JP4045491B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
非磁性支持体上に少なくとも一層以上の磁性層を設けた磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
オーディオ用、ビデオ用、コンピュータ用などのテープ状磁気記録媒体及びフレキシブルディスクなどのディスク状磁気記録媒体として、γ−酸化鉄、Co含有酸化鉄、酸化クロム、強磁性金属微粉末などの強磁性微粉末を結合剤中に分散させた磁性層を支持体上に設けた磁気記録媒体が用いられている。磁気記録媒体に用いられている支持体としては、一般にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが用いられている。これらの支持体は延伸し高度に結晶化されているため機械的強度が強く耐溶剤性に優れている。
【0003】
強磁性微粉末を結合剤中に分散させた塗布液を支持体に塗布して得られる磁性層は、強磁性微粉末の充填度が高く破断伸びが小さく脆いため、機械的な力を加えることにより簡単に破壊され支持体から剥離することがある。そこで、支持体上に下塗り層を設けて、磁性層を支持体上に強く接着させることが行われている。
【0004】
例えば、電子線などの放射線により硬化する官能基をもつ化合物、即ち放射線硬化化合物を用いて平滑層を形成した磁気記録媒体が知られている(特許文献1〜4参照)。これらの放射線硬化化合物を用いた平滑層は、磁性層との密着力が弱く、ビデオテープなどの磁気記録媒体をVTR内で繰り返し走行させると、磁性層の一部が剥離し、ドロップアウトなどの故障の原因となるという問題があった。
【0005】
近年、MR(磁気抵抗)を動作原理とする再生ヘッドが提案され、ハードディスク等で使用され始め、また、磁気テープへの応用が提案されている。MRヘッドは誘導型磁気ヘッドに比較して数倍の再生出力が得られ、かつ誘導コイルを用いないため、インピーダンスノイズ等の機器ノイズが大幅に低下し、磁気記録媒体のノイズを下げることで大きなSN比を得ることが可能になってきた。換言すれば従来機器ノイズに隠れていた磁気記録媒体ノイズを小さくすれば良好な記録再生を行うことができ、高密度記録特性を飛躍的に向上させることができることになる。
【0006】
ところがMRヘッドは微小な熱の影響を受けてノイズ(サーマルノイズ)を発生するという問題があり、特に、磁性層表面にある突起に当たるとその影響で突発的に且つ持続してノイズが増大するという問題があり、ディジタル記録の場合エラー補正が不可能なほどの問題を起こすことがある。このサーマルノイズの問題は、記録密度が0.5Gbit/inch2 以上の記録信号を再生するシステムに供される磁気記録媒体において深刻となる。
このようなサーマルノイズを低減するには、磁性層の表面性を制御することが重要であり、そのための好適な手段が望まれていた。
突起のきわめて少ない平滑な支持体を使用することも考えられるが、極めて平滑な支持体は摩擦係数が高く、特に10μm以下の薄い支持体では支持体の製造工程や磁気テープの塗布工程中で搬送、巻き取り工程で搬送ロールでシワが発生したり蛇行し、製造得率が著しく低下するという問題がある。
【0007】
【特許文献1】
特公平5−57647号公報
【特許文献2】
特開昭60−133529号公報
【特許文献3】
特開昭60−133530号公報
【特許文献4】
特開昭60−133531号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、製造工程中での支持体の搬送による故障や磁性層の脱落が少なく、優れた塗膜平滑性、電磁変換特性を有する磁気記録媒体であって、走行耐久性に優れた磁気記録媒体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、下記の手段(1)〜(4)により達成された。
(1)非磁性支持体上に放射線硬化化合物を塗設して放射線照射により硬化させた平滑層を有し、この平滑層の上に非磁性微粉末及び/又は強磁性微粉末をポリウレタンを含む結合剤で分散した中間層を有し、この中間層の上に更に少なくとも一層の、強磁性微粉末と結合剤を分散した磁性層を塗設して得られる磁気記録媒体において、該ポリウレタンが10〜50重量%のポリエーテルポリオール、18〜45重量%の環状構造をもつ分子量100〜500のジオール、及び有機ジイソシアネートを重合させて得られたことを特徴とする磁気記録媒体、
(2)非磁性支持体上に放射線硬化化合物を塗設し放射線照射により硬化させた平滑層を有し、この平滑層の上に少なくとも一層の、強磁性微粉末とポリウレタンを含む結合剤を分散した磁性層を塗設して得られる磁気記録媒体において、該ポリウレタンが10〜50重量%のポリエーテルポリオール、18〜45重量%の環状構造をもつ分子量100〜500のジオール、及び有機ジイソシアネートを重合させて得られたことを特徴とする磁気記録媒体、
(3)放射線硬化化合物の25℃における粘度が300mPa・sec以下である(1)又は(2)記載の磁気記録媒体、
(4)前記ポリウレタンが、10〜50重量%のポリエーテルポリオール、15〜40重量%の分子量100〜500の脂環式ジオール、及び有機ジイソシアネートを重合させて得られることを特徴とする(1)〜(3)いずれか1つに記載の磁気記録媒体。
【0010】
【発明の実施の形態】
平滑層に放射線硬化化合物を用いることで極めて平滑な塗膜が形成でき、優れた電磁変換特性が得られる。これは数mPa・S〜300mPa・Sと比較的低粘度の放射線硬化型モノマーを用いることで支持体の突起を埋没させた直後に放射線照射により平滑な塗膜を硬化させることができる。さらにその上に非磁性微粉末を分散した層を介するか或いは直接その上に、磁性液を塗布することで塗膜表面の平滑性に極めて優れた磁性層が得られる。
特に磁性層厚み0.05μm〜2.0μmといった比較的薄いものでこの効果は顕著であり、近年の高記録密度用に使用されているMRヘッドを用いた磁気記録においてノイズの原因となる磁性層表面の微小突起を低減できる。
また、本発明に使用する分岐構造をもつ脂肪族系のポリエステルポリウレタンは平滑層との密着力が高く、テープをスリットする工程でのテープエッジ部の磁性層の剥離、脱落を改良することができる。この結果、脱落した磁性層の微小片が記録再生特性に悪影響を及ぼすことも少なく、例えばコンピューター用のテープではエラーレートの低減、ビデオテープではドロップアウト故障の低減に効果がある。
【0011】
本発明の磁気記録媒体は、放射線硬化化合物を塗設して放射線照射により硬化させた平滑層を有する。
