JP4034945B2 - 多機能性フライアッシュ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼却灰(フライアッシュ等)を超微粒子化した多機能性フライアッシュ及びその製造方法、更にその多機能性フライアッシュを用いた製造物に関するものであり、より詳細には、フライアッシュをサブミクロン以下の超微粒子化を図ることによって、セメント及びコンクリート硬化体の更なる高性能化の他に、タイヤなどゴム材、製紙、塗料、機能性樹脂、輸送用車両等のインフレーション材、切削工具、研磨材、水晶振動子、光ファイバー、集積回路基板、人工骨、碍子、陶磁器、耐熱タイル、耐火煉瓦、化粧品、掘削泥水、紙、ガラス、軽量土等の粘土代替材料、或いはセラミック等の添加剤及び成形材としても使用できる多機能性フライアッシュ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
石炭火力発電により発生する石炭等の焼却灰は、その一部がセメント原料またはコンクリート用混和材等の用途で利用されているものの、多くが埋立て処分されており、環境保護や資源活用の観点からも利用拡大が求められている。また汚水を水質浄化した後に生じる汚泥、都市ごみ等の焼却灰、高炉スラグ等に関しても、同様に埋立て処分以外の利用が求められている。また、製鉄所における溶銑処理工程で発生する焼却スラグ等の利用も求められている。
【0003】
ところで、火力発電所等から発生するフライアッシュは一般に所定の粒径分布を有し、その質量平均粒径は約20μm程度である。例えば、図6及び下表の表1に示すように火力発電所から発生したフライアッシュの原粒は10乃至30μmのものが殆どである。また、このようなフライアッシュは粒径が3.73μm以下における質量累積率(%)が18%にも満たない粗粒物である。
従来からフライアッシュの差別化が研究され、その差別化したフライアッシュをセメント及びコンクリート硬化体に用いてその高性能化の試みがなされている。
【0004】
【表1】
Figure 0004034945
【0005】
例えば、特開2000−7396号公報には、石炭火力発電所の電気集塵機で捕集されたフライアッシュを破砕することなく、そのまま10乃至25μmの間のある粒径で分級して当該粒径以下の細粒分を抽出し、これを所要形態に焼結させて、より大きな密度を有し、低吸水率、高強度な焼成材を得ることが記載されている。しかしながら、このような当該粒径以下の細粒分は、フライアッシュ全体の40%以下での利用にしかならず、フライアッシュが十分に活用されていない。
【0006】
また、特開2000−19560号公報、特開平11−322399号公報、及び特開平10−81554号公報には、微粉砕フライアッシュ、及びその微粉砕フライアッシュをコンクリート硬化体に用いることが記載され、このような微粉体フライアッシュは高温加圧成形されたコンクリート硬化体の早期高強度化を図ることができるとしている。
即ち、上記微粉末フライアッシュを製造する方法としては、ブレーン比表面積約0.31m/gのフライアッシュを約0.53m/gに微粉砕する際に、5%NaSO溶液ならびに水を微粉砕助剤として加えるものであり、その結果得られた微粉砕フライアッシュをコンクリートに混和して使用した場合、その高温加圧成形体は早期強度を発現するものである(特開平9−175846号公報)。
【0007】
従って、これらの公報に記載される微粉砕フライアッシュは、ブレーン比表面積が0.4m/g以上の使用を目的としているが、ここで使用される具体的な微粉砕フライアッシュは、ブレーン比表面積が0.4乃至0.5m/g程度のものであり、その平均粒径は約6μm程度のものである。また、このような微粉砕フライアッシュを得る目的は上記分級の労力及び時間の節約を考慮したものである。即ち、フライアッシュを微粉砕することにより、上記細粒に分級したフライアッシュと同等のものを得ることを目的としている。
しかしながら、上記粒径程度のフライアッシュの微粉砕化フライアッシュでは、高温加圧コンクリート成形体の早期強度を発現する程度の使用に留まり、上記フライアッシュの更なる利用が未だ課題として望まれている。
【0008】
また、近年、サブミクロン、ナノミクロン程度の無機微粒子、例えば、カーボンブラック、カオリン、タルク、二酸化チタン、亜鉛華、シリカフューム(平均粒径0.2μm、プレーン比表面積が20m/g)等が樹脂、ゴム、塗料、紙類、医薬、化粧品等の、配合剤、添加剤等として使用され、その添加効果としては、例えば、補強効果、絶縁効果、被覆効果等が挙げられ、その他の添加効果が期待されている。
