JP4053169B2 - 止水材および止水工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、躯体等に埋設された管路内に電気ケーブルなどの線状体が挿通し、この管路に漏水が生じている構築物、例えば地下洞道、マンホールなどに設けられた管路の管路口を止水するために用いられる止水材および止水工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9は、地下洞道やマンホールなどの壁となる躯体に、電気ケーブルが挿通した構造を示すものである。図中符号1はコンクリートなどからなる躯体、符号2は躯体1に埋設されたケーブル挿通用の管路、符号3はこの管路に挿通した電気ケーブルである。電気ケーブル3は、複数本の単ケーブル3aを撚り合わせた多条ケーブルである。
上記管路2の管路口2aを止水し、管路内部の水が管路口2aから流出するのを防ぐためには、通常次のような方法が用いられている。
まず、ケーブル3を、止水用の板状の内側ゴムパッキン6の挿通孔6aに通し、ケーブル3と内側ゴムパッキン6との隙間に、ブチルゴムなどからなるコーキング材5を充填してこの隙間を塞ぐ。
【0003】
次に、内側ゴムパッキン6の手前側のケーブル3に、挿通孔8aを有する外側ゴムパッキン8、および挿通孔9aを有する金属板9を通した後、ケーブル3と外側ゴムパッキン8との隙間をコーキング材5で塞ぐ。
またコーキング材5を単ケーブル3a間の隙間に充填しこの隙間を塞ぐ。
次に、この状態のケーブル3を、内側ゴムパッキン6が管路2内に入るように管路2内に押し込み、金属板9を、管路2の管路口2aに設けられた筒状の防水治具4に、外側ゴムパッキン8を介してネジ止め等により止め付ける。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の止水工法では、コーキング材5の充填が不十分となりやすく、また長時間が経過すると、コーキング材5が劣化し収縮することなどによりコーキング材5とケーブル3との間に隙間ができやすく、その結果、漏水が生じることがあった。
また、通電による発熱や気温変化等によるケーブルの熱膨張等を原因として、ケーブル3の形状変化、管路2に対するケーブル3の長さ方向移動、単ケーブル3a同士の相対位置の変化等が生じた場合には、コーキング材5とケーブル3との間に隙間ができ、この隙間からの漏水が発生することがあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、高い止水性を長期間にわたって維持することができる止水材および止水工法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、電気ケーブルなどの複数の単線条体を集合した多条線条体が挿通した管路の管路口を、該多条線条体を挿通する挿通孔が設けられた第1および第2の多孔質体を用いて止水する工法であって、第1および第2の多孔質体のうちいずれか一方として、管路内壁に全周にわたって当接する本体と、管路内壁に周方向の一部のみ当接しかつ多条線条体が露出するように形成されたスペーサ部を備えたものを用い、この多孔質体のスペーサ部を他方の多孔質体側に向けた状態で、これら第1および第2の多孔質体を管路内に押し入れ、これら多孔質体間のスペースに、親水性重合硬化性液状止水剤を、液面高さが単線条体間の隙間の高さ以上となるまで充填し、かつ前記多孔質体に含浸させた後、この止水剤を硬化させる方法を採る。
また、本発明の止水材は、前記線条体を挿通する挿通孔が設けられた第1および第2の多孔質体を備え、これら多孔質体のうちいずれか一方が、管路内壁に全周にわたって当接する本体と、管路内壁に周方向の一部のみ当接しかつ多条線条体が露出するように形成されたスペーサ部を備えたものとされ、この多孔質体のスペーサ部が他の多孔質体側に向けられた状態で、これら第1および第2の多孔質体が管路内に配置され、これら多孔質体間のスペースに、親水性重合硬化性液状止水剤が、単線条体間の隙間の高さ以上となるまで充填され、かつ前記多孔質体に含浸していることを特徴とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
図1ないし図3は、止水材の第1の実施形態である止水材10を示すものである。
図1には、地下洞道やマンホールなどの壁となる躯体1に形成された管路2に、複数の単線条体である単ケーブル3aを撚り合わせて集合させた多条線条体である多条ケーブル3が挿通し、この管路2の管路口2aが上記止水材10によって止水された構造が示されている。
