JP4050995B2 - 押釦スイッチ用カバー部材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、リモコン、電話、OA機器又はゲーム機器等に用いられる押釦スイッチの部品である押釦スイッチ用カバー部材に関するもので、特に、シリコーンゴム製基材と樹脂製キートップとの接着剤の安定性と使用可能時間を向上させた押釦スイッチ用カバー部材とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図8は、従来の押釦スイッチ用カバー部材における紫外線硬化型接着剤の接着機構の概念図を示している。
【0003】
従来、キートップを光硬化性樹脂にて形成し、基材をシリコーンゴムにて形成し、キートップと基材とを紫外線硬化型接着剤にて一体化した、図8に示したような接着機構を採用している押釦スイッチ用カバー部材が知られている。
【0004】
紫外線硬化型接着剤を使用した具体的な接着方法としては、まず、シリコーンゴム製基材20上に紫外線硬化型接着剤21を塗布し(図8(a))、シリコーンゴム製基材20とキートップの底面の印刷面又は樹脂面22を張り合わせる(図8(b))。さらに、紫外線照射を行うことにより接着剤としての硬化が起こり(第8図(c))、シリコーンゴム製基材20と樹脂製キートップ(図示せず)の印刷面又は樹脂面22の接着が完了する(第8図(d))。ここで使用される紫外線硬化型接着剤21の光硬化型樹脂としては、アクリレートモノマー(2−ヒドロキシメチルメタアクリレート)があり、この紫外線硬化型接着剤21は、作業性、生産性を高めることが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
また、従来から、シラン化合物等を接着剤に添加することによって、接着性や耐湿性が高まることが知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0006】
図9に、従来のシランカップリング剤の効果の概念図を示す。
【0007】
つまり、従来のシランカップリング剤にあっては、紫外線硬化型接着剤成分23に、エポキシ系シラン化合物24及びアミン系シラン化合物25を添加し接着剤とした場合(図9(a))に、エポキシ系シラン化合物24が濃度の違いにより紫外線硬化型接着剤成分23と結合してしまい(図9(b))、エポキシ系シラン化合物24がシリコーンゴム製基材1の表面に集結することがほとんどなくなり、アミン系シラン化合物25が単体でシリコーンゴム製基材1の表面に存在することになる(図9(c))。したがって、アミン系シラン化合物25の単体でのカップリング効果が期待できるだけとなるため、シリコーンゴム製基材1との接着性が落ちるものと思われる。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−86667号公報(第10図)。
【0009】
【特許文献2】
特開2000−243175号公報(化1)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上のとおり、接着性や耐湿性を向上させるためにシラン化合物等を添加した紫外線硬化型接着剤は、接着成分が光硬化性樹脂との化学反応により結合してしまうため、経時変化が起こることで接着性を損なうという問題があった。
【0011】
この発明は、以上のような従来技術の問題に鑑み、シリコーンゴム製基材と樹脂製キートップの接着剤である紫外線硬化型接着剤の性能を改善し、押釦スイッチ用カバー部材を提供することを課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、シリコーンゴム製基材と樹脂製キートップとを一体化した押釦スイッチ用カバー部材であって、前記シリコーンゴム製基材と前記樹脂製キートップとを接着する接着剤の成分として、光硬化性樹脂100重量部に、エポキシ系シラン化合物とアミン系シラン化合物との反応物を0.1wt%以上含む接着剤で接着していることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記接着剤に含まれるエポキシ系シラン化合物とアミン系シラン化合物との反応物が、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランと3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランとを含むものであることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の発明は、シリコーンゴム製基材に樹脂製キートップを接着して押釦スイッチ用カバー部材を製造する方法であって、前記シリコーンゴム製基材の前記樹脂製キートップとの接着面を短波長紫外線照射処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、火炎処理から選ばれるいずれか一つの方法で表面処理した後、前記シリコーンゴム製基材と前記樹脂製キートップとを請求項1又は2に記載の接着剤により接着することを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図1乃至図8を参照して、この発明に係る実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
