JP4049938B2 - ゴム組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、更には耐油性を必要とする分野に使用されるゴム/金属複合体製品の製造を可能とする、金属との接着性が高く、高モジュラス、高耐圧縮永久歪性(高耐セット性)および高耐熱性を有するゴム組成物であって、ベルト、タイヤ、ロール、型物等の製品に好適に使用することができるゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ベルト、タイヤ、ロール、型物等の多くのゴム製品は、高温加圧下で、更には加熱された油とともに、長時間使用されるようになっており、このような状態でのゴム製品の劣化は常に重要な問題となってきている。ゴム製品の劣化が激しければ保守や交換に非常に大きな時間と労力が必要であるし、時には大事故を引き起こす原因となるからである。
このような高温(約120〜150℃程度)環境下で連続使用に耐え得るポリマーとしては、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エチレン−アクリル酸エステル共重合ゴム(AEM)、エチレン−アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合ゴム(ER)、エチレン−酢酸ビニル共重合ゴム(EVM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)の共役ジエン部分を水素添加して得られる水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(HNBR)等が知られている。
【0003】
一般に、ゴム組成物としては、加硫時に硫黄を使用する硫黄加硫ゴム組成物に比べて、有機過酸化物を使用する有機過酸化物架橋ゴム組成物の方が耐熱性に優れることが知られている。
ところが、有機過酸化物架橋ゴム組成物は、金属と接着反応する硫黄を一般に含まないため、金属との接着性が悪く、金属表面にメッキ処理される真鍮と接着しない。従って、そのような有機過酸化物架橋ゴム組成物と真鍮メッキ鋼板等の金属とを組み合わせたゴム製品は、ゴム層と真鍮メッキ層との界面ではく離が発生し、それに起因した製品の破壊が起こる等の欠点を有する。
【0004】
即ち、ゴム製品に汎用されているジエン系ゴムは、通常量の硫黄を架橋剤とし、また、更に金属との接着性向上のために接着性付与剤が配合される場合には、金属との接着性には優れるものの、耐熱性に優れたものとならない。また、耐熱性向上のために、接着付与剤を配合せず、硫黄の配合量を通常量より少なくし、硫黄供与体等の加硫促進剤を併用する場合には、耐熱性は向上するものの、金属との接着性は低下し、接着性を損なう結果となる。また、更に耐熱性向上のために架橋剤として有機過酸化物を用いると、耐熱性は優れるものの、金属との接着性に劣る。
【0005】
一方、非ジエン系ゴムは、硫黄による加硫は困難となり、使用に際し、有機過酸化物等によって架橋することが必要となる。即ち、金属との接着性が良好な硫黄を架橋剤として用いることができないため、非ジエン系ゴムを直接金属と接着させることは極めて困難であり、接着性を発現させる処方に関し、多くの検討がなされている。しかし、例えば、特開昭55−125155号公報では、有機過酸化物架橋可能なポリマー、有機過酸化物、エポキシ樹脂および2,4−ジメルカプト−6−R−1,3,5−トリアジンからなるポリマー組成物は、真鍮との接着性が良好である旨の記載があるが、検証結果および実施例記載の内容から、塩素化ポリエチレン等の塩素含有ポリマー中の塩素と2,4−ジメルカプト−6−R−1,3,5−トリアジンの反応、2,4−ジメルカプト−6−R−1,3,5−トリアジンとエポキシ樹脂との反応、2,4−ジメルカプト−6−R−1,3,5−トリアジンと真鍮中の銅との反応を利用するもので、非塩素含有ポリマーでは接着反応しないため、接着性が不足し、現在要求されている技術レベルから見ると、接着性が十分であるとはいえないという欠点があった。
即ち、ジエン系ゴムであると非ジエン系ゴムであるとを問わず、上記のような問題を解決し、金属との接着性および耐熱性の両者を満足するゴムが求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、金属(真鍮)との接着性が高く、高モジュラス、高耐圧縮永久歪性および高耐熱性を有するため、ベルト、タイヤ、ロール、型物等のゴムと金属の複合体に好適に用いることのできるゴム組成物を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、原料ゴム100重量部、下記式1で示される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジン0.1〜15重量部および前記原料ゴムと架橋可能なエポキシ基を有するポリマー1〜100重量部を含有し、
前記原料ゴムが、エチレン−アクリル酸エステル共重合ゴム、エチレン−アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合ゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムおよびアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記ポリマーが、主鎖としてエチレン系ポリマーまたはジエン系ポリマーを有し、グラフト鎖として少なくとも1つのエポキシ基を有するグラフト共重合体であるゴム組成物を提供する。
【化3】
Figure 0004049938
(式中、Rはメルカプト基を表す。)
【0010】
前記原料ゴムが有機過酸化物架橋可能な原料ゴムであり、前記エポキシ基を有するポリマーが有機過酸化物架橋可能なポリマーであるのが好ましい一態様である。
【0011】
