JP4035199B2 - 試料分析装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分析すべき特定成分を含む複合体を発光させて検出する試料分析装置に係り、特に食品検査、臨床検査の分野、医学、生命科学の基礎等で用いられる抗原−抗体反応を利用する分析に適した試料分析装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
血清又は尿のような生体液を分析し、この生体液内の抗体と抗原、或いは抗原抗体免疫複合物の存在を検出し、その定量を行なうことはよく知られており、このような装置(又は方法)は一般に免疫分析装置(又は方法)と呼ばれている。
【0003】
免疫分析装置の1つの共通原理は、制限した量の抗原と2種の抗体の間に生ずる結合反応を使うことである。これらの両抗体は抗原と結合することができるが、例えば一方の抗体に標識をつけて区別すると、抗原と結合する標識付き抗体の比率を計測することにより存在する標識無しの抗体の量がわかる。
【0004】
具体的な装置の1つは、特開平08−146002号公報に開示されている。この中で、第1抗体は固相として磁性粒子の表面に固定化されており、第2抗体には標識物質が結合されて液相に溶融している。生体液由来試料を第1抗体が固定化された磁性粒子と混合し、抗原−抗体反応を生じさせると、試料に含まれる抗原が第1抗体を介して磁性粒子に結合する。更に第2抗体を反応させると、第2抗体が抗原、第1抗体を介して磁性粒子に結合する。結合する第2抗体の量は、試料に含まれる抗原の量に依存して増減する。この反応混合物を磁場のかかるフローセルに導入し流動させると、磁性粒子が磁場により捕捉される。磁場は磁石をフローセルに近接することで与えられる。反応混合物に続いて緩衝液を流すと、磁性粒子はフローセルに残されたまま、反応混合物の液相はフローセル外に流し去られる。
【0005】
標識物質は電気的に化学ルミネッセンスを発生する物質である。磁場を除去した後フローセルの流路内に電場をかけると、磁性粒子に結合した標識物質が発光する。発光の強度を検出することにより、試料中の抗原の量を分析する。その後、フローセルから磁石を遠ざけて洗浄液を導入することにより磁性粒子をフローセルから除去する。
【0006】
この従来技術の場合は、混合物から液相を除去した領域(場所)で電場を与えて発光量を検出するため、磁性粒子のロスがない。更に、磁性粒子に磁界を作用させて混合物の液相と分離するために、磁性粒子の粒径を小さくし、反応速度を増大させることが出来る。又、フローセルに洗浄液を流して磁性粒子を流し去るので、連続して複数の試料の分析を行なうことが出来る。
【0007】
又、この従来技術の場合は、試料の導入(吸引)と、緩衝液、洗浄液の導入とを、流量を正確に制御出来るシリンジポンプを用いているため、試料・試薬の量の誤差が小さく精度の高い分析が出来る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術には次のような課題がある。磁石をフローセルに近づけて出来た磁場により磁性粒子を捕捉するために、磁性粒子が磁場の強い場所に集中して捕捉され、分布が不均一になる。磁性粒子の分布が不均一だと、個々の粒子にかかる電場の強さが一定せず、集中している部分の磁性粒子からの発光強度が弱くなる。更に、磁性粒子同士が密着していると、発光した光の放出が阻害される。従って磁性粒子の分布の不均一により、発光強度の検出の感度が低くなる。
【0009】
又、特開平08−146002号公報に開示されたものは、磁性粒子を捕捉するための試料の導入と緩衝液、洗浄液の導入を単一のポンプで行なっている。更に、シリンジポンプは吸引後に同じ量を吐出してポンプをリセットする必要がある。一般に一つのポンプで制御出来る流量の範囲は限られており、磁性粒子を低速でフローセル内を流通させながら捕捉するので、低速のポンプを用いる必要がある。そのために緩衝液、洗浄液の導入及びリセット動作も低い流量で行なうことになり長い時間を要する。従って、従来の分析装置では分析に長い時間を要する。これを回避するために別のポンプを用いることはコストの問題がある。
