JP4042235B2 - 静電型アクチュエータ及びインクジェットヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、対向電極間に電圧を印加することにより発生する静電気力を駆動源として利用している静電型アクチュエータおよび当該静電型アクチュエータを用いたインクジェットヘッドに関するものである。更に詳しくは、本発明は、対向電極表面に発生する接触帯電を抑制可能な静電型アクチュエータおよびインクジェットヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
対向電極間に発生する静電気力を利用してインク液滴を吐出する静電型インクジェットヘッドは、例えば、本出願人による特開平5−50601号公報、同6−70882号公報に開示されている。
【0003】
静電型インクジェットヘッドは、インクノズルに連通しているインク室の底面が弾性変形可能な振動板として形成されている。この振動板には、一定のギャップでガラス基板が対向配置されている。振動板は薄いシリコン基板からなり、対向電極の一方の電極として機能する。ガラス基板の表面には他方の電極膜が形成されており、この電極膜の表面は絶縁層により覆われている。電極膜は例えばスパッタリングにより形成したNi膜であり、絶縁層は例えばマスクスパッタリングにより形成したSiO2膜である。
【0004】
これらの対向電極間に電圧を印加すると、これらの間に発生する静電気力によってインク底面を形成している振動板がガラス基板に対して静電吸引あるいは静電反発されて変位する。このインク室の底面の振動に伴って発生するインク室の内圧変動によりインクノズルからインク液滴が吐出される。従って、対向電極間に印加する電圧を制御することにより、記録に必要な時にのみインク液滴を吐出する、所謂インク・オン・デマンド方式を実現できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、対向電極は、振動板の振動に伴って、絶縁層を挟み繰り返し接触する。この結果、絶縁層表面には接触帯電が起こり、当該接触帯電が原因となって、振動板の静電吸引力、静電反発力が変動し、当該振動板の振動が不安定となるおそれがある。振動板の振動が不安定になると、適正なサイズのインク液滴が適正な方向に吐出されず、また、不要なインクミストが発生する。この結果、印刷不良や、インクノズル面、プリンタケース等のインク汚れが発生してしまう。
【0006】
本発明の課題は、この点に鑑みて、対向電極表面に発生する接触帯電を抑制することにより、接触帯電に起因する動作不安定を回避することの可能な静電型アクチュエータを提案することにある。
【0007】
また、本発明の課題は、対向電極表面に発生する接触帯電を抑制することにより、印刷不良の発生や、不要なインクミスト等による各部分のインク汚れの発生を回避可能なインクジェットヘッドを提案することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の静電型アクチュエータは、一定の間隔で対向配置された相対変位可能な第1および第2の電極部材と、第2の電極部材の第1の電極部材と対向する側に設けられた絶縁層と、これらの電極部材の間に静電気力を発生させて当該電極部材を相対変位させる駆動手段とを有する静電型アクチュエータであって、第1の電極部材がITO膜からなり、ITO膜の結晶方位が(222)および(400)を含み、第1の電極部材の表面における結晶方位のX線回折量の比(222)/(400)が0.532以上5.642以下であることを特徴とする。一般的にスパッタリングやEB蒸着によって成膜されたITO膜は、結晶方位として(222)面および(400)面が主として得られる。また、結晶方位のX線回折量の比(222)/(400)が大きいほど、膜表面の凹凸が粗くなることが知られている。本発明では、結晶方位のX線回折量の比(222)/(400)を0.532以上5.642以下とすることにより、ITO膜からなる第1の電極部材の表面を適当な粗さとして、電極部材同士の接触による絶縁層の帯電をし難くした。すなわち、接触帯電を抑制して安定した動作特性が得られる静電型アクチュエータを提供することができる。
