JP4051158B2 - 電子部品用セラミックス基板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術】
本発明は、角孔を有する電子部品用セラミックス基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5に示すように、電子部品用のセラミックス基板1には、角孔2を有するものがあり、この角孔2は例えば電子部品のチップ3を収納するために使用される。このチップ3としては、例えばIC、トランス等を用い、セラミックス基板1上にはチップ3と接続する回路が形成されるが、チップ3を角孔2に収納することで、全体を薄型化できるようにしたものである。
【0003】
この角孔2は、図6に示すセラミックス基板製造フローの打ち抜き工程で、図7に示す金型7に備えられたポンチ5を、グリーンシート11に押し当てて形成するのが一般的である。
【0004】
ところが角孔2が存在することにより、セラミックス基板製造フローの焼成工程や反り矯正工程において、図8に示すように、角孔2の角部2aにクラック4が発生し易すいという問題がある。そのメカニズムは、焼成の脱脂段階でグリーンシート11の添加剤であるバインダーの体積膨張により角孔2が拡がる方向に変化し、角部2aには左右からの引っ張り応力がかかるためにクラック4が発生する。また後工程で反り矯正等の為の熱処理を行う場合においても同様で、昇温段階で角孔2の角部2aに同様な引っ張り応力がかかりクラック4が発生することがある。
【0005】
このクラック4の発生を防止するために、図9(a)に示すように角孔2の角部2aを曲面状とすることや、または、図9(b)に示すように角部2aをC面状にすることが行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、セラミックス基板1の角孔2に、チップ3を収納しようとする場合には、角孔2の角部2aに大きな曲面またはC面を形成すると、図10に示すようにチップ3が角孔2の角部2aのみで保持されることになり不安定になるという問題があった。チップ3を安定して保持するためには角部2aを曲率半径約0.1mm以下の曲面状としなければならないが、この場合は、セラミックス基板1の製造工程中での角孔2の角部2aのクラック4の発生を完全に抑えることは出来なかった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明はこれらに鑑みて行われたもので、電子部品を収納するための角孔を有するセラミックス基板であって、角孔の全ての角部が本来の角孔のコーナーを中心とする一定の曲率半径の曲面状であり、かつこの角孔の辺よりも外側にあって、上記角孔の少なくとも1組の対向する辺が上記角部と連続して内側に突出する曲面状であり、上記一定の曲率半径よりも大きな曲率半径の、上記本来の角孔の辺に対する外接円であることを特徴とする。以上により、角孔へ収納する電子部品用のチップのコーナーが角孔へ接触することを避け、チップの各辺は角孔の辺と接触する設計とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態について詳述する。
【0009】
電子部品用のチップ3を収納するセラミックス基板1の角孔2の平面形状を本発明の参考例の図1(a)に示すように、角孔2の全ての角部2aが本来の角孔2のコーナーを中心とする一定の曲率半径の曲面状であり、かつこの角孔2の辺2bよりも外側に位置するように形成する。この角孔2の辺2bは直線状でも良いが、本発明の例の図1(b)に示すように角孔2の少なくとも1組の対向する辺2bが直線状であり、本来の角孔2の辺と同じ位置にまたは、図1(c)に示すように角孔2の少なくとも1組の対向する辺2bが、角部2aと連続して内側に突出する曲面状であり、角部2aの一定の曲率半径よりも大きな曲率半径の、本来の角孔2の辺に対する外接円であることが重要である
【0010】
このような角孔2にチップ3を収納すると、チップ3のコーナーが角部2aに接触せず、チップ3は角孔2の辺2bで安定して保持されることになる。また、チップ3を角孔2へ収納することにより電子部品としの厚みを薄く出来ること、並びに、チップ3によっては発熱するものがあり、この熱をセラミックス基板1に直接伝えにくくすることができる。
