JP4054243B2 - 炭化珪素単結晶ウェハの製造方法、および炭化珪素単結晶ウェハ - Google Patents

炭化珪素単結晶ウェハの製造方法、および炭化珪素単結晶ウェハ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウェハ反りに優れた炭化珪素単結晶ウェハの製造方法、およびそれにより製造されたウェハ反りに優れた炭化珪素単結晶ウェハに関するものである。本発明の炭化珪素単結晶ウェハは、主として各種電子デバイス製造用の基板として用いられる。
【0002】
【従来の技術】
炭化珪素(SiC)は、その半導体材料としての優れた物理特性、耐熱性及び機械的強度などから、特に電力用パワーデバイスを含む各種半導体デバイスのウェハ用材料として注目を集めている。
【0003】
デバイス製造に適した大口径を有する単結晶のインゴットは、目下のところ、改良レーリー法と称される昇華再結晶法によって製造されることが一般的になっている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
近年、結晶品質改良において大幅な技術進歩が進捗し、SiC単結晶中の欠陥密度の低減化、および口径4インチ(100mm)に及ぶ結晶の大口径化が実現しつつある(例えば、非特許文献2参照。)。実用化においても、GaN系青色発光ダイオードやショットキーバリアダイオードなどが既に商品化されており、また他方で、GaN系高周波デバイス、およびMOSFETに代表される低損失パワーデバイス等々も試作されるに至っている。
【0005】
半導体デバイス製造用SiCウェハとして用いるためには、前記の改良レーリー法などの方法によって製造されたSiC単結晶インゴットを、主として切断および研磨からなる工程を経て、ウェハ状に加工する必要がある。切断は外周刃、あるいは内周刃切断方式のいずれによっても可能であるが、より薄肉・高歩留まり切断を実現し得るとの観点から、近年ではワイヤーソー切断が注目されている。
【0006】
所望の結晶面が露出するように切断された薄板状単結晶は、シリコンをはじめとする他の半導体材料一般について行われている方法と、ほぼ同様な研磨プロセスにより研磨加工される。ウェハ表面に研磨傷が残留すると、後プロセスでそのウェハ上に形成されるデバイスの動作特性が著しく劣化するため、ウェハ表面を、理想的には残留研磨傷が皆無な鏡面状に極力仕上げることが必要である。すなわち、ダイヤモンドなどの硬質微粒子を分散させた砥粒液を使用し、銅あるいは鋳鉄などの研磨盤上で機械的研磨を実施して、最終的にウェハ表面を鏡面状に仕上げる。コスト効率的な残留研磨傷除去を実現するためには、硬質微粒子の粒度を選択あるいは混合して工程を分け、ステップを分けて段階的に粒度を減少させていくことが好ましく、その詳細は効率的にウェハ表面を鏡面研磨する上でのノウハウとなっている。
【0007】
【非特許文献1】
ユ. エム. タイロフ および ブイ. エフ. ツベットコフ、ジャーナル オブ クリスタル グロース 第52巻 (1981) 第146頁(Yu. M. Tairov and V. F. Tsvetkov, Journal of Crystal Growth, Vol.52 (1981) pp.146)
【0008】
【非特許文献2】
シー. エッチ. カーターほか、FEDジャーナル 第11巻 (2000) 第7頁(C. H. Carter, et al., FEDジャーナル, Vol.11 (2000) pp.7)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ウェハ化加工においては、一般的に、いわゆる「反り」や「うねり」として表現されている、ウェハのウェハ反りが極めて重要な評価因子の一つとなっている。これは、ウェハ面の大局的な幾何学的形状について、理想的な完全平坦面からの偏差の大小を示す指標の一つであり、本指標が小さい程、ウェハは完全平坦面に近い表面を有していることを表す。
