JP4042226B2 - 流体伝動装置 - Google Patents

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    • F16H2045/0284Multiple disk type lock-up clutch

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体伝動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動変速機においては、流体伝動装置としてのトルクコンバータを備え、クランクシャフトに出力されたエンジンの回転を、前記トルクコンバータを介して変速装置の入力軸に伝達するようになっている。
前記トルクコンバータは、ポンプインペラ、タービンランナ、ステータ、ロックアップクラッチ装置及びダンパ装置によって構成される。そして、前記トルクコンバータにおいて、エンジンから伝達された回転はフロントカバーを介してポンプインペラに伝達され、該ポンプインペラの回転に伴って発生する油の流れによってタービンランナを回転させ、該タービンランナの回転を前記入力軸に伝達するようになっている。
【0003】
また、前記ロックアップクラッチ装置は、軸方向に移動自在に配設された平板としてのロックアップピストンを備え、該ロックアップピストンに摩擦材が貼(ちょう)付される。そして、車両が発進した後、あらかじめ設定された車速が得られると、ロックアップピストンとフロントカバーとが接触させられ、ロックアップクラッチ装置が係合させられる。その結果、エンジンの回転が油を介することなく入力軸に直接伝達される。
【0004】
そして、前記ロックアップクラッチ装置を係脱するために、ロックアップピストンとタービンランナとの間に作動油圧室が、ロックアップピストンとフロントカバーとの間に解放油圧室が形成され、前記作動油圧室に第1の油路を介して油を供給することによってロックアップクラッチ装置を係合させ、前記解放油圧室に第2の油路を介して油を供給することによってロックアップクラッチ装置を解放させることができる。
【0005】
ところで、例えば、燃費を良くするために、前記ロックアップクラッチ装置を完全に係合させることなくスリップ制御が行われることがある。ところが、前記作動油圧室と解放油圧室とが連通していて、作動油圧室内が密閉されていないので、ロックアップクラッチ装置の応答性が低下し、スリップ制御を効果的に行うことができない。
【0006】
そこで、ロックアップクラッチ装置の応答性を向上させるために、ロックアップピストンの外周縁とフロントカバーとの間をシールして、作動油圧室と解放油圧室とを十分に分離させるようにしたトルクコンバータが提供されている(特開平5−296313号公報参照)。
この場合、作動油圧室と第1の油路とが連通させられるとともに、解放油圧室と第2の油路とが連通させられるので、前記作動油圧室と解放油圧室とが完全に分離させられると、前記第1、第2の油路間で油が循環しなくなってしまう。その結果、ロックアップクラッチ装置の解放時において、油を介した伝達トルクの伝達が行われるのに伴って油の温度が異常に高くなってしまう。
【0007】
そこで、前記ロックアップピストンに、解放油圧室から作動油圧室に向けて一方向に開放されるチェックバルブを配設するようにしている。この場合、ロックアップクラッチ装置の解放時において、第2の油路を介して解放油圧室に供給された油を、前記作動油圧室に供給し、作動油圧室内の油を、第1の油路を介してドレーンして冷却装置に送り、冷却するようにしている。
【0008】
なお、前記ロックアップピストンの所定箇所には、オリフィスが形成され、ロックアップクラッチ装置の係合時においても前記作動油圧室と解放油圧室とがわずかに連通させられるようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の流体伝動装置においては、ロックアップクラッチ装置の解放に伴って前記チェックバルブが開放されるが、このとき、ロックアップピストンが作動油圧室側に移動させられるので、作動油圧室内の油圧、及びロックアップピストンの移動に伴って発生する油の抵抗によって、チェックバルブを迅速に開放することができない。
【0010】
したがって、解放時におけるロックアップクラッチ装置の応答性が低下してしまう。