【0011】
また本発明のセラミックス基板1では、図2に示すように、角孔2の角部2aの曲率半径R1、内側へ突出する角孔2の辺2bの曲率半径R2、セラミックス基板1の厚みTとしたとき、角孔2の角部2aの曲率半径R1≧(セラミックス基板1の厚みT)/2であることが好ましい。この角孔2の角部2aの曲率半径R1がセラミックス基板1の厚みTの1/2未満になると、焼成時に角孔2の角部2aにかかる引き裂き応力を分散出来ない為に、角孔2の角部2aのクラック4の発生が増大する。
【0012】
また、角孔2の辺2bが直線状の場合の角孔2の辺2bの位置は本来の角孔2の位置を示す仮想角孔2cと同じとし、角孔2の辺2bが内側に突出する曲面状の場合は、この仮想角孔2cの辺に対して、外接円となるような曲率半径R2を設定し、かつ曲率半径R1と曲率半径R2は連続する曲面状であることが好ましい。また曲率半径R2は、小さすぎない方が良く約0.4mm以上であることが好ましい。
【0013】
内側に突出する曲面状の辺2bが仮想角孔2cの辺に対し外接円で接していると、図3に示すように、電子部品のチップ3を収納したときに、角孔2の曲面状の辺2bでチップ3が保持されることになる。このとき曲率半径R2が小さすぎると、チップ3を角孔2に収納する際に辺2bが鋭角に突出し、この部分に欠けを発生させるおそれがあるため、曲率半径R2は約0.4mm以上であることが好ましい。また曲率半径R1と曲率半径R2は連続する曲面状であると、切り欠き作用となる角部がないためにクラック4の発生が抑えられる。
【0014】
この角孔2は、例えば図4に示すような超硬合金製のポンチ5を、金型7に備えグリーンシート11に押し当てて角孔2を形成するか、または、パンチングマシンへ取り付けてグリーンシート11に押し当てて角孔2を形成する。このようにして形成されたグリーンシート11を所定の温度で焼成することにより、セラミックス基板1が得られる。グリーンシート11の材質はさまざまなセラミックスを用いることができるが、アルミナ含有率90〜97%のセラミックスが好ましい。
【0015】
【実施例】
実験例1
本発明の実施例として、図2に示す角孔2を有するセラミックス基板1をアルミナ含有率96%のセラミックスで作製した。セラミックス基板1の外辺寸法は114mm×75mm角、厚みTは0.64mmで、この1シート中に分割溝により12の単体が形成され、1単体の中に3個の角孔2が形成されている。角孔2は、仮想角孔2cの長辺寸法L1=4mm、短辺寸法L2=2mm、角部2aの曲率半径R1は仮想角孔2cのコーナー6を中心とし、試料イ=0.25mm、試料ロ=0.35mm、試料ハ=0.50mmの3種類とした。角孔2の長辺側の辺2bは直線状とし、短辺側の辺2bは曲率半径R2の内側に突出する曲面状で、上記の曲率半径R1にそれぞれ対応し試料イ=0.37mm、試料ロ=2.40mm、試料ハ=1.00mmとした。
【0016】
比較例の試料ニは、角孔2の形状以外は全て本発明の実施例と同じで、角孔2の形状は図9(a)の形状で、この角孔2の長辺寸法L1=4mm、短辺寸法L2=2mm、角部2aの曲率半径R1=0.1mmを作製した。
【0017】
試料数は、各2000シートとし、図6に示すセラミックス基板製造フローの外観検査工程で、角孔2の角部2aのクラック4の発生率を調査した。その結果を表1に示す。尚、セラミックス基板1の1シート中に36個の角孔2があるが、クラック4の欠点数ではなく、シート単位の不良数で不良率を求めた。
【0018】
【表1】
Figure 0004051158
【0019】
実験例2
セラミックス基板1の厚みTを1.0mmとし、他の条件は実験例1と同様にして試料を作製した。本発明実施例の試料ホは、角孔2の角部2aの曲率半径R1=0.45mm、角孔2の短辺側の辺2bの曲率半径R2=1.57mmで、試料ヘは、曲率半径R1=0.50mm、曲率半径R2=0.93mmで、試料トは、曲率半径R1=0.60mm、曲率半径R2=0.58mmとし、比較例の試料チは、曲率半径R1=0.10mmとした。
【0020】
試料数並びにクラック4の調査方法も実験例1と同じで、クラック4の発生率の調査結果を表2に示す。
