JP4043820B2 - 測温シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は温度計測の技術分野に属する。特に、複数のシート状材料を重ね合せて加熱加圧する等の熱プレス加工における温度計測に適合する測温シートに関する。
【0002】
【従来技術】
複数のプラスチックシートを重ねて貼合わせる等を目的とする熱プレス加工においては温度条件が重要である。図3に示すように、一般的に、熱プレス装置の加熱加圧ブロックにはヒータ131a,131b,・・・と熱電対132a,132b,・・・が埋め込まれている。熱電対132a,132b,・・・によって計測された温度が設定温度となるように、ヒータ131a,131b,・・・に供給する電力を制御して所望の温度条件が得られるようにする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、温度制御が行われるのは加熱加圧ブロックの内部の温度であって、熱プレス加工が行なわれるプレス表面の温度ではない。また、熱プレス加工における加工対象物品100の温度、すなわち実体温度を計測するものでもない。そこで、図4に示すように、加工対象物品100とプレス表面との間に測温シート142a,142bを挿入して、熱プレス加工における温度計測を行う提案がある。
【0004】
従来の測温シートは、図5(斜視図)、図6(断面図)に示すように、熱電対152a,152b,・・・をシート154a,154bで挟み込み、リード線153a,153b,・・・をシート154a,154bの外側に取り出した構造となっている。このような構造の測温シートを使用することによりプレス表面の温度や実体温度に近い温度を計測することができる。
【0005】
ところが、図6の断面図で示すように従来の測温シートは厚さが不均一であり表面に凸凹を有するものである。そのため、加工対象物品100に対して熱プレス加工を行うと、加工後の加工対象物品100に測温シートの凹凸痕跡が残ることとなる。したがって、熱プレス加工の目的として加工対象物品の平面加工やその表面の鏡面加工が含まれているような場合には、従来の測温シートは適用できないものである。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、熱プレス加工における加工対象物品の実体温度を計測でき、しかも平面加工や鏡面加工を行うことができる測温シートを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は下記の本発明によって解決される。すなわち、本発明の請求項1に係る測温シートは、測温素子と、リード線と、スペーサシートと、表面シートと、裏面シートとから成る測温シートであって、前記測温素子は前記測温シートの全面に分散して複数個が配置され、それ自身の温度を電気的な変量に変換し、前記リード線は前記測温素子と組をなし、前記測温シートにおける1つの辺の側に取り出され、前記複数個の測温素子における変量の各々を伝送して出力し、前記スペーサシートは熱の良導体である金属箔を材料とし、前記表面シートと前記裏面シートとの間隔を一定に保つとともに前記測温素子と前記リード線を収容する空間を形成し、前記表面シートは耐熱性と絶縁性を有するプラスチックフィルムを材料とし、前記スペーサシートの表面を被覆し、前記裏面シートは耐熱性と絶縁性を有するプラスチックフィルムを材料とし、前記スペーサシートの裏面を被覆し、均一な厚みと平滑な表面を有するようにしたものである。
【0008】
本発明によれば、測温シートの全面に分散して複数個が配置された測温素子によりそれ自身の温度が電気的な変量に変換され、測温素子と組をなし、測温シートにおける1つの辺の側に取り出されたリード線により複数個の測温素子における変量が伝送されて出力され、熱の良導体である金属箔を材料としたスペーサシートにより表面シートと裏面シートとの間隔が一定に保たれるとともに測温素子とリード線を収容する空間が形成され、耐熱性と絶縁性を有するプラスチックフィルムを材料とした表面シートによりスペーサシートの表面が被覆され、耐熱性と絶縁性を有するプラスチックフィルムを材料とした裏面シートによりスペーサシートの裏面が被覆される。すなわち、スペーサシートにより均一な厚みと平滑な表面を有しており複数組の測温素子とリード線が存在することによる凹凸が生じない。また、リード線は測温シートにおける1つの辺の側に取り出され1つの辺の側から外部機器と接続できる。また、熱容量が小さく熱伝導性が良いから測定対象への影響がなくなる。したがって、熱プレス加工における加工対象物品の実体温度を温度分布として計測でき、しかも熱プレス加工における圧力分布を均一とすることができ、加工対象物品の表面を平滑とする平面加工や鏡面加工を行うことができる測温シートが提供される。