[発明の実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に係る押釦スイッチ用カバー部材の断面図を示している。図2は、図1の拡大図を示している。
【0017】
シリコーンゴム製基材1は、シリコーンゴム製基材1をシリコーンゴムコンパウンド(信越化学工業(株)社製、商品名:KE−951U)100重量部と、架橋材(信越化学工業(株)社製、商品名:C−8B)0.5重量部からなる原料を、成形温度180℃、成形時間5分、成形圧力180kg/cm2の条件でプレス成形によりシリコーンゴム製カバー基材1を成形し、その後200℃、60分で熱処理することによって得られる。
【0018】
樹脂製キートップ2の成形は、樹脂製キートップ2をポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製、商品名:ユーピロンH−3000R)を射出成形法により製作することによって得られる。
【0019】
樹脂製キートップ2の組成や種類、色調等については、特に限定はないが、例示するならばポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン系樹脂等があげられる。
【0020】
ただし、接着剤との接着性を考慮すると、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂は接着性が低く不利である。反面、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン系樹脂等、比較的極性の高い樹脂に対しては有効である。これは、水素結合及び濡れ性或いは相溶性等の発現によると考えられる。
【0021】
前述した処理にて成形されたシリコーンゴム製基材1を短波長紫外線照射炉にて、184.9nm及び253.7nmの両波長の紫外線を1200mJ/cm2の条件で照射した。この処理によって、シリコーンゴム製基材1の表面には表面改質されたシリコーンゴム表層1aが形成される(図2参照のこと)。
【0022】
さらに、紫外線硬化型接着剤(ケミテック(株)製、商品名:ケミシール5X845C)に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランと3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランの反応物(信越化学工業(株)製、商品名:X−93−745)を2wt%添加し、前述した処理にて成形されたシリコーンゴム製基材1と樹脂製キートップ2とを接着するための接着剤3として用いる。すなわち、ピン転写法にてシリコーンゴム製基材1の接着面となる表面に前述の接着剤3を塗布し、樹脂製キートップ2を所定位置にセットし、冶具により動かないように固定した後、シリコーンゴム製基材1の裏面より紫外線を照射し、接着剤3を硬化し一体化した。以上の処理によって、シリコーンゴム製基材1と樹脂製キートップ2の接着工程が完了する。
【0023】
以上の工程を経て製作した押釦スイッチ用カバー部材4の樹脂製キートップ2とシリコーンゴム製基材1との接着力は、実用上十分なものであり、樹脂製キートップ2を無理に剥がそうとすると、シリコーンゴム製基材1が破れてしまう程の接着力を発揮した。
【0024】
この発明の接着剤に使用される光硬化性樹脂は、可視光線、紫外線等様々な硬化タイプのものでよいが、作業性を考慮すると、室内灯等で硬化することの少ない紫外線硬化型とするのが好ましい。これは通常、200〜800nmの波長の光で硬化する。
【0025】
通常、シリコーンゴムはそのままでは他の物質との接着性がほとんどないが、前述したような表面処理を行うことにより、表面を活性化させることができる。これはオゾンによる表面の酸化作用により、シリコーンゴム表面にシラノール基やカルボキシル基といった活性基が発生し、接着剤の接着成分であるシラン化合物の加水分解性基(メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基)との親和性、反応性が増大し、結果、接着性が向上することと考えられる。具体的には、表面改質効果が安定しており、かつ設備も比較的安価な短波長紫外線照射処理を行うことが好ましい。
【0026】
低圧水銀灯により、波長が184.9nmが数%、波長が253.7nmがおよそ90%含まれる紫外線を、積算光量が1200〜6000mJ/cm2となる量をシリコーンゴムの接着面に照射するとよい。
