JP4039105B2 - 航空機用空気調和装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固定翼機および回転翼機を含む航空機に搭載される空気調和装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
航空機における空気調和装置として、エンジンの圧縮部で圧縮されたエンジン抽出空気をラジアルコンプレッサで断熱圧縮し、これを冷却した後に膨張タービンにより断熱膨張することで冷気を得るエアサイクル式冷却装置が従来から使用されている。
【0003】
軍用機の中には、ミッション中に燃料タンクに被弾した場合に爆発するのを防ぐためにOBIGGS(On Board Inert Gas Generation System)を備えるものがある。そのOBIGGSは、エンジン抽出空気を窒素富化ガスと酸素濃縮空気とに分離する選択透過膜を有する空気分離部を備え、その空気分離から排出される窒素富化ガスを燃料タンク内部や燃料配管領域等の燃料周囲領域に供給する。近年の民間航空機における事故調査から、燃料タンク内の空間に溜まった空気と燃料蒸気との混合物に機内の配線などから生じたスパークが引火し、火災が発生することが判明している。そのような火災を防止するため、民間航空機においても上記OBIGGSを採用することが検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のOBIGGSにおいては、空気分離部から排出される酸素濃縮空気は機外空間に放出され、有効利用されることなく無駄になっている。また、空調装置から独立したOBIGGSでは、空調用とは別にエンジン抽出空気を空気分離部に導入するためエンジン負荷が増大する上に、OBIGGS用と空調用との両方の配管等が必要となる。一方、従来の空気調和装置自体も、これを構成するコンプレッサやタービンにおける空気流量が飛行条件の変化に伴い大きく変動し、効率の良い運転条件の維持が困難であった。さらに、飛行中の安全確保のためには空気調和装置においてもフェールセーフのため冗長性が要求されている。
本発明は上記問題を解決することのできる航空機用空気調和装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の航空機用空気調和装置は、コンプレッサによって圧縮された空気を膨張タービンにより膨張させることでキャビン内に導入される冷気を生成する複数の冷却処理ユニットと、そのキャビンからの流出空気を圧縮する混合前コンプレッサを有する複数の圧縮処理ユニットとを備え、エンジンからの抽出空気と各圧縮処理ユニットの混合前コンプレッサによって圧縮された空気とが、混合後に各冷却処理ユニットのコンプレッサに導入可能とされ、各冷却処理ユニットは、そのコンプレッサにより圧縮された空気を窒素富化ガスと酸素濃縮空気とに分離する空気分離部を有し、その窒素富化ガスは航空機の燃料周囲領域に導入可能とされ、その酸素濃縮空気はキャビンに導入可能とされ、各冷却処理ユニットは、互いに独立して作動状態と停止状態との間で切り替え可能とされ、各圧縮処理ユニットは、互いに独立して作動状態と停止状態との間で切り替え可能とされ、作動状態とされる冷却処理ユニットの数と作動状態とされる圧縮処理ユニットの数とが設定変更可能とされている。
本発明によれば、空気分離部から排出された酸素濃縮空気をキャビンに供給することで有効利用できる。
また、キャビンから流出する空気により、空気分離部を含む冷却処理ユニットに必要な空気量のかなりの部分が賄われるため、エンジン抽出空気量を抑制してエンジン負荷を軽減できる。
また、複数の冷却処理ユニットと圧縮処理ユニットはそれぞれ互いに独立して作動状態と停止状態との間で切り替え可能であるため、冷却処理ユニットや圧縮処理ユニットの構成要素が部分的に故障しても空気調和装置として機能することができる。
さらに、作動状態とされる冷却処理ユニットの数と作動状態とされる圧縮処理ユニットの数とを設定変更できるので、冷却処理ユニットの個々のコンプレッサとタービンおよび圧縮処理ユニットの個々の混合前コンプレッサにおける作動している場合の空気流量の変動を小さくでき、ほぼ定格状態での運転を可能にして運転効率を向上して省エネルギー化を図ることができる。すなわち、飛行状態の相違に応じてキャビンに必要な空調空気の圧力や温度および窒素富化ガスの必要流量が異なることから、冷却処理ユニットと圧縮処理ユニットを通過する全空気流量(質量流量)も飛行状態の相違に応じて相違する。例えば、駐機時に冷却処理ユニットのコンプレッサと膨張タービンとを冷房のためにフル作動させる時に冷却処理ユニットの全空気流量が最大になり、駐機時以外の時に最小値あるいは最小値に近い値になり、全空気流量の最大値が最小値の2倍程度になるような場合がある。このような場合、冷却処理ユニットを2ユニットとし、駐機時は2ユニットを作動状態とし、それ以外の時は1ユニットを作動状態とすることで、冷却処理ユニットを構成するコンプレッサとタービンを常に略定格に近い効率の高い領域で運転できる。また、圧縮処理ユニットを通過する全空気流量は、冷却処理ユニットを通過する全空気流量からエンジン抽出空気流量を差し引いた値に等しくなる。中型機や大型機のようにエンジン抽出空気流量を減らしてエンジン負荷の低減を図るような場合、圧縮処理ユニットの全空気流量の最大値と最小値の差は大きくなる。