【0010】
上記第1の電極部材の表面における結晶方位のX線回折量の比(222)/(400)が0.532以上0.542以下であることを特徴とする。
【0013】
このように構成した本発明の静電型アクチュエータでは、第1および第2の電極部材が接触を繰り返しても、従来における静電型アクチュエータに比べて、接触帯電の発生が抑制され、動作が長期に亘り安定することが確認された。
【0014】
一方、本発明による静電型インクジェットヘッドは、上記構成の静電型アクチュエータを適用した構成を備えており、対向電極の一方の電極をITO膜から形成したことを特徴としている。
【0015】
すなわち、インクノズルと、インクノズルに連通するインク室と、インク室の一面を構成するシリコン基板からなる振動板と、振動板に対して一定の間隔で対向配置された対向基板と、対向基板の振動板に対向する表面に形成された電極と、振動板の電極に対向する側に設けられた絶縁層とを有し、振動板と電極との間に発生した静電気力により振動板を相対変位させることにより、インク室に充填されたインクを加圧してインクノズルからインク滴を吐出する静電型インクジェットヘッドであって、電極がITO膜からなり、ITO膜の結晶方位が(222)および(400)を含み、電極の表面における結晶方位のX線回折量の比(222)/(400)が0.532以上5.642以下であることを特徴とする。
【0017】
また、上記電極の表面における結晶方位のX線回折量の比(222)/(400)が0.532以上0.542以下であることを特徴とする。
【0020】
この構成のインクジェットヘッドでは、対向電極表面における接触帯電が抑制されるので、その振動板の振動特性を安定化できる。よって、インク吐出動作を安定化でき、適正なサイズのインク液滴を吐出できると共に、ドット抜けやインク吐出方向偏差の発生を抑制できる。この結果、印字品位に優れた信頼性の高いインクジェットヘッドを実現できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、本発明を適用した静電型アクチュエータが組み込まれた静電駆動型のインクジェットヘッドの一例を説明する。
【0022】
図1は本例のインクジェットヘッドの分解斜視図である。また、図2は、組み立てられたインクジェットヘッドの断面構成図(図3のII−II線断面)、図3はその平面図、図4はその部分断面図(IVーIV線切断部分)である。
【0023】
これらの図に示すように、インクジェットヘッド1は、基板の上面に形成したインクノズルからインク液滴を吐出するフェイスインクジェットタイプのものである。このインクジェットヘッド1は、キャビティープレート3を挟み、上側にノズルプレート2、下側にガラス基板4がそれぞれ積層された3層構造となっている。
【0024】
キャビティープレート3は、例えばシリコン基板であり、プレートの表面には底壁が振動板5として機能するインク室6を構成することになる凹部7と、凹部7の後方に設けられたインク供給口8を形成することになる細溝9と、各々のインク室6にインクを供給するためのインクリザーバ10を構成することになる凹部11とがエッチングによって形成されている。このキャビティープレート3の下面は鏡面研磨によって平滑化されている。
【0025】
キャビティープレート3の上側に接合されるノズルプレート2は、例えば、キャビティープレート3と同様にシリコン基板から形成されている。ノズルプレート2において、インク室6の上面を規定している部分には各インク室6に連通する複数のインクノズル21が形成されている。
【0026】
ノズルプレート2をキャビティープレート3に接合することにより、上記の凹部7、11および細溝9が塞がれて、インク室6、インク供給口8、インクリザーバ10がそれぞれ区画形成される。インクリザーバ10の底面を規定する部分にはインクリザーバ10にインクを供給するための孔12aが設けられており、基板接合後、後述するガラス基板4に設けられた孔12bと共にインク供給孔12を形成する。インク供給孔12には、不図示の接続チューブを介して不図示のインクタンクが接続される。インク供給孔12から供給されたインクは、各インク供給口8を経由して独立した各インク室6に供給される。
