JP4054910B2 - 小型化学反応装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は小型化学反応装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
化学反応の技術分野では、流体化された混合物質を流路内に設けられた触媒による化学反応(触媒反応)により、所望の流体物質を生成する化学反応装置が知られている。従来のこのような化学反応装置には、半導体集積回路などの半導体製造技術で蓄積された微細加工技術を用いて、シリコン基板上にミクロンオーダーあるいはミリメートルオーダーの流路を形成したものがある。
【0003】
図11は従来のこのような小型化学反応装置の一例の透過平面図を示し、図12はそのB−B線に沿う断面図を示したものである。この小型化学反応装置は小型のシリコン基板1を備えている。シリコン基板1の一面には、半導体製造技術で蓄積された微細加工技術を用いて、蛇行した微小な流路2が形成されている。流路2の内壁面には触媒層3が形成されている。シリコン基板1の一面には蓋となるガラス板4が接合されている。ガラス板4の流路2の両端部に対応する所定の2箇所には流入口5および流出口6が形成されている。
【0004】
シリコン基板1の他面には蛇行した薄膜ヒータ7が形成されている。薄膜ヒータ7は、この小型化学反応装置における化学反応(触媒反応)が所定の熱条件による吸熱反応を伴うとき、化学反応時に流路2内の触媒層3に所定の熱エネルギを供給するためのものである。シリコン基板1の他面には、該他面との対向面の中央部に座ぐり加工により凹部9が形成されたガラス板8の周辺部が接合されている。ガラス板8は、薄膜ヒータ7を保護するほかに、薄膜ヒータ7の熱拡散を防止し、熱効率を良くするためのものである。また、凹部9内は、断熱性能を高めるため、真空とされている。
【0005】
次に、この小型化学反応装置のシリコン基板1の流路2の部分の製造方法の一例について説明する。まず、図13に示すように、小型のシリコン基板1の一面に、半導体製造技術で蓄積された微細加工技術を用いて、蛇行した微小な流路2を形成する。次に、流路2内を含むシリコン基板1の一面に塗布されたフォトレジストをパターニングすることにより、流路2に対応する部分に開口部12を有するフォトレジスト11を形成する。
【0006】
次に、図14に示すように、流路2内および開口部12内を含むフォトレジスト11の表面に触媒層3を形成する。次に、フォトレジスト11をその表面に形成された触媒層3の不要な部分と共に除去すると、図15に示すように、流路2の内壁面にのみ触媒層3が残存される。この場合、フォトレジスト11の除去は、剥離液を用いる方法、あるいは酸素プラズマアッシングによる方法がある。
【0007】
次に、上記構成の小型化学反応装置の使用例について説明する。例えば、近年、実用化に向けて研究開発が目覚ましい燃料改質型の小型燃料電池(小型発電型電源)では、上記構成の小型化学反応装置を用いて、メタノール水溶液を蒸発(気化)させて得られた混合ガス(CH3OH+H2O)から水素(発電用燃料)を生成することがある。
【0008】
すなわち、薄膜ヒータ7の発熱により流路2内が所定の温度となるように加熱した状態において、上記混合ガス(CH3OH+H2O)が流入口5を介して流路2内に供給されると、流路2内の触媒層3による吸熱反応が生じて、水素と副生成物としての二酸化炭素が生成される。そして、この生成物のうち、二酸化炭素を水素から分離して除去すると、水素のみを発電用燃料として小型燃料電池に供給することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の製造方法では、剥離液を用いて、フォトレジスト11をその表面に形成された触媒層3の不要な部分と共に除去する場合には、流路2の内壁面に残存される触媒層3が剥離液と接触してダメージを受けることがあり、またフォトレジスト11の表面に形成された触媒層3が邪魔となり、剥離液がフォトレジスト11まで十分に到達せず、フォトレジスト11を良好に除去することができない場合があるという問題があった。また、酸素プラズマアッシングにより、フォトレジスト11をその表面に形成された触媒層3の不要な部分と共に除去する場合には、フォトレジスト11の表面に形成された触媒層3が蔭となり、プラズマ種がフォトレジスト11まで十分に到達せず、フォトレジスト11を良好に除去することができない場合があるという問題があった。また、このような問題を解消するためにメタルマスクを用いた印刷を試みると、小型化学反応装置で求められるラインアンドスペースの高精細なピッチの流路表面に触媒溶液を塗布することが困難なため、化学反応装置の小型化の障害となっていた。