しかしながら、このような無機微粒子は比較的コストがかかり、これの代替として安価な無機微粒子の添加剤が最近期待されている。
【0009】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は、廃棄利用される上記従来のフライアッシュの利用性、用途性に限界があることに鑑み、従来型フライアッシュを使用したセメント及びコンクリート硬化体の欠点である早期強度の低下といった問題を解決し、しかもセメント及びコンクリート硬化体以外のものにも多用途化できる多機能性フライアッシュ及びその製造方法を提供することを課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、フライアッシュの粉砕に際して、粉砕法を移送処理系とし、攪拌ロータの遠心力を利用してフライアッシュ間にせん断力を発生させると、従来のようにNaSO溶液等の微粉砕助剤を使用しなくても、従来以上にフライアッシュの微粒子化が短時間且つ経済的にできること、及びその微粒子化で得られた新規なフライアッシュが、セメント及びコンクリート硬化体を、従来型フライアッシュを用いた場合よりも高強度化させ、且つ普通ポルトランドセメントを用いたものと同程度又はそれ以上に発現させるだけでなく、更には樹脂、ゴム、塗料等に添加される安価な無機粒子添加剤としての新たな機能を十分に果たすことを見出し、上記課題を解決したものである。
【0011】
即ち、本発明に係る多機能性フライアッシュ及びその製造方法は、以下に記載されるものである。
(1)粉砕して微粒子化したフライアッシュであって、質量平均粒径(μm)が0.1乃至0.73μmの範囲にあり、且つ粒径3.73μm以下における質量累積率(%)が95%以上となり、また、ブレーン比表面積が2.5m/g以上であることを特徴とする多機能性フライアッシュ。
【0012】
(4) 上記(1)に記載される多機能性フライアッシュとセメントとからなるコンクリート硬化体。
(4) 上記(1)に記載される多機能性フライアッシュが配合されたゴム組成物。
(5) 上記(1)に記載される多機能性フライアッシュが配合された塗料組成物。
(6) 上記(1)に記載される多機能性フライアッシュが添加される樹脂組成物。
【0013】
また、上記多機能性フライアッシュの製造方法において、上記フライアッシュの粉砕に際して、回転手段の中央部からフライアッシュを導入し、該回転手段の遠心力でフライアッシュ間にせん断力を発生させながら微粒子化して回転手段の外周面に移動させながら排出し再び回転手段の中央部から導入して製造することを特徴とすることができる。
上記回転手段はケーシング内に配される攪拌ロータであり、該攪拌ロータの半径方向の周囲のケーシングに形成したセパレータを介して上記多機能性フライアッシュを排出することができる。
また上記フライアッシュを水分散媒系に分散したスラリーの状態で粉砕することが好ましい
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る多機能性フライアッシュ及びその製造方法の実施の形態及び実施例を、図面を参照しながら詳しく説明する。尚、本発明に係る多機能フライアッシュ及びその製造方法は、以下の実施の形態および実施例に限るものではない。
【0015】
図1は本発明に係る多機能フライアッシュを製造する際に使用する大量循環型粉砕機の概要図である。図2は図1に示す粉砕機の粉砕部の詳細な断面図である。図3は図1に示す粉砕機で原粒フライアッシュを粉砕したときの時間とフライアッシュの平均粒径サイズとの関係線図である。図4は走査型電子顕微鏡で示される原粒フライアッシュの20μmスケールでの形態図である。図5は走査型電子顕微鏡で示される本発明に係る多機能性フライアッシュの2μmスケールでの形態図である。図6は原粒フライアッシュの質量粒径分布棒グラフ及び質量累積率の曲線図である。図7は原粒フライアッシュを図1に示す粉砕機で300分間処理して製造した多機能フライアッシュの質量粒径分布棒グラフ及び質量累積率の曲線図である。
【0016】
本発明に係る多機能性フライアッシュは、粉砕して微粒子化したフライアッシュであって、質量平均粒径(μm)が0.1乃至0.73μmの範囲にあり、且つ粒径が3.73μm以下における質量累積率(%)が95%以上となる。