【0027】
シリコーンゴムの紫外線照射処理装置への取り入れ取り出しは、バッチ式、コンベア式のどちらでもよい。
【0028】
[発明の実施の形態2]
次に、樹脂製キートップに図形や文字を有するこの発明の実施の形態2に係る押釦スイッチ用カバー部材について説明する。
【0029】
図3は、この発明の実施の形態2に係る第1の態様である、裏面印刷処理を含む押釦スイッチ用カバー部材の断面図を示している。
【0030】
図3に示した裏面印刷処理を含む押釦スイッチ用カバー部材4は、実施の形態1と同様にシリコーンゴム製基材1と樹脂製キートップ2とを用意し、樹脂製キートップ2の裏面に黒色インク(セイコーアドバンス(株)社製、商品名:CAVメイバン)により文字を印刷し、さらに、背景色となる白色べた印刷を重ねて印刷し、80℃、30分熱処理して乾燥し硬化させた。この処理によって、文字印刷層5とべた塗り状態の背景印刷層6が形成される。次に、この印刷層の接着剤による外観への影響を低減させるため、保護層(図示せず)として透光性の紫外線硬化型インク(帝国インク製造(株)製、商品名:UVPAL)をべた印刷し紫外線を照射して硬化させた。
【0031】
また、シリコーンゴム製基材1は、実施の形態1と同様に紫外線照射炉に入れて紫外線を照射し、その表面に表面改質されたシリコーンゴム表層1aを形成する。
【0032】
その後、文字印刷層5と背景印刷層6が形成された樹脂製キートップ2を、実施の形態1と同じ接着剤を使用してシリコーンゴム製基材1に接着し、シリコーンゴム製基材1の裏面より紫外線を照射し、接着剤3を硬化し一体化した。
【0033】
なお、樹脂製キートップ2の表面又は裏面若しくは表面と裏面の両方に、文字、記号、数字、絵柄等を形成した図柄や、遮光部を設けて文字、記号、数字、絵柄等をくりぬいた図柄が形成されていてもよい。
【0034】
樹脂製キートップ2への印刷に使用するインクは、樹脂との密着性が良好であればどのようなものでもよく、例えば、ポリエステル系、ウレタン系、アクリル系等のインクが例示され、主に、スクリーン印刷法にて形成されるが、これにこだわるものではない。印刷したインクを硬化させる手法としては、蒸発乾燥型、2液硬化型及び紫外線硬化型等から、適宜選択される。
【0035】
なお、キートップをバックライティングにより照光させる場合は、光透過性のインクを使用するとよい。
【0036】
図4は、この発明の実施の形態2に係る第2の態様である、コーティング層を含む押釦スイッチ用カバー部材の断面図を示している。
【0037】
図4に示したコーティング層を含む押釦スイッチ用カバー部材4は、実施の形態2に係る第2の態様の図柄にコーティング層7を設けたものである。コーティング層7は透明樹脂によるコーティングが考えられるが、ホットスタンプ法、蒸着法若しくは樹脂メッキ法により、その外観を金属調としたものでもよい。
【0038】
なお、コーティング層7がホットスタンプ法や蒸着法で形成された場合は、その耐久性向上のための保護層として透明樹脂によるコーティングを樹脂製キートップ2の表面に形成した方が好ましい。
【0039】
図5は、この発明の実施の形態2に係る第3の態様である、フィルム一体型キートップを含む押釦スイッチ用カバー部材の断面図を示している。
【0040】
図5に示したフィルム一体型キートップを含む押釦スイッチ用カバー部材4は、樹脂製キートップ2の表面や裏面にフィルム8を一体成形したものである。この場合、フィルム8の表面側若しくは裏面側又はその両面に必要に応じて文字記号等の印刷が施された印刷フィルム9を使用してもよい。
【0041】
図6に、この発明の実施の形態2に係る第4の態様である、一部中空形状とした中空キートップを含む押釦スイッチ用カバー部材の断面図を示している。
【0042】
図6に示した中空キートップを含む押釦スイッチ用カバー部材4は、樹脂製キートップ2を中実なものから中空なものに変更したものである。
【0043】
つまり、樹脂製キートップ2の接触面側の形状は、接着のためには平坦な部分が必要であるが、必ずしも全面が平坦である必要はなく、軽量化等のために一部に中空部10を形成としてもよい。
【0044】
また、樹脂製キートップ2の表面に遮光層11を設けて、その天面に文字、記号、数字、絵柄等をエッチング等によりくり抜いて、バックライトによる照明が漏れる表示部12を形成してもよい。
【0045】
以上に説明したように、この発明に係る押釦スイッチ用カバー部材4は、樹脂製キートップ2の種類によっていろいろな態様を取り得るものであるが、樹脂製キートップ2自体はその用途に応じて、規定の位置に1個から複数個配置される。個々の樹脂製キートップ2は独立していてもよいし、操作に支障のない範囲でお互いに連結されていてもよい。また、樹脂製キートップ2の外周部には、脱落や回転防止の為のフランジを形成してもよい。
【0046】
以下、この発明に係る押釦スイッチ用カバー部材のシリコーンゴム製基材1と樹脂製キートップ2との接着機構について説明する。