【0010】
本発明の課題は、磁性粒子を予め定められた領域の広い範囲に最適な密度で均一に捕捉出来、高感度の分析が行なえることである。
【0011】
更に、緩衝液を高速で導入することが出来、短時間で分析が行なえることである。
【0012】
その上、試料分析装置間の分析のバラツキが吸収出来ることである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明は、試料中の分析すべき特定成分と磁性粒子と発光を生じる物質とが結合してなる複合体を含む懸濁液の流路が設けられ、該流路に前記分析のための予め定められた領域を有するフローセルと、該フローセルの流路に前記懸濁液を導入する導入手段と、該導入手段によって導入された前記懸濁液中の複合体を前記流路の予め定められた領域に磁界を発生させて捕捉する磁界捕捉手段と、前記捕捉された複合体から発光を生じさせ、その生じた発光を検出する発光検出手段とを含む試料分析装置において、前記導入手段は、前記懸濁液中の複合体が磁界により捕捉される前に、前記流路の予め定められた領域に前記懸濁液を導入した後、該懸濁液を該流路の予め定められた領域に停止させるものであり、前記導入手段は、前記懸濁液の周期的な導入と停止を繰り返すと共に、該各周期において前記懸濁液に前記予め定められた領域を越えて通過させないものである。
【0014】
懸濁液中の複合体が磁界により捕捉される前に、予め定められた領域に導入することにより、懸濁液中の複合体は、磁界により捕捉されることなくフローセルの流路の予め定められた領域に均一に分散されて導入される。この状態でこの流路の予め定められた領域に停止させることにより、磁界捕捉手段によって磁界を発生させて複合体を流路に沿って均一に捕捉する。これにより磁性粒子を流路の予め定められた領域の広い範囲に最適な密度で均一に捕捉出来、高感度の分析が行なえる。更に、緩衝液を高速で導入することが出来、短時間で分析が行なえる。その上、懸濁液の導入の速度と、その停止を調整することにより、試料分析装置間の分析のバラツキを吸収出来る。
【0015】
又、試料中の分析すべき特定成分と磁性粒子と発光を生じる物質とが結合してなる複合体を含む懸濁液の流路が設けられ、該流路に前記分析のための予め定められた領域を有するフローセルと、該フローセルの流路に前記懸濁液を導入する導入手段と、該導入手段によって導入された前記懸濁液中の複合体を前記流路の予め定められた領域に磁界を発生させて捕捉する磁界捕捉手段と、前記捕捉された複合体から発光を生じさせ、その生じた発光を検出する発光検出手段とを含む試料分析装置において、前記導入手段は、前記流路の予め定められた領域に前記懸濁液の導入と停止を間欠的に繰り返すものである。
【0016】
流路の予め定められた領域に懸濁液の導入と停止を間欠的に繰り返すことにより、先の発明と同様に、懸濁液中の複合体は、フローセルの流路の予め定められた領域の広い範囲に最適な密度で均一に捕捉出来、高感度の分析が行なえる。更に、緩衝液を高速で導入することが出来、短時間で分析が行なえる。その上、懸濁液の導入の速度と、その停止を調整することにより、試料分析装置間の分析のバラツキを吸収出来る。
【0017】
更に、上記試料分析装置において、前記導入手段は、前記懸濁液の周期的な導入と停止を繰り返すと共に、該各周期において前記懸濁液に前記予め定められた領域を越えて通過させないものである。懸濁液の周期的な導入と停止を繰り返すことにより、導入手段の動作を単純化する。又、各周期において懸濁液が予め定められた領域を越えて通過させないことは、懸濁液中の複合体が捕捉されずに排出され、分析の感度を低下させることを防止する。
【0018】
更に、上記いずれかの試料分析装置において、前記導入手段は、前記懸濁液の導入開始の際に一定時間の加速と、前記懸濁液の導入停止の際に別の一定時間の減速とを行なうものである。一定時間の加速と、別の一定時間の減速とを行なうことにより、上記いずれかの試料分析装置の作用に加え、急激な導入及び停止を行なわず導入手段にかかる無用な負荷を防止する。