例えば、圧縮処理ユニットの全空気流量の最大値が最小値の3倍程度になる場合、圧縮処理ユニットを3ユニットとし、駐機時は3ユニットを作動状態とし、高々度からの降下時のようにエンジン抽出空気を冷却処理ユニットに供給しない時は2ユニットを作動状態とし、それ以外の時は1ユニットを作動状態とすることで、圧縮処理ユニットを構成する混合前コンプレッサを常に略定格に近い効率の高い領域で運転できる。また、小型機のようにエンジン抽出空気流量の最大要求量が小さく、相対的に余裕がある場合、圧縮処理ユニットの全空気流量の最大値と最小値の差は小さくなり、例えば最大値が最小値の2倍程度になる。このような場合は圧縮処理ユニットを2ユニットとし、駐機時は2ユニットを作動状態とし、それ以外の時は1ユニットを作動状態とすることで、圧縮処理ユニットを構成する混合前コンプレッサを常に略定格に近い効率の高い領域で運転可能になる。
【0006】
なお、各冷却処理ユニットにおいて、タービンの回転をシャフトを介してコンプレッサに伝達することで、膨張仕事を圧縮動力に変換してエネルギの無駄をより少なくできる。その回転シャフトを支持する軸受けとして動圧ガス軸受けを採用する場合、シャフト回転速度が一定化されるので、回転数が低下することなく動圧が維持されるため軸受けとシャフトとの接触機会を少なくし、軸受け寿命を向上できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1に示す第1実施形態の航空機用空気調和装置は、エンジン1からの抽出空気を、プリクーラ2と呼ばれる熱交換器により冷却し、流量制御バルブ39で流量調整し、後述の循環空気と混合した後にラジアルコンプレッサ3でほぼ断熱的に圧縮する。その流量制御バルブ39は図外コントローラからの信号により開度調整可能とされている。これにより昇温された空気をメインクーラ4と呼ばれる熱交換器により冷却した後、再生熱交換機4aで冷却し、水分捕捉のためにウォータセパレータ7に導く。そのウォータセパレータ7で水分除去された空気は、互いに並列に接続された複数の空気分離ユニットUに導かれる。各空気分離ユニットUは、互いに並列に接続された空気分離部16と分離バイパス流路75とを有する。その分離バイパス流路75は開閉バルブ41により開閉され、その開閉バルブ41はコントローラからの信号により開度調整される。その空気分離部16はコンプレッサ3で圧縮された空気を酸素濃縮空気と窒素富化ガスとに分離する。その酸素濃縮空気と分離バイパス流路75から流出する空気は膨張タービン5でほぼ断熱的に膨張される。これにより、コンプレッサ3と膨張タービン5とにより構成されるエアサイクル式冷却装置により冷気が生成される。その冷気は再生熱交換機4aからミキシングチャンバ13を介して航空機のコックピット空間を含むキャビン8に導入される。そのプリクーラ2およびメインクーラ4においては、ラム空気路9を通る機外空気により冷却が行われる。その膨張タービン5の膨張仕事は、シャフト6を介してコンプレッサ3に伝えられることで圧縮動力として利用される。そのシャフト6は動圧ガス軸受けにより支持されるのが好ましい。そのコンプレッサ3とタービン5を結ぶシャフト6に、コンプレッサ3の駆動に必要な動力を補助するためのモータ6aが取り付けられている。
【0008】
そのラジアルコンプレッサ3、メインクーラ4、再生熱交換機4a、膨張タービン5、モータ6a、ウォータセパレータ7および空気分離ユニットUにより冷却処理ユニットAが構成されている。本実施形態の冷却処理ユニットAの数は2とされている。各冷却処理ユニットAは互いに独立して作動状態と停止状態との間で切り替え可能とされている。本実施形態では、各冷却処理ユニットAそれぞれにおけるエンジン抽出空気導入口の開閉バルブV1、V2と、後述の各圧縮処理ユニットBとの接続口の開閉バルブV3、V4とがコントローラからの信号により開閉されることで、各冷却処理ユニットAは作動状態と停止状態との間で切り替え可能とされている。
【0009】
エンジン1からの抽出空気を上記エアサイクル式冷却装置を通ることなくキャビン8に導くためのバイパス空気流路11が設けられている。そのバイパス空気流路11はホットエアモジュレートバルブ12により開閉される。そのホットエアモジュレートバルブ12はコントローラからの信号により開度調整可能とされている。これにより、バイパス空気流路11を流れる空気流量が調整可能とされている。抽出空気の一部は、そのホットエアモジュレートバルブ12を開くことで、コンプレッサ3と膨張タービン5とから構成されるエアサイクル式冷却装置で冷却されることなく、バイパス空気流路11からミキシングチャンバ13を介してキャビン8に導かれる。そのキャビン8内の空気は、空気調和装置からの供給分から機体の漏れや機外への空気流路からの放出分を差し引いた分に相当する量だけ流出空気流路40に流出され、その流出空気流路40においてフィルター42により埃や匂いが除去される。その流出空気流路40に流出された空気の一部はファンF1を介してミキシングチャンバ13に導かれる。
【0010】
