歯車ラックがサーボ制御弁のピニオンと噛み合っている場所に軸受が必要である。この場所において、ピニオンから歯車ラックへ半径方向の力が加わり、軸を形成している歯車ラックが、他の側において、支持されねばならない。
【０００２】
【従来の技術】
ＤＥ４３０２３０９Ａ１公報から、いわゆる圧力受け部材と呼ばれる軸受が知られている。ハウジングは、軸の長手方向軸線に関し半径方向に延び、受容壺部を形成する孔を有している。この孔内に、通常人工樹脂要素から成る圧力受け部材が挿入されている。一方において、圧力受け部材はばね負荷され、ハウジング壺部は閉鎖されており、他方において、ハウジング壺部の閉鎖は漏洩に対し密封されている必要がある。圧力受け部材の作動領域は種々の温度を受ける。通常ポリオキシメチレンから成る圧力受け部材は、一方においては、特に圧力受け部材の熱膨張を許容し、他方において、歯車ラックの湾曲を補償するため、遊びを設けられる必要がある。この必須の遊びのため、この既知の軸受はガタガタ音を発生し勝ちである。圧力受け部材の他に、密封のためのばね、ねじ蓋、Ｏリング等の一連の部材を必要とし、ハウジングに追加の半径方向壺部を設ける必要がある。
【０００３】
この種の操作装置を、特に軸受領域において簡単にするため、ＤＥ−ＯＳ２６５７２８９，２６５７２９０，２９３４２７５の各公報に、盥状や半殻状の、ばね負荷された支持部材が提案されている。これら部材はばねと共に対抗支持領域に挿入され、軸と歯車ラックとに対し対抗圧力を加えている。
ＤＥ−ＡＳ２４０９９３８公報から、楔状の加圧装置をもつ歯車ラック駆動装置が知られており、該装置は、歯車ラックの丸められた背面の弓状領域と摺動接触をなし、歯車ラックの他の部分を自由に取り囲み、ピニオンハウジングの一端において回転可能に支持されており、その際、この既知の筒状の楔軸受は加圧位置においてピニオンハウジングに対し圧入により固定されている。この刊行物はさらに、加圧部材をねじを用いて正確に位置させることを開示している。
【０００４】
これら実施形態の問題の一つは、支持要素を、半径方向および軸方向に位置させ、固定することに関連している。さらに、種々の熱膨張特性をもつ部材が同時に使用されており、また、熱膨張の際、摩擦を増大させたり、ロックを起こさせたりする程、ばね予張力を増加することは許されないから、隣接する部分がガタガタ音を発生し勝ちである。ＤＥ−ＡＳ２４０９９３８公報等から知られた加圧装置は、構造全体の費用が高く、従って、歯車ラック駆動装置もコスト高になる。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような技術現況から、本発明の課題は、低コストで、簡単に製造され、ガタガタ騒音が少なく、ハウジング構造が簡単であり、しかも、密封性の改良を保証する歯車ラック駆動装置を提供することである。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上記課題を技術的に解決するために、ピニオンと歯車ラックとが噛み合う領域において、孔が偏心して拡大されており、また、本質的に鞘形状の楔軸受要素内に、前後に位置し、互いに偏心して形成された少なくとも２個の鞘部分が噛み合い領域に挿入されるように構成された上記種類の歯車ラック駆動装置が提案されている。
【０００７】
本発明の歯車ラック駆動は、非常に簡単に製作、調整されることが出来、その際、楔軸受要素は他の補助手段を使用することなく固定され得る。鞘部分を偏心拡大部に配置することにより、該鞘部分が軸線方向に固定され、回転もまた不可能になる。本発明の歯車ラック駆動装置は、従来技術に知られている半径方向壺拡大部や、追加のばね要素を必要としない。ハウジングの密封は、従来の位置、例えば軸方向端部においてだけ必要であり、また、ばねを有しない楔軸受要素を使用することによりガタガタ音が回避される。
【０００８】
軸方向に前後して位置し、互いに偏心して形成された少なくとも２個の鞘部分が、異なった直径を有していることが有利である。このことは、歯車ラック駆動装置内の楔軸受要素の位置決め、固定を改良する。
