JP4045065B2 - おしゃぶり - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、乳幼児の特に哺乳により栄養を摂取している時期において好適に使用されるおしゃぶりに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、哺乳期から離乳期以降の乳幼児が主として玩具として使用するおしゃぶりは広く知られている。
このようなおしゃぶりは、乳幼児が口のなかに入れて、その口唇刺激による興味をおこさせるために与えられている。乳幼児のうち、生後すぐから月齢4月程度までの間は、もっぱら哺乳運動により、母乳により栄養を摂取する時期に対応しており、このため、おしゃぶりの形態としても、人工乳首と共通した乳頭部を有するものが知られている。
【0003】
例えば、図10は、従来のおしゃぶりの一例を示す半断面図である。図において、おしゃぶり1は、人工乳首と同じ形状の乳頭部2と、この乳頭部2を支持するフランジ状の座板3と備えている。そして、座板3の乳頭部2とは反対面には、長く延びる把持部4が設けられている。
【0004】
このようなおしゃぶり1は、乳頭部2が人工乳首と同じ形状であることから、生後すぐから月齢4月程度までの間の生まれて間もない乳幼児でも、これをくわえることで、哺乳運動が促され、興味を引くことができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図10のようなこのおしゃぶり1では、使用者である乳幼児が生後すぐから月齢4月程度と幼い場合には、手指の未発達であり、把持部4を手で持って、乳頭部2をくわえ続けることは困難である。
したがって、乳幼児が乳頭部2を吸っている間はよいが、吸引を休んだ時に、口を僅かに開くと、おしゃぶり1が口から落下してしまう。
特に、図10のおしゃぶり1のような構造であると、把持部4の重みでおしゃぶり1は乳幼児の口を離れて、下に落ちてしまい、おしゃぶり1を使い続けることができない。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、生後の月齢の低い乳幼児であっても、その哺乳運動を適切に助けることができるとともに、乳幼児の口に適切にとどまって、このような乳幼児に特に適した口唇刺激を与えることができるおしゃぶりを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、請求項1の発明にあっては、乳首部と、この乳首部の基部に配置された所定の広がりを有する座板部とを備えたおしゃぶりであって、前記乳首部は、弾性を有しており、ほぼ球状の乳頭先端部と、この乳頭先端部よりも大きく膨出した湾曲表面を有する膨出部である前記基部とを備えており、前記屈曲部は、幅方向よりも上下方向の長さを短くすることにより、断面が偏平な形状とされた括れ部とされて、前記上下方向に沿って折れ曲がるようにされ、乳幼児が前記乳首部を口腔内に含んで哺乳運動をしている状態では、乳頭先端部が上方に向かうように該屈曲部で折れ曲がり、前記哺乳運動を中断した状態では、該屈曲部が上下の歯槽の間に位置する構成とされており、前記乳首部は中空であり、かつ外部と連通しているおしゃぶりにより、達成される。
【0008】
請求項1の構成によれば、乳首部は、幼児の哺乳窩に適切に入ることで、哺乳運動を促すことができるように、先端部がほぼ球状に形成されており、座板部を備えることで、口腔内に入り込まないようにされている。
そして、前記基部は、乳頭先端部よりも大きく膨出した湾曲表面を有する膨出部とされているので、乳幼児にとって母親の乳房を口に含んだ時と近似する感触を与えることで、一層哺乳運動を促しやすいようになっている。
しかも、この乳頭先端部及び前記基部の外径よりも小さな外径とすることにより屈曲できるようにした屈曲部を有している。これにより、乳幼児が乳首部を口腔内に含んだ状態では、乳頭先端部が上方に向かうようにこの屈曲部で折れ曲がるので、乳頭先端部が哺乳窩に適切に当接する。
