JP4048829B2 - 渦電流減速装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両に用いられる主ブレーキを補助するディスクタイプの渦電流減速装置に関し、さらに詳しくは、制動時の磁気効率に優れ、簡易な構造で小型、軽量化が可能であるとともに、長時間にわたって使用した場合であっても、制動ディスクの変形が抑制され、安定した制動力を確保することができる渦電流減速装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トラックやバス等の自動車用の制動装置には、主ブレーキであるフットブレーキ、補助ブレーキである排気ブレーキの他に長い坂道の降坂等において安定した減速を行い、さらにフットブレーキのベーパーロック現象や焼損を防止するために、渦電流減速装置が使用されている。
【0003】
最近では、渦電流減速装置に対する要求も多様化し、製造コストの低減を図るとともに、小型車への搭載も可能にするような、車両への搭載性を向上させる要請が強くなっている。この搭載性の向上には、小型で軽量化が図れ、かつ簡易構造で経済性に優れることが要求される。
【0004】
上記の要請に対して、ディスクタイプの渦電流減速装置を前提として、永久磁石の磁極面を制動ディスクに対向させて接近させ、ディスク自体に制動トルクを発生させる方式(以下、「磁石極面対向方式」という場合がある)が開発されている。この方式であれば、永久磁石の磁力線を短い磁路長さで制動ディスクに付加できるので、磁気回路の磁気抵抗が小さくなり、磁気効率が向上し、制動トルクを増大させることができる。
【0005】
図1および図2は、永久磁石を用いた「磁石極面対向方式」の渦電流減速装置の構成例を示す断面図である。図1は制動時における装置構成を示しており、図2は非制動時における装置構成を示している。
【0006】
この渦電流減速装置では、回転軸1に取り付けられた強磁性体からなる制動ディスク2と、この制動ディスク2の側方に配置された非磁性体からなる案内筒3から構成される。案内筒3は車両等の非回転部分に支持されており、その内部には、制動ディスク2の制動面に対し垂直方向に前後進が可能な強磁性体からなる保持リング4が収容され、さらに、案内筒3には保持リング4を前後進させるシリンダー5が設けられている。一方、案内筒3の制動ディスクと対向する端面には、強磁性材(ポールピース)8が配置される。
【0007】
保持リング4の制動ディスク2と対向する側面には、複数の永久磁石7が周方向に配置されている。永久磁石7の磁極の方向は制動ディスク2の制動面に対向しており、隣接する永久磁石の磁極が互いに逆向きに配置されている。各永久磁石7の磁極面に対向する強磁性材8は、周方向に永久磁石7と対をなすように複数配置される。
【0008】
永久磁石7の駆動機構は、案内筒3の外端壁にシリンダー5が配置され、シリンダー5に嵌合するピストンロッド6が案内筒3の外端壁を貫通して保持リング4に結合している。このように構成することによって、シリンダー5の作動により制動ディスク2に対し直交する方向に、保持リング4を前後進させることができる。
【0009】
制動時には、図1の矢印で示すように、シリンダー5のピストンロッド6が右方へ移動し、保持リングが制動ディスク2の回転軸方向に前進し、永久磁石7が制動ディスクに対向して接近する。
【0010】
このとき、各永久磁石7が強磁性材8を経て制動ディスク2の制動面に垂直に及ぼす磁力線を回転する制動ディスク2が横切る時、制動ディスク内の磁束の変化から制動ディスク2に渦電流が流れ、制動トルクが発生する。
【0011】
非制動に切り換える際には、シリンダー5の作動を切り換えて、図2の矢印で示すように、ピストンロッド6に直結された保持リング4を左方へ移動させるので、永久磁石7が強磁性材(ポールピース)8から離れ、永久磁石7が制動ディスク2へ及ぼす磁力は弱いものとなる。
【0012】
前記の図1および図2に示す、永久磁石を用いた「磁石極面対向方式」の渦電流減速装置では、強磁性材(ポールピース)が設けられている。これは、永久磁石は温度依存性が強く、一定温度以上になると磁力が低下し、制動トルクが低減するので、永久磁石の昇温を抑制するため、永久磁石と発熱源である制動ディスク間に適当な距離を設けていることによる。すなわち、これらの距離が大きくなると、制動トルクが低下するため、強磁性材(ボールピース)を両者の間に介在させて、磁気回路上のギャップが最小になるようにしているためである。