【0010】
図1に、各々のウェハ例について、ウェハ反りの定義を模式的に示した。
【0011】
JEIDA規格によると、ウェハ平坦度とは、吸着固定しない状態で静置されたウェハについて、基準平面からウェハ表面までの距離の最大値と最小値の差として定義され、基準平面はその値が最小となるように選ばれる(JEIDA規格「JEIDA−43−1999、シリコンウェハ平坦度に関する用語」、社団法人日本電子工業振興協会)。
【0012】
JEIDA規格に従う場合、図1(a)に示すように、ウェハの片面全面に亘って理想的完全平坦面が実現されているとすると、基準平面はウェハ測定面に平行な任意の面(図1(a)中の2)となり、この基準平面からの垂直距離の最大値と最小値は共に等しいことから、この面の表面平坦度はゼロとなる。また、図1(b)に示すように、ウェハ面に反り、或いはうねりが存在する場合には、図中に示す基準平面(図1(b)中の2)からの垂直距離の最大値(同図中の5)と最小値(同図中の4)の差(同図中の3)が表面平坦度となる。
【0013】
一方、測定方法の実際としては、ウェハを平坦で十分に硬い測定台に静置した状態で、鋼あるいはダイヤモンド等々からなる硬い触針をウェハ表面に接触し、ウェハの直径方向に沿って、測定台面に平行に触針を接触させた状態で移動させ、測定台面に対して垂直方向の変位の最大値をウェハ反りとして測定する方法が一般的に採用されている。
【0014】
図1(c)に、本法によって決定されるウェハ反りを模式的に示す。この方法によって決定されるウェハ反りは、厳密にはJEIDA規格とは一致するものではない。しかしながら、得られた測定データより、最小二乗法などの方法によって、測定台面(図1(c)中の7)に対する、ウェハの被測定面の平均傾き(同図中の6)を算出し、それをバックグラウンドとして測定データより差し引く処理をした後に、改めて変位の最大値(同図中の3)を計算することで、JEIDA規格の定義に極めて近い、意味のある測定方法とすることができる。一般的に、ウェハ反りは本方法で決定された値を言及するものであり、本発明中においても、全て本方法によって測定したウェハ反りを採用している。
【0015】
このような、種々の方法で決定されるウェハ反りが重要視されている理由であるが、半導体デバイス製造時の、特に露光プロセスにおいて、ウェハ反りが悪くなると、露光距離が光学系の焦点距離から外れ、焦点位置から外れるために明確なマスク像を形成しなくなるという事情があるためである。かような問題を回避するためには、素子の微細化度にもよるが、一般的にはウェハ反りを数μm以下とすることが望ましい。
【0016】
SiC単結晶を研磨する場合、他の半導体単結晶材料において採用されているように、切断したウェハを両面同時に研磨する、いわゆる両面ラップ研磨によって実施することが、研磨ウェハ製造効率の観点から好ましい。両面ラップ研磨を実施する際には、ウェハへ局部的な研磨加重が加わることを避け、極力均一な負荷加重を実現する目的から、切断した薄板状単結晶材の切り出し厚や反りなどを均一にするなど、かなりの切断精度が要求される。
【0017】
しかしながら、SiCが、モース式硬度で9に及ぶ材料力学的特性に起因する、著しく大きな剛性を有するが故に、切断においてかような切断精度を実現することは一般に難しい。このため、両面ラップ研磨時に偏加重などが原因となってウェハ割れが発生し易く、結果としてウェハの製造歩留まりが低下しまう。
【0018】
また、SiCウェハの研磨は、研磨用のポリッシングブロックにワックス等々の低温軟化性樹脂を用いて貼り付け、ウェハ片面毎に表裏研磨を独立に行う、いわゆる片面研磨プロセスによって研磨を実施する方が、上記の問題を回避して、結果的に製造歩留まりを向上できる長所がある。
【0019】