【0021】
【表2】
Figure 0004051158
【0022】
実験例1の表1並びに実験例2の表2より、比較例で、角孔2の角部2aの曲率半径R1を0.1mmとした試料ニ、チは、クラック4の発生率が0.80%および1.55%と高く、評価は悪く×とした。
【0023】
本発明実施例で、角孔2の角部2aの曲率半径R1を(セラミックス基板1の厚みT)/2未満とした試料イ、ホは、クラック4の発生率が0.15%および0.10%であり高くはなかったものの期待通りでなく評価は△とした。
【0024】
本発明実施例で、角孔2の角部2aの曲率半径R1を(セラミックス基板1の厚みT)/2以上とした試料ロ、ハ、ヘ、トは、クラック4の発生率がいずれも0%であり、評価は良好で○とした。
【0025】
以上の結果より、角孔2の角部2aの曲率半径R1を(セラミックス基板1の厚みT)/2未満とした試料イ、ホのクラック4の発生率は、比較例よりは低下したものの期待通りでなく、角孔2の角部2aの曲率半径R1を(セラミックス基板1の厚みT)/2以上とした試料ロ、ハ、ヘ、トのクラック4の発生率は、0%でありこのことより、角孔2の角部2aの曲率半径R1≧(セラミックス基板1の厚みT)/2であることが好ましいと言える。
【0026】
また、従来危惧されていた後工程である電子部品製造工程の導体及び抵抗体等のペースト印刷焼成の際の熱衝撃、並びに、電子部品としての実使用時におけるチップ3の発熱による熱衝撃で、セラミックス基板1の角孔2の角部2aにクラック4が発生するという恐れも解消する。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、電子部品用のチップを収納するセラミックス基板の角孔の全ての角部が本来の角孔のコーナーを中心とする一定の曲率半径の曲面状であり、かつこの角孔の辺よりも外側にあって、角孔の少なくとも1組の対向する辺が角部と連続して内側に突出する曲面状であり、角部の一定の曲率半径よりも大きな曲率半径の、本来の角孔の辺に対する外接円であるものとしたことによって、角孔へ収納する電子部品用のチップのコーナーが角孔へ接触することを避け、セラミックス基板の製造工程やその後の電子部品製造工程、並びに電子部品としての実使用時における、角孔の角部への熱応力によるクラックの発生を防止でき、製造工程での歩留まりの向上並びに電子部品としての信頼性向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の参考例の、(b)(c)は本発明の電子部品用セラミックス基板の例の角孔の平面図である。
【図2】本発明の電子部品用セラミックス基板の角孔を示す平面図である。
【図3】本発明の電子部品用セラミックス基板の角孔へチップを収納した状態の平面図である。
【図4】本発明の電子部品用セラミックス基板の角孔成型用のポンチの斜視図である。
【図5】角孔へチップを収納したときの破断斜視図である。
【図6】セラミックス基板の製造フローを示すブロック図である。
【図7】セラミックス基板の製造工程に用いる打ち抜き用金型の概略断面図である。
【図8】従来のセラミックス基板における角孔の角部にクラックが生じる状態を示す模式図である。
【図9】(a)(b)は従来のセラミックス基板の角孔の平面図である。
【図10】従来のセラミックス基板における角孔にチップを収納した状態の平面図である。
【符号の説明】
1:セラミックス基板
2:角孔
2a:角部
2b:辺
2c:仮想角孔
3:チップ
4:クラック
5:ポンチ
6:コーナー
7:金型
11:グリーンシート
L1:長辺
L2:短辺
R1、R2:曲率半径
T:厚み

Claims (1)

  1. 電子部品を収納するための角孔を有するセラミックス基板であって、上記角孔の全ての角部が本来の角孔のコーナーを中心とする一定の曲率半径の曲面状であり、かつ上記角孔の辺よりも外側にあって、上記角孔の少なくとも1組の対向する辺が上記角部と連続して内側に突出する曲面状であり、上記一定の曲率半径よりも大きな曲率半径の、上記本来の角孔の辺に対する外接円であることを特徴とする電子部品用セラミックス基板。
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