【0007】
止水材10は、第1および第2の多孔質体である円柱体11a、11bが、管路2内に、管路軸方向に互いに離間して配置され、これら円柱体11a、11b間のスペース17に、親水性重合硬化性液状止水剤Sが充填されたものである。第1の円柱体11aは管路2の管路口2a付近に配置され、第2の円柱体11bは、第1の円柱体11aよりも管路2の奥側に配置されている。
【0008】
円柱体11a、11bの中心付近には、多条ケーブル3を挿通する挿通孔12が設けられている。
挿通孔12の断面形状は、単ケーブル3aの本数分(本実施形態の場合は3つ)の円が円柱体中心部で融合し複数の円弧で周を形成したものとされている。これら円弧をなす部分をそれぞれ単ケーブル挿通部12aと呼ぶ。
【0009】
挿通孔12は、円柱体軸方向に沿って形成されたものであってもよく、多条ケーブル3のねじれにあわせて螺旋状になっていてもよい。
単ケーブル挿通部12aの外径Bは、この挿通部12aに通す単ケーブル3aの外径よりも3mm程度小さく設計するのが好ましい。これは、このようにすることで、止水材10を管路に設置した際に、円柱体11a、11bの弾性により円柱体11a、11bとケーブル3aが互いに隙間なく密に接することができるようになるためである。
【0010】
円柱体11a、11bには、円柱体11a、11bをケーブル3に装着する作業を容易にするため、挿通孔12から円柱体外周に至る切り込み13を円柱体軸方向に形成するのが好ましい。
切り込み13を設けることによって装着作業が容易となるのは、装着作業時に、円柱体11a、11bを切り込み13から押し広げることにより生じた隙間を通して多条ケーブル3を挿通孔12内に位置させる方法を採ることができるためである。
【0011】
この切り込み13は、1以上の折曲部14を有するものとするのが好ましい。この折曲部14はクサビ型に形成するのが好ましい。
折曲部14は、切り込み13における端面同士の接触面積を大きくし、止水時に水が切り込み13を伝わって流れるのを防ぎ、止水性を向上させるためのものである。
【0012】
管路2の管路口2a側(手前側)に位置する第1の円柱体11aの上部には、管路内部側から外部側に向けて形成された注入孔15およびガス抜き孔16が設けられている。
注入孔15は、後述する止水剤を管路2内部に注入するためのもので、上記挿通孔12よりも円柱体周縁側に近い位置に設けられている。
注入孔15は、液状止水剤の注入作業時において注入した止水剤が外部側に流出するのを防ぐため、水平方向に沿うように、または管路外部側から内部側にかけて徐々に下降するように傾斜させて形成するのが好ましい。
また、ガス抜き孔16は、上記止水剤注入時に管路内のガスを外部に逃がすためのもので、上記注入孔15よりも円柱体周縁側に近い位置に形成されている。
【0013】
円柱体11a、11bは、外径Aが管路口2aの内径よりも若干大きくなるように設計するのが望ましい。この外径Aは、管路口2aの内径よりも1〜3mm程度、さらに好ましくは約3mm程度大きく形成するのが好ましい。
円柱体11a、11bの外径を管路口2a内径より大きく設計するのが好ましいとしたのは、これによって、円柱体11a、11bの弾性により円柱体11a、11bが管路口2a内壁部に密に接することができ、止水性を高めることができるためである。このように円柱体11a、11bの外径を大きく形成したとしても、円柱体11はある程度の伸縮性を有するため管路内への挿入は可能である。
また、円柱体11a、11bの長さLは、止水効果の面から、30〜100mm程度に設定するのが望ましい。
【0014】
第1の円柱体11aと第2の円柱体11bの間隔は、5〜10mmとするのが好ましい。
【0015】
円柱体11a、11bを構成する材料としては、多孔質材が用いられる。多孔質材としては、機械強度(圧縮強度、引張強度など)に優れ、伸縮性、圧縮弾性を有し、耐候性に優れ、しかも親水性重合硬化性液状止水剤が容易に浸透するものが好ましく、例えば連続気泡構造の発泡体、比較的硬質の繊維が絡み合ってできた繊維塊等が好適に用いられる。
【0016】
具体例としては、ウレタン発泡体、スチールウール等を挙げることができ、なかでも特に、セル膜がないウレタン発泡体を用いるのが好ましい。