その流出空気流路40から分岐する補助空気流路71が再生熱交換機72に接続されている。キャビン8から流出空気流路40を介して流出した空気の一部はファンF2により補助空気流路71に導かれた後に再生熱交換機72により加熱される。その補助空気流路71と流出空気流路40とに、吸着部83が空気流路切替機構50を介して接続される。すなわち図2に示すように、多数の吸着部83が回転ドラム80の内部にハニカム状に設けられ、その長手方向は回転軸方向に延びる。各吸着部83内に吸着剤が充填されている。その吸着剤は、空気に含まれる分子を吸着し、また、吸着時よりも温度が上昇することで吸着した分子を放出するもので、例えばシリカゲルのような水分子吸着物質や、ゼオライトのような酸素分子吸着物質から構成できる。本実施形態では、その吸着剤として水分子吸着物質が用いられる。その回転ドラム80の両端面にセパレータ81が相対回転可能にシール部材(図示省略)を介して接合されている。各セパレータ81は、外輪81aと内輪81bとを2本のアーム81cにより接続することで構成され、航空機の機体側に固定される。各セパレータ81の内輪81bにより、回転ドラム80の中心シャフト80aが軸受(図示省略)を介して回転可能に支持される。その中心シャフト80aにモータ82が接続され、そのモータ82がコントローラ25からの信号により駆動されることで回転ドラム80は回転する。各セパレータ81における外輪81aと内輪81bとの間は、2本のアーム81cにより2つの領域81d、81eに区画されている。各セパレータ81における一方の領域81dは配管継手84を介して補助空気流路71に接続され、他方の領域81eは配管継手85を介して流出空気流路40に接続される。これにより、その回転ドラム80の回転により、各吸着部83それぞれを補助空気流路71に接続する状態と流出空気流路40に接続する状態とに切替える空気流路切替機構50が構成されている。なお、吸着部83と空気流路切替機構50の構造は特に限定されず、例えば複数の容器内に吸着剤を充填することで吸着部を構成し、各吸着部を補助空気流路71と流出空気流路40とに交互に接続する切り替えバルブにより空気流路切替機構を構成してもよい。
【0011】
その補助空気流路71から吸着部83に導かれた空気は第3切替えバルブ27に導かれる。その第3切替えバルブ27は、そこに導かれた空気を機外空間14に放出する状態と、ミキシングチャンバ13を介してキャビン8に導く状態とにコントローラからの信号により空気流路を切替え可能である。
【0012】
その補助空気流路71を流れる空気の温度は再生熱交換機72により加熱されることで例えば100℃〜140℃になり、一方、キャビン8から流出空気流路40に導かれる空気の温度は例えば20℃〜30℃になる。これにより、キャビン8から流出空気流路40を介して導入される空気が流れる時は低温になるので、吸着部83の吸着剤はキャビン8から流出される空気に含まれる有効成分(本実施形態では水分子)を吸収する。一方、補助空気流路71を介して導入される空気が流れる時は高温になるので、吸着部83の吸着剤は流出空気流路40を介して導入される空気から吸収した水分子を補助空気流路71を介して導入される空気中に放出することで再生する。例えば、各吸着剤がシリカゲルである場合、20℃ではシリカゲル1.0kgに0.25kg以上の水分子を吸着できるが、100℃ではシリカゲル1.0kgに0.02kg以下の水分子しか吸着できない。これにより、キャビン8から流出される空気中の水分子を、吸着剤により吸着した後にキャビン8に還流する空気中に放出することでキャビン8に戻し、キャビン8の快適性を向上することができる。しかも、吸着剤は再度利用できるように再生される。各吸着部83の吸着剤を酸素分子吸着物質として機能するゼオライトとした場合は、キャビン8から流出される空気中の酸素分子を、吸着剤により吸着した後にキャビン8に還流する空気中に放出することでキャビン8に戻し、キャビン8の快適性を向上することができる。しかも、吸着剤を再度利用できるように再生できる。各吸着剤を水分子を吸着する吸着剤と酸素分子を吸着する吸着剤の双方により構成すれば、水分と酸素の両方を吸着できるので、キャビン8の快適性をより向上できる。この場合、そのシリカゲルとゼオライトは交互に層状に配置するのが好ましい。
【0013】
その空気流路切替機構50により、流出空気流路40から吸着部83に導かれた空気は、モータ18で駆動される混合前コンプレッサ17に導かれる。その混合前コンプレッサ17によりキャビン8からの流出空気が圧縮される。その混合前コンプレッサ17により昇圧された空気は、再生熱交換機72において補助空気流路71を流れる空気と熱交換し、放熱器19においてラム空気路9を通る機外空気により冷却された後に、第4切替えバルブ36に導かれる。その第4切替えバルブ36は、コントローラからの信号により、導かれた空気をミキシングチャンバ13を介してキャビン8に導く状態と、エアサイクル式冷却装置に導く状態とに空気流路を切替え可能である。
【0014】
その混合前コンプレッサ17、放熱器19、モータ18、第4切替えバルブ36、空気流路切替機構50、再生熱交換機72、吸着部83、ファンF2によって、キャビン8からの流出空気の圧縮処理ユニットBが構成されている。本実施形態の圧縮処理ユニットBの数は3とされている。各圧縮処理ユニットBは、互いに独立して作動状態と停止状態との間で切り替え可能とされている。本実施形態では、各圧縮処理ユニットBそれぞれにおける流出空気流路40との接続口の開閉バルブV5、V6、V7と、補助空気流路71との接続口の開閉バルブV8、V9、V10とがコントローラからの信号により開閉されることで、各圧縮処理ユニットBは作動状態と停止状態との間で切り替え可能とされている。
【0015】