前記有機過酸化物架橋可能な原料ゴムが、エチレン−アクリル酸エステル共重合ゴム、エチレン−アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合ゴムおよびエチレン−酢酸ビニル共重合ゴムからなる群より選ばれる少なくとも一種であるのが好ましい一態様である。
【0012】
前記有機過酸化物架橋可能な原料ゴムが、エチレン−プロピレン共重合ゴムおよび/またはエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムであるのが好ましい一態様である。
【0013】
前記有機過酸化物架橋可能な原料ゴムが、塩素化ポリエチレンゴムおよび/またはクロロスルホン化ポリエチレンゴムであるのが好ましい一態様である。
【0014】
前記有機過酸化物架橋可能な原料ゴムが、ジエン系ゴムであるのが好ましい一態様である。
【0015】
前記ジエン系ゴムが、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムであるのが好ましい一態様である。
【0016】
更に、トリアリルイソシアヌレートおよび/またはトリアリルシアヌレート0.1〜30重量部を含有するのが好ましい。
【0017】
更に、シリカ1〜50重量部を含有するのが好ましい。
【0018】
前記原料ゴムが硫黄架橋可能な原料ゴムであり、前記エポキシ基を有するポリマーが硫黄架橋可能なポリマーであるのが好ましい一態様である。
【0019】
また、本発明は、エポキシ基を有する原料ゴム100重量部および下記式1で示される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジン0.1〜15重量部を含有し、
前記エポキシ基を有する原料ゴムが、
エポキシ基を有するモノマーを共重合成分とするアクリルゴム、
グリシジル(メタ)アクリレートを共重合成分とするエチレン−アクリル酸エステル系共重合体、
EVA、AEM、EPM、BRにグリシジルメタクリレートをグラフト重合させたグラフト共重合体、
およびエポキシ化天然ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種であるゴム組成物を提供する。
【化4】
Figure 0004049938
(式中、Rはメルカプト基、アルコキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基およびN−アルキル−N−アリールアミノ基からなる群より選ばれる基を表す。)
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の第一の態様は、原料ゴム100重量部、上記式1で示される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジン0.1〜15重量部および前記原料ゴムと架橋可能なエポキシ基を有するポリマー1〜100重量部を含有するゴム組成物である。
【0024】
本発明の第一の態様に用いられる原料ゴムは、特に限定されない。有機過酸化物架橋可能なゴム、硫黄架橋可能なゴムのいずれも用いられ、また、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴムのいずれも用いられる。
【0025】
ジエン系ゴムは、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、ポリブタジエンゴム(BR)(高シスブタジエンゴム、低シスブタジエンゴム)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、液状1,2−ポリブタジエン、液状スチレン−ブタジエン共重合ゴム、液状ポリクロロプレンが挙げられる。これらは、一般に硫黄架橋が用いられるが、有機過酸化物架橋することもでき、本発明においては、有機過酸化物架橋可能な原料ゴムおよび硫黄架橋可能な原料ゴムとして用いることができる。
【0026】
非ジエン系ゴムは、例えば、水素化スチレン−ブタジエン共重合ゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−アクリル酸エステル共重合ゴム(AEM)(例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合ゴム(EMA))、エチレン−酢酸ビニル共重合ゴム(EVM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、イソブチレン−パラメチルスチレン共重合体の臭素化物(BIMS)、ヒドリンゴム(ECO)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム(例えば、メチルビニルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム)、含イオウゴム(例えば、ポリスルフィドゴム)、フッ素ゴム(例えば、ビニリデンフルオロライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム)が挙げられる。これらは、多くの場合、有機過酸化物架橋が用いられ、本発明においては、有機過酸化物架橋可能な原料ゴムとして用いることができる(但し、アクリルゴム等の一部のゴムは、有機過酸化物非架橋型のポリマーである)。
【0027】
本発明の第一の態様に用いられる上記式1で示される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジンは、式中のRがメルカプト基、アルコキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノシクロアルキルアミノ基、ジシクロアルキルアミノ基およびN−アルキル−N−アリールアミノ基からなる群より選ばれる基であるものである。金属およびエポキシ基を有するポリマーとの結合速度、即ち架橋反応と接着反応のタイミングを考慮すると、Rがメルカプト基である2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジンが好ましい。また、Rが異なる2種類以上の上記式1で示される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジンを併用してもよい。