さらに、前記屈曲部が断面が偏平な形状の括れ部とされている。このため、乳幼児が哺乳運動の途中で、哺乳動作を一時中断し、吸引を休んだ場合に、この括れ部が、乳幼児の口腔内の上下の歯槽の間に挟まれて保持されるようになっている。つまり、この括れ部は、僅かに開いた上下の歯槽の間でひっかかりやすいように、幅方向よりも上下方向の長さを短くすることにより、断面が偏平な形状とされている。これにより、括れ部は、乳幼児が蠕動様運動を休んでいる時におしゃぶりの落下を防止するための掛止手段の役割を果たす。
加えて、前記乳首は、中空でその空気が外部に逃げることができるようになっているので、乳幼児の口腔内に自在に変形しやすい。
また、前記乳首部の基部が前記座板部と接続される領域が座板材料よりもやわらかい材料にて形成されている。ここで、乳幼児の口腔内に乳首部を挿入した時に、その口唇先端が当たる領域が、「乳首部の基部が前記座板部と接続される領域」である。したがって、この領域を座板材料よりも柔らかい材料で形成することで、母親の乳房に口唇を当てた感触と近似する感触を与えることができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記括れ部は、前記座板位置からほぼ11mm乃至17mmの位置に設定され、かつ前記乳首部の前記乳頭先端部の外径がほぼ11mmないし15mmに設定され、しかも前記乳首部の長さは、前記座板位置からほぼ24mmないし33mmに設定されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明の構成によれば、乳幼児のこの時期(月齢4月程度)の口唇先端から歯槽頂点の位置迄の平均的な長さに対応して、前記括れ部が、前記座板位置からほぼほぼ11mm乃至17mmの位置に設定されていれば、この括れ部は、僅かに開いた上下の歯槽の間でひっかかりやすい。また、乳首部の基部も母親の乳輪部と同等の機能を果たすことができる。
しかも、乳幼児のこの時期(月齢4月程度)の哺乳窩の大きさを考慮すると、前記乳頭先端部の外径が11mmより小さいと、哺乳窩に十分フィットしないことから、蠕動様運動(哺乳運動)を阻害する。前記乳頭先端部の外径が15mmより大きいと、哺乳窩に入りきらない場合があり、この場合も十分フィットしないことから、蠕動様運動(哺乳運動)を阻害する。
さらに、乳首部の長さは、乳首部の基端から先端までの長さである。この長さは、口腔内に乳首部が挿入された場合に、口唇先端から哺乳窩の最深部に入り込む必要性から決定される。
【0011】
第3の発明は、第1または2のいずれかの発明の構成において、前記座板部は、前記乳首部の基部周囲を囲む板体でなり、この座板部の使用者に対する対向面の少なくとも両脇部が凹状に形成された密着部とされ、かつ前記座板部の前記対向面の少なくとも両脇周縁部が、外側に向かうように反った逃げ領域とされていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明の構成によれば、座板部の使用者に対する対向面の少なくとも両脇部が、凹状とされることで、乳幼児の両頬部の曲面に対応した凹面とすることができ、その分座板部のフィット性が向上する。
すなわち、座板部は、乳幼児が乳首を吸引している時には、その口唇周辺に確実にフィットすることで、乳首部の上述した特別の各形状の機能が発揮できるようになる。
また、前記座板部の前記対向面の少なくとも両脇周縁部に逃げ領域を形成することで、座板部の周縁が使用者の口唇周辺部において、食い込むほど密着することが防止される。
【0013】
第4の発明は、第3の発明の構成において、前記座板部の前記対向面の使用者の顎部に対応する領域が、前記密着部と反対の湾曲面とされており、かつ前記座板部の前記対向面の上側周縁部は、前記逃げ領域を形成せずに、前記対向面と同じ曲面とされていることを特徴とする。
【0014】
第4の発明の構成によれば、前記座板部の使用者の顎部に対応する領域が、密着部と反対に湾曲していることから、この領域が前方にむかって僅かに突出する特徴をもつ使用者の顎部と干渉することがない。
また、前記座板部の前記対向面の上側周縁部は、両頬部のような曲面となっていない使用者の口唇周辺の上部に対して、適切にフィットさせることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態を添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0028】
