JP4041926B2 - 電解コンデンサおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解コンデンサのコンデンサ素子の製造に係り、特に陽極箔および陰極箔と共に重ね合せて巻回されるセパレータの構造を改善することにより、電解液の含浸性を向上すると共に電解コンデンサの電気的特性を安定化させることができる電解コンデンサおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般の電解コンデンサ、特にアルミ電解コンデンサは、図4に示すように、陽極箔10と陰極箔12との間に、セパレータ14として電解紙を介在させて巻回形成してコンデンサ素子16を作成し、このコンデンサ素子を液状の電解液中に浸漬して電解質を含浸させ、これを所要のケースに収納すると共に封口部材により封止した構成からなる。
【0003】
電解液としては、通常エチレングリコール(EG)、ジメチルホルムアルデヒド(DMF)またはγ−ブチロラクトン(GBL)等を溶媒とし、これらの溶媒に硼酸やアジピン酸、アゼライン酸またはこれらのアンモニウム塩を溶解したものを使用し、この電解液をコンデンサ素子16の巻回された電極箔の幅方向の両端から電解液を浸透させて作成している。
【0004】
このような従来の電解コンデンサは、前記陽極箔と陰極箔との間にセパレータとして電解紙を介在させて巻回してコンデンサ素子を形成した後に、電解液を含浸させているため、コンデンサ素子に対する電解液の浸透が不十分であると、コンデンサとしてのインピーダンス特性、特に等価直列抵抗(ESR)が高くなり易く、また使用中において経時変化する難点がある。
【0005】
そこで、これらの問題点に対し、従来においては、例えば(1)真空含浸や高加圧含浸のような高価な含浸手段を使用したり、(2)吸水(吸電解液)性の良好な高価な電解紙を使用する、すなわち電解紙の原材料を通常の木材クラフトパルプから、麻・エスパルトパルプに変更する手段、あるいは乾燥電解紙に印刻二次加工を施す手段を使用することにより、十分な含浸性を確保するような努力がなされてきた。
【0006】
しかしながら、前記従来技術において、前記の手段(1)によれば、製造装置等の設備費が嵩む難点があり、また前記の手段(2)によれば、コンデンサ素子におけるショート不良率が増大する等の2次的問題をさらに生じる難点がある。
【0007】
しかるに、機械漉きの紙(電解紙)は、抄造方向に繊維が配列することが一般的に知られている。この場合の配列は、抄造機の条件、すなわち(a)スラリの流動方向、(b)スラリの流れと金網の速度差、(c)乾燥時の条件(拘束の方法、張力、温度等)による幅方向の収縮、(d)構成繊維形状等、により変化するが、多くの場合繊維の配向は概ね抄紙方向と同一となり、電解紙は長手方向にロール状に巻き取られる。
【0008】
従って、コンデンサ素子は、前記抄造機によって製造されたロール状の電解紙を、長手方向に巻き戻して使用するため、巻回方向と抄紙繊維配列方向は同一となる。
【0009】
このことは、電解液の含浸作用に大きく影響する。すなわち、コンデンサ素子は、電極箔とセパレータとを巻回して形成されているため、電解液の浸透は前記コンデンサ素子の幅方向両端から浸透し、巻回方向とは90°向きが異なった軸方向に進むからである。
【0010】
なお、この場合、電解紙単体での吸水性は、抄紙繊維配列方向を長手方向とし、それと直角方向を幅方向とした時の長手/幅方向の吸水性は、約2:1であり、電解紙の長手、幅をコンデンサ素子に当て嵌めると、巻回方向と抄紙繊維配列方向は同一であるから、コンデンサ素子は電解紙の幅方向すなわち吸水性の劣る方向より含浸していることになる。従って、例えばコンデンサ素子が軸方向に長く長円柱形の場合、電解液の含浸不足となって、静電容量やtanδ(誘電損失)等の電気的特性に悪影響を及ぼすという問題点を有している。
【0011】
そこで、従来において、この種の電解コンデンサの製造に際し、コンデンサ素子に対する電解液の含浸性の向上とtanδ特性の優れた電解コンデンサを得ることを目的として、図5に示すように、アルミ箔からなる陽極箔10および陰極箔12と、これら陽極箔と陰極箔との間に介在させたスペーサ14とを巻回してコンデンサ素子16とした電解コンデンサにおいて、前記スペーサ14にはその片面に幅方向の溝13を設け、この溝13を設けた片面を陽極箔10に接するように配置することにより、電解液を含浸させる際に、前記スペーサに設けた溝によって生じる毛管現象によって容易に含浸できると共に保持されることにより、陽極箔に形成されたエッチングビットヘの浸透も容易となり、tanδ特性を改善することができるようにした電解コンデンサが提案されている(実公平2−15315号公報)。
