JP4041927B2 - インクジェットヘッドとその製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリンタに適用するインクジェットヘッドとその製造方法、特に、高精彩な印刷を可能とするインクジェットプリンタの小型化と軽量化および、その構成に適応した製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近のインクジェットプリンタは、高精彩な印刷を可能にするため、独立する複数のインク流路を高密度化した小形軽量構成のものが求められるようになった。
【0003】
かかるインクジェットプリンタにおいて、インクジェットヘッドからインクを飛翔させる手段としては、ノズル内に埋め込んだ発熱体に通電し、インク中にバブルを発生させたときの体積変化を利用するバブルジェット方式と、圧電体素子(圧電アクチュエータ)に通電して発生する圧力波を利用するインパクト方式が注目されている。
【0004】
図4はインクジェットプリンタの概略構成を示す側面図、図5は図4のインクジェットヘッドの構成例を示す側断面図である。
図4において、1はインクジェットヘッドユニット、2は記録媒体、3は図紙の厚さ方向に延在する記録媒体2送出用のプラテンローラ、4はインク溜まり、5はインクジェットヘッド1を図紙の厚さ方向に往復動させるキャリッジである。
【0005】
インクジェットヘッドユニット1を搭載したキャリッジ5は、図紙の厚さ方向に延在する一対のガイドシャフト6と7に案内されて往復動し、インクジェットヘッド1から記録媒体2に向けて飛翔させて消費するインクは、インク溜まり4から補給されるようになる。
【0006】
図5において、インクジェットヘッドユニット1に収容されたインパクト方式のインクジェットヘッド9は、流路板10と、振動板11と、上部電極13と下部電極14を備えた圧電アクチュエータ(電気機械変換素子)12とで構成されている。
【0007】
流路板10には、インク流路(圧力室)15と、インク流路15に連通してインク溜まり4からインクの供給を受けるインク供給路16と、インク流路15に連通して流路板10の下面に開口するインク飛翔用のノズル18が形成されている。
【0008】
振動板11は、流路板10に接合されインク流路15およびインク供給路16の上面を覆っており、圧電アクチュエータ12の下部電極14は、振動板11下のインク流路15と対向する位置に接合されている。
【0009】
流路板10にインク流路15等を形成する方法としては、ステンレス,ガラス等の基板にエッチングする方法が用いられ、このように形成された流路板10とステンレス等で形成された振動板11とは、拡散接合等の手法で接合されている。
【0010】
インク流路15に圧力を発生させる駆動部であり、上部電極13と下部電極14とが圧電層17を挟む構成の圧電アクチュエータ12は、振動板11の上面のインク流路15対向部分に接着剤で接合され、圧電アクチュエータ12への電圧印加のための信号線(図示せず)は、はんだ接続または圧着等の手法により、上部電極13と下部電極14に接続される。
【0011】
これまで、高精彩印刷が可能なインパクト方式のインクジェットヘッドとして、圧電アクチュエータには、圧電層の33モード歪(縦振動)を利用する方式と、圧電層の31モード歪(横振動)を利用する方式が知られている。
【0012】
33モード歪を利用する方式の圧電アクチュエータは、発生する圧力が大きいが変位量が小さいので、インクジェットヘッドに利用したときには電極と圧電層を多層化する等の工夫が必要になる。
【0013】
そのため、静電容量が大きくなってドライバに負担がかかる、多層化させる場合に電極パターンを形成した圧電セラミックスシートを積層し焼成させるため製造工程が増える、隣接するインク流路に不要な圧力を印加させ易い(クロストークが生じ易い)等の問題点があった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したように、高精彩化印刷と装置の小型化・軽量化を実現するには、小さな静電容量と大きなインク流路内圧力を両立させ、クロストークが生じ難い構成のインクジェットヘッドが要望されている。
【0015】
そのため、圧電層の31モード歪を利用した種々のインクジェットヘッドとその製造方法、例えばシリコン基板を選択的に異方性エッチングし、インク流路と振動板を同時に形成したもの(例えば特開平6−206317号公報参照)、シリコン熱酸化膜を内包する薄膜層(振動板)は支持体の異方性エッチングによって歪変形を可能とし、その薄膜層の歪変形はオリフィスプレートに設けた圧力室(インク流路)に収容された圧電素子によるもの(例えば特開平4−312852号公報参照)が提案されている。