【0028】
本発明の第一の態様のゴム組成物における上記式1で示される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジンの含有量は、好ましくは、本発明の第一の態様に用いられる原料ゴム100重量部に対して0.1〜15重量部である。0.1重量部未満であると、ゴム組成物と金属との接着性が不十分になる場合がある。15重量部を超えると、架橋を阻害し、モジュラスが低下する場合がある。また、15重量部を超えると、後述するエポキシ基を有するポリマーとの反応が多く起こるため、ゴム組成物中のエポキシ基を有するポリマーのうち、原料ゴムと結合するものが少なくなり、ゴム組成物と金属との接着性が不十分になる場合もある。
【0029】
本発明の第一の態様に用いられるエポキシ基を有するポリマーは、有機過酸化物または硫黄により原料ゴムと架橋させることが可能なものであって、更にエポキシ基を有するものである。ビスフェノールA型等のエポキシ樹脂は、有機過酸化物または硫黄による架橋が起こりにくいので、本発明の第一の態様に用いられるエポキシ基を有するポリマーに含まれない。本発明の第一の態様に用いられるエポキシ基を有するポリマーの代わりにエポキシ樹脂を用いると、原料ゴムとの結合が少ないため、ゴム組成物と金属との接着性が不十分となる。
本発明の第一の態様のゴム組成物におけるエポキシ基を有するポリマーの含有量は、有するエポキシ基の量等にもよるが、一般に原料ゴム100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは5〜50重量部である。1重量部未満であると、ゴム組成物と金属との接着性が不十分になる場合がある。100重量部を超えると、ゴム組成物と金属との接着性および耐熱性が低下する場合がある。5〜50重量部であると、ゴム組成物と金属との接着性、モジュラス、耐圧縮永久歪性および耐熱性のバランスがより良好となる。
【0030】
本発明の第一の態様に用いられるエポキシ基を有するポリマーは、特に限定されず、原料ゴムが有機過酸化物架橋可能な原料ゴムである場合には、有機過酸化物により原料ゴムと反応するものであればよく、原料ゴムが硫黄架橋可能な原料ゴムである場合には、硫黄により原料ゴムと架橋するものであればよい。
ゴム組成物と金属との接着性を考慮すると、エポキシ基を有するポリマーの好適例として、グラフト共重合体であって、主鎖が原料ゴムと架橋可能であり、グラフト鎖の少なくとも1つがエポキシ基を有するものが挙げられる。
【0031】
グラフト共重合体の主鎖は、特に限定されないが、原料ゴムが有機過酸化物架橋可能な原料ゴムである場合には、エチレン系ポリマーが好ましく、原料ゴムが硫黄架橋可能な原料ゴムである場合には、ジエン系ポリマーが好ましい。
エチレン系ポリマーは、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体(例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA))、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、ポリプロピレン(PP)が挙げられる。
ジエン系ポリマーは、例えば、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレン(IR)が挙げられる。
グラフト鎖の単量体としては、グリシジルメタクリレート(GMA)等が好適に用いられる。
主鎖およびグラフト鎖は、それぞれ1種類の単量体から得られたものでもよく、2種類以上の単量体から得られたものでもよい。
グラフト共重合体は、主鎖にグラフト鎖が分岐して結合した構造であり、主鎖と原料ゴムとが架橋によって、かつ、グラフト鎖であるエポキシ基が上記式1で示される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジンと反応し、グラフト共重合体を介して、原料ゴムと金属と接着すると考えられる。
原料ゴムとグラフト共重合体であるエポキシ基を有するポリマーの組み合わせの好適例として、CMとEMA−g−GMA(主鎖がEMAでグラフト鎖がGMAであるグラフト共重合体)、EPMとEMA−g−GMA、AEMとEMA−g−GMA、NBRとEMA−g−GMA、EPDMとEMA−g−GMA、NBRとBR−g−GMA(主鎖がBRでグラフト鎖がGMAであるグラフト共重合体)が挙げられる。
【0032】
上述したように、特開昭55−125155号公報においては、有機過酸化物架橋可能なポリマー、有機過酸化物、エポキシ樹脂および2,4−ジメルカプト−6−R−1,3,5−トリアジンからなるポリマー組成物に関する記載があるが、この組成物は、塩素化ポリエチレン等の塩素含有ポリマー中の塩素と2,4−ジメルカプト−6−R−1,3,5−トリアジンの反応、2,4−ジメルカプト−6−R−1,3,5−トリアジンとエポキシ樹脂との反応、2,4−ジメルカプト−6−R−1,3,5−トリアジンと真鍮中の銅との反応を利用するもので、非塩素含有ポリマーでは接着反応しないため、接着性が不十分であった。また、前記公報では、非塩素含有ポリマーの接着性については何ら言及されておらず、実施例においても塩素化ポリエチレンゴムおよびクロロスルホン化ポリエチレンゴムを用いている。更に、エポキシ樹脂の有機過酸化物架橋による架橋性については何ら言及されておらず、実施例においても有機過酸化物架橋性のないエポキシ樹脂を用いている。即ち、エポキシ樹脂は、ポリマー中の塩素および真鍮中の銅と反応した2,4−ジメルカプト−6−R−1,3,5−トリアジンとの間に入り橋掛けすることによる金属との接着の効果を期待して添加されたものと推察され、非塩素含有ポリマーでの同反応機構による接着反応は期待できず、また、本発明の如きエポキシ基含有ポリマーが非塩素含有ポリマーと共架橋するものでもない。更に、前記公報の組成物は、本発明の組成物において塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム等の塩素含有ポリマーを原料ゴムとして用いる場合におけるエポキシ基含有ポリマーと塩素含有ポリマーとの接着反応とも、共架橋反応において、異なる作用機構によるものである。
