JP4051521B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面保護層を有する電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真感光体の表面には、帯電、露光、現像、転写、クリーニング等にともなう電気的、化学的、機械的ストレスが加わるため、それらに対する耐久性が要求される。すなわち、繰り返し使用による表面層の磨耗および傷、コロナ帯電器から発生するオゾンによる酸化劣化などに対する耐久性が必要である。特に近年、ローラー帯電方式の採用にともない、アーク放電による高エネルギーが感光層表面の分子切断をともなった磨耗を引き起こすことが問題となっている。さらに、プリンターのフルカラー化、高速化および感光ドラムの小径化など、電子写真感光体の消耗を促進する条件が重なるようになっており、電子写真感光体の耐久性が重要になっている。
【0003】
これら表面層の問題を解決するために、感光層の上に架橋硬化性樹脂を主成分とする表面保護層を形成する方法が提案されている(特開昭54-148537)。しかしながら、表面保護層を架橋硬化性樹脂成分のみで構成した場合、撥水性が良好でない(水の接触角が小さい)ため、表面に付着残留したトナーの剥離が困難となり、クリーニング性に問題が生じる。また、潤滑性が良好でないため、転写、クリーニング等による機械的摩擦に対する耐久性が低下する。この結果、画像品質の劣化や耐久性の低下を招くという問題がある。
【0004】
これを解決するため、表面自由エネルギーが小さく撥水性、潤滑性の良好なシリコーン系化合物やフッ素系化合物を用いて表面保護層を構成する種々の試みが成されている(例えば、特開昭63-30850、特開昭64-35448、特開平2-189550、特開平2-189551)。しかしながら、これらの化合物は他の樹脂との相溶性や分散性に乏しく、表面保護層を形成した際に透明性や均一性に劣る。この結果、鮮明な画像が得られないという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの問題点を解決し、クリーニング性が良好であり、良好な画像品質を長期間に亘って維持する、耐久性に優れた電子写真感光体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、ポリシラン系硬化膜を表面保護層として用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記に示す表面保護層を有する電子写真感光体を提供するものである。
項1. 導電性支持体上に少なくとも感光層と表面保護層を有する電子写真感光体であって、該表面保護層が、
(a)一般式(1)
【0008】
【化3】
【0009】
[式中、Rは、水素原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリール基、アルコキシル基またはシリル基を示す。Rは、全てが同一でも或いは2つ以上が異なっていてもよい。x、y、zは、それぞれ0以上の数を示し、x、yおよびzの和は5〜400である。]で表され、且つ末端に水酸基を有するポリシランと、
(b)熱硬化性樹脂原料
との混合物を加熱処理することにより得られることを特徴とする電子写真感光体。
項2. 熱硬化性樹脂原料がエポキシ化合物である項1に記載の電子写真感光体。
項3. 導電性支持体上に少なくとも感光層と表面保護層を有する電子写真感光体であって、該表面保護層が、
(a)一般式(1)
【0010】
【化4】
【0011】
[式中、Rは、水素原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリール基、アルコキシル基またはシリル基を示す。Rは、全てが同一でも或いは2つ以上が異なっていてもよい。x、y、zは、それぞれ0以上の数を示し、x、yおよびzの和は5〜400である。]で表されるポリシランと、
(b)光硬化性樹脂原料
との混合物を露光処理することにより得られることを特徴とする電子写真感光体。
【0012】
【発明の実施の形態】
[ポリシラン]
本発明の電子写真感光体の表面保護層に使用するポリシランは、下記一般式(1)で表される。
【0013】
【化5】
【0014】
式中、Rは、水素原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリール基、アルコキシル基またはシリル基を示す。Rは、全てが同一でも或いは2つ以上が異なっていてもよい。x、y、zは、それぞれ0以上の数を示し、x、yおよびzの和は5〜400である。
【0015】
