JP4040521B2 - 臭気発生防止方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、下水、し尿、排水などの有機性汚水、又はこれらから生じる汚泥の処理場における臭気除去を目的とした汚水、汚泥スラリーや脱水ケーキの臭気発生防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水、し尿、排水などの汚水及びこれらから生じる汚泥には、硫化水素やメチルメルカプタンなどに起因する臭気が発生する。これら汚水や汚泥の処理工程の近くでは、臭気により労働環境が悪化し、ひどい場合には中毒になることがある。また、汚泥やその脱水ケーキを運送する場合には、一般道路で臭気が問題となり、一般市民に迷惑がかかるという問題がある。
【0003】
これら汚水や汚泥及びその脱水ケーキの臭気を防止する目的で、様々な消臭剤や臭気除去方法が工夫されている。代表的な例としては(1)塩化第二鉄や塩化亜鉛の溶液を汚水や汚泥に添加する方法、(2)次亜塩素酸塩等の酸化剤を単独で汚水や汚泥に添加して、臭気物質を酸化分解する方法、(3)汚泥に亜硝酸塩を添加して硫化水素やメチルメルカプタンなどの悪臭物質に由来する臭気を防止する方法(特許文献1)などが提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−340895号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、(1)の方法ではこれら汚泥から得られる脱水ケーキには、鉄や亜鉛などの金属が残留しているため、コンポスト原料としての再利用には適さない場合が多い。また、(2)の場合は、汚泥から得られた脱水ケーキには、消臭剤に由来する重金属類は含まれていないので、コンポスト等への再利用が可能である。しかしながら、次亜塩素酸塩を用いた場合には、脱臭効果が持続せず、抑臭のためには添加量を多くする必要があり、汚泥性状の性状変化により脱水が困難になる場合がある。更に(3)の方法では亜硝酸塩を添加してから消臭効果が発現するまでに数時間要し、汚泥を即時脱水処理する様な場含には適用が困難であった。また、汚泥によっては多量の添加が必要になる場合もあった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は上記の臭気発生防止方法の問題点を解決するべく鋭意検討した結果、特定の構造を有する化合物を使用することで問題点を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
本発明は、下記の手段により上記の課題を解決することができた。
(1)汚泥スラリーに、式(3)で示されるヒダントイン類を添加し、汚泥スラリーからの臭気発生を防止することを特徴とする脱水ケーキの臭気発生防止方法。
【0008】
【化4】
【0009】
式(3)中、X 1 及びX 2 は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、ただし、X 1 及びX 2 の何れかは、臭素原子又はヨウ素原子であり;R 1 及びR 2 は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基である。
(2)前記ヒダントイン類とともに亜硝酸塩を添加することを特徴とする前記(1)記載の臭気発生防止方法。
(3)汚泥スラリーが機械脱水される以前の工程又は汚泥スラリーの脱水工程で汚泥スラリーに、或いは汚泥スラリーの脱水後に脱水ケーキに式(3)で示されるヒダントイン類を添加することを特徴とする脱水ケーキの臭気発生防止方法。
(4)前記ヒダントイン類とともに亜硝酸塩を添加することを特徴とする前記(3)記載の臭気発生防止方法。
(5)式(3)で示されるヒダントイン類からなる汚泥スラリー又は汚泥スラリーの脱水ケーキの臭気発生防止剤。
(6)前記ヒダントイン類と亜硝酸塩を含有することを特徴とする前記(5)記載の臭気発生防止剤。
即ち、本発明の骨子は、汚泥スラリーに、汚泥スラリーに、式(3)で示されるヒダントイン類を添加し、汚泥スラリーからの臭気発生を防止することを特徴とする臭気発生防止方法を内容とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
先ず、本発明の実施例において使用する下水処理場のフローを図1について説明する。図1は、脱水機としてベルトプレス脱水機を使用する一実施態様を説明する概略構成図である。
【0011】
図1において、汚泥スラリー8は汚泥濃縮槽1で濃縮されて汚泥貯留槽2を経て、凝集槽3で高分子凝集剤溶解槽7からの高分子凝集剤9により凝集され、その凝集物含有液10は脱水機入口11と脱水ケーキ排出口12を有するベルトプレス脱水機4で十分脱水され、脱水ケーキ14はベルトコンベア5でケーキホッパー6中に運ばれる。この場合、臭気発生防止剤供給装置15は脱水機入口11に設けられ、そこで汚泥に臭気発生防止剤を添加するようにされている。なお、13は脱水機4のろ液である。
【0012】
