JP4056855B2 - 表面処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハやガラス基板等の被処理物に、真空雰囲気下で電子を照射し、レジストや絶縁膜等の改質を行う表面処理装置及び表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、半導体装置の製造分野等においては、レジストを用いたリソグラフィー工程により、半導体ウエハ等の基板に対する回路パターンの転写が行われており、このようなリソグラフィー工程において、露光、現像後に、紫外線(UV)照射によってレジストを改質し、レジストを硬化してその機械的強度を高めるUVを用いた表面処理が行われることが多い。
【0003】
このため、半導体装置の製造分野等においては、従来から、紫外線照射機構を具備した表面処理装置が用いられている。
【0004】
また、近年においては、紫外線に換えて、エレクトロンビーム(EB)を用い、電子を照射して、レジストや絶縁膜の改質を行う表面処理を行うことが試みられている。
【0005】
かかる電子を用いた表面処理では、真空チャンバ内に収容した半導体ウエハやガラス基板等の被処理物に真空雰囲気下で電子を照射し、この電子の作用によってレジストや絶縁膜の改質を行うものであり(例えば、特許文献1参照。)、従来に比べて非常に短時間で処理を行うことができるという特徴を有する。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−237492号公報(第4−6頁、第4図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したとおり、従来から、紫外線を用いた場合に比べて短時間で表面処理を行うことができる電子を用いた表面処理を行うことが試みられている。
【0008】
本発明者等は、従来からかかる表面処理装置の開発を行っており、多くの実験等を行った結果、電子を用いた表面処理装置においては、次のような課題があることが判明した。
【0009】
すなわち、電子を用いた表面処理装置においては、短時間で処理を行える反面、電子の作用が強いことから、電子の照射状態によって、被処理基板の面内の処理状態が不均一になり易く、処理の面内均一性が悪化するという課題があることが判明した。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、被処理基板の全面に渡って均一に良好な処理を行うことのできる表面処理装置及び表面処理方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1の表面処理装置は、内部を所定の真空雰囲気に設定可能とされた真空チャンバと、前記真空チャンバ内に設けられ、被処理基板が載置される載置台と、前記被処理基板に電子を照射する電子照射機構と、前記被処理基板の周囲を囲むように設けられた電子軌道偏向用部材を具備し、この電子軌道偏向用部材の電位によって、前記電子照射機構から射出された電子の軌道を制御する電子軌道制御手段と、前記載置台と、前記電子照射機構との間隔を所望間隔に設定する駆動機構と、を具備し前記被処理基板表面の絶縁膜又はレジストの改質を行うことを特徴とする。
【0015】
請求項の表面処理装置は、請求項記載の表面処理装置において、前記電子軌道偏向用部材の電位を調節する電位制御手段を具備したことを特徴とする。
【0016】
請求項の表面処理装置は、請求項記載の表面処理装置において、前記電位制御手段が、前記電子軌道偏向用部材と接地電位との間に設けられた可変抵抗から構成されたことを特徴とする。
【0017】
請求項の表面処理装置は、請求項記載の表面処理装置において、前記電位制御手段が、前記電子軌道偏向用部材に直流電圧を印加する可変直流電源から構成されたことを特徴とする。
【0018】
請求項5の表面処理装置は、内部を所定の真空雰囲気に設定可能とされた真空チャンバと、前記真空チャンバ内に設けられ、被処理基板が載置される載置台と、前記被処理基板に電子を照射する電子照射機構と、載置台に載置された被処理基板の周囲を囲むように前記真空チャンバの側壁部に沿ってマルチポール磁場を形成するとともに、前記真空チャンバの周囲で回転し、前記マルチポール磁場を回転させ、前記電子照射機構から射出された電子の軌道を制御する、磁場形成手段から構成された電子軌道制御手段と、前記載置台と、前記電子照射機構との間隔を所望間隔に設定する駆動機構と、を具備し前記被処理基板表面の絶縁膜又はレジストの改質を行うことを特徴とする