【0019】
更に、上記いずれかの試料分析装置において、前記導入手段は、前記懸濁液の停止の際に前記懸濁液の流れを逆流させるものである。懸濁液の停止の際に懸濁液の流れを逆流させることにより、上記いずれかの試料分析装置の作用に加え、懸濁液中の複合体が予め定められた領域を越えて通過することを防止する。
【0020】
更に、上記いずれかの試料分析装置において、前記フローセル内の予め定められた領域における前記流路高さは、前記懸濁液の流れ方向における磁界捕捉手段の磁界発生部長さに対して1/5以下である。流路高さを磁界捕捉手段の磁界発生部長さの1/5以下とすることにより、上記いずれかの試料分析装置の作用に加え、流路に導入された懸濁液中の複合体がその位置(場所)で磁界に捕捉され、斜めに移動することがなく、複合体が均一に捕捉される。
【0021】
更に、上記いずれかの試料分析装置において、前記導入手段は、一つのポンプで前記懸濁液、緩衝液及び洗浄液を前記フローセルの流路に導入するものである。複合体が磁界により捕捉されるよりも十分速く懸濁液を導入する一つのポンプを備えることにより、上記いずれかの試料分析装置の作用に加え、緩衝液及び洗浄液の導入を短期間で行なうことが出来、分析時間を短縮する。
【0022】
そして、上記いずれかの試料分析装置において、前記導入手段は、導入する前記懸濁液の圧力を変動させる圧力変動付与装置を備えたものである。導入手段が、例えばポンプによって一定の吸引力又は速度で懸濁液を導入している場合であっても、圧力変動付与装置を備えたことにより、導入圧力に変動を与え、実質的に導入、停止を繰り返すことと同じ作用が得られる。又、導入手段、コントローラ等の構造、動作を簡便にする。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る試料分析装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、図1〜6において、同一又は同等部分には同一符号を付けて示す。
【0024】
図1は、本発明に係る試料分析装置の第1実施の形態を示す系統図である。第1実施の形態の試料分析装置1は、試料中の分析すべき特定成分と磁性粒子と発光を生じる物質とが結合してなる複合体を含む懸濁液の流路8が設けられ、この流路8に前記分析のための予め定められた領域9を有するフローセル3と、このフローセルの流路8に懸濁液を導入する導入手段22としてのピペッタ27、移動子28、チューブ35、チューブ36、バルブ24及びポンプ23とを含んでいる。
【0025】
更に、導入手段22によって導入された懸濁液中の複合体を流路8の予め定められた領域9に磁界を発生させて捕捉する磁界捕捉手段17としての磁石18、レバー20、駆動子19と、捕捉された複合体から発光を生じさせ、その生じた発光を検出する発光検出手段12としての対抗電極14、作動電極15及び光センサー13とを含んでいる。
【0026】
ここで、上記導入手段22は、懸濁液中の複合体が磁界により捕捉される前に、流路の予め定められた領域9に懸濁液を導入した後、この懸濁液を流路の予め定められた領域9に停止させるものである。更に、導入手段22は、流路の予め定められた領域9に懸濁液の導入と停止を間欠的に繰り返すものであれば更に好ましい。間欠的な懸濁液の導入と停止は、懸濁液の周期的な導入と停止であっても良く、この各周期において懸濁液に予め定められた領域9を越えて通過させないものである。更に、この第1実施の形態の導入手段は、一つのポンプ23で懸濁液、緩衝液及び洗浄液をフローセルの流路8に導入するものである。
【0027】
次に、上記第1実施の形態の試料分析装置1について更に詳しく説明する。フローセル3は、上プレート4と下プレート5からなっており、上プレート4と下プレート5の間に流路8が設けられている。流路8は、ピペッタ27、移動子28及びチューブ35並びにチューブ36、バルブ24及びポンプ23に流体的に接続されている。ここで、ピペッタ27は移動子28に設置されており、懸濁液容器30、緩衝液容器31、洗浄液容器32がその移動範囲に設置されている。ポンプ23に接続されたチューブ36の通路にバルブ24、バルブ25が配置され、バルブ25は排出口26に接続されている。
