JP4039549B2 - 液晶表示パネル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電した静電気を放電させるアレスタ(arrester)を有する液晶表示パネルに関し、さらに詳しく言えば、アレスタの表面抵抗値を放電に適切な値とする技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示パネルの透明電極基板はガラスもしくはプラスチックからなり、誘電率が高いため静電気が帯電しやすい。液晶表示パネルにおいて、静電気はしばしば異常点灯や表示不良の原因となる。
【0003】
特に問題となるのは、液晶表示パネルの最終組立工程でパネル面に偏光板を貼着した後、その偏光板から保護膜を剥離する際に生ずる剥離帯電である。この剥離帯電により液晶表示パネルが異常点灯を引き起こすと、それが収まるまで製品検査を行うことができなくなる。
【0004】
この剥離帯電による異常点灯を短時間で収める方法の一つとして、液晶の比抵抗を下げる方法があるが、液晶の比抵抗を下げることは信頼性の低下につながるため好ましいとは言えない。
【0005】
別の方法として、剥離帯電量を少なくするため、保護膜の粘着力を弱める方法もある。しかしながら、これによると保護膜が自然に浮いたりして偏光板との間に気泡が入り込み、保護膜上から表示状態を観察する場合の妨げとなることがある。また、保護膜が剥がれたところでは、偏光板に傷が付けられるおそれがある。
【0006】
また、別の方法として、セルギャップ内の非表示領域にダミー電極を形成し、そのダミー電極をパネルの外側にまで引き出して、検査装置のグランド(接地)に接続する方法も知られている。
【0007】
しかしながら、これにはダミー電極をグランドに接続する手間と治具を必要とするばかりでなく、携帯電話機などのように電源を介して接地につながっていない場合、ダミー電極は用をなさないことになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の課題は、液晶の比抵抗を下げることなく、特に偏光板から保護膜を剥離する際の剥離帯電による異常点灯を短時間で解消する技術的手段を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、ともに表示電極を有する2枚の透明電極基板を周辺シール材を介して圧着し、そのセルギャップ内に所定の液晶を封入してなる液晶表示パネルにおいて、少なくともいずれか一方の上記透明電極基板の上記周辺シール材の外側に、外部電極と上記表示電極に連なる引出電極とを所定のギャップをもって対向させてなる複数のアレスタを有し、上記複数のアレスタは、上記引出電極側が長く引き出され、相対的に上記外部電極側が短くされているアレスタと、上記外部電極側が長くされ、相対的に上記引出電極側が短くされているアレスタとが交互に配置されているとともに、上記外部電極および上記引出電極を含む上記アレスタ上に、その表面抵抗値を1×10〜2×1013Ω/□とする表面抵抗値調整膜が設けられていることを特徴としている。
【0010】
本発明の好ましい態様によれば、上記表面抵抗値調整膜として、帯電防止剤よりなる膜,上記液晶表示パネルのパネル面内に形成される絶縁膜,その絶縁膜と配向膜との積層膜のいずれかが用いられる。この内、絶縁膜の単膜もしくは絶縁膜と配向膜との積層膜は、パネル製造工程で形成することができるため特に好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、液晶表示パネルの基本的な構成、すなわち透明電極基板、その表示領域内の表示電極および周辺シール材などは一般的な構成であってよく、本発明の要旨には直接関係しないためその図示は省略し、ここでは、本発明の液晶表示パネルが備えるアレスタ部分のみを図示し、これについて説明する。
【0012】
図1に本発明の参考実施形態に係るアレスタを示し、図2に本発明の実施形態に係るアレスタを示す。これらの図において、周辺シール材10の左側がパネル面の外側で、右側がパネル面内であるとして、図1の第1実施形態に係るアレスタAR1、図2の第2実施形態に係るアレスタAR2ともに、パネル面の外側(周辺シール材10の外側)に設けられる。
【0013】
なお、各アレスタAR1,AR2は、液晶表示パネルを構成する2枚の透明電極基板のいずれか一方もしくはその両方に設けられてよく、これは任意的な選択事項である。
【0014】
図1の参考実施形態に係るアレスタAR1は、パネル面の外側に形成された外部電極20と、パネル面内側の図示しない表示電極から周辺シール材10を潜ってパネル面の外側に引き出された引出電極30とを所定のギャップをもって対向させてなる。