そのキャビン8から流出空気流路40を介して流出する空気が第4切替えバルブ36を介して再びキャビン8に戻されることでリサキュレーション空気流路が構成される。第4切替えバルブ36は、キャビン8から流出する空気をミキシングチャンバ13を介して直接キャビン8に戻す場合とエアサイクル式冷却装置を介して戻す場合との切り換えを行う。これにより、そのキャビン8から流出する空気は再びキャビンに戻る循環空気となる。そのキャビン8に戻る循環空気とエンジン1からの抽出空気とが混合されるように、その循環空気の空気流路と抽出空気の空気流路とが接続される。本実施形態では、その第4切替えバルブ36を介してエアサイクル式冷却装置に導かれる循環空気は、流量制御バルブ39を介して供給される抽出空気と混合される。これにより、エンジン1からの抽出空気と各圧縮処理ユニットBの混合前コンプレッサ17によって圧縮された空気とが混合された後に各冷却処理ユニットAのコンプレッサ3に導入可能とされている。その混合された循環空気と抽出空気とがコンプレッサ3でほぼ断熱的に圧縮された後に、上記空気分離部16に導入される。
【0016】
図3に示すように、複数(本実施形態では4ユニット)の空気分離ユニットUそれぞれは、上記ウォータセパレータ7に接続される空気導入口U1と、互いに接続されると共に上記膨張タービン5に接続される酸素濃縮空気排出口U2と、互いに接続されると共に上記燃料周囲領域15に接続される窒素富化ガス排出口U3とを有する。
【0017】
図4に示すように、各空気分離部16は選択透過膜16aを有する。その選択透過膜16aは、空気中の窒素(N2 )の透過率が酸素(O2 )の透過率よりも高くされている。これにより、コンプレッサ3により圧縮された空気は、再生熱交換機4aで冷却されてウォータセパレータ7を通過した後に、空気分離部16により窒素富化ガスと酸素濃縮空気とに分離される。その窒素富化ガスは燃料タンク内部や燃料配管領域等の燃料周囲領域15に導かれた後に機外空間14に放出される。その酸素濃縮空気は膨張タービン5に導かれる。上記開閉バルブ41はコントローラからの信号により開度調整可能とされ、選択透過膜16aを通過する空気流量が調整可能とされている。なお、選択透過膜16aの外側は、燃料周囲領域15におけると同様ほぼ機外圧力となっている。本実施形態では、各空気分離部16を構成する選択透過膜16aは多数の中空糸膜からなり、それら中空糸膜は容器16cに収納されると共にエポキシ等の樹脂製バインダ16bの中に両端が埋設されることで束ねられ、そのバインダ16bにより容器16cの内周と中空糸膜の両端外周との間が封鎖される。その容器16cの一端開口は、各中空糸膜の一端開口と上記空気導入口U1とに接続されることでコンプレッサ3により圧縮された空気を導入するための空気の導入ポート16dとされる。その容器16cの他端開口は、各中空糸膜の他端開口と上記酸素濃縮空気排出口U2とに接続される酸素濃縮空気の排出ポート16eとされる。その容器16cの両端間に形成された開口は、各中空糸膜の両端間外周と上記窒素富化ガス排出口U3とに接続される窒素富化ガスの排出ポート16fとされている。その窒素富化ガスの排出ポート16fから排出される窒素富化ガスが燃料周囲領域15に導入され、その酸素濃縮空気の排出ポート16eから排出される酸素濃縮空気が膨張タービン5を介してキャビン8に導入される。上記コンプレッサ3と膨張タービン5との間の空気流路における空気の導入ポート16dの上流と酸素濃縮空気の排出ポート16eの下流とが上記分離バイパス流路75により連絡され、その分離バイパス流路75の開度が上記開閉バルブ41により変更される。
【0018】
各空気分離部16における空気の導入ポート16dを開閉する導入側バルブ16gと、酸素濃縮空気の排出ポート16eを開閉する酸素濃縮空気排出側バルブ16hと、窒素富化ガスの排出ポート16fを開閉する窒素富化ガス排出側バルブ16iとが設けられている。各バルブ16g、16h、16iにより空気の導入ポート16d、酸素濃縮空気の排出ポート16eおよび窒素富化ガスの排出ポート16fは同時に全閉可能とされている。その導入側バルブ16g、酸素濃縮空気排出側バルブ16h、窒素富化ガス排出側バルブ16iは手動により作動するものでもよいし、アクチュエータにより作動されるものでもよく、アクチュエータにより作動される場合はアクチュエータをオペレータのスイッチ操作により制御してもよいしコントローラにより制御してもよい。なお、図3に示すように、窒素富化ガス排出側バルブ16iと燃料周囲領域15との間の配管は、空気分離部16と航空機の機外とを連絡する外部連絡流路を構成する。その外部連絡流路に絞り部E1が設けられている。その絞り部E1は固定絞りでも可変絞り弁でもよい。これにより、窒素富化ガス排出側バルブ16iが開き状態で固着される事態が生じても、キャビン8に供給されるべき空気が機外に過剰に流出するのを阻止できる。例えば、その窒素富化ガス排出側バルブ16iが全開になることで絞り部E1の上流側と下流側の圧力比が最大(例えば約1.9以上)になっても規定流量(例えば10LBS/min(4.5kg/min))以上のガスは絞り部E1の下流では流れないようにできる。
【0019】
