JP4043218B2 - 燃料電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池スタックの冷媒流路に冷媒を供給するに際して、冷媒供給マニホールド内の空気を確実に排除することで冷媒流配の均一化を図った燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、電解質として例えば固体高分子膜を用い、この固体高分子膜を燃料極と酸化剤極とで挟み付けてセルユニットを形成し、燃料極側には燃料流路を設けた電池プレートを、酸化剤極側には酸化剤流路を設けた電池プレートをそれぞれ配し、これらを単位として複数積層することにより積層体(スタック)が構成される。
【0003】
前記燃料流路には、燃料として改質ガス(都市ガス等を改質器で水素主体のガスに改質)又は水素ガス等が供給され、酸化剤流路には、酸化剤として空気又は酸素ガスが供給され、電解質を介して電気化学反応が生じることで電気と水とが生成される。
【0004】
燃料電池での電気化学反応は発熱反応であるため、その反応熱によって燃料電池の温度が上昇し、発電性能が阻害されてしまう。これを防止するために、従来は冷媒流路を設けた電池プレート(冷却プレート)をスタック内に組み込み、冷媒として例えば冷却水を流すことにより電池内部を冷却している。
【0005】
この冷却系は、通常図3のように燃料電池スタック1の積層方向に貫通し、各冷却プレートの冷媒流路に冷媒を分配・供給するための冷媒供給マニホールド2と、冷媒流路を流れた後の冷媒を集めて排出する冷媒排出マニホールド3とが設けられている。そして、冷媒供給マニホールド2には、冷媒タンク4内の冷媒(冷却水)がポンプ5により供給される。
【0006】
冷媒供給マニホールド2に供給された冷媒は、各冷却プレートの冷媒流路に分配・供給され、冷媒流路をそれぞれ流れた後に冷媒排出マニホールド3に排出される。更に、冷媒排出マニホールド3に排出された冷媒は、冷媒タンク4に戻される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の冷却系において、冷媒供給マニホールド2の一端から冷媒を供給した場合、冷媒供給マニホールド2の他端側に空気が残り、他端側の冷却プレートにおける冷媒流路への冷媒供給が阻害される。このため、燃料電池スタック1内で温度分布が生じ、電池性能や寿命に対して悪影響を及ぼしていた。これは、特に起動時において生じ易い。冷媒供給マニホールド2の両端から冷媒を供給した場合も、中央部に排出されない空気が残り、上記問題の解決とはならない。
【0008】
本発明は、このような従来の事態に鑑みなされたもので、冷媒流路に冷媒を供給する前に、冷媒供給マニホールド内の空気を追い出すようにした燃料電池を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための手段として、本発明は、請求項1に記載したように、電解質のそれぞれの面に燃料極又は酸化剤極を設けたセルユニットと燃料流路又は酸化剤流路又は冷媒流路を備える電池プレートを積層した燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックの積層方向に貫通すると共に前記冷媒流路と連通し、前記冷媒流路に冷媒を分配・供給する冷媒供給マニホールドと、前記冷媒供給マニホールドの一端に設けられ、冷媒供給管接続され冷媒供給口と、前記燃料電池スタックの積層方向に貫通すると共に前記冷媒流路と連通し、前記冷媒流路からの前記冷媒を集合・排出する冷媒排出マニホールドと、前記冷媒排出マニホールドの一端に設けられ、冷媒排出管接続され冷媒排出口と、前記冷媒流路又は前記冷媒排出マニホールド又は前記冷媒排出口又は前記冷媒排出管のいずれかに設けられ、前記冷媒の循環を抑制する背圧発生手段と、を備える燃料電池において、前記冷媒供給マニホールドの他端に設けられる空気抜き口と、前記空気抜き口と接続され、前記冷媒供給マニホールドから前記冷媒流路へ前記冷媒が流入する圧力よりも水頭圧が高くなる立ち上がり高さを有する空気抜き管と、を有する第1の空気抜き手段を備えることを特徴とする燃料電池を要旨とする。
又、請求項2のように、前記冷媒排出マニホールドの他端に設けられる第2の空気抜き手段を備えること、