【0015】
外部電極20および引出電極30は、図示しない表示電極と同じくITOからなり、それらの各端部20a,30aはギャップポイントとして互いに尖らされている。ギャップポイント間の間隔は、表示電極の線間幅よりも狭いことが条件とされ、例えば5〜10μm程度に設定される。
【0016】
なお、この参考実施形態において、各外部電極20はそれらの基端部側がつなげられて櫛歯状に形成されているが、場合によっては、基端部側を切り離して各外部電極20を独立させてもよい。
【0017】
図2の本発明の実施形態に係るアレスタAR2も、上記参考実施形態と同様に、外部電極20と引出電極30とを所定のギャップをもって対向させてなるが、アレスタAR2がパネル端面寄りの位置と、周辺シール材寄りの位置とに交互に配置されている点で、上記参考実施形態と異なっている。
【0018】
すなわち、例えば奇数番目のアレスタAR2については、引出電極30側が長く引き出され、相対的の外部電極20側が短くされている。これに対して、偶数番目のアレスタAR2については、外部電極20側が長くされ、相対的に引出電極30側が短くされている。これは、引出電極30の放電部分を先端の尖った部分だけでなく、側面からも隣接する外部電極20に放電しやすいようにしたことによる。
【0019】
このように、アレスタAR1,AR2をパネル面の外側に配置することにより、パネル面内に配置する場合に比べて、アレスタ部分の表面抵抗値が小さくなり、放電しやすい環境になる。
【0020】
すなわち、パネル面内には水分含有量がきわめて少ない液晶が封入されているのに対して、パネル面の外側にあるアレスタAR1,AR2は常に外気に晒され、空気中の水分が補給されるためである。
【0021】
これに加えて、本発明では、各電極の端部20a,30aを含むアレスタAR1,AR2上に表面抵抗値調整膜40を設けて、その表面抵抗値を1×10〜2×1013Ω/□の範囲内に調整している。
【0022】
これにより、例えば偏光板の保護膜剥離時の剥離帯電に起因して、液晶表示パネルに異常点灯が生じたとしても放電が効果的に行われ、その異常点灯を短時間のうちに消滅させることができる。
【0023】
表面抵抗値が2×1013Ω/□を超えると、瞬時の放電エネルギーが大きくなり電極に放電痕が生じたり、最悪の場合には焼けることがあり、また、表面抵抗値が1×10Ω/□未満であると、電極間が導通してしまうおそれがあるので好ましくない。表面抵抗値のより好ましい範囲は、1×10〜2×1012Ω/□である。
【0024】
本発明において、表面抵抗値調整膜40には、帯電防止剤の膜,パネル面内に形成される絶縁膜,その絶縁膜と同じくパネル面内に形成される配向膜との積層膜のいずれかが好ましく採用される。
【0025】
帯電防止剤を用いる場合には、液晶表示パネルの作製後に、アレスタAR1,AR2の部分に帯電防止剤を塗布すればよい。なお、帯電防止剤による場合には、その塗布に余計な手間がかかるとともに、別の端子などに付着すると、電触の原因にもなりかねないため、その分の注意を要する。
【0026】
絶縁膜は、無機,有機のいずれであってもよく、パネル面内の例えば表示電極上に絶縁膜を形成する工程で、アレスタAR1,AR2上に絶縁膜を同時に形成することができる。
【0027】
絶縁膜と配向膜との積層膜を用いる場合にも、パネル面内に配向膜を形成する工程で、先に形成されている絶縁膜上に配向膜を形成すればよい。この積層膜によれば、帯電防止剤による場合および絶縁膜単体による場合よりも、アレスタAR1,AR2の部分の表面抵抗値をより効果的に小さくすることができる。
【0028】
すなわち、絶縁膜は通常ゾルゲル法で作成されるため、ミクロな穴が多数空いているスポンジ状である。したがって、その上に配向膜を転写すると、配向膜の溶剤が絶縁膜にしみ込み封印された状態となる。
【0029】
このようにして、一旦絶縁膜にしみ込んだ溶剤はバキュームオーブンなどで減圧焼成を行わないかぎり長時間保持される。その上、本発明においては、アレスタAR1,AR2はパネル面の外側に配置され外気に晒されることから、常に水分の補給がなされ、これにより表面抵抗値がより効果的に下げられる。
【0030】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例と参考例および比較例について説明する。なお、各例ともに、液晶表示パネルの仕様は、セルギャップ6μm,240゜ツイストのSTNパネルで、液晶の比抵抗は5×1011Ωcm。また、アレスタは図3に示すように、対向するギャップポイントの先端角度が90゜,ギャップ間隔を10μmとした。試験機には、ノイズ研究所社製のEDS試験機ESS−200AXを用いて、10kV,0.5秒間隔で2回の接触放電を試み、異常点灯が消滅する時間を測定した。