上記実施形態の空気調和装置を備えた航空機が地上にある時の冷房状態においては、流量制御バルブ39を開状態にすることで、コンプレッサ3と膨張タービン5とから構成されるエアサイクル式冷却装置をフルに作動することができる。この場合、開閉バルブ41は必要に応じて開度を選択すればよい。すなわち、開閉バルブ41を全開とすることで、空気分離部16に空気を導入しないようにできる。これにより、地上において燃料が積み込まれることで燃料タンクの内部における空洞容積が小さくなり、地上走行(タキシング)を含めても燃料消費が僅かであり、気圧の変化がないことにより、燃料周囲領域15への窒素富化ガスの追加供給が不要な場合に対応できる。
あるいは、開閉バルブ41を閉じることで、空気分離部16に空気を導入することができる。これにより、航空機が地上で待機している間に燃料タンクから蒸発する燃料ガスを、空気分離部16から供給する窒素富化ガスにより希釈して安全性を向上することが可能になる。
また、地上が高温多湿である場合、開閉バルブ41を閉じることで、選択透過膜16aは水分透過率が高いことから空気中の水分を機外に放出することができる。これにより、膨張タービン5に導入される空気中の水分が減少し、凝縮熱の発生が低減されるので、冷却能力を向上すると共にキャビン8内の湿度を低減することが可能になる。
また、高温多湿の地上での冷房状態において、キャビン8から流出した空気から水分を捕捉した吸着部83の吸着剤の再生を行うことができる。その再生に用いられた水分を多く含んだ空気は、第3切替えバルブ27を介して機外空間14に放出される。これにより、地上での冷房時は、キャビン8内の水分を吸着部83において補足して放出するので、キャビン8内の湿度上昇を抑制して快適性を向上でき、さらに、キャビン8から流出されて吸着部83から流出する水分除去された空気は、第4切替えバルブ36からキャビン8に還流される。
なお、航空機が地上にあってエンジンが停止している際は、エンジン1に代えてAPU(Auxiliary Power Unit)などの高圧空気供給ユニット1′からの抽出空気を空気調和装置に供給することが可能とされている。
【0020】
航空機が離陸し上昇する状態においては、エンジン1の出力が上がるために抽出空気の圧力が高くなる。このため、エアサイクル式冷却装置におけるタービン5での膨張比が大きくなり、より低温の空気が供給される。この場合、エアサイクル式冷却装置から供給される空気によりキャビン8内の温度が過剰に低下するのを防止する必要がある。また、航空機の上昇状態においては外気の温度と水蒸気量とが急激に低下するため、キャビン8内の湿度が過剰に低下するのを防止する必要がある。そのため、吸着部83において再生された暖かく水分を含む空気が、第3切替えバルブ27を介してキャビン8に供給される。また、放熱器19を航空機の上昇中の状態に応じて機能させることで、キャビン8から流出されて吸着部83から流出する水分除去された空気は、切替えバルブ36からキャビン8に還流され、キャビン8は適切な温度、湿度に維持される。
また、上昇状態においては、離陸のための滑走状態から開閉バルブ41の開度を次第に絞ることで、空気分離部16に供給される空気を次第に増加させる。これにより、燃料消費に応じた量の窒素富化ガスが空気分離部16から燃料周囲領域15に供給される。さらに抽出空気の供給圧が高いため、膨張タービン5の膨張エネルギの方がコンプレッサ3の圧縮仕事よりも著しく大きい場合は、モータ6aを発電機として機能させエネルギ回収をすることも考えられる。
【0021】
航空機が高々度で巡航する状態においては、キャビン8から流出されて吸着部83から流出する水分除去された空気は、混合前コンプレッサ17で昇圧された後に切替えバルブ36からコンプレッサ3に導かれる。これにより、上昇終了後にエンジン1の出力が絞られることで抽出空気量を減少させても、エアサイクル式冷却装置および空気分離部16に導入される空気量を確保できる。この時、開閉バルブ41がかなり絞られる。空気分離部16において酸素が濃縮された空気が膨張タービン5に導入される。さらに、吸着部83において加湿された空気が第3切替えバルブ27からキャビン8に導入される。これにより、キャビン8に導入される空気量を確保し、キャビン8内の酸素分圧低下を防止し、さらに湿度を維持することで快適性を維持できる。また、空気分離部16からは窒素富化ガスが燃料周囲領域15に供給される。
なお、高々度で巡航する際は機外空気は低温となるため、熱交換器2、4に流入する機外空気を絞る弁や、機外空気が熱交換器2、4をバイパスするためのバイパス流路と流路切替え弁をラム空気路に設けるのが好ましい。
【0022】
航空機が降下する状態においては、燃料タンクの内部における空洞容積は燃料が消費された結果大きくなっており、また、降下による気圧上昇があることから、燃料周囲領域15へ窒素富化ガスを大量供給する必要がある。一方、エンジン1の出力は降下時は絞られるため、エアサイクル式冷却装置に供給される抽出空気圧力が低く、高圧の抽出空気の確保が難しくなる。そこで、キャビン8から流出される空気を圧縮処理ユニットBから切替えバルブ36を介してコンプレッサ3に導き、エアサイクル式冷却装置における高圧の抽出空気量の低下を補う。また、開閉バルブ41が全閉とされて空気分離部16からは窒素富化ガスが燃料周囲領域15に供給される。さらに、吸着部83において加湿された空気も第3切替えバルブ27からキャビン8に導入され、キャビン8への空気供給量の低下を防止する。特に高々度ではエンジン1の出力が絞られると、もともとの取り込まれる外気圧が低いため、エンジン抽気圧自体も低くなっており、圧縮処理ユニットBからの空気圧と比べても低く、混合できる状態ではないため、流量制御バルブ39を全閉とし、ホットエアモジュレートバルブ12を開いてエンジン抽出空気をキャビン8に直接導入する。