【0012】
また、同様に構成する電解コンデンサにおいて、前記スペーサ14の片面に設ける溝15を、図6に示すように、互いに交差するように形成することにより、前記と同様に電解液の含浸性を向上させてtanδ特性を改善することができると共に、特に含浸時間の短縮を図ることができるようにした電解コンデンサも提案されている(実公平2−17473号公報)。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来技術における電解コンデンサの製造においては、スペーサとして、例えば幅7〜14mm×厚さ50μmのマニラ紙やクラフト紙を使用し、これに深さ25μm×幅30μmの溝を0.33mmの間隔で成形するものであり、溝の成形技術が極めて細密となると共に、成形装置も高精度のものが必要となり、スペーサの製造のために多大な設備費を要するばかりでなく、コンデンサ素子としての製造コストも増大する難点がある。
【0014】
そこで、本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、コンデンサ素子の軸方向、すなわち電解液の浸透方向と、同一方向に毛管現象が機能するように、抄紙繊維配列方向を設定した電解紙ないし化学繊維紙等からなる低密度のセパレータを、従来の陽極箔と陰極箔との間に介挿する抄紙繊維配列方向を長手方向とした電解紙ないし化学繊維紙等からなるセパレータに対し、部分的に挿入配置して、これらを巻回してコンデンサ素子を構成することにより、前記低密度のセパレータに形成される空隙によって生じる毛管現象により、電解液の含浸性を著しく向上させることができると共に、静電容量やtanδ等の電気的特性に優れた電解コンデンサを容易かつ低コストに製造することができることを突き止めた。
【0015】
また、従来の陽極箔と陰極箔との間に介挿する電解紙ないし化学繊維紙等からなるセパレータに対し、前記低密度のセパレータを部分的に挿入配置する手段としては、抄紙繊維配列方向を長手方向とした電解紙等からなるセパレータの抄造に際して、この抄造時に発生する繊維間結合、例えば繊維間水素結合、ファンデルワールズ結合等を利用して、コンデンサ素子の軸方向に抄紙繊維配列方向を設定した電解紙等からなる低密度のセパレータを、適当間隔離間させて部分的にかつ容易に形成することができることが確認された。
【0016】
従って、本発明の目的は、セパレータの構造を改善することにより、コンデンサ素子に対する電解液の含浸性の向上と共に、静電容量やtanδ等の電気的特性に優れ、しかも低コストに製造することができる電解コンデンサおよびその製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明に係る電解コンデンサは、陽極箔及び陰極箔としての電極箔に、それぞれタブ端子またはリード端子を取り付けた後、適宜セパレータを介して重ね合わせ巻回することによりコンデンサ素子を形成し、さらに電解液を含浸させて構成してなる電解コンデンサにおいて、抄紙繊維配列方向を長手方向に設定した電解紙ないし化学繊維紙等からなる長手方向セパレータと、前記長手方向セパレータに対して部分的に挿入配置される抄紙繊維配列方向をコンデンサ素子の軸方向に設定した電解紙ないし化学繊維紙等からなる低密度の挿入配置軸方向セパレータとを有し、これら前記長手方向セパレータと前記挿入配置軸方向セパレータと前記電極箔とを共に巻回して、軸方向へ毛管現象により電解液の含浸性を向上させるとともに長手方向にも電解液の浸透拡散を迅速に達成するコンデンサ素子を構成することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る電解コンデンサの製造方法は、陽極箔及び陰極箔としての電極箔に、それぞれタブ端子またはリード端子を取り付けた後、適宜セパレータを介して重ね合わせ巻回することによりコンデンサ素子を形成し、さらに電解液を含浸させて構成してなる電解コンデンサの製造方法において、抄紙繊維配列方向を長手方向に設定した電解紙ないし化学繊維紙等からなる長手方向セパレータの抄造に際して、前記長手方向セパレータに対して部分的に挿入配置される抄紙繊維配列方向をコンデンサ素子の軸方向に設定した電解紙ないし化学繊維紙等からなる低密度の挿入配置軸方向セパレータとを有し、これら前記長手方向セパレータと前記挿入配置軸方向セパレータと前記電極箔とを共に巻回して、軸方向へ毛管現象により電解液の含浸性を向上させるとともに長手方向にも電解液の浸透拡散を迅速に達成するコンデンサ素子を抄造することを特徴とする。