この多孔質材の特性としては、圧縮強度(JIS K6401準拠)が5kg/cm2以上、引張強度(JIS K6301準拠)が2kg/cm2以上、伸度(JIS K6301準拠)が50%以上のものを用いることが望ましい。これは、これら圧縮強度、引張強度、伸度が上記範囲内にあると、多条ケーブル3の形状変化、管路2に対する移動、単ケーブル3a同士の相対位置の変化等が起きた場合でも確実に止水性を維持できるためである。
【0017】
上記多孔質材からなる円柱体には、上記親水性重合硬化型液状止水剤が含浸されている。
親水性重合硬化型液状止水剤は重合硬化型、即ち1種類以上のモノマーを含み、未硬化状態においては可塑性に優れ粘度が低く流動性を有し、モノマーの重合反応にともなって硬化するものが用いられる。
また、この止水剤は、硬化した状態において水に対し不溶であり、かつ十分な伸縮性を有し、水密性、即ち、吸水することで膨潤する性質を有し、しかも耐薬品性、耐バクテリア性、耐ヒートサイクル(−70〜100℃)性、および耐酸、アルカリ性に優れたものであることが望ましい。
【0018】
このような親水性重合硬化型液状止水剤の例としては、ビニルモノマーと架橋性モノマーに、重合触媒を水と共に添加したものを挙げることができる。
上記ビニルモノマーとしては親水性ビニルモノマーが好ましく、親水性ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸およびその金属塩、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸及びその金属塩などを例示でき、これらの中でも特に(メタ)アクリル酸金属塩が好ましい。(メタ)アクリル酸金属塩としては、例えば(メタ)アクリル酸マグネシウム塩を用いることができる。
【0019】
上記架橋性モノマーとしては、重合触媒および水の存在下で上記ビニルモノマーと混合することにより一定の硬化時間で重合し、含水ゲル状態となって硬化する性質を有するものが用いられ、多官能性モノマー、特に多官能性(メタ)アクリレートが好ましく、このような(メタ)アクリレートの中でも比較的高い親水性を示すものとして1つ以上のアルキレングリコールからなる主鎖の両末端に(メタ)アクリロイルオキシ基がついたものを挙げることができる。
このような多官能性モノマーの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0020】
上記重合触媒としては、レドックス系触媒を用いるのが好ましい。レドックス系触媒としては、例えば酸化剤成分として過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどを含み、還元剤成分としてチオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、亜硫酸ナトリウム、トリエタノールアミンなどを含むものなどが挙げられる。
また、この重合触媒の添加量は、通常、上記2種のモノマー100重量部に対して0.1〜100重量部とされる。
【0021】
上記親水性重合硬化性液状止水剤の具体的配合例としては、ビニルモノマー8〜16重量%、多官能性モノマー12〜24重量%、水50〜70重量%、レドックス触媒の中のアミン成分10重量%からなるA剤と、エチレングリコールと水の等重量混合物98〜99.5重量%と過酸化物0.5〜2重量%からなるB剤を使用直前に混合したもの等を挙げることができる。
親水性重合硬化性液状止水剤を上記のような組成にすることにより、その硬化物は水と接触すると吸水して膨張する性質を有するものとなる。
【0022】
また、この重合硬化性液状止水剤には微粒子セメントを含有させてもよい。
上記微粒子セメントは、止水部分に耐圧縮性等の機械強度を付与するためのもので、水和することにより硬化する性質のものが用いられる。
この微粒子セメントとしては、ブレーン値が12000〜13000cm2/gであるものを用いるのが好ましい。微粒子セメントとして好適な市販品としては、三菱マテリアル(株)社製三菱ファインハードを例示することができる。
ブレーン値が12000cm2/g未満であると、水和反応速度が低くなり硬化までに長時間を要し、しかも親水性止水剤と混合する際に均一混合が難しく、混合物中微粒子セメント濃度の偏りが生じ止水部分の機械強度が低下するおそれがあるため好ましくない。またブレーン値が13000cm2/gを越えると、セメント粒子の沈殿により混合物が不均一化しやすくなるため好ましくない。
微粒子セメントの配合量は、止水剤100重量部に対して好ましくは2〜10重量部、さらに好ましくは4〜6重量部とするのが望ましい。
【0023】