【0009】
また本発明の請求項2に係る測温シートは、請求項1に係る測温シートにおいて、前記測温素子は熱電対であるようにしたものである。本発明によれば、熱電対により温度計測が行なわれる。
【0010】
また本発明の請求項3に係る測温シートは、請求項1または2に係る測温シートにおいて、前記測温素子は測温抵抗体であるようにしたものである。本発明によれば、測温抵抗体により温度計測が行なわれる。
【0011】
また本発明の請求項4に係る測温シートは、請求項1〜3のいずれかに係る測温シートにおいて、前記スペーサシートはアルミ箔であるようにしたものである。本発明によれば、スペーサシートがアルミ箔であるため熱容量が小さく熱伝導性が良く測定対象への影響がなくなる。
【0012】
また本発明の請求項5に係る測温シートは、請求項1〜4のいずれかに係る測温シートにおいて、前記表面シートと前記裏面シートはポリイミドフィルムであるようにしたものである。本発明によれば、機械的な衝撃や変形に対する耐久性、高温高熱に対する耐久性、電気的な絶縁性が得られる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について実施の形態を説明する。本発明の測温シートにおける構成の一例を図1、図2に示す。図1は表シートを除いて内部の構造を顕わした測温シートの斜視図、図2は測温シートの断面図である。図1、図2において、1はスペーサシート、2a,2b,・・・は熱電対、3a,3b,・・・はリード線、4aは表シート、4bは裏シートである。
【0021】
スペーサシート1は、表面シート4aと裏面シート4bとの間隔を一定に保つ役割を有する。また、測温素子である熱電対2a,2b,・・・とそのリード線3a,3b,・・・を収容する空間を形成する。図1、図2に示すように、熱電対2a,2b,・・・とそのリード線3a,3b,・・・を収容する部位は、その形状にスペーサシートが切り取られている。
【0022】
このスペーサシート1の材料としては、本発明においては特に限定されない。たとえば、アルミ箔を使用すると好適である。アルミ箔の厚さは、熱電対2a,2b,・・・やそのリード線3a,3b,・・・の厚さと一致するか同程度の厚さである。数十μm程度(たとえば20〜60μm)の厚さのアルミ箔を使用すると好適である。スペーサシート1をアルミ箔とすることで、スペーサシート1だけでなく測温シート全体として、小さな熱容量と良好な熱伝導性を得ることができる。アルミ箔に限らず、銅箔、等の金属箔をスペーサシート1の材料とした場合にも、同様の効果を得ることができる。
【0023】
熱電対2a,2b,・・・は、それ自身の温度を電気的な変量に変換する測温素子の一例である。図1、図2に示すように、測温シートにおける熱電対2a,2b,・・・とそのリード線3a,3b,・・・の組は複数組が存在し、熱電対2a,2b,・・・は測温シートの全面に分散して配置されている。図1においては、バラバラに配置されているが、格子の交点に整列させるように配置してもよい。これにより、たとえば熱プレス加工の加工表面における複数個所の温度を計測することができ、また温度分布を計測することができる。
【0024】
熱電対2a,2b,・・・は、2つの異なる金属線を接続して1つの回路(熱電対)とし、2つの接点に温度差を与えると回路に電圧が発生する現象、すなわちゼーベック効果を利用した測温素子(温度センサ)である。2つの接点の内の一方の接点を測定個所、すなわち図1に示す熱電対2a,2b,・・・の位置を測定個所とし、他方の接点を開放して受信器に接続し電位差(熱起電力)を計測することにより測定個所の温度計測を行う。このとき、受信器の端子温度を基準温度(0℃)と見なせるようにする冷接点温度補償が、通常、行なわれる。
【0025】
