JP4041180B2 - ハイドロニューマチック・サスペンションに使用される球体 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車用のハイドロニューマティック・サスペンション（液体および気体懸架方式）に使用される球体、特に空気入り球体に関する。
【０００２】
【従来の技術】
図１は、従来の液体および気体用の球体を右側半分に軸線方向の横断面として示した概略図である。
【０００３】
この従来の球体は、互いに溶接されて１体部品として形成された上部１ａおよび下部１ｂを有する例えば金属で作られた堅固な外側ジャケット１と、これらの上部および下部の間の境界領域１ｃにて前記ジャケットの内部に取り付けられて、流体、例えばガスを封入した上側室３と、流体、例えば液体、を収容するように設計された下側室４とを区分する高可撓性の変形可能な膜部材２とを含んで構成されている。
【０００４】
上側室３はジャケット１の頂部に取り付けられた膨張用ねじ５を通して注入される圧縮ガスを収容するように意図されており、膨張用ねじ５はジャケット１の上部１ａの内側に収容されている球形キャップ形状の位置保持部材６にねじ込まれている。
【０００５】
下側室４は、連結用端部片７によって例えば液体回路（図示せず）に連結される。
【０００６】
膜部材はジャケット１の内部で、連結用端部材７と接触する最降下位置と、膨張用スクリュー５と接触することになる最上昇位置との間で変位できる。
【０００７】
膜部材２は最下降位置においてほぼ半球形状をしており、赤道周縁２ａは半径方向内方へ突出した膨らみ部分を有し、この膨らみ部分は前述した境界領域１ｃにて環状カラー８を把持してこの環状カラー８に対する膜部材の取付けを保証している。
【０００８】
膜部材２は、最降下位置において境界領域１ｃから球体の軸線Ａに平行なＤ方向へ部分的に延在するような態様で環状カラー８に取り付けられている。
【０００９】
膜部材２は中央部分２ｂが厚く、その部分に円板形状プレート９と一体形成された取付け用突出部９ａが埋め込まれており、円板形状プレート９はこの強化された中央部分の下側に取り付けられて最降下位置で連結用端部材７と接触するように設計されている。
【００１０】
この形式の球体はマクファーソン式懸架装置のばねの代替装置として既に使用されており、懸架装置用スラスター（thrustor) を作動させるために使用される流体はこの球体の下部と流体連通しており、それ故に車体が降下すると流体が下側室４の中へ押し戻されて、膜部材２に関して反対側の上側室３に封入されているガスを圧縮するのであり、このようにガスが圧縮されて移動するのは、車輪がばね運動する間に流体が懸架装置の流体圧回路へ戻ることを保証する。
【００１１】
しかしながら、この形式の球体では、膜部材は最下降位置と最上昇位置との間を移動する間に大きな機械応力を受け、また繰り返し引っ張り応力を受け、この結果として膜部材は徐々に亀裂を生じて液密性を損なうことになり、しかも定期的に球体の上側室を再び膨らませることが必要となる。
【００１２】
更に、最下降位置から最上昇位置へ移動する間、膜部材の湾曲が著しく変化し、この結果としていわゆる「膨れ」（blistering）現象が生じる。
【００１３】
図１は更にまた、膜部材２が最上昇位置にあるとき、上側室に相当大きい非機能体積が残ることを示している。
【００１４】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明は、前述した問題を解消すること、および例えば自動車用のハイドロニューマティック・サスペンションに使用されて膜部材に生じる引っ張り応力および膨れを減少させることができる球体、特に空気入り球体を開示することを目的とする。
【００１５】
【課題を解決するための手段】
このために本発明は、上部および下部を組み合わせてなる堅固なジャケット、および上側室と下側室とを区分するようにこのジャケットの内側に配置され、上部および下部の間の境界領域に取り付けられて最降下位置と最上昇位置との間を移動可能とされた曲げやすい変形可能な膜部材を含み、このジャケットが全体的に平坦な形状をして、その移動の間に膜部材の膨れを防止するようになされたことを特徴とする球体、特に空気入り球体に関する。
【００１６】
本発明の特別な特徴によれば、ジャケットは、膜部材が最上昇位置においてジャケット上部の内面に実質的に一致して非機能体積を最大限に減少させ、それ故に膜部材における引っ張り応力を最少限となすことを保証する手段を含むことができる。
【００１７】
ジャケットの全体的に平坦な形状は、上部および下部の境界領域の内径と内側高さとの比で特徴付けられ、この比は１．３５〜１．６５の範囲、好ましくは１．５である。