図1は、本発明の実施形態によるおしゃぶりの概略斜視図であり、図1(a)は、おしゃぶりを前上方から見た状態を、図1(b)は、おしゃぶりを前下方から見た状態をそれぞれ示している。また、図2は、このおしゃぶりの概略側断面図、図3は概略側面図、図4は概略水平断面図であり、これらの図を適宜参照しながら、本実施形態のおしゃぶりを説明する。
【0029】
図1において、おしゃぶり10は、乳首部11と、この乳首部の基部に配置された所定の広がりを有する座板部12とを備えている。
この乳首部11は、ほぼ球状の乳頭先端部15と、この乳頭先端部15よりも大きく膨出した湾曲表面を有する膨出部である基部13とを備えており、この乳頭先端部15と基部13との間には、屈曲部14が形成されている。この屈曲部14は、好ましくは、幅方向よりも上下方向の長さを短くすることにより、断面が偏平な形状とされた括れ部とされている。
【0030】
上記乳首部11は、例えば、熱湯等による加熱殺菌によっても容易に劣化せず、母親の乳首の感触と近似した感触を与えるように、形成されている。また、本実施形態のおしゃぶりでは、後述するように、乳幼児の口腔内で十分変形する必要があり、このような点を考慮すると、十分柔らかい材料、例えば、シリコーンゴムにより、例えば、幅10mmで先端半径5mm程度の形状の所定の治具を、毎分100mmで乳頭先端部に押しつけた時に、乳頭先端部の最大外径を40パーセント圧縮した場合、その反発力が1.5N(ニュートン)から2.5N、好ましくは、例えば2.0N程度となる硬度に設定されている。
また、座板部12は、乳首部11とともに、上記殺菌処理されても容易に劣化せず、また、所定の剛性を備えた材料で形成されており、例えば、ポリプロピレンやポリカーボネート等が使用されている。
【0031】
乳首部11は、図2に示すように、座板部12から先端までの長さmが例えば24mmないし33mmに設定されている。これにより、後述するように、その乳頭先端部15が乳幼児の哺乳窩に適切に達するようにされている。
また、乳頭部11は、図2や図4に示されているように、中空に形成されていて、基端側の座板部12に形成した貫通孔16によって外部と連通している。
これにより、乳首部11が上述した硬度で口腔内に接触することができ、しかも、使用により、乳幼児のよだれや洗浄の際の水等が内部に入っても水切りしやすい。
乳首部11の乳頭先端部15は、ほぼ球状であり、その外径fは、後述するように、乳幼児の哺乳窩に適切にフィットするように、好ましくは11mm乃至15mm、特に好ましくは、約13mmに設定されている。
基部13は、乳頭先端部15と一体に形成されており、上述したように大きく膨出した湾曲表面を有する膨出部とされている。これにより、母親の乳房の乳頭基部である乳輪部と近似した形状と弾力とされており、乳首部11が乳幼児の口腔内に入れられた時に、母乳を吸引している時と同じような感触を乳幼児に与えるようになっている。
【0032】
また、乳首11の乳頭先端部15と基部13との間には、乳頭先端部15及び基部13の外径よりも小さな外径とすることにより屈曲できるようにした屈曲部が形成されている。つまり、屈曲部は乳幼児の口腔内で外力が集中しやすい部分であり、屈曲箇所となりやすい部分である。したがって、乳首部11は、この屈曲部14で図7の説明として後述するように、乳頭先端部15を上方に向けるように屈曲するようになっている。この屈曲部14は、さらに、本実施形態では、好ましくは、その幅方向よりも上下方向の長さを短くすることにより、断面が偏平な形状とされた括れ部14とされている。この括れ部14は、図4のk−k線端面図である図5に示すように、幅方向の長さeよりも上下方向の長さdが小さくなるように、断面が偏平に形成されている。
また、この括れ部14は、後述ように、乳幼児がおしゃぶり10を取り落とすのを防止する重要な機能を発揮するために、また、基部13が後述する機能を十分に発揮するために、好ましくは、座板部12から括れ部14までの距離gがほぼ11mm乃至17mm,好ましくは13mm程度に設定されている。