【0017】
上記多機能性フライアッシュに使用される焼却灰としては、石炭灰、鉱炉スラグ、乾燥汚泥の燃焼灰等の煙道ガス内からのフライアッシュ、火山灰、都市ごみ焼却灰、高炉スラグ等を挙げることができ、特に、火力発電所より発生するフライアッシュが好ましく、更に好ましくは、微粉炭燃焼により発生したものを電気集塵機で集めた、いわゆるEP灰、あるいはこれを粗粒化した既成灰などを挙げることができる。
【0018】
上記微粒子化前の火力発電所等から発生する原粒フライアッシュは通常、図6に示すように粒径の大きさが異なり、所定の質量粒径分布で表される。また、原粒フライアッシュは図4に示すように電子顕微鏡(被観察材を所定の平坦面に接着固定し、表面全体をAu蒸着した上で、走行型電子顕微鏡により観察する。)による形状探査では略球形状になっている。図6及び表1等からその質量平均粒径は約12μm程度であり、また図4に示す形状探査においても見掛けの粒径も13乃至16μm程度である。
【0019】
これに対して、本発明に係る多機能性フライアッシュは、原粒フライアッシュを後述する攪拌ロータによって微粒子化したものであり、質量平均粒径が0.1乃至0.73μmであり、且つ粒径が3.73μm以下における質量累積率(%)が95%以上である。特に、図に示すごとく、後述する大量循環型粉砕機で300分間以上処理した平均粒径が0.1乃至0.73μmの範囲で、質量累積率(%)が95%以上である。
上記多機能性フライアッシュをセメント及びコンクリート硬化体に添加したとき、最大荷重、圧縮強度、及び静弾性係数等の点で通常のポルトランドセメント及びコンクリート硬化体と遜色がなく、むしろ材齢(28日以降)が進むに従ってポルトランドセメント硬化体を上回る機械的強度がみられる。
【0020】
上記多機能性フライアッシュは図3に示すように大量循環型粉砕機の攪拌ロータによる微粒子化の処理時間によって質量平均粒径が異なり、図7に示す質量粒径分布を有するものが得られ、多機能性フライアッシュはフレーク状の形態をとり、ブレーン比表面積が2.5m/g以上になったときに、その多機能性フライアッシュは上記セメント硬化体に及ぼす効果の他にホワイトカーボン、微粉タルク、ハードクレーなどの代わりにゴム材の補強充填剤、塗料、及び電気的絶縁剤として配合できる。
【0021】
本発明に係る多機能性フライアッシュは、原粒フライアッシュをスラリー状に回転手段の中心部から導入し半径方向に排出することを繰り返しながら湿式粉砕したものであることを特徴とすることができる。
従来からの粉砕フライアッシュはアルカリ剤を助剤としてバッチ方式のミル内等で粉砕されるが、上記多機能性フライアッシュはスラリー状の流動粉砕を循環式で効率良く行ったものであるため、ある程度の時間を経過した多機能性フライアッシュは図7に示す如く、その粒径分布棒グラフが示すように粒径のバラツキが狭い比較的シャープなものが短時間で得られる。このような多機能フライアッシュをセメント及びコンクリート硬化体、強化樹脂組成物、タイヤ等のゴム組成物等に配合した場合、それらの絶縁性、機械的強度に対する効果が更に得られる。また、塗料組成物等の配合した場合は、熱安定性、耐候性に優れた薄い塗膜形成が可能となる。更に、粘土代替材としての利用も可能である。
【0022】
即ち、上記多機能性フライアッシュは、セメント及びコンクリート硬化体、タイヤ等のゴム組成物、塗料組成物、成形樹脂組成物、製紙等の配合剤、充填剤、添加剤、粘土代替材等として使用することができる。
例えば、多機能性フライアッシュをセメント及びコンクリート硬化体に適用できる。この場合、多機能性フライアッシュはセメントの一部代替材や骨材の一部代替材として使用しても良く、またコンクリートの混和剤及び混和材としても使用できる。
【0023】
上記セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱セメント等の各種ポルトランドセメント;アルミナセメント、石灰アルミナセメント等のアルミナセメント;高炉スラグ混合セメント、ポゾラン混合セメント、フライアツシユセメント等の各種混合セメントを挙げることができる。これらのうち、ポルトランドセメント、特に普通ポルトランドセメントが一般的であり好ましく使用できる。
【0024】
上記セメント及びコンクリート硬化体において、上記燃焼灰、セメント、繊維補強材以外に、山砂等の細骨材、粗骨材、石膏、及び無機混和剤、化学混和剤等の添加剤を配合することができる。