本発明における放射線硬化化合物としては放射線官能性二重結合を有する化合物でアクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリル酸エステル類、メタクリル酸アミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類などが挙げられる。
好ましくは2官能のアクリレート化合物、メタクリレート化合物である。具体例としては、脂肪族ジオールにアクリル酸、メタクリル酸を付加させたものが挙げられる。
【0012】
例えば、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、シクロヘキサンジオールジアクリレート、シクロヘキサンジオールジメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールのジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールのジメタクリレート、水素化ビスフェノールAのジアクリレート、水素化ビスフェノールAのジメタクリレート、水素化ビスフェノールFのジアクリレート、水素化ビスフェノールFのジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールのジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールのジメタクリレート、など脂環族ジオールのアクリレート化合物、メタクリレート化合物、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、などポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオーテルポリオールにアクリル酸或いは、メタクリル酸を付加したポリエーテルアクリレート、ポリエーテルメタクリレートを挙げることができる。
【0013】
公知の二塩基酸、グリコールから得られたポリエステルポリオールにアクリル酸、メタクリル酸を付加させたポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレートも用いることができる。
公知のポリオール、ジオールとポリイソシアネートを反応させたポリウレタンにアクリル酸、メタクリル酸を付加させたポリウレタンアクリレート、ポリウレタンメタクリレートを用いてもよい。
ビスフェノールA、ビスフェノールF、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールFやこれらのアルキレンオキサイド付加物にアクリル酸、メタクリル酸を付加させたものやイソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性ジメタアクリレートなども用いることができる。
【0014】
3官能の化合物としては、トリメチロ−ルプロパントリアクリレート、トリメチロ−ルエタントリアクリレート、トリメチロ−ルプロパンのアルキレンオキサイド変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリアクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ヒドロシキピバルアルデヒド変性ジメチロ−ルプロパントリアクリレート、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレート、トリメチロ−ルプロパンのアルキレンオキサイド変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリメタクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ヒドロシキピバルアルデヒド変性ジメチロ−ルプロパントリメタクリレートなどを用いることができる。
【0015】
更に4官能以上の化合物としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロ−ルプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサアクリレートなどを用いることができる。
【0016】
官能基数が多過ぎるかあるいは官能基濃度が高過ぎると硬化収縮が大きく、支持体との密着力が低下し好ましくない。
分子量は2,000以下の比較的低分子のものが好ましい。更に好ましくは分子量1,000以下である。分子量が低い方が、粘度が低くレベリングが高いので平滑性が向上する。
【0017】
最も好ましいものは分子量200〜600の2官能のアクリレート化合物、メタクリレート化合物である。
好ましい化合物の具体例としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、水素化ビスフェノールAのジアクリレート、水素化ビスフェノールAのジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールのジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールのジメタクリレート、などを挙げることができる。
【0018】
これらの化合物は任意の割合で混合して使用することができるとともに「低エネルギー電子線照射の応用技術(2000年 (株)シーエムシー発行)」「UV・EB硬化技術(1982年 (株)総合技術センター発行)」などに記載されている公知の1官能アクリレートまたはメタクリレート化合物を反応性希釈剤として併用してもよい。反応性希釈剤は、下塗り剤の物性や下塗り剤の硬化反応を調整する機能を有する。
反応性希釈剤としては、脂環式炭化水素骨格をもつアクリレート化合物が好ましい。
具体的な例として、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
反応性希釈剤の配合量は前記の2官能以上の化合物に対して10重量%〜90重量%が好ましい。
【0019】
放射線硬化化合物の粘度は、25℃において300mPa・s以下であることが好ましく、更に好ましくは5〜200mPa・s、更には10〜100mPa・sである。上記範囲内の粘度であれば、平滑層を塗布した後のレベリング効果により、支持体の突起を遮断して、平滑な層を得ることができる。
放射線硬化化合物は、必要により溶媒に溶解して用いることができる。溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、エタノール、トルエン等が好ましい。
