JP4054036B2 - 精練方法 - Google Patents

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Description

本発明は、生糸、生糸を撚った撚糸または生織物を精練する精練方法である。
絹繊維は、繊維状たんぱく質である2本のフィブロインをニカワ状のセリシンで包む構造をしており、さらに、セリシン以外の狭雑物および不純物を含んでいる。このような絹繊維からなる生糸、生糸を撚った撚糸および生織物は、絹鳴りなどの絹特有の風合いを得るために、セリシン、狭雑物および不純物を除去する精練を行う必要がある。
絹繊維を精練する精練方法としては、アルカリ精練法、石鹸精練法、石鹸・アルカリ精練法、酵素精練法、高圧精練法および酸精練法などが挙げられる。
アルカリ精練法は、炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム)、珪酸ソーダ(珪酸ナトリウム)および第三燐酸ソーダ(第三燐酸ナトリウム)などの塩基性物質を含むアルカリ精練液を用いて絹繊維を精練する方法である。アルカリ精練法としては、たとえば、稲および麦などの灰汁による灰汁練りなどが挙げられる。アルカリ精練法は、セリシンに対する溶解性が非常に高いアルカリ精練液を用いるので、セリシンを容易に除去することができる。しかしながら、絹繊維を精練しすぎる過精練という状態になりやすい。過精練の絹繊維は、セリシンが除去されただけではなく、耐塩基性のあまり高くないフィブロインが損傷を受けてしまっている。したがって、絹繊維は、毛羽が発生し、繊維の強度・伸度が低下し、柔軟性および触感などの風合いが劣化したものとなってしまうおそれがある。
石鹸精練法は、界面活性剤である石鹸を含む精練液を用いて絹繊維を精練する方法である。石鹸精練法は、精練液に含まれる石鹸によって、セリシンを除去することができる。しかしながら、精練液が金属イオンの多く含有されている硬水であると、石鹸と金属イオンとが結合し、水に不溶な金属石鹸(スカム)を生成する。生成したスカムが絹繊維に付着すると、除去することが困難であり、そのスカムが染色などに悪影響を及ぼす。したがって、石鹸精練法は、精練液を調製する際に用いる精練用水として、金属イオンの少ない軟水を使用する必要がある。
また、石鹸は、絹繊維との親和性が高いので、精練後に湯洗、水洗を充分に行わないと、絹繊維に石鹸が付着されたままとなる。絹繊維に付着されたままの石鹸が、絹の黄変や染色などに悪影響を及ぼすので、精練後に湯洗、水洗を入念に行う必要がある。
石鹸・アルカリ精練法は、石鹸および塩基性物質を含むアルカリ精練液を用いて絹繊維を精練する方法である。石鹸・アルカリ精練法は、石鹸と塩基性物質との含有量を最適化することによって、アルカリ精練法および石鹸精練法の互いの欠点を補うことが可能である。しかしながら、石鹸・アルカリ精練法は、セリシンが精練液によって分解されて多量のアミノ酸が発生し、さらに、石鹸の原料である脂肪酸が塩基性である精練液によって分解されてノルマルへキサンなどの炭化水素が発生する。したがって、多量の汚染物質を含み、BOD(生物化学的酸素要求量)およびCOD(化学的酸素要求量)の高い精練廃液を排水として排出することになってしまう。
また、カチオン性の撚糸剤を用いて生糸を撚った撚糸を、石鹸精練法および石鹸・アルカリ精練法で精練する場合、アニオン性である石鹸を用いるので、石鹸カスが発生し、その石鹸カスが、染色などに悪影響を及ぼしてしまうことがある。
酵素精練法は、たんぱく質分解酵素を含む精練液を用いて絹繊維を精練する方法である。たんぱく質分解酵素によって、セリシンを分解させて除去することができる。しかしながら、たんぱく質分解酵素は、使用温度に制限があるので、精練液の温度管理が非常に困難である。また、たんぱく質分解酵素の使用温度では、セリシンが膨潤・軟化しないので、セリシンを膨潤・軟化させるために、アルカリによる前処理が必要である。また、たんぱく質分解酵素は高価であるので、薬剤コストが高くなってしまう。これらのことから、酵素精練法は、一部の特殊な絹織物以外ではあまり利用されていない。
高圧精練法は、高圧下で絹繊維を精練する方法であり、高圧にすることによって、精練液として水を用いても、セリシンを溶解させることができる。そうすることによって、セリシンがあまり分解されずに得られるので、高分子量のセリシンを得る目的で使用されている。しかしながら、高圧に耐える設備が必要であり、コストが高くなってしまう。
酸精練法は、非特許文献1に記載されているように、クエン酸およびリンゴ酸などの多価カルボン酸を含む酸精練液を用いて絹繊維を精練する方法である。
加藤弘著、「絹繊維の加工技術とその応用」、第1版、株式会社繊維研究社、昭和62年8月10日、p.27−29