上記一般式(1)で表されるポリシランにおいて、アルキル基、アリールアルキル基のアルキル部分およびアルコキシル基のアルキル部分としては、直鎖状、環状または分岐状の炭素数1〜14、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0016】
アルケニル基としては、少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を有する1価の直鎖状、環状または分岐状の炭素数1〜14、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0017】
アリール基およびアリールアルキル基のアリール部分としては、少なくとも1つの置換基を有していてもよい芳香族炭化水素が挙げられ、好ましくは少なくとも1つの置換基を有していてもよいフェニル基またはナフチル基が挙げられる。アリール基およびアリールアルキル基のアリール部分の置換基は、特には制限されないが、アルキル基、アルコキシル基、アミノ基およびシリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0018】
本発明の表面保護層に使用するポリシランとして、特に熱硬化性樹脂原料との混合物を加熱処理して熱硬化樹脂とする場合には、末端のSi原子に少なくとも1つの水酸基が直接結合したポリシラン(すなわち、末端に少なくとも1つのシラノール基を有するポリシラン)を使用する。Si原子に直接結合した水酸基は、熱硬化性樹脂原料の官能基、例えばエポキシ基、との良好な反応性を示し、加熱処理によりポリシランと熱硬化性樹脂原料との間に架橋構造が形成される。
【0019】
この様な水酸基の含有割合は、Si1原子当たり、通常平均0.01〜3程度であり、好ましくは平均0.1〜2.5程度、より好ましくは平均0.2〜2程度、特に好ましくは平均0.3〜1.5程度である。
【0020】
また、この様な水酸基を有するポリシランとしては、上記一般式(1)において、y>0および/またはz>0である、分岐構造および/または網目構造を含むポリシランがより好ましい。この様なポリシランは、熱硬化性樹脂原料との相溶性が良好であり、また硬化膜とした場合に、硬度、耐熱性、耐薬品性などが向上する。
【0021】
[ポリシランの製造方法]
本発明の表面保護層に用いるポリシランは、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、それぞれの構造単位を有するモノマーを原料として、以下の方法により重合させることができる。すなわち、アルカリ金属の存在下でハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「キッピング法」J.Am.Chem.Soc.,110,124(1988)、Macromolecules,23,3423(1990))、電極還元によりハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1161(1990)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,897(1992))、マグネシウムを還元剤としてハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(国際公開番号WO98/29476)、金属触媒の存在下にヒドロシラン類を脱水素縮重合させる方法(特開平4−334551号公報)、ビフェニルなどで架橋されたジシレンのアニオン重合による方法(Macromolecules,23,4494(1990))、環状シラン類の開環重合による方法などにより製造することができる。
【0022】
ポリシランに水酸基を導入する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、ハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法などにおいて、縮重合反応終了時に水を添加することにより容易に行うことができる。
【0023】
[熱硬化性樹脂原料]
本願の第1の発明においては、電子写真感光体の表面保護層は、末端のSi原子に少なくとも1つの水酸基が直接結合したポリシラン(すなわち、末端に少なくとも1つのシラノール基を有するポリシラン)と熱硬化性樹脂原料との混合物を、加熱処理して熱硬化樹脂とすることにより得られる。これにより、撥水性に優れるポリシランの特徴を保持しつつ、機械的強度が向上し、耐久性が優れた薄膜が得られる。このような熱硬化性樹脂原料としては、硬化後の薄膜が透明性を有するものであれば特に限定はされないが、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、シアネート化合物、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0024】