【0013】
ところが、案内筒がドラムに覆われたドラムタイプに比べ、ディスクタイプでは、案内筒を発熱部である制動ディスクの外部に露出した構造にできるので、案内筒そのものの放熱性が優れる。そのため、案内筒への入熱量が同等であるとしても、ディスクタイプの案内筒では、外気と直接接する構造にでき、放冷可能な面積を増加できるので、ドラムタイプに比べ案内筒内の温度上昇を抑制できる。
【0014】
さらに、装置の構造をディスクタイプにすることによって、ドラムタイプに比べ、冷却フィンを取り付けることが容易となり、発熱源である制動ディスクの放熱能力を増大させることができる。したがって、制動時において永久磁石の温度上昇が抑制でき、加えて制動ディスクから伝えられる熱そのものも低減できるので、永久磁石と制動ディスクとの距離を極端に小さくすることが可能になる。
【0015】
その結果として、永久磁石を制動ディスクに充分に近づけることができ、強磁性体(ポールピース)を用いずに磁気回路を構成したとしても、十分な制動トルクを確保することができる。このような知見に基づいて、新たに、強磁性体(ポールピース)を用いない「磁石極面対向方式」の渦電流減速装置が開発されるようになった。
【0016】
図3は、強磁性体(ポールピース)を用いない「磁石極面対向方式」の渦電流減速装置の構成を示す図である。図3に示す渦電流減速装置では、基本的な構成や各部材の作用は前記図1および図2に示す「磁石極面対向方式」の渦電流減速装置と同じであるが、案内筒3は、その制動ディスクと対向する端面に強磁性体(ポールピース)を配置させることなく、非磁性材で構成されている。
【0017】
また、図3に示す渦電流減速装置では、永久磁石と対向する端面を含む案内筒により永久磁石を覆うようにしているので、永久磁石の磁極面が異物によって損傷し、または湿気によって錆が生じる恐れがない。さらに、強磁性材(ポールピース)を設けなくとも、永久磁石からの磁力線を短い磁路長さで、直接、制動ディスクに付加できるので、制動トルクの発生効率を向上させることができる。
【0018】
以下の説明において、図3に示す、強磁性体(ポールピース)を用いない「磁石極面対向方式」の渦電流減速装置を特定する場合には、「ポールピースレス方式」の渦電流減速装置という。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
前述の通り、永久磁石を制動ディスクに対向させて配置した「磁石極面対向方式」の渦電流減速装置、および「ポールピースレス方式」の渦電流減速装置では、制動時の磁気効率に優れるとともに、簡易な構造で小型、軽量化が可能であり、経済性にも優れるものである。しかし、今後の要請が多様化するなかで、新たに取り組むべき課題として、長時間使用した場合における制動力の安定性、耐久性の改善に関する問題がある。
【0020】
「磁石極面対向方式」および「ポールピースレス方式」の渦電流減速装置において、長時間使用した場合における制動力の安定性、耐久性の改善が課題として取り上げられるべきなのは、次のような要因に基づいている。
【0021】
制動時に、永久磁石から及ぼされる磁力を制動ディスク表面に作用させると、制動ディスクには渦電流が発生し、ジュール熱が発生する。この発熱によって制動ディスクは熱膨張するが、回転軸に固定されているため、半径方向の熱膨張は拘束される。
【0022】
さらに、渦電流は表皮効果によって表面近傍に集中して流れるため、制動ディスクの永久磁石に対向する表面は高温になる。その結果、制動ディスクの永久磁石と対向する表面の熱膨張量は、その反対側の表面の熱膨張量より大きくなり、制動ディスクは、その肉厚方向、すなわち、回転軸方向に反ることになる。
【0023】
制動ディスクが高温になるほど、その反り量が大きくなり、冷却後に制動ディスクに残留変形が生じる。長期間にわたって制動および非制動を繰返すことによって、制動ディスクには上記の変形が蓄積される。制動ディスクに変形が発生すると、制動ディスクと永久磁石との距離が変動するため、制動ディスクの表面に作用する磁束が一定せず、制動力が不安定となる。
【0024】