そこで、この発明は、高精細なピッチの流路内に触媒層を形成するためのフォトレジストを、流路内に残存される触媒層にダメージを与えることなく、良好に除去することができる小型化学反応装置の製造方法を提供することを利点とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、小型の基板の一面に微小な流路を形成し、前記基板の一面にドライフィルムからなるフォトレジストを貼り付け、前記フォトレジストの前記流路に対応する部分に、前記流路の幅よりもやや小さい幅の開口部を形成し、前記流路内および前記開口部内を含む前記フォトレジストの表面に触媒層を形成し、前記フォトレジストをその表面に形成された不要な部分の前記触媒層と共に引き剥がして除去することを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記フォトレジストを引き剥がして除去した後に、ディスカム処理を行うことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記ディスカム処理は酸素プラズマアッシングであることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記基板はシリコン基板であることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記流路は、サンドブラスト法により形成することを特徴とするものである。そして、この発明によれば、フォトレジストとしてドライフィルムからなるものを用い、フォトレジストをその表面に形成された不要な部分の触媒層と共に引き剥がして除去しているので、ドライフィルムからなるフォトレジストを、流路内に残存される触媒層にダメージを与えることなく、良好に除去することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明の一実施形態としての小型化学反応装置の透過平面図を示し、図2はそのA−A線に沿う断面図を示したものである。この小型化学反応装置は小型のシリコン基板21を備えている。シリコン基板21の寸法は、一例として、長さ25mm程度、幅17mm程度、厚さ0.6〜1mm程度である。シリコン基板21の一面には、半導体製造技術で蓄積された微細加工技術を用いて、蛇行した微小な流路22が形成されている。流路22の寸法は、一例として、幅0.2〜0.8mm程度、深さ0.2〜0.6mm程度であり、全長は30〜1000mm程度である。
【0012】
流路22の内壁面には触媒層23が形成されている。シリコン基板21の一面には蓋となる厚さ0.7mm程度のガラス板24が接合されている。ガラス板24の流路22の両端部に対応する所定の2箇所には流入口25および流出口26が形成されている。
【0013】
シリコン基板21の他面にはTaSiOxやTaSiOxNなどの抵抗体薄膜からなる蛇行した薄膜ヒータ27が形成されている。薄膜ヒータ27は、この小型化学反応装置における化学反応(触媒反応)が所定の熱条件による吸熱反応を伴うとき、化学反応時に流路22内の触媒層23に所定の熱エネルギを供給するためのものである。この場合、蛇行した薄膜ヒータ27は、蛇行した流路22と平面的に一致していないが、一致させるようにしてもよい。また、薄膜ヒータ27は流路22全面を覆うようなべた状としてもよい。
【0014】
シリコン基板21の他面には、一面の中央部に座ぐり加工により凹部29が形成された厚さ0.7mm程度のガラス板28の周辺部が接合されている。ガラス板28は、薄膜ヒータ27を保護するほかに、薄膜ヒータ27の熱拡散を防止し、熱効率を良くするためのものである。また、凹部29内は、断熱性能を高めるため、真空とされている。
【0015】
