JP4044220B2 - 無段変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車用ベルト式無段変速機の制御装置に関し、特に、ダウンシフト時の駆動ベルトのスリップ防止のための制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
無段変速機における変速は、プライマリプーリのプライマリ固定ディスクとプライマリ可動ディスクの間に形成されるV字形の溝の幅と、セカンダリプーリのセカンダリ固定ディスクとセカンダリ可動ディスクの間のV字形の溝の幅が、それぞれ、プライマリ圧Ppとセカンダリ圧Psの制御によって変化され、駆動ベルトの巻き付け径の比率が変化されることによって行われる。
上記のような変速制御は、オイルポンプに接続された油圧コントロールシステムによって行われる。
【0003】
この油圧コントロールシステムは、エンジン回転数,プライマリプーリの回転数,セカンダリプーリの回転数およびアクセル開度等を示す信号に基づいて、オイルポンプからプライマリプーリおよびセカンダリプーリに供給されるプライマリ圧Ppおよびセカンダリ圧Psの油圧制御を行う。
【0004】
このようなベルト式無段変速機は、ダウンシフト時、すなわち、プライマリプーリのプライマリ固定ディスクとプライマリ可動ディスクとの間隔を広げて駆動ベルトの巻き付け径を小さくする際に、駆動ベルトに対する幅方向の締め付け力が弱くなって、プライマリプーリにおいて駆動ベルトのスリップが発生するという問題を有している。
【0005】
このプライマリプーリにおける駆動ベルトのダウンシフト時のスリップ限界を、図10に基づいて説明する。
この図10は、縦軸に変速速度、横軸にプライマリ圧Ppをとり、変速速度=0(固定変速比),セカンダリ圧Ps=Ps1,入力限界トルクTin=Tin1であるときのプライマリ圧Ppとセカンダリ圧Psの関係をグラフにしたものである。
【0006】
図10において、点γ11が、セカンダリ圧Ps=Ps1(実線ω1)におけるスリップ限界でのプライマリ圧Ppnmを示している。
このプライマリ圧Ppnmは、
Ppnm=αPs1
α:変速比によって決まるスリップ限界時のバランス油圧比
の式によって求めることが出来る。
【0007】
セカンダリ圧Psは、実際には、スリップ限界に対してマージンを持った圧力(Ps2とする)が使用され、このマージンを持ったセカンダリ圧Ps2が一定のときに、変速速度=0(固定変速比)にするために必要なプライマリ圧Pp2を示すのが、図中の点γ12である。
このセカンダリ圧PsをPs2で一定にして、プライマリ圧PpをPp2から下げてゆくと、変速速度Vがプライマリ圧Ppの下げ量に比例して増大してゆき、ダウンシフトされる。
そして、プライマリ圧PpがPps1まで下がると、駆動ベルトとプライマリプーリとの間にスリップが発生する。
【0008】
このように、セカンダリ圧Ps=Ps2において駆動ベルトとプライマリプーリとの間にスリップが発生する限界点γ13と、他のセカンダリ圧Psにおいて求められるスリップが発生する限界点を結んでゆくと、ほぼ直線の境界線vを描くことができる。
この境界線vよりも左側の部分がベルトスリップ域Eとなる。
【0009】
すなわち、セカンダリ圧Psを一定にしてプライマリ圧Ppを下げてゆくと、動作点(プライマリ圧Ppと変速速度の座標点)が実線ω1(Ps=Ps1の場合),ω2(Ps=Ps2の場合)またはω3(Ps=Ps3の場合)に沿って移動し、境界線vを越えてベルトスリップ域Eに入ると、駆動ベルトとプライマリプーリ間にスリップが発生する。
上記のようなベルト式無段変速機における従来の変速制御は、以下のようにして行われている。
【0010】
すなわち、エンジントルクから無段変速機に入力される入力トルクが求められ、この求められた入力トルクと変速比とからセカンダリ圧Psmが決定される。その後、セカンダリ圧Psmが一定の条件下で、上記のようなプライマリ圧Ppと変速速度の直線的関係から、目標プライマリ圧Ppmが決定され、これによって、プライマリプーリにおける駆動ベルトの巻き付け径が設定される。
【0011】
そして、プライマリプーリにおける駆動ベルトのスリップに対しては、無段変速機の変速制御を行う油圧回路にオリフィスを接続し、このオリフィスの絞りを試行錯誤的に設定して、最大変速速度が図10においてベルトスリップ域Eに入らないように制限するという対策が講じられている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の無段変速機の変速制御におけるプライマリ圧Ppおよびセカンダリ圧Psの設定においては、図10に示されるような駆動ベルトのスリップ限界域Eについての考慮が為されていないため、スリップ限界以上の変速制御を行うことが出来ないという問題が生じている。