本発明は、前記従来の流体伝動装置の問題点を解決して、ロックアップクラッチ装置の応答性を向上させることができる流体伝動装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そのために、本発明の流体伝動装置においては、エンジンの回転が伝達されるフロントカバーと、該フロントカバーと連結されたポンプインペラと、該ポンプインペラと対向させて配設され、変速装置の入力軸と連結されたタービンランナと、軸方向において移動が規制された不動部材と、該不動部材に対して軸方向に移動自在に配設され、内周縁及び外周縁がシールされ、前記不動部材と共にフロントカバーとの間に第1の油圧室を、タービンランナとの間に第2の油圧室を形成するロックアップピストンと、前記第1の油圧室と連通させられた第1の油路と、前記第2の油圧室と連通させられた第2の油路と、前記ロックアップピストンの移動に伴って係脱させられ、前記フロントカバーと前記入力軸との間を選択的に連結する係脱手段とを有する。
【0012】
そして、前記不動部材に、前記第1、第2の油圧室のうちの解放側の油圧室から作動側の油圧室に向けて一方向に開放されるチェックバルブが配設される。
本発明の他の流体伝動装置においては、さらに、前記作動側の油圧室に油を供給し、前記解放側の油圧室内の油をドレーンすることによって前記係脱手段が係合させられる。
【0013】
本発明の更に他の流体伝動装置においては、さらに、前記チェックバルブは板ばねから成る。
本発明の更に他の流体伝動装置においては、さらに、前記チェックバルブに、前記第1、第2の油圧室間を連通させる少なくとも一つのオリフィスが形成される。
【0014】
本発明の更に他の流体伝動装置においては、さらに、前記チェックバルブは環状部を備え、該環状部が不動部材に外嵌させられる。
本発明の更に他の流体伝動装置においては、さらに、前記係脱手段は多板構造を有する。
本発明の更に他の流体伝動装置においては、さらに、前記第1の油圧室は前記作動側の油圧室であり、前記第2の油圧室は前記解放側の油圧室である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態におけるトルクコンバータの縦断面図、図2は本発明の実施の形態におけるフロントカバーハブの正面図、図3は本発明の実施の形態におけるバルブプレートの第1の状態を示す図、図4は本発明の実施の形態におけるバルブプレートの第2の状態を示す図である。
【0016】
図に示されるように、流体伝動装置としてのトルクコンバータは、図示されないエンジンの回転が伝達されるフロントカバー16、該フロントカバー16と連結されたポンプインペラ11、該ポンプインペラ11と対向させて配設され、ポンプインペラ11と共にトーラスを構成し、かつ、タービンハブ23を介して変速装置75の入力軸76と連結されたタービンランナ12、ステータ13、係脱自在に配設されたロックアップクラッチ装置14、係脱手段としての多板クラッチC及びダンパ装置15によって構成される。
【0017】
そして、前記トルクコンバータにおいて、前記エンジンから伝達された回転は、図示されないクランクシャフトを介してフロントカバー16に伝達され、該フロントカバー16に固定されたポンプインペラ11に伝達される。この場合、該ポンプインペラ11が回転すると、トーラス内の油は、トルクコンバータの軸の周囲を流れ、遠心力が加わってポンプインペラ11、タービンランナ12及びステータ13間を循環し、タービンランナ12を回転させ、前記入力軸76に伝達される。
【0018】
そして、車両の発進時等、前記ポンプインペラ11が回転を開始したばかりで、ポンプインペラ11とタービンランナ12との回転速度差が大きい場合、該タービンランナ12から流れ出た油はポンプインペラ11の回転を妨げる方向に流れる。そこで、ポンプインペラ11とタービンランナ12との間にステータ13が配設され、該ステータ13は、ポンプインペラ11とタービンランナ12との回転速度差が大きいときに、ポンプインペラ11の回転を助ける方向に油の流れを変換する。
【0019】
そして、前記タービンランナ12の回転速度が高くなり、前記ポンプインペラ11と前記タービンランナ12との回転速度差が小さくなると、ステータ13のブレード31の表側に当たっていた油が裏側に当たるようになって、油の流れが妨げられる。