ポリシランと熱硬化性樹脂原料との混合割合は、熱硬化性樹脂原料1重量部に対して、ポリシラン0.01〜100重量部程度であり、好ましくは0.05〜20重量部程度、より好ましくは0.1〜10重量部程度、特に好ましくは0.2〜3重量部程度である。
【0025】
上記熱硬化性樹脂原料の中でも、エポキシ化合物が好適に使用できる。エポキシ化合物は、化合物中に少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物の構造は特に制限されず、直鎖状、環状、分岐状などが挙げられる。
【0026】
このようなエポキシ化合物としては、エピ・ビス型グリシジルエーテル、フェノールノボラック型グリシジルエーテル、クレゾールノボラック型グリシジルエーテル、臭素化グリシジルエーテル、含窒素型エポキシ化合物、グリシジルエステル、過酢酸酸化型エポキシ化合物、グリコール型グリシジルエーテル、含ケイ素型エポキシ化合物、これらの化合物のアクリルまたはメタクリル変性エポキシ化合物などが挙げられる。これらの化合物については、その代表的な化合物の構造を以下に例示する(化6〜10)。更に、1,2,3,4−ジエポキシブタン、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタンなどを挙げることができる。これらのエポキシ化合物は、1種または2種以上を混合して用いることができる。これらの化合物は、目的、用途などに応じて適宜選択することができる。
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】
【化9】
【0031】
【化10】
【0032】
[光硬化性樹脂原料]
また本願の第2の発明においては、電子写真感光体の表面保護層は、ポリシランと光硬化性樹脂原料との混合物を露光処理して光硬化樹脂とすることにより得られる。このような光硬化性樹脂原料としては、硬化後の薄膜が透明性を有するものであれば特に限定はされないが、ビニル化合物やアクリレート化合物等が好適に使用できる。
【0033】
なお、この場合のポリシランとしては、末端のSi原子に少なくとも1つの水酸基が直接結合したポリシランでもよいし、そのような水酸基を有さないポリシランでもよい。
【0034】
ポリシランと光硬化性樹脂原料との混合割合は、光硬化性樹脂原料1重量部に対して、ポリシラン0.01〜100重量部程度であり、好ましくは0.05〜20重量部程度、より好ましくは0.1〜10重量部程度、特に好ましくは0.2〜3重量部程度である。
【0035】
[硬化剤、硬化促進剤など]
本発明の表面保護層を形成するに際して、必要に応じて硬化剤または硬化促進剤を使用しても良い。硬化剤または硬化促進剤は、当該分野で通常用いられる硬化促進剤等であれば特に制限されない。例えば、1,2−ジシリルエタン、エチルシリケート、メチルシリケートなどのポリアルコキシシラン類などのケイ素化合物;テトラアルコキシチタンなどのチタン化合物;フェニルジクロロボランなどのホウ素化合物;ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、アゾイソブチロニトリルなどのラジカルを発生する化合物;トリスメトキシアルミニウム、トリスフェノキシアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物;トリエチルアミン、ピリジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのアミン化合物;ダイマー酸ポリアミドなどのアミド化合物;無水フタル酸、テトラヒドロメチル無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水メチルナジック酸などの酸無水物;フェノールノボラックなどのフェノール類;ポリサルファイドなどのメルカプタン化合物;3フッ化ホウ素・エチルアミン錯体などのルイス酸錯体化合物;クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロメタンなどのハロゲン化物;ナトリウムエトキシドなどの塩基性化合物などを挙げることができる。露光処理する場合は、芳香族ジアゾニウム塩、ジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩、トリアリルセレニウム塩などの光分解型硬化剤を用いることができ、ベンゾフェノンおよびその誘導体、o−ベンゾイル安息香酸エステルおよびその誘導体、アセトフェノンおよびその誘導体、ベンゾイン、ベンゾインエーテルおよびその誘導体、キサントンおよびその誘導体、チオキサントンおよびその誘導体、ジスルフィド化合物、キノン系化合物、ハロゲン化炭化水素基含有化合物、アミン類並びに色素などの光増感剤などが挙げられる。これらの硬化剤または硬化促進剤は、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0036】