【0020】
放射線硬化化合物は支持体上に塗布、乾燥後に放射線照射され、硬化させる。
本発明において使用される放射線には、電子線や紫外線を用いることができる。紫外線を使用する場合には前記の化合物に光重合開始剤を添加することが必要となる。電子線硬化の場合は重合開始剤が不要であり、透過深さも深いので好ましい。
放射線硬化化合物を重合させるために電子線を用いる場合、電子線加速器としてはスキャニング方式、ダブルスキャニング方式あるいはカーテンビーム方式が採用できるが、好ましいのは比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式である。電子線特性としては、加速電圧が30〜1000kV、好ましくは50〜300kVであり、吸収線量として0.5〜20Mrad、好ましくは2〜10Mradである。加速電圧が30kV未満の場合はエネルギーの透過量が不足し、300kVを超えると重合に使われるエネルギーの効率が低下し経済的でない。
電子線を照射する雰囲気は窒素パージにより酸素濃度を200ppm以下にすることが好ましい。酸素濃度が高いと表面近傍の架橋、硬化反応が阻害される。
【0021】
紫外線光源としては、水銀灯が用いられる。水銀灯は20〜240W/cmのランプを用い、速度0.3m/分〜20m/分で使用される。基体と水銀灯との距離は一般に1〜30cmであることが好ましい。
紫外線硬化に用いる光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤が用いられる。詳細は、例えば「新高分子実験学第2巻 第6章 光・放射線重合」(共立出版1995発行、高分子学会編)記載されているものを使用できる。具体例としては、アセトフエノン、ベンゾフエノン、アントラキノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタール、ベンゾインイソブチルケトン、ヒドロキシジメチルフエニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフエニルケトン、2−2ジエトキシアセトフエノン、などがある。芳香族ケトンの混合比率は、放射線硬化化合物100重量部に対し0.5〜20重量部、好ましくは2〜15重量部、さらに好ましくは3〜10重量部である。
【0022】
平滑層硬化後のガラス転移温度Tgは、80〜150℃が好ましく、100℃〜130℃がさらに好ましい。ガラス転移温度が80℃未満の場合には塗布工程で粘着故障を起こすことがあり、150℃以上だと塗膜がもろくなることがある。
【0023】
平滑層の厚みは0.1〜1.0μmが好ましく0.3〜0.7μmがさらに好ましい。厚みが0.1μm未満だと十分な平滑性が得られない。また、1.0μm以上だと塗膜が乾燥しにくくなりので粘着故障を起こすことがある。
【0024】
本発明の磁気記録媒体は、上記平滑層を形成し、次いで、平滑層上に非磁性微粉末及び/又は強磁性微粉末をポリウレタンを含む結合剤で分散した中間層を形成した後に磁性層を形成するか、あるいは平滑層上に直接に強磁性微粉末とポリウレタンを含む結合剤を分散した磁性層を形成して作製することができる。平滑層は支持体の少なくとも一方に設けられ、両方に設けることもできる。中間層又は磁性層は、非磁性微粉末、強磁性微粉末を結合剤中に分散した組成物を塗布することによって形成することができる。
【0025】
本発明に使用するポリウレタン樹脂は10〜50重量%のポリエーテルポリオール、18〜45重量%の環状構造をもつ分子量100〜500のジオール、及び有機ジイソシアネートを重合させて得られたものであり、ポリエーテルポリオール、短鎖ジオール、有機ジイソシアネートとしては以下のものを用いることができる。必要に応じて公知の鎖延長剤を併用してもよい。
また、前記ポリウレタンの分子末端に放射線硬化可能な官能基を有する化合物を反応させてもよい。
【0026】
環状構造を有する分子量100〜500のジオールとして、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールS、水素化ビスフェノールS、ビスフェノールP、水素化ビスフェノールP、トリシクロデカンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、5,5’(1−メチルエチリデン)ビス−(1、1’ビシクロヘキシル)2オール、4,4’(1−メチルエチリデン)ビス−2メチルシクロヘキサノール、5,5’(1,1’シクロヘキシリデン)ビス−(1,1’ビシクロヘキシル)2オール、5,5’(1,1’シクロヘキルメチレン)ビス−(1,1’ビシクロヘキシル)2オール、水添テルペンジフェノール、ジフェニルビスフェノールA、ジフェニルビスフェノールS、ジフェニルビスフェノールP、9,9−ビス−(4ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−(3−メチルエチリデン)ビス(2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール)、4,4’−(3−メチルエチリデン(ビス(2−フェニル−5メチルシクロヘキサノール)、4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビス(2−フェノール)、4,4’シクロヘキシリデンビス(2メチルフェノール)、テルペンジフェノール等のジオールやこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加物等を用いることができる。
この中でも水素化ビスフェノールA及び水素化ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましい。
【0027】
ポリエーテルポリオールとしては、環状構造を有する分子量100〜500のジオールにアルキレンオキサイドを付加したものを用いることができる。
この中でも、水素化ビスフェノールA及び水素化ビスフェノールAのポリプロピレンオキサイド付加物が好ましい。
ポリエーテルポリオールの分子量は500〜5000が好ましい。分子量が500未満だとウレタン基濃度が高くなるので溶剤溶解性が低下する。5000より大きいと塗膜強度が低下し耐久性が低下する。
【0028】
