JP4053298B2 - インクセット及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像滲みの少ないインクジェット記録を行うための記録液と処理液とからなるインクセット、また、これら記録液と処理液とを被記録材に付着させて画像を形成するインクジェット記録方法、及び、インクジェット記録装置、これら処理液と記録液を収納するカートリッジ、このインクジェット記録装置を用いて作製されるインクジェット記録物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
色材を含有した記録液を液滴として画像記録を行うインクジェット記録方法は、その印字機構が簡単で、しかも騒音が発生しない点で優れている。
しかしその一方で、この画像記録方法は、被記録材との組み合わせによっては文字滲み(以下、「フェザリング」と言う。)に代表される画像欠陥が発生しやすく、画像品質が大きく低下するという問題を有する。この問題についてはインクの浸透性を抑えることでフェザリングを低減する試みがなされているが、この場合、インクの乾燥性が悪いため、印刷後に印刷物に触れるとインクが手に付いたり、画像汚れが生じる等の不具合がある。
また、カラー画像を印字する場合には、色の異なるインクが次々と重ねられるため、色境界部分でカラーインクが滲んだり、混ざり合う現象(以下、「カラーブリード」と言う。)が発生し、画像品質が大きく低下する問題も有する。この問題についてはインクの浸透性を高めることでカラーブリードを低減する試みがなされているが、この場合、色材が被記録材の内部に入り込んでしまうために画像濃度が低下してしまったり、被記録材裏側へのインクの浸み出しが多くなり両面印刷が良好に行えなくなってしまうという不具合がある。
したがって、これらの不具合を同時に解決して画像品質を高める画像形成方法が望まれている。
【0003】
これらの問題に対して、記録液と共に微粒子を含有する処理液を併用する方法が提案されている。特開平4−259590号公報には、無機物質からなる無色の微粒子を含有する無色の液体を被記録材に付着させた後に、非水系記録液を付着させるインクジェット記録方法が開示されている。特開平6−92010号公報には、顔料を含む記録液を吐出する前に微粒子、又は微粒子及びバインダーポリマーを含有する溶液を塗布する、あるいは噴射するインクジェット記録方法が開示されている。特開平11−228890号公報には、アニオン性金属酸化物コロイドを含有する無色のインクジェット用処理液と、色材を含有するインクとを別々に吐出した後に混ぜ合わせて被記録材上に画像を形成する画像形成方法が開示されている。特開2001−171095号公報には、無機酸化物顔料を主成分とする半透明白色インクを予め被記録材に固着させ、水溶性染料インクで画像を記録するインクジェットプリントによる記録方法が開示されている。WO00−06390号公報には、ポリマー微粒子、及び/または、反応剤を含有する第一の液と、インク組成物とを被記録材付着させて印字を行うインクジェット記録方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの提案がなされているものの、特開平4−259590号公報、特開平11−228890号公報においては、いずれもアニオン性色材を含有する記録液とアニオン性微粒子を含有する処理液とを組み合わせているため、色材の凝集、吸着効果が得られず、フェザリング抑制、カラーブリード抑制の点で効果が得られないという問題点がある。
また、特開平6−92010号公報、特開2001−171095号公報、WO00−06390号公報においては、アニオン性色材に対してカチオン性のアルミナ、二酸化チタン、カチオン性基を有するポリマー微粒子を組み合わせているため、色材の凝集、吸着効果があるものの、記録液の粘度に関する考慮がなされておらず、フェザリング抑制、カラーブリード抑制の点で十分な効果が得られていない。すなわち、低粘度のインクと低粘度の処理液を用いているために凝集成分が流れ出してしまい、フェザリングとカラーブリードが抑えきれないという問題点がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、フェザリングやカラーブリードを抑制し、普通紙に印字した場合でも、品質の高い画像を得ることができる記録液と処理液からなるインクセットを提供することを課題とする。また、高い画像濃度と両面印字性に優れ、記録液の乾燥不良による画像汚れも生じさせないインクセットを提供することを課題とする。
更には、このような高品質の画像を得ることができるインクジェット記録方法、インクジェット記録装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、処理液と記録液とを被記録材に付着させて画像を形成する際に、両液の接触によって生じる液滴の凝集状態が重要であり、これを制御するために、処理液に含有される微粒子と記録液に含有される色材との組み合わせ、並びに、両液の粘度を考慮することにより、上記課題を解決できることが判明し、本発明をするに至った。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、アニオン性色材を含有する記録液と、カチオン性微粒子とカチオン性界面活性剤とを含有する処理液とからなり、該記録液及び該処理液のいずれか一方、又は双方の25℃における粘度が5mPa・sec以上であるインクセットである。請求項2に記載の発明は、前記記録液と前記処理液とが接触した際に凝集物を生成する請求項1に記載のインクセットである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記処理液に含有されるカチオン性微粒子が、カチオン性無機化合物である請求項1又は2に記載のインクセットである。請求項4に記載の発明は、前記カチオン性無機化合物が、カチオン性シリカである請求項3に記載のインクセットである。請求項5に記載の発明は、前記処理液が、ビヒクルに水溶性有機溶剤を含有する請求項1ないし4のいずれかに記載のインクセットである。請求項6に記載の発明は、前記水溶性有機溶剤が、湿潤剤及び浸透剤のいずれか一方、又は双方である請求項5に記載のインクセットである。請求項7に記載の発明は、前記処理液が、防腐防黴剤を含有する請求項1ないし6のいずれかに記載のインクセットである。