化学混和剤としては、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動剤等を挙げることができ、これらはセメント及びコンクリート硬化体のワーカービリティー及び耐久性を向上させることができる。
【0025】
上記多機能性フライアッシュは配合剤としてタイヤ等のゴム組成物に配合することができる。
通常、ゴム組成物にはカーボンブラック、ホワイトカーボン、クレー、タルク、炭酸カルシウム等が充填剤として使用される。特に、ハードクレー等は粒径2μm以下が80%を占め、このようなハードクレーはゴムに対して補強性を有する。上記多機能性フライアッシュはこのようなハードクレーの代替えとしてゴム組成物の補強剤として充填することができ、そのゴム組成物は十分に補強される。
また、多機能性フライアッシュは重質炭酸カルシウムの代替えとして充填することができる。即ち、重質炭酸カルシウムは、粗晶石灰石を機械的に粉砕して粒径が0.5〜3.0μmの軽質炭酸カルシウム程度に微粒子化したものであるが、これもまたゴム組成物の充填剤として用いられ、多機能性フライアッシュはこのような重質炭酸カルシウムの代替として充填剤とすることができる。
【0026】
上記多機能性フライアッシュは、樹脂組成物に配合することができ、その樹脂組成物の絶縁性等を高めることができる。
近年、半導体産業においては、半導体の高集積化が進むにつれ、半導体チップの封止材の高性能化が求められ、特に電気絶縁性、低膨張率などの機能が要求されている。これらの要求を満たすため、合成樹脂、特にアクリルアミド樹脂、エポキシ樹脂に、溶融処理された無機質粒子、特に溶融シリカ粒子をフィラーとして充填した封止材が一般に用いられている。このような封止材等は樹脂組成物の流動性が低下すると、様々な成形性不良を引き起こすが、平均粒径約12μmの原粒に比べて、本発明に係る平均粒径3.5μm以下、特に2.0μm以下の上記多機能性フライアッシュでは成形不良を起し難い。
【0027】
上記多機能性フライアッシュと使用される樹脂としては、アクリルアミド樹脂、エポキシ樹脂の他に、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネイト、マレイミド変成樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリルーアクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴムースチレン)樹脂等を挙げることができる。
【0028】
上記多機能性フライアッシュは液体塗料組成物及び粉体塗料組成物に配合剤として配合することができる。
上記液体塗料組成物にあっては塗膜をできる限り薄膜にすることが望まれる場合があり、しかも塗膜面の調外観を良好に得ることが望まれている。
上記液体塗料組成物に上記原粒フライアッシュを配合すると、その薄膜化は100μm以上でなければ、十分な調外観が得られず、本発明に係る多機能性フライアッシュ、即ち、質量平均粒径(μm)が0.1乃至0.73μmの範囲にあり、且つ粒径3.73μm以下における質量累積率(%)が95%以上となる多機能性フライアッシュを配合すると、薄膜化した塗膜面が十分な調外観を有することができる。
【0029】
上記塗装方法は、基材上に、光沢を有する塗膜を形成することのできる下塗塗料を塗装した後、上記塗料組成物を乾燥後に中塗塗装し、さらに、着色または非着色のクリアー塗料を上塗塗装するところに要旨を有する。この塗装方法の採用によって、調外観を薄膜で形成することができ、この意匠性を維持しながら多層塗膜としての物性を良好にすることができる。
上記液体塗料組成物には、従来塗料に用いられている各種添加剤、例えば、硬化促進剤、架橋剤、湿潤剤、粘性調節剤、増粘剤、改質剤、顔料、着色剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等の添加剤等を、本発明の目的を阻害しない範囲で添加することも可能である。
【0030】
通常、粉体塗料組成物、モーター鉄芯、セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサ、抵抗ネットワーク、インダクタなどのコイル製品、バリスタ、サーミスタ、ハイブリッドIC等の電気・電子部品の電気絶縁材料に用いる粉体塗料としてビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、酸無水物、ポリアミン等の硬化剤、第3級アミン、イミダゾール類、トリフェニルホスフィン等の硬化促進剤、充填剤、その他の添加剤を配合した粉体塗料がよく知られている。