有機ジイソシアネート化合物としては、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、2,4−TDI(トリレンジイソシアネート)、2,6−TDI、1,5−NDI(ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、p−フェニレンジイソシアネート、XDI(キシリレンジイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、H6XDI(水素添加キシリレンジイソシアネート)、H12MDI(水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート)などの脂肪族、脂環族ジイソシアネートなどを用いることができる。
【0029】
併用できる鎖延長剤としては、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジエチル−1、5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジブチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジプロピル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジプロピル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−ブチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、3−オクチル−1,5−ペンタンジオール、3−ミリスチル−1,5−ペンタンジオール、3−ステアリル−1、5−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−プロピル−1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−1,6−ヘキサンジオール、5−エチル−1,9−ノナンジオール、5−プロピル−1,9−ノナンジオール、5−ブチル−1,9−ノナンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジブチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジプロピル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジプロピル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−ブチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、3−オクチル−1,5−ペンタンジオール、3−ミリスチル−1,5−ペンタンジオール、3−ステアリル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−プロピル−1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−1,6−ヘキサンジオール、5−エチル−1,9−ノナンジオール、5−プロピル−1,9−ノナンジオール、5−ブチル−1,9−ノナンジオール等の公知の脂肪族ジオールを併用してもよい。
【0030】
ウレタン基濃度は、2.5〜4.5mmol/gが好ましく、3.0〜4.0mmol/gがさらに好ましい。2.5mmol/gよりも少ないと塗膜のTgが低下し、耐久性が低下する。4.5mmol/gよりも多いと溶剤溶解性が低下し、分散性が低下するとともに、必然的にポリオールを含有できなくなるために分子量コントロールしにくい等の合成上の不都合が生じやすい。
【0031】
ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は3万〜15万が好ましく、4万〜10万がさらに好ましい。重量平均分子量が3万未満だと塗膜強度が低下し、耐久性が低下する。また、15万より大きいと溶剤への溶解性が低下し、分散性が低下する。
【0032】
ポリウレタン樹脂のガラス転移温度Tgは、40〜200℃、好ましくは70〜180℃、さらに好ましくは80〜170℃である。ガラス転移温度が200℃より大きいとカレンダー成型性が低下し、電磁変換特性が低下する。
【0033】
ポリウレタン樹脂には、極性基をもつことが好ましい。極性基としては、−SO3M、−OSO3M、−P03M2、−COOMを挙げることができる。この中でも、−SO3M、−OS03Mが好ましい。これらの極性基の含量は、1×10-5〜5×10-4eq/gが好ましい。1×10-5eq/g未満だと、磁性体への吸着が不十分となるので分散性が低下する。5×10-4eq/gより大きいと溶剤への溶解性が低下するので分散性が低下する。
【0034】
ポリウレタン樹脂には2〜20個/分子のOH基を含むことが好ましく、3〜15個/分子含むことがさらに好ましい。OH基が2個/分子未満だとイソシアネート硬化剤を用いた場合の硬化性が低下し耐久性が低下する。20個/分子より多いと溶剤への溶解性が低下するので分散性が低下する。
【0035】
中間層及び磁性層の結合剤には、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどを共重合したアクリル系樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルキラール樹脂などを併用してもよい。これらは単独あるいは複数の樹脂を混合して用いることができる。
これらの中で好ましいのは塩ビ系樹脂、アクリル系樹脂である。
【0036】
上記の結合剤には磁性体、非磁性粉体の分散性を向上させるためこれらの粉体表面に吸着する官能基(極性基)を持つことが好ましい。好ましい官能基としては−SO3M、−SO4M、−PO(OM)2、−OPO(OM)2、−COOM、>NSO3M、>NRSO3M、−NR1R2、−N+R1R2R3X-などがある。ここでMは水素又はNa、K等のアルカリ金属、Rはアルキレン基、R1、R2、R3はアルキル基、ヒドロキシアルキル基又は水素、XはCl、Brなどのハロゲンである。結合剤中の官能基の量は10〜200μeq/gが好ましく、30〜120μeq/gがさらに好ましい。この範囲を超えても少なくても分散性が低下する。
このほか−OH基などの活性水素を持つ官能基を持っていてもかまわない。
【0037】
結合剤の分子量は重量平均分子量で20,000〜200,000が好ましく、更に好ましくは20,000〜80,000である。この範囲より小さいと塗膜強度が不足し耐久性が低下する。大きいと粘度が高く分散性が低下する。
【0038】
塩ビ系樹脂としては塩ビモノマーに種々のモノマーと共重合したものが用いられる。