硬化剤または硬化促進剤の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲において、使用するポリシランの種類、割合などにより適宜設定すればよい。これらの添加量は、熱硬化性樹脂原料または光硬化性樹脂原料100重量部に対して、通常150重量部程度以下、好ましくは100重量部程度以下である。
【0037】
また、本発明の表面保護層は、必要に応じて当該分野で通常用いられる種々の充填剤や添加剤を含んでいてもよく、これらの混合量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定すれば良い。
【0038】
充填剤の中でも特に、導電性の金属酸化物微粉末、あるいは電荷輸送材料を分散させると、電荷輸送性制御が可能となる。導電性金属酸化物微粒子としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ、酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらのなかから単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。電荷輸送材料としては、後述の感光層に用いる化合物が使用できる。
【0039】
[電子写真感光体の構成]
本発明の電子写真感光体の全体の構成としては、導電性支持体上に必要に応じて下引き層が形成され、その上に感光層、さらにその上に表面保護層が形成されてなる。この中の感光層については、電荷発生材料と電荷輸送材料をバインダー樹脂とともに含有する、いわゆる単層型、または、感光層が電荷発生層と電荷輸送層の2層からなる積層型のいずれでもよい。積層型における電荷発生層と電荷輸送層の順序は特に限定されない。
【0040】
本発明で使用する導電性支持体は、公知の材料から適宜選択して使用することができる。具体的には、アルミニウム、真鍮、銅、ニッケル、鋼等の金属板、ドラム、金属シートまたはプラスチックシート上に導電性材料(例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、パラジウム、グラファイト等)を蒸着、スパッタリング、塗布等の方法によりコーティングして導電化処理したもの等を使用することができる。
【0041】
本発明では、必要に応じて、電荷注入を阻止するとともに感光層の密着性を向上させるための下引き層を形成することができる。下引き層を形成する材料としては、後述のバインダー樹脂や、ポリビニルアルコール、エチレン−アクリル酸コポリマー、フェノール樹脂、ポリアミド、ニトロセルロース、カゼイン、ゼラチン等が使用できる。下引き層の膜厚は0.1〜5μm、好ましくは0.2〜2μm程度である。
【0042】
本発明の感光層に使用する電荷発生材料としては、例えば、セレンおよびその合金、硫化カドミウム等の無機系電荷発生材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等の有機系電荷発生材料が挙げられる。
【0043】
また、電荷輸送材料としては、2,4,7-トリニトロフルオレノン、テトラシアノキノジメタン等の電子吸引性物質、カルバゾール、インドール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾール等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、あるいはこれらの化合物から誘導される主鎖もしくは側鎖に有する重合体等の電子供与性物質を単独または2種以上混合して用いることができる。これら電荷輸送材料のなかでも、本発明においては、特にベンジジン系化合物およびトリフェニルアミン系化合物が好ましい。
【0044】
感光層のバインダー樹脂としては、種々の樹脂が使用可能であり、特に制限はされないが、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリル樹脂等が好適に使用できる。
【0045】
感光層については、単層型感光層における電荷発生材料の配合量は、電荷発生材料の種類等に応じて適宜設定することができるが、バインダー樹脂100重量部に対して、1〜60重量部程度とするのが好ましい。また、電荷輸送材料の配合量も適宜設定することができるが、バインダー樹脂100重量部に対して、30〜150重量部程度とするのが好ましい。
【0046】
感光層が単層型である場合の感光層の膜厚は、通常5〜50μm程度、好ましくは10〜30μm程度である。