【0019】
請求項6の表面処理装置は、内部を所定の真空雰囲気に設定可能とされた真空チャンバと、前記真空チャンバ内に設けられ、被処理基板が載置される載置台と、前記被処理基板に電子を照射する電子照射機構と、前記載置台に載置された被処理基板の表面に対して垂直方向の磁場を形成し、前記電子照射機構から射出された電子の軌道を制御する、磁場形成手段から構成された電子軌道制御手段と、前記載置台と、前記電子照射機構との間隔を所望間隔に設定する駆動機構と、を具備し前記被処理基板表面の絶縁膜又はレジストの改質を行うことを特徴とする。
【0024】
請求項の表面処理装置は、請求項1〜いずれか1項記載の表面処理装置において、前記電子照射機構から照射される電子の量を検出する検出機構と、前記検出機構による検出結果に基づいて、前記電子照射機構から所定量の電子が照射されるように制御する制御装置とを具備したことを特徴とする。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を、実施の形態について図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、本発明を、半導体ウエハ等に電子(エレクトロンビームEB)を照射して、絶縁膜(例えばLow−K膜)、レジスト等の表面処理(表面改質処理)を行う表面処理装置に適用した実施の形態の概略構成を模式的に示すものであり、同図において、符号1は、材質が例えばアルミニウム等からなり、内部を気密に閉塞可能に構成され、処理室を構成する円筒状の真空チャンバを示している。
【0030】
上記真空チャンバ1の内部には、被処理基板としての半導体ウエハWを、被処理面を上側に向けて略水平に支持する載置台2が設けられている。
【0031】
この載置台2は、ボール捩子とこのボール捩子を回転させるモータ等からなる昇降装置3によって、上下動自在に構成されている。載置台2の下側には、材質例えばステンレス鋼(SUS)製で伸縮自在に構成され、真空チャンバ1の内部を気密に維持する円筒状のベローズ4が設けられ、ベローズ4の外側にはベローズカバー5が設けられている。
【0032】
一方、真空チャンバ1の天井部には、エレクトロンビームEBを発生させるためのエレクトロンビーム照射機構6が設けられており、載置台2上に設けられた半導体ウエハWに対して、エレクトロンビームEBを照射するように構成されている。ここで、エレクトロンビーム照射機構6のEB管6aより射出されたエレクトロンビームEBは、真空チャンバ1内の処理空間中の不活性分子と衝突拡散を繰り返し、図1に示すように、ある程度広がりをもった放射状の電子流となる。本実施形態において、「エレクトロンビームEB」とは、このような電子流のことを意味する。
【0033】
そして、このエレクトロンビームEBを照射する際のエレクトロンビーム照射機構6と半導体ウエハWとの距離を、昇降装置3によって載置台2を上下動させることにより、調節できるようになっている。なお、本実施形態では、載置台2を上下動させる構成としたが、載置台2を固定とし、エレクトロンビーム照射機構6側を上下動させるように構成したり、これらの双方を上下動させるように構成することもできる。
【0034】
上記エレクトロンビーム照射機構6は、EB管6aを複数配列して構成されており、本実施の形態では、図2に示すように、合計19個のEB管6aを、載置台2上に設けられた半導体ウエハWと略同形状の円形の領域を占めるように、かつ、同心円状に配列されるように並べて構成されている。なお、図2において、6bは、EB管6aの内部を外部と気密に閉塞するとともに、エレクトロンビームEBを射出可能に構成された窓(照射窓)を示している。
【0035】
図1に示すように、上記EB管6aは、エレクトロンビームEBの射出側端部(窓6b側)が下側を向くように配置されている。そして、窓6bを介して、真空チャンバ1内の半導体ウエハWに向けてエレクトロンビームEBを照射するように構成されている。
【0036】
また、真空チャンバ1内には、各EB管6a毎に、エレクトロンビームEBの量を検出するためのグリッド状の検出機構6cが設けられている。