【0019】
【実施例】
次に、本発明に係る電解コンデンサおよびその製造方法の実施例につき、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0020】
図1ないし図3は、本発明に係る電解コンデンサおよびその製造方法の実施例を示すものであって、図1は電解コンデンサのコンデンサ素子を形成するための電極箔とセパレータとの構成を示す斜視図であり、図2は図1に示す電解コンデンサのコンデンサ素子を形成する電極箔とセパレータとの構成配置例を示す概略平面図であり、図3は図2に示す電解コンデンサのコンデンサ素子における電解液の浸透ないし拡散状態を示す説明図である。
【0021】
図1において、参照符号20は陽極箔、22は陰極箔、24は電解紙ないし化学繊維紙等からなるセパレータを示し、前記陽極箔20と陰極箔22との間にセパレータ24を介在させて巻回してコンデンサ素子26を形成したものである。なお、参照符号28a、28bは前記陽極箔20と陰極箔22とにそれぞれ予め接続されたタブ端子を示す(図2参照)。
【0022】
しかるに、本実施例において、前記コンデンサ素子26を形成する際、前記電解紙ないし化学繊維紙等からなるセパレータ24の表面に、電解紙ないし化学繊維紙等からなる低密度のセパレータ30を、適当間隔離間させて部分的に挿入配置したことを特徴とするものである。
【0023】
この場合、前記セパレータ24に対する低密度のセパレータ30の挿入配置に際しては、図2に示すように、抄紙繊維配列方向を長手方向に設定した電解紙ないし化学繊維紙等からなるセパレータ24に対し、抄紙繊維配列方向をコンデンサ素子26の軸方向に設定した電解紙ないし化学繊維紙等からなる低密度のセパレータ30を、部分的に挿入配置して、これらを前記陽極箔20および陰極箔22とからなる電極箔と共に巻回してコンデンサ素子を構成することができる。
【0024】
すなわち、抄紙繊維配列方向を長手方向に設定した電解紙ないし化学繊維紙等からなるセパレータ24の抄造に際して、この抄造時に発生する繊維間結合、例えば繊維間水素結合、ファンデルワールズ結合等を利用して、コンデンサ素子26の軸方向に抄紙繊維配列方向を設定した電解紙等からなる低密度のセパレータ30を、適当間隔離間させて部分的に形成することができる。
【0025】
このように構成された低密度のセパレータ30を設けたセパレータ24は、陽極箔20と陰極箔22との間に介在させて巻回し、コンデンサ素子26を形成する(図1参照)。そして、このように形成されたコンデンサ素子26に対し、電解液を含浸するに際しては、図3に示すように、前記コンデンサ素子26の軸方向と同一方向に抄紙繊維配列方向を設定した電解紙等からなる低密度のセパレータ30において、前記繊維配列方向に毛管現象を生じて(矢印A参照)、コンデンサ素子26内部への電解液の含浸性を著しく向上することができると共に、抄紙繊維配列方向を長手方向に設定した電解紙等からなるセパレータ24に対しても、電解液の浸透拡散(矢印B参照)を迅速に達成することが可能となる。
【0026】
従って、このように構成される電解コンデンサは、電解液として高粘性のものも利用することができるばかりでなく、製造時間の短縮と共に製造コストを低減することができ、静電容量やtanδ等の電気的特性を安定化することができる等の多くの優れた利点が得られる。
【0027】
以上、本発明の好適な実施例についてそれぞれ説明したが、本発明は前記実施例に限定されることなく、本発明の精神を逸脱しない範囲内において、多くの設計変更をすることができる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る電解コンデンサによれば、陽極箔及び陰極箔としての電極箔に、それぞれタブ端子またはリード端子を取り付けた後、適宜セパレータを介して重ね合わせ巻回することによりコンデンサ素子を形成し、さらに電解液を含浸させて構成してなる電解コンデンサにおいて、抄紙繊維配列方向を長手方向に設定した電解紙ないし化学繊維紙等からなる長手方向セパレータと、前記長手方向セパレータに対して部分的に挿入配置される抄紙繊維配列方向をコンデンサ素子の軸方向に設定した電解紙ないし化学繊維紙等からなる低密度の挿入配置軸方向セパレータとを有し、これら前記長手方向セパレータと前記挿入配置軸方向セパレータと前記電極箔とを共に巻回して、軸方向へ毛管現象により電解液の含浸性を向上させるとともに長手方向にも電解液の浸透拡散を迅速に達成するコンデンサ素子を構成することにより、電解液の含浸性を向上すると共に電解コンデンサの電気的特性を安定化させることができる電解コンデンサを容易に得ることができる。
