JP4044239B2 - レーザによるミシン目加工方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ある幅を持ち定速で送られる加工対象物、特に長尺の薄板、例えば紙に、長さ方向に間隔をおいてしかも幅方向にわたって定ピッチでミシン目を形成するミシン目加工方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、例えばロール状のトイレットペーパのような長尺の紙に、長さ方向に一定間隔をおいてしかも幅方向にわたって定ピッチでミシン目を形成するような加工は、パンチローラによる機械装置を用いて行われていた。簡単に言えば、パンチローラは、紙の幅と同程度の長さを持つローラに、上記ピッチと同じピッチで列をなすように多数の針を設け、このような列を周方向に間隔を置いて複数形成して成る。そして、走行している紙の上面側あるいは下面側に隣接させてパンチローラを配設して回転させることにより、列をなす多数の針で一度に幅方向にわたる定ピッチのミシン目を形成するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、機械装置によるミシン目加工では、打ち抜かれたミシン目の微小なくずが大量に発生する。そして、このような微小なくずが飛散すると、職場環境を悪化させるので、防塵対策やくずを収集するような対策が必要であり、収集されたくずの処理も必要となる。
【0004】
そこで、本発明の課題は、レーザ光を利用することで打ち抜きくずの発生しないミシン目加工方法を提供することにある。
【0005】
本発明の他の課題は、加工中の加工対象物の送り速度の変動にも対応できるミシン目加工方法を提供することにある。
【0006】
本発明の更に他の課題は、上記の加工方法に適したミシン目加工装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、ある幅を持つ加工対象物に、幅方向にミシン目を形成するミシン目加工方法において、レーザ発振器で発生されるミシン目加工用のパルス状のレーザ光を、前記加工対象物の幅方向の一端側から反対端側に向けてポリゴンミラーによりスキャンさせ、このスキャンの間は前記加工対象物の送り速度の変化量に応じて前記ポリゴンミラーを変位させて前記レーザ光の照射位置を、前記加工対象物の送り方向と平行な方向に移動させることにより、前記加工対象物の幅方向にミシン目を形成できるようにし、しかも前記ポリゴンミラーと前記加工対象物との間に前記加工対象物の幅方向にわたって延在する円柱レンズを介在させて該円柱レンズを通してスキャンを行うようにしたことを特徴とするレーザによるミシン目加工方法が提供される。
【0008】
本発明によればまた、ある幅を持つ加工対象物に、幅方向にミシン目を形成するミシン目加工装置において、前記加工対象物の送り速度を検出するための速度センサと、ミシン目加工用のパルス状のレーザ光を発生するためのレーザ発振器と、前記レーザ光を前記加工対象物の幅方向に振らせるためのポリゴンミラーを搭載し、該ポリゴンミラーを前記加工対象物の送り方向に平行な状態から前記加工対象物の送り方向と角度θをなす状態に変位される回動ステージ機構と、前記レーザ発振器からのレーザ光を前記ポリゴンミラーに導くための光学経路と、前記回動ステージ機構に搭載され、前記ポリゴンミラーによる照射域と前記加工対象物との間に介在し、かつ前記加工対象物の幅方向にわたって延在するように設けられた円柱レンズと、前記速度センサの検出信号を受け、前記ポリゴンミラーと前記回動ステージ機構とを制御するための制御装置とを備え、前記制御装置は、前記ポリゴンミラーによるスキャンに際しては前記加工対象物の送り速度の変化量に応じて前記レーザ光の照射位置を、前記加工対象物の送り方向と平行な方向に移動させるように前記回動ステージ機構を制御することにより、前記加工対象物の幅方向にミシン目を形成できるようにしたことを特徴とするレーザによるミシン目加工装置が提供される。
【0009】
なお、いずれの発明においても、前記円柱レンズと前記ポリゴンミラーとの間に、fθレンズを配置することにより、前記加工対象物の中央部と端部での光路差を補正することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1、図2を参照して、本発明の第1の実施の形態を、給紙ロールのような紙供給手段から送られてくる長尺の紙にミシン目を形成するミシン目加工装置について説明する。図1、図2において、このミシン目加工装置は、ミシン目加工用のパルス状のレーザ光を発生するためのレーザ発振器11と、レーザ光を紙10の幅方向に振らせるためのポリゴンミラー12を搭載し、このポリゴンミラー12の回転軸を変位させる回動ステージ機構13と、レーザ発振器11からのレーザ光をポリゴンミラー12に導くための光学経路14と、ポリゴンミラー12と回動ステージ機構13とを制御するための制御装置(図示せず)とを備えている。回転駆動機構13は、モータによる駆動源13−1を備えている。レーザ発振器11には、紙10の材質に応じて、紙10に貫通孔を形成できるエネルギーを持つレーザ光を発生できるもの、例えばCO2 レーザ発振器、固体レーザ発振器が使用される。更には、固体レーザから波長変換素子により生成される2ω、3ω等のn次高調波(nは2以上の整数)レーザ光を使用しても良い。