そこで、前記ステータ13を一定方向にだけ回転可能にするために、前記ステータ13の内周側にアウタレース18及びインナレース19から成るワンウェイクラッチ17が配設される。したがって、油がブレード31の裏側に当たるようになると、ワンウェイクラッチ17によってステータ13は自然に回転するようになるので、前記油は円滑に循環する。前記アウタレース18はステータ13に固定され、インナレース19はステータシャフト71、ポンプカバー72及びポンプ73を介して自動変速機ケース74に固定される。
【0020】
前記ステータシャフト71の径方向外方には、前記ポンプインペラ11に固定されたポンプインペラシャフト88がポンプ73に対して回転自在に支持される。
このように、前記トルクコンバータは、ポンプインペラ11とタービンランナ12との回転速度差が大きいときには、トルク変換機として作動させられて伝達トルクを増幅し、回転速度差が小さいときには、流体継手として作動させられる。
【0021】
次に、ロックアップクラッチ装置14について説明する。
車両が発進した後、あらかじめ設定された車速が得られると、ロックアップクラッチ装置14が係合させられるようになっている。そして、ロックアップクラッチ装置14が係合させられると、前記エンジンの回転が油を介することなく前記入力軸76に直接伝達されるので、燃費を良くすることができる。また、前記ロックアップクラッチ装置14は、図示されないロックアップリレーバルブによって油の供給が切り換えられて作動し、環状のロックアップピストン21が軸方向に移動するのに伴って多板クラッチCが係脱させられ、フロントカバー16と入力軸76との間が選択的に連結される。
【0022】
そのために、前記フロントカバー16の中央部分に、不動部材としての環状のフロントカバーハブ77が配設され、該フロントカバーハブ77は、フロントカバー16に溶接等によって固定され、軸方向において移動が規制される。前記フロントカバーハブ77は、図2及び3に示されるように、最も内周縁側において軸方向に延びる筒状部77a、該筒状部77aから径方向外方に延びる環状の、かつ、肉厚の第1板状部77b、該第1板状部77bから更に径方向外方に延びる環状の、かつ、肉薄の第2板状部77c、及び該第2板状部77cの外周縁に形成され、外周に摺(しゅう)動面S1を備えた摺動部77dから成り、前記筒状部77aの内周と前記入力軸76の前端部との間にシール78が配設され、前記摺動部77dにシールリング79が配設される。そして、前記摺動部77dによって前記ロックアップピストン21がフロントカバーハブ77に対して軸方向に移動自在に、かつ、摺動自在に支持される。
【0023】
また、前記ロックアップピストン21は、前記摺動部77dと摺動させられ、摺動面S2を備えた筒状の摺動部21a、該摺動部21aから径方向外方に延びる湾曲部21b、及び該湾曲部21bの外周縁から径方向外方に延びるピストン部21cを備え、該ピストン部21cの外周縁にシール部材80が取り付けられる。
【0024】
そして、前記フロントカバー16の外周縁の近傍には、筒状のスリーブ81が軸方向に突出させて形成され、該スリーブ81と前記ダンパ装置15との間に前記多板クラッチCが配設される。該多板クラッチCは、内側プレート34a及び外側プレート34bを備えた多板構造を有し、前記内側プレート34aとダンパ装置15のドライブプレート57とがスプライン係合させられ、前記外側プレート34bとスリーブ81とがスプライン係合させられる。そして、前記内側プレート34a及び外側プレート34bはそれぞれ図示されない摩擦材を備える。また、前記スリーブ81の内周面とシール部材80とが接触させられる。
【0025】
このように、前記ロックアップピストン21は、内周縁がシールリング79によってシールされ、外周縁がシール部材80によってシールされ、フロントカバーハブ77及びスリーブ81と共に、フロントカバー16との間に、第1の油圧室としての作動側の油圧室、すなわち、作動油圧室R1を形成し、タービンランナ12との間に、第2の油圧室としての解放側の油圧室、すなわち、解放油圧室R2を形成する。なお、前記作動油圧室R1は、フロントカバー16、ロックアップピストン21、フロントカバーハブ77及びシール部材80によって包囲される。
【0026】
したがって、例えば、燃費を良くするために、前記ロックアップクラッチ装置14を完全に係合させることなくスリップ制御を行う場合、前記作動油圧室R1内が密閉されるので、ロックアップクラッチ装置14の応答性を向上させることができる。また、ロックアップクラッチ装置14の係合過渡時における応答性を向上することもできる。