【0028】
フローセル3の内部は、流路8が貫通しており、流路8の一方の壁面に作動電極15、他方の壁面に対抗電極14が設置されている。フローセル3の上には光センサ13がケース6に覆われ設置されている。上プレート4は透明部材が用いられている。駆動子19に接続されたレバー20には磁石18が固定、支持されており、フローセル3の下部に近接するように駆動出来る。移動子28、光センサ13、駆動子19、ポンプ23はコントローラ40に接続されている。
【0029】
フローセルの流路8の断面は長方形であり、この場合、磁石18に対向する方向に測った流路の高さhは0.5mmであり、流路の幅は5mmである。作動電極15は流れ方向に7mmの幅がある。磁石18は1辺が5mmの立方体形状の永久磁石であり、流路の方向に磁極を向けている。
【0030】
懸濁液容器30は、分析対象となる試料を図示しない前処理系の前処理過程で処理した懸濁液を収容している。ここで分析対象となる試料とは、血清や尿のような生体液由来試料である。試料が血清の場合、分析されるべき成分は、例えば抗原、ペプチドホルモン、ステロイドホルモン、薬剤又はウイルス抗体、或いは各種の腫瘍マーカー、抗体又は抗原・抗体複合物、又は単一蛋白質である。ここでは特定成分は、例えばTSH(甲状腺ホルモン)であるとする。
【0031】
前処理過程は、分析対象となる試料をビーズ溶液、第1試薬、第2試薬、緩衝液と混合して、一定温度(37℃)で一定時間反応させる。ここでは、分析対象となる試料は50μl、第1試薬は50μl、第2試薬は50μl、緩衝液は100μl用いられる。ビーズ溶液とは粒子状磁性物質をポリスチレン等のマトリックスに埋め込んだ磁性粒子(比重1.4、平均粒径2.8μm)を緩衝液中に分散させてなる溶液であり、マトリックスの表面にはビオチンと結合可能なストレプタニジンが結合されている。磁性物質は、例えば鉄、酸化鉄、ニッケル、コバルト、酸化クロム等の磁気吸引物質であればよく、又、マトリックス自体はポリスチレンの他に多くの合成及び天然の重合性物質(例えばセルロース、ポリエステル等)の中から選ばれてもよい。
【0032】
第1試薬は、磁性粒子を試料中の特定成分TSHと結合させる物質が含まれており、これには末端をビオチン処理したTSH抗体が含まれる。第2試薬は、電気化学反応により発光を生じる標識物質をラベルし、且つ試料中の特定成分と結合する物質が含まれている。従って、第2試薬は、末端をビオチン処理し、且つ励起により化学発光を生じる標識物質、ここではルテニウム(II)トリス(ビピリジル)を結合したTSH抗体を含むものである。第1試薬及び第2試薬は、分析されるべき特定成分の種類によって異なり、例えば免疫グロブリン、抗原、抗体又はその他の生物学的物質が使用される。
【0033】
緩衝液容器31は、標識物質の電気的な化学発光を誘引する物質を含む緩衝液を収容する。具体的には、この緩衝液は電圧印加後による還元後、標識化合物の励起を誘引する物質、例えばトリプロピルアミン(TPA)を含み、pHが7.4前後のものである。洗浄液容器32は、洗浄液を収容している。又、チューブ35、チューブ36及びフローセル3内の流路8は、予め緩衝液が満たされている。
【0034】
図2は、第1実施の形態の試料分析装置1における動作シーケンスを示す線図である。この動作シーケンスを図1と共に説明する。1サイクルは、懸濁液吸引、粒子捕捉、緩衝液吸引、検出、洗浄、リセットの各期間からなっている。前処理系で処理された懸濁液を収容した懸濁液容器30が所定位置にセットされたところから1サイクルが開始する。懸濁液吸引期間は、先ずコントローラ40の信号40dにより駆動子19が回転し、磁石18がフローセル3下部に接触する位置に移動する。バルブ24は開き、バルブ25は閉じた状態に設定される。
【0035】