本発明は、上述した永久磁石を用いた「磁石極面対向方式」および「ポールピースレス方式」の渦電流減速装置に要請される、新たな課題に鑑みてなされたものであり、制動時の磁気効率に優れ、簡易な構造で小型、軽量化が可能であるとともに、長時間にわたって使用した場合であっても、制動ディスクの変形が抑制され、安定した制動力を確保することができる渦電流減速装置を提供することを目的としている。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、さらに詳細に制動ディスクの変形状況について検討を行った結果、制動に際し、制動ディスクを長時間にわたり、繰り返し使用した場合に、徐々に非弾性ひずみが蓄積され、制動力が低下する経緯を明らかにすることができた。
【0026】
前述の通り、制動時には、制動ディスクのうち永久磁石と対向する部位がジュール熱が発生することによって高温になるが、その部位より外周側では低温である。極端な例として、永久磁石を制動ディスクの最外周側に対向させ、最外周側を高温にしたとしても、制動ディスクは最外周側から放熱する構造であるため、最外周側が最も高温になることはない。
【0027】
したがって、制動時における制動ディスクは、永久磁石と対向する高温部と、その外周側に存在するリング状の低温部と、その反対面側、すなわち、永久磁石と対向しない面側の低温部が存在することになる。
【0028】
制動時の温度上昇にともない、制動ディスクは熱膨張するが、それは高温になる部位ほど顕著になる。したがって、永久磁石と対向して顕著に熱膨張する部位は内周側にあるため、その部位の熱膨張は、それより外周側のリング状の低温部、すなわち、熱膨張が小さい部位によって拘束される。
【0029】
その結果、高温で使用する際には、制動ディスクのうち永久磁石と対向する部位およびその近傍には非弾性ひずみ(塑性ひずみ+クリープひずみ)が発生し、残留変形が生じることになる。制動および非制動を繰り返すことによって、この残留変形が徐々に蓄積され、制動ディスクの変形が大きくなり、制動力が不安定となり、制動効率が低下することになる。
【0030】
本発明者らは、制動ディスクにスリットを設けることによって、永久磁石と対向して高温となる部位の熱膨張を拘束する外周側のリング状の低温部を分断することによって、熱膨張時の拘束力を低下できることに着目した。さらに、制動ディスクのうち永久磁石からの磁束が作用する部位に渦電流板を設けることによっても、同様の作用が発揮されることに着目した。
【0031】
制動ディスクのうち永久磁石からの磁束が作用する部位に、円周方向に複数に分割した渦電流板を設けると、制動時には渦電流板が発熱する。このとき、渦電流板の外周部および内周部は制動ディスクに接しており、発生した熱は渦電流板の外周部および内周部から制動ディスク面に熱伝導する。
【0032】
このため、渦電流板は中央部が最も高温で、外周部および内周部が中央部より低温になる。また、渦電流板は、円周方向に複数に分割しているため、高温となる部位の熱膨張を拘束するリング状の低温部(すなわち、外周部および内周部)が分断され、熱膨張時の拘束力を低減できる。これにより、上述の通り、制動ディスクにスリットを設けるのと同じ効果が得られる。
【0033】
その結果、渦電流板に生じる非弾性ひずみが抑制され、永久変形が生じ難くなる。これにより、制動ディスクを長時間にわたって使用した場合であっても、制動ディスクの変形が抑制され、安定した制動力を確保することができることになる。
【0034】
本発明は上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記の(1)〜(6)の渦電流減速装置を要旨としている。
(1)永久磁石を用いた「磁石極面対向方式」の渦電流減速装置、すなわち、回転軸に取り付けられた制動ディスクと、非回転部分に支持されて前記制動ディスクの側方に配置された案内筒と、この案内筒の内部に収容され、前記制動ディスクの回転軸方向に移動可能な保持リングと、この保持リングの円周方向に配されており、磁極の方向が前記制動ディスクの制動面に対向し、かつ隣接する磁極が互いに逆向きに構成される複数の永久磁石と、この永久磁石と対向するように前記案内筒の端面に配設された強磁性材とを設け、前記永久磁石を回転軸方向に移動自在とした渦電流減速装置であって、前記制動ディスクに肉厚を貫通するスリットを外周面から半径方向に3本以上設けたことを特徴とする渦電流減速装置である(以下、「第1の装置」という)。
(2)永久磁石を用いた「磁石極面対向方式」の渦電流減速装置であって、制動ディスクを円周方向に3以上に分割したことを特徴とする渦電流減速装置である(以下、「第2の装置」という)。