止水剤の成分組成は、後述する注入作業時に、未硬化状態の止水剤が単ケーブル3a間の隙間3b等を伝って管路奥側または手前側に多量に流出する前に流動性を失うように設定するのが好ましい。この成分組成は、例えば、調製後、10秒〜1分程度でゲル化して流動性を失うように定めるのが好ましい。
【0024】
次に、上記止水材10を用いる場合を例として、止水工法の第1の実施形態を説明する。
円柱体11a、11bを、多条ケーブル3の所定の位置に、多条ケーブル3を挿通孔12内に位置させて装着し、管路2内に押し込む。
この際、第2の円柱体11bを管路2の奥側に位置させ、第1の円柱体11aを手前側に位置させるとともに、第1の円柱体11aと第2の円柱体11bを、互いに所定距離、好ましくは5〜10mm離間させる。
【0025】
また、第1の円柱体11aを管路2内に配置するにあたっては、後述する止水剤注入作業時において止水剤が外部に漏出するのを防ぐため、注入孔15、ガス抜き孔16が多条ケーブル3よりも上方に位置するようにする。
円柱体11a、11bは伸縮性を有する多孔質材からなるものであるため、円柱体11a、11bの外径を管路2の内径より大きく形成した場合でも、円柱体11a、11bを圧縮させて無理バメにより管路2内に押し込むことができる。
【0026】
本実施形態の止水工法では、上記親水性重合硬化性液状止水剤を、第1の円柱体11aに形成された注入孔15を通して第1の円柱体11aと第2の円柱体11bの間のスペース17に注入する。
上記止水剤を注入する際には、止水剤の各成分のうち少なくとも一部を他成分から分離して重合反応が進行しないようにしておき、これらを使用直前に混合し、止水剤が未だ重合反応が進行していない未硬化状態にあるうちに注入を行うようにする。
また微粒子セメントを止水剤に含有させて使用する場合には、微粒子セメントを止水剤に添加、混合し、混合物を、未硬化状態、すなわち親水性止水剤の重合反応、および微粒子セメントの水和反応が未だ十分に進行しておらず、十分な流動性を有する状態にあるうちに注入を行う。
【0027】
止水剤の注入量は、スペース17内において止水剤の液面高さが単ケーブル3a間の隙間3bの高さC以上となる量に設定される。
これによって、スペース17に注入された止水剤は、スペース17内の上記隙間3b内に流入し、この隙間3bに充填される。
【0028】
止水剤の注入は、スペース17において止水剤の液面がガス抜き孔16に達し、止水剤がこのガス抜き孔16から外部に流出するまで行うこともできる。ガス抜き孔16から止水剤が流出した後には、更なる止水剤の注入を行う必要はない。
【0029】
注入された止水剤は円柱体11a、11bの全体に浸透し管路2内壁に達し、内壁に対し全周にわたり隙間無く接した状態となる。また止水剤は挿通孔12内において多条ケーブル3に隙間無く接した状態となる。この状態で、止水剤は上記重合反応または微粒子セメントの水和反応により硬化する。
最後に、注入孔15、ガス抜き孔16を、止水剤を含浸させた多孔質材などからなる閉止栓で塞ぐ。
なお、止水剤の注入を、この止水剤がガス抜き孔16から外部に流出するまで行い、止水剤によって注入孔15、ガス抜き孔16が閉止された状態とする場合には、上記閉止栓を用いる必要はない。
以上の操作により、管路2は止水材10によってシールされた状態となる。
【0030】
上記止水工法にあっては、複数の単ケーブル3aからなる多条ケーブル3を挿通する挿通孔12が設けられた第1および第2の円柱体11a、11bを、管路軸方向に互いに離間させて管路2内に配置し、これら円柱体11a、11bの間のスペース17に、親水性重合硬化性液状止水剤を、単ケーブル3a間の隙間3bの高さC以上となるまで充填した後、この止水剤を硬化させるので、止水剤を隙間3b内に流入させ、隙間3bを完全に塞いだ状態でこの止水剤を硬化させることができる。
このため、管路2内に生じた漏水が隙間3bを伝って外部に流出するのを確実に防ぐことができる。
【0031】
また、硬化後も伸縮性を示す親水性重合硬化性液状止水剤を用いるので、通電による発熱や気温変化などによる熱膨張などにより多条ケーブル3の形状変化、管路2に対する移動、単ケーブル3a同士の相対位置の変化等が起きた場合でも、スペース17内において止水剤がこの変化に応じて変形し多条ケーブル3に対し隙間無く接した状態を維持する。
このため、高い止水性を長期にわたって維持することが可能となる。
【0032】
