JP4046899B2 - 車両のフード開き治具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のフードを所定の位置に自動的に開く車両のフード開き治具に関し、車両のフードとはエンジンルームフード、ラゲージコンパートメントドア及びバックドアを含むものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の塗装工程においては図7で示すように、ボデーBに開閉可能に取り付けられているエンジンルームフードW(以下フードという)を治具20によって水平に開いている。前記車両の塗装工程は図9で示すように、上塗塗装ブース30に搬入する車両を清掃する清掃工程と、上塗塗装ブース30内に設置されている自動塗装機31で上塗する上塗塗装工程と、上塗塗装を乾燥炉40にて乾燥させる乾燥工程と、乾燥炉40を出た車両の塗装状態を検査する検査工程によるものである。
【0003】
前記治具20によってフードWを水平に開く理由については、フードWを閉じた状態では車両の前方に向かって下向きに傾斜している。上塗塗装ではこの状態で塗装されるが、この状態で乾燥工程に移行した場合、フードWの下向きの傾斜によって未だ焼き付け固化されていない塗面が下方に動き、上方の塗面は薄くなって肌不良となり下方は厚くなって艶ボケになる。また、下方は塗膜のダレや流れを生じ塗装不良になる。これを防止するために治具20によってフードWを水平ににして乾燥しているのである。
【0004】
前記フードWを水平に開くための従来の治具20は図8で示すように、縦軸21の下端にT字形に横棒5を固着し、この横棒5の両端に下部フック6が形成され、前記縦軸21の上端に上部フック8を設け、縦軸21に取っ手3を、横軸5に取っ手4を取り付けた構造である。この治具20は下部フック6をバンパ取り付け穴に掛け止めし、上部フック8をフードロック部に掛け止めすることによりフードWを水平に開いて支持するものである。従って、縦軸21はフードWを水平に持ち上げて位置する長さに設定されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記治具20を装着してフードWを水平に開く作業は図9において自動塗装機31で上塗した直後で乾燥炉40に移行する直前である。これは、自動塗装機31以前でフードWを水平に開くとエナメルやクリヤ等の塗料ダストがフードWの裏側やエンジンルーム内に侵入して吹き掛かり、色差等の見栄えを不良とするからである。従って、従来の塗装工程における作業者は図9で示すように、清掃工程の作業者60と治具セット専用作業者61と検査工程の作業者62の最低限3名の作業者を必要としている。
【0006】
また、フードWを開くときに作業者は閉じている20を持ち上げる作業が必要であり、多数台の車両のフードWを連続的に持ち上げるための労力負担は多大なものがあった。
【0007】
本発明の目的は、フード開き治具をセットする専用作業者を廃止し、開きを必要とするところで自動的に水平に開くようにした車両のフード開き治具を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため本発明は、車両のフードを所定の位置に自動的に開くための治具であって、筒体の下方に下部フックが固設され、前記筒体内に軸線方向にスライド可能挿入され上端に上部フックを備えた支持軸と、温度によって前記支持軸を所定のストロークで伸長する形状記憶合金のバネを内蔵し、前記筒体の側部にガイド筒を筒体と平行軸線で固設し、このガイド筒に前記支持軸と結合したガイド軸を軸線方向にスライド可能に案内したことを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1は本発明の治具を示す。この本発明による治具1は、筒体2の下方に筒体2と交差して筒体2に固定した横棒5の両端に下部フック6を設け、前記筒体2内に支持軸7が軸線方向にスライド可能挿入され、この支持軸7の上端に上部フック8を備えている。また、筒体2内には温度によって前記支持軸7を所定のストロークで伸長する形状記憶合金のバネ11を内蔵した構造である。
【0010】
前記筒体2に内蔵するバネ11の上端はフランンジ付のねじ12を介して支持軸7の下端と結合し、支持軸7にバネ11の絡みを防止している。また、バネ11の下端は筒体2の下端に着脱可能なエンドキャプ13をバネ受けとし、バネ11の清掃や交換を可能にしている。
【0011】
前記形状記憶合金のバネ11は乾燥炉内において、一定の温度以上によってフードを水平位置に持ち上げる支持軸7のストローク長となるように形状変化を記憶させたものである。従って、バネ11に温度を早く吸収させるために筒体2に穴をあけておくことが望ましい。
【0012】
また、支持軸7の上端の上部フック8は図1及び図2で示すような鋭角に折り曲げた形状でも良いが、図3で示すように、フードのロック部14がどの位置にあっても支持軸7に抵抗が掛からないよう幅が広い受け面形状を有したものが望ましい。
【0013】