【0011】
本形態では更に、光学経路14中に、レーザ発振器11からのレーザ光を平行光にするためのコリメーションレンズ14−1とこの平行光をポリゴンミラー12まで導く反射ミラー14−2、14−3と、集光レンズ14−4とを配設している。なお、反射ミラー14−3は回動ステージ機構13上に搭載されて回動ステージ機構13と共に回動する。回動ステージ機構13には更に、ポリゴンミラー12による照射域と紙10との間に介在し、かつ紙10の幅方向にわたって延在するように断面円形の円柱レンズ15が設けられている。なお、回動ステージ機構13はの円板状部分は、レーザ光の透過可能な透明部材で作られている。
【0012】
制御装置は、図3に示すように、ポリゴンミラー12による1回のスキャン、すなわち紙10の一端側から反対端側へのスキャンに際しては、紙10の送り速度に応じてレーザ光の照射位置を、反対端に近づくにつれて紙10の送り方向と同じ方向に徐々にずらすように回動ステージ機構13を制御する。具体的には、制御装置は、ポリゴンミラー12の1回のスキャンの間にその回転軸を紙10の送り方向に平行な状態から紙10の送り方向と角度θをなす状態まで変位させるように回動ステージ機構14を回動させる。この場合、紙10の反対端でのずれ量をdとする。その結果、紙10には、幅方向に対して見かけ上、角度θをなすようなスキャンが行われることになるが、実際には紙10の幅方向の端部に直角にミシン目が形成されることになる。この角度θは、実際には紙10の送り速度と紙10の幅寸法により決定される。
【0013】
ところで、紙10の送り速度は定速であることが望ましいが、速度変化が生じることは避けられない。そして、スキャン中にこのような速度変化が生じると、上記のような制御だけでは紙10の幅方向の端部に直角にミシン目を形成することが困難になる。
【0014】
本発明は、上記のような紙10の送り速度の変化を考慮して、スキャンに際しては紙10の送り速度の変化量に応じてレーザ光の照射位置を、紙10の送り方向と平行な方向に移動させるように回動ステージ13を制御するようにした点に特徴を有する。
【0015】
このために、紙10の送り速度を検出するための速度センサが設けられ、この速度検出信号は制御装置にフィードバックされる。制御装置は、スキャン中に紙10の送り速度に変化があった場合には、その変化量に応じてレーザ光の照射位置を移動させる。例えば、紙10の送り速度が上昇してしまった場合には、レーザ光の照射位置を紙10の送り方向と同じ方向に移動させる。逆に、紙10の送り速度が低下してしまった場合には、レーザ光の照射位置を紙10の送り方向と反対方向に移動させる。このようにして、1回のスキャン中に送り速度に変化が生じたとしても、紙10の幅方向の端部に直角にミシン目を形成することができる。
【0016】
上記のような制御は、スキャン中のみならず、加工を開始する際の紙10の走行開始直後及び加工を終了する際の走行停止直前にも適用される。例えば、加工を開始する際には、紙10の送り速度は徐々に上昇してある速度に達して定速走行に移る。このような送り速度の上昇時には、送り速度に応じて角度θを徐々に増加させるようにする。逆に、加工を終了する際の送り速度の減少時には、送り速度に応じて角度θを徐々に減少させるようにする。勿論、このような送り速度の上昇あるいは減少時においてスキャン中に送り速度が変動した場合には、上記と同様の制御が行われる。
【0017】
円柱レンズ15は、ポリゴンミラー12からの反射光を紙10上に小幅のスポットの焦点を結ぶように集光させるためのものであり、以下の理由により使用される。ポリゴンミラー12の幅寸法(図2の紙面に対して垂直な方向の寸法)を10(mm)とすると、そこに入力するレーザ光のビーム径も10(mm)以下である必要がある。ここで、集光レンズ14−4として焦点距離f=500のものを使用すると、紙10の面上でのレーザ光のスポット径を1(mm)とすることができる。このようなスポット径は、ミシン目を形成するためには大きいので、一方向でもスポットサイズを小さくするために円柱レンズ15を配置する。これにより、レーザ光のスポットの幅を0.05(mm)程度にすることができる。なお、円柱レンズに代えて、図4に示すようなシリンドリカルレンズ15−1を使用しても良い。
【0018】
仕様の一例を説明すると、紙10の幅457(mm)、送り速度130(m/min)、ずれ量dを約100(mm)とすると、実際のスキャン長は約467(mm)となる。この場合、ポリゴンミラー12として6面の反射ミラーを持ち、467(mm)のストロークで1回のスキャンを行うものとすると、1/6回転を46(msec)で回転することになり、ポリゴンミラー12の回転速度は217.4(rpm)となる。一方、一列のミシン目が形成される最大時間は、100(mm)/130(m/min)で46(msec)となる。レーザ光1ショットで紙10にミシン目が形成されるものとすると、幅0.05(mm)、長さ1(mm)のスポットサイズで1(mm)のピッチで照射する場合、467/2=234(個)のミシン目を形成することになり、それを最大46(msec)で形成するためには、234/46(msec)=5087(Hz)の周波数でレーザを発振させれば良い。