【0033】
この基部13には、座板部12が配置されている。座板部12は、乳首部11の基部13を支持するボックス状の本体17を有しており、この本体17は一体に設けられた、所定の面積でなる板体である面状部21を備えている。本体17の面状部21の背面側には、リング状の掛止め手段23が配置されている。
面状部21は、図1に示されているように、乳首部11の基部13の周囲に大きくフランジ状に広がって、例えば、図示のようなハート形状を呈している。この面状部21は、乳幼児が乳首部11を取り込んだ時に、乳首部11の基端部13付近が口唇先端で止まるように位置決めする役割を果している。
【0034】
座板部12の面状部21は、例えば、図1に示されているように、使用者である乳幼児の顔の両脇側である左右の方向に比較的広い面積を有している。そして、面状部21の使用者に対する対向面の少なくとも両脇部が凹状に形成された密着部22,22とされている。つまり、密着部22,22は、使用者の顔面の両頬近傍の領域の湾曲と沿った凹面とされている。
これにより、乳幼児が乳首部11を吸引する際に、座板部12の各密着部22,22が乳幼児の両頬の付近に密接に接触することで、正しく位置決めされる。
ここで、面状部22,22は、その全体が乳幼児の両頬に完全に密着する必要はないが、その湾曲面は、新生児から1歳程度までの乳幼児の頬への接触を種々確認した結果、例えば、半径40mm程度の湾曲面とされている。
【0035】
さらに、面状部21の密着部22,22の一部の領域には、貫通孔24,24が形成されており、面状部21が乳幼児の口腔を塞いだ状態で、万一窒息などの事態が起きないようになっている。
また、好ましくは、面状部21の両側面側,すなわち、密着部22,22の周縁部(外側の領域)は、図4に示すように、この密着部22,22とは反対の湾曲を備える逃げ領域25が形成されている。この逃げ領域25は、密着部22,22の凹状面とは反対に、使用者に向いて凸となるような面とされることにより、密着部22,22が使用者の顔面に密着しても、その周縁部が食い込むことがないようにされている。これにより、面状部21の特に密着部22,22が使用者である乳幼児の両頬近傍に密着しても、その周縁のエッジ部が食い込んで、後で肌の上に食い込んだ跡を残すようなことがないようになっている。
ここで、上記逃げ領域25は、座板部12の面状部21を構成する板体の端面の湾曲とは明確に区別される。つまり、このような板体の厚みを表す端面部も曲面で構成されているが、逃げ領域25の曲率半径はこれより大きい点で区別される。例えば、本実施形態では、上記端面部の曲率は、0.9mm程度であるのに対して、逃げ領域25を構成する曲面は、その曲率が例えば7mm程度となっている。
また、上述したように、面状部22,22は、必ずしも、その全体が乳幼児の両頬に完全に密着する必要はないが、面状部22,22と逃げ領域25,25との境界(曲面の方向が変わる領域)付近は必ず密着し、その当接による刺激を緩和するようになっている。
【0036】
さらに、面状部21の乳首部11よりも下の領域,すなわち、図1の26で示す領域は、図2によく表れているように、密着部22,22とは反対の湾曲を備える下部領域26とされている。これは、乳幼児の下顎部分がやや前方に張り出す形状を有しているという特徴を考慮して形成されたもので、この下顎の張出を逃げる逃げ領域とされている。これにより、面状部21の下部領域26は、乳幼児の下顎近傍に適切に密着することができるようになっている。
すなわち、この乳首部11よりも下の領域では、上側密着部22,22は、例えば、その曲率が半径160mm程度で、対向する使用者の顔面に対して凹面とされているが、下部領域26は、これとは反対の曲面で、例えば、曲率半径が7mm程度とされている。
尚、この下部領域26が、座板部12の面状部21を構成する板体の端面の湾曲とは区別される点は、逃げ領域25の場合と同じである。
【0037】