【0009】
請求項8に記載の発明は、前記アニオン性色材が、顔料である請求項1ないし7のいずれかに記載のインクセットである。請求項9に記載の発明は、前記記録液が、ビヒクルに水溶性有機溶剤を含有する請求項1ないし8のいずれかに記載のインクセットである。請求項10に記載の発明は、前記水溶性有機溶剤が、湿潤剤及び浸透剤のいずれか一方、又は双方である請求項9に記載のインクセットである。請求項11に記載の発明は、前記記録液が、防腐防黴剤を含有する請求項1ないし10のいずれかに記載のインクセットである。
【0010】
請求項12に記載の発明は、アニオン性色材を含有する記録液と、カチオン性微粒子とカチオン性界面活性剤とを含有する処理液とからなり、該記録液及び該処理液のいずれか一方、又は双方の25℃における粘度が5mPa・sec以上であるインクセットに用いられる記録液を収納してなる記録液カートリッジである。請求項13に記載の発明は、アニオン性色材を含有する記録液と、カチオン性微粒子とカチオン性界面活性剤とを含有する処理液とからなり、該記録液及び該処理液のいずれか一方、又は双方の25℃における粘度が5mPa・sec以上であるインクセットに用いられる処理液を収納してなる処理液カートリッジである。
【0011】
請求項14に記載の発明は、処理液を被記録材に付着させる工程と、記録液を被記録材に付着させる工程とを有し、被記録材に画像を形成するインクジェット記録方法であって、前記記録液は、アニオン性色材を含有し、前記処理液は、カチオン性微粒子とカチオン性界面活性剤とを含有し、前記記録液及び前記処理液のいずれか一方、又は双方の25℃における粘度が5mPa・sec以上であるインクジェット記録方法である。請求項15に記載の発明は、被記録材を搬送する搬送部と、処理液を被記録材に付着させる付着部と、記録液を被記録材に付着させる付着部とを有し、被記録材に画像を形成するインクジェット記録装置であって、前記記録液は、アニオン性色材を含有し、前記処理液は、カチオン性微粒子とカチオン性界面活性剤とを含有し、前記記録液及び前記処理液のいずれか一方、又は双方の25℃における粘度が5mPa・sec以上であるインクジェット記録装置である。請求項16に記載の発明は、請求項14に記載のインクジェット記録方法により作製されるインクジェット記録物である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
本発明のインクジェット記録に用いられるインクセットは、記録液がアニオン性色材を含有し、処理液がカチオン性微粒子を含有するものであり、記録液、処理液のいずれか一方、又は双方の25℃における粘度が5mPa・sec以上であるインクセットである。ここで、記録液及び処理液の粘度は、回転式粘度計、あるいは振動式粘度計を用いて測定されるものである。
本発明のインクセットによって画像品質が向上するメカニズムは以下のように考えられる。ただし、本発明は以下の説明によって制限を受けるものではない。
処理液中に含有されるカチオン性微粒子は粒子表面に電荷を有し、微粒子同士は表面電荷による反発作用が生じるため分散が安定化されている。アニオン性色材を含有する記録液がカチオン性微粒子を含有する処理液と接触すると、カチオン性微粒子にアニオン性色材が電気的な作用により強力に吸着する。このときカチオン性微粒子の表面電荷はアニオン性色材の電荷で中和されるため、カチオン性微粒子同士の反発作用がなくなり、カチオン性微粒子とアニオン性色材は大きな凝集物を形成する。
また、アニオン性色材が有するカルボニル基やスルホニル基等の水溶性基が吸着の際にカチオン性微粒子で隠蔽されるため、凝集物の水に対する溶解度が急速に低下し、凝集物はさらに大きくなる。このような凝集物の形成が急速に生じれば、記録液と処理液が被記録材に浸透する際に凝集物が被記録材の多孔質部分にトラップされ、色材が移動しづらくなり、フェザリングやカラーブリードが低減される。
このとき、記録液と処理液の粘度がいずれも低いと、記録液と処理液との混合液の粘度も低いため、記録液及び処理液に含まれるビヒクルが被記録材に浸透する前に凝集物が横方向に流れ出してしまう。その結果、フェザリングとカラーブリードの十分な低減効果が得られない。
そこで、記録液あるいは処理液のいずれか一方、又は双方の25℃における粘度を5mPa・sec以上とすることで、混合液の粘度が高められるため、凝集物が横方向に流れ出すことがなく、記録液及び処理液に含まれるビヒクルの被記録材への浸透も進行して、フェザリングとカラーブリードを効果的に防止することができる。
【0013】
また、本発明のインクセットでは、カチオン性微粒子とアニオン性色材とが粒子状の凝集物を形成し、被記録材の表面付近に石垣状に積み重なることから、浸透性の膜を形成する。これにより、記録液及び処理液に含まれるビヒクルの被記録材への浸透が速やかに進行し、カラーブリードが良好になることに加えて、記録画像の乾燥性が良好となる。
これに比べ、ポリマーを溶解した処理液を用いた従来例においては、ポリマーが被記録材表面に膜を形成して、ビヒクルの浸透を妨げ、記録画像の乾燥性を低下させていた。本発明により、このような不具合を解決することができる。
【0014】
また、上述のように、凝集物が被記録材の表面付近に石垣状に積み重なることで、高い画像濃度を有する記録画像を得ることができる。更に、被記録材裏側へのインクの浸み出しが抑制されるため、両面印字性にも優れる。
また、上述のように、アニオン性色材が有するカルボニル基やスルホニル基等の水溶性基が吸着の際にカチオン性微粒子で隠蔽されるため、凝集物の水に対する溶解度が低下し、記録画像の耐水性を向上させることができる。
【0015】
次に、本発明のインクセットを構成する処理液について説明する。