次に、移動子28がコントローラ40の信号40aにより動作し、ピペッタ27が懸濁液容器30内に挿入される。続いてコントローラ40の信号40eで、ポンプ23が一定量の懸濁液を吸引するが、既にチューブ内に充填されている液体に吸引されて懸濁液容器30内の懸濁液がピペッタ27を経由してチューブ35内に吸引される。この状態でポンプ23を停止し、移動子28を動作してピペッタ27を洗浄機構37を経て緩衝液容器31に挿入する。洗浄機構37を通過した時に、ピペッタ27の先端は洗浄される。
【0036】
粒子捕捉期間(図2)は、コントローラ40からの信号40eでポンプ23が間欠的に導入(或いは吸引)と停止を繰り返す。この間にチューブ35内に存在していた懸濁液はフローセルの流路8に導入される。流路8内には磁石18からの磁界が発生しているために、懸濁液に含まれる磁性粒子を含む複合体は磁石に向かって吸引され、予め定められた領域9で作動電極15上の表面に捕捉される。緩衝液吸引期間は、ポンプ23によって緩衝液を一定速度で吸引する期間である。緩衝液容器31から緩衝液が吸引され、流路8内を通過する。その際、磁性粒子は予め定められた領域9で作動電極15上に吸着、保持されたままで残され、液体成分のみが流路8から流し去られる。
【0037】
検出期間は、バルブ24が閉じバルブ25が開いてポンプ23によって吐出動作され、ポンプ内の液が排出口26より排出される。同時に駆動子19が回転して磁石18がフローセル3から遠ざけられる。続いて、コントローラ40からの信号40cで作動電極15と対抗電極14の間に電圧がかけられる。この時、作動電極15上の磁性粒子から発光が生じるが、この発光の強度を光センサ13で検出し、信号40bとしてコントローラ40に送られる。一定時間経過後、電圧が除去される。その間に移動子28を動作してピペッタ27を洗浄機構37を経由して洗浄液容器32に挿入する。
【0038】
洗浄期間は、バルブ24が開かれ、バルブ25が閉じられてポンプ23が吸引動作をすることにより、洗浄液をチューブ35を介して流路8内を通過させる。この時は磁界が遠ざかっているために磁性粒子は作動電極15上に吸着、保持されず、緩衝液と共に流し去られる。リセット期間は、ポンプ23が停止された後、バルブ24が閉じられ、バルブ25が開かれ、ポンプ23が吐出動作すると、ポンプ内の液は排出口26から排出される。次にバルブ24が開かれ、バルブ25が閉じられ、ポンプ23によって緩衝液容器31から緩衝液をチューブ35及び流路8内に導入される。リセット期間後、次のサイクルが実行可能になる。
【0039】
図3は、フローセル流路内の複合体の状態を示し、(A)は複合体の導入後、(B)は複合体の捕捉後、の説明図である。粒子捕捉期間は、導入と停止が交互に間欠的に繰り返される。流路8内には磁石18により磁界が存在し、複合体の磁性粒子51は磁石の方向に吸引される力が働く。導入は、懸濁液50が高流速で流路8内を流れるので、磁性粒子51はほとんど壁面に到達することなく移動する。導入の時間は懸濁液50が磁石18の前端から後端に移動する時間にほぼ等しく設定されている。この場合は、200μl/sの流量で0.05秒である。導入の終わりには、流路8の予め定められた領域9で磁石18上部には、ほぼ磁性粒子が行き渡った状態になる。
【0040】
停止は、懸濁液50が移動せずに流路8で停止する時間である。この時間に磁石18の近傍にある磁性粒子51は吸引されて、作動電極15上に到着する。一旦作動電極15上に到着した磁性粒子51は、磁石が遠ざかるまではその場に留まる。停止の時間は、磁石18近傍の流路内の磁性粒子が、ほぼ作動電極15表面に到着する時間に等しく設定されている。この場合は、0.2秒である。停止の終わりには、流路8内の磁石近傍の領域では、ほぼ全部の磁性粒子が作動電極15の表面上に到達し停止している。
【0041】