また、面状部21の乳首部11よりも上側の領域は、図2に示されているように、上記密着部22,22(この場合、例えば、曲率半径160mm)と同じ方向の湾曲で、これよりも小さな曲率(例えば、曲率半径50mm)を有するようにされている。つまり、この上部領域27は、使用者の顔面に対向する面が密着部22,22と同じように凹面とされており、その湾曲の曲率半径が、密着部22,22よりも小さくなるようにされている。
これにより、乳幼児の湾曲した上唇の形状に適合して、新生児から1歳程度の乳幼児の上唇に密着しやすい(特に、口唇を閉じた状態における上唇に密着しやすい)湾曲とすることで、上唇に適切にフィットして密着するようにされている。
【0038】
本実施形態は以上のように構成されており、次に、その使用状態を説明しつつ、作用を述べる。
先ず、本実施形態の作用を説明する前に、乳幼児の口腔内の構造について説明する。
図6(a)は、本実施形態のおしゃぶり10を乳幼児の口腔内に入れた状態を水平断面で上顎側を概略的に示した図である。哺乳運動を行う乳幼児において、重要な役割を果たす哺乳窩という窪みが上顎の軟口蓋と硬口蓋の境界付近に存在し、符号Dはその哺乳窩の最深部を示している。
図6(b)は、図6(a)にて示した各符号箇所に関して、その深さを概略的にプロットした図である。
これらの図において、Aは乳幼児の口唇先端部、Bは歯槽の頂上点、Cは哺乳窩の始点(前端)、そして、Xはおしゃぶりの乳首部11が適切な位置をとった場合の先端をそれぞれ示している。
【0039】
また、誕生から月齢4月程度までの乳幼児に関して、本発明者等の研究によれば、各サイズは以下のようである。
すなわち、哺乳窩の(最深部)直径(E−E’)は、11mmないし15mm程度、哺乳窩の外周直径(F−F’)が17mmないし19mm程度、口唇の厚さ(A−B)が5mm乃至10mm程度、歯槽頂上点から哺乳窩最深点までの距離が13mm乃至17mm程度である。
【0040】
図7は、使用者である乳幼児hがおしゃぶり10を口腔内にくわえ、乳首部11を口腔内に取り込む段階を示す概略断面図である。
図において、31は、乳幼児hの上唇、32は下唇を示し、33,34はそれぞれ歯槽上部、歯槽下部を示し、符号Dは哺乳窩最深点を示している。
図7の段階では、乳幼児hは、その口蓋や舌を使用して、屈曲部14の上述した機能により、図示するように乳首部11の乳頭先端部15を上方へ屈曲,変形させるとともに、伸展させ、乳頭先端部15を哺乳窩へ導く。
【0041】
図8は、乳幼児hがおしゃぶり10を口腔内で母親の乳首を取り込むと同じ状態で取り込んで、哺乳運動,すなわち、蠕動様運動している状態を示している。
この時、乳幼児hの舌は点線で示すように波うつような動きを示しており、乳首部11は、哺乳窩に適切に収容されて、母親の乳首と同様な変形を行うことができる。
【0042】
つまり、乳首部11は、上述したように、十分変形可能な柔らかい材料で形成されており、しかも、中空内部から空気が上述の貫通孔を通って外部へ抜けることから、従来のおしゃぶりと異なり、母親の乳首とほぼ同様な変形や伸展をすることができる。
ここで、図2で説明したように、乳首部11の長さhが例えば24mmないし33mmに設定されているので、その乳頭先端部15が乳幼児の哺乳窩に適切に達することができる。
また、乳頭先端部15は、図2で説明したように、ほぼ球状であり、その外径fは、好ましくは11mm乃至15mm、特に好ましくは、約13mmに設定されている。乳頭先端部15の外径が15mmより大きいと、乳幼児hの舌の動きにより口腔内の空間を密閉できないので、哺乳運動を適切に行えない。乳頭先端部15の外径が11mmより小さい場合にも、乳幼児hの舌の動きにより口腔内の空間を密閉できないので、哺乳運動を適切に行うことができないのである。したがって、乳幼児の哺乳窩に乳頭先端部15が適切にフィットするためには、その外径fは、好ましくは11mm乃至15mmであることが必要で、特に好ましくは13mm程度である。
【0043】
また、図2で説明した座板部12から括れ部14までの距離gは膨出部である基部13の大きさに対応しており、図6のAを始点としてBを通りCに至る距離と一致している。この基部13の長さである距離gは、約11mm乃至17mmとされる。すなわち、17mmより長いと、後述するように、乳幼児が蠕動様運動を休んだ時に僅かに口を開くと、口唇から外へ出てしまう長さが必要以上に大きくなっておしゃぶり10が落ちやすくなる。11mmよりも短いと、乳頭先端部15が哺乳窩が引き込まれる際に、口唇がフィットする部分となる乳輪としての大きさが不足し、口唇が座板部12と干渉してしまう。
