JP4053255B2 - 圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源 - Google Patents

圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、直流高電圧電源に係り、当該装置の高電圧発生回路に圧電トランスを利用して効率の改善と回路の簡素化を図ると同時に、磁場の中でも効率の低下を招くことなく動作する圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明は、現在、各国が協力して重さ2トンの測定器を地上40kmの高さに気球で飛ばして宇宙線を測定する研究(BESS)を行う中で、もう一段上の研究推進を達成するために提案したものである。このBESSでは、測定のために1.2テスラの強磁場と100本の増幅率の異なる光電子増倍管と、この増倍管の増幅率を一定化させるためのそれぞれに異なる数千ボルトの直流高圧とそれらの電源としてリチウム電池とそれらを総合しての測定装置とが必要とされていた。
【0003】
従来は、高圧電源部を強磁場から出来るだけ遠ざけた上に鉄でシールドされた電磁トランスを使用し、長い高圧ケーブルで個々の増倍管まで配線していた。すなわち、気球で飛ばすための軽量化という要望が満たされないできた。
【0004】
従来の直流高電圧電源は、高電圧を得るために電磁トランスを使用している。電磁トランスの一次側入力と二次側出力の電圧比は電磁トランスの巻線比によって決まる。出力される高周波交流の振幅は、入力された高周波交流の振幅の巻線比に比例して昇圧された電圧となる。直流高電圧電源では、巻線比の大きい高電圧トランスが使用される。
【0005】
直流高電圧電源を光電子増倍管に用いる場合、入力電源は外部から供給される直流電圧である。この直流電圧は、インバータにより高周波交流に変換され、高電圧トランスに入力される。インバータは高周波交流の振幅を制御する手段を備えている。そして、高電圧トランスの出力である高周波交流をコンバータにより一定の倍率で倍圧整流することにより、出力となる直流高電圧を得る。
【0006】
出力高電圧を安定化するために、出力高電圧は誤差増幅器を通してインバータに入力され、高周波交流の振幅にフィードバックされる。それにより、出力高電圧は分割抵抗により分割され、誤差増幅器によりリファレンス電圧と比較される。誤差増幅器の出力はインバータに入力され、高電圧トランスの入力される高周波交流の振幅を制御する。
【0007】
出力が短絡されると高周波交流の振幅を拡大して出力電圧を保つ方向にフィードバックが働く。高電圧出力の短絡に備えるために、出力電流を監視してあらかじめ設定された値以上の出力電流を禁止することが必要になる。電磁トランスを使用した高電圧電源では、出力電流を監視して短絡による過大電流から回路を保護する回路を備えている。
【0008】
直流を所望の振幅を持つ高周波交流に効率よく変換するドライバー回路は、インダクタンスにエネルギーを蓄える。インダクタンスLに等価的に抵抗rが接続されているとき、インダクタンスLから取り出せる電流は時定数L/rで減少する。抵抗rの両端に発生する電圧を維持するためには、インダクタンスに周期的に電流を注入することが必要である。つまり時定数と同じオーダーの時間間隔で電流を注入するスイッチングを行うことが必要である。
【0009】
ここで、インバータの高周波交流の電圧から出力高電圧への昇圧比をnとし、出力高電圧の負荷抵抗をRとする。等価抵抗rは、負荷抵抗Rを昇圧比nの電圧変換器を通してみた抵抗である。光電子増倍管に高電圧を供給する電源の場合、Rは10MΩのオーダーである。またnは100程度の大きさである。これからrは1kΩ付近にあることがわかる。スイッチング周波数すなわち高周波交流の周波数は回路の素子の性能によって制限される。等価抵抗rを小さくすることもスイッチング周波数を高くすることも容易ではない。このように負荷抵抗の大きい直流高電圧電源の場合、インダクタンスにエネルギーを蓄えることは原理的な困難がある。
【0010】