【0023】
上記飛行条件の相違に応じて、作動状態とされる冷却処理ユニットAの数と作動状態とされる圧縮処理ユニットBの数とが設定変更可能とされている。
例えば、空気調和装置に供給される空気の全量が従来のようにエンジン抽出空気によって賄われるとした場合、乗客の快適性を確保する必要性から空気調和装置に供給されるエンジン抽出空気流量が250LBS/min(113.4kg/min)程度を必要とする航空機を考える。そのような航空機において上記実施形態の空気調和装置を用いた場合の、各冷却処理ユニットAへのエンジン抽出空気導入位置P1でのエンジン抽出空気流量、各冷却処理ユニットAと各圧縮処理ユニットBとの接続位置P2での空気流量、各冷却処理ユニットAからの窒素富化ガス出口位置P3での窒素富化ガス流量、各冷却処理ユニットAからの冷気出口位置P4での冷気流量を、飛行条件の相違に応じて計算した。なお、空気分離部16により酸素濃度を上昇させ、吸着部83により水分を供給できることから、従来よりもエアサイクル式冷却装置による冷気の供給量を減らしてもキャビン8の冷却と酸素分圧の維持に十分な供給量が確保されることとした。
【0024】
その結果、各冷却処理ユニットAへのエンジン抽出空気導入位置P1でのエンジン抽出空気流量は上空では60〜70LBS/min(27.2〜31.8kg/min)程度、地上と降下時では70〜90LBS/min(31.8〜40.8kg/min)程度であった。冷却処理ユニットAと圧縮処理ユニットBとの接続位置P2での空気流量、すなわち圧縮処理ユニットBでの流量合計は60〜240LBS/min(27.2〜108.9kg/min)程度で、地上で最大となり、次いで高々度からの下降時で多くなり、それ以外の飛行条件では60〜80LBS/min(27.2〜36.3kg/min)程度であった。この、それ以外の場合の値を基準にすると、地上では3倍程度、高々度からの下降時には2倍程度となった。窒素富化ガスの流量は地上と上昇時と巡航時は10LBS/min(4.5kg/min)、離陸のための滑走時は5LBS/min(2.3kg/min)、降下時は20LBS/min(9.1kg/min)とした。冷気出口位置P4での冷気流量は、地上で250〜290LBS/min(113.4〜131.5kg/min)、それ以外の飛行条件では100〜150LBS/min(45.4〜68.0kg/min)であった。
よって、冷却処理ユニットAとして、1ユニットでの定格運転状態あるいは定格運転に近い状態で窒素富化ガスを最大20LBS/min(9.1kg/min)まで排出でき、冷気を100〜150LBS/min(45.4〜68.0kg/min)程度排出できるものを用い、圧縮処理ユニットBとして定格運転状態あるいは定格運転に近い状態で圧縮空気を60〜80LBS/min(27.2〜36.3kg/min)程度排出できるものを用い、作動状態となる冷却処理ユニットAの数を地上での駐機状態にある時は2、それ以外の飛行条件である時は1、作動状態となる圧縮処理ユニットBの数を地上での駐機状態にある時は3、高々度からの下降時は2、それ以外の飛行条件である時は1とすることで、コンプレッサ3、膨張タービン5、混合前コンプレッサ17を定格運転に近い高効率での運転を維持しながら、キャビン8内の酸素分圧と温度を快適な状態に維持できる。なお、暖房の必要度に応じてホットエアモジュレートバルブ12を介して温度の高いエンジン抽出空気がキャビン8に供給される。
【0025】
上記各位置P1、P2、P3、P4での空気流量を、航空機が地上での駐機状態にある時、離陸のための滑走時、10000フィート(3048m)での上昇時、42000フィート(12802m)での巡航時、42000フィート(12802m)からの下降時、25000フィート(7620m)からの下降時において求めた具体例を以下の表1に示す。なお、地上駐機状態にある時は高圧空気供給ユニット1′からの抽出空気を空気調和装置に供給している。また、42000フィート(12802m)からの下降時は流量制御バルブ39を全閉とし、各冷却処理ユニットAへのエンジン抽出空気導入位置P1での流量は零であり、ホットエアモジュレートバルブ12を開いてエンジン抽出空気(70LBS/min(31.8kg/min))をキャビン8に直接導入する。
【0026】
【表1】
Figure 0004039105
【0027】
上記計算結果は一例であって飛行条件やキャビン8内の酸素分圧や温度の設定条件等の相違により結果は変化するが、上記計算結果に近い値になる。よって、冷却処理ユニットAのコンプレッサ3の流量は、位置P1でのエンジン抽出空気流量と、位置P2での空気流量との和を作動状態となる冷却処理ユニットAの数で除した値になる。また、圧縮処理ユニットBの混合前コンプレッサ17の流量は、位置P2での空気流量を作動状態となる圧縮処理ユニットBの数で除した値になる。また、空気調和装置における圧力がキャビン8の内圧基準で決まる場合、キャビン8の内圧は地上では1.0気圧(1013.25hpa)、高度42000フィート(12802m)の巡航時では0.76気圧(770.07hpa)となり、上空での体積流量は気圧差だけ増加する結果、膨張タービン5と混合前コンプレッサ17は遠心翼車を通過する空気体積の変化量が少ないことから略一定の条件で運転され続けることになる。上記計算結果によれば、キャビン8内の酸素濃度は高度42000フィート(12802m)の巡航時では約23%に維持でき、乗客の快適性に寄与する一方で、エンジン抽出空気は従来値である約250LBS/min(113.4kg/min)の1/4程度に減らすことができる。