本発明で用いられる化合物としては、ヒダントイン類が挙げられる。下記に具体的に説明するが、先にそれらの化学式である式(3)及びその具体例である式(2)を示す。本発明ではないが、脱臭防止に有効な化合物としては、例えば、シアヌール酸類、イソチアゾロン類、ε−カプロラクタム類、フタールイミド類、ピロリドン類、アクリドン類、ウラシル類、スクシンイミド類、バルビツール酸類、クレアチニン類、ジオキソピペラジン類、グリシン無水物類、ω−ヘプタラクタム類、マレイン酸ヒドラジド類、マレイン酸イミド類、オクタラクタム類、オキシインドール類などが挙げられる。これらの化合物については、下記に具体的に説明するが、先にそれらの化学式である式(4)〜式(11)を示す。
【0013】
【化5】
【0014】
【化6】
【0015】
ヒダントイン類(hydantoins)は、例えば、式(3)で示される。式(3)中、X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、ただし、X1及びX2の何れかは、臭素原子又はヨウ素原子であり;R1及びR2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基であり、好ましくは、水素原子又は炭素数6以下の低級アルキル基であり、更に好ましくは、水素原子又は炭素数3以下の低級アルキル基である。
ヒダントイン類としては、例えば、1−ブロモ−3−クロロ−5,5−ジメチルヒダントイン(式(2)で示される化合物)が挙げられる。
【0016】
シアヌール酸類(cyanuric acids)は、例えば、式(4)で示される。式中、R1、R2及びR3は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基であり、但し、R1、R2及びR3の少なくとも一つは、臭気原子又はヨウ素原子である。低級アルキル基は、炭素数6以下が更に好ましく、炭素数は、3以下が更に好ましい。
【0017】
イソチアゾロン類(isothiazolon)は、例えば、式(5)で示される。式中、Xは、臭素原子又はヨウ素原子であり;R1及びR2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基である。低級アルキル基は、炭素数6以下が更に好ましく、炭素数3以下が更に好ましい。
例えば、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンが好ましい。ε−カプロラクタム類(ε−caprolactams)は、例えば、式(6)で示される。式中、Xは、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0018】
フタールイミド類(phtalimides)は、例えば、式(7)で示される。式中、Xは、臭素原子又はヨウ素原子である。ピロリドン類(pyrrolidones)は、例えば、式(8)で示される。式中、Xは、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0019】
アクリドン類(acrydones)は、例えば、式(9)で示される。式中、Xは、臭素原子又はヨウ素原子である。ウラシル類(uracils)は、例えば、式(10)で示される。
式中、X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、ただし、X1及びX2の何れかは、臭素原子又はヨウ素原子であり;R1は、水素原子、炭素数10以下の低級アルキル基、アミノ基又はニトロ基である。低級アルキル基は、炭素数6以下であることが好ましく、炭素数3以下であることが更に好ましい。
R2及びR3は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基であり、好ましくは、水素原子又は炭素数6以下の低級アルキル基であり、更に好ましくは、水素原子又は炭素数3以下の低級アルキル基である。
【0020】
スクシンイミド類(succinimides)は、例えば、式(11)で示される。式中、Xは、臭素原子又はヨウ素原子である。
さらに、別の化合物として、以下に式(12)〜式(22)の化合物を示す。
【0021】
【化7】
【0022】
【化8】
【0023】
【化9】
【0024】
バルビツール酸類(barbituric acids)は、例えば、式(12)で示される。式中、X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、ただし、X1及びX2の何れかは、臭素原子又はヨウ素原子であり;R1及びR2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基であり、好ましくは、水素原子又は炭素数6以下の低級アルキル基であり、更に好ましくは、水素原子又は炭素数3以下の低級アルキル基である。
【0025】
クレアチニン類(creatinines)は、例えば、式(13)で示される。式中、Xは、臭素原子又はヨウ素原子であり;Rは、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基であり、好ましくは、水素原子又は炭素数6以下の低級アルキル基であり、更に好ましくは、水素原子又は炭素数3以下の低級アルキル基である。