請求項3のように、前記冷媒供給管は、前記冷媒供給マニホールドの下端面より下方から配管されていること、
請求項4のように、前記背圧発生手段で発生させる背圧は、前記冷媒供給マニホールドから前記空気抜き管に前記冷媒が流入する際の圧力よりも、前記冷媒供給マニホールドから前記冷媒流路に前記冷媒が流入する際の圧力の方が高くなるように設定されていること、
請求項5のように、前記背圧発生手段は、前記冷媒流路又は前記冷媒排出マニホールド又は前記冷媒排出管の圧力損失冷媒流路又は前記冷媒排出マニホールド又は前記冷媒排出管内に設けられた流路断面積の絞り部、又は前記冷媒排出管の途中に設けられたオリフィスやニードル弁、電磁弁の中から選んだ少なくとも1つであること、
請求項6のように、前記背圧発生手段が前記冷媒排出管の途中に設けられた電磁弁であり、冷媒供給開始時に電磁弁を一定時間閉じた後に開ける制御装置を備えること、
を特徴とする燃料電池である。
【0010】
本発明では、冷媒供給マニホールドに空気抜き手段を設けることにより、マニホールド内の空気を確実に排除することができる。又、背圧発生手段の適切な背圧設定により起動時、定常時共に特別な弁や制御を必要とせずに、空気抜きを確実に行える。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る燃料電池の実施形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来例と同じ部材は前記と同じ符号で表す。
図1において、1は燃料電池スタックであり、その積層方向に沿って冷媒供給マニホールド2及び冷媒排出マニホールド3がそれぞれ貫通して設けられている。
尚、図示は省略したが、燃料供給マニホールドと燃料排出マニホールド、並びに酸化剤供給マニホールドと酸化剤排出マニホールドも同様にスタックの積層方向に沿って貫通して設けられている。
【0012】
冷媒供給マニホールド2の一端には、冷媒供給口2aが設けられ、この冷媒供給口2aには冷媒供給マニホールド2の下面より下方から配管された冷媒供給管6が接続されている。この冷媒供給管6は、他端が冷媒タンク4に接続され、途中の要所にポンプ5が接続されている。又、冷媒タンク4は、底部に排出管4aを有し、この排出管4aと冷媒供給管6との接続部の下流側に排出弁7が設けられている。
【0013】
冷媒供給マニホールド2の他端には、冷媒供給マニホールド2の略上端部に位置させて空気抜き口2bが設けられ、この空気抜き口2bに空気抜き管8が接続されている。この空気抜き管8は、冷媒供給マニホールド2の上端面より上方に延設されており、その上端部は管路8aを介して冷媒タンク4に接続されている。
【0014】
前記冷媒排出マニホールド3は、端部に冷媒排出口3aが設けられ、この冷媒排出口3aに冷媒排出管9が接続されている。この冷媒排出管9は、他端が冷媒タンク4に接続され、途中の要所に背圧発生手段10が設けられている。背圧発生手段10としては、例えば冷媒排出管9内に形成された流路断面積の絞り部、又は冷媒排出管9の途中に設けられたオリフィスやニードル弁(開度調節可能)、電磁弁(開閉弁)等を用いることができる。絞り部の場合は、冷却プレートの冷媒流路11又は冷媒排出マニホールド3内に設けるようにしても良い。又、冷媒流路11、冷媒排出マニホールド3、冷媒排出口3a、冷媒排出管9のトータルの圧力損失を設計時に設定しても良い。
【0015】
上記のように冷却系が構成された燃料電池において、起動時には先ず、前記ポンプ5により冷媒タンク4内の冷媒(冷却水)を吸引し、冷媒供給管6を経て冷媒供給マニホールド2内に供給する。この際、冷媒供給管6内の空気は冷媒によって押し上げられ、この冷媒と共に冷媒供給マニホールド2に流入することで排除される。
【0016】
この時、冷媒供給マニホールド2内に供給された冷媒が、各冷却プレートの冷媒流路11に流れ込まないように前記背圧発生手段10により背圧(バックプレッシャー)を掛ける。背圧発生手段10で発生させる背圧は、冷媒供給マニホールド2から空気抜き管8に冷媒が流入する際の圧力よりも、冷媒供給マニホールド2から冷媒流路11に冷媒が流入する際の圧力の方が高くなるように設定される。これにより、冷媒は空気抜き手段側に優先的に流れる。
【0017】