次に、この小型化学反応装置の製造方法の第1の例について説明する。まず、図3に示すように、小型のシリコン基板21の一面に、半導体製造技術で蓄積された微細加工技術を用いて、蛇行した微小な流路22を形成する。この場合、流路22の形成は、ウェットエッチングやドライエッチングによって行ってもよいが、サンドブラスト法によって行うことが好ましい。すなわち、サンドブラスト法は、加工レートが速く、また装置が比較的安価であるからである。
【0016】
次に、シリコン基板21の一面にドライフィルムからなるフォトレジスト31を貼り付ける。この状態では、フォトレジスト31がドライフィルムであるため、流路22内は空洞となる。次に、図4に示すように、フォトレジスト31をパターニングして、フォトレジスト31の流路22に対応する部分に開口部32を形成する。この場合、図4では、開口部32の幅を流路22の幅と同じとしているが、開口部32の幅は流路22の幅よりもやや小さくした方が好ましい。その理由については、後で説明する。
【0017】
次に、図5に示すように、流路22の内壁面および開口部32の内壁面を含むフォトレジスト31の表面に、触媒粒子を溶媒中に分散させてなる触媒溶液を塗布することにより、あるいはスパッタリング法などの物理的成膜法により、触媒層23を形成する。次に、フォトレジスト31をその表面に形成された不要な部分の触媒層23と共に機械的力により引き剥がして除去すると、図6に示すように、流路22の内壁面にのみ触媒層23が残存される。
【0018】
このように、フォトレジスト31としてドライフィルムからなるものを用い、フォトレジスト31をその表面に形成された不要な部分の触媒層23と共に機械的力により引き剥がして除去しているので、ドライフィルムからなるフォトレジスト31を、流路22内に残存される触媒層23にダメージを与えることなく、良好に除去することができる。
【0019】
ところで、フォトレジスト31を機械的力により引き剥がしたとき、シリコン基板21の一面上にレジスト残渣(スカム)がわずかに残存した場合には、当該レジスト残渣を酸素プラズマアッシングなどのディスカム処理により除去する。これは、シリコン基板21の一面へのガラス板24の後述する接合を確実とするためである。
【0020】
ここで、図3に示すように、一面に流路22が形成されたシリコン基板21の一面にドライフィルからなるフォトレジスト31を貼り付け、次いで図4に示すように、フォトレジスト31をパターニングして、フォトレジスト31の流路22に対応する部分に開口部32を形成しているので、流路22に対する開口部32の位置がずれる場合がある。そこで、上述の如く、開口部32の幅を流路22の幅よりもやや小さくしておくと、流路22に対する開口部32の位置がずれても、流路22の近傍におけるシリコン基板21の一面上に触媒層23が全く残存しないようにすることができる。これは、上記と同様に、シリコン基板21の一面へのガラス板24の後述する接合を確実とするためである。
【0021】
次に、図1および図2に示すように、シリコン基板21の他面にTaSiOxやTaSiOxNなどの抵抗体薄膜からなる蛇行した薄膜ヒータ27を形成する。次に、ガラス板24に、サンドブラスト法により、流入口25および流出口26を形成したもの用意する。また、ガラス板28に、座ぐり加工により、凹部29を形成したもの用意する。
【0022】
次に、シリコン基板21の一面にガラス板24を重ね合わせ、陽極接合処理を行うことにより、シリコン基板21の一面にガラス板24を接合する。また、シリコン基板21の他面にガラス板28を重ね合わせ、陽極接合処理を行うことにより、シリコン基板21の他面にガラス板28を接合する。
【0023】
ここで、代表として、シリコン基板21の一面にガラス板24を接合する陽極接合処理について説明する。シリコン基板21の一面にガラス板24を重ね合わせ、シリコン基板21側を陽極とし、ガラス板24側を陰極とする。そして、シリコン基板21およびガラス板24を400〜600℃程度に加熱した状態で、両極間に1kV程度の直流電圧を印加する。
【0024】
すると、ガラス板24内の不純物である陽イオンがシリコン基板21から離れる方向に移動し、ガラス板24のシリコン基板21側の界面に酸素イオンの濃度の高い層が現れる。すると、シリコン基板21のガラス板24側の界面のシリコン原子とガラス板24のシリコン基板21側の界面の酸素イオンとが結合し、強固な接合界面が得られる。
【0025】