酸精練法は、アルカリ精練法と比べ、セリシンがゆっくり溶解されるので、セリシンの除去程度を制御しやすい。手触りのかたい糸などを得る場合、セリシンをある程度残す3部練り、5部練りおよび7部練りなどが行われる。このような場合に、セリシンの除去程度を制御しやすい酸精練法が好ましく用いられる。また、精練用水が、軟水であっても硬水であっても使用でき、精練後の水洗が不充分であっても、絹が黄変せず、染色などに対しての悪影響が石鹸精練法より少ない。石鹸・アルカリ精練法のようなBODおよびCODの高い精練廃液を排水として排出することなく、酵素精練法のような温度制御が必要なく、高圧精練法のような高圧に耐える設備が必要でない。
しかしながら、フィブロインは、耐酸性が耐塩基性よりも低いので、過精練になった場合、酸精練法は、アルカリ精練法などと比較して、フィブロインが大きな損傷を受けてしまう。したがって、酸精練法は、セリシンをある程度残す3部練り、5部練りおよび7部練りなど以外に、使用されてこなかった。
非特許文献1に記載の酸精練法は、pHが2以上の精練液を用いた3部練り、5部練りおよび7部練りなどを目的とした精練方法である。酸精練法で、セリシンを完全に除去することは考えられていなかった。
本発明の目的は、過精練になって絹繊維を損傷させることなく、セリシンを完全に除去することができる精練方法を提供することである。
本発明は、生糸、生糸を撚った撚糸または生織物からセリシンを除去して精練する精練方法であって、
無機酸を含み、初期pHが1以上2未満である酸性精練液を用いて精練することを特徴とする精練方法である。
また本発明は、前記酸性精練液の温度が90℃以上で精練することを特徴とする。
また本発明は、前記酸性精練液は、有機酸を含むことを特徴とする。
また本発明は、前記酸性精練液は、界面活性剤を含むことを特徴とする。
また本発明は、前記酸性精練液を用いて精練した後、初期pHが9以上11以下である塩基性精練液を用いて90℃以上で精練することを特徴とする。
また本発明は、前記塩基性精練液は、界面活性剤を含むことを特徴とする。
本発明によれば、生糸、生糸を撚った撚糸または生織物からセリシンを除去して精練する精練方法である。無機酸を含み、初期pHが1以上2未満である酸性精練液を用いて精練する。
そうすることによって、過精練になって絹繊維を損傷させることなく、セリシンを完全に除去することができる。
また、耐塩基性の低い繊維、特にウールとの交織を精練する場合、耐塩基性の低い繊維が損傷を受けることなく、精練することができるので、特に好ましい。
また本発明によれば、酸性精練液の温度が90℃以上で精練することが好ましい。酸性精練液の温度を90℃以上にすることによって、セリシンを容易に膨潤・軟化させることができるので、セリシンをより除去しやすくなる。
また本発明によれば、酸性精練液に有機酸を含むことが好ましい。セリシンとなじみやすい有機酸を併用することによって、セリシンを容易に膨潤・軟化させることができ、セリシンに酸性精練液が容易に浸透するので、セリシンをより除去しやすくなる。
また本発明によれば、酸性精練液に界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤を含むことによって、セリシンをより除去しやすくなる。
また本発明によれば、酸性精練液を用いて精練した後、初期pHが9以上11以下である塩基性精練液を用いて精練する。そうすることによって、酸性精練液を用いて精練して残存したセリシンを、塩基性精練液を用いて除去するので、セリシンを完全に除去することができる。
また、塩基性精練液を用いて精練する際に、フィブロインが受ける損傷が小さくてすむので、セリシンを完全に除去する際に、特に好ましい精練方法である。
さらに、精練された絹繊維を染色する際、絹繊維が酸性であるより塩基性であるほうが好ましいので、精練後染色する場合にも、好ましい精練方法である。
また本発明によれば、塩基性精練液に界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤を含むことによって、セリシンをより除去しやすくなる。
本発明は、生糸、生糸を撚った撚糸または生織物などの被精練物を、酸性精練液(酸精練液)を用いて精練する酸精練法であって、セリシンの除去程度を高めた精練方法である。
図1は、精練前の絹繊維(生糸)10を示す図であり、図2は、絹繊維を精練した後の精練絹を示す図である。繭を形成する1本の絹繊維10は、図1に示すように、三角形に近い断面を有する2本のフィブロイン11を、ニカワ状のセリシン12で包む構造をしている。この絹繊維10を精練すると、図2に示すように、セリシン12が除去されて、2本のフィブロイン11が、精練絹として得られる。本発明は、絹特有の風合いを発揮することができる繊維状たんぱく質であるフィブロインが損傷を受けることなく、セリシンを除去する方法であり、生糸を精練するだけでなく、生糸を撚った撚糸を精練する場合にも用いられ、また、生糸および撚糸を精練する糸練り法だけでなく、生糸または精練前の撚糸を用いて織った生織物を精練する布練り法にも用いられる。