スイッチング周波数を100kHzと仮定すると、必要なインダクタンスは10mHのオーダーとなる。磁性体が飽和する強い磁場の中では、磁性体を磁心とするコイルを使用することができない。この大きさのインダクタンスを空芯コイルで実現すると、たとえばこれまでの光電子増倍管に高電圧を供給する電源に使用することはできない程度の体積が必要になる。高電圧トランスを空芯トランスで作ると、必要なインダクタンスを実現するためにコイルの巻線数が大きくなり、体積の増加を伴う。また、空芯トランスの場合、入力側と出力側の間の相互結合係数が低いため、効率的な電力変換を行うためには回路に工夫が必要である。
【0011】
空芯コイルあるいは空芯トランスはそれ自体が大きくなり、またこれらによる電力の変換効率の低下を避けるために複雑な回路が必要になる。このような直流高電圧電源をコンパクトに作るためには、さらに等価抵抗rを小さくすると共にスイッチング周波数を高くすることが必要である。このような理由で、空芯コイルあるいは空芯トランスを使った直流高電圧電源は、強い磁場中で動作する直流高電圧電源として適切とは言えない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
最近の大規模な高エネルギー物理の実験では、たとえば多数の光電子増倍管が使用される。これらの光電子増倍管の増幅率を一定に揃えるために、各々の増倍管には固有の高電圧が印加される。またこれらの増倍管は物理実験の要請から実験装置内部の磁場の中に置かれる。ところがこれまでの直流高電圧電源は、磁場によりコイルあるいはトランスの磁心が飽和するので磁場の中では動作させることができない。このため高電圧直流電源は実験装置外部の磁場のない場所に置かれ、長いケーブルを通じて実験装置内部の磁場の中に置かれた光電子増倍管に高電圧が供給される。この種の測定装置には大量のケーブルが使用される。これがケーブルの断線あるいはコネクターの接触不良等のトラブルの原因となっている。磁場中で動作する高圧電源があれば、これらのケーブルのほぼ半数を占める高圧配電ケーブルが不必要になり、光電子増倍管をより自由な配置で使用することが可能となる。この結果、実験の精度の向上を実現することができる。このように、高圧電源を実験装置内に組み込むことができれば画期的なことである。
【0013】
磁心の飽和を防ぐことにより、これまでの高電圧直流電源を磁場の中で使用することができる。コイルあるいはトランスの磁心の磁気遮蔽によりこれを実現することができる。しかし、磁気遮蔽は磁性体でコイルあるいはトランスを包み磁気を遮蔽するため体積の増加を伴う上に、磁性体に磁場による力が働くために適切とは言えない。また空芯コイルあるいは空芯トランスを使用した直流高圧電源も前述のように簡便な方法とは言えない。
【0014】
本発明は、上記問題点を除去し、安定した直流高電圧を供給する簡単な回路構成を導入し、超強磁場の中でも効率の良い動作を維持することができる圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源において、外部より供給される直流電源から高周波交流を発生させるドライバー回路と、このドライバー回路の出力で駆動される圧電トランスと、この圧電トランスの出力から直流の高電圧を発生させるコンバータ回路と、このコンバータ回路の出力する電圧を電圧分割抵抗回路を用いて変換することにより設定された出力高電圧からのズレを検出する誤差検出回路と、この誤差検出回路の出力に比例した周波数を持つパルス出力を発生させ、前記ドライバー回路を制御する周波数変調回路とを具備する高電圧直流電源であって原点の近傍に極を配置したゼロ点を含む伝達関数による出力電圧の搬送波の周波数への帰還により、前記圧電トランスの出力から直流の高電圧を発生させる前記コンバータ回路が、前記圧電トランスの出力と前記高電圧直流電源の負荷とのインピーダンスの不整合の調整を行い、前記圧電トランスの変換効率を改善することを特徴とする。
【0016】
〔2〕上記〔1〕記載の圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源において、前記ドライバー回路のインタグタンス素子に空芯コイルを使用することにより、超強磁場中でも電源の電力効率の低下を招くことなく動作させることを特徴とする。
【0017】