【0033】
これに対し本発明の第一の態様は、一般的に金属との接着性に大きく寄与していると考えられているエポキシ樹脂ではなく、これ以外のエポキシ基を有するポリマーを用いることにより、接着性が向上することを知見したものである。この理由は解明されていないが、一般のエポキシ樹脂はラジカル反応性に乏しく水素引き抜きが起こりにくく、また、主鎖に芳香環以外の二重結合を持たないためエポキシ基以外での架橋反応が起こりにくいのに対し、本発明の第一の態様のゴム組成物に用いられるエポキシ基を有するポリマーは、例えば、エチレン等、メチレン連鎖のラジカル反応性が高く、または、主鎖に芳香環以外の二重結合等の架橋反応に寄与する部分を有するため、原料ゴムとの結合が効果的に生じ、同時に、2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジンは、メルカプト基を介して金属と結合し、同一分子内の他のメルカプト基を介してエポキシ基の開環反応によるエポキシ基を有するポリマーとの結合を生成するからであると考えられる。
即ち、原料ゴムとエポキシ基を有するポリマーの結合、エポキシ基を有するポリマーと上記式1で示される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジンの結合および上記式1で示される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジンと金属中の銅との結合が同時に起こるので、本発明の第一の態様のゴム組成物および金属が結合して一体となる。また、エポキシ基を有するポリマーには、金属と反応して結合するものもあり、そのようなエポキシ基を有するポリマーを選択する場合には、本発明のゴム組成物と金属との結合がより強固なものとなる。
【0034】
本発明の第一の態様のゴム組成物は、架橋剤として、原料ゴムが有機過酸化物架橋可能な原料ゴムである場合には有機過酸化物、原料ゴムが硫黄架橋可能な原料ゴムである場合には硫黄を含有するのが好ましい。
有機過酸化物は、ゴム架橋に一般に用いられるものであれば特に限定されないが、ゴム組成物中において加工時の温度で架橋反応が極度に進行しない有機過酸化物であるのが好ましく、分解温度(半減期が10時間になる温度)が80℃以上であるジアルキルパーオキサイドが好ましい。具体的には、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、4,4´−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレリック酸n−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが例示される。
ゴム組成物における有機過酸化物の含有量は、好ましくは、原料ゴム100重量部に対して1〜10重量部である。1重量部未満であると、架橋密度が低くなり、モジュラス等が損なわれる場合がある。10重量部を超えると、架橋密度が高くなり、破断伸びが低くなる場合がある。上記範囲であると、架橋密度が適当になり、その結果、モジュラスおよび破断伸びが良好となる。
硫黄は、ゴム架橋に一般に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄が挙げられる。
ゴム組成物における硫黄の含有量は、好ましくは、原料ゴム100重量部に対して0.1〜30重量部、更に好ましくは0.5〜5重量部である。0.1重量部未満であると、架橋密度が低くなり、モジュラス等が損なわれる場合がある。30重量部を超えると、架橋密度が高くなり、破断伸びが低くなる場合がある。
【0035】
本発明の第一の態様のゴム組成物は、上記成分以外にも、金属との接着性、モジュラス、耐圧縮永久歪性および耐熱性を損なわない範囲において、必要に応じて、架橋助剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、軟化剤等の添加剤を配合することができる。
【0036】
架橋剤として有機過酸化物を用いる場合においては、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレートおよび/またはトリアリルシアヌレートを配合すると、モジュラスおよび金属との接着性が向上するので好ましい。
トリアリルイソシアヌレートおよびトリアリルシアヌレートは、3官能の重合性モノマーであり、有機過酸化物架橋のゴム組成物の架橋助剤として用いられ、本発明の第一の態様のゴム組成物に用いれば、架橋密度を高くしてモジュラスを向上させることができる。トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレートの一方のみを使用してもよいし、両方を併用してもよい。
ゴム組成物におけるトリアリルイソシアヌレートおよび/またはトリアリルシアヌレートの含有量は、エポキシ基を有するポリマーのエポキシ基の含有量等にもよるが、一般に本発明の第一の態様に用いられる原料ゴム100重量部に対して0.1〜30重量部であるのが好ましい。
【0037】