【0031】
粉体塗料は流動浸漬法、静電流動浸漬法等の方法でモーター鉄芯や電気・電子部品に塗装されるものであり、経済的に有利なモーター類、電気・電子部品の絶縁被覆方法として広く用いられている。最近、絶縁塗膜厚としては、小型モーターであるにも拘わらず線積率を上げ高出力を得るために50μm以下の薄膜が要求されるようになってきている。従来、薄膜を得る為には液状塗料が用いられ、電着塗装、或いはスプレーコート法により塗装されるのが一般的であった。従来、薄膜を得る為には液状塗料が用いられ、電着塗装、或いはスプレーコート法により塗装されるのが一般的であった。しかし、液状塗料を用いたこれらの塗装法は絶縁性能を付与するには一定の膜厚にする迄6〜7回と数度に亘って塗装、乾燥(焼き付け)を繰り返さなければならないためコスト面で問題があり、又溶剤を用いているために作業者の安全の問題、環境への影響の問題が大きい。
【0032】
これらの問題点を解決するため無公害で、且つ一回の塗装で済むためコスト的に非常に有利な粉体塗装が注目されている。しかしながら、従来の粉体塗料では、粉体塗料の平均粒子径が60μm以上と大きく、薄膜を形成したときにピンホールを生じ易く耐圧不良の原因になる。
【0033】
上記原粒フライアッシュを充填剤として充填した粉体塗料組成物では薄膜塗装が困難であったが、上記多機能性フライアッシュ、即ち質量平均粒径(μm)が0.1乃至0.73μmの範囲にあり、且つ粒径3.73μm以下における質量累積率(%)が95%以上となる多機能性フライアッシュを充填剤として配合することにより、ピンホール等の生じない薄膜な塗膜を形成することができる。
【0034】
上記粉体塗料組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填剤、チクソトロピー付与剤を含有するエポキシ樹脂系粉体塗料であり、得られた粉体塗料の粒度は小さい方が好ましく、例えば50μmの膜厚を得るには平均粒径1〜50μmの範囲、さらに好ましくは5〜40μmである。平均粒径が50μm以上ではユズ肌が目立ち塗膜外観に劣る結果となる。
【0035】
次に、本発明に係る多機能性フライアッシュの製造方法について詳述する。
本発明に係る多機能性フライアッシュの製造方法において、上記フライアッシュの粉砕に際して、回転手段の中央部からフライアッシュを導入し、該回転手段の遠心力でフライアッシュ間にせん断力を発生させながら微粒子化して回転手段の外周面に移動させながら排出し再び回転手段の中央部から導入して製造することを特徴とする。
【0036】
即ち、本発明に係る多機能性フライアッシュの製造方法は、図1及び図2に示す大量循環型粉砕機10に使用される。図1に示すように、粉砕機本体12はライン(逆止弁を含む。)14を介して熱交換機16に接続され、熱交換機16はライン18を介してホールド槽20に接続される。ホールド槽20はライン22を介して循環用加圧ポンプ24に接続され、加圧ポンプ24はライン26を介して再び粉砕機本体12に接続される。
従って、本発明に係る多機能性フライアッシュの製造方法は上記原粒フライアッシュを、ライン14、18、22、26を介して、粉砕機本体12、熱交換機16、ホールド槽20及び加圧ポンプ24の間で循環しながら微粒子化を行っている。
【0037】
図2に示すように、粉砕機本体12の上記回転手段としては撹拌ロータ28が採用され、撹拌ロータ28はケーシング30内に配される攪拌ロータ28であり、攪拌ロータ28の半径方向の周囲のケーシング30に形成したセパレータ32を介して多機能性フライアッシュ34を分離、排出している。
即ち、上記原粒フライアッシュの粉砕に際して、ライン26及びケーシング30の導入口36を介して撹拌ロータ28の中央部からフライアッシュを導入する。撹拌ロータ28の遠心力でフライアッシュ間にせん断力を発生させながら微粒子化して撹拌ロータ28の外周面に移動させながらセパレータ32、排出口38を介してライン14に排出する。そして、ホールド槽20に一旦戻った後、再びポンプ24で加圧されて撹拌ロータ28の中央部から導入して製造している。
【0038】