(3)永久磁石を用いた「磁石極面対向方式」の渦電流減速装置であって、制動ディスクで永久磁石からの磁束が作用する部位に渦電流板を設け、その渦電流板は制動ディスクの円周方向に複数に分割されており、その内周側または/および外周側で制動ディスクに固定されていることを特徴とする渦電流減速装置である(以下、「第3の装置」という)。
(4)「ポールピースレス方式」の渦電流減速装置、すなわち、回転軸に取り付けられた制動ディスクと、非回転部分に支持されて前記制動ディスクの側方に配置された案内筒と、この案内筒の内部に収容され、前記制動ディスクの回転軸方向に移動可能な保持リングと、この保持リングの円周方向に配されており、磁極の方向が前記制動ディスクの制動面に対向し、かつ隣接する磁極が互いに逆向きに構成される複数の永久磁石とを設け、前記案内筒は永久磁石と対向する端面を含む全体を非磁性材で構成し、前記永久磁石を回転軸方向に移動自在とした渦電流減速装置であって、前記制動ディスクに肉厚を貫通するスリットを外周面から半径方向に3本以上設けたことを特徴とする渦電流減速装置である(以下、「第4の装置」という)。
(5)「ポールピースレス方式」の渦電流減速装置であって、制動ディスクを円周方向に3以上に分割したことを特徴とする渦電流減速装置である(以下、「第5の装置」という)。
(6)「ポールピースレス方式」の渦電流減速装置であって、制動ディスクで永久磁石からの磁束が作用する部位に渦電流板を設け、その渦電流板は制動ディスクの円周方向に複数に分割されており、その内周側または/および外周側で制動ディスクに固定されていることを特徴とする渦電流減速装置である(以下、「第6の装置」という)。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の渦電流減速装置では、制動ディスクにスリットを設けたり、分割することにより、または、制動ディスクに渦電流板を設けることにより、制動時に高温になる部位の熱膨張にともなう拘束力を軽減して、半径方向および回転軸方向への変形を容易にして、制動ディスクに発生する非弾性ひずみを減少し、結果として永久変形を生じ難くすることを特徴としている。これにより、長時間にわたって制動を繰り返した場合であっても、渦電流減速装置の制動力を安定させることができる。
【0036】
図4は、第1の装置および第4の装置において、制動ディスク面に肉厚を貫通するスリットを設けた平面形状を示す図である。同(a)では、制動ディスク2の中心から延びる放射線上に、外周面から内周側にスリット9を設けたものである。また、同(b)では、制動ディスク2の回転方向に傾けて、外周側から内周側にスリット9を設けたものである。いずれのスリットであっても、制動ディスクの熱膨張にともなう拘束力を軽減して、制動ディスクに発生する非弾性ひずみを減少させることができる。
【0037】
回転時における制動ディスク2の重量バランスを考慮すると、スリット9は円周方向に等間隔に設ける必要がある。したがって、スリット9は、回転軸対称で3本以上設ける。
【0038】
図5は、第1の装置および第4の装置において、スリットが制動ディスクの肉厚を貫通する断面形状を示す図である。同(a)では、回転軸と平行にスリット9を形成しており、同(b)では、回転軸に対して傾斜したスリット9を形成しており、同(c)では、鍵型のスリット9を形成している。
【0039】
図5に示す制動ディスク2の肉厚を貫通する断面形状を、前記図4に示すいずれの平面形状のスリット9に適用しても、制動ディスク2に発生する非弾性ひずみを減少させることができる。
【0040】
図6は、第2の装置および第5の装置において、制動ディスクを円周方向に複数に分割した状況を示す図である。本発明の渦電流減速装置では、スリットは制動ディスクの外周側に生じるリング状の低温部の分断するものであるため、図6に示すように、外周側から回転軸に至る内周側までスリット9を設けるようにして、制動ディスク2を3以上に分割しても同様の効果が得られる。
【0041】
図7は、第3および第6の装置において、制動ディスクで永久磁石からの磁束が作用する部位に渦電流板を設ける状況を示す図である。この渦電流板10は、強磁性体であって、永久磁石と対向する制動ディスク2面の円周方向に複数に分割されて配置されている。このため、制動時には、渦電流板10に磁力が作用して渦電流が発生することによって、制動力が発生する。この渦電流板10は、制動ディスク2に固定されているため、制動力は制動ディスクに及ぶ。
【0042】
