JP4038751B2 - 板ガラスの成形装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は溶融ガラスから板ガラスを成形する成形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、薄い板ガラスを製造する場合、断面が略くさび形の成形体の始端側から終端側に向けて上部に形成されたオーバーフロー溝に溶融ガラスを供給し、溶融ガラスをオーバーフロー溝の両側から溢れさせて成形体の両側の側壁面を流下させた後、各々の溶融ガラスを成形体の下頂部で融合させ1枚のガラスに成形する板ガラスの成形装置が知られている。
【0003】
上記の成形装置では、図3に示すように、用いられる成形体1は、断面が略くさび形であり上部にオーバーフロー溝1aを有する。成形体1のオーバーフロー溝1aには、供給パイプ4によって溶融ガラス2が供給され、両端のガイド1bにより制限された堰1cより溢れ、成形体1の両側の側壁面1dを流下し、成形体1の下頂部1eで融合し、板ガラス3が成形される。
【0004】
上記のような成形体1で成形された板ガラス3は、溶融ガラス2が下頂部1eより離れて、引き延ばされていく過程で板幅が収縮するために、その両端部3aの肉厚は中央部3bに比べてかなり分厚くなる。このような肉厚の偏りは、単に板ガラス3の使用可能な有効幅Wを減らすばかりでなく、反りあるいは内部歪みといった品質にも悪影響を及ぼす。そのため、従来は下頂部1eの両端部に特殊な形状を付与することにより、あるいは、下頂部1eの両端部の直下で板幅の収縮を抑えるため溶融ガラス2に局所冷却を行うことによって、このような両端部3aの肉厚を軽減してきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、下頂部1eの両端部に特殊な形状にしたり、あるいは下頂部1eの両端部の直下で溶融ガラス2に局所冷却を行うと、成形される板ガラス3の端部3aの形状を悪化させ、板ガラス3の切断などの工程に悪影響を及ぼすに止まらず、端部3aの肉厚も十分に減ずることができないという問題点がある。
【0006】
また、上記のように成形された板ガラス3の内部歪みは、端部が強く中央は弱いといった分布が生じ、熱処理工程が必要になる問題点もある。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点を解決し、有効幅の広い板ガラスを成形することができる板ガラスの成形装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる板ガラスの成形装置は、断面が略くさび形であり上部に長尺のオーバーフロー溝を有する成形体に、溶融ガラスを該オーバーフロー溝の始端側から中央領域を経て終端側に向けて流し、該オーバーフロー溝の両側方の堰から溶融ガラスを溢れさせて成形体の側壁面に沿って流下させ、その後に各々の溶融ガラスを成形体の下頂部で融合させて板ガラスを成形する板ガラスの成形装置において、前記成形体のオーバーフロー溝の堰の高さが少なくとも終端側の端部で中央領域よりも所定寸法高いことを特徴とするものであり、成形体のオーバーフロー溝の堰の始端側と終端側の両端部で中央領域よりも所定寸法高いことが好ましい。
【0009】
成形体の上部のオーバーフロー溝を溶融ガラスがその始端側から中央領域を経て終端側に向けて流れる場合、溶融ガラスの運動エネルギーにより溶融ガラスが終端側のガイドに押しつけられた状態で堰から溢れるので、終端側の堰から溢れる溶融ガラスの量は中央領域に比べて多くなり、供給される溶融ガラスの流量が大きくなると溶融ガラスの運動エネルギーも大きくなってその傾向も顕著になる。そこで、本発明では、終端側の溶融ガラスの流量を減少させる上で、オーバーフロー溝を構成する堰の少なくとも終端側の端部を中央領域よりも所定寸法高くすることが重要である。また、堰の始端側と終端側の両端部を中央領域よりも所定寸法だけ高くすることにより板ガラスの両端の寸法をバランス良く調節することが容易となるので好ましい。
【0010】
【作用】
本発明の成形装置によれば、成形体のオーバーフロー溝の堰の高さが端部で中央領域よりも所定寸法高いので、堰の端部から溢れる溶融ガラスの量は、堰の中央領域から溢れる量より高さを高くした分だけ減少し、その結果、オーバーフロー溝の堰から溢れて側壁を流下する溶融ガラス及び側壁面を流下した後の下頂部の端部の溶融ガラスの厚さは中央領域より小さくなり、このような溶融ガラスを下頂部で融合させて引き延ばすことによって、端部の肉厚が小さく有効幅の広い板ガラスを成形することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例の説明図を図1に示す。図において1は成形体を、1aはオーバーフロー溝を、1bはガイドを、1cは堰を、1dは成形体の側壁面を、1eは下頂部を、1fは堰1cの中央領域よりも高さが高い端部を、2は溶融ガラスを、3は板ガラスを、4は供給パイプを、Sはオーバーフロー溝1aの始端を、Eはオーバーフロー溝1aの終端を、Wは板ガラス3の有効幅を各々示しており、前出の図3と同一の部分には同一符号を付してそれぞれ示している。