【0016】
しかし、圧電層の31モード歪を利用した従来のインクジェットヘッドは、何れも前記要望に対し不十分であり、さらに安価で高性能なインクジェットヘッドが望まれていた。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、インクジェットヘッドの一層の高性能化と小型・軽量化を実現させることである。
【0018】
上記目的を達成する本発明の第1のインクジェットヘッドは、インク流路内のインクを圧電アクチュエータが加圧し、該インク流路に連通するノズルから該インクを飛翔させるインクジェットヘッドにおいて、厚さ方向に貫通するスリットが形成されたシリコン基板と、該シリコン基板の表面に被着し該スリットを覆う酸化シリコン膜と、該スリットに対応して該酸化シリコン膜の上に形成された圧電アクチュエータと、該スリットに連通するノズルが設けられ該シリコン基板の裏面に接合されるノズル板とを備え、前記圧電アクチュエータが、前記酸化シリコン膜に被着する下部電極と、該下部電極に積層された圧電層と、該圧電層に積層された上部電極にて構成され、該上部電極が該下部電極と同一素材で積層順序が逆の積層膜から形成されていることである。
【0019】
上記目的を達成する本発明の第2のインクジェットヘッドは、前記本発明の第1のインクジェットヘッドにおいて、前記下部電極がPt/Ti積層膜またはPt/IrO2 積層膜またはSrRuO3 /Pt/Ti積層膜または(La,Sr)CoO3 /Pt/Ti積層膜から形成されていることである。
【0020】
上記目的を達成する本発明の第3のインクジェットヘッドは、前記本発明の第1のインクジェットヘッドにおいて、前記圧電アクチュエータが、前記酸化シリコン膜に被着する下部電極と、該下部電極に積層された圧電層と、該圧電層に積層された上部電極にて構成され、該圧電層が0.5Pb(Ni1/3 Nb2/3 )O3 −0.35PbTiO3 −0.15PbZrO3 からなることである。
【0021】
上記目的を達成する本発明の第4のインクジェットヘッドは、前記本発明の第1のインクジェットヘッドにおいて、前記下部電極および上部電極の外部信号線接続部に、Au/Ni積層膜が被着されていることである。
【0022】
上記目的を達成する本発明の第1のインクジェットヘッドの製造方法は、インク流路内のインクを圧電アクチュエータが加圧し、該インク流路に連通するノズルから該インクを飛翔させるインクジェットヘッドの製造方法において、シリコン基板の表面に酸化シリコン膜を形成する工程と、該シリコン基板の裏面からの異方性エッチングによって、該シリコン基板を厚さ方向に貫通するスリットを該シリコン基板に形成する工程と、該スリットに対応するノズルが形成されたノズル板を該シリコン基板の裏面に接合させる工程と、該スリットに対応せしめ該酸化シリコン膜の上面に該圧電アクチュエータの下部電極を形成する工程と、該下部電極に重ねて該圧電アクチュエータの圧電層を形成する工程と、該圧電層に重ねて該圧電アクチュエータの上部電極を形成する工程を含み、該上部電極が該下部電極と同一素材で積層順序が逆の積層膜から形成されていることである。
【0023】
上記目的を達成する本発明の第2のインクジェットヘッドの製造方法は、前記本発明の第1のインクジェットヘッドの製造方法において、前記圧電層を、圧電粉末をゾル−ゲル溶液に分散させたゾル−ゲル法により前記下部電極の上に被着させた圧電膜から形成することである。
【0024】
上記目的を達成する本発明の第3のインクジェットヘッドの製造方法は、前記本発明の第2のインクジェットヘッドの製造方法において、前記ゾル−ゲル溶液に感光性溶液を使用し、前記圧電膜の露光現像処理によって前記圧電層を所要パターンに形成することである。
【0025】
上記目的を達成する本発明の第4のインクジェットヘッドの製造方法は、前記本発明の第2のインクジェットヘッドの製造方法において、前記ゾル−ゲル溶液に含まれる有機物の熱分解を含む熱処理で形成された前記圧電膜の組成が、0.5Pb(Ni1/3 Nb2/3 )O3 −0.35PbTiO3 −0.15PbZrO3 となるように、前記圧電粉末および該ゾル−ゲル溶液を調整して用いることである。
【0026】
上記目的を達成する本発明の第5のインクジェットヘッドの製造方法は、前記本発明の第2のインクジェットヘッドの製造方法において、前記圧電粉末に単分散粉末を用いることである。
【0027】
前記本発明の第1のインクジェットヘッドにおいて、酸化シリコン膜をシリコン基板に形成させたのちインク流路用のスリットを形成するまたは、シリコン基板の表面に酸化シリコン膜形成層を残してインク流路用スリットを形成してから該酸化シリコン膜形成層の酸化処理を行うことで、シリコン基板と酸化シリコン膜および酸化シリコン膜と圧電アクチュエータ、即ちシリコン基板に酸化シリコン膜と圧電アクチュエータの一体化形成が可能である。
