JP4052036B2 - 無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物、それを用いたガスバリア性積層体、およびその製造方法 - Google Patents
無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物、それを用いたガスバリア性積層体、およびその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素,水蒸気等のガスバリア性に優れ、食品、医療品等の包装材料、電子材料、建築材料、印刷材料等に有用である、無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物、ガスバリア性積層体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品、医療品等の包装に用いられる包装材料には、内容物の品質保持のため、酸素、水蒸気等、気体の透過を遮断するガスバリア性能が求められている。また、プラズマディスプレイ、偏光板、液晶表示材、エレクトロルミネッセンス等の各種電子材料においても、構成品を酸素や水蒸気による劣化から防ぐためガスバリア性が必要とされている。
【0003】
従来、ガスバリア性を必要とする用途においては、ガスバリア性の高い樹脂自体をフィルム化したもの、もしくはプラスチックフィルムなどの基材に、ガスバリア性の高い樹脂塗液などをコーティングした積層フィルムなどが用いられている。
【0004】
ガスバリア性を有する樹脂としてはポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコールの重合体、ポリ塩化ビニリデン等が例示できる。しかし、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコールの重合体は、低湿度下では優れた酸素バリア性を有するものの、高湿度下ではバリア性が急激に劣化してしまうことが課題として挙げられ、使用される環境で用途が限定されてしまう。また、耐湿性の点において単独で用いることは困難であるので、他のフィルムと積層して使用する必要がある。なお、これらは水蒸気バリア性に乏しい樹脂であるため、水蒸気バリア性を必要とする用途に使用することは困難である。
一方、ポリ塩化ビニリデンは、高湿度下でも高い酸素バリア性を発現し、他の樹脂と比較すると湿度依存性が良好である。また、他の樹脂と比較すると水蒸気バリア性も良好ではあるものの、高度なバリア性が求められる用途に使用しうるレベルには遙かに達していない。
さらに、樹脂中に塩素を含むため、廃棄物処理の際の焼却時に、塩素に起因する塩素ガスの発生並びに、ダイオキシンの発生の恐れを有しており、環境並びに人体に多大なる悪影響を与えるという問題点を有している。
また、ガスバリア性樹脂に一般に言える欠点として、ガスバリア性の温度依存性が高いことが挙げられ、周辺環境の温度が高温になるとバリア性が極端に劣化する傾向にある。
【0005】
以上のように、ガスバリア性樹脂は、ガスバリア性の温湿度依存性が大きい、廃棄の問題がある、バリア性の絶対値から用途が制限される等の問題点を有していた。
【0006】
それに伴い近年、無機酸化物薄膜をプラスチックフィルム上に形成したガスバリア性フィルムが検討されてきた。珪素酸化物やアルミニウム酸化物等の無機酸化物薄膜を形成したプラスチックフィルムは、ガスバリア性樹脂と比較すると、高度な水蒸気、酸素バリア性を有し、しかもガスバリア性の温湿度依存性が比較的少ないことが特徴的である。また、廃棄も容易である。
【0007】
【発明が解決しようとする問題】
しかしながら、無機酸化物薄膜を形成したプラスチックフィルムでは、より高度なガスバリア性を有する用途には使用が困難であった。また、ガスバリア性の中でも、特に水蒸気バリア性を飛躍的に向上することは従来なし得ることが困難であり、有用なものが示されていないのが現状である。
そこで、本発明は無機酸化物薄膜層との密着性が良好で、かつ高いバリア性を要求される用途において、ガスバリア性、特に水蒸気バリア性を飛躍的に向上するガスバリア向上樹脂組成物、それを用いたガスバリア性積層体およびその製造方法の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、少なくとも片面に無機酸化物薄膜が設けられているプラスチックフィルムの該無機酸化物薄膜の表面に、構造中にエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ−NR1R2基(R1、R2は水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基でR1、R2は同一でも異なってもよい)を有する化合物(A)を少なくとも1種以上含有し、かつ構造中にエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物(化合物(A)を除く)を含有しないことを特徴とする、無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物(B)を活性エネルギー線により硬化した樹脂層を設けたガスバリア性積層体は、層間において良好な密着性が発現し、かつガスバリア性、特に水蒸気バリア性が飛躍的に向上することを見いだし本発明に至った。
すなわち本発明は、無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物(B)を、プラスチックフィルムの少なくとも片面に設けられた無機酸化物薄膜上に形成し、活性エネルギー線により硬化した樹脂層を有する、ガスバリア性積層体であって、