図7に示す固定方法は、渦電流板10の外周側は断面をコの字状に加工した制動ディスクの支持端2aで固定され、内周側はスライド支持リング11で固定されている。さらに、スライド支持リングは、ボルトで制動ディスクに固定されている。さらに、図7に示すように、渦電流板10は、スリット9を設けて円周方向で分割する。これにともなって、スライド支持リング11は円周上で適宜分割するのが望ましい。しかし、本発明の渦電流減速装置では、図示する固定方法に限定されるものではない。
【0043】
【実施例】
以下に、本発明の渦電流減速装置の具体的な効果を、実施例に基づいて説明する。
【0044】
前記図4〜図7に示した各種の構造からなる制動ディスクを作製し、耐久試験を実施した。耐久試験に供した制動ディスクは、CrMo系の低合金鋼からなり、外径450mm、厚さ10mmとした。前記図7の構造で設けた渦電流板は、厚さ4mmのCrMo系の低合金鋼として、制動ディスクの中心から渦電流板の最外周部までの距離が218mmで、最内周部までの距離が130mmになるよう配置した。また、渦電流板と支持板の隙間は3mmとした。
【0045】
耐久試験では制動ディスクを2,000rpmで回転させ、制動に切り替え後、永久磁石と対向する制動ディスクの表面温度が650℃になった時点で、非制動に切り替え、100℃まで冷却した時点で、再度、制動に切り替える操作を繰り返した。
【0046】
この制動および非制動を1,000サイクル繰り返すごとに制動トルクを測定し、最高で10,000サイクルまで試験を行った。また、試験が10,000サイクルに到達するまでに、制動トルクが初期(1サイクル目)のものに比べて10%以上低下した場合は、その時点で試験を中止した。
【0047】
制動ディスクに設けたスリットの形状は、平面形状で放射状(図4(a)に相当)、傾斜(図4(b)に相当)及び分割(図6に相当)とに区分し、傾斜(図4(b)に相当)では、スリットを回転方向に30°および45°傾けて設けた。また、スリットの長さは、制動ディスクの外周側から、外径の1/2の径となる位置までとし、スリットの幅は全て0.5mmとした。
【0048】
制動ディスクに設けたスリットの形状および耐久試験の結果を表1に併せて示す。
【0049】
【表1】
Figure 0004048829
【0050】
比較例の試験No.10は、スリットを設けていないため、制動および非制動の繰り返しにともない、制動ディスクの変形が大きくなり制動力が低下した。具体的には、2,000サイクルの時点で、初期トルクに比べ10%以上制動力が低下したため試験を中止した。
【0051】
本発明例である試験No.1〜3および5〜9は、10,000サイクル後も制動力の低下が10%以内であり、スリットを設けることにより長時間の使用にもかかわらず、制動力を維持できることが確認できた。
【0052】
比較例の試験No.4は、7,000サイクルの時点で制動力が10%以上低下したため、試験を中止した。しかし、スリットを設けていない比較例の試験No.10に比べ、制動力を維持できる期間を大きく延長できることを確認した。
【0053】
【発明の効果】
本発明の渦電流減速装置によれば、永久磁石を用いた「磁石極面対向方式」の渦電流減速装置であっても、「ポールピースレス方式」の渦電流減速装置であっても、制動時の磁気効率に優れ、簡易な構造で小型、軽量化が可能であるとともに、長時間にわたって使用した場合であっても、制動ディスクの変形が抑制され、安定した制動力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】永久磁石を用いた「磁石極面対向方式」の渦電流減速装置の制動時の構成例を説明する図である。
【図2】永久磁石を用いた「磁石極面対向方式」の渦電流減速装置の非制動時の構成例を説明する図である。
【図3】強磁性体(ポールピース)を用いない「磁石極面対向方式」の渦電流減速装置の構成を示す図である。
【図4】第1の装置および第4の装置において、制動ディスク面に肉厚を貫通するスリットを設けた平面形状を示す図である。
【図5】第1の装置および第4の装置において、スリットが制動ディスクの肉厚を貫通する断面形状を示す図である。
【図6】第2の装置および第5の装置において、制動ディスクを円周方向に複数に分割した状況を示す図である。
【図7】第3および第6の装置において、制動ディスクで永久磁石からの磁束が作用する部位に渦電流板を設ける状況を示す図である。
【符号の説明】
1:回転軸、 2:制動ディスク
2a:支持端、 3:案内筒
4:保持リング、 5:シリンダー
6:ピストンロッド、 7:永久磁石
8:強磁性材、ポールピース、 9:スリット