【００１８】
本発明の他の特徴によれば、ジャケットの内側高さとジャケット上部の内側高さとの比は２．２５〜２．７５の範囲とされ、好ましくは約２．５である。
【００１９】
本発明の第１実施例において、前述した手段はジャケット上部の壁自体によって形成され、前述した境界領域の近くに球体頂部の湾曲と反対方向の湾曲を組み入れて、上側室の、特にジャケットに対する膜部材の取付け領域の上位の、非機能体積を排除するようになされる。
【００２０】
膜部材が最降下位置で引っ張り作用を受けて作用するのを避けるために、膜部材の展開された（unrolled）長さがジャケット下部の内面の長さに等しいか、多少長くなることを保証するように準備することができる。
【００２１】
本発明の更に他の特徴によれば、上部との境界領域付近におけるジャケット下部内側面に対する接線面が、球体の軸線と５゜〜８゜の範囲の角度、好ましくは約７゜の角度を形成する。
【００２２】
これらのうちの後に述べた２つの特徴は、膜部材が最下降位置にあるときに、引っ張り応力を受けずにジャケットの下部内面に係止することを保証する。
【００２３】
本発明の他の特徴によれば、ジャケットの上部は全体的に球形カップの形状をしており、また前述した手段は、ジャケットに膜部材周縁を取り付けるのと同時に、特にその取付け領域より上位の上側室の非機能体積を減少させるのに使用される堅固な環状挿入部材で構成されている。
【００２４】
この他の実施例では、堅固な環状挿入部材は、上側空圧室の内側で、第１実施例の球体の頂部湾曲と反対方向に湾曲を改修する。
【００２５】
上側室は圧縮されたガスを保持するように特に設計されており、また永久的に位置付けられる部材、例えば溶接ボールによって密封される。実際に、本発明によれば膜部材が球体内において受ける機械応力は更に小さいので、亀裂が発生する危険性はかなり低減され、これにより球体の再膨張の可能性を考慮することは必要でなくなる。
【００２６】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図解のためだけに与えられて限定するための例ではない２つの特定の現在好ましいと考えられている実施例の以下に記載する説明により、本発明は更によく理解されるであろうし、また添付された概略図を参照することにより、更に高い確度で明白になろう。
【００２７】
【発明の実施の形態】
図１および図２において左側半分に示した実施例によれば、本発明による球体は第１実施例に関しては外側ジャケット例えば金属製ジャケットを含んでなり、このジャケットは実質的に平坦にされた全体形状１１をしている。
【００２８】
ジャケット１１は上部１１ａおよび下部１１ｂを含んでなり、これらは境界領域１１ｃで分離される。
【００２９】
下部１１ｂは基部にテーパーが付けられた実質的に半球形状で、連結用端部部材７が取り付けられるようになされている。
【００３０】
境界領域１１ｃから引かれて下部１１ｂの内面に部分的に接している面Ｐが本発明の球体の軸線Ａと角度αをなすことから、下部１１ｂは完全な半球状ではないということに留意されたい。
【００３１】
上部１１ａは非凸形状を有しており、中央に球体内側へ指向された湾曲面を、また境界領域１１ｃ付近に球体外側へ指向された逆の湾曲面を組み入れている。
【００３２】
図１および図２の左側半分には、軸線方向の断面で見た場合に、ジャケット１１の上部１１ａが取り付けカラー８の上位に位置する非機能体積を満たすＳ字形状の輪郭を形成していることが明確に分かる。
【００３３】
この部分で、膜部材２が受ける応力は小さく、膨れは小さくなるので、亀裂を生じしたがって液密性を損なう危険性はなくなり、これにより上述した膨張用ねじ５を省くことができる。この場合、球体の頂部は着脱不可能な部材例えば溶接ボール１５で密封することができる。
【００３４】
使用される膜部材は通常は、例えばポリビニルアルコール層を取り囲む、２層のゴムを使った多層形式のものである。
【００３５】
図２は右側半分において、本発明の球体の他の実施例を示している。
【００３６】
この第２の実施例は、ジャケット１１の上部２１ａが主に第１実施例と相違している。
【００３７】
実際に、この上部２１ａは、湾曲が球体の内側へ向かって指向された凸形状を組み入れている。
【００３８】
円形カラー８はここでは例えばプラスチック製の堅固な環状挿入部材１８で置き換えられている。
【００３９】
環状挿入部材１８は、膜部材２の周縁２ａをジャケット１１の内面に対して保持して、周縁２ａより上方に主に位置する非機能体積を満たすような形状とされている。
【００４０】
この第２実施例は、製造時に特に有利であることを立証する。何故なら、１つの打出し（stamping) 工具だけがジャケットを製造するのに必要とされるからであり、異なる所望形状は単に挿入部材の寸法を変化させるだけで得られる。