【0012】
まず、本発明に係る板ガラスの成形装置の一例を説明する。
【0013】
本発明の板ガラスの成形装置では、図1に示すように、成形体1は、表面が溶融ガラス2に対して耐食性のある耐火物からなり、断面が略くさび形であり、上部に堰1c、1cの両端部1f、1fの高さを所定だけ高くした溶融ガラス2のオーバーフロー溝1aが設けてある。このオーバーフロー溝1aを構成する両側の堰1cの両端部1f、1fは、例えば、堰1cの中央の平坦な部分に対して、ガイド1bに接する部分では、10mm高く、ガイド1bより200mm内側では、平坦部分と一致し、この200mmの間は、この2点を直線または適当な曲線で結んだ形状になる。成形体1のオーバーフロー溝1aの始端S側には溶融ガラス2を供給する供給パイプ4が接続されており、ガラス溶融窯(図示省略)から溶融ガラス2が始端S側に供給され終端E側に向けて流れるようになっている。成形体1の両側は、オーバーフロー溝1aの堰1c、1cから溢れる溶融ガラス2が、二分されて側壁面1d、1dを端部では中央領域よりも薄く、中央領域ではほぼ均一な厚さで流下するようになっている。側壁面1d、1dが交わる下頂部1eは、側壁面1d、1dを流下した各々の溶融ガラス2が泡等を介在させることなく融合して1枚の板ガラス3になるように尖った形状にされている。
【0014】
ガイド1bとしては、白金またはその合金からなり、成形体1のオーバーフロー溝1a、側壁面1d及び下頂部1eの各々の両端部に配置し、溶融ガラス2の流下する幅を規定している。このうち、側壁面1d部のガイド1bは、必要以上に高くすると、溶融ガラス2の端部の肉厚を逆に厚くするように作用するので、例えば、15mm程度にするのが望ましい。
【0015】
次に、上記の成形装置を使用した板ガラスの成形の一例を説明する。
【0016】
まず、ガラス溶融窯(図示省略)から供給パイプ4を経て成形体1のオーバーフロー溝1aに溶融ガラス2を供給して始端S側から終端E側に向けて流し、オーバーフロー溝1aの両端部1f、1fの高さを高くした堰1c、1cから溶融ガラス2を溢れさせる。この際、溶融ガラス2は、中央領域分ではほぼ均一な厚さとなり、端部1fでは中央領域より薄くなる。このような溶融ガラス2を、成形体1の側壁面1d上を流下させ、成形体1の下頂部1eで各溶融ガラス2を融合させてローラー対等の牽引手段(図示省略)により引き延ばしながら1枚の板ガラス3に成形を行った。
【0017】
比較例として、先記の図3に示すような従来の成形装置を使用して、実施例と同じ条件で板ガラスを成形した。
【0018】
その結果、本発明により成形された板ガラス3は、全幅が800mm、端部の肉厚が2.5mm、厚さ0.7mm±0.01mmの有効幅Wが600mmと広いものであった。また、板ガラス3の幅方向の反りが600mmあたり0.1mm以下で、内部歪みは全幅に亘ってほぼ均一であり品質の点でも満足のいくものであった。
【0019】
これに対して、比較例の板ガラスは、全幅が700mm、厚さ0.7mm±0.01mmの有効幅Wが500mmと狭く、反りが0.3mmで、内部歪みは端部が強く中央は弱いといった分布が生じている。
【0020】
なお、本発明は、オーバーフロー溝1aの堰1cの両端部1f、1fを中央領域よりも所定寸法高くするものに限らず、図2に示すように、堰1cの終端E側の端部1fのみの高さを所定だけ高くした溶融ガラス2のオーバーフロー溝1aが設けてある成形体1を備えたものでもよい。
【0021】
【発明の効果】
このように、本発明の板ガラスの成形装置は、上記のような構成により、端部の肉厚が小さく有効幅の広い断面形状、内部歪み及び反りに優れた板ガラスを連続的に製造することができる実用上優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る板ガラスの成形装置の説明図であって、(A)は正面図、(B)はX−X断面図、(C)はY−Y断面図。
【図2】本発明に係る他の成形装置の説明図。
【図3】従来技術による板ガラスの成形装置の説明図であって、(A)は正面図、(B)はX−X断面図、(C)はY−Y断面図。
【符号の説明】
1 成形体
1a オーバーフロー溝
1b ガイド
1c 堰
1d 側壁面
1e 下頂部
1f 端部
2 溶融ガラス
3 板ガラス
4 供給パイプ
E 終端
S 始端
Claims (2)
- 断面が略くさび形であり上部に長尺のオーバーフロー溝を有する成形体に、溶融ガラスを該オーバーフロー溝の始端側から中央領域を経て終端側に向けて流し、該オーバーフロー溝の両側方の堰から溶融ガラスを溢れさせて成形体の側壁面に沿って流下させ、その後に各々の溶融ガラスを成形体の下頂部で融合させて板ガラスを成形する板ガラスの成形装置において、
前記成形体のオーバーフロー溝の堰の高さが少なくとも終端側の端部で中央領域よりも所定寸法高いことを特徴とする板ガラスの成形装置。 - 成形体のオーバーフロー溝の堰の始端側と終端側の両端部で中央領域よりも所定寸法高いことを特徴とする請求項1に記載の板ガラスの成形装置。
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