JP4042086B2 - 磁気記録媒体および該磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピューターの外部記録装置に搭載される磁気記録媒体および該磁気記録媒体の製造方法に関する。特に本発明は、磁気記録媒体の表面上に塗布される潤滑特性(CSS耐久性)を改善した潤滑剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体磁気記録媒体を用いた記録装置などは、一般に、磁気記録媒体の回転時には磁気ヘッドが浮上し、回転駆動モーターが停止した時には磁気ヘッドが磁気記録媒体表面と接触するコンタクト・スタート・ストップ(CSS)方式が採用されている。従来の磁気記録媒体は、表面保護層としてダイヤモンド状カーボン(DLC)に、さらに少量のNやSi等を添加したものが用いられている。そして、一般に、このような表面保護層の潤滑特性を改良するために、該表面保護層の上にパーフルオロポリエーテル系潤滑剤を塗布する。かかる潤滑剤を使用し保護層表面を覆い尽くすことは、表面に有害なガスや有機汚染物が吸着することを防ぎ、さらに潤滑特性を向上させ、CSS耐久性に優れかつ安定した磁気記録媒体を得る一つの手段となる。
【0003】
DLC系カーボン表面は、反応性のカルボニル基、カルボキシル基や水酸基等の官能基を有する薄い酸化膜で覆われており、ここに汚染物が積極的に吸着、結合し存在する。このような汚染物の吸着は、有極性末端基を有するパーフルオロポリエーテルを使用することで抑止することができるが、パーフルオロポリエーテルの分子量が低すぎると潤滑特性が低下し、逆に分子量が高すぎるとヘッドと潤滑層との吸着傾向が高くなる。また、比較的分子量の大きいパーフルオロポリエーテルを使用した場合、一般的に保護層上に数10Å塗布した程度では分子と分子との間に隙間が生じ、保護層表面を完全に覆うのは困難である。従って、このような比較的分子量の大きいパーフルオロポリエーテルを使用して、保護層表面を完全に覆うためには、潤滑剤の膜厚を50Å以上に厚く塗布しなければならず、50Å位まで厚くすると磁気記録媒体と磁気ヘッドとの吸着を回避することは困難となる。
【0004】
近年では高密度記録に伴い磁気ヘッドの低浮上化が進み、磁気ヘッドの構造も従来のTRCヘッドからTri−omegaヘッド、MRヘッド等の低浮上型ヘッドが採用されるようになってきた。それに伴い、ヘッド材質が触媒作用を受けるか、または摩擦熱を発生することにより、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤の主鎖部(エーテル部位)では分解が進むことになる。さらに、この分解物やディスク表面に吸着したガス等の腐食成分が磁気ヘッド表面に転写され、磁気ヘッドの浮上特性を乱し、再生出力の低下を招くことになる。また、分解したパーフルオロポリエーテル系潤滑剤は、潤滑特性が低下するため保護層の摩耗が生じ、最悪の場合にはヘッドクラッシュを引き起こすことになる。
【0005】
一方で、従来から環状トリホスファゼン系潤滑剤は、潤滑特性の向上やパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の分解抑制に効果があることが知られている。例えば、特開平9−305961号公報では、以下の構造式(II)で示されるような環状トリホスファゼン系潤滑剤をパーフルオロポリエーテル系潤滑剤と組み合わせて使用することにより磁気記録媒体における潤滑特性が改善されることを開示している。
【0006】
【化3】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤と環状トリホスファゼン系潤滑剤とは互いに非常に混ざりにくく、さらに潤滑層として塗布され、ある環境下に放置されると凝集してしまうという解決すべき課題がある。その結果、従来の技術では、固定磁気記録媒体を用いた記録装置の特性を大幅に低下することがある。また、上述した課題を解決するために、各種のパーフルオロポリエーテル系潤滑剤を用いる試みが種々なされているが、要求される全ての性能を満足し得る技術は未だ確立されていないのが現状である。
【0007】