また、駆動ベルトのスリップ防止のために無段変速機の変速制御を行う油圧回路にオリフィスを接続する場合には、このオリフィスによって油圧回路内における油圧の変動速度が制限されるため、ダウンシフトを急速に行うといった変速速度の制御を積極的に行うことが出来ないという問題が生じている。
【0013】
この発明は、上記のようなベルト式無段変速機の従来の制御装置における問題点を解決するために為されたものである。
すなわち、この発明は、ダウンシフト時に、駆動ベルトのスリップを防止しながら高い変速速度での変速制御を可能にするとともに、急速なダウンシフトにも対応することが出来るベルト式無段変速機の制御装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
第1の発明による無段変速機の制御装置は、上記目的を達成するために、プライマリプーリと、セカンダリプーリと、このプライマリプーリおよびセカンダリプーリに卷回された駆動ベルトとを有し、プライマリプーリとセカンダリプーリにプライマリ圧とセカンダリ圧をそれぞれ供給してプライマリプーリとセカンダリプーリに対する駆動ベルトの巻き付け径の比率を設定して無段変速を行う無段変速機の制御装置において、
目標変速速度を設定する目標変速速度設定手段と、
この目標変速速度設定手段によって設定された目標変速速度に基づいて前記プライマリプーリと駆動ベルトとの間にスリップが発生するか否かを判定するスリップ判定手段と、
このスリップ判定手段によって前記プライマリプーリと駆動ベルトとの間にスリップが発生すると判断されたとき、前記プライマリ圧とセカンダリ圧をそれぞれ前記プライマリプーリと駆動ベルトとの間にスリップが発生しない圧力に補正する圧力補正手段と、を備え、
前記スリップ判定手段が、前記プライマリプーリに入力する入力トルクを所要の変速比において伝達するのに必要な最小のスリップ限界プライマリ圧およびスリップ限界セカンダリ圧に基づいて設定される判定基準圧力と前記目標変速速度から算出される目標プライマリ圧とを比較して、前記目標プライマリ圧が前記判定基準圧力よりも小さいときに前記プライマリプーリと駆動ベルトとの間にスリップが発生すると判定し、
前記圧力補正手段が、前記スリップ判定手段によって前記プライマリプーリと駆動ベルトとの間にスリップが発生すると判定されたときに、前記セカンダリ圧とプライマリ圧をそれぞれ上昇させることによって補正し、
前記判定基準圧力は、前記最小のスリップ限界プライマリ圧に基準圧力補正値を加えることによって設定され、
前記基準圧力補正値は、前記目標変速速度から算出される目標セカンダリ圧と前記プライマリプーリに入力する入力トルクを所要の変速比において伝達するのに必要な最小のスリップ限界セカンダリ圧との差に変速比に基づいて定められる比例定数を乗じることによって設定されることを特徴としている。
第2の発明による無段変速機の制御装置は、前記目的を達成するために、第1の発明の構成に加えて、
前記セカンダリ圧の補正は、前記目標セカンダリ圧にセカンダリ補正圧力を加えることによって行われ、
前記セカンダリ補正圧力は、前記判定基準圧力と前記目標プライマリ圧力との差に変速比と入力トルクに基づいて定められる比例定数を乗じることによって設定されることを特徴としている。
第3の発明による無段変速機の制御装置は、前記目的を達成するために、第2の発明の構成に加えて、前記プライマリ圧の補正は、前記目標プライマリ圧にプライマリ補正圧力を加えることによって行われ、
前記プライマリ補正圧力は、前記セカンダリ補正圧力に変速比と入力トルクに基づいて定められる比例定数を乗じることによって設定されることを特徴としている。
【0015】
この第1〜第3の発明による無段変速機の制御装置は、プライマリプーリとセカンダリプーリ間に駆動ベルトを卷回して、プライマリプーリを構成する固定ディスクと可動ディスクおよびセカンダリプーリを構成する固定ディスクと可動ディスクのそれぞれのV字形を形成する溝の幅を調節して、駆動ベルトの巻き付け径を変化させることにより、所望の変速比を得る無段変速機に適用されるものである。
【0016】
この種の無段変速機は、ダウンシフト時に、プライマリプーリの固定ディスクと可動ディスク間の溝の幅が広がる際に、目標変速速度が高いと、駆動ベルトに対する幅方向の締め付け力の低下によって、プライマリプーリと駆動ベルト間にスリップが発生し、動力伝達が阻害される場合がある。
このような、プライマリプーリと駆動ベルト間のスリップの発生は、特に、キックダウン時のように、ダウンシフトが急速に行われるようなときに、顕著に現れる。
【0017】
そこで、上記無段変速機の制御装置は、目標変速速度設定手段がスロットル開度等に基づいて目標変速速度を設定すると、スリップ判定手段が、設定された目標変速速度から、例えばその目標変速速度を達成するために算出される目標プライマリ圧と目標セカンダリ圧から、ダウンシフト時に、プライマリプーリと駆動ベルトとの間にスリップが発生する可能性があるか否かを判断する。
【0018】