【0028】
上記実施形態によれば、酸素濃縮空気をキャビン8に供給することで有効利用でき、また、循環空気とエンジン1からの抽出空気とが混合後に空気分離部16に導入されるので、エンジン抽出空気量を抑制してエンジン負荷を軽減できる。また、複数の冷却処理ユニットAと圧縮処理ユニットBはそれぞれ互いに独立して作動状態と停止状態との間で切り替え可能であるため、冷却処理ユニットAや圧縮処理ユニットBの構成要素が部分的に故障しても空気調和装置として機能することができる。また、作動状態とされる冷却処理ユニットAの数と作動状態とされる圧縮処理ユニットBの数とを設定変更できるので、冷却処理ユニットAの個々のコンプレッサ3と膨張タービン5および圧縮処理ユニットBの個々の混合前コンプレッサ17における作動している場合の空気流量の変動を小さくでき、ほぼ定格状態での運転を可能にして運転効率を向上して省エネルギー化を図ることができる。
【0029】
図5〜図7は本発明の第2実施形態の航空機用空気調和装置に関し、第1実施形態と同様部分は同一符号で示して相違点を説明する。
図5に示すように、第2実施形態においては、ラジアルコンプレッサ3で圧縮され、メインクーラ4、再生熱交換機4aで冷却され、ウォータセパレータ7で水分除去された空気は、常開の空気流路75′と互いに並列に接続された複数の空気分離ユニットU′とに導かれる。各空気分離ユニットU′は第1〜第3コントロールバルブ41a、41b、41cに接続される。各コントロールバルブ41a、41b、41cはコントローラからの信号により開度調整される。各空気分離ユニットU′から窒素富化ガスと酸素濃縮空気とが排出され、窒素富化ガスは第1コントロールバルブ41aを介して燃料タンク内部や燃料配管領域等の燃料周囲領域15に導かれた後に、放出路を通って機外空間14に放出される。酸素濃縮空気は、第2コントロールバルブ41bを介して機外空間14に放出可能とされ、第3コントロールバルブ41cを介してキャビン8に導入可能とされている。各コントロールバルブ41a、41b、41cの開度調整により空気分離ユニットU′を通過する空気流量が調整可能とされている。その空気流路75′に導かれた空気は膨張タービン5でほぼ断熱的に膨張される。これにより、コンプレッサ3と膨張タービン5とにより構成されるエアサイクル式冷却装置により冷気が生成される。その冷気は第1実施形態と同様にキャビン8に導入される。そのラジアルコンプレッサ3、メインクーラ4、再生熱交換機4a、膨張タービン5、モータ6a、ウォータセパレータ7および空気分離ユニットU′により冷却処理ユニットA′が構成されている。本実施形態の空気調和装置においては冷却処理ユニットA′の数は第1実施形態と同様に2とされ、各冷却処理ユニットA′は、コントローラからの信号によりバルブV1、V2、V3、V4が開閉されることで互いに独立して作動状態と停止状態との間で切り替え可能とされている。なお、圧縮処理ユニットBは第1実施形態と同様の構成とされ、その数は3とされ、コントローラからの信号によりバルブV5、V6、V7、V8、V9、V10が開閉されることで互いに独立して作動状態と停止状態との間で切り替え可能とされている。
【0030】
図6に示すように、複数(本実施形態では4ユニット)の空気分離ユニットU′それぞれは、互いに接続されると共に上記空気流路75′に接続される空気導入口U1′と、互いに接続されると共に上記第1コントロールバルブ41aを介して上記燃料周囲領域15に接続される窒素富化ガス排出口U3′と、互いに接続される酸素濃縮空気排出口U2′とを有する。各酸素濃縮空気排出口U2′は第2コントロールバルブ41bを介して機外空間14に接続され、第3コントロールバルブ41cを介してキャビン8に接続される。
【0031】
図7に示すように、各空気分離部16′は選択透過膜16a′を有する。その選択透過膜16a′は、空気中の酸素(O2 )の透過率が窒素(N2 )の透過率よりも高くされている。これにより、コンプレッサ3により圧縮された空気は、再生熱交換機4aで冷却されてウォータセパレータ7を通過した後に、空気分離部16′により窒素富化ガスと酸素濃縮空気とに分離される。本実施形態では、各空気分離部16′を構成する選択透過膜16a′は多数の中空糸膜からなり、それら中空糸膜は容器16c′に収納されると共にエポキシ等の樹脂製バインダ16b′の中に両端が埋設されることで束ねられ、そのバインダ16b′により容器16c′の内周と中空糸膜の両端外周との間が封鎖される。その容器16c′の一端開口は、各中空糸膜の一端開口と上記空気導入口U1′とに接続されることでコンプレッサ3により圧縮された空気を導入するための空気の導入ポート16d′とされる。その容器16c′の他端開口は、各中空糸膜の他端開口と上記窒素富化ガス排出口U3′とに接続される窒素富化ガスの排出ポート16f′とされている。その容器16c′の両端間に形成された開口は、各中空糸膜の両端間外周と上記酸素濃縮空気排出口U2′とに接続される酸素濃縮空気の排出ポート16e′とされる。これにより、空気の導入ポート16d′は上記ウォータセパレータ7に接続され、窒素富化ガスの排出ポート16f′から排出される窒素富化ガスは燃料周囲領域15に導入可能とされている。また、酸素濃縮空気の排出ポート16eから排出される酸素濃縮空気は膨張タービン5を介することなくキャビン8に導入可能とされている。すなわち、選択透過膜16a′を透過することで減圧された酸素濃縮空気を膨張タービン5を介することなくキャビン8に導入でき、コンプレッサ3出口と膨張タービン5入口との間に圧力降下する物の存在を減少させた結果この間の圧力差を小さくすることにより構成されるエアサイクル式冷却装置の効率低下を防止できる。