【0019】
図5を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。本形態では、ポリゴンミラー12と円柱レンズ15との間に、回動ステージ13と一体的に回動可能にfθレンズ20を配置することにより、紙10の中央部と端部での光路差を補正するようにしたものである。これは、fθレンズ20が無い場合には、集光レンズ14−4から紙10までの距離は、レーザ光の照射位置により変化するからである。すなわち、紙10の端部に近付くほど上記距離は長くなり、焦点がぼけることになる。fθレンズ20はこのような距離の補正機能を有し、レーザ光が常に紙10に対して焦点を結ぶようにする。なお、fθレンズ20は円形状のもの、円柱レンズ15に対応した細長い形状のもののいずれでも良い。その他の要素は、第1の実施の形態と同じである。
【0020】
なお、本発明は、紙に限らず、布や樹脂あるいは金属板のような薄板にも適用可能である。
【0021】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、レーザ光により薄板の幅方向にわたってミシン目を形成できるようにしたことにより、ミシン目形成の際にくずが生じることが無く、防塵対策やくずを収集するような対策が不要となる。また、ミシン目形成中に薄板の送り速度が変化しても、薄板の縁部に直角にミシン目を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による装置の概略構成を示した平面図である。
【図2】図1の構成を側面から見た図である。
【図3】図1のポリゴンミラーによるスキャンを説明するための図である。
【図4】本発明に使用される円柱レンズの他の例を示した図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態による装置の概略構成を示した平面図である。
【符号の説明】
10 紙
11 レーザ発振器
12 ポリゴンミラー
13 回動ステージ機構
14 光学経路
14−1 コリメーションレンズ
14−2、14−3 反射ミラー
14−4 集光レンズ
15 円柱レンズ
15−1 シリンドリカルレンズ
20 fθレンズ
Claims (4)
- ある幅を持つ加工対象物に、幅方向にミシン目を形成するミシン目加工方法において、
レーザ発振器で発生されるミシン目加工用のパルス状のレーザ光を、前記加工対象物の幅方向の一端側から反対端側に向けてポリゴンミラーによりスキャンさせ、このスキャンの間は前記加工対象物の送り速度の変化量に応じて前記ポリゴンミラーを変位させて前記レーザ光の照射位置を、前記加工対象物の送り方向と平行な方向に移動させることにより、前記加工対象物の幅方向にミシン目を形成できるようにし、しかも前記ポリゴンミラーと前記加工対象物との間に前記加工対象物の幅方向にわたって延在する円柱レンズを介在させて該円柱レンズを通してスキャンを行うようにしたことを特徴とするレーザによるミシン目加工方法。 - 請求項1記載のミシン目加工方法において、前記円柱レンズと前記ポリゴンミラーとの間にfθレンズを介在させることにより、前記加工対象物の中央部と端部での光路差を補正することを特徴とするレーザによるミシン目加工方法。
- ある幅を持つ加工対象物に、幅方向にミシン目を形成するミシン目加工装置において、
前記加工対象物の送り速度を検出するための速度センサと、
ミシン目加工用のパルス状のレーザ光を発生するためのレーザ発振器と、
前記レーザ光を前記加工対象物の幅方向に振らせるためのポリゴンミラーを搭載し、該ポリゴンミラーを前記加工対象物の送り方向に平行な状態から前記加工対象物の送り方向と角度θをなす状態に変位される回動ステージ機構と、
前記レーザ発振器からのレーザ光を前記ポリゴンミラーに導くための光学経路と、
前記回動ステージ機構に搭載され、前記ポリゴンミラーによる照射域と前記加工対象物との間に介在し、かつ前記加工対象物の幅方向にわたって延在するように設けられた円柱レンズと、
前記速度センサの検出信号を受け、前記ポリゴンミラーと前記回動ステージ機構とを制御するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記ポリゴンミラーによるスキャンに際しては前記加工対象物の送り速度の変化量に応じて前記レーザ光の照射位置を、前記加工対象物の送り方向と平行な方向に移動させるように前記回動ステージ機構を制御することにより、前記加工対象物の幅方向にミシン目を形成できるようにしたことを特徴とするレーザによるミシン目加工装置。 - 請求項3記載のミシン目加工装置において、前記円柱レンズと前記ポリゴンミラーとの間に、前記回動ステージと一体的に回動可能にfθレンズを配置し、前記加工対象物の中央部と端部での光路差を補正することを特徴とするレーザによるミシン目加工装置。
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