図3は、精練方法の工程を示す図である。まず、前処理A1では、熱水および温水などに被精練物を浸漬させて、セリシンを膨潤・軟化させる。次に、荒練りA2、本練りA3および仕上練りA4と精練を3回行って、セリシンを除去する。荒練りA2では、90℃以上の精練液に被精練物を所定時間浸漬させて、セリシンを除去する。ここでの精練液は、本練りA3で使用された精練液を用いることがあり、容易に除去することができるセリシンを除去する目的で行われる。本練りA3では、90℃以上の新たな精練液に被精練物を所定時間浸漬させて、大部分のセリシンを除去する。仕上練りA4では、90℃以上の新たな精練液に被精練物を所定時間浸漬させて、精練不足および精練むらを是正する。最後に、洗浄A5では、熱水および温水などに被精練物を浸漬させて、除去されたセリシンなどを洗い流す。
本発明では、糸練り法および布練り法の2種の精練方法に用いられる。
まず、糸練り法の場合について説明する。本発明では、荒練りA2および本練りA3で、後述の酸精練液を用い、仕上練りA4で、後述の塩基性精練液(アルカリ精練液)を用いる。また、酸精練液に被精練物を浸漬させることによって、セリシンを充分に膨潤・軟化させることができるので、前処理A1を行わなくてもよく、本練りA3のみで、大部分のセリシンを除去できるので、荒練りA2および仕上練りA4を行わなくてもよい。
仕上練りA4でアルカリ精練液を用いた精練を行うと、本練りA3で残存したセリシンを除去することができる。したがって、仕上練りA4を行うと、精練不足および精練むらを是正することができ、仕上練りA4の際に、フィブロインが受ける損傷が小さくてすむので、セリシンを完全に除去する場合に好ましい。
また、精練された絹繊維を染色する際、絹繊維が酸性であると、染色むらが発生するので、塩基性であるほうが好ましい。したがって、精練後に染色する場合、仕上練りA4を行うと、染色前に中和させる工程を行わなくても、むらなく染色することができるので、好ましい。
次に、布練り法の場合について説明する。本発明では、荒練りA2で、後述の酸精練液を用い、本練りA3および仕上練りA4で、後述のアルカリ精練液を用いる。酸精練液に被精練物を浸漬させることによって、セリシンを充分に膨潤・軟化させることができるので、糸練り法と同様、前処理A1を行わなくてもよく、荒練りA2および本練りA3で、大部分のセリシンを除去できるので、仕上練りA4を行わなくてもよい。
荒練りA2、本練りA3および仕上練りA4としては、公知の精練操作によって行うことができ、公知の精練操作において使用される精練液の代わりに、後述の酸精練液またはアルカリ精練液を使用すればよい。公知の精練操作として、たとえば、竿練り法、棒練り法、吊練り法および袋練り法などの手動式の精練操作、噴射精練法および高圧精練法などの機械式の精練操作などが挙げられる。
酸精練液は、精練を開始する前の初期pHが1以上2未満であることが好ましく、初期pHが1以上1.8未満であることがより好ましい。初期pHが1より小さいと、過精練になりやすく、初期pHが2以上であると、充分にセリシンを除去できない。また、初期pHが1以上2未満である酸精練液を用いた場合は、アルカリ精練液を用いた場合より、セリシンがゆっくり溶解されるので、セリシンの除去程度を制御しやすく、過精練になるのを防ぐことができる。
また、酸精練液は、無機酸を含む。無機酸としては、上記の初期pHの好適範囲を実現できるものであれば、公知の無機酸を用いることができる。たとえば、硫酸、塩酸、硝酸、燐酸、亜燐酸(ホスホン酸)および次亜燐酸(ホスフィン酸)などが挙げられる。また精練装置を腐食させない燐酸が特に好ましい。また、燐酸を含む精練液を用いた場合は、フィブロインの損傷がより少なくなる。
また本発明は、酸洗練液を使用して精練するので、耐塩基性の低い繊維、特にウールとの交織を精練する場合、耐塩基性の低い繊維が損傷を受けることなく、精練することができるので、特に好ましい。
無機酸の濃度は、糸練り法の場合、4%OWF以上20%OWF以下が好ましく、より好ましくは、5%OWF以上10%OWF以下である。布練り法の場合、0.5g/L以上4g/L以下が好ましく、より好ましくは、1g/L以上2g/L以下が好ましい。なお、%OWFとは、繊維の重量に対する百分率である。
また、酸精練液は、有機酸を含んでいてもよい。有機酸としては、水溶性の有機酸であれば、公知の有機酸を用いることができる。たとえば、クエン酸、蟻酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸および酒石酸などが挙げられる。有機酸は、無機酸よりセリシンとの親和性が高いので、無機酸と併用することによって、セリシンに酸性精練液が容易に浸透するので、セリシンをより除去しやすくなる。また、酸精練液は、セリシンをより除去しやすくするために、界面活性剤を含んでいてもよい。
酸精練液の温度が90℃以上で精練することが好ましく、煮沸精練が好ましい。酸性精練液の温度を90℃以上にすることによって、セリシンを容易に膨潤・軟化させることができるので、セリシンをより除去しやすくなる。
酸精練液は、浴比が1:10〜1:100となるように使用することが好ましく、より好ましくは、1:20〜1:40となるように使用することである。なお、浴比とは、繊維の重量を1とした時の全液量の重量の比である。