【0037】
上記検出機構6cは、エレクトロンビームEBが衝突することによって流れる電流からエレクトロンビームEBの量を検出するものであり、これらの検出機構6cの各検出信号は、夫々出力制御装置20に入力されるようになっている。そして、出力制御装置20は、これらの検出信号を参照信号として、各EB管6aが、夫々予め設定された所定のエレクトロンビームEBを出力するよう各EB管6aの電気的な制御を行うように構成されている。
【0038】
また、図1に示すように、真空チャンバ1には、図示しないガス供給源に接続されたガス導入管7と、図示しない真空排気装置に接続された排気管8が設けられており、真空チャンバ1内を、所定の真空度の所定のガス雰囲気とすることができるよう構成されている。
【0039】
また、載置台2の載置面には、半導体ウエハWを所定の温度に加熱するためのヒータ9が設けられるとともに、載置台2内には、このヒータ9による加熱温度を検出するための温度検出機構10が設けられている。そして、上記温度検出機構10による温度検出信号が、図示しない温度制御装置に入力され、この温度制御装置がこの温度検出信号と所定の設定温度とを比較してヒータ9に供給する電力を調整し、ヒータ9が所定の設定温度となるように温度制御が行われるよう構成されている。
【0040】
さらに、真空チャンバ1の側壁部には、半導体ウエハWの搬入、搬出を行うための開口部1aが設けられるとともに、この開口部1aには、ゲートバルブ11が設けられており、半導体ウエハWの搬入、搬出時には、このゲートバルブ11を開閉して、開口部1aから半導体ウエハWの搬入、搬出を行うように構成されている。
【0041】
次に、上記構成の表面処理装置によって、半導体ウエハWに形成された絶縁膜の表面処理を行う手順について説明する。
【0042】
まず、真空チャンバ1の側壁部分に設けられたゲートバルブ11を開放し、開口部1aから図示しない搬送機構等により、半導体ウエハWを真空チャンバ1内に搬入し、予め所定の位置に下降されている載置台2上に載置する。
【0043】
次に、搬送機構を真空チャンバ1外へ退避させた後、ゲートバルブ11を閉じ、真空チャンバ1内を気密に閉塞する。
【0044】
この後、載置台2を図1に示されるような所定位置まで上昇させ、半導体ウエハWとエレクトロンビーム照射機構6との距離が所望の距離となるように、設定する。すなわち、図3に示すように、エレクトロンビーム照射機構6の各EB管6aから射出されたエレクトロンビームEBは、射出された後、放射状に次第に拡散する。
【0045】
このため、例えば、同図aに示すように、半導体ウエハWとエレクトロンビーム照射機構6を近接させた場合と、同図bに示すように、半導体ウエハWとエレクトロンビーム照射機構6を離間させた場合とでは、半導体ウエハWの面内に照射されるエレクトロンビームEBの状態が変化する。つまり、半導体ウエハWとエレクトロンビーム照射機構6を離間させると、一つのEB管6aから射出されたエレクトロンビームEBが、半導体ウエハWのより広い範囲に照射されるようになる。
【0046】
そこで、本実施の形態においては、昇降装置3によって載置台2を上下動させ、エレクトロンビーム照射機構6と半導体ウエハWとの距離を調節することにより、半導体ウエハWの全面に均一にエレクトロンビームEBが照射されるように設定できるようになっている。
【0047】
上記のようにして、エレクトロンビーム照射機構6と半導体ウエハWとの距離を所望の距離に設定した後、排気管8を通じて真空チャンバ1内を排気するとともに、ガス導入管7から窒素ガス等の所定の雰囲気ガスを導入し、真空チャンバ1内を所定の圧力、例えば1.33〜66.5KPa(10〜500Torr)程度に保持する。
【0048】
そして、ヒータ9によって半導体ウエハWを所定温度に加熱しつつ、EB管6aから半導体ウエハWにエレクトロンビームEBを照射し、半導体ウエハWに形成された絶縁膜の表面処理を行う。
【0049】
そして、半導体ウエハWへのエレクトロンビームEBの照射時間が所定時間に達すると、EB管6aによるエレクトロンビームEBの照射を停止して表面処理を終了し、上述した手順とは逆の手順で、半導体ウエハWを、真空チャンバ1外へ搬出する。
【0050】