処理液に含有されるカチオン性微粒子は、少なくとも粒子表面がカチオン性を有するものであれば用いることができる。カチオン性微粒子としては、カチオン性シリカ(シリカ(SiO2)のカチオン化物)、アルミナ(Al2O3)、二酸化チタン、ポリマー粒子にカチオン性基を導入したもの等を挙げることができる。なお、複数のカチオン性微粒子を併用して用いても良い。
【0016】
この中でも、反応性の点でカチオン性シリカが特に好ましい。カチオン性シリカは、シリカの表面がカチオン化処理されたものであれば用いることができる。
カチオン化するには、シリカ表面に化学的、物理的にカチオン性化合物を導入すれば良い。例えば、シリカのシラノール基にアミノ化合物をカップリングすることで、あるいはアルミニウム化合物を反応させることで化学的な表面処理ができる。
また、シリカとカチオン性化合物を溶剤中で混合し、カチオン性化合物を物理的に吸着させた後に溶剤を除去することで物理的に表面処理することができる。その際、核材として用いるアニオン性シリカの具体例としては、ST-ZL、ST-20、ST-30、ST-40、ST-C、ST-N、ST-O、ST-S、ST-50、ST-20L、ST-OL、ST-XS、ST-YL、ST-XL、ST-UP、ST-OUP(以上、日産化学製)、Cataloid SI-350、SI-500(以上、デュポン製)、Nipgel AY-220、AY-420、AY-460(以上、日本シリカ製)等が挙げられる。
これらの方法に限らず、シリカ表面をカチオン性に処理したものであれば、いずれも好適に用いることができる。商品化されているシリカのカチオン化物の具体例としては、ST-AK(日産化学製)が挙げられる。一方、アルミナの具体例としては、アルミナゾル100、200、520(以上、日産化学製)等が挙げられる。
【0017】
また、有機化合物と無機化合物とから成るカチオン性無機有機複合微粒子を用いることもできる。カチオン性無機有機複合微粒子は、無機微粒子の表面にカチオン性有機化合物を吸着させたり、逆に有機化合物の表面にカチオン性無機化合物を吸着させることで得ることができる。例えば、カチオン性ポリマーで被覆された無機有機複合微粒子は、無機微粒子を水等の溶媒中に分散させておき、これにカチオン性ポリマーを水、あるいは、水溶性有機溶媒の溶液の状態で徐々に加えることで得ることができる。
カチオン性ポリマーの具体例としては、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリイミン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、アミノアセタール化ポリビニルアルコール、イオネンポリマー、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルベンジルホスホニウム、ポリアルキルアリルアンモニウム、ポリアミジン、ポリアミンスルホン、カチオンでん粉などのカチオン性ポリマーを挙げることができる。
【0018】
上記のカチオン性微粒子の含有量は、処理液の0.01〜50wt%程度が好ましく、より好ましくは1〜30wt%程度である。含有量が0.01wt%未満の場合は、画質改善効果が十分に得られず、含有量が50wt%を超える場合は、吐出安定性が十分に得られない。
【0019】
カチオン性微粒子の平均粒子径は500nm以下であることが好ましく、吐出安定性の観点から200nm以下がさらに好ましい。500nmを超える場合、吐出ヘッドの目詰まりが生じやすくなり、吐出不良が生じやすくなる。
尚、平均粒子径は光学式粒度分布計で測定することができ、粒子数50%の粒子径をもって表す。
【0020】
処理液は、上記カチオン性微粒子を、水を主成分とするビヒクルで分散処理して製造される。分散する際には分散を安定化させるために解膠剤を用いることが好ましい。解膠剤とは帯電性粒子表面に電気二重層を形成し、電気二重層が静電的に反発して粒子の接近を防止し、分散を安定化させるものである。カチオン性微粒子は中性から酸性にかけては正に帯電するため、陰イオン源である酢酸、硝酸、塩酸、蟻酸、乳酸、及び、これらのアルカリ金属塩、オキシ塩化ジルコニウム水和物等のジルコニウム化合物、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、タウリン等が解膠剤として用いられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
本発明の処理液は次の方法によって製造することができる。カチオン性微粒子と水と解膠剤を混合し、分散液を調合する。必要に応じて後述する水溶性有機溶剤を添加し、解膠機によって解膠する。この際使用される解膠機としては、高速回転高せん断型攪拌解膠機、デゾルバー、コロイドミル、ホモジナイザー、超音波式解膠機などを挙げられ、より具体的には、T.K.オートホモミキサー、T.K.ホモミックラインフロー、ウルトラホモミキサー、NNKコロイドミルなどが挙げられる。解膠時の回転数は、解膠機の種類、構造によって変わるが、500〜10000rpmであることが好ましく、2000〜8000rpmであることがより好ましい。解膠時の温度は5〜100℃であることが好ましい。解膠時間は解膠機の種類、構造によって変わるが、0.01〜48時間であることが好ましい。
【0022】
次に、上記の成分以外に、処理液の所望の物性を得るために好ましく用いられる添加剤について説明する。
処理液の好ましい物性を得ると共に、乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止するなどの目的で、処理液には、ビヒクルとして水の他に水溶性有機溶剤を使用することが好ましい。水溶性有機溶剤には湿潤剤及び浸透剤が含まれる。