【0028】
従って、本発明の第1のインクジェットヘッドは、インク流路に対する圧電アクチュエータの位置決めが容易となり、インクジェットプリンタの高精彩印刷,小型化,軽量化が可能になる。
【0029】
前記本発明の第2のインクジェットヘッドにおいて、下部電極および上部電極をPtとTiの積層膜から形成したものは、従来の電極形成プロセスを利用できる利点があり、PtとIrO2 の積層膜から形成したものは、圧電層に対する反応性が弱い(圧電層に対して安定である)という利点があり、SrRuO3 とPtとTiの積層膜または(La,Sr)CoO3 とPtとTiの積層膜から形成したものは、SrRuO3 または(La,Sr)CoO3 の結晶構造が圧電層のそれに似ており、圧電層に対する整合性に優れるという利点がある。
【0030】
前記本発明の第3のインクジェットヘッドにおいて、0.5Pb(Ni1/3 Nb2/3 )O3 −0.35PbTiO3 −0.15PbZrO3 にてなる圧電層は、31モードの圧電特性に優れる。そのため、圧電層の31モード歪を利用するインクジェットヘッドの高性能化に有利である。
【0031】
前記本発明の第4のインクジェットヘッドにおいて、Au/Ni層は、電極とその電極に電圧を印加する信号線とのはんだ接続に有効である。即ち、圧電アクチュエータの信号線ははんだを使用して容易に接続できるようになる。
【0032】
前記本発明の第1のインクジェットヘッドの製造方法は、本発明による前記第1のインクジェットヘッドに適応する製造方法であり、シリコン基板と酸化シリコン膜および酸化シリコン膜と圧電アクチュエータを一体化させて形成する。
【0033】
前記本発明の第2のインクジェットヘッドの製造方法は、前記本発明の第1のインクジェットヘッドの製造方法において、前記第1のインクジェットヘッドの圧電層に適応するゾル−ゲル法で形成させることの提案である。
【0034】
前記本発明の第3のインクジェットヘッドの製造方法は、前記本発明の第2のインクジェットヘッドの製造方法において、前記第1のインクジェットヘッドの圧電層のパターン形成を容易化する提案である。
【0035】
前記本発明の第4のインクジェットヘッドの製造方法は、前記本発明の第2のインクジェットヘッドの製造方法において、圧電層の組成に関する提案であり、31モード歪の圧電特性に優れた圧電層が得られるようになる。
【0036】
前記本発明の第5のインクジェットヘッドの製造方法は、前記本発明の第2のインクジェットヘッドの製造方法において、前記圧電粉末に単分散粉末を用いることで、均一組成の圧電層が得られるようになる。
【0037】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施例によるインクジェットヘッドの概略構成の説明図、図2は本発明の実施例によるインクジェットヘッドの製造方法の説明図(その1)、図3は本発明の実施例によるインクジェットヘッドの製造方法の説明図(その2)である。
【0038】
図1において、(a)はインク流路を横切る方向に切断したインクジェットヘッドの断面図、(b)はインク流路の長さ方向に切断したインクジェットヘッドの断面図である。
【0039】
簡略化して示す図1において、従来のインクジェットヘッド9に相当するインクジェットヘッド30は、複数のインク流路33を形成したシリコン基板31と、一部分が振動板となる酸化シリコン膜32と、複数のノズル35を形成したノズル板34と、圧電アクチュエータ36にてなる。
【0040】
シリコン基板31の表面に被着する酸化シリコン膜32は、インク流路33を形成する前のシリコン基板31の熱酸化等の手法で、シリコン基板31と一体化されるように形成されており、シリコン基板31の複数のインク流路33のそれぞれにインクを供給するインク供給穴41が形成されている。
【0041】
シリコン等にてなるノズル板34は、インク流路33に連通するノズル35を形成したのち、インク流路33が形成されたシリコン基板31の下面に、拡散接合等の手法で接合層40を介して接合する。
【0042】
圧電アクチュエータ36は、酸化シリコン膜32の上面に被着する下部電極(共通電極)37と、複数のインク流路33のそれぞれに対応し下部電極37の上に形成された圧電層38と、複数の圧電層38のそれぞれの上に形成された上部電極39にて構成され、下部電極37と上部電極39に所定の電圧を印加する信号線(図示せず)は、はんだ付け等の手法によって、下部電極37と上部電極39に接続させることになる。
【0043】