前記無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物(B)は、構造中にエチレン性不飽和二重結合および−NR 1 R 2 基(R 1 、R 2 は水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基でR 1 、R 2 は同一でも異なってもよい)を有する化合物(A)を少なくとも1種以上含有し、かつ構造中にエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物(ただし化合物(A)を除く)を含有しない樹脂組成物であって、
前記化合物(A)の少なくとも1種は、構造中にエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物に1級ないし2級のアミノ基を構造中に有する化合物をマイケル付加反応させた化合物である、ガスバリア性積層体に関する。
【0009】
また本発明は、化合物(A)のうち少なくとも1種が、構造中にエチレン性不飽和二重結合を2個以上有することを特徴とする、無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物(B)に関する。
また本発明は、化合物(A)が、構造中にエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物に1級ないし2級のアミノ基を構造中に有する化合物をマイケル付加反応させたものであることを特徴とする、無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物(B)に関する。
また本発明は、無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物(B)を、プラスチックフィルムの少なくとも片面に設けられた無機酸化物薄膜上に形成し、活性エネルギー線により硬化した樹脂層を有する、ガスバリア性積層体に関する。
また本発明は、無機酸化物薄膜が、少なくとも珪素を含むことを特徴とする、ガスバリア性積層体に関する。
また本発明は、活性エネルギー線が電子線、もしくは紫外線であることを特徴とする、無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物(B)またはガスバリア性積層体に関する。
また本発明は、無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物(B)を、プラスチックフィルムの少なくとも片面に設けられた無機酸化物薄膜上に形成したのち、活性エネルギー線により硬化して樹脂層を形成してなる、ガスバリア性積層体の製造方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物(B)は、構造中にエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ−NR1R2基(R1、R2は水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基でR1、R2は同一でも異なってもよい)を有する化合物(A)を少なくとも1種以上含有し、かつ構造中にエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物(化合物(A)を除く)を含有しないことを特徴とする。
化合物(A)のうち、構造中にエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ−NR1R2基(R1、R2は水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基でR1、R2は同一でも異なってもよい)を有するものの例としては、アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドなどが例示できる。
また、構造中にエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物に、1級ないし2級のアミノ基を構造中に有する化合物を、マイケル付加反応させることにより、分子内に−NR1R2基かつエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を合成することが公知であるが、このようなものも化合物(A)として用いることができる。このような化合物は、エチレン性不飽和二重結合に付加させる1級ないし2級のアミノ基を構造中に有する化合物の量により、エチレン性不飽和二重結合数を任意に調整することが可能である。
【0011】
これら化合物(A)は、一種単独でも、2種以上を混合して用いてもよいが、エチレン性不飽和二重結合数が2個以上構造中に有するものは、架橋性が向上するためにより好ましい。
また、無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物には従来公知の添加剤を要求物性に応じて適宜加えてもよい。例えば、塗工性改善を目的としてレベリング剤、希釈溶剤、などを添加することができる。
また該組成物には、従来公知のシランカップリング剤を添加することができる。具体的には、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が例示できる。なおこれらは、1種単独を用いても、2種以上を混合して用いてもよい。シランカップリング剤の添加量は、該樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜20重量部が好ましい。添加量が0.1重量部未満であると添加効果の発現に乏しく、添加量が20重量部を越えるとバリア性が低下する場合があるために好ましくない。
【0012】