そして、スリップ判定手段が、プライマリプーリと駆動ベルト間にスリップが発生する可能性があると判定した場合には、プライマリプーリに供給するプライマリ圧とセカンダリプーリに供給するセカンダリ圧とを、互いにバランスさせながら、プライマリプーリと駆動ベルト間にスリップを発生させない圧力に補正して、所望の変速速度を達成する。
【0020】
スリップ判定手段は、以下のような手順によってプライマリプーリと駆動ベルト間にスリップが発生するか否かを判定する。
【0021】
すなわち、エンジン側からプライマリプーリに入力する入力トルクを所要の変速比においてプライマリプーリと駆動ベルト間にスリップを発生させないでセカンダリプーリ側に伝達するのに必要な最小の限界プライマリ圧が、あらかじめ設定されている。
そして、ダウンシフトの際に、そのときの入力トルクと達成しようとする変速比に基づいて求められた最小のスリップ限界プライマリ圧およびスリップ限界セカンダリ圧から、そのときの判定基準圧力を算出する。
そして、次に、この判定基準圧力と、目標変速速度から算出される目標プライマリ圧とを比較して、目標プライマリ圧が判定基準圧力よりも小さいときに、プライマリプーリにおける駆動ベルトの締め付け力が不足しているとして、駆動ベルトのスリップが発生するとの判定を行う。
【0022】
圧力補正手段は、上記のようにして駆動ベルトのスリップが発生するとの判定が行われると、目標セカンダリ圧を上昇させることによってセカンダリプーリにおける駆動ベルトの締め付け力を増大させて、プライマリプーリ側での駆動ベルトのスリップの発生を防止する。
そして、目標変速速度の達成のために、目標セカンダリ圧とのバランスによって、目標プライマリ圧も目標セカンダリ圧の上昇に対応して上昇させる。
【0025】
スリップ判定手段における判定基準圧力の設定およびセカンダリ圧とプライマリ圧の補正は、以下の手順で行なう。
【0026】
すなわち、まず、目標セカンダリ圧と最小のスリップ限界セカンダリ圧との差を求め、この求められた差に、変速比に基づいて定められる比例定数を乗じることによって基準圧力補正値を求める。
そして、最小のスリップ限界プライマリ圧に、上記のようにして求められた基準圧力補正値を加算して、判定基準圧力を設定する。
【0027】
この判定基準圧力に基づいて、駆動ベルトのスリップが発生するとの判定が行われたときには、判定基準圧力と目標プライマリ圧力との差に変速比と入力トルクに基づいて定められる比例定数を乗じることによってセカンダリ補正圧力を求め、このセカンダリ補正圧力を目標セカンダリ圧に加算することによって、セカンダリ圧の補正を行う。
さらに、上記のセカンダリ補正圧力に変速比と入力トルクに基づいて定められる比例定数を乗じることによってプライマリ補正圧力を求め、このプライマリ補正圧力を目標プライマリ圧Pに加算することによって、プライマリ圧の補正を行う。
【0028】
以上のように、上記第1〜第3の発明によれば、スリップ判定の基準となる判定基準圧力の設定を、スリップ限界プライマリ圧,目標セカンド圧,スリップ限界セカンダリ圧および変速比などの種々の変速要素を加味して行い、さらに、セカンダリ圧およびプライマリ圧の補正値も、同様に、種々の変速要素を加味して設定するので、確実なスリップ判定と、適正なセカンダリ圧とプライマリ圧の補正を行って、所望の変速速度の達成を可能にすることができる。それらの結果、ダウンシフト時に、プライマリ圧とセカンダリ圧がともに補正されて、プライマリプーリと駆動ベルト間のスリップが防止されて、高い変速速度での変速制御が可能になるとともに、急速なダウンシフトにも対応することが可能になる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の最も最適と思われる実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明を行う。
図9は、この発明による無段変速機の制御装置の構成を示す説明図である。
まず、無段変速機の駆動系について説明する。
【0030】
符号1は無段変速機を示す。この無段変速機1は、プライマリプーリ2と、セカンダリプーリ3と、このプライマリプーリ2とセカンダリプーリ3に巻回された駆動ベルト4とを備えている。
そして、エンジン5のクランク軸6からトルクコンバータ装置7、前後進切換装置8を介して伝達される駆動力を、プライマリプーリ2から駆動ベルト4を介してセカンダリプーリ3に伝達し、さらに減速ギヤ列9、ディファレンシャル装置Dを介して車輪Wに伝達することによって自動車を走行させる。
【0031】
プライマリプーリ2は、プライマリシャフト2Aと一体回転するプライマリ固定ディスク2Bと、プライマリシャフト2Aに対して軸方向にスライド自在なプライマリ可動ディスク2Cとを有している。
そして、プライマリ可動ディスク2Cが、プライマリシャフト2Aの軸方向にスライドすることにより、プライマリ可動ディスク2Cとプライマリ固定ディスク2Bとの間隔が調整される。