【0026】
ジオキソピペラジン類(dioxopiperazines)は、例えば、式(14)で示される。式中、X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、ただし、X1及びX2の何れかは、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0027】
ウラゾール類(urazoles)は、例えば、式(15)で示される。式中、X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、ただし、X1及びX2の何れかは、臭素原子又はヨウ素原子であり;R1、R2及びR3は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基であり、R1、R2及びR3の何れかは、臭素原子又はヨウ素原子である。低級アルキル基は、炭素数6以下が好ましく、炭素数3以下が更に好ましい。
【0028】
グリシン無水物類(glycine anhydes)は、例えば、式(16)で示される。式中、X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基であり、X1及びX2の何れかは、臭素原子又はヨウ素原子である。低級アルキル基は、炭素数6以下が好ましく、炭素数3以下が更に好ましい。
【0029】
ω−ヘプタラクタム類(ω−heptalactams)は、例えば、式(17)で示される。式中、Xは、臭素原子又はヨウ素原子である。マレイン酸ヒドラジド類(maleic acid hydrazides)は、例えば、式(18)で示される。
式中、X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、ただし、X1及びX2の何れかは、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0030】
マレイン酸イミド類(maleimides)は、例えば、式(19)で示される。式中、Xは、臭素原子又はヨウ素原子である。
オクタラクタム類(octalactams)は、例えば、式(20)で示される。式中、Xは、臭素原子又はヨウ素原子である。オキシインドール類(oxindoles)は、例えば、式(21)で示される。式中、Xは、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0031】
本発明で悪臭防止剤として用いることができる化合物は、上記式(2)〜(21)に示されるように、窒素原子又は硫黄原子を含む、4〜10員複素環を含むことが好ましく、5〜9員複素環を含むことが更に好ましい。複素環は、1〜4個のヘテロ原子を含むことが好ましく、1〜3個のヘテロ原子を含むことが更に好ましい。ヘテロ原子は、窒素原子又は硫黄原子である。
【0032】
複素環の環骨格には、式−N(X)−で示される基(Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、好ましくは、臭素原子又はヨウ素原子であり、更に好ましくは、臭素原子である)を含むことが好ましい。
式(22)で示されるように、複素環Aの環骨格には、式−N(X)−C(=O)−で示される基(式中、Xは臭素原子又はヨウ素原子を含む)を含むことが更に好ましい。この構造の場合には、特に、次亜ハロゲン酸を生成し易いからである。
【0033】
【化10】
【0034】
複素環は、上記式(7)、(9)、(21)示されるように、他の環、例えば、ベンゼン環のような芳香族環と縮合していてもよい。
【0035】
化合物の汚泥スラリーに対する添加量は、処理する汚泥の性状にもより異なるので一概には言えないが、1〜1000mg/リットル、好ましくは10〜500mg/リットルである。化合物の添加量が1mg/リットル未満では消臭効果が十分発揮できず、一方、1000mg/リットルを超える場合はそれ以上の消臭効果はなく経済的でない。
【0036】
上記化合物の汚泥スラリーへの添加は、汚泥スラリーが機械脱水される以前の工程、脱水工程或いは脱水後いずれでも良い。特に脱水ケーキの消臭を対象とする場合には、上記化合物の添加は高分子凝集剤を添加混合した後でも構わない。具体的には上記化合物を高分子凝集剤添加後の凝集汚泥の脱水機への流入部、脱水機中、或いはケーキ排出部のいずれかに添加することができる。具体的にはベルトプレス脱水機の場合にはベルトプレスのろ布上、ケーキスクレバー部、ケーキ排出部(ケーキを排出するベルトコンベア上やスクリュウーコンベア内或いはケーキホッパーを含む)である。
【0037】
本発明においては、上記化合物を使用することで良好な臭気発生防止効果を発現することができるが、亜硝酸塩を併用することで、より臭気発生防止効果を持続させることが可能となる。