【0027】
そして、前記第1板状部77bの円周方向における複数箇所(本実施の形態においては4箇所)に油路83が形成される。また、フロントカバーハブ77は、各油路83間に形成される突起部84をフロントカバー16に当接させることによって固定されるので、第2板状部77cとフロントカバー16との間に、前記油路83と前記作動油圧室R1とを連通させる連通室85が形成される。
【0028】
したがって、ロックアップクラッチ装置14の係合時には、前記ロックアップリレーバルブから供給された所定の油圧の油が、入力軸76内の油路86、入力軸76の前端 (図1における左端) とフロントカバー16との間に形成された油室87、油路83及び連通室85を介して前記作動油圧室R1に供給される。その結果、ロックアップピストン21が後方(図1における右方)に移動させられ、ピストン部21cによって内側プレート34a及び外側プレート34bが押圧され、多板クラッチCが係合させられる。この場合、ロックアップクラッチ装置14を係合させるために多板クラッチCが使用されるので、大きいトルク容量を確保することができる。したがって、ロックアップクラッチ装置14の制御性を向上させることができる。
【0029】
一方、ロックアップクラッチ装置14の解放時には、前記ロックアップリレーバルブから供給された所定の油圧の油が、ステータシャフト71とポンプインペラシャフト88との間に形成された油路90、及び前記ポンプインペラシャフト88のハブ部91とワンウェイクラッチ17との間に形成された油路92を介して前記解放油圧室R2に油が供給される。その結果、ロックアップピストン21が前方(図1における左方)に移動させられ、多板クラッチCが解放される。
【0030】
なお、前記油路86、油室87、油路83及び連通室85によって、作動油圧室R1と連通させられる第1の油路が、油路90、92によって、解放油圧室R2と連通させられる第2の油路が構成される。
そして、前記ロックアップクラッチ装置14が係合させられると、前記エンジンの回転が、フロントカバー16、多板クラッチC、ダンパ装置15及びタービンハブ23を介して、前記入力軸76に直接伝達される。そのために、前記タービンハブ23の内周にスプライン溝23aが形成され、該スプライン溝23aによってタービンハブ23と前記入力軸76とがスプライン嵌合されるようになっている。
【0031】
なお、61は前記タービンハブ23とフロントカバーハブ77との間に配設されたスラストベアリング、65は前記ステータ13とタービンハブ23との間に配設されたスラストベアリング、66は前記ステータ13とハブ部91との間に配設されたスラストベアリングである。
次に、ダンパ装置15について説明する。
【0032】
該ダンパ装置15は、伝達トルクの変動を吸収するためのものであり、多板クラッチCの係合に伴って、フロントカバー16と一体的に回転させられるドライブプレート57、該ドライブプレート57を両側から挟んで配設され、前記タービンランナ12と一体的に回転させられるドリブンプレート32、スプリング33等から成る。該スプリング33は、前記ドライブプレート57及びドリブンプレート32の円周方向における複数箇所に配設される。
【0033】
したがって、前記フロントカバー16から多板クラッチCを介して伝達された回転は、前記ダンパ装置15を介してタービンハブ23に伝達されるが、この場合、スプリング33が収縮し、伝達トルクの変動を吸収するので、振動、騒音等が発生するのを防止することができる。
前記ポンプインペラ11は、ブレード41、アウタシェル43及びインナコア45から成り、また、タービンランナ12は、ブレード42、アウタシェル44及びインナコア46から成る。そして、前記アウタシェル44は、ドリブンプレート32と共に、リベット47によってタービンハブ23と連結される。
【0034】
ところで、作動油圧室R1と油路86、油室87、油路83及び連通室85とが連通させられるとともに、解放油圧室R2と油路90、92とが連通させられるので、前記作動油圧室R1と解放油圧室R2とが完全に分離させられると、前記油路86、油室87、油路83及び連通室85と油路90、92との間で油が循環しなくなってしまう。その場合、ロックアップクラッチ装置14の解放時において、油を介した伝達トルクの伝達が行われるのに伴って油の温度が異常に高くなってしまう。