〔3〕上記〔1〕記載の圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源において、前記ドライバー回路に外部から供給される直流電源の電圧を可変にすることにより、出力高電圧の可変範囲を拡大することを特徴とする。
【0018】
〔4〕上記〔1〕記載の圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源において、負荷がある程度以上に重くなると、前記圧電トランスを駆動する動作周波数がその圧電トランスの共振周波数を越えて移動し、これに伴い出力高電圧を低下させる保護回路を有することを特徴とする。
【0019】
〔5〕上記〔〕記載の圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源において、前記保護回路が働き、前記圧電トランスを駆動する動作周波数が共振周波数を越えて移動し、出力電圧が低下した状態からの回復を、出力電圧を設定するリファレンス電圧を低下している出力電圧よりもさらに低く設定することにより動作周波数を初期化することを特徴とする。
【0020】
〕上記〔1〕記載の圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源において、前記ドライバー回路に供給される電圧と、出力電圧を設定するリファレンス電圧と、前記圧電トランスを駆動する動作周波数とに基づいて、出力電流を推定することを特徴とする。
【0021】
〕上記〔1〕記載の圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源において、前記圧電トランスによる遅れと整流とインピーダンスの整合を行う回路の遅れとを補償する2個の零点をループに附加することにより、広い範囲の負荷に対して出力高電圧を安定化することを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、通常の電磁トランスではなく、圧電トランスによる高電圧発生手段を採用することにより効率の向上を図り、しかも高電圧を安定化するために圧電トランスの共振特性の周波数依存性を利用することにより、回路の簡素化と部品点数の減少を図ることができる。
【0023】
なお、圧電トランスはあらかじめ分極された圧電セラミックが持つ圧電効果を利用したものであり、圧電セラミックに外力を加えて変形させれば電圧が発生し、逆に電圧を加えれば応力が発生し変形する。圧電トランスではこの効果を利用して、一次側で電気振動を一旦機械振動に変換して二次側に伝送し、二次側でこれを再び電気振動に戻すことにより、電気エネルギーを伝送する。
【0024】
圧電セラミックは誘電体であり、磁性体が使用されていないため電磁ノイズも出さないし、磁場中で動作させることができる。圧電トランスの特徴を電磁トランスと比較すると、圧電トランスは圧電セラミックの振動子に入力と出力の電極を配置した比較的簡単な構造を持つ。従来の電磁トランスが磁気を用いてエネルギーの伝送を行うのに対して、圧電トランスは機械的エネルギーにより伝送が行われるので、磁場の中でも動作する。
【0025】
圧電トランスの二次側はキャパシタンスであり、ここに機械的振動を通して電荷が注入されることにより電圧が発生する。機械的振動は負荷によるエネルギーの散逸のため次第に減衰する。減衰の時定数は負荷Rとともに大きくなる。出力が高電圧の場合、Rの値は一般に大きい。このため、機械的振動でエネルギーを蓄える圧電トランスは負荷抵抗が大きい直流高電圧電源に適している。
【0026】
本発明は、ドライバー回路、圧電トランス、コンバータ回路、誤差検出回路および周波数変調回路を含む高電圧直流電源であり、圧電トランスの出力と高電圧直流電源の負荷とのインピーダンスの不整合の調整を行い、圧電トランスの変換効率を改善するという特徴を有する直流高電圧電源を提供する。
【0027】
ドライバー回路は外部より供給される直流電源を、周波数変調回路の出力するパルス列と同一の周波数を持つ高周波交流に変換する手段を持ち、高周波交流を圧電トランスに供給する手段を持つ。圧電トランスは印加された高周波交流を高電圧の高周波交流に昇圧する。コンバータ回路は圧電トランスの出力を直流の高電圧に変換し、これを当該直流高電圧電源直流の出力として負荷に供給するとともに、誤差検出回路に入力する手段を持つ。誤差検出回路は、出力高電圧のリファレンス電圧によって設定された電圧からのズレを検出し、これを周波数変調回路に入力する手段を持つ。誤差検出回路は、入力に比例した周波数を持つパルス列を出力し、前記ドライバー回路を制御する手段を持つ。