従って、本発明の目的は、高密度記録に伴う磁気ヘッドの低浮上化による潤滑剤の分解および保護層の摩耗を防止し、長期にわたる潤滑特性の安定化(CSS耐久性の向上)を実現する磁気記録媒体および該磁気記録媒体の製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の目的を達成するため、潤滑層に用いる潤滑剤について鋭意検討した結果、分子量が小さく、安定性が高く、耐熱性に優れた新規の環状ホスファゼン系潤滑剤を使用することにより、前記の目的を達成できることを見出し本願発明を完成するに至った。すなわち、本発明の磁気記録媒体は、非磁性基体上に下地層、磁性層、保護層、および潤滑層を有し、かかる潤滑層は少なくとも、以下の構造式(I):
【0009】
【化3】
で示される環状トリホスファゼン化合物の混合物からなる環状トリホスファゼン潤滑剤を含むことを特徴とする。上述した潤滑剤層には、さらに、少なくとも1つの有極性末端基を有するパーフルオロポリエーテル系潤滑剤を含み、そのパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の重量平均分子量は1,500から5,500であることが好ましい。
【0010】
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、非磁性基体上に下地層を積層する工程と、該下地層上に磁性層を積層する工程と、該磁性層上に保護層を積層する工程と、該保護層上に潤滑層を積層する工程とを具え、かかる潤滑層は少なくとも以下の構造式(I):
【0011】
【化4】
で示される環状トリホスファゼン化合物の混合物からなる環状トリホスファゼン系潤滑剤、および少なくとも1つの有極性末端基を有するパーフルオロポリエーテル系潤滑剤を用いて形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明の磁気記録媒体の製造方法において、潤滑層を積層する工程は、上述した環状トリホスファゼン系潤滑剤とパーフルオロポリエーテル系潤滑剤とを別々に塗布するか、または上述した環状トリホスファゼン系潤滑剤とパーフルオロポリエーテル系潤滑剤とを混合して塗布するかしてもよい。それらの塗布は、ディップコート法またはスピンコート法で行うことが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に基づく磁気記録媒体は、該磁気記録媒体の表面の潤滑特性を改善するために、潤滑層に以下の構造式(I)で示される新規の環状トリホスファゼン系潤滑剤を使用する。
【0014】
【化5】
で示される環状トリホスファゼン化合物の混合物からなる環状トリホスファゼン系潤滑剤は、少なくとも1つの有極性末端基を有するパーフルオロポリエーテル系潤滑剤と組み合わせて使用する。環状トリホスファゼン系潤滑剤とパーフルオロポリエーテル系潤滑剤とを、別々に塗布して2層構造にするか、または先に両潤滑剤を混合して塗布することができる。両潤滑剤はよく混ざり合い、従来問題となっていた凝集は起こらない。また、必要に応じて両潤滑剤を任意の溶媒で希釈してもよい。
【0015】
構造式(I)で示される環状トリホスファゼン化合物の混合物からなる環状トリホスファゼン系潤滑剤は、限定されるものではないが、例えば、ハロゲン化環状トリホスファゼン化合物と以下に示す反応式(1)および(2)で得られた化合物とを混合することによって調製することができる。
【0016】
すなわち、慣用の方法にしたがって、溶媒の存在下、反応式(1)に示すように1,2,3,4,5,6−フロロヘプタノール[F(CF2)6CH2OH]と金属ナトリウムとを低温で反応させ、ナトリウムアルコキシドとする。
【0017】
【化7】
また、慣用の方法にしたがって、溶媒の存在下、反応式(2)に示したようにm−トリフルオロメチル−フェノールと金属ナトリウムとを低温で反応させ、ナトリウムフェノキシドとする。
【0018】
【化6】
上記の反応式(1)および(2)で得られた化合物とハロゲン化環状トリホスファゼン化合物とを作用させることにより、構造式(I)で示される環状トリホスファゼン化合物の混合物からなる環状トリホスファゼン系潤滑剤が得られる。
【0019】
さらに、上記環状トリホスファゼン系潤滑剤と組み合わせて使用されるパーフルオロポリエーテル系潤滑剤は、好適には1,500から5,500、より好適には2,500から4,000の重量平均分子量を有するものである。かかる分子量が低すぎると潤滑特性が低下し、また分子量が高すぎるとヘッドと潤滑層との吸着蛍光が大きくなってしまう。少なくとも1つの有極性末端基を有するパーフルオロポリエーテルを組み合わせることで、磁気記録媒体への汚染物の付着防止をより効果的にすることができる。このようなパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の一例として、モンテカチーニ社製のFomblin Z-dol 4000(商品名)が挙げられる。
