JP4047197B2 - Ni基ホウ化物分散耐食耐摩耗性合金 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐食性、耐摩耗性、抗折力に優れ、かつ合金鋼とのクラッド性に優れたNi基ホウ化物分散耐食耐摩耗性合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、Ni基にホウ化物などの硬質粒子を分散させた耐食耐摩耗合金が各種提案されている。例えば特許文献1には重量%で、Mo:25〜40%、B:0.5〜2.0%、Cr:20%以下、Si:0.1%以下、Fe:12%以下、残部がNiからなる表面硬化用塩酸耐食合金が開示さてている。また、特許文献2には、硼化物よりなる硬質相35〜95重量%と、該硬質相を結合するNi基の結合相からなる硬質焼結合金において、全硬質相量のうち正方晶系のM3 B2 型(M:Mo、Niの他はCrおよび/またはV)複硼化物を60%以上含み、残部が斜方晶系のM3 B2 型複硼化物あるいは他の硼化物よりなる耐食性に優れた高強度硬質焼結合金が開示されている。
【0003】
さらに、特許文献3には、炭化物および硼化物を主体とする硬質相がNi基のマトリックスで結合された複合材料であって、前記硬質相およびマトリックスは、総量で、B:1.5〜5重量%、Cr:5〜15重量%、Mo:25〜50重量%、W:10〜25重量%、Fe:2〜4重量%を含有し、残部がNiと不可避的不純物とからなる耐摩耗耐食性複合材料が開示されている。
【0004】
【引用文献】
(1)特許文献1(特開平8−157991号公報)
(2)特許文献2(特許第2631791号公報)
(3)特許文献3(特開平5−132734号公報)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した合金は、例えば溶射、肉盛り、焼結などの方法により合金鋼と複合化され使用されることが多いが、残留ポアや成分偏析などの問題がある。また、Moを主体としたホウ化物および耐食性を改善するためMoを多量に含むNi基マトリックスは熱膨張係数が小さい。従って、このようなNi基ホウ化物析出耐食耐摩耗合金は複合化される合金鋼より熱膨張係数が小さくなってしまうことが多い。このような熱膨張係数の差異により、溶射、肉盛り、焼結などの複合化処理の時や、使用環境における昇温、降温サイクルにより複合界面に亀裂を生じてしまうという問題がある。
【0006】
近年、弗素など還元性酸の腐食性ガスを発生するプラスチック成形機のスクリューやシリンダーに対する高耐食合金が求められている。このような環境において、Moを含むNi基合金が有効であるが、一方でMoを多量に添加すると脆性な金属間化合物が生成するためCrの添加量を制御する必要があり、酸化性酸に対する耐食性が不十分となるという問題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述したような問題を解消するために鋭意開発を進めた結果、特に熱膨張係数に影響するマトリックスのMo含有量、およびホウ化物の量を決定するB含有量を一定範囲とすることで合金鋼の熱膨張係数(12〜15×10-6)とほぼ同等の熱膨張係数を有し、同時にCu添加により還元性酸と酸化性酸に対する高耐食性、高耐摩耗性、高抗折力を有するNi基ホウ化物分散耐食耐摩耗性合金を提供するものである。
【0008】
その発明の要旨とするところは、質量%で、B:0.5〜4.0%、Cu:0.2〜5.0%、Cr:5〜30%、Mo:10〜40%を含み、残部Niおよび不可避的不純物からなり、かつ以下(a)〜(c)の条件を満たすマトリックスがNi基であることを特徴とするNi基ホウ化物分散耐食耐摩耗性合金である。
(a)11≦(マトリックスMo含有量)+10(B含有量)≦45
(b)15≦(マトリックスCr含有量)+(マトリックスMo含有量)
(c)(マトリックスCr含有量)+1.5(マトリックスMo含有量)≦55
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についての成分組成の限定理由について述べる。
B:0.5〜4.0%
Bは、本発明合金における硬質粒子であるホウ化物を析出させるための元素であり、0.5%未満では硬さが不十分であり、4.0%を超えると熱膨張係数が小さくなるため、その範囲を0.5〜4.0%とした。
【0010】
Cu:0.2〜5.0%
Cuは、マトリックス中に固溶され、還元性、酸化性酸に対する耐食性を向上させるが、0.2%未満ではその効果が十分でなく、5%を超える添加をしても効果が飽和することから、その範囲を0.2〜5.0%とした。また、CrやMoを含むNi基マトリックス相は各種酸に対し高耐食性を有する。特にCrの好ましい成分範囲としては、5〜30%、Moの好ましい成分範囲としては、10〜40%とする。