【0032】
各空気分離部16′における空気の導入ポート16d′を開閉する導入側バルブ16g′と、酸素濃縮空気の排出ポート16e′を開閉する酸素濃縮空気排出側バルブ16h′と、窒素富化ガスの排出ポート16f′を開閉する窒素富化ガス排出側バルブ16i′とが設けられている。各バルブ16g′、16h′、16i′により空気の導入ポート16d′、酸素濃縮空気の排出ポート16e′および窒素富化ガスの排出ポート16f′は同時に全閉可能とされている。これにより、空気の導入ポート16d′、酸素濃縮空気の排出ポート16e′、窒素富化ガスの排出ポート16f′を全閉状態にすれば、空気分離部16の破損に対処できるだけでなく保守点検や交換を空調空気を流動させた状態で容易に行うことができる。なお、第1コントロールバルブ41aと燃料周囲領域15との間の配管と、第2コントロールバルブ41bと機外空間14との間の配管は空気分離部16′と機外とを連絡する外部連絡流路を構成する。図6に示すように、各外部連絡流路に絞り部E1、E2が設けられている。各絞り部E1、E2は固定絞りでも可変絞り弁でもよい。これにより、第1コントロールバルブ41aや第2コントロールバルブ41bが開き状態で固着される事態が生じても、キャビン8に供給されるべき空気が機外に過剰に流出するのを阻止できる。他は第1実施形態と同様とされている。
【0033】
本発明は上記各実施形態に限定されない。例えば上記各実施形態では冷却処理ユニットAの数を2、圧縮処理ユニットBの数を3としたが、これに限定されるものでなく、例えば小型機のようにエンジン抽出空気流量の最大要求量が小さく、相対的に余裕がある場合、圧縮処理ユニットの全空気流量の最大値と最小値の差は小さくなり、例えば最大値が最小値の2倍程度になる場合、圧縮処理ユニットの数を冷却処理ユニットと同様に2とすることで、圧縮処理ユニットを構成する混合前コンプレッサを常に略定格に近い効率の高い領域で運転可能になる。また、空気分離ユニットU又はU′は複数の冷却処理ユニットA又はA′で共用したり、水分の吸着部83を複数の圧縮処理ユニットBで共用してもよい。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、空気分離部から排出される窒素富化ガスだけでなく酸素濃縮空気も有効利用でき、航空機のエンジン負荷を低減し、フェールセーフ機能を奏することができ、飛行条件に応じた適正な運転ができる航空機用空気調和装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の航空機用空気調和装置の構成説明図
【図2】本発明の実施形態の航空機用空気調和装置における吸着部の構成説明図
【図3】本発明の第1実施形態の航空機用空気調和装置における空気分離ユニットの配置説明図
【図4】本発明の第1実施形態の航空機用空気調和装置における空気分離ユニットの構成説明図
【図5】本発明の第2実施形態の航空機用空気調和装置の構成説明図
【図6】本発明の第2実施形態の航空機用空気調和装置における空気分離ユニットの配置説明図
【図7】本発明の第2実施形態の航空機用空気調和装置における空気分離ユニットの構成説明図
【符号の説明】
1 エンジン
3 コンプレッサ
5 膨張タービン
8 キャビン
15 燃料周囲領域
16、16′ 空気分離部
16a、16a′ 選択透過膜
17 混合前コンプレッサ
A、A′ 冷却処理ユニット
B 圧縮処理ユニット

Claims (1)

  1. コンプレッサによって圧縮された空気を膨張タービンにより膨張させることでキャビン内に導入される冷気を生成する複数の冷却処理ユニットと、
    そのキャビンからの流出空気を圧縮する混合前コンプレッサを有する複数の圧縮処理ユニットとを備え、
    エンジンまたは高圧空気供給ユニットからの抽出空気と各圧縮処理ユニットの混合前コンプレッサによって圧縮された空気とが、混合後に各冷却処理ユニットのコンプレッサに導入可能とされ、
    各冷却処理ユニットは、そのコンプレッサにより圧縮された空気を窒素富化ガスと酸素濃縮空気とに分離する空気分離部を有し、
    その窒素富化ガスは航空機の燃料周囲領域に導入可能とされ、その酸素濃縮空気はキャビンに導入可能とされ、
    各冷却処理ユニットは、互いに独立して作動状態と停止状態との間で切り替え可能とされ、
    各圧縮処理ユニットは、互いに独立して作動状態と停止状態との間で切り替え可能とされ、
    作動状態とされる冷却処理ユニットの数と作動状態とされる圧縮処理ユニットの数とが設定変更可能とされている航空機用空気調和装置。
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