【0020】
前記量潤滑剤の塗布は、当業者に既知の方法、好ましくはディップコート法、スピンコート法を用いて行う。塗布の際、必要に応じて両潤滑剤を適当な溶剤で希釈してもよく、0.05wt%の濃度が適当である。そして、上述のような本発明のパーフルオロポリエーテル系潤滑剤と組み合わせた環状トリホスファゼン系潤滑剤で磁気記録媒体の保護層表面を完全に覆うことにより、汚染物の吸着防止および潤滑特性を向上させ、CSS耐久性に優れた磁気記録媒体を得ることが可能となる。
【0021】
本発明に係る磁気記録媒体の一実施態様を図1に示し、図1を参照しながら以下に概説するが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本発明に係る磁気記録媒体の一実施態様では、非磁性基板11(例えば、Al−Mg)および非磁性金属層12(例えば、合金基板上に無電解メッキしたNi−P)とからなる非磁性の基体1、該基体1の上に積層した非磁性の金属下地層2、該金属下地層2の上に薄膜上に積層した強磁性合金である磁性層3(例えば、Co−Cr−Ta、Co−Cr−Pt等)、さらに該磁性層3の上に積層した保護層4(例えば、カーボン層)とを備える。そして、前記のように保護層4まで順次積層された上に、さらに潤滑層5を備える。
【0023】
以下、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法について実施例により説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0024】
環状トリホスファゼン系潤滑剤
(合成例)
最初に、本発明に係る磁気記録媒体の潤滑層に使用する構造式(I)で示される環状トリホスファゼン系潤滑剤の調製について例示する。
【0025】
(a) ナトリウムアルコキシド化
上流などでよく脱水させた30mlのHFE7200(商品名、3M社製)に金属ナトリウム1.0gを加えたものを、10gの1,2,3,4,5,6−フロロヘプタノール[F(CF2)6CH2OH]と0.1gのピリジンとを100mlのHFE7200に溶解させた溶液に加えた後、0℃に冷却した。この溶液の温度を0℃以下に保ちながら、10時間にわたって撹拌した。NMR測定により反応の終点を確認した後、反応液を濾過して固形物を取り除き、純水で洗浄し、さらにHFE7200を除去して目的とするナトリウム1,2,3,4,5,6−フロロヘプタノールアルコキシド7.3gを得た。
【0026】
(b)ナトリウムフェノキシド化
蒸留などでよく脱水させた30mlのジエチルエーテルに金属ナトリウム1.0gを加えたものを、10gのm−トリフルオロメチルフェノールと0.1gのピリジンとを80mlのジエチルエーテルに溶解させた溶液に加えた後、0℃に冷却した。この溶液を0℃以下に保ちながら、5時間にわたって撹拌した。NMR測定により反応の終点を確認した後、反応溶液を濾過して固形物を取り除き、純水で洗浄し、さらにジエチルエーテルを除去して目的とするナトリウム m−トリフルオロメチル−フェノキシド8.5gを得た。
【0027】
(c)環状トリホスファゼン系潤滑剤の調製
オートクレーブに、上記(a)で得られたナトリウム1,2,3,4,5,6−フロロヘプタノールアルコキシドを2.0g、上記(b)で得られたナトリウムm−トリフルオロメチル−フェノキシドを6.0g、ヘキサクロロホスファゼンN3P3Cl6を3.0g、さらにHFE7200を70ml入れて、オートクレーブ内をN2で置換した後、80℃で250時間にわたって反応させた。NMRそくていにより反応の終点を確認した後、水およびエタノールで洗浄し、所望の1,2,3,4,5,6−フロロヘプタノキシ基およびm−フルオロメチル−フェノキシ基を有する環状トリホスファゼン化合物の混合物2.4gを得た。なお、得られた潤滑剤は必要に応じて適当な溶剤で希釈して使用する。
【0028】
1.磁気記録媒体の製造
(実施例1、参考)
次に、上述のようにして得られた環状トリホスファゼン系潤滑剤を用いた磁気記録媒体の製造について例示する。
【0029】