【0027】
ここで、静電型アクチュエータは、一時的に各インク室内の圧力を上昇させて、対応するインクノズルからインク滴を吐出させるために、各インク室にそれぞれ設けられている。各静電アクチュエータは微小なギャップをもって対向配置された第1および第2の電極部材を有している。本例では、第1の電極部材は、後述するように、ガラス基板4の凹部16に形成されており、第2の電極部材はインク室6の底に形成された変形可能な振動板5である。
【0028】
次に、キャビティープレート3の下側に接合されるガラス基板4は、シリコンと熱膨張率が近いホウ珪酸ガラス基板である。このガラス基板4において、それぞれの振動板5に対向する部位にはギャップ15を構成することになる凹部16が形成されている。この凹部16の底面には、振動板に対向する個別電極(第1の電極部材)17が形成されている。個別電極17は、ITOからなるセグメント電極部18と端子部19を有している。
【0029】
ガラス基板4をキャビティープレート3に接合することにより、各インク室6の底面を規定している振動板5と個別電極17のセグメント電極部18は、非常に狭いギャップ15を隔てて対峙する。このギャップ15はキャビティープレート3とガラス基板4の間に配置した封止材20によって封止される。
【0030】
ガラス基板4とキャビティープレート3は陽極接合により接合される。陽極接合では、まず、ガラス基板4とキャビティプレート3の相対位置合わせが行われ、重ね合わせられた後、窒素雰囲気中にてガラス基板4は摂氏340度に加熱され、キャビティプレート3とガラス基板の間に900Vの電圧を印加されて、ガラス基板4とキャビティプレート3が接合される。
【0031】
振動板5は薄肉とされており、面外方向、すなわち、図2において上下方向に弾性変形可能となっている。この振動板5は、各インク室側の共通電極として機能する。この共通電極(第2の電極部材)としての振動板5の底面51にはSiO2からなる絶縁層22が形成されている。ギャップ15を挟み、各振動板5と、それに対応する各セグメント電極18とによって対向電極が形成される。
【0032】
振動板5と個別電極17の間には電圧印加装置25が接続されている。電圧印加装置25の一方の出力は各個別電極17の端子部19に接続され、他方の出力はキャビティープレート3に形成された共通電極端子26に接続されている。キャビティープレート3自体は導電性を持つので、この共通電極端子26から振動板(共通電極)5に電圧を供給することができる。
【0033】
なお、より低い電気抵抗で振動板5に電圧を供給する必要がある場合には、例えば、キャビティープレート3の一方の面に金等の導電性材料の薄膜を蒸着やスパッタリングで形成すればよい。本例では、キャビティープレート3とガラス基板4との接続に陽極接合を用いているので、キャビティープレート3の流路形成面側に導電膜を形成してある。
【0034】
ここにおいて、本例のインクジェットヘッド1のITOからなる個別電極17のセグメント電極部18は、適用するITO膜として、当該ITO膜の結晶方位の(222)方向と(400)方向の構成比(222)/(400)が0.532〜5.642とされている。
【0035】
また、陽極接合が終了し、接合されたガラス基板4とキャビティプレート3を窒素に一定濃度のHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を気化させて混合させた雰囲気中に一定時間放置して、ギャップ15へHMDSを導入し、その後、封止材20により封止される。
【0036】
HMDSは振動板5とセグメント電極部18が静電アクチュエータ駆動時に、ギャップ15を隔てて対峙する振動板5とセグメント電極部18の表面に付着した表面水により、振動板5とセグメント電極部18が吸着してしまい、動作不能となるのを防止するために、ギャップ15内に導入され、気密封止される。ここでHMDSは陽極接合後に残留した絶縁膜22表面及びセグメント電極部18表面の化学吸着した表面水を化学的にHMDSと置換して除去する作用を有する。このHMDSにより、静電型アクチュエータ及び静電型インクジェットヘッドの駆動による耐久性を確保することが可能となる。