本発明において使用される亜硝酸塩には特に制限はなく、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ルビジウム、亜硝酸セシウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸ニッケル、亜硝酸銅、亜硝酸銀、亜硝酸亜鉛、亜硝酸タリウムなどを挙げることができる。これらの亜硝酸塩は1種を単独で用いることができ、また2種以上を混合して用いることもできる。これらの亜硝酸塩の中では、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムが効果やコストの面で好ましい。
【0038】
亜硝酸塩の汚泥スラリーに対する添加量は、処理する汚泥の性状にもより異なるので一概には言えないが、亜硝酸イオンとして1〜1000mg/リットル、好ましくは10〜500mg/リットルである。亜硝酸塩の添加量が1mg/リットル未満では消臭効果が十分発揮できず、一方、1000mg/リットルを超える場合はそれ以上の消臭効果はなく経済的でない。
【0039】
亜硝酸塩は機械脱水されるまでに1時間以上経過させることで、より効果的かつ持続的に臭気発生を防止することができる。従って、亜硝酸塩は汚泥濃縮槽又は汚泥貯留槽に添加し、汚泥スラリーが脱水機において脱水されるまでに1時間以上経過させることが好ましい。具体的には、汚泥濃縮槽又は汚泥貯留槽に上記化合物と同時に、又は別々に添加することが可能である。
【0040】
亜硝酸塩を使用する場合には、汚泥のpHを5.5以下に調整することにより、硫酸還元菌と共生する脱窒菌の活動を抑制し、亜硝酸イオンの消費を抑え、硫化水素の発生を長期間にわたって抑制することができる。汚泥のpH調整は塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、硝酸第二鉄などの第二鉄塩を好適に用いることができる。また、酸を併用することもできる。
【0041】
前述のpH調整剤により汚泥のpHを低下させた場合、一般に高分子凝集剤として使用されるカチオン系高分子凝集剤では凝集不良を生じる。これは、カチオン基の反応相手であるカルボキシル基のような汚泥のアニオンが、pH低下に応じて非解離となるためであると考えられる。このような条件下では、分子内に架橋構造が一定以上導入されたエマルジョン系の高分子凝集剤が特異的に有効である。このような高分子凝集剤は、具体的にはカチオン高分子凝集剤が特開平10−137798号公報等に、両性高分子凝集剤が特開2000−218297号公報や特開2000−218299号公報に記載されている。このようなエマルジョン系高分子凝集剤を使用した場合には、pH調整剤の有無に関わらず汚泥の固液分離性が向上し、処理水が清澄化するという効果も得られる。
【0042】
また、特にpH調整剤として塩化第二鉄を用いた場合には、分子内にカチオン基及びアニオン基が導入された両性高分子凝集剤が良好な凝集性を示すので好ましい。両性高分子凝集剤は前記エマルジョン系高分子凝集剤の他、粉末状の高分子凝集剤も使用可能である。このようなエマルジョン系高分子凝集剤を使用した場合には、pH調整剤の有無に関わらず汚泥の脱水性が向上するという効果も得られる。
【0043】
本発明おいては、亜硝酸塩以外の酸化剤や金属塩或いは殺菌剤も使用することができる。酸化剤としては、公知の酸化剤を使用することができ、例えば過酸化水素、過酢酸、過硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過酸化カルシウムなどの過酸化物、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、亜臭素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム等のハロゲン系酸化剤、或いは過マンガン酸塩などが挙げられる。これらの中でもハロゲン系酸化剤が好ましく、特に亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
【0044】
亜硝酸塩以外の金属塩としても公知のものを使用することができ、例えば硝酸塩、リン酸塩、塩化物、硫酸塩、硫化物、酸化物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、酢酸塩、水酸化物、炭酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、ヨウ化物などを挙げることができる。
有機系殺菌剤としては、ピリチオン塩、サリチル酸、キノリン、チウラム、イソチアン酸塩などが使用できる。
【0045】