しかしながら、片面研磨プロセスでは、研磨処理を完了してポリッシングブロックからウェハを取り剥す際に、研磨面が大きく反り、ウェハ反りが著しく劣化する現象が発生する。すなわち、研磨プロセス完了後、ポリッシングブロックから取り剥す前のウェハは、1μm以下の極めて良好なウェハ反りを有しているが、取り剥し後に研磨面側が大きく凹面化し、研磨直後の良好なウェハ反りが大きく劣化する。
【0020】
発明者らの詳しい調査によれば、このウェハ反りの劣化は、特に本材料のSiC単結晶ウェハの場合に著しく大きく、また、ウェハ口径や厚さにも依存することが明らかになった。たとえば厚さ700μmの口径76mmSiC単結晶ウェハの場合、取り剥し後のウェハのウェハ反りは、最大約50μmを大きく超える場合があることが明らかになった。
【0021】
このような大きな反りが発生すると、前述したように、半導体デバイス製造工程の、特に露光プロセス時に致命的な影響を与えてしまうため、デバイスの製造歩留まりを著しく低下させてしまう。このため、ウェハの反りが小さく、良好なウェハ反りが実現できる研磨方法が強く望まれていた。
【0022】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好なウェハ反りを有するSiC単結晶ウェハの製造方法を提供することである。また、本発明の目的は、良好なウェハ反りを有するSiC単結晶ウェハを提供することである。
【0023】
(1)炭化珪素単結晶インゴットから切り出された厚さ1mm以下の薄板状炭化珪素単結晶材を1300℃以上2000℃以下の温度、炭化珪素非腐食性ガス雰囲気下で焼鈍熱処理することにより、ウェハ反りを10μm以下とすることを特徴とする炭化珪素単結晶ウェハの製造方法。
【0024】
(1)炭化珪素単結晶インゴットから切り出された厚さ1mm以下の薄板状炭化珪素単結晶材を1300℃以上2000℃以下の温度で焼鈍熱処理することにより、ウェハ反りを10μmとすることを特徴とする炭化珪素単結晶ウェハの製造方法。
【0025】
(3)前記焼鈍熱処理の雰囲気が、SiC非腐食性ガス雰囲気である(2)に記載の炭化珪素単結晶ウェハの製造方法。
【0026】
(3)前記焼鈍熱処理の雰囲気が、SiC非腐食性ガス雰囲気である(1)又は(2)に記載の炭化珪素単結晶ウェハの製造方法。
【0027】
(4)前記焼鈍熱処理の雰囲気が、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガスの少なくとも1種からなる雰囲気である(1)又は(2)に記載の炭化珪素単結晶ウェハの製造方法。
【0028】
(5)前記炭化珪素単結晶インゴットは、昇華再結晶法により作製されたものである(1)又は(2)に記載の炭化珪素単結晶ウェハの製造方法。
【0029】
(6)前記焼鈍熱処理の雰囲気圧力が、1.3×10 Pa以上である(1)又は(2)に記載の炭化珪素単結晶ウェハの製造方法。
【0030】
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の製造方法で得られたSiC単結晶ウェハであって、該炭化珪素単結晶ウェハの口径が50mm以上製造限界以下であることを特徴とする炭化珪素単結晶ウェハ。
【0031】
【発明の実施の形態】
発明者らは、研磨処理完了後にポリッシングブロックよりウェハを取り剥した後に、研磨面が大きく反り返って凹面化する現象について、その原因を調査したところ、反りを引き起こしている力学的駆動力の起源として、研磨工程前の時点で既に結晶内部に蓄積されている残留応力によるものが支配的であることを突き止めた。特に、スライス切断時に導入される機械歪による寄与が大きい。
【0032】
たとえば、上記のスライス切断工程に注目すると、一般にSiC単結晶をはじめとする硬脆材料の切断とは、研削加工の研削切断を言い、実質的に一種の溝切り加工に相当する(仁平、工業教育、Vol.5、p.145、社団法人全国工業高等学校校長協会)。換言すれば、SiC単結晶の切断とは、ダイヤモンド等々の砥粒を固着した切断刃を用いて、被切断物に狭幅溝を付与するように研削加工していることと同等であり、このため研削面に相当する単結晶の切断面の近傍では、大きな応力や加工歪が発生し、その影響が最終的にSiC単結晶内に、結晶格子歪や転位をはじめとする各種の結晶欠陥として残留する。