共重合モノマーとしては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどのアクリレート、メタクリレート類、アリルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、アリルプロピルエーテル、アリルブチルエーテルなどのアルキルアリルエーテル類、その他スチレン、αメチルスチレン、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、エチレン、ブタジエン、アクリルアミド、更に官能基をもつ共重合モノマーとしてビニルアルコ−ル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコ−ル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−ヒドロキシプロピルアリルエーテル、3−ヒドロキシプロピルアリルエーテル、p−ビニルフェノール、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ホスホエチル(メタ)アクリレート、スルホエチル(メタ)アクリレート、p-スチレンスルホン酸、及びこれらのNa塩、K塩などが用いられる。
【0039】
塩ビ系樹脂中の塩化ビニルモノマーの組成は60〜95重量%が好ましい。これより少ないと力学強度が低下し、多すぎると溶剤溶解性が低下し、溶液粘度が高く分散性が低下する。
吸着官能基(極性基)の好ましい量は前述したとおりである。これらの官能基の導入方法は上記の官能基含有モノマーを共重合しても良いし、塩ビ系樹脂を共重合した後、高分子反応で官能基を導入しても良い。
好ましい重合度は200〜600、更に好ましくは240〜450である。この範囲より小さいと力学強度が低下し、高すぎると溶液粘度が高く分散性が低下する。
【0040】
結合剤の添加量は磁性層の場合は強磁性微粉末1000重量部に対して、中間層の場合は非磁性微粉末及び/又は強磁性微粉末1000重量部に対して50〜300重量部が好ましく、100〜200重量部がさらに好ましい。
【0041】
本発明の磁気記録媒体の磁性層に使用される強磁性微粉末としては、強磁性酸化鉄、コバルト含有強磁性酸化鉄又は強磁性合金粉末を用いることができる。BET法による比表面積(SBET)は、通常、40〜80m2/gであり、好ましくは50〜70m2/gである。結晶子サイズは通常、12〜25nmであり、好ましくは13〜22nmであり、特に好ましくは14〜20nmである。長軸長は通常、0.05〜0.25μmであり、好ましくは0.07〜0.2μmであり、特に好ましくは0.08〜0.15μmである。強磁性金属粉末としては、Fe、Ni、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni、Co−Ni−Fe等が挙げられ、金属成分の20質量%以下の範囲内で、アルミニウム、ケイ素、硫黄、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、イットリウム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、金、錫、アンチモン、ホウ素、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、銀、鉛、リン、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、テルル、ビスマスを含む合金を挙げることができる。また、強磁性金属粉末は、少量の水、水酸化物または酸化物を含むこともできる。これらの強磁性微粉末の製法は既に公知であり、本発明で用いる強磁性微粉末についても公知の方法に従って製造することができる。強磁性微粉末の形状に特に制限はないが、通常は針状、粒状、サイコロ状、米粒状および板状のものなどが使用される。特に針状の強磁性微粉末を使用することが好ましい。
【0042】
上記の樹脂成分および強磁性微粉末を、通常磁性層塗布液の調製の際に使用されているメチルエチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等の溶剤と共に混練分散して磁性塗布液を調製することができる。混練分散は通常の方法に従って行うことができる。
【0043】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性微粉末または強磁性微粉末を含む中間層を有していても良い。非磁性微粉末は、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、等の無機化合物から選択することができる。無機化合物としては例えばα化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化すず、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどを、単独または組合せで使用することができる。特に好ましいものは、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、さらに好ましいものは二酸化チタン、酸化鉄である。
【0044】
これら非磁性微粉末の平均粒径は0.005〜2μmであることが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性微粉末を組合せたり、単独の非磁性微粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましくは、非磁性微粉末の平均粒径は0.01〜0.2μmである。非磁性微粉末のpHは6〜9の間が特に好ましい。非磁性微粉末の比表面積は通常、1〜100m2/gであり、好ましくは5〜50m2/g、更に好ましくは7〜40m2/gである。非磁性微粉末の結晶子サイズは0.01μm〜2μmであることが好ましい。DBPを用いた吸油量は通常、5〜100ml/100gであり、好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は通常、1〜12であり、好ましくは3〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでも良い。
【0045】