【００４１】
勿論、本発明の範囲および精神はそのままに、変形例として上部１１ａ，２１ａおよび下部１１ｂを逆に作用させることも可能である。
【００４２】
記号Ｌ，ＨおよびＨａはそれぞれ境界部における球体の内径、球体の内側高さ、および上部の内側高さを示すのに用いられている。
【００４３】
図１および図２において、膜部材２は中央部分２ｂと周辺部分２ａとの間の中間部分の厚さが薄いことが明確に理解できる。
【００４４】
簡単化のために、球体の異なる部分に「上」または「下」の用語を使用したが、球体は例えば傾斜構造、水平構造または倒立（ヘッドダウン）構造のように、いずれにも構成することができる。
【００４５】
本発明は２つの特定実施例に関連して説明したが、記載した手段と技術的に等価の手段、および特許請求の範囲に記載された範囲に含まれるならばその組み合わせの全てが、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【図１】右側半分に膜部材が最上昇位置とされた従来の球体の軸線方向の断面が示され、左側半分に膜部材が中間的上昇位置とされた本発明による第１実施例の球体の軸線方向の断面が示された断面図。
【図２】左側半分に膜部材が中間的上昇位置とされた本発明による球体の軸線方向の断面が示され、右側半分に膜部材が最降下位置とされた本発明による他の実施例の球体の軸線方向の断面が示された断面図。
【符号の説明】
２ 膜部材
２ａ 膜部材の周辺部分
２ｂ 膜部材の中央部分
３ 上側室
４ 下側室
７ 連結用端部部材
８ カラー
９ プレート
１１ ジャケット
１１ａ 上部
１１ｂ 下部
１１ｃ 境界領域
１５ 溶接ボール
１８ 環状挿入部材

Claims (12)

1. 球体において、該球体が、
   上部（１ａ，１１ａ，２１ａ）および下部（１ｂ，１１ｂ）を有する堅固なジャケット（１，１１）と、
   気体を収容する上側室（３）と液体を収容する下側室（４）とを区分するように該ジャケットの内側に配置され、前記上部および前記下部の間の境界領域（１ｃ，１１ｃ）に取り付けられて最降下位置と最上昇位置との間を移動可能とされた変形可能な膜部材（２）とを含み、
   前記ジャケット（１１）が全体的に平坦な形状であり、
   前記ジャケット（１１）の上部（１１ａ）の壁が、前記境界領域（１１ｃ）の近くで、球体頂部の湾曲と反対方向の湾曲を有しており、それにより、前記ジャケットが、前記膜部材の膨れおよび変形を減少させて、該膜部材が最上昇位置においてジャケット上部の内面に一致して、非機能体積を減少させることを保証するようになっている球体。
2. 前記球体が空気入り球体である請求項１に記載された球体。
3. 前記ジャケットの上部と下部との境界領域における該ジャケットの内径（Ｌ）と、前記ジャケットの内側高さ（Ｈ）との比が１．３５〜１．６５の範囲である請求項１または請求項２に記載された球体。
4. 前記ジャケットの上部と下部との境界領域における該ジャケットの内径（Ｌ）と、前記ジャケットの内側高さ（Ｈ）との比が１．５である請求項３に記載された球体。
5. 前記ジャケットの内側高さ（Ｈ）と該ジャケットの前記上部（１１ａ，２１ａ）の内側高さ（Ｈａ）との比が、２．２５〜２．７５の範囲である請求項１または請求項２に記載された球体。
6. 前記ジャケットの内側高さ（Ｈ）と該ジャケットの前記上部（１１ａ，２１ａ）の内側高さ（Ｈａ）との比が、２．５である請求項５に記載された球体。
7. 展開された前記膜部材の長さが前記ジャケット（１１）の下部（１１ｂ）の内側面の長さに等しいかまたは僅かに長い請求項１または請求項２に記載された球体。
8. 前記上部（１１ａ，２１ａ）との境界領域（１１ｃ）に隣接する前記ジャケット（１１）の下部（１１ｂ）の内側面に対する接線面が、前記球体の軸線（Ａ）と５°〜８°の角度を形成する請求項１または請求項２に記載された球体。
9. 前記上部（１１ａ，２１ａ）との境界領域（１１ｃ）に隣接する前記ジャケット（１１）の下部（１１ｂ）の内側面に対する接線面が、前記球体の軸線（Ａ）と７°の角度を形成する請求項８に記載された球体。
10. 前記上側室（３）が加圧されたガスを含み且つ取り外し不可能な部材により密閉されている請求項１または請求項２に記載された球体。
11. 前記取り外し不可能な部材が溶接ボールである請求項１０に記載された球体。
12. 前記膜部材（２）の中央部分（２ｂ）と該膜部材の周縁（２ａ）との間で該膜部材の厚さが減じられている請求項１または請求項２に記載された球体。

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