本発明の他の有利な提案に従えば、小さい直径をもつ鞘部分が、他の鞘部分よりも長くなっている。直径の大きい鞘部分が孔の偏心拡大部に挿入されると、小さい直径をもつ他の鞘部分が歯車ラックのためのハウジング孔内に突き出る。
【０００９】
鞘部分の一つが、周囲に沿って異なった壁厚みを有していることが有利である。これにより、本質的に三日月形の楔要素が形成され、この楔要素を回転させることにより歯車ラックに予張力を与えることが可能になる。
さらに、少なくとも鞘部分の一つに、軸方向に走る溝状窪みを形成することが有利である。この窪みは、歯車ラックと楔軸受要素との間の支持面を減少させ、これは、例えば、最適の案内、特に、いわゆる鳩尾形案内の目的をもって、歯車ラックとの限定された接触面を減少させる。これは、駆動力学にとって不可欠な利点である。
【００１０】
さらに、歯車ラックと楔軸受要素との間の摺動を改良するため、少なくとも１個の鞘部分に、潤滑油溝が形成されることが有利である。
楔形の鞘部分は、セグメントに分割されることが有利である。分割はスリットを設けることにより行われる。
鞘部分は、楔軸受要素が多くの部分から構成されるように分割されることが特に好適である。かくて例えば、楔軸受要素は楔形の鞘部分が、枠を形成する鞘要素内に挿入されることが可能になる。個々のセグメント部分は異なった材料から作られることも、または、例えばセグメント要素がばね弾性を有するように、他の要素を有することも出来る。
歯車ラック孔内に突出する鞘部分が、軸方向の全長において開放して形成され、単なる導管として存在することが特に好適である。
最後に、本発明は、歯車ラック孔内に突出する鞘部分がばね弾性を有して形成されることを提案する。
本発明により、簡単に製造され、容易に組立てられ、密封可能な、調整可能な、必要部品の少ない歯車ラック駆動が提供される。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下、付図を参照して本発明の実施例を説明する。
図１および図２に示した歯車ラック駆動装置１において、ハウジング２は、ピニオンハウジング領域３と、歯車ラックハウジング領域４とから成る。ハウジングは、例えば乗り物内に固定するために、固定部５を有する。歯車ラック６が、歯車ラックハウジング領域４内に導かれており、その両側において、例えば乗り物操縦の操縦棹に連結させるため、歯車ラック駆動装置１から突き出ている。ピニオンは自由端において操作棹に連結されている。ここまでは従来技術の形態である。歯車ラック６は、歯車ラックハウジング領域４内の孔７内を走っている。孔７は一方の側に偏心拡大部を有している。その際、孔７の中心線に対して偏心して配置され、孔７の直径よりも大きい直径をもつ孔が問題である。ハウジングのこの端部に閉鎖部９が形成され、ハウジングを該端部において流体密封し、塵埃から保護すべく閉鎖している。
孔７と孔８内に、歯車ラックを少なくとも部分的に取り囲む楔軸受要素１０が挿入されている。
【００１２】
図３から図７に、楔軸受要素１０の実施例が詳細に示されている。該要素は第１鞘部分１１と第２鞘部分１２とを有している。第２鞘部分１２は、第１鞘部分１１に比較して小さい直径を有し、両鞘部分１１，１２は互いに偏心して位置されている。孔７内に押し込まれた鞘部分１２は、横スリット１４を切り込むことにより形成されたセグメント（区画部分）１３から成っている。セクメント内部に、摺動特性を改良し、潤滑剤を導くために開口１５が形成されている。
鞘部分１１はその自由前面に、楔軸受要素１０が中心軸回りに回転出来るように、錫類の部分要素から成る前面リング１６を有している。
【００１３】
図４および図６に示すように、自由な正面縁に面取り部１７を有する鞘部分１２に、肋骨部１８が形成されており、その高さが周辺に沿って増大している。従って、楔軸受要素１０の回転に応じて、鞘部分１２内にある歯車ラックが負荷されたり、負荷解除されたりする。この経過は図６の（ａ），（ｂ）に示され、図６（ａ）は支持位置を示し、図６（ｂ）は組立位置を示す。図はさらに、鞘部分１２が、導管として軸方向に開いて形成されており、また、長手方向中心線に平行に内壁に加工された窪み１９を有することを示している。