【0037】
この構成のインクジェットヘッド1においては、電圧印加装置25からの駆動電圧が対向電極間に印加されると、対向電極間に充電された電荷によるクーロン力が発生し、振動板5はセグメント電極部18の側に撓み、インク室5の容積が拡大する。次に、電圧印加装置25からの駆動電圧を解除して対向電極間の電荷を放電すると、振動板5はその弾性復帰力によって復帰し、インク室6の容積が急激に縮小する。この時発生する内圧変動により、インク室6に貯留されたインクの一部が、インク室6に連通しているインクノズル21から記録紙に向かって吐出する。
【0038】
このように電圧印加装置25によって対向電極間に電圧印加、解除が繰り返されると、共通電極である振動板5は、絶縁膜22を介して、繰り返し、個別電極のセグメント電極部18の表面に接触する。この結果、絶縁膜22の表面には接触帯電が発生し、駆動電圧の印加を止めても、対向電極間に、放電されることなく所定量の電荷が残留する事態が発生する。
【0039】
残留電荷は絶縁膜22の表面の帯電となり、対向電極間に電圧印加、解除の際の振動板5の動作を不安定なものとしてしまい、インクジェットヘッド1のインク液滴の吐出を不安定なものとしてしまう。結果、余剰なインク液滴の吐出を生じてしまう原因となる。
【0040】
更には、この接触帯電により残留する電荷は、対向電極間への電圧印加、解除の際に絶縁膜22の表面と個別電極のセグメント電極部18の間で、微弱な放電を発生させる場合がある。対向電極間への電圧印加、解除の繰り返しにより放電が繰り返し発生すると、ギャップ15内部の表面に付着したHMDS等の有機膜が放電により漸次、異物化してしまう。放電により異物化した有機膜により振動板5が動作不能状態となり、インクジェットヘッド1はインク液滴吐出不能となってしまう。前述の接触帯電の放電の繰り返しは、静電型アクチュエータや静電型インクジェットヘッドの機能不全を招き、長期に渡る静電アクチュエータの安定的な動作の確保を難しくしていた。
【0041】
しかるに、本例では、個別電極のセグメント電極部18をITO膜により形成すると共に、適用するITO膜として、当該ITO膜の結晶方位の(222)方向と(400)方向の構成比(222)/(400)が0.532〜5.642となるようにしてある。このITO膜を個別電極として用いた場合には、絶縁層表面の接触帯電が抑制され、放電もまた抑制され、安定したインク吐出特性が得られることが確認された。
【0042】
図5に本発明者等の実験結果を示す。6種類のインクジェットヘッド1について、個別電極のセグメント電極部18にITO結晶の結晶方位の構成比率が異なるITO膜を用い、ITO膜のITO結晶の結晶方位の構成比率と、静電型アクチュエータの帯電特性と静電型インクジェットヘッドの耐久性について調査した結果を示す。以下に詳説する。
【0043】
インクジェットヘッド1の個別電極セグメント部18に適用したITO膜は直流マグネトロンスパッタリングにより形成したものである。当該ITO膜は相対密度が異なる2種類のITOターゲットを用い、ITO膜の形成条件であるガラス基板温度及び酸素流入量を変えて形成したものである。
【0044】
ITO膜の結晶方位の構成比率は、ITO結晶の結晶方位である(222)方向と(400)方向の構成比率を示す。(222)/(400)結晶方位の構成比率は、それぞれの結晶方位の結晶量を、当該結晶面に相当する角度の1秒当たりのX線回折量をシンチレーションカウンタにて計数して定量化し、比をとって定量値として示したものである。これらの測定はX線回折装置により行われた。
【0045】
比(222)/(400)は当該ITO膜を構成する結晶粒の内、(222)方向と(400)方向の何れの方向がどの程度多いのかを示している。比(222)/(400)が1を超える場合は、ITO膜を構成するITO結晶粒の中で、(222)方向のITO結晶が(400)方向のITO結晶よりも多いことを意味する。と共に、当該ITO膜のITO結晶を構成する支配的な結晶方位が少なくとも(400)方向のITO結晶ではないことを示す。ITO膜を構成するITO結晶の殆どが(222)方向のITO結晶と(400)方向のITO結晶から構成される場合に、比(222)/(400)が1を超える場合は、当該ITO膜のITO結晶の支配的な結晶方位が(222)方向であることを示す。