【0032】
セカンダリプーリ3は、セカンダリシャフト3Aと一体回転するセカンダリ固定ディスク3Bと、セカンダリシャフト3Aに対して軸方向にスライド自在なセカンダリ可動ディスク3Cとを有している。
そして、セカンダリ可動ディスク3Cが、セカンダリシャフト3Aの軸方向にスライドすることにより、セカンダリ可動ディスク3Cとセカンダリ固定ディスク3Bとの間隔が調整される。
それぞれのディスク間隔は、プライマリシリンダ2Dに導入されるプライマリ圧Pbとセカンダリシリンダ3Dに導入されるセカンダリ圧Psとの関係に応じて設定される。
【0033】
次いで、無段変速機1の油圧制御系について説明する。まず、オイルパン40と連通するオイルポンプ34からの油路41がセカンダリ制御弁50に連通して所定のセカンダリ圧Psが生じており、このセカンダリ圧Psが油路42によりセカンダリシリンダ3Dに常時供給される。セカンダリ圧Psは油路43を介してプライマリ制御弁60に導かれ、油路44によりプライマリシリンダ21に吸排油してプライマリ圧Ppが生じるように構成される。
【0034】
セカンダリ制御弁50は、比例電磁リリーフ弁式であり、その比例ソレノイド51に制御装置70からソレノイド電流Isが供給される。セカンダリ制御弁50は、ソレノイド電流Isに対して1対1の比例関係でセカンダリ圧Psを可変設定する。
【0035】
プライマリ制御弁60は、比例電磁減圧弁式であり、セカンダリ制御弁50と同様に、その比例ソレノイド61に制御装置70からソレノイド電流Ipが供給される。従って、プライマリ制御弁60は、ソレノイド電流Ipに対して1対1の比例関係でプライマリ圧Ppを可変設定する。
【0036】
図1は、この発明によるベルト式無段変速機の制御装置の動作原理を説明するためのグラフである。
この図1は、図10と同様の図であり、縦軸に変速速度、横軸にプライマリ圧Ppをとり、変速速度=0(固定変速比),セカンダリ圧Ps=Ps1,入力限界トルクTin=Tin1であるときのプライマリ圧Ppとセカンダリ圧Psの関係をグラフにしたものである。
【0037】
まず、この図1に基づいて、この実施形態における制御装置の動作原理について説明を行う。
図1において、セカンダリ圧Psがマージンを含む圧力Ps2であるとき、目標変速速度Vmを達成しようとすると、この目標変速速度Vmを達成するための目標プライマリ圧Ppmが、セカンダリ圧Ps2におけるスリップ限界プライマリ圧Ppiよりも小さくなる。
したがって、その動作点γ1が境界線vの左側のベルトスリップ域E内にあり、プライマリプーリ1において駆動ベルト3(図9参照)のスリップが発生して、目標変速速度Vmを達成することが出来ない。
また、駆動ベルト3のスリップを防止するために、プライマリ圧Ppをセカンダリ圧Ps2におけるスリップ限界プライマリ圧Ppiまで上昇させると、変速速度がVm2に減少し、やはり、目標変速速度Vmを達成することが出来ない。
【0038】
ここで、図10において求めたベルトスリップ域Eとの境界線vから、セカンダリ圧Psが高いほどスリップ限界変速速度が高く、入力トルクが一定の場合に、駆動ベルト3がスリップを起こさずに達成出来る最大の変速速度は、セカンダリ圧Psによって決定されることが分かる。
そこで、目標変速速度Vmを達成でき、しかも動作点がベルトスリップ域Eから外れるセカンダリ圧Psを図1から求めると、そのセカンダリ圧Psは、図1において、変速速度Vmの水平線と境界線vとの交点γ3を通る実線ω3が示す圧力Ps3となる。
【0039】
そして、セカンダリ圧Psを圧力ps3に上昇させるとき、プライマリ圧Ppを、セカンダリ圧Ps2におけるスリップ限界プライマリ圧Ppi(これが、後述する判定基準圧力となる)のまま維持した場合には、その動作点γ4が、図1から分かるように、ベルトスリップ域E内にあって、目標変速速度Vmを達成できない。
そこで、セカンダリ圧Psを増加させると同時に、プライマリ圧Ppを動作点γ3における圧力Ppmmまで増加させることによって、駆動ベルト3のスリップを防止するとともに、目標変速速度Vmの達成が可能になる。
【0040】
上記のように目標変速速度を達成する際のセカンダリ圧Psとプライマリ圧Ppの油圧制御を一般式で表したのが、下記の式である。
すなわち、入力トルクとこの入力トルクに対応するマージンを見込んだセカンダリ圧Psmが求められているとき、目標変速速度Vmが与えられて、その動作点におけるプライマリ圧Ppmが、セカンダリ圧Psmにおけるスリップ限界プライマリ圧(以下、判定基準圧力という)Ppiよりも下回った場合に、目標変速速度を達成する目標セカンダリ圧Psmmと目標プライマリ圧Ppmmは、
Psmm=Psm+Psh
Ppmm=Ppi+Ppy
Psh:セカンダリ補正圧力(図1参照)
Ppy:プライマリ補正圧力(図1参照)
で表される。
【0041】
また、セカンダリ補正圧力Pshとプライマリ補正圧力Ppyは、
Psh=k1×(Ppi−Ppm)