図4は、上記構成の表面処理装置を用いて、直径8インチの半導体ウエハWに形成されたレジストの表面処理を、エレクトロンビーム照射機構6と半導体ウエハWとの距離(ギャップ)を変更して行った場合の、処理の面内均一性の変化を示すものである。
【0051】
同図において、縦軸はレジスト膜厚減少量((エレクトロンビームEB照射前の膜厚)−(エレクトロンビームEB照射後の膜厚))、横軸は半導体ウエハWの径方向位置(横軸の中央が半導体ウエハ中心)を示しており、曲線Aはギャップが30mm、曲線Bはギャップが58mm、曲線Cはギャップが100mmの場合を示している。なお、かかる膜厚減少量は、エレクトロンビームEB照射前と照射後のレジストの改質の程度を示すものであり、その面内の均一性は、EBキュア処理の面内均一性を示すものである。
【0052】
また、処理条件は、圧力が1330Pa(10Torr)、管電流が250μA、照射時間が330秒である。
【0053】
図4に示されるように、ギャップが30mmの場合、EB管6aの直下の部分における処理が、他の部分に比べて進み、面内均一性が低下する。また、ギャップを58mm、100mmと広くすると、次第に、EB管6aの直下の部分と他の部分との処理の差は減少する傾向にあるが、半導体ウエハWの中央部と周辺部との処理の差が顕著になり周辺部が低下する傾向にある。このため、上記の処理条件の場合は、ギャップを58mm程度とすることが好ましい。
【0054】
上述したとおり、上記の実施形態においては、ギャップを広くすると半導体ウエハWの中央部と周辺部との処理の差が顕著になる傾向があるが、これは半導体ウエハWの周囲においてエレクトロンビームEBの照射量が減少するためと考えられる。
【0055】
図5は、上記のような半導体ウエハWの周辺部におけるエレクトロンビームEBの照射量を制御可能とした本発明の他の実施形態の概略構成を示すもので、この実施形態では、エレクトロンビームEBの軌道を制御することによって、主に半導体ウエハWの周辺部におけるエレクトロンビームEBの照射量を制御するものである。
【0056】
すなわち、この実施形態では、図5に示すように、半導体ウエハWの周囲に位置するように、載置台2上にリング状部材12が設けられており、このリング状部材12と接地電位との間に、リング状部材12の電荷の状態を調節してその電位を制御する電位制御機構30が設けられている。
【0057】
上記電位制御機構30は、図6に示すように、リング状部材12と接地電位との間に流れる電流を制御する可変抵抗30a、あるいは、図7に示すように、リング状部材12に直流電圧を供給する可変直流電源30b等から構成することができる。また、電位制御機構30を設けずに、リング状部材12の材質を選択することによって、リング状部材12の帯電による電位を所望の電位とし、エレクトロンビームEBの軌道を所望の状態に制御することもできる。
【0058】
上記構成の実施形態においては、電位制御機構30等によって、リング状部材12の電位を、例えば半導体ウエハWに対して一定の正電位に設定することにより、半導体ウエハWの中央部に向って射出されたエレクトロンビームEBの軌道を、半導体ウエハWの周辺部の方向に偏向することができ、これによって、半導体ウエハWの中央部に対するエレクトロンビームEBの照射量を低下させ、周辺部におけるエレクトロンビームEBの照射量を増加させることができる。
【0059】
したがって、前述した図4の曲線B、曲線Cに示されるような、半導体ウエハWの周辺部に比べて中央部で処理が進むという、処理の面内均一性の低下を抑制することができる。
【0060】
ところで、エレクトロンビームEBの軌道を制御する場合、上記のように電位によって制御する他に、磁場によってエレクトロンビームEBの軌道を制御することもできる。
【0061】
図8、図9は、磁場によってエレクトロンビームEBの軌道を制御する他の実施形態の概略構成を示すもので、この実施形態では、真空チャンバ1の周囲を囲むように設けられた磁石40によって、所謂マルチポール磁場を形成するよう構成されている。
【0062】
すなわち、図9に示すように、磁石40は、複数の磁石セグメント40aから構成されており、これらの磁石セグメント40aは、隣接する磁石セグメント40aの内側(真空チャンバ1側)に向けた磁極が、N極、S極と交互に並ぶように配列されて構成されている。
【0063】