また該組成物には、構造中にエチレン性不飽和二重結合を1個有する化合物を添加してもよく、適宜加えることにより、塗工性、樹脂層の機械物性等を向上することができる。
例として、ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリシジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチルメタクリレート、パーフロロオクチルエチルメタクリレート、イソシアネートエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、スチレン、tert−ブチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレートなどがあげられる。
【0013】
また、シランカップリング剤であり、かつ構造内にエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の例として、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランがあげられるが、これらは該樹脂組成物を活性エネルギー線にて重合する際に、自らも重合に寄与するために好ましい。
また、少なくとも片面に無機酸化物薄膜が設けられているプラスチックフィルムの、該無機酸化物薄膜に該組成物を塗布する方法としては、例えばロールコーティング、グラビアコーティング、リバースコーティング、スプレーコーティングなどの従来公知の様式によって行うことができる。なお、樹脂組成物に溶剤が含まれる場合には、乾燥して溶剤を除去する必要があるが、乾燥は従来公知の方法によって行うことができる。
該樹脂組成物を硬化する活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、電子線、ガンマー線が例示できるが、紫外線、電子線がより好ましく、特に電子線は光開始剤が不要なためより好ましい。
また、電子線の吸収線量は、1〜1000kGyの範囲内であると樹脂層の硬化が十分に進行するため好ましく、特に5〜300kGyの範囲内であると硬化が十分に進行し、かつプラスチックフィルムや樹脂層にダメージを与えることが少ないためより好ましい。吸収線量が1kGy未満であると樹脂層の硬化が不十分な場合があり、1000kGyを越えるとプラスチックフィルムや樹脂層の崩壊が生じ、物性が損なわれる場合がある。なお、吸収線量は米国FarWestTechnology社のFWT60−00線量測定フィルム(厚さ44.5μm)を使用して測定したものである。
【0014】
活性エネルギー線として電子線を照射する場合には、公知の装置を使用することができるが、電子線がプラスチックフィルムや樹脂層へ与えるダメージを考慮すると、加速電圧が1kV〜200kVの電子線を照射することが好ましい。電子線の加速電圧が1kV未満であると硬化深度が不十分な場合があり、200kVを越えると、プラスチックフィルムや樹脂層がダメージを受け、得られるガスバリア性積層体の機械物性が低下する場合がある。また、100kV以下、特に50kV以下の低加速電圧の電子線を照射して樹脂層を形成することにより、ガスバリア性積層体の機械強度の低下を抑制することができるためより好ましい。活性エネルギー線として紫外線を照射する場合には、公知の各種紫外線ランプを使用することができる。紫外線の照射エネルギーとしては、1〜1000mJ/cm2が好ましく、特に10〜500mJ/cm2が好ましい。照射エネルギーが1mJ/cm2未満であると樹脂層の硬化が不十分な場合があり、1000mJ/cm2を越えると生産性の面から好ましくない。
【0015】
なお、紫外線を照射して該組成物を硬化する場合には、光開始剤を添加する必要がある。光開始剤としては、例えばベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、キサントン類、アセトフェノン誘導体などの従来公知の光開始剤を使用することができる。光開始剤は、該組成物100重量部に対し、0.1〜20重量部、特に0.5〜10重量部の割合で添加することが好ましい。添加量が0.1重量部未満であると樹脂層の硬化が不十分であり、20重量部を越えると光開始剤がブリードするおそれや、コストが高くなるために好ましくない。
また、樹脂層が外観上は乾燥していても硬化が不十分であると、十分なガスバリア性を発現することができない場合がある。
本発明における、少なくとも片面に無機酸化物薄膜が設けられているプラスチックフィルムとしては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエーテルサルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ノルボルネン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、ポリスチレン等の樹脂からなるフィルムが挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルホンからなるフィルムが蒸着加工適正より好ましい。
プラスチックフィルムは、一軸延伸や二軸延伸されたものでも良く、上記樹脂の2種以上を混合、共押出、積層して得られるフィルムでも良い。また、樹脂フィルムは、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤等の従来公知の添加剤が添加されたものでも良い。
【0016】
プラスチックフィルムの厚みとして特に制限はないが、5〜1000μm が好ましい。フィルム厚が5μm未満であるとカールしやすくなり、1000μmを越えると、厚みのためロール状態の加工が困難となる場合がある。