Ppy=k2×Psh
で表される。
この比例定数k1およびk2は、駆動ベルトとプーリ系の力学的関係と、摩擦力の関係と、変速比によって決定されるものであり、実験的に求められる。
【0042】
判定基準圧力Ppiは、以下のようにして求められる。
すなわち、図2は、横軸をセカンダリ圧Ps(つまりセカンダリプーリのクランプ力Fs),縦軸をプライマリ圧Pp(つまりプライマリプーリのクランプ力Fp)とし、固定変速比(変速速度=0)におけるセカンダリ圧Psとプライマリ圧Ppの関係を表したものである。
【0043】
この図2において、直線uがトルク比100%(Fp/Fs=1)におけるセカンダリ圧Psとプライマリ圧Ppとの油圧バランスを表しており、入力トルクTin1のときの直線u上の動作点γ5におけるセカンダリ圧Psとプライマリ圧Ppを、それぞれ、Psnm,Ppnmとする。
前述したように、セカンダリ圧Psは、通常、マージンを考慮して圧力Psnmよりも大きい圧力Psmに設定される。
このとき、入力トルクTin=Tin1で一定の場合には、セカンダリ圧Psを圧力PsnmからPsmに増加させるのにともなって、このセカンダリ圧Psmとバランスするプライマリ圧Ppも増加して圧力Ppmとなる。
このときの動作点がγ6(Psm,Ppm)である。
【0044】
したがって、直線u上の動作点γ5と上記動作点γ6を通る右上がりの直線zが、入力トルクTin=Tin1のときのスリップ限界線となり、直線uの原点0と動作点γ5の間の区間および直線zが、セカンダリ圧Psに対する判定基準圧力Ppiの変化を表すことになる。
【0045】
以下、この直線uの原点0と動作点γ5の間の区間および直線zを、判定基準線と呼ぶ。
この直線uおよび直線zの下側の領域が、ベルトスリップ域Fとなり、このベルトスリップ域F内に動作点(例えばγ7)があるときは、プライマリプーリにおいて駆動ベルトのスリップが発生することになる。
この図2において、入力トルクTinがTin1よりも大きくなると、そのスリップ限界を示す直線z’は直線uよりも上側に位置し、入力トルクTinがTin1よりも小さくなると、そのスリップ限界を示す直線z”は直線uよりも下側に位置することになる。
この直線z,z’およびz”の傾きは、それぞれkhで等しく、この傾きkhは、入力トルクと出力トルクのトルク比および変速比によって変化する。
したがって、駆動ベルトのスリップ判定は、セカンダリ圧Ps,プライマリ圧Pp,変速比iおよび入力トルクTinの四つのパラメータによって行うことができる。
【0046】
変速比iが変化するときの判定基準線の変化は、下記の様な傾向を示す。
すなわち、変速比iがLoω側に変化すると、図3に示されるように、直線u1の傾きが小さくなるとともに、セカンダリ圧Psnm’が増加し、さらにスリップ限界線z1の傾きkh(i)’が大きくなる。
また、変速比iがOD側に変化すると、図4に示されるように、直線u2の傾きが大きくなるとともに、セカンダリ圧Psnm”が減少し、さらにスリップ限界線z2の傾きkh(i)”が大きくなる。
【0047】
次に、このベルト式無段変速機の電子制御系について説明を行う。
図5は、ベルト式無段変速機の制御装置70の機能を示すブロック図である。この図5において、制御装置70は、プライマリ回転数センサ10,セカンダリ回転数センサ11,スロットル開度センサ12,セカンダリ圧力センサ13およびエンジン回転数センサ14を備えている。
そして、この制御装置70の変速比算出部15は、プライマリ回転数センサ10によって検出されるプライマリ回転数Npとセカンダリ回転数センサ11によって検出されるセカンダリ回転数Nsに基づいて、変速比i(=Np/Ns)の算出を行う。
さらに、目標プライマリ回転数算出部16は、変速比算出部15で算出された変速比iおよびスロットル開度センサ12によって検出されたスロットル開度θに基づいて、目標プライマリ回転数Npdの算出を行う。
【0048】
目標変速比算出部17は、目標プライマリ回転数算出部16によって算出された目標プライマリ回転数Npdとセカンダリ回転数センサ11によって検出されたセカンダリ回転数Nsに基づいて、目標変速比is(Npd/Ns)の算出を行う。
【0049】
目標変速速度算出部18は、変速比算出部15によって算出された変速比iと目標変速比算出部17によって算出された目標変速比isに基づいて、目標変速速度Vmの算出を行う。
【0050】
変速圧力算出部19は、目標変速速度算出部18によって算出された目標変速速度Vmに基づいて、変速圧力ΔPpの算出を行う。
必要セカンダリ圧設定部20は、変速比算出部15によって算出された変速比iに基づいて、必要セカンダリ圧Psuの設定を行う。
【0051】
入力トルク算出部21は、スロットル開度センサ12によって検出されたスロットル開度θとエンジン回転数センサ14によって検出されたエンジン回転数Neに基づいて、入力トルクTinの算出を行う。
【0052】