【0035】
そこで、前記第2板状部77cの円周方向における複数箇所(本実施の形態においては、6箇所)に、作動油圧室R1と解放油圧室R2との間を貫通させて貫通穴93が形成され、前記第2板状部77cにおける作動油圧室R1の面に、前記各貫通穴93を覆うチェックバルブ94が配設される。該チェックバルブ94は、環状部95、及び該環状部95の円周方向における複数箇所(本実施の形態においては、6箇所)から径方向外方に突出させて一体に形成された遮蔽(へい)部96から成り、環状部95が前記第1板状部77bに外嵌されるとともに、内周縁の近傍、すなわち、前記環状部95と各遮蔽部96との交点において、固定手段としての複数のリベット97によってフロントカバーハブ77に固定される。
【0036】
そして、前記チェックバルブ94は、解放油圧室R2側から作動油圧室R1側に向けて一方向に開放されるようになっている。すなわち、ロックアップクラッチ装置14の係合時において、前記チェックバルブ94は、それ自体の付勢力によって図3に示されるように閉鎖され、ロックアップクラッチ装置14の解放時において、前記チェックバルブ94は、解放油圧室R2内の油圧によって図4に示されるように開放される。
【0037】
したがって、ロックアップクラッチ装置14の解放時において、油路92、90を介して解放油圧室R2に供給された油を、貫通穴93を介して作動油圧室R1に供給し、作動油圧室R1内の油を、連通室85、油路83、油室87、及び油路86を介してドレーンして図示されない冷却装置に送り、冷却することができる。その結果、ロックアップクラッチ装置14の解放時において、油を介した伝達トルクの伝達が行われるのに伴って油の温度が異常に高くなることはない。
【0038】
また、チェックバルブ94は、フロントカバー16に固定され、かつ、ポンプインペラ11の作動に伴って軸方向において移動が規制されたフロントカバーハブ77に配設されるので、ロックアップクラッチ装置14の解放に伴って前記チェックバルブ94が開放されるときに、作動油圧室R1内の油圧によって油の抵抗は発生しない。したがって、チェックバルブ94を迅速に開放することができるので、解放時におけるロックアップクラッチ装置14の応答性を向上させることができる。
【0039】
そして、前記チェックバルブ94は、ばね鋼によって形成され、可撓性を有する板ばねから成る。したがって、チェックバルブ94の構造を簡素化することができるだけでなく、異物の噛(かみ)込み等による作動不良が発生するのを抑制することができ、ロックアップクラッチ装置14の信頼性を向上することができる。
【0040】
また、前記各遮蔽部96のうちの所定の遮蔽部96(本実施の形態においては、最も上の遮蔽部96)には、作動油圧室R1と解放油圧室R2との間を貫通させてオリフィス98が形成され、ロックアップクラッチ装置14の係合時においても、前記オリフィス98によって前記作動油圧室R1と解放油圧室R2とがわずかに連通させられるようになっている。
【0041】
したがって、ロックアップクラッチ装置14の係合時においても、油路86、油室87、油路83及び連通室85を介して作動油圧室R1に供給された油を、オリフィス98を介して解放油圧室R2に供給し、解放油圧室R2内の油を油路90、92を介してドレーンして前記冷却装置に送り、冷却することができる。その結果、ロックアップクラッチ装置14の係合時において、解放油圧室R2内の油を十分に冷却することができるので、油の温度が異常に高くなることはない。
【0042】
また、前記オリフィス98は、チェックバルブ94に形成されるので、加工が容易であり、トルクコンバータの生産性を向上させることができ、コストを低くすることができる。
ところで、チェックバルブ94は、板ばねから成るので、わずかな取付誤差が生じるだけで開度にばらつきが生じてしまう。そこで、チェックバルブ94は、前記環状部95を第1板状部77bの外周縁に外嵌することによって位置決めされる。したがって、チェックバルブ94の取付誤差を無くすことができるので、解放油圧室R2内の油圧に対応させて所定の開度を得ることができ、開度にばらつきが生じるのを防止することができる。
【0043】
また、前記チェックバルブ94は内周縁の近傍においてフロントカバーハブ77に固定される。したがって、作動油圧室R1に油圧が供給されたときにチェックバルブ94を迅速に閉鎖することができるので、ロックアップクラッチ装置14の応答性を向上させることができる。