【0029】
また、前記構成からなる電解コンデンサを製造するに際しては、陽極箔及び陰極箔としての電極箔に、それぞれタブ端子またはリード端子を取り付けた後、適宜セパレータを介して重ね合わせ巻回することによりコンデンサ素子を形成し、さらに電解液を含浸させて構成してなる電解コンデンサの製造方法において、抄紙繊維配列方向を長手方向に設定した電解紙ないし化学繊維紙等からなる長手方向セパレータの抄造に際して、前記長手方向セパレータに対して部分的に挿入配置される抄紙繊維配列方向をコンデンサ素子の軸方向に設定した電解紙ないし化学繊維紙等からなる低密度の挿入配置軸方向セパレータとを有し、これら前記長手方向セパレータと前記挿入配置軸方向セパレータと前記電極箔とを共に巻回して、軸方向へ毛管現象により電解液の含浸性を向上させるとともに長手方向にも電解液の浸透拡散を迅速に達成するコンデンサ素子を抄造する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電解コンデンサの製造方法を実施するコンデンサ素子の電極箔とセパレータとの構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す電解コンデンサのコンデンサ素子を形成する電極箔とセパレータとの構成配置例を示す概略平面図である。
【図3】図2に示す電解コンデンサのコンデンサ素子における電解液の浸透ないし拡散状態を示す説明図である。
【図4】従来の電解コンデンサにおけるコンデンサ素子の電極箔とセパレータとの構成例を示す概略斜視図である。
【図5】従来におけるコンデンサ素子の電極箔とセパレータとの構成の改良案を示す概略斜視図である。
【図6】従来におけるコンデンサ素子の電極箔とセパレータとの構成の別の改良案を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
20 陽極箔
22 陰極箔
24 セパレータ
26 コンデンサ素子
28a、28b タブ端子
30 低密度のセパレータ
Claims (2)
- 陽極箔及び陰極箔としての電極箔に、それぞれタブ端子またはリード端子を取り付けた後、適宜セパレータを介して重ね合わせ巻回することによりコンデンサ素子を形成し、さらに電解液を含浸させて構成してなる電解コンデンサにおいて、
抄紙繊維配列方向を長手方向に設定した電解紙ないし化学繊維紙等からなる長手方向セパレータと、
前記長手方向セパレータに対して部分的に挿入配置される抄紙繊維配列方向をコンデンサ素子の軸方向に設定した電解紙ないし化学繊維紙等からなる低密度の挿入配置軸方向セパレータとを有し、
これら前記長手方向セパレータと前記挿入配置軸方向セパレータと前記電極箔とを共に巻回して、軸方向へ毛管現象により電解液の含浸性を向上させるとともに長手方向にも電解液の浸透拡散を迅速に達成するコンデンサ素子を構成することを特徴とする電解コンデンサ。 - 陽極箔及び陰極箔としての電極箔に、それぞれタブ端子またはリード端子を取り付けた後、適宜セパレータを介して重ね合わせ巻回することによりコンデンサ素子を形成し、さらに電解液を含浸させて構成してなる電解コンデンサの製造方法において、
抄紙繊維配列方向を長手方向に設定した電解紙ないし化学繊維紙等からなる長手方向セパレータの抄造に際して、
前記長手方向セパレータに対して部分的に挿入配置される抄紙繊維配列方向をコンデンサ素子の軸方向に設定した電解紙ないし化学繊維紙等からなる低密度の挿入配置軸方向セパレータとを有し、
これら前記長手方向セパレータと前記挿入配置軸方向セパレータと前記電極箔とを共に巻回して、軸方向へ毛管現象により電解液の含浸性を向上させるとともに長手方向にも電解液の浸透拡散を迅速に達成するコンデンサ素子を抄造することを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
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1997
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JPH11145003A (ja) | 1999-05-28 |
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