【0044】
また、図6ないし図8の状態において、座板部12の特殊な形状が最もその効果を発揮している。すなわち、先ず、座板部12の面状部21少なくとも両脇に設けた密着部22,22は、使用者の顔面の両頬近傍の領域の湾曲と沿った凹面とされている。このため、乳幼児hが乳首部11を吸引する際に、座板部12の各密着部22,22が乳幼児の両頬の付近に密接に接触する。
【0045】
さらに、座板部12の面状部21の上部領域27は、上述したように、使用者の顔面に対向する面が密着部22,22と同じように凹面とされており、その湾曲の曲率半径が、密着部22,22よりも大きくなるようにされている。このため図8に示すように、乳幼児の湾曲した上唇に適切にフィットして密着する。
【0046】
さらに、面状部21の下側領域26は、上述したように、密着部22,22とは反対の湾曲を備える下部領域26とされている。そして、図8に示されているように、乳幼児の下顎部分がやや前方に張り出す形状を有しているので、面状部21の下部領域26は、乳幼児の下顎近傍に適切に密着することができる。
このように、座板部12の面状部21は、その両脇の領域22,22と上側領域27及び下側領域26がそれぞれ、乳幼児の顔全面の対応領域に密着できるようにされていることで、乳首部11の上述の寸法設定が生かされるように、正しく位置決めされる。
【0047】
また、このように座板部12が乳幼児hの顔の前面に密着しても、特に、その両脇部には、上述したように、逃げ領域25が形成されていることから、周縁部が乳幼児hの顔前面に食い込むことがなく、肌の上に食い込んだ跡を残すようなことがない。
【0048】
図9は、乳幼児hが図8の蠕動様運動を休んでいる状態を示している。
すなわち、乳幼児hは図8の哺乳運動を長時間継続するわけではなく、哺乳運動の間にこのように乳首部11を吸引しない休憩の状態となる。
この時には、乳幼児hの口が僅かに開かれ、すなわち、歯槽上部33と歯槽下部34の距離が僅かに大きくなるとともに、口腔内の負圧が弱くなると、おしゃぶり10は矢印方向に僅かに落下する。
この状態では、乳首部11の括れ部14が掛止手段の役割を果たす。
【0049】
この掛止手段としての括れ部14は、図5で説明したように、上下につぶれた偏平な形状であるから、上下の歯槽33,34との間で容易に挟まれることができる。このため、矢印方向におしゃぶり10が落下しようとした時に、上下の歯槽33,34が括れ部14の位置でひっかかり、その落下を防止する。
ここで、図9でaに示す括れ部14の厚みは、約3mm乃至9mmで6.5mm程度が好ましい。aが9mmよりも大きいと、屈曲しにくく、乳頭先端部の外形との差が小さく成りすぎて、上下の歯槽間で掛止保持しにくくなってしまう。また、aが3mmよりも小さいと製造時に金型からの離型がしにくく、製造が困難となる。
【0050】
また、上述したように、図2で説明した座板部12から括れ部14までの距離gは膨出部である基部13の大きさに対応しているだけでなく、図9のcに示す座板部12から括れ部14までの距離と一致している。そして、この距離cは、約11mm乃至17mmとされる。
すなわち、17mmより長いと、乳幼児hが図9のように哺乳運動を休んだ時に僅かに口を開くと、口唇から外へ出てしまう長さが必要以上に大きくなっておしゃぶり10が落ちやすくなるのである。
【0051】
このように、本実施形態のおしゃぶり10によれば、従来のおしゃぶりと異なり、特に、誕生から月齢4か月程度の乳幼児に対して、その哺乳運動を適切に行うことができる特殊なおしゃぶりとなっている。このため、このような時期の乳幼児に適合した口唇刺激を与えることで、その注意を巧みにひきつけることができる。
しかも、この時期に特有な哺乳運動の間の休止状態においても、乳幼児の口からおしゃぶり10が落下することを適切に防止することができ、衛生的であるとともに、乳幼児が継続して使用を続けることができる。