湿潤剤は乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止することを目的に添加される。湿潤剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオ−ル、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコ−ル類、エチレングリコールモノエチルエ−テル、エチレングリコ−ルモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエ−テル類、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノ−ル等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等である。これらの水溶性有機溶剤は、水とともに単独もしくは複数混合して用いられる。
【0023】
浸透剤は、処理液あるいは記録液と被記録材との濡れ性を向上させ、浸透速度を調整する目的で添加される。浸透剤としては、下記一般式(I)〜(IV)で表されるものが好ましい。すなわち、一般式(I)のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、一般式(II)のアセチレングリコール系界面活性剤、一般式(III)のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤ならびに一般式(IV)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系界面活性剤であり、これらの界面活性剤は、処理液あるいは記録液の表面張力を低下させることができるので、濡れ性を向上させ、浸透速度を高めることができる。
【0024】
【化1】
【0025】
【化2】
【0026】
【化3】
【0027】
【化4】
【0028】
前記一般式(I)〜(IV)の化合物以外では、例えばジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類を用いることができるが、特にジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0029】
また、処理液は、防腐防黴剤を含有することができる。防腐防黴剤を含有することによって、菌の繁殖を押さえることができ、保存安定性、画質安定性を高めることができる。防腐防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、イソチアゾリン系化合物、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が使用できる。
【0030】
更に、処理液は防錆剤を含有することができる。防錆剤を含有することによって、ヘッド等の接液面の金属腐食を防ぐことができる。防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、ベンゾトリアゾール等が使用できる。
【0031】
また、処理液は、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリン型化合物等のカチオン性界面活性剤を含有することができる。具体的には、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、セチルピリジニウムクロライド、2−ヘプタデセニルヒドロキシエチルイミダゾリン等が挙げられる。
これらのカチオン性界面活性剤は、処理液の表面張力を下げて被記録材との濡れ性を高めて微粒子層を速やかに形成すると共に、記録液に含まれるアニオン性色材を凝集する作用があり、画質改善に効果がある。
【0032】
更に、処理液のpHを調整する目的で、pH調整剤を添加することができる。pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン等のアミン類、硼酸、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等を用いることができる。
【0033】
尚、処理液の粘度は、カチオン性微粒子濃度、湿潤剤・浸透剤等の水溶性溶剤濃度、防黴剤濃度、防腐剤濃度を変えることで調整することができる。すなわち、本発明の処理液と記録液からなるインクセットは、どちらか一方、又は双方の粘度が5mPa・sec以上であることが重要な因子となっているが、上記の添加剤濃度を調整することにより、所望の粘度を得ることができる。
【0034】
次に、本発明のインクセットに用いる記録液について説明する。
記録液に含有される色材としては染料、顔料のいずれも用いることができるが、アニオン性の染料、あるいは顔料を用いることが、フェザリング抑制、カラーブリード抑制、及び画像濃度向上の点で好ましい。
【0035】
染料としては、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料で耐水、耐光性が優れたものが用いられる。これら染料は複数種類を混合して用いても良いし、あるいは必要に応じて顔料等の他の色素と混合して用いても良い。これら色材は、本発明の効果が疎外されない範囲で添加される。
(a)酸性染料及び食用染料として
C.I.アシッド・イエロー 17,23,42,44,79,142
C.I.アシッド・レッド 1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289
C.I.アシッド・ブルー 9,29,45,92,249
C.I.アシッド・ブラック 1,2,7,24,26,94
C.I.フード・イエロー 3,4
C.I.フード・レッド 7,9,14
C.I.フード・ブラック 1,2
(b)直接染料として
C.I.ダイレクト・イエロー 1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144
C.I.ダイレクト・レッド 1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227
C.I.ダイレクト・オレンジ 26,29,62,102
C.I.ダイレクト・ブルー 1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202