【0031】
〔実施例1(参考例)
上記仕様によるアレスタを図1の参考実施形態に示すアレスタAR1のように、パネル面に外側に設けた。異常点灯消滅時間は200秒であった。また、このアレスタ上に、帯電防止剤(アキレス社製,商品名スカイリック−A)、絶縁膜単体(触媒化学社製,商品名PAM606L)、その絶縁膜上にさらに配向膜(日産化学社製,商品名SE−3840)をそれぞれ個別に形成して、その各々の異常点灯消滅時間を測定したところ、帯電防止剤による場合は100秒、絶縁膜単体による場合は130秒、絶縁膜と配向膜の積層膜による場合は100秒であった。
【0032】
〔実施例2(本発明例)
上記仕様によるアレスタを図2の実施形態に示すアレスタAR2のように、パネル面に外側に設けた。この場合、隣接するアレスタAR2間の間隔は10μmとした。異常点灯消滅時間は170秒であった。また、このアレスタ上に、帯電防止剤(アキレス社製,商品名スカイリック−A)、絶縁膜単体(触媒化学社製,商品名PAM606L)、その絶縁膜上にさらに配向膜(日産化学社製,商品名SE−3840)をそれぞれ個別に形成して、その各々の異常点灯消滅時間を測定したところ、帯電防止剤による場合は80秒、絶縁膜単体による場合は110秒、絶縁膜と配向膜の積層膜による場合は80秒であった。
【0033】
〔比較例1〕
上記仕様によるアレスタを上記実施形態1に示すアレスタAR1の態様として、パネル面内の非表示領域に設けた。特に、外部電極側に異常点灯が残り、異常点灯が完全に消滅するまでに至る時間は300秒であった。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ともに表示電極を有する2枚の透明電極基板を周辺シール材を介して圧着し、そのセルギャップ内に所定の液晶を封入してなる液晶表示パネルにおいて、少なくともいずれか一方の上記透明電極基板の上記周辺シール材の外側に、外部電極と上記表示電極に連なる引出電極とを所定のギャップをもって対向させてなる複数のアレスタを有し、上記複数のアレスタは、上記引出電極側が長く引き出され、相対的に上記外部電極側が短くされているアレスタと、上記外部電極側が長くされ、相対的に上記引出電極側が短くされているアレスタとが交互に配置されているとともに、上記外部電極および上記引出電極を含む上記アレスタ上に、その表面抵抗値を1×10〜2×1013Ω/□(より好ましくは、1×10〜2×1012Ω/□)とする表面抵抗値調整膜を設けたことにより、液晶の比抵抗を下げることなく、特に偏光板から保護膜を剥離する際の剥離帯電による異常点灯を短時間で解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の参考実施形態に係る液晶表示パネルが備えるアレスタを示す平面図。
【図2】本発明の実施形態に係る液晶表示パネルが備えるアレスタを示す平面図。
【図3】本発明の実施例および比較例のアレスタの電極構造を示す平面図。
【符号の説明】
10 周辺シール材
20 外部電極
30 表示電極の引出電極
40 表面抵抗値調整膜
AR1,AR2 アレスタ

Claims (4)

  1. ともに表示電極を有する2枚の透明電極基板を周辺シール材を介して圧着し、そのセルギャップ内に所定の液晶を封入してなる液晶表示パネルにおいて、
    少なくともいずれか一方の上記透明電極基板の上記周辺シール材の外側に、外部電極と上記表示電極に連なる引出電極とを所定のギャップをもって対向させてなる複数のアレスタを有し、上記複数のアレスタは、上記引出電極側が長く引き出され、相対的に上記外部電極側が短くされているアレスタと、上記外部電極側が長くされ、相対的に上記引出電極側が短くされているアレスタとが交互に配置されているとともに、上記外部電極および上記引出電極を含む上記アレスタ上に、その表面抵抗値を1×10〜2×1013Ω/□とする表面抵抗値調整膜が設けられていることを特徴とする液晶表示パネル。
  2. 上記表面抵抗値調整膜が、帯電防止剤よりなる請求項1に記載の液晶表示パネル。
  3. 上記表面抵抗値調整膜が、上記液晶表示パネルのパネル面内に形成される絶縁膜からなる請求項1に記載の液晶表示パネル。
  4. 上記表面抵抗値調整膜が、上記液晶表示パネルのパネル面内に形成される絶縁膜と配向膜との積層膜からなる請求項1に記載の液晶表示パネル。
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