また、円柱体11a、11bを構成する多孔質材が充分な伸縮性、圧縮弾性を有するものであり、止水剤が伸縮性を有するものであるため、円柱体11a、11bおよびこれに含浸した止水剤は、円柱体11a、11bの外周面において管路2の内壁に隙間なく接し、かつ挿通孔12内において多条ケーブル3に隙間無く接した状態となる。
また上記多条ケーブル3の形状変化、管路2に対する移動、単ケーブル3a同士の相対位置の変化等が起きた場合でも、円柱体11a、11bおよび止水剤はこの変化に応じて変形し多条ケーブル3に対し隙間無く接した状態を維持する。このため、いっそう長期にわたって高い止水性を維持することが可能となる。
【0033】
また、止水剤は吸水により膨潤する性質を有するため、止水材10は、漏水と接した場合に、これを吸収、膨潤し、管路2内壁面および多条ケーブル3にいっそう密に接することとなり、止水性が高められる。
【0034】
更には、多孔質材が圧縮強度に優れた材料からなるものであるため、止水材10の封鎖性がより高まるとともに、耐圧縮性等の特性に優れたものとなる。
従って、地震などによってこの止水材10に大きな力が加わった場合においても破断することがなく、高い止水性を維持することができる。
特に、水和により硬化し一種の充填材として機能する微粒子セメントを使用することによって、上記止水部分の耐圧縮性等の特性を向上させ、上記破断防止効果をさらに高めることができる。
【0035】
また、上記円柱体11a、11bをケーブル3に装着し、管路2内に押し込み、液状止水剤を注入する簡単な操作により止水を行うので、施工を容易化し作業時間の短縮が可能となる。
【0036】
また、上記止水材10にあっては、複数の単ケーブル3aからなる多条ケーブル3を挿通する挿通孔12が設けられた第1および第2の円柱体11a、11bが、管路軸方向に互いに離間して管路2内に配置され、これら円柱体11a、11bの間のスペース17に、親水性重合硬化性液状止水剤が、単ケーブル3a間の隙間3bの高さC以上となるまで充填されたものであるので、上記止水剤によって隙間3bを完全に塞いだ状態とし、管路2内に生じた漏水が隙間3bを通して外部に流出するのを確実に防ぐことができる。
【0037】
また、硬化後も伸縮性を示す親水性重合硬化性液状止水剤を用いるので、上述の多条ケーブル3の形状変化、管路2に対する移動、単ケーブル3a同士の相対位置の変化等が起きた場合でも、スペース17内において止水剤がこの変化に応じて変形し多条ケーブル3に対し隙間無く接した状態を維持し、止水性を長期にわたって維持することが可能となる。
【0038】
図4ないし図6は、止水材の第2の実施形態を示すもので、ここに示す止水材20は、第1および第2の円柱体11a、11bの間に、スペーサ21が配置されている点で上記第1の実施形態の止水材10と異なる。
スペーサ21は、円柱体11a、11bの相対位置を定めるためのもので、管路2の内面形状に沿う外周部22と、平面部23を有し、この平面部23に管路軸方向に沿うケーブル挿通溝25を形成した断面U字状の部材であり、多条ケーブル3をケーブル挿通溝25内にケーブル3が露出した状態で収容することができるようになっている。
【0039】
スペーサ21の高さDは、多条ケーブル3をケーブル挿通溝25内に配置したときに、単ケーブル3a間の隙間3bがケーブル挿通溝25の内部に位置するように設定するのが好ましい。
これは、高さDをこのように設定することによって、注入作業の過程においてスペース17内に注入されケーブル挿通溝25内に溜まった止水剤の液面高さが隙間3bの位置よりも高くなり、隙間3bへの止水剤充填がより確実になされるようになるためである。
高さDは、例えば管路2の内径の60〜70%に設定することができる。
【0040】
スペーサ21の長さL'は5〜10mm程度とするのが望ましい。長さが10mmを越えるものも用いることができるが、注入する止水剤量が多くなりコストが嵩むため好ましくない。
またスペーサ21は、両端面21a、21aが管路2の軸方向に対し垂直となるように形成するのが好ましい。
ケーブル挿通溝25の外径は管路2の内径に応じて設定することができる。またケーブル挿通溝25内径は、例えば25〜125mmとすることができる。
【0041】
スペーサ21の材質は、特に限定されず、各種プラスチック、金属、上記多孔質材などを用いることができる。スペーサ21を多孔質材からなるものとする場合には、スペーサ21は上記止水剤や微粒子セメントを含浸したものとなる。
【0042】
スペーサ21は、第1の円柱体11aに形成された注入孔15、ガス抜き孔16に対応する部分のスペース17を埋めることがないように、平面部23を上方に向けて管路2内に配置されている。