【0047】
図7に、この発明の実施の形態1及び2に係る押釦スイッチ用カバー部材のシランカップリング剤の効果の概念図を示す。
【0048】
この発明の実施の形態1及び2で採用しているシランカップリング剤(信越化学工業(株)製、商品名:X−93−745)13は、接着剤3への溶解度が低いためシリコーンゴム製基材1の表面に集結し易くなる。
【0049】
すなわち、この発明の実施の形態1及び2で用いた接着剤3では、エポキシ系シラン化合物とアミン系シラン化合物を添加した場合に、エポキシ系シラン化合物とアミン系シラン化合物との反応物13は、その両者の付加反応により生成されるものであり(図7(a))、光硬化性樹脂14との反応性が小さく、かつ分子量も大きくなることから、光硬化性樹脂14内部にとどまることがなく、接着表面に存在し易くなるため(図7(b))、カップリング効果が比較的長く持続すると考えられる。
【0050】
樹脂又はウレタン系印刷インクと接着剤との接着機構としては、化学的には、ファンデルワールス力での接着であり、被着体表面に存在する−OH基と接着剤3の重合の際、アクリレートとのO−H−Oの水素結合(電子移動)すなわち親和力による結合と考えられる。
【0051】
また、物理的には、アクリレートモノマーが被着面を侵食することにより、表面を荒らし、アンカー効果を発現するためと推定される。
【0052】
シリコーンゴムとの接着機構としては、上記化学的機構と同様にシリコーンゴム表面への紫外線照射等による表面処理により、シラノール基(Si−OH)が発生し、親和力による結合が発現する。また、シラン化合物を添加した場合は、その両者を結合させるカップリング効果を発現し、シリコーンゴムとの接着力が向上する。これは、シラン化合物が有機官能基(有機物である樹脂又はインクと結合し易い官能基)と加水分解官能基(シリコーンゴムの改質面と反応し易い「−OH基」)の両方を有するため、と考えられる。
【0053】
以下、この発明に係る実施の形態の押釦スイッチ用部材の接着性能を確認するために行った試験例について説明する。
【0054】
[試験例1]
実施の形態1に対応する図1に示した裏面印刷なしの樹脂製キートップのサンプルと、実施の形態2に対応する図3に示した裏面印刷ありの樹脂製キートップのサンプルとを、沸騰水中に30分間投入する煮沸試験を実施し、接着力を評価した。また、温度65℃、相対湿度95%RH、試験時間240時間の条件で高温高湿試験を実施し、接着力を評価した。
【0055】
表1は、煮沸試験と高温高湿試験による接着力の評価結果を示している。
【0056】
ここで、従来の配合とは、紫外線硬化型接着剤(ケミテック(株)製、商品名:ケミシール5X845C)に、エポキシ系シラン化合物(信越化学工業(株)社製、商品名:KBM−603)1wt%及びアミン系シラン化合物(信越化学工業(株)社製、商品名:KBM−5103)1wt%を添加し接着剤としたものである。また、この試験で用いたシランカップリング剤としては、具体的には、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランと3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランの反応物2wt%を用いた。
【0057】
結果として、樹脂製キートップ2とシリコーンゴム製基材1との接着力は十分なものであり、無理にはがそうとすると、シリコーンゴム製基材1が破れてしまった。また、煮沸したものと煮沸していないものとは同程度の接着力を保持していた。高温高湿試験後の接着力に著しい変化はなく、良好な接着力を保っていた。さらに、配合後の経過時間が12時間までの範囲では、煮沸試験後及び高温高湿試験後の製品であっても実用上問題なく使用できることが確認できた。
【0058】
【表1】
【0059】
[試験例2]
次に、比較例として従来の配合を採用し、この発明に用いたシランカップリング剤を0wt%、0.5wt%、1.0wt%、2.0wt%、5.0wt%添加したものを実施例として、それぞれの添加量について実施の形態1に対応するサンプルを製作し、その接着力を評価した。
【0060】
表2は、この発明に用いたシランカップリング剤の添加量による接着力の評価結果を示している。
【0061】
【表2】
【0062】
ここで、従来の配合とは、紫外線硬化型接着剤(ケミテック(株)製、商品名:ケミシール5X845C)に、エポキシ系シラン化合物(信越化学工業(株)社製、商品名:KBM−603)1wt%及びアミン系シラン化合物(信越化学工業(株)社製、商品名:KBM−5103)1wt%を添加し接着剤としたものである。
【0063】