本発明に係る多機能性フライアッシュの製造方法にあっては、上記原粒フライアッシュを水分散媒系に分散したスラリーの状態で粉砕してなることが望ましい。多機能性フライアッシュの製造に際しては乾式で行っても良いが、水等にフライアッシュを分散させて微粒子化を行った方が望ましい。このような湿式方法では、撹拌時に生じる熱等の放出がスムースであること、ホールド槽20での微粒子化したフライアッシュを簡単にスラリー化して均一なものとすることができ、また効率良く粉砕することができる。
【0039】
上記原粒フライアッシュの一回の処理量はその大型循環型粉砕機の大きさによるが、図3に示す如く単位時間のkg当として求めることができる。図3に示す如く、本発明に係る多機能性フライアッシュは所定時間の粉砕で得られる。
【0040】
以上の如く、本発明に係る多機能性フライアッシュにあっては、その質量平均粒径が極めて小さく、またプレーン比表面積も従来では考えられない大きさであるため、セメント硬化体の添加剤、補強剤或いは充填剤として十分に働き、しかも、ゴム組成物、樹脂組成物、塗料組成物等の多用途に用いることができる多機能性を有している。
また、本発明に係る多機能性フライアッシュの製造方法にあっては、循環式で回転手段の中央部から外周部に移動するようにして粉砕しているので、短時間で従来の微粒子化の程度と全くことなる超微粒子化フライアッシュの製造ができ、しかも消費電力が極めて少なくて済ませることができる。
【0041】
【実施例】
次に、添付図面を参照して本発明を実施例により更に詳述する。尚、本発明に係る多機能性フライアッシュ及びその製造方法は、以下の各実施例に限るものではない。
【0042】
(多機能性フライアッシュの製造)
図1及び図2に示す大量循環型粉砕機10のホールド槽18のCW/INから、図3に示す粒径分布及び表1に示した原粒フライアッシュ20kg、水20L(水)を系内にL投入して、その微粒子化を実施した。尚、撹拌から180分後、及び240分後に、増粘化したため、それぞれ2.2Lの水を後投入した。
【0043】
(実施例
上記粉砕機10による微粒子化を300分間したものを実施例の多機能性フライアッシュとした。実施例のフライアッシュ質量累積率(%)、頻度率(%)、DV値、MV値及びCS値を表に示した。この結果、多機能性フライアッシュは、その質量平均粒径が0.73μmとなり、粒径3.73μmにおける質量累積率(%)は99.66%であった。
【表
Figure 0004034945
【0044】
(実施例
実施例で製造した多機能フライアッシュ(ブレーン比表面積2.73m/g、BET比表面積11.43m/g)を表に示すようにコンクリート硬化体組成で各コンクリート硬化体を製造した。また。尚、通常のフィライアッシュを用いたものを比較例1とし、フライアッシュ無添加の純粋なコンクリート硬化体を参考例1とした。また、これらのコンクリート硬化体の材齢7、及び28日の寸法、質量、単位容積質量、最大荷重、圧縮強度、静弾性係数を調べた。その結果を表4及び表5に示した。
【0045】
【表
Figure 0004034945
中において、Nは太平洋社製 普通ポルトランドセメントであり、FACは宇部・三菱社製 フライアッシュセメントB種であり質量比18%をセメントに置換したものであり、S1は、大井川産陸砂であり、Gは、青梅産砕石(2005)であり、AE減水剤は、NMB社製 ポゾリスNo70(C+F)*0.25%であり、AE助剤はNMB社製 マイクロエア795(空気量4.5±1.5%)である。
【0046】
【表
Figure 0004034945
【0047】
【表
Figure 0004034945
【0048】
及び表の結果より、実施例のコンクリート硬化体は材齢7日おいて従来型フライアッシュを用いた比較例1のコンクリート硬化体より明らかに圧縮強度が優れ、参考例1の普通ポルトランドセメントのものコンクリート硬化体とほぼ同程度の圧縮強度となった。また、材齢28日において比較例1のコンクリート硬化体より明らかに圧縮強度が優れ、参考例1の普通ポルトランドセメントのみのコンクリート硬化体より1割程度高い圧縮強度が得られた。
【0049】
(実施例
実施例で得られた質量平均粒径が0.73μmの多機能性フライアッシュ30質量%とフッ素樹脂(フッ化ビニリデン樹脂)70質量%とからなる水性塗料をセメント表面及びガラス(鏡)表面に塗布した。この結果、作業において垂れ止め効果が十分に認められると共に薄膜とすることができた。また、塗膜面は隠ぺい性、機械的強度(引っかき性)、耐火性、密着性、熱安定性、及び耐候性が十分に認められ、硬度がアップした。