【0028】
圧電トランスはその内部に共振回路を有しているため鋭い周波数特性を示す。圧電トランスの昇圧比が周波数に依存することを利用して、直流出力高電圧を安定化している。誤差検出回路は、直流出力高電圧を誤差検出回路内にあるリファレン電圧と比較することによりズレを検出し、周波数変調回路の出力であるパルス列の周波数を通して、圧電トランスを駆動する高周波交流の周波数をズレが少なくなるように変化させ、直流出力高電圧が一定に保たれるように制御する。
【0029】
圧電トランスの二次側のキャパシタンスをCd2(図3参照)、圧電トランスを駆動する高周波交流の周波数をfとすると、圧電トランスの負荷が抵抗である場合、圧電トランスに入力された電力のうち負荷の抵抗によって消費される電力の割合である効率は、抵抗が1/(2πf・Cd2)に等しいときに最大になる。この抵抗を最適抵抗と呼ぶ。注入された電荷で高い電圧を発生する圧電トランスの二次側のキャパシタンスは小さいので、最適抵抗は高い抵抗値となる。圧電トランスを駆動する高周波交流の周波数は近似的に圧電トランスの共振周波数に等しい。このため最適抵抗は、動作周波数の範囲で近似的に一定であると考えられる。
【0030】
コンバータ回路は、高周波交流電圧を一定の倍率で倍圧整流する手段を持つ。倍圧整流の倍率を変えると、圧電トランスの出力側より見た負荷のインピーダンスが変化する。コンバータ回路は、圧電トランスから見た負荷のインピーダンスが圧電トランスの最適抵抗に近似的に等しくなる倍率を備えることにより圧電トランスの電力変換効率を改善する。
【0031】
入力から圧電トランスを見るとキャパシタンスが見える。圧電トランスに流れ込む電流のうち、出力から高電圧として有効に取り出せるのは一部分であり、残りは1次側のキャパシタンスに蓄えられる。ドライバー回路はこのキャパシタンスに蓄えられた電荷を回収して繰り返し使用する手段を具備する。これにより、ドライバー回路は非常に高い効率で圧電トランスを駆動することができる。
【0032】
圧電トランスの1次側のキャパシタンスと共振回路を構成し、圧電トランスを共振周波数に近い周波数で駆動させるために必要なインダクタンスは実用的なサイズの空芯トランスで実現することができる。空芯コイルのインダクタンスは磁場の内でも変化しない。インダクタンスを空芯コイルで実装した直流高圧電源は磁場の内でも効率の低下を引き起こすことなく動作する。
【0033】
出力高電圧は、誤差検出回路に入力されるリファレンス電圧に比例して変化する。出力高電圧の可変範囲は、効率上の観点から前記ドライバー回路に外部から供給される直流電源の電圧によって限定される。ドライバー回路に外部から供給される直流電源の電圧を可変にすることにより、効率の低下を引き起こすことなく出力高電圧の可変範囲を拡大することができる。
【0034】
このように、本発明は、圧電トランスすなわち機械歪みが電圧発生という圧電現象による高電圧発生手段を採用すると同時に、部品点数を減らしながら安定出力を達成し、変換効率向上のため、回路上の工夫を盛り込むことによって上記要望を達成するに至った。
【0035】
更に、本発明は、圧電トランスの共振特性を活用し負荷変動に対応した保護回路機能と原点復帰機能とを持たせるようにした。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0037】
図1は本発明の実施例を示す圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源のブロック図、図2は本発明の具体例を示す安定化直流高電圧電源の全体構成図である。
【0038】