【0011】
11≦(マトリックスMo含有量)+10(B含有量)≦45
(マトリックスMo含有量)+10(B含有量)が11未満では熱膨張係数が大きくなり、(マトリックスMo含有量)+10(B含有量)が45を超えると熱膨張係数が小さくなる。従って、その範囲を11〜45とする。
15≦(マトリックスCr含有量)+(マトリックスMo含有量)
(マトリックスCr含有量)+(マトリックスMo含有量)が15未満では良好な耐食性が得られない。従って、下限値を15とした。好ましくは20とする。
(マトリックスCr含有量)+1.5(マトリックスMo含有量)≦55
(マトリックスCr含有量)+1.5(マトリックスMo含有量)が55を超えると良好な抗折力が得られない。これはマトリックス中に脆い金属間化合物が析出するためと推定される。従って、その上限値を55とした。
【0012】
以上、Cr−Mo−Cu−B−Ni系の5元素について主に説明してきたが、本発明は、Ni基合金であればこの5元素に限定されることはない。この5元素の成分系に添加する代表的な元素を挙げると、例えば、硬さ向上のために、Zr,V,W,Cを0.2〜10%の範囲内で添加、また、耐食性を向上させるために、Coを0.1〜10%の範囲内で添加、また、原料費低減のためにFeを10%以下添加、さらには、溶接性改善のために、Si,Mnを0.2〜5%の範囲内で添加しても良い。
【0013】
【実施例】
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
アルゴンガス雰囲気中で表1に示す組成に配合した原料150gを誘導溶解炉にて溶解し、急冷銅鋳型にて遠心鋳造した。得られた小鋼塊から採取した試験片より熱膨張係数、弗酸腐食度、硝酸腐食度、硬さおよび抗折力について評価した。熱膨張係数は鋼塊から採取した試験片により25〜500℃における平均熱膨張係数を測定し、熱膨張係数が11×10-6〜16×10-6;○、11×10-6未満または16×10-6を超える;×とした。また、耐食性については、還元性酸として、上記小鋼塊から10×10×10mmの試験片を採取し、40℃、10mass%の弗酸に10時間浸漬した。腐食度が0.5g/m2 /h以下;○、0.5g/m2 /hを超える;×とした。
【0014】
また、酸化性酸として、上記小鋼塊から10×10×10mmの試験片を採取し、40℃、10mass%の硝酸に10時間浸漬した。腐食度が0.5g/m2 /h以下;○、0.5g/m2 /hを超える;×とした。
さらに、硬さについては、上記小鋼塊から採取した試験片を湿式研磨しロックウエル硬さを測定し、HRC40以上;○、40未満;×とした。さらに、抗折力については、上記小鋼塊から1.7×1.7×2.0の試験片を採取し測定した。抗折力が1.5GPa以上;○、1.5GPa未満;×とした。なお、マトリックス成分はSEM−EDSにて微小領域を分析した。
【0015】
【表1】
【0016】
表1に示すように、No.1〜4は本発明例であり、No.5〜11は比較例である。比較例No.5はCuの含有量が低いために、硝酸腐食性が劣る。比較例No.6は(マトリックスMo+10B)が高い場合であり、熱膨張係数が範囲外となる。比較例No.7は(マトリックスCr)+(マトリックスMo)が低いために弗酸腐食性および硝酸腐食性が劣る。No.8は(マトリックスMo+10B)および(マトリックスCr)+1.5(マトリックスMo)が高いために熱膨張係数が範囲外となり、かつ抗折力が劣る。No.9はBが低く、(マトリックスMo+10B)が低いために、熱膨張係数が範囲外となり、かつ硬さが劣る。No.10はBが低いために、硬さが劣る。No.11はBが高く、(マトリックスMo+10B)が高いために、熱膨張係数が範囲外となることが判る。これに対し、本発明であるNo.1〜4のいずれもそれぞれの特性に優れていることが判る。
【0017】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により耐食性、耐摩耗性、抗折力およびクラック性に優れたNi基ホウ化物分散耐食耐摩耗性合金を得ることが出来た。
Claims (1)
- 質量%で、
B:0.5〜4.0%、
Cu:0.2〜5.0%、
Cr:5〜30%、
Mo:10〜40%
を含み、残部Niおよび不可避的不純物からなり、かつ以下(a)〜(c)の条件を満たすマトリックスがNi基であることを特徴とするNi基ホウ化物分散耐食耐摩耗性合金。(a)11≦(マトリックスMo含有量)+10(B含有量)≦45
(b)15≦(マトリックスCr含有量)+(マトリックスMo含有量)
(c)(マトリックスCr含有量)+1.5(マトリックスMo含有量)≦55
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