プラスチックフィルムに設けられる無機酸化物薄膜を構成する金属としては、珪素、アルミニウム、亜鉛、チタニウム、マグネシウム、錫、銅、鉄、ジルコニウム、インジウムなどが挙げられる。また、金属化合物としては、先に例示した金属の酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物などが挙げられる。特に、薄膜層が、珪素酸化物SiOx(x:1.5以上〜2.0未満)からなる場合は、ガスバリア性、透明性の点で好ましい。また、薄膜層が珪素酸化物および金属フッ化物からなる場合は、さらに高い透明性およびガスバリア性を有する点でより好ましい。またアルミニウム酸化物を設けた場合は、透明性の点で好ましい。
金属フッ化物としては、アルカリ土類金属のフッ化物およびアルカリ金属のフッ化物があげられる。
具体的には、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、フッ化フランシウム等があげられる。この中でも、特にフッ化マグネシウム、フッ化カルシウムが、高度なガスバリア性と高い透明性を両立できるため優れている。
【0017】
珪素酸化物および金属フッ化物からなる無機酸化物薄膜層の組成比としては、珪素酸化物/金属 フッ化物=98〜80モル%/2〜20モル%の範囲が好ましく、特に95〜90モル%/5〜10モル%の範囲が望ましい。
【0018】
また、珪素酸化物と金属フッ化物の混合物を無機酸化物薄膜層の原料として用いる場合、その組 成比としては、珪素酸化物/金属フッ化物=98〜70モル%/2〜30モル%の範囲が望ましく、特に95〜85モル%/5〜15モル%の範囲が望ましい。
【0019】
無機酸化物薄膜の形成方法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などが挙げられるが、特に真空蒸着法、イオンプレーティング法が、生産性の理由から好ましい。蒸着時の加熱方法としては、抵抗加熱、エレクトロンビ−ム加熱、高周波誘導加熱などの従来公知の加熱方法を用いることが可能である。
【0020】
無機酸化物薄膜の膜厚は、50〜5000Åが好ましく、特に100〜1500Åが好ましい。膜厚が50Å未満であると薄膜層に欠陥が生じ、ガスバリア性が不均一となる場合があり、5000Åを越えると薄膜層の柔軟性が失われ、クラック、ピンホール等の欠陥が発生してガスバリア性が低下する場合がある。
本発明のガスバリア積層体は、少なくとも片面に無機酸化物薄膜層を有するプラスチックフィルムの該無機酸化物薄膜上に、無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物を形成し、活性エネルギー線により硬化して樹脂層を形成することにより製造される。
該ガスバリア積層体は、使用される用途および要求される性能に応じ、一種のガスバリア性積層体を単独、若しくは複数を本願発明の樹脂層を直接介して積層するか、若しくは公知の接着剤等を用いて積層して用いても良く、また多種のガスバリア性積層体を前記同様に積層して用いてもよいが、少なくとも片面に無機酸化物薄膜層を有するプラスチックフィルムの該無機酸化物薄膜同士を、本願発明の樹脂層を介して積層したガスバリア性積層体は、特に優れたガスバリア性を発現するためにより好ましい。
また、ガスバリア性積層体と別の材料とを、上記記載の方法と同様に積層して用いてもよい。
なお、本願発明のガスバリア性積層体を、該積層体上にさらに無機酸化物薄膜をもうけるための基材として用いてもよく、この場合は特に優れたガスバリア性を発現するため好ましい。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、実施例中、「部」および「%」は、「重量部」および「重量%」をそれぞれ表す。
[実施例1]
膜厚12μmのニ軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片側に、珪素と二酸化珪素の混合物(混合比50モル%:50モル%)からなる原料を、特開平1−252768号公報に記載された蒸発原料を連続的に供給排出する方式の連続巻き取り式抵抗加熱方式の真空蒸着装置を用いて加熱真蒸着し、1200Åの無機酸化物薄膜層をフィルム上に形成し、片面に無機酸化物薄膜を有するプラスチックフィルムを得た。
次にペンタエリスリトールテトラアクリレートにジプロピルアミンをマイケル付加反応した変性物(エチレン性不飽和二重結合の残存率=50%)90部、メチルメタクリレート10部を混合し、無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物とした。
該樹脂組成物を無機酸化物薄膜上にコーターで塗工し、電子線照射装置(日新ハイボルテージ社製)を用いて吸収線量50kGyの電子線を照射して樹脂層を形成し、ガスバリア性積層体を作成した。樹脂層の厚みは4μmであった。
[実施例2]
トリメチロールプロパントリアクリレートにジブチルアミンをマイケル付加反応させた変性物(エチレン性不飽和二重結合の残存率=20%)100部を無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物として用い、実施例1で得た片面に無機酸化物薄膜を有するプラスチックフィルムの無機酸化物薄膜上に、吸収線量100kGyとした以外は実施例1と同じ方法で樹脂層を形成し、ガスバリア性積層体を得た。樹脂層の厚みは4μmであった。
【0022】
[比較例1]
実施例1で用いた、膜厚12μmのニ軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのみの評価を行った。
[比較例2]
実施例1で作成した、片面に無機酸化物薄膜を有するプラスチックフィルムのみの評価を行った。
[比較例3]