目標セカンダリ圧算出部22は、セカンダリ回転数センサ11によって検出されたセカンダリ回転数Ns,必要セカンダリ圧設定部20によって設定された必要セカンダリ圧Psuおよび入力トルク算出部21によって算出された入力トルクTinに基づいて、目標セカンダリ圧Psm(=Tin・Psu−gs+Pm)の算出を行う。
なお、上記において、gsはセカンダリシリンダ3Dの遠心油圧J(Ns)であり、Pmはマージンである。
【0053】
ソレノイド電流設定部23は、目標セカンダリ圧算出部22によって算出された目標セカンダリ圧Psmに基づいて、ソレノイド電流Isの設定を行う。
このソレノイド電流設定部23によって設定されたソレノイド電流Isは、駆動部24を介して比例ソレノイド51に供給される。
そして、この比例ソレノイド51によって、セカンダリプーリ3に供給されるセカンダリ圧Psの油圧制御を行うセカンダリ制御弁50が可動されて、ソレノイド電流Isに比例したセカンダリ圧Psをセカンダリプーリ3に供給する。
【0054】
トルク比算出部26は、必要セカンダリ圧設定部20によって設定された必要セカンダリ圧Psuと入力トルク算出部21によって算出された入力トルクTinに基づいて、トルク比Kt(=Tin・Psu/Ps)の算出を行う。
【0055】
油圧比設定部27は、変速比算出部15によって算出された変速比iとトルク比算出部26によって算出されたトルク比Ktに基づいて、油圧比Kpの設定を行う。
【0056】
必要プライマリ圧算出部28は、プライマリ回転数センサ10によって検出されたプライマリ回転数Np,セカンダリ圧力センサ13によって検出されたセカンダリ圧Psおよび油圧比設定部27によって設定された油圧比Kpに基づいて、必要プライマリ圧Ppd(=Kp・Ps−gp)の算出を行う。
なお、上記において、gpはプライマリシリンダ2Dの遠心油圧J(Np)である。
【0057】
目標プライマリ圧算出部29は、必要プライマリ圧算出部28によって算出された必要プライマリ圧Ppdに基づいて、目標プライマリ圧Ppmの算出を行う。
ソレノイド電流設定部30は、目標プライマリ圧算出部29によって算出された目標プライマリ圧Ppmに基づいて、ソレノイド電流Ipの設定を行う。
このソレノイド電流設定部30によって設定されたソレノイド電流Ipは、駆動部31を介して比例ソレノイド61に供給される。
そして、この比例ソレノイド61によって、プライマリプーリ2に供給されるプライマリ圧Ppの油圧制御を行うプライマリ制御弁60が可動されて、ソレノイド電流Ipに比例したプライマリ圧Ppをプライマリプーリ2に供給する。
【0058】
次に、上記制御装置70におけるプライマリ圧とセカンダリ圧の設定の手順を、図6ないし図8のフローチャートに基づいて説明する。
図5において、変速比算出部15により、変速比iを、
i=Np/NS
Np:プライマリ回転数
NS:セカンダリ回転数
の式から求める(ステップS1)。
【0059】
次に、目標プライマリ回転数算出部16により、目標プライマリ回転数Npdを、あらかじめ設定されているNpd=f(i,θ)のマップを参照して算出する(ステップS2)。
【0060】
次に、あらかじめ設定されているTe=f(Ne,θ)のマップを参照してエンジントルクTeを算出し(ステップS3)、このエンジントルクTeから、入力トルク算出部21によって、入力トルクTinを、
Tin=Te・t−gi
t:トルクコンバータによるトルク増幅率
gi:慣性力
の式から求める(ステップS4)。
【0061】
次に、必要セカンダリ圧設定部20により、必要セカンダリ圧Psuを、あらかじめ設定されているPsu=f(i)のマップを参照して算出する(ステップS5)。
【0062】
次に、目標セカンダリ圧算出部22によって、目標セカンダリ圧Psmを、
Psm=Tin・Psu−gs+Pm
gs:セカンダリシリンダの遠心油圧f(Ns)
Pm:マージン
の式から求める(ステップS6)。
【0063】
次に、目標変速比算出部17によって、目標変速比isを、
is=Npd/Ns
の式から求める(ステップS7)。
【0064】
次に、目標変速速度算出部18によって、目標変速速度Vmを、あらかじめ設定されているVm=f(i−is)のマップを参照して算出する(ステップS8)。
【0065】
次に、変速圧力算出部19によって、変速圧力ΔPpを、あらかじめ設定されている変速圧力ΔPp=f(Vm)のマップを参照して算出する(ステップS9)。
【0066】
次に、トルク比算出部26によって、トルク比Ktを、
Kt=Tin/(Ps/Psu)
Ps:実セカンダリ圧
の式から求める(ステップS10)。
【0067】
次に、油圧比設定部27によって、油圧比Kpを、あらかじめ設定されているKp=f(i,Kt)のマップを参照して算出する(ステップS11)。
【0068】
次に、必要プライマリ圧算出部28によって、必要プライマリ圧Ppdを、
Ppd=Kp・Ps−gp