10:渦電流板、 11:スライド支持リング

Claims (6)

  1. 回転軸に取り付けられた制動ディスクと、非回転部分に支持されて前記制動ディスクの側方に配置された案内筒と、この案内筒の内部に収容され、前記制動ディスクの回転軸方向に移動可能な保持リングと、この保持リングの円周方向に配されており、磁極の方向が前記制動ディスクの制動面に対向し、かつ隣接する磁極が互いに逆向きに構成される複数の永久磁石と、この永久磁石と対向するように前記案内筒の端面に配設された強磁性材とを設け、前記永久磁石を回転軸方向に移動自在とした渦電流減速装置であって、
    前記制動ディスクに肉厚を貫通するスリットを外周面から半径方向に3本以上設けたことを特徴とする渦電流減速装置。
  2. 回転軸に取り付けられた制動ディスクと、非回転部分に支持されて前記制動ディスクの側方に配置された案内筒と、この案内筒の内部に収容され、前記制動ディスクの回転軸方向に移動可能な保持リングと、この保持リングの円周方向に配されており、磁極の方向が前記制動ディスクの制動面に対向し、かつ隣接する磁極が互いに逆向きに構成される複数の永久磁石と、この永久磁石と対向するように前記案内筒の端面に配設された強磁性材とを設け、前記永久磁石を回転軸方向に移動自在とした渦電流減速装置であって、
    前記制動ディスクを円周方向に3以上に分割したことを特徴とする渦電流減速装置。
  3. 回転軸に取り付けられた制動ディスクと、非回転部分に支持されて前記制動ディスクの側方に配置された案内筒と、この案内筒の内部に収容され、前記制動ディスクの回転軸方向に移動可能な保持リングと、この保持リングの円周方向に配されており、磁極の方向が前記制動ディスクの制動面に対向し、かつ隣接する磁極が互いに逆向きに構成される複数の永久磁石と、この永久磁石と対向するように前記案内筒の端面に配設された強磁性材とを設け、前記永久磁石を回転軸方向に移動自在とした渦電流減速装置であって、
    前記制動ディスクで永久磁石からの磁束が作用する部位に渦電流板を設け、その渦電流板は制動ディスクの円周方向に複数に分割されており、その内周側または/および外周側で制動ディスクに固定されていることを特徴とする渦電流減速装置。
  4. 回転軸に取り付けられた制動ディスクと、非回転部分に支持されて前記制動ディスクの側方に配置された案内筒と、この案内筒の内部に収容され、前記制動ディスクの回転軸方向に移動可能な保持リングと、この保持リングの円周方向に配されており、磁極の方向が前記制動ディスクの制動面に対向し、かつ隣接する磁極が互いに逆向きに構成される複数の永久磁石とを設け、前記案内筒は永久磁石と対向する端面を含む全体を非磁性材で構成し、前記永久磁石を回転軸方向に移動自在とした渦電流減速装置であって、
    前記制動ディスクに肉厚を貫通するスリットを外周面から半径方向に3本以上設けたことを特徴とする渦電流減速装置。
  5. 回転軸に取り付けられた制動ディスクと、非回転部分に支持されて前記制動ディスクの側方に配置された案内筒と、この案内筒の内部に収容され、前記制動ディスクの回転軸方向に移動可能な保持リングと、この保持リングの円周方向に配されており、磁極の方向が前記制動ディスクの制動面に対向し、かつ隣接する磁極が互いに逆向きに構成される複数の永久磁石とを設け、前記案内筒は永久磁石と対向する端面を含む全体を非磁性材で構成し、前記永久磁石を回転軸方向に移動自在とした渦電流減速装置であって、
    前記制動ディスクを円周方向に3以上に分割したことを特徴とする渦電流減速装置。
  6. 回転軸に取り付けられた制動ディスクと、非回転部分に支持されて前記制動ディスクの側方に配置された案内筒と、この案内筒の内部に収容され、前記制動ディスクの回転軸方向に移動可能な保持リングと、この保持リングの円周方向に配されており、磁極の方向が前記制動ディスクの制動面に対向し、かつ隣接する磁極が互いに逆向きに構成される複数の永久磁石とを設け、前記案内筒は永久磁石と対向する端面を含む全体を非磁性材で構成し、前記永久磁石を回転軸方向に移動自在とした渦電流減速装置であって、
    前記制動ディスクで永久磁石からの磁束が作用する部位に渦電流板を設け、その渦電流板は制動ディスクの円周方向に複数に分割されており、その内周側または/および外周側で制動ディスクに固定されていることを特徴とする渦電流減速装置。
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