図７に、正面２０の領域において、鞘部分１２が周辺に沿って増加する壁厚みを有することが分かる。
【００１４】
本発明にとって本質的なことは、接触面が小さい摩擦係数を有することである。さらに、楔軸受要素の材料選択が、作動領域の境界条件にだけ依存することである。従って、例えば楔軸受要素全体を人工樹脂から形成することも可能であり、または、接触面に摩擦の小さい層を有するアルミニウム鞘を使用してもよい。
図１および図２に示したように、図示の楔軸受要素は、歯車ラック駆動装置１のハウジング２内に押し込まれ、歯車ラックがピニオンに対し最適に支持されるような位置に回転移動され、例えば、孔８内に軸方向に圧入されて閉鎖部を形成することにより該位置に固定される。
【図面の簡単な説明】
【図１】歯車ラック駆動装置の実施例の一部断面概略側面図。
【図２】図１の駆動の前面図。
【図３】軸受要素の実施例の側面図。
【図４】図３の軸受要素の前面図。
【図５】図４の線Ｖ−Ｖに沿う断面図。
【図６】（ａ）および（ｂ）は、歯車ラックを含み、図５の線VI−VIに沿う断面図。
【図７】図３の楔軸受要素の斜視図。
【符号の説明】
１ 歯車ラック駆動装置
２ ハウジング
３ ピニオンハウジング領域
４ 歯車ラックハウジング領域
５ 固定部
６ 歯車ラック
７ 孔
８ 偏心拡大部
９ 閉鎖部
１０ 楔軸受要素
１１，１２ 鞘部分
１３ セグメント
１４ スリット
１５ 開口
１６ 前面リング
１７ 面取り部
１８ 肋骨部
１９ 窪み
２０ 正面

Claims (10)

1. ピニオンハウジング領域（３）と孔（７）を有するハウジング（２）と、
   前記孔（７）内で案内され、前記ピニオンハウジング領域（３）内に配置されたピニオンによって作用される歯車ラック（６）と、
   前記ピニオンと前記歯車ラック（６）とが噛み合う領域内に挿入された楔軸受要素（１０）とを備え、
   前記孔（７）は前記ピニオンと前記歯車ラック（６）とが噛み合う領域において偏心拡大部（８）を有し、
   前記楔軸受要素（１０）は、本質的に鞘の形状を有し、且つ、軸方向に前後して位置し、互いに偏心して形成された少なくとも２個の鞘部分（１１，１２）を前記噛み合い領域に有している歯車ラック駆動装置。
2. 請求項１に記載の装置において、前記２個の鞘部分（１１，１２）がそれぞれ異なった直径を有している歯車ラック駆動装置。
3. 請求項２に記載の装置において、小さい直径をもつ鞘部分（１２）が、他の鞘部分（１１）よりも長い歯車ラック駆動装置。
4. 請求項１から３のいずれか１項に記載の装置において、前記鞘部分の一つが、周辺に沿って異なった壁厚みを有している歯車ラック駆動装置。
5. 請求項１から４のいずれか１項に記載の装置において、少なくとも１個の鞘部分に、軸方向に走る窪み（１９）が形成されている歯車ラック駆動装置。
6. 請求項１から５のいずれか１項に記載の装置において、少なくとも１個の鞘部分に、潤滑油溝が形成されている歯車ラック駆動装置。
7. 請求項１から６のいずれか１項に記載の装置において、少なくとも１個の鞘部分がセグメントに分割されている歯車ラック駆動装置。
8. 請求項７に記載の装置において、前記セグメント（１３）が、横方向に走るスリット（１４）を切り込むことにより形成されている歯車ラック駆動装置。
9. 請求項１から８のいずれか１項に記載の装置において、鞘部分の一つ（１２）が軸方向の長さ全体にわたり開放されて形成されている歯車ラック駆動装置。
10. 請求項１から９のいずれか１項に記載の装置において、少なくとも１個の鞘部分がばね弾性を有して形成されている歯車ラック駆動装置。

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