また本発明は、酸洗練液を使用して精練するので、セリシンをあまり分解することなく除去することができる。セリシンを除去した精練廃液は、高分子量のセリシンが含有されており、セリシンを除去した精練廃液を一夜間、静置すると、ゲル化する。したがって、高分子量のセリシンが回収できる。高分子量のセリシンは、化粧品などに好ましく用いられる。
アルカリ精練液は、塩基性物質を含み、精練を開始する前の初期pHが9以上11以下であることが好ましく、初期pHが9.5以上11以下であることがより好ましい。塩基性物質としては、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)、セスキ炭酸ソーダ(二炭酸水素三ナトリウム)、トリポリ燐酸ソーダ(三燐酸ナトリウム)およびソーダ灰(炭酸ナトリウム)などが挙げられる。また、アルカリ精練液は、セリシンをより除去しやすくするために、石鹸などの界面活性剤を含んでいてもよい。
アルカリ精練液の温度が90℃以上で精練することが好ましく、煮沸精練が好ましい。酸性精練液の温度を90℃以上にすることによって、セリシンを容易に膨潤・軟化させることができるので、セリシンをより除去しやすくなる。
アルカリ精練液は、浴比が1:10〜1:100となるように使用することが好ましく、より好ましくは、1:20〜1:40となるように使用することである。なお、浴比とは、繊維の重量を1とした時の全液量の重量の比である。
以下に、実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
・生糸の精練についての検討
まず、生糸を本練りのみで精練した。
(実施例1)
表1に示すように、純度99重量%の硫酸(以下、硫酸)を5%OWF含む酸精練液を、浴比が1:20となるように使用して、生糸(21/3片)を40分間煮沸精練した。その後、熱湯で洗浄し、さらに、湯洗いを行った。酸精練液の初期pHは、1.2であった。なお、煮沸精練とは、90℃以上の精練液で精練することをいう。また、精練液の初期pHは、pH試験紙を用いて測定した。pH試験紙は、測定する精練液のpHに応じて、使用するpH試験紙が異なる。酸精練液であれば、CR(クレゾールレッド)試験紙、TB(チモールブルー)試験紙、BPB(ブロムフェノールブルー)試験紙およびBCG(ブロムクレゾールグリーン)のいずれかを用い、アルカリ精練液であれば、AZY(アリザリンエロー)試験紙、TB(チモールブルー)試験紙およびCR(クレゾールレッド)試験紙のいずれかを用いて測定した。
Figure 0004054036
(実施例2)
硫酸の代わりに、22ボーメの塩酸(以下、塩酸)を用いること以外、実施例1と同様である。酸精練液の初期pHは、1.4であった。
(実施例3)
硫酸の代わりに、純度60重量%の硝酸(以下、硝酸)を用いること以外、実施例1と同様である。酸精練液の初期pHは、1.3であった。
(実施例4)
硫酸を5%OWF含む代わりに、燐酸を8%OWF含むこと以外、実施例1と同様である。酸精練液の初期pHは、1.5であった。
(実施例5)
硫酸を5%OWF含む代わりに、亜燐酸を6%OWF含むこと以外、実施例1と同様である。酸精練液の初期pHは、1.4であった。
(実施例6)
硫酸を5%OWF含む代わりに、次亜燐酸を10%OWF含むこと以外、実施例1と同様である。酸精練液の初期pHは、1.3であった。
(実施例7)
硫酸を5%OWF含む代わりに、クエン酸を5%OWF、燐酸を4%OWF含むこと以外、実施例1と同様である。酸精練液の初期pHは、1.6であった。
(実施例8)
硫酸を5%OWF含む代わりに、リンゴ酸を5%OWF、硫酸を2.5%OWF含むこと以外、実施例1と同様である。酸精練液の初期pHは、1.4であった。
(実施例9)
硫酸を5%OWF含む酸精練液を用いる代わりに、硫酸を10%OWF含む酸精練液を用いること以外、実施例1と同様である。酸精練液の初期pHは、1.0であった。
(実施例10)
硝酸を5%OWF含む酸精練液を用いる代わりに、硝酸を10%OWF含む酸精練液を用いること以外、実施例3と同様である。酸精練液の初期pHは、1.1であった。
(実施例11)
塩酸を5%OWF含む酸精練液を用いる代わりに、塩酸を10%OWF含む酸精練液を用いること以外、実施例2と同様である。酸精練液の初期pHは、1.2であった。
(実施例12)
燐酸を8%OWF含む酸精練液を用いる代わりに、燐酸を20%OWF含む酸精練液を用いること以外、実施例4と同様である。酸精練液の初期pHは、1.2であった。
(実施例13)
燐酸を8%OWF含む酸精練液を用いる代わりに、燐酸を50%OWF含む酸精練液を用いること以外、実施例4と同様である。酸精練液の初期pHは、1.1であった。
(実施例14)
燐酸を8%OWF含む酸精練液を用いる代わりに、燐酸を100%OWF含む酸精練液を用いること以外、実施例4と同様である。酸精練液の初期pHは、1.0であった。
(比較例1)
硫酸を5%OWF含む代わりに、クエン酸を10%OWF含むこと以外、実施例1と同様である。酸精練液の初期pHは、2.4であった。