この場合、シリコン基板21およびガラス板24を400〜600℃程度に加熱し、両極間に1kV程度の直流電圧を印加するのは、ガラス板24内の不純物である陽イオンがシリコン基板21から離れる方向に移動する速度を高くするためである。
【0026】
次に、図1および図2に示す小型化学反応装置の製造方法の第2の例について説明する。まず、図7に示すように、小型のシリコン基板21の一面にドライフィルムからなるフォトレジスト31を貼り付ける。次に、図8に示すように、フォトレジスト31をパターニングして、フォトレジスト31の流路形成領域に対応する部分に開口部32を形成する。次に、フォトレジスト31をマスクとしたサンドブラスト法により、図4に示すように、シリコン基板21の一面に蛇行した微小な流路22を形成する。以下、上記第1の例の場合と同じであるので、省略する。
【0027】
ところで、上記第1の例の場合には、流路22に対する開口部32の位置ずれを許容するには、開口部32の幅を流路22の幅よりもやや小さくしなければならず、煩雑であり、またフォトレジスト31とは別に、流路22を形成するためのフォトレジストパターンを形成しなければならず、工程数が多い。
【0028】
これに対し、上記第2の例の場合には、図8に示すように、フォトレジスト31をパターニングして、フォトレジスト31の流路形成領域に対応する部分に開口部32を形成し、次いでフォトレジスト31をマスクとしたサンドブラスト法により、図4に示すように、シリコン基板21の一面に流路22を形成しているので、結果的には、流路22に対する開口部32の位置を全く同じとすることができる。また、フォトレジスト31をマスクとして流路22を形成しているので、工程数を少なくすることができる。
【0029】
次に、この発明に係る小型化学反応装置を小型発電型電源に適用した場合について説明する。図9は小型発電型電源の要部のブロック図を示したものである。この小型発電型電源は、燃料部41、燃料蒸発部42、水素化部43、一酸化炭素除去部44、発電部45、充電部46などを備えている。燃料部41は、発電用燃料(例えばメタノール水溶液)が封入された燃料パックなどからなり、発電用燃料(以下、単に燃料という。)を燃料蒸発部42に供給する。
【0030】
燃料蒸発部42は、図1および図2に示すような構造となっている。ただし、この場合、流路22内には触媒層23は形成されていない。また、シリコン基板21の代わりに、ガラス基板やアルミニウム基板などを用いてもよい。そして、燃料蒸発部42は、燃料部41からのメタノール水溶液が流入口25を介して流路22内に供給されると、流路22内において、薄膜ヒータ27の加熱(120℃程度)により、メタノール水溶液を蒸発(気化)させ、この気化された混合ガス(CH3OH+H2O)を流出口26から流出させる。
【0031】
燃料蒸発部42で気化された混合ガス(CH3OH+H2O)は水素化部43に供給される。この場合、水素化部43も、図1および図2に示すような構造となっている。ただし、この場合、触媒層23はCu/ZnO/Al2O3などからなっている。また、シリコン基板21の代わりに、ガラス基板などを用いてもよい。そして、水素化部43は、燃料蒸発部42からの混合ガス(CH3OH+H2O)が流入口25を介して流路22内に供給されると、流路22内において、薄膜ヒータ27の加熱(280℃程度)により、次の式(1)に示すような吸熱反応を引き起こし、水素と副生成物の二酸化炭素とを生成する。
CH3OH+H2O→3H2+CO2……(1)
【0032】
上記式(1)の左辺における水(H2O)は、反応の初期では、燃料部41の燃料に含まれているものでよいが、後述する発電部45の発電に伴い生成される水を回収して水素化部43に供給することが可能である。発電部45の発電中の上記式(1)の左辺のおける水(H2O)の供給源は、発電部45のみでもよく、発電部45および燃料部41でも、また燃料部41のみでもよい。なお、このとき微量ではあるが、一酸化炭素が水素化部43内で生成されることがある。
【0033】
そして、上記式(1)の右辺の生成物および一酸化炭素は水素化部43の流出口26から流出される。水素化部43の流出口26から流出された生成物のうち、気化状態の水素および一酸化炭素は一酸化炭素除去部44に供給され、二酸化炭素は分離されて大気中に放出される。
【0034】