2つの異なる金属線として何を使用するかにより、K熱電対(クロメル−アルメル)、J熱電対(鉄−コンスタンタン)、T熱電対(銅−コンスタンタン)、等が存在する(JIS規格による)。本発明においてはいずれの熱電対でも使用することができ特に限定はない。熱電対2a,2b,・・・以外の測温素子としては、測温抵抗体、サーミスタ、等を使用することができる。本発明の測温シートに使用する熱電対、測温抵抗体、サーミスタ、等は、スペーサシート1の厚さと一致するか同程度の厚さとする。数十μm程度(たとえば20〜60μm)の厚さの測温素子を使用すると好適である。
【0026】
リード線3a,3b,・・・は、それ自身の温度を電気的な変量に変換する測温素子の変量を伝送して出力するためのものである。図1、図2に示すように、測温シートにおける熱電対2a,2b,・・・とそのリード線3a,3b,・・・の組は複数組が存在し、リード線3a,3b,・・・は測温シートにおける1つの辺の側に取り出されている。これにより測温シートにおける1つの辺の側から外部機器との接続を行なうことができる。
【0027】
図1、図2に一例を示すように、測温素子が熱電対2a,2b,・・・のときには、熱電対を構成する2つの異なる金属線、たとえばクロメル線とアルメル線そのものをリード線3a,3b,・・・とすることができる。また、熱電対の補償導線を使用してそれをリード線3a,3b,・・・とすることができる。このように、リード線は、測温素子と適合するように選定して使用する。本発明の測温シートに使用するリードは、スペーサシート1の厚さと一致するか同程度の厚さ(太さ)とする。数十μm程度(たとえば30〜60μm)の厚さ(太さ)のリード線を使用すると好適である。
【0028】
表シート4aは、スペーサシート1の表面を被覆する。この表シート4aの材料としては、本発明においては特に限定されない。たとえば、ポリイミドフィルムを使用すると好適である。これにより、機械的な衝撃や変形に対する耐久性、高温高熱に対する耐久性、電気的な絶縁性が得られる。本発明の測温シートに使用する表シート4aは、数十μm程度(たとえば20〜40μm)の厚さ(太さ)のものを使用すると好適である。
【0029】
裏シート4bは、スペーサシート1の裏面を被覆する。表シート4aの材料としては、本発明においては特に限定されない。たとえば、ポリイミドフィルムを使用すると好適である。これにより、機械的な衝撃や変形に対する耐久性、高温高熱に対する耐久性、電気的な絶縁性が得られる。本発明の測温シートに使用する裏シート4bは、数十μm程度(たとえば20〜40μm)の厚さ(太さ)のものを使用すると好適である。
表シート4aおよび/または裏シート4bの材料としては、ポリイミドフィルムに比較して耐熱性がやや劣るものの、アラミドフィルム、ポリエステル、等の耐熱性プラスチックフィルムを材料とした場合にも、同様の効果を得ることができる。
【0030】
このように本発明の測温シートの構成の一例は、図1、図2に示すように、第1層がポリイミドフィルムの表シート4a、第2層がアルミ箔のスペーサシート1とその切り取った空間に配置する熱電対2a,2b,・・・とリード線3a,3b,・・・、第3層がポリイミドフィルムの裏シート4bから成る3層構成の測温シートである。
【0031】
このような構成の測温シートの製造方法について一例を説明する。その3層構成となるように、配置した状態で熱プレス加工を行って測温シートを製造する。熱プレス加工を行うと、3層構成における各層間は密着するとともに接着する。これにより一体化した測温シートが得られ、その測温シートは層間において剥がれることがなくなる。
【0032】
熱プレス装置のプレス面は、通常は平行面であるから、熱プレス加工を行って製造した測温シートは均一な厚みを有する。このように均一な厚みを測温シートが有するようにすると、加工対象物品とプレス表面との間に測温シートを挿入する熱プレス加工(図4参照)において、本発明の測温シートを適用したときには、加工対象物品にかかる圧力分布を均一とすることができる。
【0033】
このような構成の測温シートの厚さは、表シート4aとスペーサシート1と裏シート4bの厚さの総和である。この厚さを100μm程度(70〜140)とすると好適である。この程度の厚さの測温シートは、熱容量が小さく測温シートの適用による測定対象への影響をなくすことができる。また、この程度の厚さの測温シートは、熱伝導性が良く測温シートの適用による測定対象への影響がなくなる。
【0034】