Al−Mg合金基板上に無電解メッキによりNi−Pメッキを施した非磁性金属層を13μm形成し、その表面をポリッシュにより表面粗さRaが10Åになるように研磨した後、ダイヤモンドスラリーを使用して、表面粗さRaが40Åとなるように、同心円状の溝をテクスチャー加工により施した。得られた基体を洗浄した後、DCスパッタ法により膜厚500ÅのCrからなる非磁性金属下地層、次いで膜厚300ÅのCo−Cr−Taからなる磁性層、さらに膜厚150ÅのDLCからなる保護層を作製した。
【0030】
上述のように保護層まで順次積層させた上(以下、保護層の上という)に、先に調製した環状トリホスファゼン系潤滑剤(構造式(I)で示される化合物、だたしnは1から6)を使用し潤滑層を成膜した。その際、かかる環状トリホスファゼン系潤滑剤はn−ヘキサンを溶剤として用い希釈し、その濃度が0.05wt%になるように予め調製した。得られた潤滑剤溶液をディップコート法により塗布し、20Åの潤滑層を有する磁気記録媒体を作製した。
【0031】
(比較例1)
構造式(I)で示される化合物の代わりに、以下の構造式(II):
【0032】
【化9】
で示される従来の環状トリホスファゼン系潤滑剤を保護層の上に使用することを除いて、実施例1と同様に実施することにより相当する磁気記録媒体を作製した。
【0033】
(実施例2)
実施例1で記述した保護層の上に、nが1から6である構造式(I)で示される環状トリホスファゼン系潤滑剤を成膜した。その際、かかる環状トリホスファゼン系潤滑剤を溶剤としてn−ヘキサンを用いて希釈し、その濃度が0.05wt%になるように予め調製し、ディップコート法により塗布し、5Åの潤滑層を成膜した。
【0034】
次いで、モンテカチーニ社製のFomblin Z-dol 4000(商品名)等の重量平均分子量が4,000で、かつ水酸基を末端基に有するパーフルオロポリエーテルを、溶媒として3M社製のFC−77(商品名)等のフルオロカーボンを用いて希釈し、その濃度が0.05wt%になるように調製した。得られた潤滑剤溶液をスピンコート法(回転数1,800rpm)で塗布し、膜厚20Åのパーフルオロポリエーテル系潤滑層を成膜した。そして、各潤滑層を有する磁気記録媒体を作製した。
【0035】
(比較例2)
構造式(I)で示される化合物の代わりに、前記構造式(II)で示される従来の環状トリホスファゼン系潤滑剤を保護層の上に使用することを除いて、実施例2と同様に実施することにより相当する磁気記録媒体を作製した。
【0036】
(比較例3)
実施例2において、保護層の上に環状トリホスファゼン系潤滑剤を成膜しないことを除いて、実施例2と同様に実施することにより相当する磁気記録媒体を作製した。
【0037】
2.磁気記録媒体の評価
上述した実施例1、2および比較例1〜3で作製した磁気記録媒体表面の潤滑層に関して、以下、評価1および評価2に示すような分解評価を行った。
評価1
上述した実施例1、2および比較例1〜3で作製した各々の磁気記録媒体の表面上に、Al2O3−TiC粉と超純水の混合液1滴を滴下し、次いでデシケータ内に入れ80℃/80%相対湿度の条件下で24時間放置した。次いで、磁気記録媒体の表面にある潤滑剤の分解の有無をフーリエ変換式赤外分光光度計(FT−IR)を用いて確認した。これらの結果を以下の表1に示す。
【0038】
評価2
上述した実施例1、2および比較例1〜3において作製した各々の磁気記録媒体について、それらの表面上に超純水1滴を滴下した磁気記録媒体と10ccの1% H2SO4とを入れたシャーレをデシケータ内に入れ、80℃/80%相対湿度の条件下で24時間にわたって放置した後、媒体表面潤滑剤の分解の有無をフーリエ変換式赤外分光光度計(FT−IR)にて確認した。これらの結果を以下の表1に示す。
【0039】
【表1】
表1から明らかなように、評価1および評価2のいずれにおいても、保護層を少なくとも本発明の環状トリホスファゼン系潤滑剤で塗布した磁気記録媒体では、潤滑剤の分解が見られないことが分かった。
【0040】
次に、上述した実施例1、2および比較例1〜3で作製した磁気記録媒に関し、以下、評価3および評価4に示すような潤滑特性の評価を行った。
【0041】
評価3
上述した実施例1、2および比較例1〜3において作製した各々の磁気記録媒体の表面上に、ヘッド荷重が10gfの磁極ヘッドを、半径位置21.5mm、回転数1rpmで摺動させて、この時の動摩擦係数μIを測定した。その後、回転数100rpmで1時間摺動させた後、回転数100rpmで摺動させた時の動摩擦係数μLを測定した。これらの結果を以下の表2に示す。