この図においては、1はドライバー回路(インバータ回路)であり、このドライバー回路1に入力された定電圧直流は、周波数変調回路6の出力する矩形波と同じ周波数を持つ高周波交流に変換され、圧電トランス2に印加される。この圧電トランス2は印加された高周波交流を高電圧に昇圧して出力する。この高電圧の高周波交流である圧電トランス2の出力はコンバータ回路3に入力され昇圧と整流が行われ、直流高電圧が出力される。コンバータ回路3の出力である直流高電圧は、当該直流高電圧電源の出力高電圧となり、負荷4に印加されると同時に、この出力高電圧は誤差検出回路5に入力される。この誤差検出回路5は、出力高電圧をリファレンス電圧と比較し、リファレンス電圧からの誤差を電圧として出力する。誤差検出回路5より出力された誤差電圧は周波数変調回路6に入力される。周波数変調回路6の出力は矩形波であり、この矩形波の周波数が入力された誤差電圧によって決まる。なお、7は補助電源である。
【0039】
以下、図2を参照しながら、この安定化直流高電圧電源の全体構成の一例について説明する。
【0040】
この図において、ドライバー回路(インバータ回路)1は、2個のインダクタンス素子L1 ,L1 (50μH×2)、2個のMOSFET Q1 ,Q1 (2SK2796L)、抵抗R1 、MOSFET駆動用集積回路11(TPS2811P)からなる。圧電トランス2は、圧電体(セラミック)12、圧電トランスの入力電極13、その出力電極14からなる。コンバータ回路3は3段コックロフト・ウォルトン回路からなり、コンデンサC1 (3nF×6)、出力コンデンサC2 (100nF×1)、ダイオードD1 (ESJA98×6)からなる。
【0041】
また、誤差検出回路5は電圧分割抵抗回路15(抵抗R2 :100MΩ、抵抗R3 :200kΩ)と、誤差増幅器16(2段の差動増幅器を含む)とからなり、その誤差増幅器16(2段の差動増幅器を含む)は、差動増幅回路17(INA122P)、抵抗R4 (50kΩ)、抵抗R5 (1kΩ)、コンデンサC3 ,C4 (1nF)、差動(反転)増幅器(OPA234P)18、コンデンサC5 (100nF)、抵抗R6 (100kΩ)、抵抗R7 (1kΩ)、定電圧ダイオード(LM385−2.5)19からなる。
【0042】
補助電源7は、抵抗R8 (10kΩ)、定電圧ダイオード20(LM385−2.5)、抵抗R9 (29kΩ)、増幅器(OPA234P)21、抵抗R10(48kΩ)、コンデンサC6 (0.1nF)からなる。
【0043】
更に、周波数変調回路6は、電圧制御発振器22とフリップフロップ用集積回路23と出力インタフェース回路24からなり、電圧制御発振器22は、タイマ用集積回路(μPD5555)と可変抵抗R11、抵抗R12(1.5kΩ)、抵抗R13(3kΩ)、コンデンサC7 (180pF)からなる。
【0044】
また、この電圧制御発振器22に接続されるフリップフロップ用集積回路23(ICOX)と、この集積回路23の出力端子にそれぞれ接続される、抵抗R14(200Ω)、ダイオードD2 、コンデンサC8 (200pF)からなり、2つのMOSFETが同時にオフとならないようにタイミングを調整する出力インタフェース回路24が設けられる。
【0045】
以下、この安定化直流高電圧電源の各部の動作について詳細に説明する。
【0046】
図3に圧電トランス2の等価回路が示されるとともに、ここで述べる直流高圧電源に使用されている圧電トランスのパラメータを示す。等価回路から知られるように、圧電トランスは内部に共振回路を含む。このため圧電トランスは通常の電磁トランスと異なり、鋭い周波数特性や、大きな負荷依存性を示す。圧電トランスの出力に負荷抵抗を接続し、入力電圧と出力電圧の比である昇圧比を考える。
【0047】
図4には、ぞれぞれの負荷抵抗に対して昇圧比を周波数の関数として計算したグラフが示されている。計算には図のパラメータが使用されている。このグラフから圧電トランスは共振周波数の付近で大きな昇圧比を示すことが分かる。本発明ではこのことを利用して高電圧を発生させている。また、本発明では昇圧比が周波数に依存することを利用して、出力高電圧を圧電トランスを駆動する周波数にフィードバックすることにより、出力高電圧を安定化している。
【0048】
使用している圧電トランスの効率の観点から見た整合負荷は100kΩ程度である。ところが直流高電圧電源の負荷は10MΩから20MΩの抵抗である。この負荷を直接圧電トランスに接続した場合の電力効率は10〜30%と予想される。コンバータ回路3は、負荷を圧電トランスの整合負荷に近似的に変換することにより、負荷の不整合を解消し電力効率の向上を図る。