C.I.ダイレクト・ブラック 19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171
(c)塩基性染料として
C.I.ベーシック・イエロー 1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,53,63,64,65,67,70,73,77,87,91
C.I.ベーシック・レッド 2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112
C.I.ベーシック・ブルー 1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,147,155
C.I.ベーシック・ブラック 2,8
(d)反応性染料として
C.I.リアクティブ・ブラック 3,4,7,11,12,17
C.I.リアクティブ・イエロー 1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67
C.I.リアクティブ・レッド 1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97
C.I.リアクティブ・ブルー 1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95
等が使用できる。
【0036】
顔料の具体例としては、有機顔料として、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラツク、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられ、無機顔料として、酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉が挙げられる。
【0037】
アニオン性基を有する顔料分散剤の例として、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、カルボキシメチルセルロ−ス、デンプングリコール酸、アルギン酸ナトリウム、ペクチン酸、ヒアルロン酸などを挙げることができる。これらのアニオン系分散剤は、酸の形でも用いることが出来るが、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩を用いることもできる。
【0038】
表面にアニオン性基を有する顔料の例としては、カルボキシル基やスルホン酸基を有するカーボンブラックがその代表例としてあげられる。その他、フタロシアニン系顔料や、アントラキノン系顔料を酸化処理したり、発煙硫酸で処理したりして、顔料粒子の一部にカルボキシル基やスルホン酸基を導入したものもその例として挙げられる。
【0039】
ここで、本発明の記録液に含有されるアニオン性色材としては、染料よりも顔料を用いる方がフェザリング抑制、カラーブリード抑制、及び画像濃度向上の点で好ましい。つまり、ビヒクルに溶解状態の染料よりも分散状態の顔料の方がより効率的に処理液に含有されるカチオン性微粒子層にトラップされやすい。また、電気的に中和された際に凝集物を生じやすいため、画像濃度をさらに高めることができる。
【0040】
本発明の記録液は、上記色材の他、ビヒクルとして水を用い、更に記録液の所望の物性を得るために、湿潤剤及び/又は浸透剤を含む水溶性有機溶剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤を添加することができる。これらの添加剤は、前述した処理液で用いられる物質と同様の物質を、記録液についても好適に用いることができる。
【0041】
尚、記録液の粘度は、色材濃度、湿潤剤・浸透剤等の水溶性有機溶剤濃度、防黴剤濃度、防腐剤濃度を変えることで調整することができる。すなわち、本発明の処理液と記録液からなるインクセットは、どちらか一方、又は双方の粘度が5mPa・sec以上であることが重要な因子となっているが、上記の添加剤濃度を調整することにより、所望の粘度を得ることができる。
【0042】
上述した、記録液及び処理液は、それぞれ容器に収納して記録液カートリッジ、処理液カートリッジとし、後述する本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に用いることができる。
図1、2は、本発明の記録液及び処理液を収納可能なカートリッジの構成を示す図であり、図1は、カートリッジの外観斜視図、図2は、カートリッジの正断面図である。カートリッジ20は、図2に示すように、カートリッジ本体49内に記録液もしくは処理液を吸収させた吸収体42を収容してなる。カートリッジ本体49は、上部に広い開口を有するケース43の上部開口に上蓋部材44を接着又は溶着して形成したものであり、例えば樹脂成型品からなる。また、吸収体42は、ウレタンフォーム体等の多孔質体からなり、カートリッジ本体49内に圧縮して挿入した後、記録液もしくは処理液を吸収させている。
カートリッジ本体49のケース43底部には記録ヘッドへ記録液もしくは処理液を供給するための供給口45を形成し、この供給口45内周面にはシールリング46を嵌着している。また、上蓋部材44には大気開放口47を形成している。
そして、カートリッジ本体49には、装填前の状態で、供給口45を塞ぐと共に装填時や輸送時などのカートリッジ取扱い時、或いは真空包装時による幅広側壁に係る圧力でケース43が圧縮変形されて内部の記録液もしくは処理液が漏洩することを防止するため、キャップ部材50を装着している。
また、大気開放口47は、図1に示すように、酸素透過率が100ml/m2以上のフィルム状シール部材55を上蓋部材44に貼着してシールしている。このシール部材55は大気開放口47と共にその周囲に形成した複数本の溝48をもシールする大きさにしている。このように大気開放口47を酸素透過率が100ml/m2以上のシール部材55でシールすることで、カートリッジ20を透気性のないアルミラミネートフィルム等の包装部材を用いて減圧状態で包装し、記録液もしくは処理液の充填時や、吸収体42とカートリッジ本体49との間に生じる空間A(図2参照)にある大気のために記録液もしくは処理液中に気体が溶存したときでも、シール部材55を介して記録液もしくは処理液中の空気が真空度の高いカートリッジ本体49外の包装部材との間の空間に排出され、記録液もしくは処理液の脱気度が向上する。