次に、一酸化炭素除去部44も、図1および図2に示すような構造となっている。ただし、この場合、触媒層23はPt/Al2O3などからなっている。また、シリコン基板21の代わりに、ガラス基板などを用いてもよい。そして、一酸化炭素除去部44は、水素化部43からの気化状態の水素および一酸化炭素が流入口25を介して流路22内に供給されると、薄膜ヒータ27の加熱(180℃程度)により、流路22内に供給された水素、一酸化炭素、水のうち、一酸化炭素と水とが反応し、次の式(2)に示すように、水素と副生成物の二酸化炭素とが生成される。
CO+H2O→H2+CO2……(2)
【0035】
上記式(2)の左辺における水(H2O)は反応の初期では、燃料部41の燃料に含まれているものでよいが、発電部45の発電に伴い生成される水を回収して水素化部43を供給することが可能である。発電部45の発電中の式(2)の左辺のおける水の供給源は、発電部45のみでもよく、発電部45および燃料部41でも、また燃料部41のみでもよい。
【0036】
そして、最終的に一酸化炭素除去部44の流出口26に到達する流体はそのほとんどが水素、二酸化炭素となる。なお、一酸化炭素除去部44の流出口26に到達する流体に極微量の一酸化炭素が含まれている場合、残存する一酸化炭素を大気中から逆止弁を介して取り込まれた酸素に接触させることで、次の式(3)に示すように、二酸化炭素が生成され、これにより一酸化炭素が確実に除去される。
CO+(1/2)O2→CO2……(3)
【0037】
上記一連の反応後の生成物は水素および二酸化炭素(場合によって微量の水を含む)で構成されるが、これらの生成物のうち、二酸化炭素は水素から分離されて大気中に放出される。したがって、一酸化炭素除去部44から発電部45には水素のみが供給される。なお、一酸化炭素除去部44は、燃料蒸発部42と水素化部43との間に設けてもよい。
【0038】
次に、発電部45は、図10に示すように、周知の固体高分子型の燃料電池からなっている。すなわち、発電部45は、Pt/Cなどの触媒が付着された炭素電極からなるカソード51と、Pt/Ru/Cなどの触媒が付着された炭素電極からなるアノード52と、カソード51とアノード52との間に介在されたフィルム状のイオン導電膜53と、を有して構成され、カソード51とアノード52との間に設けられた2次電池やコンデンサなどからなる充電部46に電力を供給するものである。
【0039】
この場合、カソード51の外側には空間部54が設けられている。この空間部54内には一酸化炭素除去部44からの水素が供給される。また、アノード52の外側には空間部56が設けられている。この空間部56内には大気中から義ゅ区止弁を介して取り込まれた酸素が供給される。
【0040】
そして、カソード51側では、次の式(4)に示すように、水素から電子(e-)が分離した水素イオン(プロトン;H+)が発生し、イオン導電膜53を介してアノード52側に通過するとともに、カソード51により電子(e-)が取り出されて充電部46に供給される。
3H2→6H++6e-……(4)
【0041】
一方、アノード52側では、次の式(5)に示すように、充電部46を経由して供給された電子(e-)とイオン導電膜63を通過した水素イオン(H+)と酸素とが反応して副生成物の水が生成される。
6H++(3/2)O2+6e-→3H2O……(5)
【0042】
以上のような一連の電気化学反応(式(4)および式(5))は概ね室温〜80℃程度の比較的低温の環境下で進行し、電力以外の副生成物は、基本的に水のみとなる。発電部45で生成された電力は充電部46に供給され、これにより充電部46が充電される。
【0043】
発電部45で生成された副生成物としての水は回収される。この場合、上述の如く、発電部45で生成された水の少なくとも一部を水素化部43に供給するようにすると、燃料部41内に当初封入される水の量を減らすことができ、また回収される水の量を減らすことができる。
【0044】
ところで、現在、研究開発が行われている燃料改質方式の燃料電池に適用されている燃料としては、発電部45により、比較的高いエネルギ変換効率で電気エネルギを生成することができる燃料であって、例えば、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系の液体燃料や、ジメチルエーテル、イソブタン、天然ガス(CNG)などの液化ガスなどの常温常圧で気化される水素からなる液体燃料、あるいは、水素ガスなどの気体燃料などの流体物質を良好に適用することができる。