【0052】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。
各実施形態の各構成要素は、本発明の効果を発揮する限りにおいて、個々に省略することができ、相互に組み合わせることができる。そして、さらに、上述の説明で言及しない構成を付加することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、生後の月齢の低い乳幼児であっても、その哺乳運動を適切に助けることができるとともに、乳幼児の口に適切にとどまって、このような乳幼児に特に適した口唇刺激を与えることができるおしゃぶりを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るおしゃぶりを示し、(a)はその前上方から見た概略斜視図、(b)はその前下方から見た概略斜視図である。
【図2】図1のおしゃぶりの概略側断面図である。
【図3】図1のおしゃぶりの概略側面図である。
【図4】図1のおしゃぶりの水平方向の概略断面図である。
【図5】図4のk−k線に沿った端面図である。
【図6】(a)は、図1のおしゃぶりを乳幼児の口腔内に入れた状態を水平断面で上顎側を概略的に示した図であり、(b)は、(a)にて示した各符号箇所に関して、その深さを概略的にプロットした図である。
【図7】使用者である乳幼児がおしゃぶりを口腔内にくわえ、乳首部を口腔内に取り込む段階を示す概略断面図である。
【図8】使用者である乳幼児がおしゃぶりを口腔内で母親の乳首を取り込むと同じ状態で取り込んで、哺乳運動,すなわち、蠕動様運動している状態を示す図である。
【図9】使用者である乳幼児が図8の蠕動様運動を休んでいる状態を示す図である。
【図10】従来のおしゃぶりの一例を示す半断面図である。
【符号の説明】
10・・・おしゃぶり、11・・・乳首部、12・・・座板部、13・・・基部、14・・・括れ部、15・・・乳頭先端部

Claims (4)

  1. 乳首部と、この乳首部の基部に配置された所定の広がりを有する座板部とを備えたおしゃぶりであって、
    前記乳首部は、
    弾性を有しており、ほぼ球状の乳頭先端部と、この乳頭先端部よりも大きく膨出した湾曲表面を有する膨出部である前記基部と
    を備えており、
    前記乳頭先端部と前記基部との間には、この乳頭先端部及び前記基部の外径よりも小さな外径とすることにより屈曲できるようにした屈曲部を有し、
    前記屈曲部は、幅方向よりも上下方向の長さを短くすることにより、断面が偏平な形状とされた括れ部とされて、前記上下方向に沿って折れ曲がるようにされ、乳幼児が前記乳首部を口腔内に含んで哺乳運動をしている状態では、乳頭先端部が上方に向かうように該屈曲部で折れ曲がり、前記哺乳運動を中断した状態では、該屈曲部が上下の歯槽の間に位置する構成とされており、
    前記乳首部は中空であり、かつ外部と連通している
    ことを特徴とする、おしゃぶり。
  2. 前記括れ部は、前記座板位置からほぼ11mm乃至17mmの位置に設定され、かつ前記乳首部の前記乳頭先端部の外径がほぼ11mmないし15mmに設定され、しかも前記乳首部の長さは、前記座板位置からほぼ24mmないし33mmに設定されていることを特徴とする、請求項1に記載のおしゃぶり。
  3. 前記座板部は、前記乳首部の基部周囲を囲む板体でなり、この座板部の使用者に対する対向面の少なくとも両脇部が凹状に形成された密着部とされ、かつ前記座板部の前記対向面の少なくとも両脇周縁部が、外側に向かうように反った逃げ領域とされていることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載のおしゃぶり。
  4. 前記座板部の前記対向面の使用者の顎部に対応する領域が、前記密着部と反対の湾曲面とされており、かつ前記座板部の前記対向面の上側周縁部は、前記逃げ領域を形成せずに、前記対向面と同じ曲面とされていることを特徴とする、請求項3に記載のおしゃぶり。
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