【0047】
感光層が積層型である場合は、導電性基板の上にまず電荷発生層を形成した後、電荷輸送層を形成してもよいし、電荷輸送層を形成した後、該層の上に電荷発生層を形成してもよい。
【0048】
電荷発生層における電荷発生材料の配合量は、特に限定されず、電荷発生材料の種類等に応じて適宜設定することができるが、通常、バインダー樹脂100重量部に対して、30〜600重量部程度である。
【0049】
電荷発生層の膜厚は、通常0.1〜1μm程度、好ましくは0.15〜0.6μm程度である。
【0050】
電荷輸送層は、通常、電荷輸送材料をバインダー樹脂に結着させた形で形成される。電荷輸送材料の配合量は、適宜設定することができるが、バインダー樹脂100重量部に対して、通常20〜150重量部程度、好ましくは50〜110重量部程度である。あるいは、ポリシラン等の単体で電荷輸送能を有する樹脂のみで電荷輸送層を形成しても良い。
【0051】
電荷輸送層の膜厚は、通常5〜50μm程度、好ましくは10〜45μm程度である。
【0052】
なお、感光層(或いは、電荷発生層及び/又は電荷輸送層)には、成膜性、可塑性、塗布性等を向上させるために、周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤等の添加剤を配合してもよい。
【0053】
[電子写真感光体の製造方法]
以下に、本発明の電子写真感光体を製造する方法の一例を説明する。
【0054】
公知の方法により、アルミニウム管等の導電性支持体上に、下引き層(必要に応じて)、感光層を順に形成する。各層は、それぞれの成分を溶媒に溶解・分散させた塗布液を、順次塗布、乾燥させることにより得る。溶媒としては各層の構成材料に応じて当該分野で使用されている溶媒を適宜選択すれば良い。
【0055】
次いで、感光層の上に表面保護層を形成する。
【0056】
まず、塗布液の調製を行う。ポリシランと、必要に応じて熱硬化性樹脂原料、光硬化性樹脂原料、充填剤や添加剤を、溶媒に溶解または均一分散させる。溶媒は、それぞれの化合物が有する置換基などにより異なるが、一例として、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、またはこれらの混合溶媒などを挙げることができる。
【0057】
しかしながら、ポリシラン、または樹脂原料が液状であり、上記の各成分を溶解または均一分散できる場合は、溶媒を使用せずに塗布液を調製しても良い。
【0058】
この塗布液を、支持体の形状に応じて、公知の方法より選択して塗布する。特に限定はされないが、ディップ法、スピンコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、キャスト法、バーコート法、カーテンコート法、ロールコート法、グラビアコート法等が例示される。
【0059】
次に、必要に応じて塗布物の乾燥処理を行う。乾燥処理は、常圧下、加圧下、または減圧下において、常温下または加温して行う。
【0060】
本発明では、必要に応じて熱硬化のための加熱処理を行う。乾燥処理と加熱処理は、順次行っても良いし、乾燥処理と加熱処理の工程を兼ねて一括して行っても良い。加熱処理の温度範囲としては、50〜300℃、好ましくは70〜200℃、より好ましくは80〜150℃である。上記温度に保持する時間は、1分間〜24時間、好ましくは3分間〜10時間、より好ましくは5分間〜5時間である。
【0061】
加熱処理は複数の工程に分割して行っても良く、昇温工程、一定温度に保持する工程、および降温工程を任意に組み合わせて行っても良い。昇温および降温の速度は特に限定されないが、0.1℃/分〜50℃/秒が好ましい。
【0062】
また本発明では、必要に応じて光硬化のための露光処理を行う。光源としては特に制限されないが、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、重水素ランプ、ハロゲンランプ、ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザー等が用いられる。露光エネルギーは、通常1mJ/cm2〜100J/cm2、好ましくは10mJ/cm2〜10J/cm2程度である。
【0063】
露光処理と加熱処理とを併用してもよい。この場合、露光処理と加熱処理の順番については特に制限されないが、通常、露光処理の後に加熱処理を行う。
【0064】
表面保護層の膜厚は、0.1〜10μm、好ましくは0.3〜5μm程度である。
【0065】
【実施例】
以下、本発明を更に詳しく説明するために種々の実施例を示す。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0066】
製造例1(電子写真感光体の製造)