【0033】
それらを除去する方法としては、SiC単結晶を高温に暴露する、いわゆる焼鈍熱処理を行うことが有効である。すなわち、焼鈍熱処理を施すことにより、結晶格子歪の場合は格子歪を緩和させ、また転位等々の各種欠陥の場合には、転位の速やかな移動を引き起こして単結晶の外部へ逃がすか、或いは材料力学的により安定な状態が実現できるように欠陥群を再配列させる等々の処置をそれぞれ施せば良い。
【0034】
ところで、SiC単結晶の場合、高い熱安定性を有するため、焼鈍熱処理温度については十分な留意が必要である。野瀬らによれば、ポリタイプが3Cと称せられる立方晶系のSiC結晶からなる多結晶焼結体の場合、約1400℃以上の温度域において、高温加圧下でクリープ的挙動を示すことが報告されており、少なくとも1400℃以上であれば、前記したような、転位群の比較的速やかな移動が起こることが示された(野瀬ほか、MRSインターナショナルミーティングオン アドバンスド マテリアルズ 第7巻(1987) 第293頁)(T. Nose, et al., MRS Int’l. Mtg. on Adv. Mats., Vol.7 (1987) p.293)。
【0035】
また、4Hあるいは6Hポリタイプ結晶のような六方晶系結晶の場合、主すべり面である(0001)面上では、1300℃以上の温度域で同様な転位の移動が起こることを示唆する報告がある(前田ほか、フィロソフィカルマガジン エー 57 (1988) 第573頁)(K. Maeda, et al.,Philosophical Magazine A, 57 (1988)p.573)。ただし、他の高次すべり面では、一般的に転位移動は起こりにくいと考えられ、少なくとも1300℃以上の、より高温域での焼鈍熱処理が必要であると類推される。
【0036】
以上の事実を鋭意検討した結果、発明者は、昇華再結晶法などにより作製されたSiC単結晶インゴットから内周刃、外周刃、あるいはワイヤーソーなどの方法によって切断することにより作製された薄板状SiC単結晶材に、以下に詳述する焼鈍熱処理方法を施したSiC単結晶ウェハを提案するに至った。すなわち、炭化珪素単結晶インゴットから切り出された厚さ1mm以下の薄板状炭化珪素単結晶材を1300℃以上、2000℃以下の温度域で焼鈍熱処理することにより、ウェハ反りを10μm以下とするものである。
【0037】
まず、昇温過程においてであるが、過度に急激な昇温によるウェハの熱衝撃割れが発生しないように留意する以外、特に昇温速度に制約は無い。
【0038】
次に、1300℃以上、2000℃以下の温度域で、望ましくは1400℃以上、1900℃以下の温度で焼鈍熱処理を行う。1300℃未満の温度域では結晶中の転位群の移動が著しく困難なため、十分な焼鈍効果が得られ難い。また2000℃を超えると、ウェハ表面において、昇華による熱分解反応が起こるため表面炭化が発生し、引き続く研磨プロセスで表面炭化層を除去する必要が生じるためにプロセス時間が長時間化するなどの問題が生じる。
【0039】
この温度域に留まる焼鈍熱処理であれば、どのような熱処理パターンでも構わない。たとえば、上記範囲内の或る温度で一定時間保持してもよく、簡潔な熱処理パターンで効果的な焼鈍効果が得られるメリットがある。この場合の保持時間は一般的に温度にも拠るが、上記の温度範囲で、0.5〜24.0時間とすることで十分な効果が得られる。あるいは、一定温度に保持せずに、1300℃以上、2000℃以下の温度域を0.5〜24.0時間で徐加熱、あるいは徐冷してもよい。
【0040】