【0046】
また、静電型アクチュエータの帯電特性は、帯電による静電型アクチュエータの挙動不安定及びそれによる静電型インクジェットヘッドの不要インク液滴の吐出の有無の評価結果を示す。帯電特性に○とあるは、静電型アクチュエータの挙動が安定で静電型インクジェットヘッドにて不要インク液滴の吐出がなかったことを示す。また、帯電特性に×とあるは、静電型アクチュエータ挙動が不安定で静電型インクジェットヘッドにて不要インク液滴の吐出が確認されたことを示す。
【0047】
更に、静電型インクジェットヘッドの耐久性は、静電型インクジェットヘッドに必要とされる対向電極間への電圧印加、解除の繰り返し回数に対して、インク液滴の吐出する量即ち、インク液滴の吐出特性が長期に安定しているか否かを示すものである。耐久性に○とあるは要求される電圧印加、解除の繰り返し回数に対してインク液滴の吐出特性が安定していたことを、また、耐久性に×とあるは要求される電圧印加、解除の繰り返し回数に対してインク液滴の吐出特性が繰り返しの途中から変化、劣化したことを示す。ちなみに、本実施例中のインクジェットヘッド1に要求される電圧印加、解除の繰り返し回数は、24億サイクルとし、前述の○及び×の評価を行った。
【0048】
要求される耐久性が1億サイクル程度の場合には図5に示す実験結果における耐久性の評価結果は実験した全ての(222)/(400)結晶方位の構成比に関して○となる。
【0049】
ここで、インクジェットヘッド1のインク液滴の吐出特性の安定性と印刷品位を確保するためには、第一に帯電特性が○である必要がある。さらに、求められる耐久性を確保するためには加えて耐久性が○である必要がある。帯電特性を確保し、安定したインク液滴の吐出特性を確保する場合は、結晶方位の構成比率(222)/(400)を0.532以上5.642以下とする必要があり、好ましくは発明者の実験結果により帯電特性と耐久性を両立させようとすれば、結晶方位の構成比率(222)/(400)を0.532以上0.542以下とする必要がある。
【0050】
図5に示すこれらの結果より、個別電極のセグメント電極部18に適用するITO膜として、当該ITO結晶の結晶方位の構成比率(222)/(400)が0.532以上0.542以下となるITO膜を適用することにより、長期に渡って、安定したインク吐出特性を得ることが可能となることが確認できる。
【0051】
更に、ITO膜を直流マグネトロンスパッタリングにより形成する場合、当該構成比率(222)/(400)が0.532以上5.642以下となるようにITO膜を形成する条件として、ガラス基板温度を摂氏350度または280度の温度に保持することと、酸素導入流量を適便に設定することが必要であることも確認できる。
【0053】
インクジェットヘッド1の耐久性をより重視する場合にはITO膜の結晶方位の構成(222)/(400)が0.532以上0.542以下とし、そのためのITO膜の形成条件としてガラス温度を摂氏350度または280度に保持し、酸素流入量等の他の条件を適切に設定するものとした。
【0055】
本発明者等の実験によれば、ITO膜を直流マグネトロンスパッタリングにより形成する場合には、その成膜条件として、ガラス基板温度を摂氏350度または280度に保持し、酸素導入流量等の他の条件を適切に設定することにより、結晶方位(222)方向が支配的なITO膜を形成できることが確認された。
【0056】
(その他の実施の形態)
上記のインクジェットヘッドは、インク液滴を基板の上面に設けたインクノズルから吐出するフェイスインクジェットタイプのものである。この代わりに、基板の端部に設けたインクノズルから吐出させるエッジインクジェットタイプのものにも本発明を適用できることは勿論である。
【0057】
また、上記の例は、インクジェットに対して本発明を適用した例であるが、本発明はインクジェットヘッド以外の静電型アクチュエータにも適用できる。例えば、特開平7−177763号公報に開示されているようなマイクロメカニカル装置、静電型アクチュエータを用いた表示装置、マイクロポンプ等に対して同様に適用できる。