そして、かかる磁極の配列によって、同図に矢印で示すような真空チャンバ1内壁に沿った多極磁場(マルチポール磁場)を形成するよう構成されている。また、磁石40は、その全体が真空チャンバ1の周囲で回転可能に構成されており、これに伴って、マルチポール磁場も回転するように構成されている。
【0064】
上記構成の本実施形態においては、マルチポール磁場の作用によって、エレクトロンビームEBの軌道を、半導体ウエハWの周辺方向に向けて偏向させるようになっており、これによって、前述した実施形態と同様な作用、効果を得ることができる。
【0065】
なお、上記の実施形態では、真空チャンバ1の内壁に沿って形成されたマルチポール磁場によってエレクトロンビームEBの軌道を制御する場合について説明したが、かかる例に限定されるものではなく、他の形態の磁場によってエレクトロンビームEBの軌道を制御してもよいことは勿論である。
【0066】
例えば、図10に矢印で示すように、真空チャンバ1内に、垂直方向に沿って磁場Bを形成し、この垂直方向に沿って形成された磁場Bによって、エレクトロンビームEBの拡散を抑制する方向にその軌道を制御することもできる。
【0067】
ところで、上述した実施形態では、エレクトロンビーム照射機構6を構成するEB管6aが、窓(照射窓)6bを有しており、この窓6bによって、EB管6aの内部と真空チャンバ1の内部とが気密に仕切られた構造となっている。このため、EB管6a内の圧力とは独立に、真空チャンバ1内の圧力を調整することができる。
【0068】
上記のような構造を採用した場合、例えば、上記のような仕切りとなる照射窓がなく、エレクトロンビームEBを発生させるためのフィラメント等の配置部分と真空チャンバ内とが連通された構造となっている場合に比べて、真空チャンバ内の圧力をある程度高くすることができる。
【0069】
すなわち、仕切りとなる照射窓がない場合は、真空チャンバ内の圧力を上げると、エレクトロンビームEBを発生させるためのフィラメント等の配置部分の圧力も上がってしまい、この部分で不所望なプラズマが発生してしまうため、真空チャンバ内の圧力を高真空に保つ必要がある。これに対して、上述した実施形態では、EB管6aの内部とは独立に真空チャンバ1内の圧力を調整することができるため、真空チャンバ1内の圧力を高真空に保つ必要がない。
【0070】
そこで、真空チャンバ1内の圧力を調節することにより、真空チャンバ1内のガス分子の数を変更し、電子がガス分子と衝突する確率を変え、これによって半導体ウエハWに照射されるエレクトロンビームEBの状態(電子のエネルギー及び拡散の状態)を制御することができる。
【0071】
図11は、縦軸をシュリンケージ(エレクトロンビーム照射後の膜厚のシュリンク(減少)量/エレクトロンビーム照射前の膜厚(%))、横軸を真空チャンバ1内の圧力として、半導体ウエハWに形成したレジスト膜の改質を行った結果を示すものである。
【0072】
同図に示されように、真空チャンバ1内の圧力を上昇させると、半導体ウエハWに形成したレジスト膜のシュリンケージが減少する。これは、真空チャンバ1内の圧力が上昇し、真空チャンバ1内のガス分子の数が増加すると、エレクトロンビーム照射機構6から照射されたエレクトロンビームEB中の電子がガス分子と衝突する確率が増大し、電子のエネルギーが減少するとともに、拡散されるためである。
【0073】
したがって、前述したエレクトロンビーム照射機構6と半導体ウエハWとの距離(ギャップ)を変更する場合と同様に、真空チャンバ1内の圧力を調節することによって、半導体ウエハWに照射されるエレクトロンビームEBの状態(電子のエネルギー及び拡散の状態)を制御することができる。なお、圧力の制御範囲としては、ガス分子の数が少な過ぎるとエレクトロンビームEBの制御効果が少なくなり、一方、ガス分子の数が多過ぎると、エネルギーのロスが多くなり効率が悪化するため、例えば1.33〜66.5KPa(10〜500Torr)程度とすることが好ましい。
【0074】
また、上記のように真空チャンバ1内の圧力のみでなく、真空チャンバ1内に導入するガス種を変更することによっても、電子ビームEBの状態(電子のエネルギー及び拡散の状態)を制御することができる。この場合に使用するガス種は、不活性なものが好ましく、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素等を使用することができる。