充填剤は、例えば、シリカ(ホワイトカーボン)、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。中でも、シリカが好ましい。シリカは、酸性配合剤であり、上記式1で示される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジンの反応速度調整に有効に寄与し、物性および接着性を安定化する。
シリカ(ホワイトカーボン)は、特に限定されないが、例えば、ゴム用充填剤として用いられる乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、特開昭62−62838号公報に記載されている沈降シリカが挙げられる。中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。湿式法ホワイトカーボンの主成分である含水ケイ酸は、窒素吸着比表面積(BET法)が50〜400m2 /g、好ましくは100〜250m2 /gの含水ケイ酸を好適に挙げることができる。更に、含水ケイ酸は、pH(水素イオン濃度)7.0未満のものであるのが好ましく、pH6.7以下であるものがより好ましい。pHが上記範囲であると、2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジンの早期反応を抑制できるからである。尚、窒素吸着比表面積は、ASTM D3037 81に準じ、BET法で測定される値であり、pHは、シリカを水に撹拌し、ろ別後、ろ液のpHをpHメータを用いて測定された値である。
本発明の第一の態様のゴム組成物におけるシリカの含有量は、エポキシ基を有するポリマーにおけるエポキシ基の量等にもよるが、一般に原料ゴム100重量部に対して1〜50重量部であるのが好ましい。
【0038】
トリアリルイソシアヌレートおよび/またはトリアリルシアヌレートならびにシリカは、別々に配合しても効果を発揮するが、トリアリルイソシアヌレートおよび/またはトリアリルシアヌレートならびにシリカを含有する混合物を加熱処理して得られる固化物にして配合するのが特に好ましい。この固化物は、トリアリルイソシアヌレート等が好ましくは30〜80重量%、より好ましくは50〜70重量%シリカ表面に存在する固化物である。
この固化物生成の詳細は不明であるが、重合性モノマーであるトリアリルイソシアヌレートおよび/またはトリアリルシアヌレートが、シリカ粒子の表面で、加熱処理により、シリカ粒子表面に存在する水酸基等を触媒として、その一部が重合反応することにより生成したものであると考えられる。
加熱処理の条件は、トリアリルイソシアヌレートおよび/またはトリアリルシアヌレートとシリカとが固化する条件であればいかなる条件でもよいが、好ましくは150℃以上、更に好ましくは160〜200℃の温度で、好ましくは10分以上、更に好ましくは30分〜24時間程度空気中で加熱する。この範囲の加熱処理条件とすると効率的に固化物を得ることができる。
【0039】
老化防止剤は、耐熱性老化防止剤、耐候性老化防止剤等でゴム組成物に通常使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、ナフチルアミン系(フェニル−α−ナフチルアミン等)、ジフェニルアミン系(オクチル化ジフェニルアミン、4,4´−ビス(α,α´−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等)、p−フェニレンジアミン系(N−イソプロピル−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N´−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等)等のアミン系老化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;モノフェノール系(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等)、ビス、トリス、ポリフェノール系(テトラキス−[メチレン−3−(3´,5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等)等のフェノール系老化防止剤が挙げられる。
【0040】
軟化剤は、例えば、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系等のプロセスオイル;ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油等の植物油、ロジンが挙げられる。
【0041】
可塑剤は、例えば、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ−n−オクチルフタレート等のフタル酸エステル系;ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ−(ブトキシエトキシエチル)アジペート等のアジピン酸エステル系;トリ−(2−エチルヘキシル)トリメリテート等のトリメリット酸エステル系等の合成可塑剤が挙げられる。
【0042】
本発明の第二の態様は、エポキシ基を有する原料ゴム100重量部および上記式1で示される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジン0.1〜15重量部を含有するゴム組成物である。
【0043】
本発明の第二の態様に用いられる原料ゴムは、エポキシ基を有するゴムであれば、特に限定されない。エポキシ基を有するゴムは、例えば、エポキシ基を有する共重合成分を用いて得られる共重合ゴム、グラフト共重合体であって該グラフト共重合体のグラフト鎖の少なくとも1つがエポキシ基を有するもの、ジエン系ゴムの主鎖中の不飽和結合をエポキシ化して得られるもの、これらを組み合わせたものが挙げられる。