また、防菌剤として公知のN−(2ヒドロキシプロピル)−アミノメタノール、2−(ヒドロキシメチルアミノ)−エタノール、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ジブロモ−ニトロ−エタノール等のアルコール類、クレゾール、4−クロロ−3,5−ジメチルフェノール等のフェノール類、グルタルアルデヒド、α−ブロモシンナムアルデヒド等のアルデヒド類、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−ヘキサヒドロトリアジン、2−メトキシカルボニルアミノベンツイミダゾール、チアベンダゾール、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、塩酸ポリヘキサメチレンビグアニジン、塩化ベンサルコニウム、塩化セタルコニウム、2,2−ジブロモ−3−ニトロプロピオアミド、ビス(1−オキシ−2ピリジル)ジスルフィド、ヒノキチオールなども使用できる。
【0046】
また、特開平5−23698号公報に記載されている、下記に示す有機化合物も使用できる。
【0047】
【化11】
【0048】
(式中、R1、R2は、H、アルキル、ジチオカルバミン酸N−アルキレン、R3はH、第4級アンモニウム、ヒドラジン、アルキルアミノ、金属、nは1〜3を表す。)
【0049】
【化12】
【0050】
(式中、R1、R2は、H、アルキル、アルキレン、nは1又は2を表す。)
【0051】
【化13】
【0052】
(式中、R1は、アルキル、アルケニル、ハロゲンアルキル、フェニル、メチルチオベンゾチアゾール、nは1又は2を表す。)
【0053】
【化14】
【0054】
(式中、R1は、アルキル、アルケニルを表す。)
【0055】
【化15】
【0056】
(式中、R1はH、Na、Zn、Cu、nは1又は2を表す。)
【0057】
【化16】
【0058】
(式中、RはH、Cu、XはH、ハロゲンを表わす。)
【0059】
【化17】
【0060】
(式中、R1、R2、R3はアルキル、ハロゲン、アミノ基、水酸基、アルコキシを表わす。)
【0061】
【化18】
【0062】
(式(30)中、R1、R2、R3はH、Na、K、ハロゲン、ハロゲンアルキルを表わす。)
(式(31)中、R1はハロゲンアルキル、R2は水酸基、ハロゲン、アルコキシ、フェニル、nは1又は3を表わす。)
【0063】
まず式(23)のジチオ炭酸アミドの誘導体としては、N−メチルジチオカルバミン酸塩(NH4、Na、K、Zn等)、ジチオカルバミン酸ヒドラジン、N,N’−ジメチルジチオカルバミン酸塩(NH4、Na、K、Cu、Zn、Mn、Fe、Ni、Pb等)、N,N’−ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、N,N’−ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチレンビスチオカルバミン酸塩(NH4、Na、Zn、Mn等)、ビス(ジメチルジチオカルバモイル)、エチレンビス(ジチオカルバミン酸)亜鉛等を例示できる。
式(24)のチウラムスルフィドの誘導体としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、エチレンチウラムモノサルファイド等を例示できる。
【0064】
式(25)のチオシアン誘導体としては、メチレンビスチオシアネート、クロロメチルチオシアネート、エチレンビスチオシアネート、クロロエチレンビスチオシアネート、ビニレンビスチオシアネート、フェニルチオシアネート、2−チオシアノメチルチオベンゾチアゾール等があり、また式(26)のイソチオシアンの誘導体としては、メチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート等を挙げることができる。式(27)のピリジンの誘導体としては、2−メルカプトピリジン−N−オキサイド、(2−ピリジルチオ−1−オキシド)ナトリウム、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛等があり、また、式(28)のキノリンの誘導体としては、8−ハイドロオキシキノリン、8−ハイドロオキシキノリン硫酸塩、8−ハイドロオキシキノリン銅、5−クロロキノリノール等を挙げることができる。
【0065】
式(29)のトリアジンの誘導体としては、2,4−ジクロロ−6−イソシアノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンNa塩、2,4−ジクロロ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−(o−クロロアニリン)−1,3,5−トリアジン、モノクロロメラミン、ジクロロメラミン、トリクロロメラミン、ヘキサクロロメラミン、トリクロロシアヌール酸等を挙げることができ、また、式(30)のイソシアヌール酸の誘導体としては、イソシアヌール酸、トリクロロイソシアヌール酸、ジクロロイソシアヌール酸、ジクロロイソシアヌール酸Na等を挙げることができる。式(31)のハロゲンカルボニル化合物の誘導体としては、ブロム酢酸ブロマイド、トリクロロ酢酸、ビスブロモアセトキシエタン、ビス(1,4−ブロモアセトキシ)−2−ブテン、1,2,3−トリス(ブロモアセトキシ)プロパン、2−ブロモ−4’−ハイドロオキシアセトフェノン等を挙げることができる。
【0066】
本発明において、汚泥スラリーの脱水方法は特に制限はなく、遠心脱水機、ベルトプレス脱水機、スクリュープレス脱水機、フィルタープレス脱水機、真空脱水機などを用いることができる。