導入と停止を必要回数繰り返すことにより、懸濁液容器30から吸引した懸濁液中のほぼ全ての磁性粒子を予め定められた領域で作動電極15の表面上に捕捉する。磁石18の磁性粒子に対する吸引力は磁石の縁の付近が最も強く、面の中心上は弱い。吸引力の方向は作動電極15の表面に対して垂直ではなく、磁石の縁に向かう斜めの方向に向く。本実施の形態の場合は、磁性粒子が導入の間に磁石上の領域に分散され、停止時に磁石に吸引される。吸引力は電極に対して斜めの方向に働くが、フローセル内の予め定められた領域9における流路高さhが懸濁液の流れ方向における磁界捕捉手段17の磁界発生部である磁石18の長さに対して1:10と小さいため、実質的にそのままの位置で電極に付着する。従って、磁力の強い部分に集中することなく、均一に分散して磁性粒子が捕捉される。この場合、流路の高さhと磁石の長さの比が1:10であるが、1:5程度以上の比率であればその効果が期待出来る。
【0042】
更に、第1実施の形態において、導入時間は、懸濁液が磁石の前端から後端まで流れる時間に合わせてあるため、磁性粒子が磁石の上の領域にちょうど行き渡ったタイミングで停止となり、磁石の前端から後端まで一様に磁性粒子を捕捉することが出来、しかも捕捉されずに通過してしまう磁性粒子は僅かにすぎない。電極上に均一に磁性粒子が捕捉出来ることで、電極上の粒子密度を広い面積で最適に設定することが出来、電圧をかけて磁性粒子表面上の標識物質からの発光量を効率よく検出することが可能であり、高い感度で分析対象中の特定成分の濃度を分析することが可能である。
【0043】
更に、第1実施の形態において、停止時間は、流路内の粒子が電極に達するに必要な時間に合わせているため、必要最小限の時間しか粒子捕捉に要せず、短い時間で分析が可能である。そして、捕捉用に1辺が5mmの立方体の永久磁石を用いているが、一般に大きな磁石は、吸引力が強いが、吸引力の強い領域は縁の部分なので、捕捉分布の均一性が保ちにくい。本実施の形態の場合には大きな磁石でも前述の効果で均一な捕捉が達成出来る。従って、大きな磁石を用いることにより、一層短時間で粒子捕捉が可能であり、短時間での試料分析が達成出来る。
【0044】
又、第1実施の形態の場合、粒子捕捉期間のポンプの動作を高い流量に設定しても、停止時に捕捉が行なわれるので高効率で捕捉出来る。用いるポンプはコントロール可能な流量範囲の上限と下限が20倍程度以内であるが、粒子捕捉時の流量を高く設定出来るので、高速のポンプを使うことが出来、緩衝液吸引時、洗浄液吸引時及びリセット時の流量も高く出来る。従って、1サイクルの動作時間を短くし、短時間で試料の分析が可能である。
【0045】
図4は、第2実施の形態のポンプ動作を示す線図である。粒子捕捉期間におけるポンプ23による懸濁液の導入開始の際に一定時間の加速と、懸濁液の停止の際に別の一定時間の減速とを行なうものである。即ち、導入と停止の前にそれぞれ加速時間と減速時間を設けた台形動作とする。このようにすることによって、ポンプ23を急加速、急停止することがないので、ポンプ23の動作を安定に行なえる。更に、粒子捕捉期間に流速が急変化しないので、流体の慣性力による流れの乱れに起因する磁性粒子分布の乱れが発生せず、より均一な粒子分布が得られ、高い感度で分析対象中の特定成分の濃度を分析することが可能である。
【0046】
図5は、第3実施の形態のポンプ動作を示す線図である。粒子捕捉期間におけるポンプ23による懸濁液の導入の際に、ポンプ23を完全に停止させず、懸濁液の流れを逆流させるものである。第3実施の形態の場合は、停止中にも懸濁液が僅かに逆流移動しているため、より均一に磁性粒子が捕捉され、高い感度で分析対象中の特定成分の濃度を分析することが可能である。
【0047】
図6は、図1と同様の第4実施の形態を示す系統図である。図1の第1実施の形態の試料分析装置との違いは、流体に圧力変動を付与する圧力変動付与装置として揺籃器38をポンプ23と並んで設けている点である。この第4実施の形態の場合、粒子捕捉期間にポンプ23は一定速度で吸引し、且つ揺籃器38を作動させて流体の流れに周期的な変動を与える。揺籃器38による流体の流れの変動により実質的に導入と停止を繰り返すことと同じ効果が得られ、均一に磁性粒子が捕捉され、高い感度で分析対象中の特定成分の濃度を分析することが可能である。更に、短い周期でポンプ23をコントロールする必要がなく、コントローラ40の動作を単純にして低コストな分析装置とすることが出来る。図6におけるその他の部分は、図1に示したものと同様であるので、その説明を省略する。