gp:プライマリシリンダの遠心油圧f(Np)
の式から求める(ステップS12)。
【0069】
次に、目標プライマリ圧算出部29によって、目標プライマリ圧Ppmを、
Ppm=Ppd±ΔPp
の式から求める(ステップS13)。
【0070】
そして、目標プライマリ圧算出部29は、判定基準圧力Ppiを決定し(ステップS14)、さらに、決定された判定基準圧力Ppiと求められた目標プライマリ圧Ppmとを比較する(ステップS15)。
なお、上記の判定基準圧力Ppiの決定の手順については、後述する。
ステップS15において、目標プライマリ圧Ppmが判定基準圧力Ppiよりも大きいと判定した場合には、プライマリプーリ2において駆動ベルト4のスリップが発生する虞がないため、プライマリ圧Pp=Ppmの設定を行って(ステップS16)、前述したソレノイド電流Ipの設定を行う。
【0071】
さらに、目標プライマリ圧算出部29においてプライマリ圧Pp=Ppmの設定が行われた際には、その信号を受けて、目標セカンダリ圧算出部22において、セカンダリ圧Ps=Psmの設定を行って(ステップS17)、前述したソレノイド電流Isの設定を行う。
【0072】
また、ステップS15において、目標プライマリ圧Ppmが判定基準圧力Ppiよりも小さいと判定した場合には、プライマリプーリ2において駆動ベルト4のスリップが発生するものと判断して、目標プライマリ圧Ppmと目標セカンダリ圧Psmの補正を行う(ステップS18)。
そして、補正後の目標プライマリ圧Ppmmおよび目標セカンダリ圧Psmmによって、ソレノイド電流Ipおよびソレノイド電流Isの設定を行う。
この目標プライマリ圧Ppmと目標セカンダリ圧Psmの補正の手順については、後述する。
【0073】
上記ステップS14における判定基準圧力Ppiの決定は、図7のフローチャートに示されるような手順によって行われる。
すなわち、図7において、スリップ限界セカンダリ圧Psnm(図2の説明参照)を、あらかじめ設定されている図2のマップから求める(ステップS141)。
【0074】
次に、トルク比100%時の油圧比αを、あらかじめ設定されているα=f(i)のマップから求める(ステップS142)。
次に、スリップ限界プライマリ圧Ppnm(図2の説明参照)を、
Ppnm=α×Psnm
の式から求める(ステップS143)。
【0075】
次に、スリップ限界線の傾きkh(図2の説明参照)を、あらかじめ設定されているkh=f(i)またはkh=f(i,Tin)のマップから求める(ステップS144)。
【0076】
そして、判定基準圧力Ppiを、上記のようにして求められたスリップ限界セカンダリ圧Psnm,スリップ限界プライマリ圧Ppnmおよびスリップ限界線の傾きkhと、目標セカンダリ圧算出部22によって求められている目標セカンダリ圧Psmに基づいて、
Ppi=Ppnm+kh(Psm−Psnm)
の式から求める(ステップS145)。
【0077】
前記の目標プライマリ圧Ppmと目標セカンダリ圧Psmの補正は、図8のフローチャートに示されるような手順によって行われる。
すなわち、図8おいて、比例定数k1およびk2(図1の説明参照)をあらかじめ設定されているk1=f(i,Tin,Psm),k2=f(i,Tin,Psm)のマップから、それぞれ求める(ステップS181,182)。
【0078】
次に、セカンダリ補正圧力Psh(図1の説明参照)を、
Psh=k1×(Ppi−Ppm)
の式から求める(ステップS183)。
【0079】
次に、プライマリ補正圧力Ppy(図1の説明参照)を、
Ppy=k2×Psh
の式から求める(ステップS184)。
【0080】
次に、プライマリ補正圧Ppmm(図1の説明参照)を、
Ppmm=Ppi+Ppy
の式から求める(ステップS185)。
【0081】
次に、セカンダリ補正圧Psmm(図1の説明参照)を、
Psmm=Psm+Psh
の式から求める(ステップS186)。
【0082】
そして、求められたプライマリ補正圧Ppmmによって、目標プライマリ圧算出部29においてプライマリ圧Pp=Ppmmの設定を行い(ステップS187)、前述したソレノイド電流Ipの設定を行う。
さらに、求められたセカンダリ補正圧Psmmによって、目標セカンダリ圧算出部22においてセカンダリ圧Ps=Psmmの設定を行い(ステップS188)、前述したソレノイド電流Isの設定を行う。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における作動原理を説明するためのグラフである。
【図2】同原理における判定基準圧力の設定方法を説明するためのグラフである。
【図3】同原理において変速比の変化に伴う判定基準圧力の変化を説明するためのグラフである。
【図4】同原理において変速比の変化に伴う判定基準圧力の変化を説明するためのグラフである。
【図5】本発明の実施形態における制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】同実施形態における制御の手順を示すフローチャートである。