(比較例2)
クエン酸の代わりに、蟻酸を用いること以外、比較例1と同様である。酸精練液の初期pHは、2.4であった。
(比較例3)
クエン酸の代わりに、酢酸を用いること以外、比較例1と同様である。酸精練液の初期pHは、3.6であった。
(比較例4)
クエン酸の代わりに、乳酸を用いること以外、比較例1と同様である。酸精練液の初期pHは、2.4であった。
(比較例5)
クエン酸の代わりに、リンゴ酸を用いること以外、比較例1と同様である。酸精練液の初期pHは、2.4であった。
(比較例6)
クエン酸の代わりに、酒石酸を用いること以外、比較例1と同様である。酸精練液の初期pHは、2.3であった。
(比較例7)
硫酸を5%OWF含む代わりに、石鹸10%OWF、セスキ炭酸ソーダ2.5%OWF、トリポリ燐酸ソーダ0.5%OWF含むこと以外、実施例1と同様である。アルカリ精練液の初期pHは、10であった。
(比較例8)
硫酸を5%OWF含む代わりに、燐酸を1%OWF含むこと以外、実施例1と同様である。酸精練液の初期pHは、2.7であった。
(比較例9)
硫酸を5%OWF含む代わりに、燐酸を2%OWF含むこと以外、実施例1と同様である。酸精練液の初期pHは、2.4であった。
(比較例10)
硫酸を5%OWF含む酸精練液を用いる代わりに、硫酸を25%OWF含む酸精練液を用いること以外、実施例1と同様である。酸精練液の初期pHは、0.8であった。
(比較例11)
硝酸を5%OWF含む酸精練液を用いる代わりに、硝酸を25%OWF含む酸精練液を用いること以外、実施例3と同様である。酸精練液の初期pHは、0.8であった。
(比較例12)
塩酸を5%OWF含む酸精練液を用いる代わりに、塩酸を25%OWF含む酸精練液を用いること以外、実施例2と同様である。酸精練液の初期pHは、0.9であった。
[評価方法]
実施例1〜14および比較例1〜12について、次のようにして練減率、伸度、強度および風合いを測定し、その結果を表2に示す。なお、評価項目の説明に記載されている「◎」、「○」、「△」、「×」などの記号は、表2で用いる評価結果を示す記号である。「◎」は、非常に優れていることを示し、「○」は、優れていることを示し、「△」は、実用可能であることを示し、「×」は、実用が困難であることを示す。
(練減率)
精練前の被精練物および精練後の被精練物を60℃で1時間乾燥して、それぞれの重量を測定することによって、精練前の被精練物の重量A(g)および精練後の被精練物の重量B(g)を得る。なお、絹繊維は平衡水分率が高く、空気中の水分を吸収しやすいので、空気中に放置しておくと、重量が安定しないので、乾燥直後の重量を測定する必要がある。
そして、次式によって練減率を算出する。
練減率(%)=(A−B)/A×100
(伸度)
ショッパー型単糸強伸度測定機(浅野機械製作株式会社製)を用いて、以下のように伸度を算出する。
図4は、繊維20の伸度を測定する方法を説明する図である。図4(a)は、繊維20を引っ張る前の状態を示す図であり、図4(b)は、繊維20が破断する直前の状態を示す図である。
図4(a)に示すように、治具21で繊維20の両端を支える。その際の治具21間の距離を測定することによって、引っ張る前の長さC(cm)を得る。その後、治具21を徐々に離していき、図4(b)に示すように、繊維20が破断する直前の治具21間の距離を測定することによって、破断直前の長さD(cm)を得る。
そして、次式によって伸度を算出する。なお、CおよびDは、20回測定した測定値の平均値を用いる。
伸度(%)=(D−C)/C×100
(強度)
上記伸度を測定する際に、繊維20が破断する直前に、繊維20にかかっている荷重を測定することによって、繊維20の強度(g)が得られる。なお、繊維20の強度(g)は、20回測定した測定値の平均値である。
(風合い)
・柔軟性
精練後の被精練物を触って、以下のように評価した。
◎:精練前の被精練物と比較して、非常に柔らかい。
○:精練前の被精練物と比較して、柔らかいが、少し芯があり、少し硬さが残る。
△:精練前の被精練物と比較して、柔らかいが、芯があり、硬さが残る。
×:精練前の被精練物と比較して、あまり柔らかくなっていない。
・絹鳴り
精練後の被精練物を触って、以下のように評価した。
◎:キシリ感があり、絹鳴りが発生する。
○:キシリ感が少しあり、絹鳴りが少し発生する。
×:絹鳴りが発生しない。
・光沢
精練後の被精練物を見て、以下のように評価した。
◎:白色であり、絹特有の光沢がある。
○:白色であり、少し光沢がある。
△:少し黄色みがかっており、光沢がない。
×:生糸と同様の色であり、光沢がない。
Figure 0004054036