エポキシ基を有する共重合成分を用いて得られる共重合ゴムは、例えば、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシヘキサヒドロベンジル(メタ)アクリレート、4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルベンジル(メタ)アクリレート、2−(4´−グリシジルオキシフェニル)−2−〔4´−(メタ)アクリロキシエチルオキシフェニル〕プロパン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸グリシジルエステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸グリシジルエステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルテレフタル酸グリシジルエステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロテレフタル酸グリシジルエステル、3,4−エポキシヘキサヒドロベンジル(メタ)アクリルアミド、4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルベンジル(メタ)アクリルアミド等のエポキシ基を有するモノマーの少なくとも1つを共重合成分とするアクリルゴム;グリシジルメタクリレート(GMA)、グリシジルアクリレート等を共重合成分とするエチレン−アクリル酸エステル系共重合ゴム(例えば、エチレン−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレート共重合ゴム、エチレン−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレート共重合ゴム、エチレン−アクリル酸エステル−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合ゴム等)が挙げられる。
グラフト共重合体であって該グラフト共重合体のグラフト鎖の少なくとも1つがエポキシ基を有するものは、例えば、EVA、AEM、EPM、BR等にグリシジルメタクリレート(GMA)等をグラフト共重合したものが挙げられる。
ジエン系ゴムの主鎖中の不飽和結合をエポキシ化して得られるものは、例えば、天然ゴムのイソプレン単位を好ましくは25〜75%エポキシ化して得られるエポキシ化天然ゴムが挙げられる。
エポキシ基を有する原料ゴムは、有機過酸化物架橋可能なゴム、硫黄架橋可能なゴム、その他の加硫系を用いるゴム等のいずれも用いられ、また、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴムのいずれも用いられる。
【0044】
本発明の第二の態様に用いられる上記式1で示される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジンは、上述した本発明の第一の態様の場合のものと同様である。
【0045】
ゴム組成物における上記式1で示される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジンの含有量は、好ましくは、エポキシ基を有する原料ゴム100重量部に対して0.1〜15重量部である。0.1重量部未満であると、ゴム組成物と金属との接着性が不十分になる場合がある。15重量部を超えると、架橋を阻害し、モジュラスが低下する場合がある。
【0046】
本発明の第二の態様のゴム組成物は、架橋剤として、エポキシ基を有する原料ゴムが有機過酸化物架橋可能な原料ゴムである場合には有機過酸化物、エポキシ基を有する原料ゴムが硫黄架橋可能な原料ゴムである場合には硫黄、その他の加硫系で架橋可能な原料ゴムである場合には適切な加硫系を含有するのが好ましい。
有機過酸化物および硫黄ならびにゴム組成物におけるこれらの含有量は、上述した本発明の第一の態様の場合と同様である。また、例えば、アクリルゴム等、原料ゴムによって適切な加硫系がある場合には、適切な加硫系を適正量含有するのが好ましい。
【0047】
本発明の第二の態様のゴム組成物は、上記成分以外にも、金属との接着性、モジュラス、耐圧縮永久歪性および耐熱性を損なわない範囲において、必要に応じて、架橋助剤、補強剤、充填剤、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、軟化剤等の添加剤を配合することができる。
架橋助剤、充填剤、老化防止剤および軟化剤は、本発明の第一の態様の場合と同様のものを用いることができる。
【0048】
本発明の第二の態様のゴム組成物に用いられる2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジンは、メルカプト基を介して金属と結合し、同一分子内の他のメルカプト基を介してエポキシ基を有する原料ゴムと結合する。
即ち、エポキシ基を有する原料ゴムと上記式1で示される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジンの結合および上記式1で示される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジンと金属の結合が同時に起こるので、本発明の第二の態様のゴム組成物および金属が結合して一体となる。また、エポキシ基を有する原料ゴムには、金属と反応して結合するものもあり、そのようなエポキシ基を有する原料ゴムを選択する場合には、本発明のゴム組成物と金属との結合がより強固なものとなる。
【0049】
本発明のゴム組成物は、金属との接着性が高く、高モジュラス、耐圧縮永久歪性(耐セット性)および高耐熱性を有するので、ゴムと金属の複合体に関し、ベルト、タイヤ、ロール、型物等広範な用途に用いることができる。特に銅または銅を含む合金との接着性が高いので、真鍮(黄銅)、青銅メッキ鋼板との複合ゴム製品に極めて好適に用いることができる。