冷媒供給マニホールド2内に供給された冷媒は、マニホールド内の空気を空気抜き口2bに押し出し、更に空気抜き管8を上昇する。冷媒供給マニホールド2内の空気は、空気抜き管8から管路8aを経て冷媒タンク4内に排出される。
【0018】
空気抜き管8は、冷媒流通時の空気抜き管8の水頭圧が、冷媒供給マニホールド2から冷媒流路11に冷媒が流入する際の圧力よりも高くなるように、立ち上がり高さHが設定されているため、空抜き管8を上昇した冷媒により空気抜き口2bに掛かる水頭圧が、背圧発生手段10で発生させる背圧よりも高くなった時点で、空抜き管8内の冷媒の上昇は止まり、冷媒流路11へ冷媒が流れ始める。
【0019】
冷媒供給マニホールド2から冷媒流路11に流入した冷媒は、冷媒流路11を流れて冷却作用をなすと共に、前記冷媒排出マニホールド3に排出される。そして、冷媒排出マニホールド3に排出された冷媒は、冷媒排出口3aから冷媒排出管9を経て冷媒タンク4内に戻される。
【0020】
背圧発生手段10として電磁弁を用いた場合は、冷媒供給開始時に電磁弁を一定時間閉じた後に開ける制御装置を備えることが好ましい。又、上記のような立ち上がり高さHの設定は特に必要ない。
【0021】
図2は、本発明の他の実施形態を示すもので、冷媒排出マニホールド3の冷媒排出口3a以外の他端で且つ冷媒排出マニホールド3の略上端部に第2の空気抜き手段を設けた構成に特徴を有するものである。ここで、上記実施形態の場合と同じ部材は前記と同じ符号で表してある。
【0022】
本実施形態では、冷媒供給マニホールド2側には第1空気抜き管8を設け、冷媒排出マニホールド3の冷媒排出口3aと反対側の端部で且つその略上端部には第2空抜き管12が設けられ、この第2空気抜き管12に続く管路12aは冷媒タンク4に接続されている。
【0023】
又、第2空気抜き管12に続く管路12aの途中要所には、背圧発生手段10と空気抜き弁13が設けられ、冷媒排出マニホールド3の冷媒排出口3aに接続された冷媒排出管9には冷媒循環弁14が設けられている。
【0024】
このように構成された燃料電池において、起動時には、冷媒循環弁14を閉じ、空気抜き弁13を開にする。この状態でポンプ5を作動させ、冷媒供給マニホールド2への冷媒供給を開始する。冷媒は冷媒供給管6を通り、冷媒供給口2aから冷媒供給マニホールド2内に供給される。
【0025】
この時、前記実施形態と同様に背圧発生手段で発生する背圧が「第1空気抜き管入口(空気抜き口)圧<冷媒流路入口圧」となるように設定されているので、冷媒は、先ず冷媒供給マニホールド内の空気を押し出しながら、第1空気抜き管8に流入する。
【0026】
第1空気抜き管8に流入した冷媒は、「冷媒の水頭圧>冷媒流路入口圧」となった時点で、冷媒流路11に流れ出す。冷媒は冷媒流路内の空気を押し出しながら冷媒排出マニホールド3に排出されるが、冷媒循環弁14が閉じているため冷媒排出マニホールド3内の空気を押し出しながら第2空気抜き管12に流入する。第2空気抜き管12に流入した冷媒は、押し出した空気と共に冷媒タンク4に戻される。
【0027】
所定時間(第2空気抜き管12に冷媒が流入し、空気が充分に排出された後)経過後、冷媒循環弁14を開き、同時に空気抜き弁13を閉じる。冷媒は、冷媒排出マニホールド3内に残った最後の空気を押し出しながら冷媒排出口3aから冷媒排出管9に流入し、冷媒タンク4に戻される。これにより、冷媒循環の起動が完了する。
【0028】
空気抜き終了後は、冷媒循環弁14を開状態に又空気抜き弁13を閉状態に保持し、冷媒供給マニホールド2に供給された冷媒が、各冷媒流路11を流れた後に冷媒排出マニホールド3に排出され、冷媒排出口3a及び冷媒排出管9を経て冷媒タンク4に戻されるようにする。
【0029】
この時、冷媒供給マニホールド2においては、第1空気抜き管8の水頭圧によって空気抜き口2bから第1空気抜き管8への冷媒の流入が阻止され、冷媒排出マニホールド3においては、前記空気抜き弁13が閉じているため、第2空気抜き管12への冷媒の流入が阻止される。
【0030】
燃料電池の発電終了後は、ポンプ5を停止すると共に空気抜き弁13、冷媒循環弁14、排出弁7をすべて開放することにより、冷却系内の冷媒が全て排出される。従って、冷媒として冷却水などを用いた時の凍結防止となる。
【0031】