【図7】同実施形態における判定基準圧力の設定の手順を示すフローチャートである。
【図8】同実施形態におけるプライマリ圧およびセカンダリ圧の補正の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明のベルト式無段変速機の制御装置の構成を示す説明図である。
【図10】ベルト式無段変速機において駆動ベルトのスリップが発生する状態を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
1 …無段変速機
2 …プライマリプーリ
2B …プライマリ固定ディスク
2C …プライマリ可動ディスク
2D …プライマリシリンダ
3 …セカンダリプーリ
3B …セカンダリ固定ディスク
3C …セカンダリ可動ディスク
3D …セカンダリシリンダ
4 …駆動ベルト
70 …制御装置
10 …プライマリ回転数センサ
11 …セカンダリ回転数センサ
12 …スロットル開度センサ
13 …セカンダリ圧力センサ
14 …エンジン回転数センサ
15 …変速比算出部
16 …目標プライマリ回転数算出部
17 …目標変速比算出部
18 …目標変速速度算出部
19 …変速圧力算出部
20 …必要セカンダリ圧設定部
21 …入力トルク算出部
22 …目標セカンダリ圧算出部
23 …ソレノイド電流設定部
24 …駆動部
26 …トルク比算出部
27 …油圧比設定部
28 …必要プライマリ圧算出部
29 …目標プライマリ圧算出部
30 …ソレノイド電流設定部
31 …駆動部
51 …比例ソレノイド
61 …比例ソレノイド
Pp …プライマリ圧
Ps …セカンダリ圧
Ppm…目標プライマリ圧
Psm…目標セカンダリ圧
Ppnm…スリップ限界プライマリ圧
Psnm…スリップ限界セカンダリ圧
Ppi…判定基準圧力
Ppy…プライマリ補正圧力
Pph…セカンダリ補正圧力
Ppi…判定基準圧力
Tin…入力トルク
i …変速比
kh …スリップ限界線の傾きkh(比例定数)
k1,k2…比例定数
Vm …目標変速速度
Claims (3)
- プライマリプーリと、セカンダリプーリと、このプライマリプーリおよびセカンダリプーリに卷回された駆動ベルトとを有し、プライマリプーリとセカンダリプーリにプライマリ圧とセカンダリ圧をそれぞれ供給してプライマリプーリとセカンダリプーリに対する駆動ベルトの巻き付け径の比率を設定して無段変速を行う無段変速機の制御装置において、
目標変速速度を設定する目標変速速度設定手段と、
この目標変速速度設定手段によって設定された目標変速速度に基づいて前記プライマリプーリと駆動ベルトとの間にスリップが発生するか否かを判定するスリップ判定手段と、
このスリップ判定手段によって前記プライマリプーリと駆動ベルトとの間にスリップが発生すると判断されたとき、前記プライマリ圧とセカンダリ圧をそれぞれ前記プライマリプーリと駆動ベルトとの間にスリップが発生しない圧力に補正する圧力補正手段と、を備え、
前記スリップ判定手段が、前記プライマリプーリに入力する入力トルクを所要の変速比において伝達するのに必要な最小のスリップ限界プライマリ圧およびスリップ限界セカンダリ圧に基づいて設定される判定基準圧力と前記目標変速速度から算出される目標プライマリ圧とを比較して、前記目標プライマリ圧が前記判定基準圧力よりも小さいときに前記プライマリプーリと駆動ベルトとの間にスリップが発生すると判定し、
前記圧力補正手段が、前記スリップ判定手段によって前記プライマリプーリと駆動ベルトとの間にスリップが発生すると判定されたときに、前記セカンダリ圧とプライマリ圧をそれぞれ上昇させることによって補正し、
前記判定基準圧力は、前記最小のスリップ限界プライマリ圧に基準圧力補正値を加えることによって設定され、
前記基準圧力補正値は、前記目標変速速度から算出される目標セカンダリ圧と前記プライマリプーリに入力する入力トルクを所要の変速比において伝達するのに必要な最小のスリップ限界セカンダリ圧との差に変速比に基づいて定められる比例定数を乗じることによって設定される、
ことを特徴とする無段変速機の制御装置。 - 前記セカンダリ圧の補正は、前記目標セカンダリ圧にセカンダリ補正圧力を加えることによって行われ、
前記セカンダリ補正圧力は、前記判定基準圧力と前記目標プライマリ圧力との差に変速比と入力トルクに基づいて定められる比例定数を乗じることによって設定される、
請求項1に記載の無段変速機の制御装置。 - 前記プライマリ圧の補正は、前記目標プライマリ圧にプライマリ補正圧力を加えることによって行われ、
前記プライマリ補正圧力は、前記セカンダリ補正圧力に変速比と入力トルクに基づいて定められる比例定数を乗じることによって設定される、
請求項2に記載の無段変速機の制御装置。
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