【0050】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
<ゴム組成物の調製>
以下に示される原料をそれぞれ第1表〜第3表に示される量用いて、第1表〜第3表に示される各ゴム組成物を得た。
(1)原料ゴム
▲1▼CM(塩素化ポリエチレン):エラスレン301A、昭和電工社製
▲2▼EPM(エチレン−プロピレン共重合ゴム):JSR EP11、日本合成ゴム社製
▲3▼EMA−AA(エチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合ゴム):ベーマックG、三井デュポン・ポリケミカル社製
▲4▼EMA(エチレン−アクリル酸エステル共重合ゴム):エスプレンEMA−2152、住友化学工業社製
▲5▼NBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム):Nipol1042AL、日本ゼオン社製
▲6▼EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム):三井EPT4070、三井化学社製
【0051】
(2)エポキシ基を有する原料ゴム
▲1▼ACM(エポキシ基を有する共重合成分を用いて得られるACM):AR31、日本ゼオン社製
▲2▼EMA−GMA(エチレン−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレート共重合ゴム):エスプレンEMA−2752、住友化学工業社製
【0052】
(3)エポキシ基を有するポリマー
▲1▼BR−g−GMA(GMAをグラフト重合したポリブタジエンゴム)
▲2▼E−MA−GMA(エチレン、アクリル酸メチル、GMAの共重合体):ボンドファースト7L、住友化学工業社製
▲3▼ACM(エポキシ基を有する共重合成分を用いて得られるACM):AR31、日本ゼオン社製
【0053】
(4)配合剤
SRF級カーボンブラック:旭#50、旭カーボン社製
シリカ:ニップシールVN3、日本シリカ社製
酸化亜鉛(ZnO)
ステアリン酸
老化防止剤
▲1▼ノンフレックスOD−3、精工化学社製
▲2▼ノクラックMBZ、大内新興化学社製
ワックス(WAX):サンワックス171P、三洋化成社製
2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン:ZISNET−F、三協化成社製
トリアリルイソシアヌレート(TAIC)
ジアリルフタレート(DAP)
【0054】
(5)架橋剤
▲1▼1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン:パーカドックス14/40(40重量%品)、化薬アクゾ社製
▲2▼硫黄
【0055】
(6)架橋促進剤
▲1▼メチレンジアニリン(MDA)
▲2▼ジ−o−トリルグアニジン(DT)
▲3▼テトラメチルチウラムジサルファイド(TT)
▲4▼テトラメチルチウラムモノサルファイド(TS)
▲5▼N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CZ)
▲6▼イソシアヌル酸
▲7▼オクタデシルトリメチル・アンモニウムブロマイド
▲8▼ジフェニルウレア
【0056】
上記のようにして得られたゴム組成物について以下の試験を行った。
<接着性試験>
接着性試験は、JIS K6256「金属片と加硫ゴムの90度はく離試験」の規定に準拠して行った。
得られた各ゴム組成物をラボ用ロールにより厚み2.5mmのシートを成形し、真鍮板と組み合わせ、圧着した。但し、はく離時にチャックでつかむ部分には、セロハン紙を配し、上下両層が接着しないようにした。その後、ラボ用プレス成形機を用いて、160℃で60分間、面圧3.0MPaで加圧加硫し、一体化して、真鍮とゴムの複合体である試験片を得た。試験片を室温に24時間放置した後、2.54cm幅に切り出し、ゴム組成物と真鍮板との間をはく離させるはく離試験を行った。はく離強さの測定は、JIS K6256「金属片と加硫ゴムの90度はく離試験」の規定に準拠し、JIS K6256に規定されている引張試験機を用い、引張速さ50mm/minの条件で行った。はく離強さの値が150N/25mm以上のときを接着性が良好であるとした。
【0057】
<引張応力(モジュラス)試験>
得られた各ゴム組成物を160℃で60分間、加圧加硫し、厚さ2mmをシートに成形した。JIS K6251の規定に準拠して、このシートからダンベル状3号形試験片を打ち抜き、JIS K6251の規定に準拠して100%モジュラス(M100 )の測定を行った。
【0058】
<耐圧縮永久歪性試験>
得られた各ゴム組成物を160℃で60分間、加圧加硫し、JIS K6262「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久ひずみ試験方法」の5項「圧縮永久ひずみ試験方法」の規定に準拠して、JIS K6262の5.3.1に規定されている大型試験片を成形した。この試験片について、JIS K6262「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久ひずみ試験方法」の規定に準拠して、25%の圧縮を加え、150℃、72時間の老化条件で、圧縮永久ひずみを測定した。
【0059】
<耐熱性試験>
得られた各ゴム組成物を160℃で60分間、加圧加硫し、厚さ2mmのシートを成形した。JIS K6257「加硫ゴムの老化試験方法」の4項「空気加熱老化試験(ノーマルオーブン法)」の規定に準拠して、このシートからダンベル状3号形試験片を打ち抜き、JIS K6257の規定に準拠して、150℃、168時間の条件で空気加熱老化処理を行い、該処理前後における破断伸びを測定し、処理による破断伸びの変化率(ΔEB )を算出した。