また、測温シートを製造するときに、鏡面金属板、等の平滑な表面を有する板材で測温シートを挟んで熱プレス加工を行うと、平滑な表面を有する測温シートを製造することができる。加工対象物品とプレス表面との間に測温シートを挿入する熱プレス加工(図4参照)において、平滑な表面を有する本発明の測温シートを適用したときには、加工対象物品の表面を平滑とすることができる。
【0035】
【発明の効果】
以上のとおりであるから、本発明の請求項1に係る測温シートによれば、スペーサシートにより均一な厚みと平滑な表面を有しており複数組の測温素子とリード線が存在することによる凹凸が生じない。また、リード線は測温シートにおける1つの辺の側に取り出され1つの辺の側から外部機器と接続できる。また、熱容量が小さく熱伝導性が良いから測定対象への影響がなくなる。したがって、熱プレス加工における加工対象物品の実体温度を温度分布として計測でき、しかも熱プレス加工における圧力分布を均一とすることができ、加工対象物品の表面を平滑とする平面加工や鏡面加工を行うことができる測温シートが提供される。
また本発明の請求項2に係る測温シートによれば、熱電対により温度計測を行なうことができる。また本発明の請求項3に係る測温シートによれば、測温抵抗体により温度計測を行なうことができる。また本発明の請求項4に係る測温シートによれば、スペーサシートがアルミ箔であるから熱容量を小さく熱伝導性を良くでき、測定対象への影響をなくすことができる。また本発明の請求項5に係る測温シートによれば、機械的な衝撃や変形に対する耐久性、高温高熱に対する耐久性、電気的な絶縁性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の測温シートにおける構成の一例を示し、表シートを除いて内部の構造を顕わした斜視図である。
【図2】本発明の測温シートにおける構成の一例を示す断面図である。
【図3】一般的な熱プレス装置の加熱加圧ブロックにおけるヒータと熱電対の配置を示す図である。
【図4】加工対象物品とプレス表面との間に測温シートを挿入して、実体温度を計測する提案の説明図である。
【図5】従来の測温シートの構成を示す斜視図である。
【図6】従来の測温シートの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 スペーサシート
2a,2b,・・・ 熱電対
3a,3b,・・・ リード線
4a 表シート
4b 裏シート
131a,131b,・・・ ヒータ
132a,132b,・・・ 熱電対
142a,142b 測温シート
152a,152b,・・・ 熱電対
153a,153b,・・・ リード線
154a,154b シート
Claims (5)
- 測温素子と、リード線と、スペーサシートと、表面シートと、裏面シートとから成る測温シートであって、
前記測温素子は前記測温シートの全面に分散して複数個が配置され、それ自身の温度を電気的な変量に変換し、
前記リード線は前記測温素子と組をなし、前記測温シートにおける1つの辺の側に取り出され、前記複数個の測温素子における変量の各々を伝送して出力し、
前記スペーサシートは熱の良導体である金属箔を材料とし、前記表面シートと前記裏面シートとの間隔を一定に保つとともに前記測温素子と前記リード線を収容する空間を形成し、
前記表面シートは耐熱性と絶縁性を有するプラスチックフィルムを材料とし、前記スペーサシートの表面を被覆し、
前記裏面シートは耐熱性と絶縁性を有するプラスチックフィルムを材料とし、前記スペーサシートの裏面を被覆し、
均一な厚みと平滑な表面を有するようにしたこと特徴とする測温シート。 - 請求項1に記載の測温シートにおいて、前記測温素子は熱電対であることを特徴とする測温シート。
- 請求項1または2に記載の測温シートにおいて、前記測温素子は測温抵抗体であることを特徴とする測温シート。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の測温シートにおいて、前記スペーサシートはアルミ箔であることを特徴とする測温シート。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の測温シートにおいて、前記表面シートと前記裏面シートはポリイミドフィルムであることを特徴とする測温シート。
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