【0075】
以上のように、本発明の各実施形態によれば、表面処理の半導体ウエハW面内における均一性を向上させることができ、半導体ウエハWの全面に渡って均一に良好な表面処理を行うことができる。
【0076】
ところで、前述したとおり、上記の各実施形態では、エレクトロンビーム照射機構6を構成するEB管6aが、窓(照射窓)6bを有する構造となっているが、エレクトロンビームEBを半導体ウエハWに照射して改質を行う際に、例えば、レジストから水分等の各種の物質が蒸発して窓6bに付着し、窓6bに曇りが発生する可能性がある。このため、従来から表面処理を行う前に表面処理時に比べて低い温度(例えば、200℃等)で水分等の蒸発を行う所謂ソフトベークを行っている。
【0077】
しかしながら、表面処理時には、ソフトベーク時より高温(例えば350℃)で処理を行うため、多量の水分等が発生し窓6bに付着して曇りが生じるため、頻繁に窓6bのクリーニングを行わなければならない。
【0078】
このため、表面処理の前に、ソフトベークより高温(例えば表面処理時と同一温度)で、熱処理(プリベーク)することが好ましい。
【0079】
図12,13は、ソフトベークのみを行った半導体ウエハWを加熱した場合 (図12)と、ソフトベークにプラスしてホットプレートにより350℃で1分間熱処理(プリベーク)を行った半導体ウエハWを加熱した場合(図13)に発生した物質の量を、質量分析計を使用して調べた結果を示すもので、縦軸は強度、横軸は温度を示している。
【0080】
なお、これらのグラフにおいて、最上部に位置する丸印によって示される結果は、m18=H2 O、すなわち水分の結果を示している。また、その他の物質については、m2=H2 、m14=N,CH2 、m15=CH3 ,NH、m17=OH,NH3 、m19=F、m28=N2 ,C2 4 ,CO、m44=C3 8 ,CO2 ,N2 Oである。
【0081】
上記の図12,13に示されるとおり、ソフトベークのみを行った半導体ウエハWの場合(図12)に比べて、ソフトベークにプラスしてホットプレートで1分間プリベークを行った半導体ウエハWの場合(図13)、加熱した際に発生する水分等の量を、大幅に減少させることができる。
【0082】
したがって、上記のようなプリベークを行うことにより、窓6bに曇りが生じることを抑制することができる。
【0083】
図14は、上記のプリベークを行うための機構を具備した装置の構成例を示すものである。同図に示す装置は、トランスファーモジュール(T/M)101の周囲に、2つのカセットチャンバ(C/C)102と、表面処理装置(EB)103と、加熱処理装置(HP)104及び冷却処理装置(Cooling)105を配置した構成とされている。これらの内部は、所定の真空雰囲気に設定可能とされており、トランスファーモジュール(T/M)101内に配置された搬送機構により、カセットチャンバ102内に配置したカセットチャンバから、半導体ウエハWを取り出して、加熱処理装置(HP)104、表面処理装置(EB)103、冷却処理装置(Cooling)105に順次搬送し、熱処理(プリベーク)、エレクトロンビームEBの照射による表面処理、冷却処理を順次施すようになっている。
【0084】
上記構成の装置を使用すれば、プリベーク、エレクトロンビームEBの照射による表面処理、冷却処理を、一つの装置内で効率良く行うことができる。また、表面処理装置(EB)103で表面処理を行う前に、加熱処理装置(HP)104でプリベークを行うことにより、表面処理装置(EB)103の窓6bに曇りが生じることを抑制することができる。
【0085】
また、上記のように、専用の加熱処理装置(HP)104を設けずに、図15に示すように、表面処理装置(EB)103を2台設けた構成の装置においても、同様な一連の処理を行うことができる。すなわち、この場合は、表面処理装置(EB)103内に半導体ウエハWを搬入した後、まず、表面処理装置(EB)103内で、窒素等の不活性なガスを多量に流した状態で半導体ウエハWのプリベークを行い、この後、上記のガスの流量を通常の表面処理時の流量に減少させてエレクトロンビームEBを照射する表面処理を行う。このようにしても、プリベーク時に発生する多量の水分等を、ガスの流れによって外部に導出することができるので、表面処理装置(EB)103の窓6bに曇りが生じることを抑制することができる。