スペーサ21は、両端面21a、21aがそれぞれ円柱体11a、11bに当接するように管路2内に配置されている。
【0043】
次に、上記止水材20を用いて管路2を止水する場合を例として、止水工法の第2の実施形態を説明する。
まず円柱体11a、11bおよびスペーサ21を、円柱体11a、11b間にスペーサ21が介在するように多条ケーブル3に装着し、これらを管路2内に押し入れる。
この際、円柱体11a、11bは、スペーサ21に押し当てられた状態で管路2内に挿入されるため、円柱体11a、11b間の間隔はスペーサ21の長さに等しくなる。
また、スペーサ21は端面21aが管路2軸方向に対し垂直に形成されているため、スペーサ21に押し当てられた状態で管路2内に挿入される円柱体11a、11bは管路2の軸方向に対し垂直な状態となる。
【0044】
次いで、上述の過程に従って止水剤をスペース17内に注入する。この注入過程においては、注入された止水剤の一部がケーブル挿通溝25内に溜まり、この止水剤がケーブル挿通溝25内の単ケーブル3a間の隙間3bに流れ込むため隙間3bは確実に塞がれる。
また、スペース17内にはスペーサ21が設置されているため、スペース17内に注入される止水剤量は、上記第1の実施形態の工法に用いられる止水剤量に比べ、スペーサ21の体積の分だけ少なくなる。
【0045】
本実施形態の止水工法にあっては、円柱体11a、11b間にスペーサ21を設置するので、円柱体11a、11bを管路2内に設置するに際して、円柱体11a、11bの向きや円柱体11a、11b間の間隔を正確に設定することができる。
このため、円柱体11a、11bの位置ずれによる止水性の低下を未然に防ぎ、止水効果を確実なものとすることができる。
また、止水剤使用量を少なくし、施工コスト削減を図ることができる。
【0046】
図7は、本発明の止水材の第3の実施形態を示すもので、ここに示す止水材30は、第2の円柱体11bに代えて、上記多孔質材からなる第2の円柱体33が用いられている点で上記第1の実施形態の止水材10と異なる。
第2の円柱体33は、多条ケーブル3を挿通する挿通孔34を有する円柱状の本体32と、本体32の一端側(円柱体11a側)に設けられたスペーサ部31からなるものである。
スペーサ部31は、上記スペーサ21と同様に、管路2の内面形状に沿う外周部31aと、平面部31bを有し、この平面部31bに管路軸方向に沿うケーブル挿通溝31cを形成した断面U字状に形成され、多条ケーブル3をケーブル挿通溝31c内にケーブル3が露出した状態で収容することができるようになっている。
第2の円柱体33は、本体32において管路2内壁に全周にわたって当接し、スペーサ部31において、管路2内壁に周方向の一部のみで接している。
【0047】
本体32の長さは、30〜100mm程度に設定するのが望ましい。
スペーサ部31の長さは、5〜10mmとするのが好ましく、高さは、例えば管路2の内径の60〜70%に設定することができる。
第2の円柱体33は、スペーサ部31の平面部31bを上方に向け、かつ端面が第1の円柱体11aに当接するように管路2内に配置される。
【0048】
上記止水材30を使用するには、第1の円柱体11aおよび第2の円柱体33を、第2の円柱体33のスペーサ部31を第1の円柱体11a側に向けた状態で多条ケーブル3に装着し、これらを管路2内に押し入れ、上述の過程に従って止水剤を円柱体間のスペース、すなわちスペーサ部31の上方空間内に注入する。
【0049】
上記止水材30を用いて管路2の止水を行う場合には、上記第2の実施形態の止水材20におけるスペーサ21に相当するスペーサ部31を有する第2の円柱体33を用いるので、上記第2の実施形態の止水工法と同様に、円柱体11a、33を管路2内に設置するに際して、円柱体11a、33の向きや円柱体11aと本体32の間隔を正確に設定し、円柱体11a、33の位置ずれによる止水性の低下を未然に防ぎ、止水効果を確実なものとすることができる。
さらに、この方法では、スペーサ21を使用しないため、上記止水材20を用いた第2の実施形態の方法に比べ部品点数を少なくし、施工を容易化することができる。
【0050】
なお、上記第3の実施形態の止水材30では、管路奥側の第2の円柱体として、スペーサ部31を有する円柱体33を用い、管路口側の第1の円柱体としてスペーサ部をもたない円柱体11aを用いたが、逆に、管路口側の第1の円柱体として、円柱体33と同様にスペーサ部をもつものを用い、管路奥側の第2の円柱体として、スペーサ部をもたないものを用いることもできる。この場合には、第1の円柱体を、スペーサ部が管路奥側に向くように管路内に配置する。