尚、このカートリッジは記録ヘッドと一体化されたものであってもよい。
【0043】
続いて、本発明のインクジェット記録方法、及びそれを実施するインクジェット記録装置について、図面を用いて説明する。
図3は、本発明に係るインクジェット記録装置の構成の一例を示す図である。インクジェット記録装置1は、処理液および記録液をカートリッジ20に収納し、処理液および記録液がカートリッジ20から記録ヘッド18に供給される。ここで、カートリッジ20は処理液用、色毎の記録液用が分離された状態で取り付けられている。尚、用いられる記録液及び処理液については、先に説明した通りであるので、ここでは割愛する。
記録ヘッド18は、キャリッジ19に搭載され、主走査モータ24で駆動されるタイミングベルト23によってガイドシャフト21、22にガイドされて移動する。一方、被記録材はプラテンによって記録ヘッド18と対面する位置に置かれる。
【0044】
図4は、記録ヘッド18のノズル面の拡大図である。処理液が吐出されるノズル31が縦方向に設けられ、ノズル32、33、34、35からはそれぞれイエロー記録液、マゼンタ記録液、シアン記録液、そしてブラック記録液が吐出される。
【0045】
図5は、記録ヘッド18のノズル面の他の構成を示す図である。図5に示すように、ノズルを全て横方向に並べて構成することも可能である。図中で、36、及び41は処理液の吐出ノズルであり、ノズル37、38、39、40からはそれぞれイエロー記録液、マゼンタ記録液、シアン記録液、そしてブラック記録液が吐出される。このような態様の記録ヘッド18においては、処理液の吐出ノズルが左右の端に設けられているため、記録ヘッド18がキャリッジ19上を往復する往路、復路いずれにおいても印字が可能である。すなわち、往路、復路のいずれにおいても処理液を先に付着させて、その上からカラー記録液を付着させること、あるいは、その逆が可能であり、記録ヘッド18の移動方向の違いによる画像濃度差が生じない。
【0046】
ここで、記録ヘッド18から吐出される記録液と処理液とは、同一箇所に重ねられることが最も好ましい。しかし、本発明の適用はこの範囲に限定されない。例えば、処理液を間引いて付与し滲み等によって拡大する処理液に記録液が重ねられる場合や、画像の輪郭部だけで処理液と記録液の一部が重なる場合も本発明の範囲に含まれる。
【0047】
また、本発明の記録液と処理液とからなるインクセットを用いたインクジェット記録方法により作製されるインクジェット記録物は、フェザリングやカラーブリードのない非常に良好な画像であり、耐水性、耐光性にも優れた記録物である。特に、被記録材として普通紙を用いた場合でも、上記のように高い画像品質の記録物とすることができる。
【0048】
【実施例】
以下に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
<記録液の製造>
以下の示す各々の記録液成分を混合し、これを0.8μmのテフロンフィルターにて濾過し、各々の記録液を製造した。
(1)黒色記録液1
キャボジェット300(キャボット社製自己分散型顔料)10.0重量部
1,3−ブタンジオール 7.5重量部
グリセリン 2.5重量部
界面活性剤(一般式(I)) 1.0重量部
2−ピロリドン 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
【0049】
(2)黒色記録液2
キャボジェット300(キャボット社製自己分散型顔料)10.0重量部
1,3−ブタンジオール 12.0重量部
グリセリン 4.0重量部
界面活性剤(一般式(I)) 1.0重量部
2−ピロリドン 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
【0050】
(3)黒色記録液3
キャボジェット300(キャボット社製自己分散型顔料)10.0重量部
1,3−ブタンジオール 15.0重量部
グリセリン 5.0重量部
界面活性剤(一般式(I)) 1.0重量部
2−ピロリドン 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
【0051】
(4)黒色記録液4
キャボジェット300(キャボット社製自己分散型顔料)10.0重量部
1,3−ブタンジオール 22.5重量部
グリセリン 7.5重量部
界面活性剤(一般式(I)) 1.0重量部
2−ピロリドン 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
【0052】
(5)イエロー記録液1
C.I.ピグメントイエロー17 10.0重量部
1,3−ブタンジオール 7.5重量部
グリセリン 2.5重量部
界面活性剤(一般式(I)) 1.0重量部
2−ピロリドン 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
【0053】
(6)イエロー記録液2
C.I.ピグメントイエロー17 10.0重量部
1,3−ブタンジオール 12.0重量部
グリセリン 4.0重量部
界面活性剤(一般式(I)) 1.0重量部
2−ピロリドン 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
【0054】
(7)イエロー記録液3
C.I.ピグメントイエロー17 10.0重量部
1,3−ブタンジオール 15.0重量部
グリセリン 5.0重量部
界面活性剤(一般式(I)) 1.0重量部
2−ピロリドン 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
【0055】
(8)イエロー記録液4
C.I.ピグメントイエロー17 10.0重量部