さらに、筒体2の側部にガイド筒9を筒体2と平行な軸線方向で固設し、このガイド筒9に前記支持軸と結合したガイド軸10を軸線方向にスライド可能に案内する。このガイド軸10によって支持軸7を、その軸線方向に円滑に案内すると共に、支持軸7を回り止めして上部フック8の位置を一定に位置決めする。
【0014】
本発明の治具1においても従来の治具20と同様に筒体2に取っ手3を、横軸5に取っ手4を取り付けている。
【0015】
本発明は上記の通りの構造であるから、図4で示すように下部フック6をバンパ取り付け穴15に掛け止めし、上部フック8を閉じているフードWの先端に有しているフードロック部14に掛け止めしてセットする。この状態で上塗塗装後の乾燥工程では乾燥炉内の温度によって形状記憶合金のバネ11が伸長して支持軸7を上昇させフードWを自動的に開き図5で示すように水平に持ち上げて位置するのである。
【0016】
前記治具1によるフードWの開き動作は図6で示すように、閉じているフードWに治具1をセットした時点では治具1は下部フック6を支点にして実線のようにフードW側に傾斜しているが、バネ11の伸長により支持軸7はバネ11が伸びた長さAだけ上昇し、治具1の姿勢は下部フック6を支点にして点線のように鉛直軸線となり、フードWをフードヒンジを支点16にして点線のように水平位置に持ち上げる。
【0017】
そこで本発明の治具1を用いることにより、治具セット専用作業者を廃止することができる。すなわち、従来では前述の通り、清掃工程の作業者60と治具セット専用作業者61と検査工程の作業者62の最低限3名の作業者を必要とし、これの理由は、自動塗装機31以前でフードWを水平に開くとエナメルやクリヤ等の塗料ダストがフードWの裏側やエンジンルーム内に侵入し、吹き掛かり、色差等の見栄えを不良とすることも前述の通りである。
【0018】
しかしながら、本発明の治具1は乾燥工程40において自動的にフードWを開くものであり、乾燥工程40前の上塗塗装工程ではバネ11は収縮している。従って、図10で示すように清掃工程で治具1をセットしてもフードWは塗料ダストが侵入しない閉じた状態で自動塗装機31を通過して乾燥工程40で水平に開く合理的な動作が得られる。それ故、治具1のセットは清掃工程の作業者によって行うことができ、従来の治具セット専用作業者61を不要とする。また、治具1を上塗塗装工程の初期段階でセットしてもバネ11は筒体2によって保護されているので上塗塗装工程で塗料ダストの吹き掛かりが防止されバネ11を汚損することがない。
【0019】
乾燥工程40の乾燥炉をでた検査工程50では常温の温度降下によってバネ11は漸次縮小し水平に持ち上げられていたフードWは自動的に閉じた状態に戻される。従って、検査工程50の作業員62によって治具1をボデーから取り外すものである。
【0020】
本発明の治具1は下部フック6の位置を変更することにより、どの車種にも対応することができ、筒体2内のバネ11は交換が自由であるから、バネ11の長さ、保持荷重の変化が容易に行うことができるため、どの車種にも対応することができる。また、上記の実施形態ではエンジンルームフードWによって説明したが、本発明はラゲージコンパートメントドアやバックドアにも適用することができる。
【0021】
【発明の効果】
以上のように本発明によると、塗装品質を確保するために上塗塗装後の乾燥工程で乾燥炉内の温度によって形状記憶合金のバネが伸長して支持軸を上昇させフードを自動的に開き水平に持ち上げて位置するものであるから、フードが閉じた状態を必要とする上塗塗装工程における清掃工程の作業者によって治具のセットを行うことができ従来の治具セット専用作業者を削減することができる。また、治具のセットにおいてもフードを作業者によって開く作業が不要であるから、省力化が図られる利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明治具の斜視図
【図2】 本発明治具の要部破断面図
【図3】 上部フックの実施例図
【図4】 本発明治具をセットした状態の側面図
【図5】 本発明治具によりフードを開いた状態の側面図
【図6】 本発明治具の動作説明
【図7】 フードを水平に開く説明図
【図8】 従来の治具の斜視図
【図9】 従来の治具を用いた塗装作業工程図
【図10】 本発の治具を用いた塗装作業工程図
【符号の説明】
1 治具
2 筒体
3 取っ手
4 取っ手
5 横棒
6 下部フック
7 支持軸
8 上部フック
9 ガイド筒
10 ガイド軸
11 形状記憶合金のバネ
12 フランジ付のねじ
13 エンドキャップ
14 フードロック部
15 バンパ取り付け穴

Claims (1)

  1. 車両のフードを所定の位置に自動的に開くための治具であって、筒体の下方に下部フックが固設され、前記筒体内に軸線方向にスライド可能挿入され上端に上部フックを備えた支持軸と、温度によって前記支持軸を所定のストロークで伸長する形状記憶合金のバネを内蔵し、前記筒体の側部にガイド筒を筒体と平行軸線で固設し、このガイド筒に前記支持軸と結合したガイド軸を軸線方向にスライド可能に案内したことを特徴とする車両のフード開き治具。
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