以上の実施の形態では、冷媒供給マニホールド2を燃料電池スタック1の下側に、冷媒排出マニホールド3を燃料電池スタック1の上側に設け、冷媒は冷媒流路11を下から上に流れる構成であったが、冷媒供給マニホールド2と冷媒排出マニホールド3の位置を上下入れ替えて冷媒が冷媒流路11を上から下に流れる構成としても良い。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、燃料電池の冷媒供給マニホールドに空気抜き手段を設け、起動時に冷媒供給マニホールド内の空気を追い出す構成にしたので、冷媒流路への冷媒流配の均一が図れ、電池スタック内における温度分布が解消する。これにより、電池性能の向上及び長寿命化が図れるといった効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料電池の実施形態を示す冷却系の概略ブロック図
【図2】本発明に係る燃料電池の他の実施形態を示す冷却系の概略ブロック図
【図3】従来例を示す説明図
【符号の説明】
1…燃料電池スタック
2…冷媒供給マニホールド
2a…冷媒供給口
2b…空気抜き口
3…冷媒排出マニホールド
3a…冷媒排出口
4…冷媒タンク
4a…排出管
5…ポンプ
6…冷媒供給管
7…排出弁
8…空気抜き管(第1空気抜き管)
8a…管路
9…冷媒排出管
10…背圧発生手段
11…冷媒流路
12…第2空気抜き管
13…空気抜き弁
14…冷媒循環弁

Claims (6)

  1. 電解質のそれぞれの面に燃料極又は酸化剤極を設けたセルユニットと燃料流路又は酸化剤流路又は冷媒流路を備える電池プレートを積層した燃料電池スタックと、
    前記燃料電池スタックの積層方向に貫通すると共に前記冷媒流路と連通し、前記冷媒流路に冷媒を分配・供給する冷媒供給マニホールドと、
    前記冷媒供給マニホールドの一端に設けられ、冷媒供給管接続され冷媒供給口と、
    前記燃料電池スタックの積層方向に貫通すると共に前記冷媒流路と連通し、前記冷媒流路からの前記冷媒を集合・排出する冷媒排出マニホールドと、
    前記冷媒排出マニホールドの一端に設けられ、冷媒排出管接続され冷媒排出口と、
    前記冷媒流路又は前記冷媒排出マニホールド又は前記冷媒排出口又は前記冷媒排出管のいずれかに設けられ、前記冷媒の循環を抑制する背圧発生手段と、を備える燃料電池において、
    前記冷媒供給マニホールドの他端に設けられる空気抜き口と、前記空気抜き口と接続され、前記冷媒供給マニホールドから前記冷媒流路へ前記冷媒が流入する圧力よりも水頭圧が高くなる立ち上がり高さを有する空気抜き管と、を有する第1の空気抜き手段を備えることを特徴とする燃料電池。
  2. 前記冷媒排出マニホールドの他端に設けられる第2の空気抜き手段を備えることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
  3. 前記冷媒供給管は、前記冷媒供給マニホールドの下端面より下方から配管されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の燃料電池。
  4. 前記背圧発生手段で発生させる背圧は、前記冷媒供給マニホールドから前記空気抜き管に前記冷媒が流入する際の圧力よりも、前記冷媒供給マニホールドから前記冷媒流路に前記冷媒が流入する際の圧力の方が高くなるように設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項3いずれか1項記載の燃料電池。
  5. 前記背圧発生手段は、前記冷媒流路又は前記冷媒排出マニホールド又は前記冷媒排出管の圧力損失冷媒流路又は前記冷媒排出マニホールド又は前記冷媒排出管内に設けられた流路断面積の絞り部、又は前記冷媒排出管の途中に設けられたオリフィスやニードル弁、電磁弁の中から選んだ少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜請求項4いずれか1項記載の燃料電池。
  6. 前記背圧発生手段が前記冷媒排出管の途中に設けられた電磁弁であり、冷媒供給開始時に電磁弁を一定時間閉じた後に開ける制御装置を備えることを特徴とする請求項1〜請求項5いずれか1項記載の燃料電池。
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