かかるインクジェットヘッド30による印字は、前述した従来のインクジェットプリンタのそれと同様に、即ちプラテン3に沿って移動するインクジェットヘッド9にインクジェットヘッド30を搭載し、圧電アクチュエータ36の所定の上部電極39に所定時機,所定時間だけ電圧を印加する。
【0044】
すると、電圧を印加した上部電極39が対応する部分で酸化シリコン膜32はインク流路33側に撓み、撓みを生じたインク流路33内圧力が上昇すると、そのインク流路33に連通するノズル35からインクが飛翔し、その飛翔によって消費したインクは、インク供給穴41からインク流路33内に補給される。
【0045】
図2(a)において、適当な厚さ例えば厚さ1mmのシリコン基板31の表面に酸化シリコン膜(SiO2)32を形成させる。厚さが500nm程度の酸化シリコン膜32は、TEOS−CVD法によってシリコン基板31の表面のみに形成するまたは、熱酸化法によってシリコン基板31の全面に形成させたのち、少なくとも裏面に形成された酸化膜を研磨によって除去する。従って、シリコン基板31と酸化シリコン膜32は一体化されている。
【0046】
図2(b)において、上面に酸化シリコン膜32が被着形成されたシリコン基板31には、裏面からの通常の異方性エッチングによって、シリコン基板31を厚さ方向に貫通する複数のスリット33′を形成する。
【0047】
シリコン基板31の裏面の所定部が露呈するレジストパターンを形成し穿設されたスリット33′は、所定部における酸化シリコン膜32の裏面を露呈させることになり、その裏面が露呈する部分の酸化シリコン膜32が振動部となる。
【0048】
なお、スリット33′が形成されたシリコン基板31の表面に、スリット33′を覆う酸化シリコン膜32を形成する他の方法として、スリット33′形成後に、酸化シリコン膜32を形成する方法もある。即ち、シリコン基板31の表層部を残す溝をシリコン基板31の裏面からエッチングによって形成したのち、その表層部を熱酸化処理して酸化シリコン膜32を形成させる。
【0049】
図2(c)において、スリット33′が形成されたシリコン基板31の裏面に、ノズル板34を接合する。厚さが0.2mm程度であり、例えばシリコンにてなるノズル板34には、複数のスリット33′のそれぞれに対応するノズル35があけられており、シリコン基板31とノズル板34は接着剤で接合させる方法もあるが、本発明では拡散結合(熱圧着)により形成される接合層40によって接合することを推奨する。
【0050】
そして、酸化シリコン膜32が形成されたシリコン基板31の下面にノズル板34を接合し、インク流路33、即ちスリット33′の上面と下面が酸化シリコン膜32とノズル板34によって覆われたインク流路33が構成されるようになる。
【0051】
図2(d)において、酸化シリコン膜32の上に下部電極37を形成させる。例えばスパッタリングにより形成し厚さが100nmの下部電極37は、複数の上部電極39に対する共通電極であり、酸化シリコン膜32の全面またはマスクを利用した所定領域に限定し形成させることになる。
【0052】
下部電極37としては、従来のそれと同じであるPt/Tiの2層構成または、Pt/IrO2 の2層構成または、SrRuO3 /Pt/Tiの3層構成または、(La,Sr)CoO3 /Pt/Tiの3層構成とする。
【0053】
Pt/Tiの下部電極37は、従来の製造プロセスを継承できる利点があり、Pt/IrO2 の下部電極37は、下部電極37の上に被着する圧電部材に対する反応性が弱いという利点があり、SrRuO3 /Pt/Tiおよび(La,Sr)CoO3 /Pt/Tiの下部電極37は、SrRuO3 および(La,Sr)CoO3 の結晶構造が、下部電極37の上に被着する圧電部材のそれに類似し整合性に優れる利点がある。
【0054】
さらに、前記積層構成の下部電極37において、圧電アクチュエータ36を駆動させる信号線の接続部にAu/Ni層を被着させると、下部電極37と該信号線との接続にはんだが使用できるようになる。
【0055】
図2(e)において、下部電極37の上に厚さが1〜3μm程度の圧電膜380を被着させる。圧電層38を形成するための圧電膜380は、従来の圧電層17と同じPZTで形成してもよいが、本発明では0.5Pb(Ni1/3 Nb2/3 )O3 −0.35PbTiO3 −0.15PbZrO3 を推奨する。
【0056】
かかる圧電膜380は、化学めっき,融液エピタキシー法等の従来技術によっても形成できるが、本発明ではスピンコーターを利用したゾル−ゲル法を推奨する。
【0057】