【0086】
また、図16〜18は、上記の表面処理装置とレジストの塗布、現像を行う塗布、現像装置を組み合わせ、かつ、塗布、現像装置の加熱機構等によって半導体ウエハWのプリベークを行うようにした装置の例を示すものである。
【0087】
これらの図に示されるように、この装置は、カセットステーション201と、レジストの塗布、現像及びこれに伴う熱処理等を行う塗布、現像処理部202と、前述した表面処理装置が設けられた表面処理部203とが一体に接続されて構成されている。なお、この装置には、半導体ウエハWに塗布されたレジストに対して、所定の回路パターンの露光を行う図示しない露光処理装置が接続されて使用される。
【0088】
カセットステーション201には、図示しない搬送機構が設けられており、カセットステーション201に設けられたカセットCと、塗布、現像処理部202との間で半導体ウエハWを搬送するよう構成されている。
【0089】
また、図16に示されるように、塗布、現像処理部202には、中央部に上下及び水平方向に半導体ウエハWを搬送可能とされた搬送機構204が配置され、その周囲に、処理ユニットが多段に設けられた4つの処理ユニット群、すなわち、第1の処理ユニット群(G1)205、第2の処理ユニット群(G2)206、第3の処理ユニット群(G3)207、第4の処理ユニット群(G4)208が配置されている。そして、搬送機構204は、これらの処理ユニット群に多段に配置されている各処理ユニットに対して、半導体ウエハWを搬入、搬出可能とされている。
【0090】
第1の処理ユニット群(G1)205、及び第2の処理ユニット群(G2)206は、半導体ウエハWにレジスト液を塗布するレジスト塗布ユニット(COT)及び半導体ウエハWの現像処理を行う現像処理ユニット(DEV)等から構成されている。
【0091】
また、第3の処理ユニット群(G3)207、及び第4の処理ユニット群(G4)208は、半導体ウエハWを冷却するクーリングユニット、半導体ウエハWの受け渡しを行う受け渡し部、レジスト液の定着性を高めるためのアドヒージョン処理を行うアドヒージョンユニット、半導体ウエハWの熱処理を行う加熱処理ユニット等から構成されている。そして、この第3の処理ユニット群(G3)207、及び第4の処理ユニット群(G4)208のいずれかの位置に、半導体ウエハWのソフトベーキングを行う熱処理ユニットと、半導体ウエハWのプリベークを行う熱処理ユニットとが配置される。
【0092】
また、表面処理部203には、2台の表面処理装置(EB)209が配置されており、これらの表面処理装置(EB)209には、それぞれロードロック室 (L/L)210が設けられている。そして、搬送機構211によって、塗布、現像処理部202とロードロック室(L/L)210との間で半導体ウエハWの搬送を行うよう構成されている。
【0093】
なお、上述したように、塗布、現像処理部202に半導体ウエハWのプリベークを行う熱処理機構(熱処理ユニット)を設けるのではなく、上記のロードロック室(L/L)210内に、半導体ウエハWのプリベークを行う熱処理機構を設けることもできる。
【0094】
上記構成の装置を使用すれば、塗布、現像処理、熱処理(ソフトベーク及びプリベーク)、エレクトロンビームEBの照射による表面処理、冷却処理を、一台の装置によって効率良く行うことができる。また、表面処理装置(EB)209で表面処理を行う前に、プリベークを行うことにより、表面処理装置(EB)209の窓6bに曇りが生じることを抑制することができる。
【0095】
なお、上記実施の形態においては、本発明を半導体ウエハ等の表面処理を行う表面処理装置に適用した場合について説明したが、本発明はかかる場合に限定されるものではない。例えば、半導体ウエハ以外の液晶表示装置用のガラス基板等を表面処理するものであっても同様に適用することができる。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明の表面処理装置及び表面処理方法によれば、被処理基板の全面に渡って均一に良好な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表面処理装置の一実施形態の概略構成を示す図。
【図2】図1の表面処理装置の要部概略構成を示す図。