【0042】
評価4
上述した実施例1、2および比較例1〜3において作製した各々の磁気記録媒体を、評価3と同様のヘッドを用い実際の磁気ディスクドライブに組み込み、初期の摩擦係数μIを測定した。その後、常温/常湿(25℃/50%)と60℃/80%相対湿度の条件下で、20,000回のCSSを繰り返した後、摩擦係数μLを測定した。また、60℃/80%相対湿度の条件下で、CSSを20,000回繰り返したものについて、ヘッドの汚れの有無を光学顕微鏡により観察した。これらの結果を以下の表2に示す。
【0043】
【表2】
表2から明らかなように、評価3および4に関して、保護層を少なくとも本発明の環状トリホスファゼン系潤滑剤で塗布した磁気記録媒体(実施例1および2)は、いずれの環境下においても初期摩擦係数μIが小さく、20,000回のCSSにおける摩擦係数の上昇も少ない。これに対し、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤のみを使用したもの(比較例3)は摩擦係数が上昇し、さらに保護層の摩耗が生じた。このことから、本発明に係る潤滑剤を使用することで、磁気記録媒体の摺動特性およびCSS耐久特性を改善できることが分かった。
【0044】
また、実施例1および2において作製された本発明に係る潤滑剤を表面に塗布した磁気記録媒体では、ヘッドの汚れは確認できなかった。
【0045】
最後に、上述した実施例1、2および比較例1〜3において作製した磁気記録媒体表面の潤滑層に関して、以下、評価5に示すような凝集評価を行った。
【0046】
評価5
上述した実施例1、2および比較例1〜3で作製した各々の磁気記録媒体を恒温恒湿槽に80℃/80%で5日間にわたり放置した後、磁気記録媒体表面の凝集の有無を光学顕微鏡により観察した。これらの結果を以下の表3に示す。
【0047】
【表3】
表3から明らかなように、本発明に係る環状トリホスファゼン系潤滑剤を使用した実施例1において、凝集現象は観察されなかった。また、同様に本発明に係る環状トリホスファゼン系潤滑剤とパーフルオロポリエーテルとを組み合わせた実施例2についても凝集現象は観察されず、各々の潤滑剤がよく混ざり合うことが分かる。
【0048】
一方、前記構造式(II)で示される従来型の環状トリホスファゼン系潤滑剤を用いた比較例1および2では、凝集現象が確認された。
【0049】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に基づく環状トリホスファゼン系潤滑剤を単独でまたはパーフルオロポリエーテル系潤滑剤と組み合わせて使用することにより、低浮上型の磁気ヘッドに対して潤滑特性およびCSS耐久性の向上を与える。その結果、従来のものに比べて長期使用時における特性安定に優れた磁気記録媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明にもとづく磁気記録媒体の一例を示す断面斜視図である。
【符号の説明】
1 基体
2 金属下地層
3 磁性層
4 保護層
5 潤滑層
11 非磁性基板
12 非磁性金属層(メッキ層)
Claims (7)
- 前記パーフルオロポリエーテル系潤滑剤は、重量平均分子量が1,500から5,500であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 前記潤滑層を積層する工程が、前記環状トリホスファゼン系潤滑剤を塗布する工程と、前記パーフルオロポリエーテル系潤滑剤を塗布する工程とを具えることを特徴とする請求項3に記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 前記潤滑層を積層する工程が、前記環状トリホスファゼン系潤滑剤と、前記パーフルオロポリエーテル系潤滑剤とを混合して塗布する工程を具えることを特徴とする請求項3に記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 前記潤滑剤を塗布する工程が、ディップコート法またはスピンコート法であることを特徴とする請求項4または5に記載の磁気記録媒体の製造方法。
- 請求項1または2に記載の磁気記録媒体を搭載することを特徴とする記録装置。
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