1,3−ブタンジオール 22.5重量部
グリセリン 7.5重量部
界面活性剤(一般式(I)) 1.0重量部
2−ピロリドン 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
【0056】
<処理液の製造>
以下に示す各々の処理液成分を混合し、これを0.8μmのテフロンフィルターにて濾過し、各々の処理液を製造した。
(1)処理液1
カチオン性シリカ(日産化学社製、ST-AK) 15.0重量部(固形分)
グリセリン 5.0重量部
界面活性剤(一般式(I)) 1.0重量部
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
【0057】
(2)処理液2
カチオン性シリカ(日産化学社製、ST-AK) 15.0重量部(固形分)
グリセリン 10.0重量部
界面活性剤(一般式(I)) 1.0重量部
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
【0058】
(3)処理液3
アルミナ(日産化学社製、アルミナゾル520) 15.0重量部(固形分)
グリセリン 10.0重量部
界面活性剤(一般式(I)) 1.0重量部
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
【0059】
(4)処理液4
カチオン性シリカ(日産化学社製、ST-AK) 15.0重量部(固形分)
グリセリン 10.0重量部
界面活性剤(一般式(I)) 1.0重量部
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0重量部
カチオンG50(三洋化成社製カチオン系界面活性剤) 4.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
【0060】
(5)処理液5
アニオン性シリカ(日産化学社製、ST-ZL) 34.6重量部(固形分)
グリセリン 10.0重量部
界面活性剤(一般式(I)) 1.0重量部
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
【0061】
<粘度測定>
これら製造した記録液、及び処理液の25℃における粘度を回転式R型粘度計(東機産業(株)社製、シリーズ500)を用いで測定した。
【0062】
(実施例)
黒色記録液カートリッジに黒色記録液を、イエロー記録液カートリッジにイエロー記録液を、処理液用カートリッジに処理液を充填して、図1に示すインクジェット記録装置に装着し、印字評価実験を行った。被記録材にはマイペーパー(普通紙、NBSリコー製)を用いて印字試験を行った。印字は、先に処理液が紙に付着し、その上から各色の記録液が付着する順番で行った。印字された記録物の画質評価を以下の内容で行った。
<画質評価>(1)フェザリング黒文字部分を観察し、ランク見本と比較することで画質評価を行った。
ランク5…滲み出しが全くない。
ランク4…滲み出しがわずかに有る。
ランク3…滲み出しがあるが、実用上問題なし。
ランク2…滲み出しがやや多い。
ランク1…滲み出しが多い。
(2)カラーブリード黒ベタとイエローベタとの境界部分を観察し、ランク見本と比較することで画質評価を行った。
ランク5…混色が全くない。
ランク4…混色がわずかに有る。
ランク3…混色があるが、実用上問題なし。
ランク2…混色がやや多い。
ランク1…混色が多い。
(3)画像濃度、裏抜け濃度黒ベタ部分の表面からの光学濃度と裏面からの光学濃度をそれぞれ測定し、画像濃度と裏抜け濃度を求めた。
(4)乾燥性印字直後に記録物に被記録材(マイペーパー、NBSリコー製)を一定圧力で押し当てて、黒ベタ部分のインク転移を観察した。
(5)耐水性記録物をイオン交換水に1分間浸漬した後取り出し、付着した水を紙タオルで吸い取り自然乾燥させた。浸漬前後の黒ベタ画像濃度を測定し、変化率を求め退色率とした。
【0063】
(実施例1及び参考例1〜5)
実施例1及び参考例1〜5において、表1に示す記録液及び処理液を用いた以外は実施例1と同様に印字試験を行い、記録物の画質評価を行った。
【0064】
(比較例1、2)
実施例1において、黒色記録液4、イエロー記録液4、処理液4を用いた代わりに、表1に示す記録液及び処理液を用いた以外は実施例1と同様に印字試験を行い、記録物の画質評価を行った。
【0065】
実施例1及び参考例1〜5及び比較例1、2で得られた記録物の画質評価結果を表1に示す。表1には、それぞれ用いた記録液及び処理液の25℃における粘度も併せて示した。
【表1】
【0066】
表1に示すように、記録液及び処理液のいずれか一方、又は双方の粘度が5mPa・sec以上であった実施例1及び参考例1〜5は、フェザリング、カラーブリードがいずれも実用上問題のないランク3.0以上であった。記録液が含有するアニオン性色材と、処理液が含有するカチオン性微粒子とによって形成される凝集物が、記録液と処理液との混合液の粘度によって流れ出すことなく保持され、フェザリング、カラーブリードが抑制されていることがわかる。また、画像濃度は1.73〜1.85といずれも高く、逆に裏抜け濃度は0.02〜0.05と低い値になっている。このことから、凝集物は被記録材の表面付近で石垣状に積み重なり、画像濃度を高めると共に、被記録材裏側への浸み出しが抑えられて、裏抜け濃度を低下させていることがわかる。更に、印字直後の記録物に被記録材を押し当ててもインクの転移が無いことから、記録液及び処理液に含まれるビヒクルの被記録材への浸透が速やかに進行し、記録画像の乾燥性が良好になっていることがわかる。加えて、記録物をイオン交換水に1分間浸漬した後の画像濃度の変化も1.6〜5.5%の低い退色率であり、アニオン色材とカチオン微粒子とが形成する凝集物によって、記録画像の耐水性が向上していることがわかる。
【0067】