【0060】
結果を第1表〜第3表に示す。
本発明の第一の態様のゴム組成物(実施例1〜21)は、金属との高い接着性を示し、モジュラス、耐圧縮永久歪性および耐熱性にも優れることが分かる。これに対して、上記式1で表される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジンおよびエポキシ基を有するポリマーを欠く場合(比較例1、3、5、7、9、11および13)は金属と全く接着せず、後者のみを欠く場合(比較例2、4、6、8、10、12および14)は接着するものの接着力は極めて弱く、モジュラス等の物性にも劣る。
トリアリルイソシアヌレートおよび/またはトリアリルシアヌレートを含有する場合には、その含有量に応じてモジュラスが更に向上し、シリカを含有する場合には、金属との接着性およびモジュラス等の物性が更に向上することが分かる(実施例7および11〜16ならびに17〜21)。
【0061】
本発明の第二の態様のゴム組成物(実施例22および23)は、金属との高い接着性を示し、モジュラス、耐圧縮永久歪性および耐熱性にも優れることが分かる。これに対して、上記式1で表される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジンを欠く場合(比較例15および16)は金属と全く接着しない。
【0062】
【表1】
Figure 0004049938
【0063】
【表2】
Figure 0004049938
【0064】
【表3】
Figure 0004049938
【0065】
【表4】
Figure 0004049938
【0066】
【表5】
Figure 0004049938
【0067】
【表6】
Figure 0004049938
【0068】
【発明の効果】
本発明のゴム組成物は、金属との接着性が高く、高モジュラス、高耐圧縮永久歪性および高耐熱性を有するため、ベルト、タイヤ、ロール、型物等のゴムと金属の複合体に用いることができる。また、本発明のゴム組成物は、銅または銅を含む合金との接着性が特に高いため、真鍮(黄銅)、青銅メッキ鋼板との複合ゴム製品に好適に用いることができる。

Claims (11)

  1. 原料ゴム100重量部、下記式1で示される2,4−ジメルカプト−6−置換−1,3,5−トリアジン0.1〜15重量部および前記原料ゴムと架橋可能なエポキシ基を有するポリマー1〜100重量部を含有し、
    前記原料ゴムが、エチレン−アクリル酸エステル共重合ゴム、エチレン−アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合ゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムおよびアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
    前記ポリマーが、主鎖としてエチレン系ポリマーまたはジエン系ポリマーを有し、グラフト鎖として少なくとも1つのエポキシ基を有するグラフト共重合体であるゴム組成物。
    Figure 0004049938
    (式中、Rはメルカプト基を表す。)
  2. 前記主鎖としてエチレン系ポリマーを有し、グラフト鎖として少なくとも1つのエポキシ基を有する前記グラフト共重合体において、前記主鎖がエチレン−アクリル酸メチル共重合体であり、前記グラフト鎖の単量体がグリシジルメタクリレートである請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記主鎖としてジエン系ポリマーを有し、グラフト鎖として少なくとも1つのエポキシ基を有するグラフト共重合体において、前記主鎖がポリブタジエンゴムであり、前記グラフト鎖の単量体がグリシジルメタクリレートである請求項1に記載のゴム組成物。
  4. 更に、トリアリルイソシアヌレートおよび/またはトリアリルシアヌレート0.1〜30重量部を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
  5. 更に、シリカ1〜50重量部を含有する請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
  6. 更に、架橋剤を含有する請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
  7. 前記架橋剤が、有機過酸化物または硫黄である請求項6に記載のゴム組成物。
  8. 前記エチレン−アクリル酸エステル共重合ゴム、エチレン−アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合ゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムに対する架橋剤が、前記有機過酸化物である請求項7に記載のゴム組成物。
  9. 前記アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムに対する架橋剤が、前記硫黄である請求項7に記載のゴム組成物。
  10. 前記有機過酸化物が、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、4,4´−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレリック酸n−ブチルおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7または8に記載のゴム組成物。
  11. 前記架橋剤の量が、前記原料ゴム100重量部に対して、1〜10重量部である請求項6〜10のいずれかに記載のゴム組成物。
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