本実施の形態においては、ステータシャフト71と入力軸76との間には、ブシュ99が配設されるが、該ブシュ99を除去することによってステータシャフト71と入力軸76との間に第3の油路を形成することができる。その場合、前記第2、第3の油路を使用して解放油圧室R2内の油を、循環させて冷却装置に送り、冷却することができるので、第1の油路は、専らロックアップクラッチ装置14の係脱だけに使用することができる。したがって、フロントカバーハブ77に貫通穴93を形成する必要がない。
【0044】
また、本実施の形態においては、第1の油圧室として作動側油圧室R1を、第2の油圧室として解放側油圧室R2を形成するようになっているが、第1の油圧室として解放側油圧室を、第2の油圧室として作動側油圧室を形成することもできる。その場合、不動部材として、例えば、タービンハブ23が使用される。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0045】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、流体伝動装置においては、エンジンの回転が伝達されるフロントカバーと、該フロントカバーと連結されたポンプインペラと、該ポンプインペラと対向させて配設され、変速装置の入力軸と連結されたタービンランナと、軸方向において移動が規制された不動部材と、該不動部材に対して軸方向に移動自在に配設され、内周縁及び外周縁がシールされ、前記不動部材と共にフロントカバーとの間に第1の油圧室を、タービンランナとの間に第2の油圧室を形成するロックアップピストンと、前記第1の油圧室と連通させられた第1の油路と、前記第2の油圧室と連通させられた第2の油路と、前記ロックアップピストンの移動に伴って係脱させられ、前記フロントカバーと前記入力軸との間を選択的に連結する係脱手段とを有する。
【0046】
そして、前記不動部材に、前記第1、第2の油圧室のうちの解放側の油圧室から作動側の油圧室に向けて一方向に開放されるチェックバルブが配設される。
この場合、ロックアップクラッチ装置の解放時において、第2の油路を介して第2の油圧室に供給された油を第1の油圧室に供給し、第1の油圧室内の油を、第1の油路を介してドレーンして冷却装置に送り、冷却することができる。その結果、ロックアップクラッチ装置の解放時において、油を介した伝達トルクの伝達が行われるのに伴って油の温度が異常に高くなることはない。
【0047】
また、前記チェックバルブは不動部材に配設されるので、ロックアップクラッチ装置の解放に伴って前記チェックバルブが開放されるときに、作動側の油圧室内の油圧によって油の抵抗は発生しない。したがって、チェックバルブを迅速に開放することができるので、解放時におけるロックアップクラッチ装置の応答性を向上させることができる。
【0048】
本発明の他の流体伝動装置においては、さらに、前記作動側の油圧室に油を供給し、前記解放側の油圧室内の油をドレーンすることによって前記係脱手段が係合させられる。
この場合、前記作動側の油圧室内が密閉されるので、スリップ制御を行うときにロックアップクラッチ装置の応答性を向上させることができる。また、ロックアップクラッチ装置の係合過渡時における応答性を向上することもできる。
【0049】
本発明の更に他の流体伝動装置においては、さらに、前記チェックバルブは板ばねから成る。
この場合、チェックバルブの構造を簡素化することができるだけでなく、異物の噛込み等による作動不良が発生するのを抑制するとができ、ロックアップクラッチ装置の信頼性を向上することができる。
【0050】
本発明の更に他の流体伝動装置においては、さらに、前記チェックバルブに、前記第1、第2の油圧室間を連通させる少なくとも一つのオリフィスが形成される。
この場合、ロックアップクラッチ装置の係合時において、第1の油路を介して第1の油圧室に供給された油を第2の油圧室に供給し、該第2の油圧室内の油を第2の油路を介してドレーンして冷却装置に送り、冷却することができる。その結果、ロックアップクラッチ装置の係合時において、解放側の油圧室内の油を十分に冷却することができるので、油の温度が異常に高くなることはない。
【0051】
本発明の更に他の流体伝動装置においては、さらに、前記チェックバルブは環状部を備え、該環状部が不動部材に外嵌させられる。