加熱時間について言及する理由であるが、0.5時間未満では十分な効果が得られない恐れがあり、また24.0時間を超えるとプロセスが長時間化するためにコスト増加が大きく、実用的でないためである。焼鈍処理終了後は、速やかに温度を室温へ降下させるが、急激な温度降温は、ウェハ内部に温度不均一を生じ、これが原因となって熱衝撃割れが起こる場合があるため、留意する必要がある。
【0041】
また、ウェハ内部に亜粒界や空孔などの物理的な欠陥が局部的に密集するような、結晶性が比較的低い低品質ウェハの場合には、ウェハ内に存在していた転位群が欠陥に局所的にトラップされ、上記の焼鈍処理では十分に開放されない場合がある。このような場合、降温速度が速すぎるとトラップされた転位群を起点とするウェハ割れを生ずることがある。ウェハの結晶性に問題がある場合には、温度が1300℃に下がるまでは極力徐冷し、1300℃以下の温度域を、熱衝撃割れが起こらない降温速度にて冷却することが好ましい。
【0042】
図2に、以上の点を鑑みて提案される本発明の焼鈍熱処理パターンの一例を示す。
【0043】
まず、1700℃の温度まで5.0℃/minで加熱し、1700℃で2.0時間保定する。引き続いて、1300℃の温度までを2.5℃/minの冷速で徐冷する。1300℃に到達後は、炉冷によって室温まで4時間かけて速やかに冷却する。
【0044】
このような一例をはじめとする本発明の焼鈍熱処理は、SiCウェハが腐食やエッチング等々の影響を受けて変質しない、非腐食性雰囲気で行う必要があり、望ましくは、アルゴン、窒素、ヘリウムのいずれか、あるいはそれらの混合ガスなどのいわゆる不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
【0045】
また、雰囲気圧力については、1.3×10Pa以上、より望ましくは3.9×10Pa以上、1.3×10Pa以下とすることが好ましい。1.3×10Pa以未満では、焼鈍熱処理時にウェハ表面において、昇華による熱分解反応が起こりやすくなるため、表面炭化が発生してしまう。また、1.3×10Paを超える圧力では、高耐圧性を備えた特殊な熱処理炉が必要となる場合があることに留意する必要がある。
【0046】
本発明では、ウェハ反りに優れるSiC単結晶ウェハは、ウェハの厚さ1mmが以下である場合に、ウェハ反りが10μm以下の良好な表面が得られる。ウェハ反りを10μm以下に限定する理由は、10μmを超えると、本ウェハ上に半導体デバイスを製造する際、特に露光プロセスにおいて、露光距離が光学系の焦点距離から外れ、焦点位置から外れるために明確なマスク像を形成しなくなり、デバイスの製造歩留まりが低下する等々の影響が発生するためである。
【0047】
ウェハの厚さが1mmを超えるウェハであっても、本発明の焼鈍熱処理は、歪や残留応力が蓄積した変質層部分の改善には効果がある。しかし、ウェハの厚さが1mmを超える場合、変質層部分における結晶の体積の、ウェハ全体積に対する相対体積比率が小さくなり、それに伴って表面近傍からの変形駆動力も相対的に小さくなって、結果としてウェハ反りが焼鈍熱処理の有無に拘らず10μm以下に押さえられるため焼鈍熱処理効果が顕著には認められなくなる。したがって、本発明の焼鈍処理は厚さが1mm以下のウェハに対してより顕著な効果が現れる。なお、ウェハの厚さの下限については、特に規定されるものではなく、製造限界となる厚さ(薄さ)まで本発明を適用することが可能である。
【0048】
また、本発明はウェハの口径に拘らず有効であるが、特に口径が50mm以上に及ぶ大型単結晶ウェハにおいて特に顕著な効果が得られる。このウェハ口径の上限については、製造限界によって規定されるものであり、本発明はその上限まで適用可能である。
【0049】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0050】
(実施例1)
昇華再結晶法によって口径76mmのSiC単結晶を作製した。結晶のポリタイプは4Hである。
【0051】
この試料を結晶の(0001)面にほぼ沿ってワイヤーソーによりスライス切断し、厚さ約0.9mmの円盤状単結晶薄板を得た。