【図3】図1の表面処理装置のエレクトロンビームの照射状態の変化を示す図。
【図4】図1の表面処理装置による表面処理の結果を示す図。
【図5】本発明の表面処理装置の他の実施形態の概略構成を示す図。
【図6】図5の表面処理装置の要部概略構成を示す図。
【図7】図5の表面処理装置の要部概略構成を示す図。
【図8】本発明の表面処理装置の他の実施形態の概略構成を示す図。
【図9】図8の表面処理装置の要部概略構成を示す図。
【図10】本発明の表面処理装置の他の実施形態の概略構成を示す図。
【図11】真空チャンバ内の圧力とシュリンケージとの関係を示す図。
【図12】ソフトベークのみを行った場合に発生する物質の量を示す図。
【図13】プリベークを行った場合に発生する物質の量を示す図。
【図14】プリベークを行う装置の構成例を示す図。
【図15】プリベークを行う装置の構成例を示す図。
【図16】プリベークを行う装置の構成例を示す図。
【図17】プリベークを行う装置の構成例を示す図。
【図18】プリベークを行う装置の構成例を示す図。
【符号の説明】
W……ウエハ、1……真空チャンバ、2……載置台、3……昇降装置、6……エレクトロンビーム照射機構、6a……EB管、EB……エレクトロンビーム。

Claims (7)

  1. 内部を所定の真空雰囲気に設定可能とされた真空チャンバと、
    前記真空チャンバ内に設けられ、被処理基板が載置される載置台と、
    前記被処理基板に電子を照射する電子照射機構と、
    前記被処理基板の周囲を囲むように設けられた電子軌道偏向用部材を具備し、この電子軌道偏向用部材の電位によって、前記電子照射機構から射出された電子の軌道を制御する電子軌道制御手段と
    前記載置台と、前記電子照射機構との間隔を所望間隔に設定する駆動機構と、
    を具備し前記被処理基板表面の絶縁膜又はレジストの改質を行うことを特徴とする表面処理装置。
  2. 請求項1記載の表面処理装置において、
    前記電子軌道偏向用部材の電位を調節する電位制御手段を具備したことを特徴とする表面処理装置。
  3. 請求項2記載の表面処理装置において、
    前記電位制御手段が、前記電子軌道偏向用部材と接地電位との間に設けられた可変抵抗から構成されたことを特徴とする表面処理装置。
  4. 請求項2記載の表面処理装置において、
    前記電位制御手段が、前記電子軌道偏向用部材に直流電圧を印加する可変直流電源から構成されたことを特徴とする表面処理装置。
  5. 内部を所定の真空雰囲気に設定可能とされた真空チャンバと、
    前記真空チャンバ内に設けられ、被処理基板が載置される載置台と、
    前記被処理基板に電子を照射する電子照射機構と、
    載置台に載置された被処理基板の周囲を囲むように前記真空チャンバの側壁部に沿ってマルチポール磁場を形成するとともに、前記真空チャンバの周囲で回転し、前記マルチポール磁場を回転させ、前記電子照射機構から射出された電子の軌道を制御する、磁場形成手段から構成された電子軌道制御手段と
    前記載置台と、前記電子照射機構との間隔を所望間隔に設定する駆動機構と、
    を具備し前記被処理基板表面の絶縁膜又はレジストの改質を行うことを特徴とする表面処理装置。
  6. 内部を所定の真空雰囲気に設定可能とされた真空チャンバと、
    前記真空チャンバ内に設けられ、被処理基板が載置される載置台と、
    前記被処理基板に電子を照射する電子照射機構と、
    前記載置台に載置された被処理基板の表面に対して垂直方向の磁場を形成し、前記電子照射機構から射出された電子の軌道を制御する、磁場形成手段から構成された電子軌道制御手段と、
    前記載置台と、前記電子照射機構との間隔を所望間隔に設定する駆動機構と、
    を具備し前記被処理基板表面の絶縁膜又はレジストの改質を行うことを特徴とする表面処理装置。
  7. 請求項1〜いずれか1項記載の表面処理装置において、
    前記電子照射機構から照射される電子の量を検出する検出機構と、前記検出機構による検出結果に基づいて、前記電子照射機構から所定量の電子が照射されるように制御する制御装置とを具備したことを特徴とする表面処理装置。
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