この場合、チェックバルブの取付誤差を無くすことができるので、解放側の油圧室内の油圧に対応させて所定の開度を得ることができ、開度にばらつきが生じるのを防止することができる。
【0052】
本発明の更に他の流体伝動装置においては、さらに、前記係脱手段は多板構造を有する。
この場合、多板構造によって大きいトルク容量を確保することができる。したがって、ロックアップクラッチ装置の制御性を向上させることができる。
本発明の更に他の流体伝動装置においては、さらに、前記第1の油圧室は前記作動側の油圧室であり、前記第2の油圧室は前記解放側の油圧室である。
【0053】
この場合、ロックアップクラッチ装置の解放時において、第2の油路を介して解放側の油圧室に供給された油を作動側の油圧室に供給し、作動側の油圧室内の油を、第1の油路を介してドレーンして冷却装置に送り、冷却することができる。その結果、ロックアップクラッチ装置の解放時において、油を介した伝達トルクの伝達が行われるのに伴って油の温度が異常に高くなることはない。
【0054】
また、前記チェックバルブは不動部材に配設されるので、ロックアップクラッチ装置の解放に伴って前記チェックバルブが開放されるときに、作動側の油圧室内の油圧によって油の抵抗は発生しない。したがって、チェックバルブを迅速に開放することができるので、解放時におけるロックアップクラッチ装置の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態におけるトルクコンバータの縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるフロントカバーハブの正面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるバルブプレートの第1の状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるバルブプレートの第2の状態を示す図である。
【符号の説明】
11 ポンプインペラ
12 タービンランナ
13 ステータ
14 ロックアップクラッチ装置
15 ダンパ装置
16 フロントカバー
21 ロックアップピストン
75 変速装置
76 入力軸
77 フロントカバーハブ
83、86、90、92 油路
85 連通室
87 油室
94 チェックバルブ
95 環状部
C 多板クラッチ
R1 作動油圧室
R2 解放油圧室

Claims (7)

  1. エンジンの回転が伝達されるフロントカバーと、該フロントカバーと連結されたポンプインペラと、該ポンプインペラと対向させて配設され、変速装置の入力軸と連結されたタービンランナと、軸方向において移動が規制された不動部材と、該不動部材に対して軸方向に移動自在に配設され、内周縁及び外周縁がシールされ、前記不動部材と共にフロントカバーとの間に第1の油圧室を、タービンランナとの間に第2の油圧室を形成するロックアップピストンと、前記第1の油圧室と連通させられた第1の油路と、前記第2の油圧室と連通させられた第2の油路と、前記ロックアップピストンの移動に伴って係脱させられ、前記フロントカバーと前記入力軸との間を選択的に連結する係脱手段とを有するとともに、前記不動部材に、前記第1、第2の油圧室のうちの解放側の油圧室から作動側の油圧室に向けて一方向に開放されるチェックバルブが配設されることを特徴とする流体伝動装置。
  2. 前記作動側の油圧室に油を供給し、前記解放側の油圧室内の油をドレーンすることによって前記係脱手段が係合させられる請求項1に記載の流体伝動装置。
  3. 前記チェックバルブは板ばねから成る請求項1又は2に記載の流体伝動装置。
  4. 前記チェックバルブに、前記第1、第2の油圧室間を連通させる少なくとも一つのオリフィスが形成される請求項3に記載の流体伝動装置。
  5. 前記チェックバルブは環状部を備え、該環状部が不動部材に外嵌させられる請求項3又は4に記載の流体伝動装置。
  6. 前記係脱手段は多板構造を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の流体伝動装置。
  7. 前記第1の油圧室は前記作動側の油圧室であり、前記第2の油圧室は前記解放側の油圧室である請求項1〜6のいずれか1項に記載の流体伝動装置。
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