【0052】
この薄板に1750℃にて2時間保定後1400℃まで2.5℃/minの速度で徐冷する焼鈍熱処理を、圧力8.5×10Paのアルゴン雰囲気中で実施した。1400℃以下の温度域は炉冷としている。
【0053】
引き続いて、ダイヤモンド微粒子を分散させた砥粒液を用いて研磨処理を施した。研磨処理は、アルミナ製のポリッシングブロックに、軟化点が約80℃の熱可塑性ワックスを使用して円盤状単結晶薄板を貼り付けた上で片面研磨を実施し、最終的に片面鏡面仕上げとした。裏面は切断したままの状態である。
【0054】
また、比較例1として、同じ切断ロット中の他の円盤状単結晶薄板を別途、上記焼鈍熱処理を行わずに、同様な研磨処理をスライス後に直接実施した。研磨完了後、両試料について、ポリッシングブロックから剥離後のウェハ反りを調べた。
【0055】
ウェハ反りの測定は、被測定試料を平坦で十分に硬い測定台に静置した後、鋼製の触針を試料表面に接触させ、直径方向に沿って、測定台面に平行に、約1mm/秒の速度で、かつ最大約3.9×10−3Nの加重下で移動させることによって行った。測定台面に対して垂直方向の触針の機械的変位を読み取り、図1(c)に示すように、最小二乗法によって測定面の平均傾きを算出し、それをバックグラウンドとして測定データより差し引いた後に、改めてウェハ反りを決定した。
【0056】
【表1】
Figure 0004054243
【0057】
ポリッシングブロックから剥離前のウェハ反りは、実施例のウェハおよび比較例のウェハとも0.69μmであった。
【0058】
ポリッシングブロックから剥離後のウェハ反りは、本発明の焼鈍処理した実施例のウェハでは、1.3μmと非常に小さく、良好なウェハ反りが維持されている。一方、焼鈍熱処理を実施しない比較例のウェハでは、剥離後にウェハのウェハ反りが大きく増加し、19μmに至っている。
【0059】
この結果から、本発明による焼鈍処理によって、研磨ウェハのウェハ反りが格段に改善されていることが分かる。
【0060】
(実施例2)
実施例1とほぼ同様な成長条件にて、4Hポリタイプの単結晶インゴットを作製した。口径は76mmである。
【0061】
この結晶から、ワイヤーソーを用いたスライス切断により、厚さが0.6mm、0.8mm、1.0mm、および2.0mmの円盤状薄板をそれぞれ準備した。これらの試料に、実施例1と同じ焼鈍熱処理を施し、その後、各々個別にアルミナ製ポリッシングブロックに貼り付けて、実施例1と同様の方法で片面鏡面仕上げの研磨処理を行った。
【0062】
研磨処理完了後、ポリッシングブロックから剥離する前後で、ウェハ反りを測定した。
【0063】
また、比較例2として、同様な厚さの円盤状薄板をそれぞれ準備し、焼鈍熱処理を行わずに直接研磨を行って、片面鏡面仕上げにした各ウェハの、ポリッシングブロックから剥離した後のウェハ反りを、実施例1と同様の方法で測定した。表2にその結果を示す。
【0064】
【表2】
Figure 0004054243
【0065】
実施例2の焼鈍処理を行った全てのウェハについて、剥離後の反りが、焼鈍熱処理を行わなかった比較例2のウェハの反りよりも小さくなっており、本発明の焼鈍熱処理が良好なウェハ反りを実現する方法として有効であることを示している。
【0066】
ただし、厚さが2.0mmのウェハについては、焼鈍熱処理を行わない場合でも、ウェハ反りが2.1μmと小さい。これは、スライス切断時に導入される歪や残留応力が、切断面のごく近傍付近に蓄積されるため、ウェハ厚が大きい場合には、ウェハの全体積に対する本部分の結晶体積比率が小さくなり、それに伴って表面近傍からの変形駆動力も相対的に小さくなるため、結果としてウェハ反りが小さく押さえられているものと考えられる。従って、特にウェハの厚さが1.0mm以下の範囲に場合に、本発明の焼鈍熱処理は極めて有効となる。
【0067】
(実施例3)