また、第1および第2の円柱体をいずれもスペーサ部をもつものとすることもできる。この場合には、これら円柱体のうち少なくとも一方を、スペーサ部が他方の円柱体に向くように管路内に配置する。
【0051】
また、上記各実施形態の止水工法では、注入孔15、ガス抜き孔16を形成した第1の円柱体11aを用いたが、図8に示すように、注入孔15、ガス抜き孔16に代えて、止水剤注入とガス抜きの両者の機能を併せ持つ貫通孔17を設けた第1の円柱体11a'を用いることもできる。
貫通孔17は、断面形状が円柱体径方向に細長い形状となるように形成するのが好ましい。この断面形状は、例えばこの図に示すように長径を円柱体径方向に向けた長円形のほか、長辺を円柱体径方向に向けた長方形などとすることができる。
また、上記各実施形態では、3本の単ケーブル3aからなる多条ケーブル3を挿通した管路2を止水する方法を例示したが、本発明の対象となる管路に挿通した多条線条体を構成する単線条体の数はこれに限定されるものでない。
【0052】
【実施例】
以下、具体例を示す。
(参考例)
多孔質材としてウレタン発泡体(連続気泡)を用い、外径128mm、長さ30mmの円柱体11a、11bを作製した。
これら円柱体11a、11bは、径36mmの3つの円が中央で融合した断面形状を有する挿通孔12を中央部に設けたものとした。円柱体11a、11bには1つのくさび形折曲部14を有する切り込み13を設けた。
第1の円柱体11aの外周から半径方向に17mmの位置には内径5mmの注入孔15を設け、外周から7mmの位置には内径5mmのガス抜き孔16を設けた。
【0053】
また、上記円柱体11a、11bに用いたものと同様のウレタン発砲体を用い、外径128mm、長さ10mmのスペーサ21を作製した。
スペーサ21の平面部23には、内径62mmのケーブル挿通溝25を設けた。スペーサ21の高さDは、ケーブル挿通溝25の最底部から平面部23までの距離がケーブル挿通溝25内径の約3分の2となるように設定した。
【0054】
次に、親水性重合硬化性液状止水剤と微粒子セメントとの混合物を調製した。
止水剤としては、ポリエチレングリコールジメタクリレート25重量%、アクリル酸マグネシウム10重量%、水55重量%、およびトリエタノールアミン10重量%からなるA剤と、エチレングリコール49.5重量%、水49.5重量%、および過硫酸アンモニウム1重量%からなるB剤を使用直前に混合したものを用いた。
また微粒子セメントとしては、ブレーン値13000cm2/gの三菱マテリアル(株)社製三菱ファインハードを用いた。
混合物調製の際には、上記止水剤に、止水剤100重量部に対して4重量部の微粒子セメントを加え、十分に混合した。
【0055】
図1に示すように、鉄筋コンクリート製の躯体1を用いて構築された既設のマンホールの躯体1に埋設された管路2からの漏水に対して、上記円柱体11a、11b、スペーサ21、混合物を用いて止水を試みた。
上記躯体1に埋設された管路2は、FRPからなる内径150mmのものであり、管路2内には、3本の単ケーブル3aが撚り合わされた外径45mmの多条ケーブル3が挿通しており、この管路2では、管路奥部に生じた漏水が管路口2aから流出していた。
【0056】
まず、多条ケーブル3に、管路奥側から手前側にかけて第2の円柱体11b、スペーサ21、第1の円柱体11aを装着し、これらを管路2内に無理バメにより挿入した。
円柱体11a、11bを多条ケーブル3に装着する際には、円柱体11a、11bを切り込み13から押し広げ、挿通孔12内に多条ケーブル3を位置させるようにした。また第1の円柱体11aは、注入孔15、ガス抜き孔16が挿通孔12の上方に位置するようにその位置を設定した。またスペーサ21は平面部23が上方を向くように配置した。
【0057】
次いで、上記混合物を注入孔15を通してスペース17内に注入し、円柱体11a、11bおよびスペーサ21に含浸させた。
止水剤注入は、止水剤がガス抜き孔16から外部に流出するまで行い、止水剤によって注入孔15、ガス抜き孔16を閉止した。
【0058】
このようにして止水した管路2を1年間放置した後、漏水が発生したかどうかを調べた。その結果、この管路ではまったく漏水が生じず、良好な止水性が維持されたことがわかった。
【0059】
(比較例)