これらの非磁性微粉末の表面には、表面処理が施されてAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb2O3、ZnOが存在することが好ましい。特に分散性に好ましいものはAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2であり、更に好ましいものはAl2O3、SiO2、ZrO2である。これらは組合せて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0046】
中間層に用いることが可能な強磁性微粉末としては、γ−Fe2O3、Co変性γ−Fe2O3、α−Feを主成分とする合金、CrO2等が挙げられる。特に、Co変性γ−Fe2O3が好ましい。本発明において、中間層に用いられる強磁性微粉末は磁性層に用いられる強磁性微粉末と異なる組成、性能を有することが好ましい。例えば、長波長記録特性を向上させるためには、中間層のHcは磁性層のそれより低く設定することが望ましく、また、中間層のBrを磁性層のそれより高くすることが有効である。それ以外にも、公知の重層構成をとることによる利点を付与させることができる。
【0047】
本発明において、磁性層又は中間層に使用されるその他の添加剤としては、潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果などを持つものを使用することができる。二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラフアイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基を持つシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキルリン酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエーテル、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも、また分岐していても良い一塩基性脂肪酸、およびこれらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)または、炭素数12〜22の不飽和結合を含んでも、また分岐していても良い一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール、炭素数12〜22の不飽和結合を含んでも、また分岐していても良いアルコキシアルコール、炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも、また分岐していても良い一塩基性脂肪酸と炭素数2〜12の不飽和結合を含んでも、また分岐していても良い一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つとからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数2〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミン、などを使用することができる。
【0048】
これらの具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート、オレイルアルコール、ラウリルアルコールが挙げられる。
【0049】
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体、等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類、等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、硫酸エステル基、リン酸エステル基、などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸またはリン酸エステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0050】
本発明で使用されるこれらの潤滑剤、界面活性剤は、中間層、磁性層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、中間層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられ、無論ここに示した例のみに限られるものではない。また本発明で用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性層又は中間層用の塗布液の製造時のいずれの工程で添加してもよい。例えば、混練工程前に強磁性微粉末と混合する場合、強磁性微粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
【0051】
本発明で使用されるこれら潤滑剤としては、具体的には日本油脂製:NAA−102、ヒマシ油硬化脂肪酸、NAA−42、カチオンSA、ナイミーンL−201、ノニオンE−208、アノンBF、アノンLG、ブチルステアレート、ブチルラウレート、エルカ酸、関東化学製:オレイン酸、竹本油脂製:FAL−205、FAL−123、新日本理化製:エヌジェルブOL、信越化学製:TA−3、ライオンアーマー社製:アーマイドP、ライオン社製:デュオミンTDO、日清製油製:BA−41G、三洋化成製:プロフアン2012E、ニューポールPE61、イオネットMS−400などが挙げられる。
【0052】
以上の材料により調製した塗布液を支持体上の平滑層表面に塗布することにより、中間層又は磁性層を形成することができる。本発明の磁気記録媒体の製造方法は、例えば、走行下にある支持体上の平滑層表面に磁性層塗布液を磁性層の乾燥後の層厚が0.05μm〜2.0μmの範囲内、より好ましくは0.07〜1μmになるように塗布する。ここで複数の磁性層塗布液を逐次又は同時に重層塗布してもよく、中間層塗布液と磁性層塗布液とを逐次又は同時に重層塗布してもよい。上記磁性塗布液又は中間層塗布液を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。
これらについては例えば株式会社総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にすることができる。
【0053】
本発明に使用する非磁性支持体には、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが使用できる。
好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドである。
これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行ってもよい。
支持体の表面粗さはカットオフ値0.25mmにおいて中心平均粗さRa3〜10nmが好ましい。
【0054】
本発明を中間層を有する構成の磁気記録媒体に適用する場合、塗布する装置、方法の例として以下のものを提案できる。
(1)磁性層塗布液の塗布で一般的に適用されるグラビア、ロール、ブレード、エクストルージョン等の塗布装置により、まず中間層を塗布し、中間層が未乾燥の状態のうちに特公平1−46186号公報、特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報等に開示されているような支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により、磁性層を塗布する。
(2)特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを2個有する一つの塗布ヘッドにより中間層および磁性層をほぼ同時に塗布する。
(3)特開平2−174965号公報に開示されているようなバックアップロール付きのエクストルージョン塗布装置により、中間層および磁性層をほぼ同時に塗布する。
【0055】
本発明で用いる支持体の磁性塗布液が塗布されていない面にバックコート層が設けられていてもよい。バックコート層は、支持体の磁性塗布液が塗布されていない面に、研磨剤、帯電防止剤などの粒状成分と結合剤とを有機溶剤に分散したバックコート層形成塗料を塗布して設けられた層である。粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができ、また結合剤としてはニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独またはこれらを混合して使用することができる。なお、支持体上のバックコート層形成塗料の塗布面に平滑層が設けられていてもよい。
【0056】
磁性層は、磁性層塗布液中に含まれる強磁性微粉末に磁場配向処理を施した後に乾燥される。このようにして乾燥された後、磁性層に表面平滑化処理を施すことができる。表面平滑化処理には、例えばスーパーカレンダーロールなどを利用することができる。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性微粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。カレンダー処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用することができる。また金属ロールで処理することもできる。
【0057】
本発明の磁気記録媒体は、表面の中心線平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて0.1〜5nm、好ましくは1〜4nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが高密度記録用の磁気記録媒体として好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性微粉末と結合剤を選んで形成した磁性層に、上記カレンダー処理を施すことにより行われる。カレンダー処理条件としては、カレンダーロールの温度が60〜100℃の範囲、好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲、圧力が100〜500kg/cm(98〜490kN/m)の範囲、好ましくは200〜450kg/cm(196〜441kN/m)の範囲、特に好ましくは300〜400kg/cm(294〜392kN/m)の範囲の条件で作動させることによって行われることが好ましい。得られた磁気記録媒体は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を具体的に実施例に基づき説明するが、本発明はこれに限定されて解釈されるべきものではない。なお、以下の「部」とは「質量部」のことである。
[実施例1]
<ポリウレタンの合成>
表1Aに示した組成のジオール化合物を還流式冷却器、攪拌機を具備し、あらかじめ窒素置換した容器に窒素気流下、60℃でシクロヘキサノン30%溶液になるように溶解した。次いで触媒として、ジブチルスズジラウレート60ppmを加えさらに15分間溶解した。さらにジイソシアネート化合物を加え90℃で6時間加熱反応しポリウレタン溶液を得た。得られたポリウレタンをGPCで測定した重量平均分子量とガラス転移温度Tgを表1に示した。
【0059】
<磁性塗料の調製>
強磁性合金粉末(組成:Fe 89atm%、Co 5atm%、Y 6atm% Hc 1900Oe、結晶子サイズ15nm,BET比表面積60m2/g、長軸径0.08μm、針状比7、σs150emu/g)100部をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いで日本ゼオン(株)製塩ビ系樹脂MR110(重合度300)を10部及び表1のポリウレタンAのシクロヘキサノン溶液(固形分30%、SO3Na含量70μeq/g、重量平均分子量4万)を50部加え60分間混練した。
次いで、
研磨剤(Al2O3 粒子サイズ0.3μm) 2部
カーボンブラック(粒子サイズ40μm) 2部
メチルエチルケトン/トルエン=1/1 200部
を加えてサンドミルで120分間分散した。これに、
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製 コロネート3041)5部(固形分)
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 50部
を加え、さらに20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性塗料を調製した。
【0060】
<非磁性塗料の調整>
α−Fe2O3(平均粒径0.15μm、SBET52m2/g、表面処理Al2O3、SiO2、pH6.5〜8.0)100部をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いで日本ゼオン(株)製塩ビ系樹脂MR110(重合度300)を10部及び表1のポリウレタンAのシクロヘキサノン溶液(固形分30%、SO3Na含量70μeq/g、重量平均分子量4万)を50部を加えて60分間混練した。