【0058】
さらには、対向電極間に発生する電圧変化を、対向電極の相対変位量として検出する静電型センサに対しても本発明を同様に適用できる。本明細書における「静電型アクチュエータ」という用語は、このような静電型センサの検出部も含む広い意味を有するものとして用いている。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の静電型アクチュエータにおいては、対向配置した第1および第2の電極部材のうちの一方の第1の電極部材をITO膜から形成すると共に、当該ITO膜の結晶方位の(222)方向と(400)方向の構成比(222)/(400)が0.532〜5.642となる様にしてある。
【0060】
かかる静電型アクチュエータによれば、第1および第2の電極部材の表面に発生する接触帯電が抑制され、信頼性の高い安定した駆動状態を保持できる。
【0061】
また、本発明を適用した静電駆動型のインクジェットヘッドによれば、対向電極表面に発生する接触帯電を抑制できるので、インクノズルから吐出されるインク液滴の量および吐出方向が安定し、吐出インク液滴の分離も安定するので、余分なインク液滴や不要なインクミストの発生を防止できる。すなわち、印字品位に優れた信頼性のあるインクジェットヘッドを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したインクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図2】図1のインクジェットヘッドの概略縦断面図である。
【図3】図1のインクジェットヘッドの平面図である。
【図4】図1のインクジェットヘッドの一部を示す概略横断面図である。
【図5】本発明を適用したインクジェットヘッドを用いた実験結果を示す図である。
【符号の説明】
1 インクジェットヘッド
2 ノズルプレート
3 キャビティープレート
4 ガラス基板
5 振動板(第2の電極部材)
6 インク室
15 ギャップ
17 個別電極(第1の電極部材)
18 セグメント電極部(ITO膜)
21 インクノズル
22 絶縁膜
25 電圧印加装置
Claims (4)
- 一定の間隔で対向配置された相対変位可能な第1および第2の電極部材と、前記第2の電極部材の前記第1の電極部材と対向する側に設けられた絶縁層と、これらの電極部材の間に静電気力を発生させて当該電極部材を相対変位させる駆動手段とを有する静電型アクチュエータであって、
前記第1の電極部材がITO膜からなり、
前記ITO膜の結晶方位が(222)および(400)を含み、
前記第1の電極部材の表面における結晶方位のX線回折量の比(222)/(400)が0.532以上5.642以下であることを特徴とする静電型アクチュエータ。 - 前記第1の電極部材の表面における結晶方位のX線回折量の比(222)/(400)が0.532以上0.542以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電型アクチュエータ。
- インクノズルと、前記インクノズルに連通するインク室と、前記インク室の一面を構成するシリコン基板からなる振動板と、前記振動板に対して一定の間隔で対向配置された対向基板と、前記対向基板の前記振動板に対向する表面に形成された電極と、前記振動板の前記電極に対向する側に設けられた絶縁層とを有し、前記振動板と前記電極との間に発生した静電気力により前記振動板を相対変位させることにより、前記インク室に充填されたインクを加圧して前記インクノズルからインク滴を吐出する静電型インクジェットヘッドであって、
前記電極がITO膜からなり、
前記ITO膜の結晶方位が(222)および(400)を含み、
前記電極の表面における結晶方位のX線回折量の比(222)/(400)が0.532以上5.642以下であることを特徴とする静電型インクジェットヘッド。 - 前記電極の表面における結晶方位のX線回折量の比(222)/(400)が0.532以上0.542以下であることを特徴とする請求項3に記載の静電型インクジェットヘッド。
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