実施例1とほぼ同様な成長条件にて、4Hポリタイプの単結晶インゴットを作製後、この結晶から、ワイヤーソーを用いて、厚さが0.6mmの円盤状単結晶薄板を準備した。
【0068】
これらの薄板試料に実施例1と同様なパターンの焼鈍熱処理を、圧力6.5×10 Paのアルゴン雰囲気中で施した。ただし、焼鈍熱処理中の保定温度を1000℃〜2500℃の範囲で変化させたが、保定時間については全て4.0時間に固定した。他の条件については実施例1と全く同じである。更にこれらの薄板試料に、実施例1と同様の方法で片面鏡面仕上げの研磨処理を行い、SiC単結晶ウェハとした。研磨処理完了後、ポリッシングブロックから剥離してウェハのウェハ反りを測定した。表3にその測定結果を示す。
【0069】
【表3】
Figure 0004054243
【0070】
この結果から分かるように、転移移動が起こり始める温度(約1300℃以上)よりも低い、1000℃焼鈍熱処理を行ったウェハ試料の場合では、焼鈍効果が不十分のため、ポリッシングブロックから剥離した後のウェハ反りが58μmを超えている。また、2500℃焼鈍熱処理のウェハ試料の場合、表面炭化が起こり、ウェハ反りが正確に計測できない。このような場合、引き続く研磨処理で、この表面炭化層を完全に除去する必要が生じ、研磨時間が著しく増加するため、効率的研磨が実現できない。1500℃〜2000℃での焼鈍熱処理のウェハの場合では、どれも良好なウェハ反りが実現されている。
【0071】
【発明の効果】
以上のように、本発明の焼鈍熱処理を研磨工程前に実施することにより、良好なウェハ反りを有する単結晶炭化珪素ウェハが製造可能になる。このような炭化珪素単結晶ウェハを用いれば、光学的特性の優れた青色発光素子、電気的特性の優れた高耐圧・耐環境性電子デバイスを歩留まり良く製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ウェハ反りの定義を説明する図
【図2】 本発明の焼鈍熱処理パターンの一例を示す図
【符号の説明】
1 静置されたSiC単結晶ウェハ(上面が被測定面)
2 基準平面
ウェハ反り
4 基準平面からの距離の最小値
5 基準平面からの距離の最大値
6 ウェハの被測定面の平均傾き
7 測定台

Claims (7)

  1. 炭化珪素単結晶インゴットから切り出された厚さ1mm以下の薄板状炭化珪素単結晶材を1300℃以上2000℃以下の温度、炭化珪素非腐食性ガス雰囲気下で焼鈍熱処理することにより、ウェハ反りを10μm以下とすることを特徴とする炭化珪素単結晶ウェハの製造方法。
  2. 炭化珪素単結晶インゴットから切り出された厚さ1mm以下の薄板状炭化珪素単結晶材を1300℃以上2000℃以下の温度で焼鈍熱処理してから、該単結晶材の研磨処理後にポリッシングブロックから剥離した際のウェハ反りを10μm以下とすることを特徴とする炭化珪素単結晶ウェハの製造方法。
  3. 前記焼鈍熱処理の雰囲気が、炭化珪素非腐食性ガス雰囲気である請求項2に記載の炭化珪素単結晶ウェハの製造方法。
  4. 前記焼鈍熱処理の雰囲気が、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガスの少なくとも1種からなるガス雰囲気である請求項1又は2に記載の炭化珪素単結晶ウェハの製造方法。
  5. 前記炭化珪素単結晶インゴットは、昇華再結晶法により作製されたものである請求項1又は2に記載の炭化珪素単結晶ウェハの製造方法。
  6. 前記焼鈍熱処理の雰囲気圧力が、1.3×104Pa以上である請求項1又は2に記載の炭化珪素単結晶ウェハの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一つに記載の製造方法で得られた炭化珪素単結晶ウェハであって、
    該炭化珪素単結晶ウェハの口径が50mm以上製造限界以下であることを特徴とする炭化珪素単結晶ウェハ。
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