【0049】
次に、コンバータ回路3について説明する。
【0050】
図1及び図2に示すように、圧電トランス2の出力はコンバータ回路3の入力に接続され、また、コンバータ回路3の出力が直流高電圧電源の出力であり、ここに電源の負荷4が接続される。コンバータ回路3は、3段コックロフト・ウォルトン回路である。コックロフト・ウォルトン回路は、コンデンサとダイオードをカスケードに接続した昇圧整流回路である。
【0051】
また、圧電トランス2にコックロフト・ウォルトン回路が接続されている場合、圧電トランス2の効率は使用されているダイオードの接合部容量に依存する。効率良く高電圧を発生させるには、高い耐圧を備え、接合部容量の小さいしかも高速のダイオードが必要とされる。ここでは、富士電機のEPSA98に代表されるHDTV用に開発された高耐圧超高速ダイオードが使用されている。
【0052】
コンバータ回路3である昇圧整流回路により、圧電トランス2からみた負荷の抵抗の値は、近似的に圧電トランス2の整合負荷に変換される。例えば20MΩの負荷は、圧電トランス2の出力から見ると、200kΩ程度と計算される。
【0053】
次に、周波数変調回路6について説明する。
【0054】
周波数変調回路6は、電圧制御発振器22と分周器(フリップフロップ回路)23とインタフェース回路24とから構成される。図2に示したように、この回路ではタイマーとして用いられる集積回路ICOX(μPD5555)を電圧制御発振器22として使用している。図2で端子Aに入力される電圧によって決まる周波数をもつ矩形波が端子Bより出力される。この矩形波の周波数は180kHzから260kHzである。図2に分周器の回路図を示す。CLK端子に入力された矩形波は分周器(フリップフロップ用集積回路)23により1/2に分周され、出力端子より出力される。電圧制御発振器22の出力である矩形波が分周器23の入力となり、周波数が1/2に分周され、デューティ比50%の矩形波が分周器23より出力される。分周器23より出力された矩形波が周波数変調回路6の出力であり、出力インタフェース回路24を介してドライバー回路1に入力される。
【0055】
次に、ドライバー回路(インバータ回路)1について説明する。
【0056】
圧電トランス2の入力端子から圧電トランス2を見るとキャパシタンスが見える。ドライバー回路1は、圧電トランス2を効率的に駆動するために、このキャパシタンスをインダクタンスと共振させることにより、近似的なサイン波を作り出す。また、ドライバー回路1は、図2に示すように、2個のインダクタンスL1 、L1 と2個のトランジスタQ1 ,Q1 とからなる共振回路と、MOSFET駆動用集積回路11(ICOY)から構成される。
【0057】
また、インダクタンスL1 ,L1 には空芯コイルが使われている。トランジスタQ1 ,Q1 はMOSFETである。周波数変調回路6の出力はドライバー回路1の端子に入力される。ドライバー回路1は、2組のMOSFETを矩形波に同期して交互にオン・オフする。インダクタンスL1 ,L1 の値は、このインダクタンスL1 ,L1 と圧電トランス2のキャパシタンスとによって決まる共振周波数が圧電トランス2の共振周波数とほぼ等しくなるように決められている。この結果、MOSFETのオン・オフの遷移はMOSFETに印加されている電圧がほぼ0Vのときに行われる、いわゆるゼロボルトスイッチングが実現される。
【0058】
次に、誤差検出回路5について説明する。
【0059】
誤差検出回路5は、図2に示すように、電圧分圧抵抗回路15に接続される、バーブラウン社のインスツルメンテーションアンプ(INA122)に代表される差動増幅器(集積回路)17(IC01)と、同社のオペアンプ(OPA234)に代表される差動増幅器(集積回路)18(IC02)とを使って構成される。IC01が、分割抵抗により分割され端子Yに入力された出力高電圧と、出力高電圧を設定するために外部より端子Xに供給されるリファレンス電圧を比較し、この電圧の差に端子Zに入力された基準動作電圧を加えて出力する。IC02は、基準動作電圧を接地電位とした反転増幅器であり、フィードバックブランチR4 、R5 、R6 、R7 、C3 ,C4 ,C5 によって決まる位相補償をIC01の出力に行い、これを端子Wに出力する。この出力が、基準動作電圧から限られた範囲の電圧に限定されるように、定電圧ダイオード19によりクランプされている。誤差検出回路5の出力が周波数変調回路6の入力となる。基準動作電圧は、周波数変調回路6の出力周波数が90kHzから130kHzの範囲にあるように選ばれている。