実施例1で作成した樹脂組成物を用い、実施例1で用いた膜厚12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上にコーターで塗工したのち、電子線照射装置(日新ハイボルテージ社製)を用いて吸収線量50kGyの電子線を照射して膜厚4μmの樹脂層を形成し、積層体を得た。
[比較例4]
実施例1で作成した片面に無機酸化物薄膜を有するプラスチックフィルムの該無機酸化物薄膜上に、トリメチロールプロパントリアクリレート100部を、コーターで塗工したのち、電子線照射装置(日新ハイボルテージ社製)を用いて吸収線量50kGyの電子線を照射して、膜厚4μmの樹脂層を形成し、積層体を得た。
[物性の評価方法]
このようにして作成したガスバリア性積層体の酸素透過度、水蒸気透過度、密着性を下記の方法にて測定した。
・酸素透過度:MOCON社製「OX−TRAN−TWIN」を用いて、25℃、100%RHの条件下で測定した。
・水蒸気透過度:MOCON社製「PERMATRAN−W−TWIN」を用いて、40℃、90%RHの条件下で測定した
・密着性:接着テープ(ニチバン(株)製「セロハンテープ」)による密着試験
◎;剥離面積5%未満、○;剥離面積5〜30%、△;剥離面積31〜50%、
△×;剥離面積51〜80%、×;剥離面積81%以上
これらの結果を表1に示した。
【表1】
表1の結果から、プラスチックフィルム上に樹脂層を形成した場合(比較例3)、ガスバリア性、特に水蒸気バリア性はほとんど向上していないのに対して、無機酸化物薄膜上に樹脂層を形成することによってガスバリア性、特に水蒸気バリア性が飛躍的に向上し、また密着性も良好であった。
【0023】
【発明の効果】
本発明の無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物を用いることにより、無機酸化物との密着性を確保するとともに、従来よりも飛躍的にガスバリア性、特に水蒸気バリア性を向上したガスバリア性積層体を提供することが可能となった。
Claims (6)
- 無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物(B)を、プラスチックフィルムの少なくとも片面に設けられた無機酸化物薄膜上に形成し、活性エネルギー線により硬化した樹脂層を有する、ガスバリア性積層体であって、
前記無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物(B)は、構造中にエチレン性不飽和二重結合および−NR 1 R 2 基(R 1 、R 2 は水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基でR 1 、R 2 は同一でも異なってもよい)を有する化合物(A)を少なくとも1種以上含有し、かつ構造中にエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物(ただし化合物(A)を除く)を含有しない樹脂組成物であって、
前記化合物(A)の少なくとも1種は、構造中にエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物に1級ないし2級のアミノ基を構造中に有する化合物をマイケル付加反応させた化合物である、ガスバリア性積層体。 - 化合物(A)の少なくとも1種が、構造中にエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物である、請求項1記載のガスバリア性積層体。
- 無機酸化物薄膜が、少なくとも珪素を含む、請求項1または2記載のガスバリア性積層体。
- 活性エネルギー線が電子線、もしくは紫外線である、請求項1ないし3いずれか記載のガスバリア性積層体。
- 無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物(B)を、プラスチックフィルムの少なくとも片面に設けられた無機酸化物薄膜上に形成したのち、活性エネルギー線により硬化して樹脂層を形成してなる、ガスバリア性積層体の製造方法であって、
前記無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物(B)は、構造中にエチレン性不飽和二重結合を2個以上および−NR 1 R 2 基(R 1 、R 2 は水素、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基でR 1 、R 2 は同一でも異なってもよい)を有する化合物(A)を少なくとも1種以上含有し、かつ構造中にエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物(ただし化合物(A)を除く)を含有しない組成物であって、
前記化合物(A)の少なくとも1種は、構造中にエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物に1級ないし2級のアミノ基を構造中に有する化合物をマイケル付加反応させた化合物である、ガスバリア性積層体の製造方法。 - 化合物(A)の少なくとも1種が、構造中にエチレン性不飽和二重結合を2個以上有する化合物である、請求項5記載のガスバリア性積層体の製造方法。
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JP2002186257A JP4052036B2 (ja) | 2002-06-26 | 2002-06-26 | 無機酸化物被覆用活性エネルギー線硬化型ガスバリア向上樹脂組成物、それを用いたガスバリア性積層体、およびその製造方法 |
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