【0045】
なお、上述したメタノール水溶液の蒸発改質反応に限定されるものではなく、少なくとも、所定の熱条件下で生じる化学反応(吸熱反応)であれば、良好に適用することができる。また、化学反応により生成される所定の流体物質を発電用燃料として用いて発電を行うことができるものであれば、上記燃料電池に限定されるものではない。
【0046】
したがって、化学反応により生成された流体物質の燃焼反応に伴う熱エネルギによるもの(温度差発電)や、燃焼反応などに伴う圧力エネルギを用いて発電器を回転させて電力を発生する力学的なエネルギ変換作用などによるもの(ガス燃焼タービンやロータリーエンジン、スターリングエンジンなどの内燃、外燃機関発電)、また、発電用燃料の流体エネルギや熱エネルギを電磁誘導の原理などを利用して電力に変換するもの(電磁流体力学発電、熱音響効果発電など)など、種々の形態を有する発電装置を用いることができる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、フォトレジストとしてドライフィルムからなるものを用い、フォトレジストをその表面に形成された不要な部分の触媒層と共に引き剥がして除去しているので、ドライフィルムからなるフォトレジストを、流路内に残存される触媒層にダメージを与えることなく、良好に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態としての小型化学反応装置の透過平面図。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図。
【図3】図1および図2に示す小型化学反応装置の第1の例の製造に際し、当初の工程の断面図。
【図4】図3に続く工程の断面図。
【図5】図4に続く工程の断面図。
【図6】図5に続く工程の断面図。
【図7】図1および図2に示す小型化学反応装置の第2の例の製造に際し、当初の工程の断面図。
【図8】図7に続く工程の断面図。
【図9】この発明に係る小型化学反応装置を備えた小型発電型電源の一例の要部のブロック図。
【図10】図9に示す小型発電型電源の発電部の概略構成図。
【図11】従来の小型化学反応装置の一例の透過平面図。
【図12】図11のB−B線に沿う断面図。
【図13】図11および図12に示す小型化学反応装置の製造に際し、当初の工程の断面図。
【図14】図13に続く工程の断面図。
【図15】図14に続く工程の断面図。
【符号の説明】
21 シリコン基板
22 流路
23 触媒層
24 ガラス板
25 流入口
26 流出口
27 薄膜ヒータ
28 ガラス板
29 凹部
31 フォトレジスト
32 開口部
Claims (5)
- 小型の基板の一面に微小な流路を形成し、前記基板の一面にドライフィルムからなるフォトレジストを貼り付け、前記フォトレジストの前記流路に対応する部分に、前記流路の幅よりもやや小さい幅の開口部を形成し、前記流路内および前記開口部内を含む前記フォトレジストの表面に触媒層を形成し、前記フォトレジストをその表面に形成された不要な部分の前記触媒層と共に引き剥がして除去することを特徴とする小型化学反応装置の製造方法。
- 請求項1に記載の発明において、前記フォトレジストを引き剥がして除去した後に、ディスカム処理を行うことを特徴とする小型化学反応装置の製造方法。
- 請求項2に記載の発明において、前記ディスカム処理は酸素プラズマアッシングであることを特徴とする小型化学反応装置の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記基板はシリコン基板であることを特徴とする小型化学反応装置の製造方法。
- 請求項4に記載の発明において、前記流路は、サンドブラスト法により形成することを特徴とする小型化学反応装置の製造方法。
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JP2002071548A JP4054910B2 (ja) | 2002-03-15 | 2002-03-15 | 小型化学反応装置の製造方法 |
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