【0067】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明の化合物としては下記のものを使用した。
1−ブロモ−3−クロロ−5,5−ジメチルヒダントイン…略称 BCDMH
1,3ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン …略称 DCDMH
1,3ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン …略称 DBDMH
なお、実施例中の汚泥スラリーの臭気測定は、以下の方法に従って行った。
(1)汚泥スラリー100mlを用意し、消臭剤を添加後ミキサーで撹拌する(500rpm×10sec)。
(2)臭気測定用袋(容量:700ml)に上記汚泥を入れ、ゴム栓で密栓する。
(3)シリンジで600mlの無臭空気を注入する。
(4)30℃の恒温槽に保管し、消臭剤添加後から所定時間毎に北川式検知管で硫化水素、メチルメルカプタンを測定する。
【0068】
また、脱水ケーキの臭気測定は以下の方法に従って行った。
(1)所定量の脱水ケーキを臭気測定用袋(容量:700ml)に入れ、ゴム栓で密栓する。
(2)シリンジで600mlの無臭空気を注入する。
(3)30℃の恒温槽に保管し、消臭剤添加後から所定時間毎に北川式検知管で硫化水素、メチルメルカプタンを測定する。
【0069】
実施例1
下水処理場から発生する第1表に示す性状の余剰汚泥スラリーに、BCDMHを50mg/リットル添加し、汚泥スラリーの臭気測定消臭試験を行った。結果を第2表に記載する。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例2〜6、比較例1〜5
化合物の種類及び添加量を第2表に示すように変更した以外は、実施例1と同様に試験を行った。結果を第2表に併記する。
【0072】
【表2】
【0073】
実施例7
実施例1で使用した余剰汚泥スラリーに、亜硝酸塩として亜硝酸ナトリウムを100mg/リットル、BCDMHを50mg/リットル添加し、汚泥スラリーの臭気測定消臭試験を行った。結果を第3表に記載する。
【0074】
実施例8〜13
亜硝酸塩の添加量、消臭剤の化合物の種類及び添加量を第3表に示すように変更した以外は、実施例7と同様に試験を行った。結果を第3表に併記する。
【0075】
【表3】
【0076】
実施例14
下水処理場から発生する第4表に示す性状の混合生汚泥スラリーを、図1に示すベルトプレス脱水機を設置した脱水施設に供給した。この際、汚泥貯留槽から脱水機に至る送泥管途中にBCDMHを50mg/リットル添加した。得られた脱水ケーキの臭気測定試験結果を第5表に記載する。
【0077】
【表4】
【0078】
実施例15〜19、比較例6〜10
化合物の添加場所、種類、或いは添加量を第5表のように変更した以外は、実施例14と同様に実験を行った。結果を第5表に併記する。
【0079】
【表5】
【0080】
実施例20
実施例14の混合生汚泥の貯留槽に、亜硝酸塩として亜硝酸ナトリウムを100mg/リットル添加した。亜硝酸ナトリウムの添加後1時間経過した後、汚泥スラリーを脱水施設に供給した。この際、汚泥貯留槽から脱水機に至る送泥管途中にBCDMHを50mg/リットル添加した。得られた脱水ケーキの臭気測定試験結果を第5表に記載する。
【0081】
実施例21〜28
化合物の添加場所、種類、或いは添加量を第6表のように変更した以外は、実施例20と同様に実験を行った。結果を第6表に併記する。
【0082】
【表6】
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、汚泥スラリーに式(1)HOX(式中、Xは臭素原子又はヨウ素原子である)を生成することができ、かつ、臭素原子又はヨウ素原子を含む化合物を添加させることで、硫化水素等の臭気発生を汚泥処理全プロセスにわたって効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ベルトプレス型脱水機を使用する下水処理場のフローを示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 汚泥濃縮槽
2 汚泥貯留槽
3 凝集槽
4 ベルトプレス脱水機
5 ベルトコンベア
6 ケーキホッパー
7 高分子凝集剤溶解槽
8 汚泥
9 高分子凝集剤
10 凝集物含有液
11 脱水機流入口
12 脱水ケーキ排出口
13 ろ液
14 脱水ケーキ
15 臭気発生防止剤供給装置
Claims (6)
- 前記ヒダントイン類とともに亜硝酸塩を添加することを特徴とする請求項1記載の臭気発生防止方法。
- 前記ヒダントイン類とともに亜硝酸塩を添加することを特徴とする請求項3記載の臭気発生防止方法。
- 前記ヒダントイン類と亜硝酸塩を含有することを特徴とする請求項5記載の臭気発生防止剤。
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