組成が0.5Pb(Ni1/3 Nb2/3 )O3 −0.35PbTiO3 −0.15PbZrO3 の圧電膜380をゾル−ゲル法で形成するには、Pb,Ni,Nb,Ti,Zrを含む有機金属溶液(エトキシド)を使用し、乾燥(例えば150℃で30分)・有機物の熱分解(例えば400℃で30分)・アニール(例えば600℃〜800℃で30分〜60分)の熱処理後の組成が、0.5Pb(Ni1/3 Nb2/3 )O3 −0.35PbTiO3 −0.15PbZrO3 となるように調整されたゾル−ゲル溶液、例えばPb(CH3 COO)2を1.O5mol比,Ti(OC2 5)4 を0.35mol比,Zr(OC2 5)4 を0.15mol比,Nb(OC2 5)4 を0.33mol比,Ni(CH3 COO)2を0.17mol比とし、Pbを5mol%過剰に添加したゾル−ゲル溶液に圧電粉末を分散させたもの、特に圧電粉末としては例えば粒径が0.1μmに揃った単分散粉末を用いることが望ましい。
【0058】
そして、ゾル−ゲル法による圧電膜380はスピンコーターを使用することになり、厚さが1〜3μm程度の圧電膜380はスピンコートを2〜3回程度繰り返すことになる。
【0059】
図3(a)において、圧電膜380の不要部を除去して圧電層38をパターン形成し、パターン形成された圧電層38は、乾燥・有機物の熱分解除去・アニールの熱処理、例えば150℃で30分程度加熱する乾燥処理と、400℃で30分程度加熱する有機物熱分解処理と、600℃〜800℃で30分〜60分加熱するアニール処理を施すことになる。
【0060】
かかる圧電層38のパターン形成方法としては、マスクを使用して圧電膜380の不要部分を除去(溶去)させてもよいが、UV硬化型レジストを含む溶液で圧電膜380を形成すれば、その露光現像処理で圧電層38をパターン形成させることができる。
【0061】
図3(b)において、圧電層38の上にスパッタプロセスによる上部電極39を形成する。例えば厚さが100nmの上部電極39は、複数の圧電層38を個々に駆動させる電極であり、本実施例においてスパッタリング装置を使用した上部電極39は、上部電極39が被着してはならない領域をマスク(図示せず)で覆い、スパッタリング後にそのマスクを除去する方法で形成している。
【0062】
上部電極39の材質としては、従来のそれと同じであるTi/Ptの2層構成または、IrO2 /Ptの2層構成またはTi/Pt/SrRuO3 の3層構成またはTi/Pt/(La,Sr)CoO3 の3層構成とする。
【0063】
Ti/Ptの上部電極39は、従来の製造プロセスを継承する利点があり、IrO2 /Ptの上部電極39は、上部電極39を被着する圧電部材に対する反応性が弱いという利点があり、Ti/Pt/SrRuO3 とTi/Pt/(La,Sr)CoO3 の上部電極39は、結晶構造が圧電層38のそれに類似し整合性に優れる利点がある。
【0064】
さらに、複層構成の上部電極39において、その最上層にAu/Ni層を被着させると、その上部電極39に所定電圧を印加する信号線の接続に、はんだが利用できるようになる。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によるインクジェットヘッドとその製造方法は、 シリコン基板上に酸化シリコン膜と圧電アクチュエータとを順次形成させたまたは形成させる構成であり、インク流路に対する圧電アクチュエータの位置決めが容易かつ正確となり、インクジェットプリンタの高精彩印刷,小型化,軽量化が可能になる。
【0066】
そして、前記本発明によるインクジェットヘッドとその製造方法において、圧電アクチュエータの下部電極および上部電極をPtとTiの積層膜から形成した構成は、従来の電極形成プロセスを利用できる利点があり、PtとIrO2 の積層膜から形成したものは、圧電層に対する反応性が弱い(圧電層に対して安定である)という利点があり、SrRuO3 とPtとTiの積層膜または(La,Sr)CoO3 とPtとTiの積層膜から形成したものは、SrRuO3 または(La,Sr)CoO3 の結晶構造が圧電層のそれに似ており、圧電層に対する整合性に優れるという効果が得られる。
【0067】
さらに、前記本発明によるインクジェットヘッドとその製造方法において、圧電層を0.5Pb(Ni1/3 Nb2/3 )O3 −0.35PbTiO3 −0.15PbZrO3 とした構成は、31モード歪を利用したインクジェットヘッドを高性能化せしめ、上部電極と下部電極の信号線接続部にAu/Ni層を被着した構成は、圧電アクチュエータの信号線がはんだを使用して容易に接続できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例によるインクジェットヘッドの概略構成の説明図である。
【図2】 本発明の実施例によるインクジェットヘッドの製造方法の説明図(その1)である。
【図3】 本発明の実施例によるインクジェットヘッドの製造方法の説明図(その2)である。
【図4】 インクジェットプリンタの概略構成を示す側面図である。