一方、記録液にアニオン性色材を用い、処理液にカチオン性微粒子を用いたが、記録液と処理液の粘度がいずれも5mPa・sec未満であった比較例1では、フェザリング、カラーブリードとも、ランク2.0と低くなっており、画像濃度は1.65とやや低く、裏抜け濃度は0.08とやや高かった。また、記録画像の乾燥性、耐水性も劣るものであった。記録液と処理液との混合液の粘度が十分でなかったために、アニオン性色材、カチオン性微粒子の流れ出しが生じ、このような結果になったといえる。
また、記録液にアニオン性色材を用い、処理液にアニオン性微粒子を用いた比較例2では、記録液及び処理液の双方の粘度が5mPa・sec以上であったが、アニオン性色材とアニオン性微粒子とでは凝集物を形成し得ないので、いずれの画質評価も劣るという結果であった。
【0068】
【発明の効果】
以上の説明してきたように、本発明により、記録液にアニオン性色材を含有し、処理液にカチオン性微粒子を含有し、記録液及び処理液のいずれか一方、又は双方の25℃における粘度を5mPa・sec以上とすることで、フェザリング、カラーブリードを抑制し、また、高い画像濃度で裏抜けもない高い画像品質の記録画像を与えることができるインクセットを提供することができる。
また、本発明により、特に普通紙に印字した場合でも、フェザリング、カラーブリードを生じることなく、高い画像濃度で両面印字性にも優れ、記録画像の乾燥性も良好なインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することができる。
更には、上記インクジェット記録方法によって、耐水性、耐光性の向上した記録物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の記録液及び処理液を収納可能なカートリッジの外観斜視図である。
【図2】本発明の記録液及び処理液を収納可能なカートリッジの正断面図である。
【図3】本発明に係るインクジェット記録装置の構成の一例を示す図である。
【図4】記録ヘッドのノズル面の拡大図である。
【図5】記録ヘッドのノズル面の拡大図である。
【符号の説明】
1 インクジェット記録装置
18 記録ヘッド
19 キャリッジ
20 カートリッジ
21、22 ガイドシャフト
23 タイミングベルト
24 主走査モータ
31〜41 ノズル
Claims (16)
- アニオン性色材を含有する記録液と、カチオン性微粒子とカチオン性界面活性剤とを含有する処理液とからなり、
該記録液及び該処理液のいずれか一方、又は双方の25℃における粘度が5mPa・sec以上である
ことを特徴とするインクセット。 - 前記記録液と前記処理液とが接触した際に凝集物を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載のインクセット。 - 前記処理液に含有されるカチオン性微粒子は、カチオン性無機化合物である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のインクセット。 - 前記カチオン性無機化合物は、カチオン性シリカである
ことを特徴とする請求項3に記載のインクセット。 - 前記処理液は、ビヒクルに水溶性有機溶剤を含有する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のインクセット。 - 前記水溶性有機溶剤は、湿潤剤及び浸透剤のいずれか一方、又は双方である
ことを特徴とする請求項5に記載のインクセット。 - 前記処理液は、防腐防黴剤を含有する
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のインクセット。 - 前記アニオン性色材は、顔料である
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のインクセット。 - 前記記録液は、ビヒクルに水溶性有機溶剤を含有する
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のインクセット。 - 前記水溶性有機溶剤は、湿潤剤及び浸透剤のいずれか一方、又は双方である
ことを特徴とする請求項9に記載のインクセット。 - 前記記録液は、防腐防黴剤を含有する
ことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のインクセット。 - アニオン性色材を含有する記録液と、カチオン性微粒子とカチオン性界面活性剤とを含有する処理液とからなり、該記録液及び該処理液のいずれか一方、又は双方の25℃における粘度が5mPa・ sec 以上であるインクセットに用いられる記録液を収納してなる
ことを特徴とする記録液カートリッジ。 - アニオン性色材を含有する記録液と、カチオン性微粒子とカチオン性界面活性剤とを含有する処理液とからなり、該記録液及び該処理液のいずれか一方、又は双方の25℃における粘度が5mPa・ sec 以上であるインクセットに用いられる処理液を収納してなる
ことを特徴とする処理液カートリッジ。 - 処理液を被記録材に付着させる工程と、記録液を被記録材に付着させる工程とを有し、被記録材に画像を形成するインクジェット記録方法であって、前記記録液は、アニオン性 色材を含有し、前記処理液は、カチオン性微粒子とカチオン性界面活性剤とを含有し、前記記録液及び前記処理液のいずれか一方、又は双方の25℃における粘度が5mPa・ sec 以上である
ことを特徴とするインクジェット記録方法。 - 被記録材を搬送する搬送部と、処理液を被記録材に付着させる付着部と、記録液を被記録材に付着させる付着部とを有し、被記録材に画像を形成するインクジェット記録装置であって、前記記録液は、アニオン性色材を含有し、前記処理液は、カチオン性微粒子とカチオン性界面活性剤とを含有し、前記記録液及び前記処理液のいずれか一方、又は双方の25℃における粘度が5mPa・ sec 以上である
ことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 請求項14に記載のインクジェット記録方法により作製される
ことを特徴とするインクジェット記録物。
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