【0060】
次に、補助電源7について説明する。
【0061】
補助電源7は、図2に示すように、誤差検出回路5に基準動作電圧を供給するための安定化電源であり、基準動作電圧となる直流低電圧を得ている。
【0062】
なお、本発明によれば、CERN、スーパーカミオカンデ等1基当たり1万本を越える光電子倍増管使用の設備等宇宙線計測の各用途に応用可能であり、一方、磁気ノイズを嫌う各種計測用民生機器への応用も可能である。
【0063】
また、本発明は、以下に示すような民生用の機器にも適用可能である。
【0064】
(1)医療用機器(例えば、エレクトロン・ポジトロン トモグラフィー)には多数の光電子増倍管が組み込まれているが、この光電子増倍管へ給電する直流高電圧電源に用いることができる。
【0065】
(2)X線トモグラフィーではX線を検出するためにX線蛍光倍管あるいはイメージングプレートが用いられるが、これらに給電する直流高電圧電源に用いることができる。
【0066】
(3)複写機の感光ドラムにトナーを付着させるために直流高電圧が必要とされるが、そのための直流高電圧電源として用いることができる。
【0067】
(4)また、小電力の高圧電流電源が手軽に利用できるので、音を忠実に録音する際に使用されるコンデンサマイクロホンの電源に本発明の直流高電圧電源を使用することにより、ダイナミックレンジを広げることができる。
【0068】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0069】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0070】
(A)圧電トランスの出力から直流の高電圧を発生させるコンバータ回路が、圧電トランスの出力と高電圧直流電源の負荷とのインピーダンスの不整合の調整を行い、圧電トランスの変換効率を改善することができる。
【0071】
(B)ドライバー回路のインダクタンス素子に空芯コイルを使用することにより、超強磁場中でも電源の電力効率の低下を招くことなく動作させることができる。
【0072】
(C)ドライバー回路に外部から供給される直流電源の電圧を可変にすることにより、出力高電圧の可変範囲を拡大することができる。
【0073】
(D)負荷がある程度以上に重くなると、圧電トランスを駆動する動作周波数が圧電トランスの共振周波数を越えて移動し、これに伴い出力高電圧を低下させる保護機能を有する。
【0074】
(E)上記(D)における保護機能が働き、圧電トランスを駆動する動作周波数が共振周波数を越えて移動し、出力電圧が低下した状態からの回復を、出力電圧を設定するリファレンス電圧を低下している出力電圧よりもさらに低く設定することにより動作周波数を初期化することができる。
【0075】
(F)ドライバー回路に供給される電圧と、出力電圧を設定するリファレンス電圧と、前記圧電トランスを駆動する動作周波数とに基づいて、出力電流を推定することができる。
【0076】
(G)圧電トランスによる遅れと整流とインピーダンスの整合を行う回路の遅れとを補償する2個の零点を帰還ループに附加することにより、広い範囲の負荷に対して出力高電圧を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示す圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源のブロック図である。
【図2】 本発明の具体例を示す安定化直流高電圧電源の全体構成図である。
【図3】 本発明の具体例を示す圧電トランスの等価回路図である。
【図4】 本発明の具体例を示す圧電トランスの共振特性を示す図である。
【符号の説明】
1 ドライバー回路(インバータ回路)
2 圧電トランス
3 コンバータ回路
4 負荷
5 誤差検出回路
6 周波数変調回路
7 補助電源
11 MOSFET駆動用集積回路
12 圧電体(セラミック)