【0048】
【発明の効果】
本発明の試料分析装置によれば、磁性粒子を予め定められた領域の広い範囲に最適な密度で均一に捕捉出来るので、高感度の分析が行なえる。
【0049】
更に、緩衝液を高速で導入しても効率よく磁性粒子を捕捉出来るので、短時間で分析が行なえる。
【0050】
その上、試料分析装置間の分析のバラツキを吸収出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る試料分析装置の第1実施の形態を示す系統図である。
【図2】第1実施の形態の動作シーケンスを示す線図である。
【図3】フローセル流路内の複合体の状態を示し、(A)は導入後、(B)は捕捉後、の説明図である。
【図4】第2実施の形態のポンプ動作を示す線図である。
【図5】第3実施の形態のポンプ動作を示す線図である。
【図6】図1と同様の第4実施の形態を示す系統図である。
【符号の説明】
1 試料分析装置
3 フローセル
8 流路
9 予め定められた領域
12 発光検出手段
17 磁界捕捉手段
22 導入手段
23 ポンプ
38 揺籃器(圧力変動付与装置)
50 懸濁液
51 磁性粒子
Claims (7)
- 試料中の分析すべき特定成分と磁性粒子と発光を生じる物質とが結合してなる複合体を含む懸濁液の流路が設けられ、該流路に前記分析のための予め定められた領域を有するフローセルと、該フローセルの流路に前記懸濁液を導入する導入手段と、該導入手段によって導入された前記懸濁液中の複合体を前記流路の予め定められた領域に磁界を発生させて捕捉する磁界捕捉手段と、前記捕捉された複合体から発光を生じさせ、その生じた発光を検出する発光検出手段とを含む試料分析装置において、前記導入手段は、前記懸濁液中の複合体が磁界により捕捉される前に、前記流路の予め定められた領域に前記懸濁液を導入した後、該懸濁液を該流路の予め定められた領域に停止させるものであり、
前記導入手段は、前記懸濁液の周期的な導入と停止を繰り返すと共に、該各周期において前記懸濁液に前記予め定められた領域を越えて通過させないものである
ことを特徴とする試料分析装置。 - 試料中の分析すべき特定成分と磁性粒子と発光を生じる物質とが結合してなる複合体を含む懸濁液の流路が設けられ、該流路に前記分析のための予め定められた領域を有するフローセルと、該フローセルの流路に前記懸濁液を導入する導入手段と、該導入手段によって導入された前記懸濁液中の複合体を前記流路の予め定められた領域に磁界を発生させて捕捉する磁界捕捉手段と、前記捕捉された複合体から発光を生じさせ、その生じた発光を検出する発光検出手段とを含む試料分析装置において、前記導入手段は、前記流路の予め定められた領域に前記懸濁液の導入と停止を間欠的に繰り返すものであることを特徴とする試料分析装置。
- 請求項1乃至2のいずれかにおいて、前記導入手段は、前記懸濁液の導入の際に一定時間の加速と、前記懸濁液の停止の際に別の一定時間の減速とを行なうものであることを特徴とする試料分析装置。
- 請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記導入手段は、前記懸濁液の停止の際に前記懸濁液の流れを逆流させるものであることを特徴とする試料分析装置。
- 請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記フローセル内の予め定められた領域における前記流路高さは、前記懸濁液の流れ方向における磁界捕捉手段の磁界発生部長さに対して1/5以下であることを特徴とする試料分析装置。
- 請求項1乃至5のいずれかにおいて、前記導入手段は、一つのポンプで前記懸濁液、緩衝液及び洗浄液を前記フローセルの流路に導入するものであることを特徴とする試料分析装置。
- 請求項1乃至6のいずれかにおいて、前記導入手段は、導入する前記懸濁液の圧力を変動させる圧力変動付与装置を備えたものであることを特徴とする試料分析装置。
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