次いで、メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=6/4 200部を加えてサンドミルで120分間分散した。これに
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製 コロネート3041)5部(固形分)
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 50部
を加え、さらに20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、中間層用非磁性塗料を調製した。
【0061】
次いで表2に示した放射線硬化化合物を30重量%溶液(MEK/トルエン=7/3)に調整したものを乾燥後の厚さが0.5μmになるようにコイルバーを用いて厚さ7μm、中心平均表面粗さRa6.2nmのポリエチレンテレフタレート支持体の表面に塗布したのち乾燥させ、塗膜表面に加速電圧150KVの電子線を吸収線量が1Mradになるように照射し硬化させた。
その直後に放射線硬化層の上に非磁性塗料を、さらにその上に磁性塗料を乾燥後の厚みがそれぞれ1.5μm、0.1μmになるように、リバースロールを用いて同時重層塗布した。磁性塗料が未乾燥の状態で5000ガウスのCo磁石と4000ガウスのソレノイド磁石で磁場配向を行ない、溶剤を乾燥したものを金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロールの組み合せによるカレンダー処理を(速度100m/min、線圧300kg/cm、温度90℃)で行なった後3.8mm幅にスリットし、磁気テープを作製した。
【0062】
[実施例2〜5及び比較例1]
表2に示したポリウレタン及び放射線硬化化合物を用いた以外は実施例1と同様の方法で作成した。
【0063】
[比較例2]
実施例1において放射線硬化化合物を塗布しなかった以外は実施例1と同様の方法で作成した。
【0064】
[実施例6、比較例3]
実施例1において磁性層用のポリウレタンを表2に記載のものに変え、非磁性層を塗布しなかった以外は実施例1と同様の方法で作成した。
【0065】
[比較例4]
実施例6において放射線硬化化合物を塗布しなかった以外は実施例6と同様の方法で作成した。
【0066】
【表1】
【0067】
<測定方法>
(1)放射線硬化層の表面粗さRa
放射線照射硬化層を塗布、電子線照射したのち非磁性層、磁性層を塗設せずにサンプリングしその表面をデジタルオプティカルプロフィメーター(WYKO製)を用いて光干渉法によりカットオフ0.25mmの条件で中心平均粗さをRaとした。
(2)磁性層表面粗さ
(1)と同様の方法でテープサンプルの表面粗さRaを測定した。
(3)電磁変換特性
DDS4ドライブにて4.7MHzの単一周波数信号を最適記録電流で記録し、その再生出力を測定した。比較例3の再生出力を0dBとした相対値で示した。
(4)剥離強度
テープサンプルの磁性層面を両面テープでガラス板に固定し、固定しない部分のテープを折り返し、180度剥離法で剥離時の強度(gf)を測定した。
(5)剥離面
剥離面の顕微鏡観察を行い剥離した界面を調べた。
(6)スリット後テープエッジ観察
3.6mm幅にスリットした後のテープエッジを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、エッジ部にクラックが発生しているものを×、クラックが発生していないものを○とした。
(7)走行によるドロップアウト増加
23℃50%RHの環境下でDDS4ドライブを用いて10分長テープを繰り返し100回走行させる前後でドロップアウトカウンターで1分間測定した。5sec以上初期出力に対して−5dB低下したものをドロップアウトとし、繰り返し走行前後でその個数の増加数を調べた。
表2に磁気テープの評価結果を示す。
【0068】
【表2】
【0069】
【発明の効果】
本発明により、塗膜平滑性に優れ、高い電磁変換特性を有する磁気記録媒体を提供することができる。本発明の磁気記録媒体は、剥離強度が向上し、ドロップアウトが低減された。また、磁性層の密着力が向上し、製造工程中での磁性層の脱落が減少した。
Claims (4)
- 非磁性支持体上に
放射線硬化化合物を塗設して放射線照射により硬化させた平滑層を有し、
この平滑層の上に非磁性微粉末及び/又は強磁性微粉末をポリウレタンを含む結合剤で分散した中間層を有し、
この中間層の上に更に少なくとも一層の、強磁性微粉末と結合剤を分散した磁性層を塗設して得られる磁気記録媒体において、
平滑層と中間層は隣接し、かつ
該ポリウレタンが10〜50重量%のポリエーテルポリオール、18〜45重量%の環状構造をもつ分子量100〜500のジオール、及び有機ジイソシアネートを重合させて得られ、
該放射線硬化化合物は、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールのジ(メタ)アクリレート、及びシクロヘキサンジメタノールのジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする
磁気記録媒体。 - 非磁性支持体上に
放射線硬化化合物を塗設し放射線照射により硬化させた平滑層を有し、
この平滑層の上に少なくとも一層の、強磁性微粉末とポリウレタンを含む結合剤を分散した磁性層を塗設して得られる磁気記録媒体において、
少なくとも平滑層と隣接する磁性層に含まれる該ポリウレタンが10〜50重量%のポリエーテルポリオール、18〜45重量%の環状構造をもつ分子量100〜500のジオール、及び有機ジイソシアネートを重合させて得られ、
該放射線硬化化合物は、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールのジ(メタ)アクリレート、及びシクロヘキサンジメタノールのジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする
磁気記録媒体。 - 放射線硬化化合物の25℃における粘度が300mPa・sec以下である請求項1又は2記載の磁気記録媒体。
- 放射線硬化化合物が、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールのジ(メタ)アクリレート、及びシクロヘキサンジメタノールのジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜3いずれか1つに記載の磁気記録媒体。
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