TiOPc(チタニルフタロシアニン)1重量部、ポリビニルブチラール樹脂1重量部および酢酸n−ブチル50重量部を混合し、ボールミルにて16時間分散した。得られた塗工液を、外径30mmのアルミニウム素管(導電性支持体)上にディップ法により塗布し、100℃で10分間乾燥させて厚さ0.4μmの電荷発生層を形成した。
【0067】
次に、電荷輸送層のバインダーとしてポリカーボネート1重量部および電荷輸送剤としてTPD(N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(m−トリル)−p−ベンジジン)1重量部を、テトラヒドロフラン10重量部に溶解させ、前記電荷発生層の上にディップ法にて塗布し、100℃で1時間乾燥させて厚さ16μmの電荷輸送層を形成することにより、表面保護層を形成する前の電子写真感光体を得た。
【0068】
実施例1
末端に水酸基を有するポリ(フェニルシリン)(重量平均分子量1700)1重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(ECN1299;旭チバ製)1重量部および平均粒径0.3μmの無機フィラー酸化チタン0.2重量部を、エチルセロソルブアセテート(エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)18重量部中に溶解・分散させ、表面保護層形成用塗布液Aを調製した。この塗布液を製造例1で得られた電子写真感光体上にディップ法により塗布し、120℃で2時間加熱硬化させて膜厚2.5μmの表面保護層を形成し、電子写真感光体を得た。
【0069】
実施例2
末端に水酸基を有するポリ(フェニルシリン)(重量平均分子量1700)1重量部、紫外線硬化型エポキシアクリレート系塗料(ユニディックV−5502;大日本インキ化学工業(株)製)1重量部、光重合開始剤(イルガキュア907;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1重量部および平均粒径0.3μmの無機フィラー酸化チタン0.2重量部を、エチルセロソルブ(エチレングリコールモノエチルエーテル)16重量部中に溶解・分散させ、表面保護層形成用塗布液Bを調製した。この塗布液を製造例1で得られた電子写真感光体上にディップ法により塗布し、室温で30分乾燥させた後、超高圧水銀ランプにより1J/cm2の光を照射して硬化させることにより、膜厚2.5μmの表面保護層を形成し、電子写真感光体を得た。
【0070】
比較例1
末端に水酸基を有するポリ(フェニルシリン)(重量平均分子量1700)1重量部に代えてメチルテトラヒドロフタル酸無水物(エピキュアYH300;油化シェルエポキシ製)1重量部を用いる以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
【0071】
比較例2
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(ECN1299;旭チバ製)0.8重量部、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(エピキュアYH300;油化シェルエポキシ製)0.6重量部、シリコーン樹脂微粒子(トスパール120;東芝シリコーン製)0.2重量部、PTFE微粒子(ルブロンL−2;ダイキン工業製)0.4重量部および平均粒径0.3μmの無機フィラー酸化チタン0.2重量部を溶解・分散させ、表面保護層形成用塗布液Dを調製した。
【0072】
この塗布液を製造例1で得られた電子写真感光体上にディップ法により塗布し、120℃で2時間硬化させて膜厚2.5μmの表面保護層を形成し、電子写真感光体を得た。
【0073】
測定例1(透明性および撥水性の評価)
実施例1〜2、比較例1〜2に記載の塗布液A、B、C、Dを、それぞれガラス基板上にフローコート法により塗布し、それぞれ実施例1〜2、比較例1〜2に記載の条件で乾燥・硬化させ、表面保護層のみの試料片を得た。これらの試料片について、目視にて透明性を、水の接触角にて撥水性を評価した。結果を表1に示す。
【0074】
測定例2(電子写真感光体の評価)
実施例1〜2、比較例1〜2で得られた電子写真感光体を、電子写真装置(光源:半導体レーザー、帯電:ローラー帯電方式)に組み込み、印刷テストを行った。初期の印字品質と10万枚印刷時の印字品質を目視により評価した。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は、クリーニング性が良好であり、良好な画像品質を長期間に亘って維持しており、優れた耐久性を有している。
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