結果として、従来の配合のもの及びこの発明に用いたシランカップリング剤が0wt%に比べ、この発明に用いたシランカップリング剤を添加したもの(0.5wt%、1.0wt%、2.0wt%、5.0wt%)の接着力は、配合後の経過時間が12時間までの範囲ではすべて良好なものであった。さらに、配合後の経過時間が24時間までの範囲では、この発明に用いたシランカップリング剤を1.0wt%以上添加したものの接着力が良好であって実用上問題なく使用できることが確認できた。
【0064】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、シリコーンゴム製基材と樹脂製キートップとを接着する接着剤の成分として、光硬化性樹脂100重量部に、エポキシ系シラン化合物とアミン系シラン化合物との反応物を0.1wt%以上含む接着剤で接着しているので、従来のアミノシラン等のシラン化合物単体若しくはその混合物を添加した紫外線硬化型接着剤に比べ、接着性が良好であり、かつ、使用可能時間が長くなる。
【0065】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の構成に加えて、接着剤に含まれるエポキシ系シラン化合物とアミン系シラン化合物との反応物が、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランと3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランとを含むものであるので、より接着性が良好で使用可能時間が長い接着性能が得られる。
【0066】
請求項3に記載の発明によれば、シリコーンゴム製基材の樹脂製キートップとの接着面を短波長紫外線照射処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、火炎処理から選ばれるいずれか一つの方法で表面処理した後、シリコーンゴム製基材と樹脂製キートップとを請求項1又は2に記載の接着剤により接着するので、光硬化性樹脂との反応性が小さく、接着表面に存在し易くなると同時に、接着剤のカップリング効果が比較的長く持続する接着が可能となる。したがって、より信頼性、生産性の高い押釦スイッチ用カバー部材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1に係る押釦スイッチ用カバー部材の断面図である。
【図2】同実施の形態1に係る押釦スイッチ用カバー部材を示した図1の拡大図である。
【図3】同実施の形態2に係る第1の態様である、裏面印刷処理を含む押釦スイッチ用カバー部材の断面図を示している。
【図4】同実施の形態2に係る第2の態様である、コーティング層を含む押釦スイッチ用カバー部材の断面図を示している。
【図5】同実施の形態2に係る第3の態様である、フィルム一体型キートップを含む押釦スイッチ用カバー部材の断面図を示している。
【図6】同実施の形態2に係る第4の態様である、中空キートップを含む押釦スイッチ用カバー部材の断面図を示している。
【図7】同実施の形態1及び2に係る押釦スイッチ用カバー部材のシランカップリング剤の効果の概念図である
【図8】従来の押釦スイッチ用カバー部材における紫外線硬化型接着剤の接着機構の概念図である。
【図9】従来のシランカップリング剤の効果を示した概念図である。
【符号の説明】
1 シリコーンゴム製基材
1a 表面改質されたシリコーンゴム層
2 樹脂製キートップ
3 接着剤(光硬化型樹脂接着剤)
4 押釦スイッチ用カバー部材
5 文字印刷層
6 背景印刷層
13 エポキシ系シラン化合物とアミン系シラン化合物の反応物
14 光硬化型樹脂
Claims (3)
- シリコーンゴム製基材と樹脂製キートップとを一体化した押釦スイッチ用カバー部材であって、前記シリコーンゴム製基材と前記樹脂製キートップとを接着する接着剤の成分として、光硬化性樹脂100重量部に、エポキシ系シラン化合物とアミン系シラン化合物との反応物を0.1wt%以上含む接着剤で接着していることを特徴とする押釦スイッチ用カバー部材。
- 前記接着剤に含まれるエポキシ系シラン化合物とアミン系シラン化合物との反応物が、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランと3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランとを含むものであることを特徴とする請求項1に記載の押釦スイッチ用カバー部材。
- シリコーンゴム製基材に樹脂製キートップを接着して押釦スイッチ用カバー部材を製造する方法であって、前記シリコーンゴム製基材の前記樹脂製キートップとの接着面を短波長紫外線照射処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、火炎処理から選ばれるいずれか一つの方法で表面処理した後、前記シリコーンゴム製基材と前記樹脂製キートップとを請求項1又は2に記載の接着剤により接着することを特徴とする押釦スイッチ用カバー部材の製造方法。
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