図9に示すように、管路2から延出しているケーブル3を、内側および外側ゴムパッキン6、8、金属板9の挿通孔6a、8a、9aに順次通し、内側および外側ゴムパッキン6、8とケーブル3との間を、ブチルゴムからなるコーキング材5で塞いだ。
次いで、ケーブル3を、内側ゴムパッキン6が管路2内に入るまで管路2内に押し込み、金属板9を、外側ゴムパッキン8を介して防水治具4に止め付けて上記管路2を止水し、この状態でこの管路2を1年間放置し、漏水が発生したかどうかを調べた。
その結果、比較例の工法によって止水された管路では、コーキング材とケーブルとの間に隙間ができ、ここから漏水が発生したことがわかった。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、親水性重合硬化性液状止水剤によって単線条体間の隙間を完全に塞いだ状態とし、管路内に生じた漏水がこの隙間を伝って外部に流出するのを確実に防ぐことができる。
また、通電による発熱や気温変化などによる熱膨張などにより多条線条体の形状変化、管路に対する移動、単線条体同士の相対位置の変化等が起きた場合でも、スペース内において止水剤、多孔質体がこの変化に応じて変形し線条体に対し隙間無く接した状態を維持する。このため、高い止水性を長期にわたって維持することが可能となる。
さらには、止水部分に大きな力が加わった場合でも、これが破断することがなく、高い止水性を維持することができる。
また施工が容易であり作業時間の短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の止水材の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】 図1に示す止水材の概略構成を示す斜視図である。
【図3】 図1に示す止水材の第1の円柱体を示すもので、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【図4】 本発明の止水材の第2の実施形態を示す断面図である。
【図5】 図4に示す止水材の概略構成を示す斜視図である。
【図6】 図4に示す止水材のスペーサを示すもので、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【図7】 本発明の止水材の第3の実施形態の概略構成を示す斜視図である。
【図8】 第1の円柱体の変形例を示す正面図である。
【図9】 従来の止水工法によって止水された管路を示す断面図である。
【符号の説明】
2・・・管路、2a・・・管路口、3・・・多条ケーブル(多条線条体)、3a・・・単ケーブル(単線条体)、10、20、30・・・止水材、11a、11b、33、11a'・・・円柱体(多孔質体)、17・・・スペース、21・・・スペーサ、32・・・本体、31・・・スペーサ部、C・・・単ケーブル(単線条体)間の隙間の高さ、S・・・親水性重合硬化性液状止水剤
Claims (2)
- 電気ケーブルなどの複数の単線条体を集合した多条線条体が挿通した管路の管路口を、該多条線条体を挿通する挿通孔が設けられた第1および第2の多孔質体を用いて止水する工法であって、
第1および第2の多孔質体のうちいずれか一方が、管路内壁に全周にわたって当接する本体と、管路内壁に周方向の一部のみ当接しかつ多条線条体が露出するように形成されたスペーサ部を備えたものとされ、
この多孔質体のスペーサ部を他方の多孔質体側に向けた状態で、これら第1および第2の多孔質体を管路内に押し入れ、これら多孔質体間のスペースに、親水性重合硬化性液状止水剤を、液面高さが単線条体間の隙間の高さ以上となるまで充填し、かつ前記多孔質体に含浸させた後、この止水剤を硬化させることを特徴とする止水工法。 - 電気ケーブルなどの複数の単線条体を集合した多条線条体が挿通した管路の管路口を止水する止水材であって、
前記線条体を挿通する挿通孔が設けられた第1および第2の多孔質体を備え、
これら多孔質体のうちいずれか一方が、管路内壁に全周にわたって当接する本体と、管路内壁に周方向の一部のみ当接しかつ多条線条体が露出するように形成されたスペーサ部を備えたものとされ、
この多孔質体のスペーサ部が他の多孔質体側に向けられた状態で、これら第1および第2の多孔質体が管路内に配置され、
これら多孔質体間のスペースに、親水性重合硬化性液状止水剤が、単線条体間の隙間の高さ以上となるまで充填され、かつ前記多孔質体に含浸していることを特徴とする止水材。
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