表2からわかるように、無機酸を含み、初期pHが1.0以上2.0未満である酸精練液を用いて精練した場合(実施例1〜14)、練減率が25%以上であり、精練絹が充分に柔らかくなった。このことから、充分にセリシンが除去されていることがわかった。また、伸度および強度が充分に高く、精練絹は、絹鳴りを発生させ、絹特有の光沢を有した。このことから、フィブロインに大きな損傷を与えていないことがわかった。以上より、過精練になって絹繊維を損傷させることなく、セリシンを完全に除去できていることがわかった。また、特に、燐酸を含む酸精練液を用いて精練した場合(実施例4)および有機酸を併用した酸精練液を用いて精練した場合(実施例7,8)、伸度および強度がより高かった。このことから、絹繊維をより損傷させることなく、セリシンを完全に除去できていることがわかり、より好ましい精練方法であった。さらに、非常に高い濃度の燐酸を含む酸精練液を用いて精練した場合(実施例12〜14)であっても、伸度が14%以上、強度が160g以上であった。
有機酸のみを含み、精練液の初期pHが2以上である酸精練液を用いて精練した場合(比較例1〜6)、練減率が25%より低く、精練絹が充分に柔らかくならなかった。このことから、充分にセリシンが除去されておらず、充分な精練されていないことがわかった。石鹸を含むアルカリ精練液を用いて精練した場合(比較例7)、練減率が25%以上であり、精練絹が充分に柔らかくなった。しかしながら、絹鳴りは発生しなかった。このことから、石鹸を含むアルカリ精練液を用いて精練したので、スカムおよび石鹸などが絹繊維に付着されたままとなっていると考えられる。精練液の初期pHが2以上である場合(比較例8,9)、練減率が25%より低く、精練絹が充分に柔らかくならなかった。このことから、充分にセリシンが除去されておらず、充分な精練されていないことがわかった。
精練液の初期pHが1未満である酸精練液を用いて精練した場合(比較例10〜12)、練減率が25%以上であり、精練絹が充分に柔らかくなったが、伸度が11%未満、強度が150g未満であった。精練液の初期pHが1未満である酸精練液を用いて精練した場合、セリシンは、除去されているが、フィブロインに大きな損傷を与えてしまっていることがわかった。
なお、比較例3,4,8および9は、練減率が25%より低く、さらに、得られた精練絹の風合いが良くないことが明らかであったので、充分な伸度および強度を有していても、絹繊維を損傷させることなく、セリシンを完全に除去できていないことがあきらかであったので、伸度および強度を測定しなかった。
次に、生糸を酸精練液で本練りをした後、アルカリ精練液で仕上練りをした場合について検討した。
(実施例15)
表3に示すように、本練りとして、燐酸を4%OWF含む酸精練液を、浴比が1:20となるように使用して、生糸(21/3片)を40分間煮沸精練した。そして、仕上練りとして、石鹸を2%OWF含み、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)を1%OWF含むアルカリ精練液を、浴比が1:20となるように使用して、生糸21/3片を40分間煮沸精練した。その後、熱湯で洗浄し、さらに、湯洗いを行った。本練りの酸精練液の初期pHは、1.8であり、仕上練りのアルカリ精練液の初期pHは、9.6であった。
Figure 0004054036
[評価方法]
実施例15について、上記のように練減率、伸度、強度および風合いを測定し、その結果を表4に示す。
Figure 0004054036
表4からわかるように、本練りで、酸精練液を使用して精練した後に、仕上げ練りで、アルカリ精練液を使用して精練した場合(実施例15)、本練り後は、練減率が25%より低く、充分に精練させていなかったが、仕上練り後は、練減率が25%以上であり、精練絹が充分に柔らかくなった。このことから、充分にセリシンが除去されていることがわかった。また、伸度および強度が充分に高く、精練絹は、絹鳴りを発生させ、絹特有の光沢を有した。このことから、フィブロインに大きな損傷を与えていないことがわかった。以上より、過精練になって絹繊維を損傷させることなく、セリシンを完全に除去できていることがわかった。
・生織物の精練についての検討
まず、裏生地として用いる平絽の精練方法について検討した。
(実施例16)
表5に示すように、荒練りとして、燐酸を2g/L含む酸精練液を、浴比が1:40となるように使用して、裏生地(平絽)を60分間煮沸精練した。そして、本練りとして、石鹸を1g/L、ソーダ灰を2g/L、金属イオン封鎖剤(トリポリ燐酸ソーダ)を1g/L含むアルカリ精練液を、浴比が1:40となるように使用して、上記の荒練りされた平絽を50分間煮沸精練した。さらに、精練液に還元漂白剤であるハイドロサルファイト(亜ジチオン酸ナトリウム)を1g/Lとなるように添加して、さらに、10分間煮沸精練した。その後、湯洗いを行った。荒練りの酸精練液の初期pHは、1.5であり、本練りのアルカリ精練液の初期pHは、10.8であった。
Figure 0004054036
(実施例17)
燐酸を2g/L含む代わりに、硫酸を1g/L含むこと以外、実施例16と同様である。荒練りの酸精練液の初期pHは、1.1であった。
(実施例18)
燐酸を2g/L含む代わりに、硝酸を1g/L含むこと以外、実施例16と同様である。荒練りの酸精練液の初期pHは、1.4であった。
(実施例19)