13 圧電トランスの入力電極
14 圧電トランスの出力電極
15 電圧分割抵抗回路
16 誤差増幅器
17 差動増幅回路
18 差動(反転)増幅器
19,20 定電圧ダイオード
21 増幅器
22 電圧制御発振器
23 フリップフロップ用集積回路
24 出力インタフェース回路

Claims (7)

  1. 外部より供給される直流電源から高周波交流を発生させるドライバー回路と、該ドライバー回路の出力で駆動される圧電トランスと、該圧電トランスの出力から直流の高電圧を発生させるコンバータ回路と、該コンバータ回路の出力する電圧を電圧分割抵抗回路を用いて変換することにより設定された出力高電圧からのズレを検出する誤差検出回路と、該誤差検出回路の出力に比例した周波数を持つパルス出力を発生させ、前記ドライバー回路を制御する周波数変調回路とを具備する高電圧直流電源であって、原点の近傍に極を配置したゼロ点を含む伝達関数による出力電圧の搬送波の周波数への帰還により、前記圧電トランスの出力から直流の高電圧を発生させる前記コンバータ回路が、前記圧電トランスの出力と前記高電圧直流電源の負荷とのインピーダンスの不整合の調整を行い、前記圧電トランスの変換効率を改善することを特徴とする圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源。
  2. 請求項1記載の圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源において、前記ドライバー回路のインダクタンス素子に空芯コイルを使用することにより、超強磁場中でも電源の電力効率の低下を招くことなく動作させることを特徴とする圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源。
  3. 請求項1記載の圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源において、前記ドライバー回路に外部から供給される直流電源の電圧を可変にすることにより、出力高電圧の可変範囲を拡大することを特徴とする圧電トランスを用いた安定直流高電圧電源。
  4. 請求項1記載の圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源において、負荷がある程度以上に重くなると、前記圧電トランスを駆動する動作周波数が該圧電トランスの共振周波数を越えて移動し、これに伴い出力高電圧を低下させる保護回路を有することを特徴とする圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源。
  5. 請求項記載の圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源において、前記保護回路が働き、前記圧電トランスを駆動する動作周波数が共振周波数を越えて移動し、出力電圧が低下した状態からの回復を、出力電圧を設定するリファレンス電圧を低下している出力電圧よりもさらに低く設定することにより動作周波数を初期化することを特徴とする圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源。
  6. 請求項1記載の圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源において、前記ドライバー回路に供給される電圧と、出力電圧を設定するリファレンス電圧と、前記圧電トランスを駆動する動作周波数とに基づいて、出力電流を推定することを特徴とする圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源。
  7. 請求項1記載の圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源において、前記圧電トランスによる遅れと整流とインピーダンスの整合を行う回路の遅れとを補償する2個の零点をループに附加することにより、広い範囲の負荷に対して出力高電圧を安定化することを特徴とする圧電トランスを用いた安定化直流高電圧電源。
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