【図5】 図4のインクジェットヘッドの構成例を示す側断面図である。
【符号の説明】
30 インクジェットヘッド
31 シリコン基板
32 酸化シリコン膜
33 インク流路
33′ インク流路用のスリット
34 ノズル板
35 ノズル
36 圧電アクチュエータ
37 下部電極
38 圧電層
39 上部電極
380 圧電膜

Claims (9)

  1. インク流路内のインクを圧電アクチュエータが加圧し、該インク流路に連通するノズルから該インクを飛翔させるインクジェットヘッドにおいて、厚さ方向に貫通するスリットが形成されたシリコン基板と、該シリコン基板の表面に被着して該スリットを覆う酸化シリコン膜と、該スリットに対応して該酸化シリコン膜の上に形成された圧電アクチュエータと、該スリットに連通するノズルが設けられ該シリコン基板の裏面に接合されるノズル板とを備え
    前記圧電アクチュエータが、前記酸化シリコン膜に被着する下部電極と、該下部電極に積層された圧電層と、該圧電層に積層された上部電極にて構成され、該上部電極が該下部電極と同一素材で積層順序が逆の積層膜から形成されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記下部電極がPt/Ti積層膜またはPt/IrO2 積層膜またはSrRuO3 /Pt/Ti積層膜または(La,Sr)CoO3 /Pt/Ti積層膜から形成されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記圧電アクチュエータが、前記酸化シリコン膜に被着する下部電極と、該下部電極に積層された圧電層と、該圧電層に積層された上部電極にて構成され、該圧電層が0.5Pb(Ni1/3 Nb2/3 )O3 −0.35PbTiO3 −0.15PbZrO3 からなることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  4. 前記圧電アクチュエータが、前記酸化シリコン膜に被着する下部電極と、該下部電極に積層された圧電層と、該圧電層に積層された上部電極にて構成され、該下部電極および上部電極の外部信号線接続部に、Au/Ni積層膜が被着されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
  5. インク流路内のインクを圧電アクチュエータが加圧し、該インク流路に連通するノズルから該インクを飛翔させるインクジェットヘッドの製造方法において、シリコン基板の表面に酸化シリコン膜を形成する工程と、該シリコン基板の裏面からの異方性エッチングによって、該シリコン基板を厚さ方向に貫通するスリットを該シリコン基板に形成する工程と、該スリットに対応するノズルが形成されたノズル板を該シリコン基板の裏面に接合させる工程と、該圧電アクチュエータの下部電極を該酸化シリコン膜の上に形成する工程と、該スリットに対応する該圧電アクチュエータの圧電層を該下部電極に重ねて形成する工程と、該圧電アクチュエータの上部電極を該圧電層に重ねて形成する工程を含み、該上部電極が該下部電極と同一素材で積層順序が逆の積層膜から形成されていることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
  6. 請求項5記載のインクジェットヘッドの製造方法において、前記圧電層を、圧電粉末をゾル−ゲル溶液に分散させたゾル−ゲル法により前記下部電極の上に被着させた圧電膜から形成することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
  7. 請求項6記載のインクジェットヘッドの製造方法において、前記ゾル−ゲル溶液に感光性溶液を使用し、前記圧電膜の露光現像処理によって前記圧電層を所要パターンに形成することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
  8. 請求項6記載のインクジェットヘッドの製造方法において、前記ゾル−ゲル溶液に含まれる有機物の熱分解を含む熱処理で形成された前記圧電膜の組成が、0.5Pb(Ni1/3 Nb2/3 )O3 −0.35PbTiO3−0.15PbZrO3 となるように、前記圧電粉末および該ゾル−ゲル溶液を調整して用いることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
  9. 請求項6記載のインクジェットヘッドの製造方法において、前記圧電粉末に単分散粉末を用いることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
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