燐酸を2g/L含む代わりに、塩酸を1g/L含むこと以外、実施例16と同様である。荒練りの酸精練液の初期pHは、1.6であった。
(比較例13)
表5に示すように、荒練りとして、石鹸を1g/L、ソーダ灰を2g/L、トリポリ燐酸ソーダを1g/L含むアルカリ精練液を、浴比が1:40となるように使用して、裏生地(平絽)を60分間煮沸精練した。そして、本練りとして、石鹸を2g/L、ソーダ灰を1g/L、トリポリ燐酸ソーダを1g/L含むアルカリ精練液を、浴比が1:40となるように使用して、上記の荒練りされた平絽を50分間煮沸精練した。さらに、精練液にハイドロサルファイトを1g/Lとなるように添加して、さらに、10分間煮沸精練した。その後、湯洗いを行った。荒練りのアルカリ精練液の初期pHは、10.8であり、本練りのアルカリ精練液の初期pHは、10.5であった。
[評価方法]
実施例16〜19および比較例13について、上記のように練減率を測定し、次のように風合いを評価し、その結果を表6に示す。
(風合い)
精練後の被精練物を触って、以下のように評価した。
◎:精練前の被精練物と比較して、非常に柔らかく、しなやかである。
○:精練前の被精練物と比較して、柔らかいが、少し芯があり、少し硬さが残る。
△:精練前の被精練物と比較して、柔らかいが、芯があり、硬さが残る。
×:精練前の被精練物と比較して、あまり柔らかくなっていない。
Figure 0004054036
表6からわかるように、荒練りで、酸精練液を使用して精練した後に、本練りで、アルカリ精練液を使用して精練した場合(実施例16〜19)、荒練り後は、練減率が25%より低く、充分に精練させていなかったが、本練り後は、練減率が25%以上であり、精練絹が充分に柔らかくしなやかであった。このことから、過精練になって絹繊維を損傷させることなく、セリシンを完全に除去できていることがわかった。
荒練りで、アルカリ精練液を使用して精練した後に、本練りで、もう一度アルカリ精練液を使用して精練した場合(比較例13)と、実施例16〜19は、同様の結果が得られた。比較例13は、従来から布練り法として好ましく使用されていた方法を用いた場合であり、実施例16〜19は、精練方法として、充分に実用可能である。さらに、実施例16〜19は、環境汚染の原因となる石鹸を含むアルカリ精練液の使用量が少なくてすむので、好ましい。
また、荒練りで、酸精練液を使用して精練した後に、本練りで、アルカリ精練液を使用して精練した場合(実施例16〜19)、荒練り後の精練廃液は、一夜間、静置すると、ゲル化した。このことから、酸洗練液を使用して精練すると、セリシンをあまり分解することなく除去することができ、化粧品などに好ましく用いられる高分子量のセリシンを回収することができる。
次に、ちりめん(紋意匠)の精練方法について検討した。
(実施例20)
表7に示すように、荒練りとして、燐酸を2g/L含む精練液を、浴比が1:40となるように使用して、ちりめんを60分間煮沸精練した。そして、本練りとして、石鹸を2g/L、ソーダ灰を2g/L、トリポリ燐酸ソーダを1g/L含むアルカリ精練液を、浴比が1:40となるように使用して、上記の荒練りされた平絽を100分間煮沸精練した。さらに、精練液に還元漂白剤であるハイドロサルファイトを1g/Lとなるように添加して、さらに、20分間煮沸精練した。その後、湯洗いを行った。荒練りの酸精練液の初期pHは、1.5であり、本練りのアルカリ精練液の初期pHは、10.8であった。
Figure 0004054036
(実施例21)
燐酸を2g/L含む代わりに、硫酸を1g/L含むこと以外、実施例20と同様である。荒練りの酸精練液の初期pHは、1.1であった。
(実施例22)
燐酸を2g/L含む代わりに、硝酸を1g/L含むこと以外、実施例20と同様である。荒練りの酸精練液の初期pHは、1.4であった。
(実施例23)
燐酸を2g/L含む代わりに、塩酸を1g/L含むこと以外、実施例20と同様である。荒練りの酸精練液の初期pHは、1.6であった。
(比較例14)
表7に示すように、荒練りとして、石鹸を2g/L、ソーダ灰を2g/L、トリポリ燐酸ソーダを1g/L含むアルカリ精練液を、浴比が1:40となるように使用して、ちりめんを60分間煮沸精練した。そして、本練りとして、石鹸を2g/L、ソーダ灰を2g/L、トリポリ燐酸ソーダを1g/L含むアルカリ精練液を、浴比が1:40となるように使用して、上記の荒練りされたちりめんを100分間煮沸精練した。さらに、精練液にハイドロサルファイトを1g/Lとなるように添加して、さらに、20分間煮沸精練した。その後、湯洗いを行った。荒練りのアルカリ精練液の初期pHは、10.8であり、本練りのアルカリ精練液の初期pHは、10.8であった。
(比較例15)
燐酸を2g/L含む代わりに、クエン酸を4g/L含むこと以外、実施例20と同様である。荒練りの酸精練液の初期pHは、2.3であった。
(比較例16)
燐酸を2g/L含む代わりに、乳酸を1g/L含むこと以外、実施例20と同様である。荒練りの酸精練液の初期pHは、2.3であった。
(比較例17)
燐酸を2g/L含む代わりに、りんご酸を4g/L含むこと以外、実施例20と同様である。荒練りの酸精練液の初期pHは、2.3であった。
(比較例18)
燐酸を2g/L含む代わりに、酒石酸を4g/L含むこと以外、実施例20と同様である。荒練りの酸精練液の初期pHは、2.3であった。
[評価方法]
実施例20〜23および比較例14〜18について、上記のように練減率および風合いを測定し、その結果を表8に示す。
Figure 0004054036
表8からわかるように、荒練りで、酸精練液を使用して精練した後に、本練りで、アルカリ精練液を使用して精練した場合(実施例20〜23)、荒練り後は、練減率が25%より低く、充分に精練させていなかったが、本練り後は、練減率が25%以上であり、精練絹が充分に柔らかくしなやかであった。このことから、過精練になって絹繊維を損傷させることなく、セリシンを完全に除去できていることがわかった。
荒練りで、アルカリ精練液を使用して精練した後に、本練りで、もう一度アルカリ精練液を使用して精練した場合(比較例14)と、実施例20〜23は、同様の結果が得られた。比較例14は、従来から布練り法として好ましく使用されていた方法を用いた場合であり、実施例20〜23は、精練方法として、充分に実用可能である。さらに、実施例20〜23は、環境汚染の原因となる石鹸を含むアルカリ精練液の使用量が少なくてすむので、好ましい。
また、荒練りで、酸精練液を使用して精練した後に、本練りで、アルカリ精練液を使用して精練した場合(実施例20〜23)、荒練り後の精練廃液は、一夜間、静置すると、ゲル化した。このことから、酸洗練液を使用して精練すると、セリシンをあまり分解することなく除去することができ、化粧品などに好ましく用いられる高分子量のセリシンを回収することができる。
荒練りで、有機酸のみを含み、酸精練液の初期pHが2以上である酸精練液を用いて精練した場合(比較例15〜18)、荒練り後、練減率が25%より低く、本練り後であっても、練減率が25%より低く、精練絹が充分に柔らかくならなかった。このことから、荒練りで、セリシンをある程度除去しなければ、本練りで、セリシンを充分に除去することができないことがわかった。
最後に、ウールとの交織の精練方法について検討した。
(実施例24)
表9に示すように、燐酸を1g/L含む酸精練液を、浴比が1:40となるように使用して、シルク/ウール交織を50分間煮沸精練した。その後、酸精練液に還元漂白剤であるデグロリンを1g/Lとなるように添加して、さらに、10分間煮沸精練した。その後、湯洗いを行った。酸精練液の初期pHは、1.6であった。
Figure 0004054036
(実施例25)
燐酸を1g/L含む代わりに、燐酸を0.5g/L、硫酸を0.5g/L含むこと以外、実施例24と同様である。酸精練液の初期pHは、1.4であった。
[評価方法]
実施例24および25について、上記のように練減率および風合いを測定し、その結果を表10に示す。
Figure 0004054036
表10からわかるように、無機酸を含み、初期pHが1.0以上2.0未満である精練液を用いて、耐塩基性の低いウールとの交織を精練した場合(実施例24および25)、練減率が、ウールが含まれていても、20%以上であり、充分に柔らかくなった。このことから、充分にセリシンが除去されていることがわかった。また、耐塩基性の低いウールを含んでいても、酸精練液を用いて精練するので、交織が大きな損傷を受けることがなかった。
以上のように、無機酸を含み、初期pHが1.0以上2.0未満である精練液を用いて精練することによって、被精練物によらず、被精練物に大きな損傷を与えることなく、完全にセリシンを除去することができる。
精練前の絹繊維(生糸)10を示す図である。 絹繊維を精練した後の精練絹を示す図である。 精練方法の工程を示す図である。 繊維20の伸度を測定する方法を説明する図である。
符号の説明
10 絹繊維(生糸)
11 フィブロイン
12 セリシン
20 繊維
21 治具

Claims (6)

  1. 生糸、生糸を撚った撚糸または生織物からセリシンを除去して精練する精練方法であって、
    無機酸を含み、初期pHが1以上2未満である酸性精練液を用いて精練することを特徴とする精練方法。
  2. 前記酸性精練液の温度が90℃以上で精練することを特徴とする請求項1記載の精練方法。
  3. 前記酸性精練液は、有機酸を含むことを特徴とする請求項1または2記載の精練方法。
  4. 前記酸性精練液は、界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の精練方法。
  5. 前記酸性精練液を用いて精練した後、初期pHが9以上11以下である塩基性精練液を用いて90℃以上で精練することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の精練方法。
  6. 前記塩基性精練液は、界面活性剤を含むことを特徴とする請求項5記載の精練方法。
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