【0050】
(実施例
実施例で得られた質量平均粒径が0.73μmの多機能性フライアッシュ30質量%とアクリル樹脂70質量%とからなる有機溶媒系塗料をセメント表面及びガラス(鏡)表面に塗布した。この結果、作業において垂れ止め効果が十分に認められた。塗膜面は隠ぺい性、機械的強度(引っかき性)、耐火性、密着性、熱安定性、及び耐候性が十分に認められ、硬度がアップした。
【0051】
(実施例
実施例で得られた質量平均粒径0.73μmの多機能フライアッシュ30質量%と6ナイロン70質量%との割合で配合して、以下の条件下の二軸押出機で混練してストランドカッターで強化樹脂をペレットとし、次に射出成形機で試験形状の強化樹脂成形物を製造し、以下の物性値を調べた。その結果を表6に示した。
・条件
回転数94rpm、型締力75トン、シリンダー温度、成形温度270℃、金型温度80℃である。
【0052】
【表
Figure 0004034945
以上のことから、多機能フライアッシュを添加したものは、引っ張り強度は劣るものの曲げ強さが無添加強化樹脂より優れたものとなることが分かった。従って、多機能性フライアッシュは樹脂組成物に添加剤として十分に配合できることが分かった。
【0053】
【効果】
本発明に係る多機能性フライアッシュ及びその製造方法によれば、粉砕して微粒子化したフライアッシュであって、質量平均粒径(μm)が0.1乃至0.73μmの範囲にあり、且つ粒径3.73μm以下における質量累積率(%)が95%以上となるので、またスラリー状に回転手段の中心部から導入して半径方向に流出させる湿式粉砕して製造されるので、従来のフライアッシュを用いたセメント及びコンクリート硬化体の早期強度の低下といった問題を克服し、その硬化体の28日強度並びに長期強度も増進させ、しかもセメント硬化体以外のものにも多用途化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明に係る多機能フライアッシュを製造する際に使用する大量循環型粉砕機の概要図である。
【図2】 図2は図1に示す粉砕機の粉砕部の詳細な断面図である。
【図3】 図3は図1に示す粉砕機で原粒フライアッシュを粉砕したときの時間とフライアッシュの平均粒径サイズとの関係線図である。
【図4】 図4は走査型電子顕微鏡で示される原粒フライアッシュの20μmスケールでの形態図である。
【図5】 図5は走査型電子顕微鏡で示される本発明に係る多機能性フライアッシュの2μmスケールでの形態図である。
【図6】 図6は原粒フライアッシュの質量粒径分布棒グラフ及び質量累積率の曲線図である。
【図7】 図7は原粒フライアッシュを図1に示す粉砕機で300分間処理して製造した多機能フライアッシュの質量粒径分布棒グラフ及び質量累積率の曲線図である。
【符号の説明】
10 大量循環型粉砕機
12 粉砕機本体
16 熱交換機
20 ホールド槽
24 循環用加圧ポンプ
28 攪拌ロータ
30 ケーシング
32 セパレータ

Claims (8)

  1. 粉砕して微粒子化したフライアッシュであって、質量平均粒径(μm)が0.1乃至0.73μmの範囲にあり、且つ粒径3.73μm以下における質量累積率(%)が95%以上となり、また、ブレーン比表面積が2.5m/g以上であることを特徴とする多機能性フライアッシュ。
  2. 上記請求項1に記載の多機能性フライアッシュとセメントとからなるコンクリート硬化体。
  3. 上記請求項1に記載の多機能性フライアッシュが配合されたゴム組成物。
  4. 上記請求項1に記載の多機能性フライアッシュが配合された塗料組成物。
  5. 上記請求項1に記載の多機能性フライアッシュが添加される樹脂組成物。
  6. 上記請求項1に記載される多機能性フライアッシュの製造方法において、上記フライアッシュの粉砕に際して、回転手段の中央部からフライアッシュを導入し、該回転手段の遠心力でフライアッシュ間にせん断力を発生させながら微粒子化して回転手段の外周面に移動させながら排出し再び回転手段の中央部から導入して製造することを特徴とする多機能性フライアッシュの製造方法。
  7. 上記回転手段はケーシング内に配される攪拌ロータであり、該攪拌ロータの半径方向の周囲のケーシングに形成したセパレータを介して上記多機能性フライアッシュを排出することを特徴とする請求項6記載の多機能性フライアッシュの製造方法。
  8. 上記フライアッシュを水分散媒系に分散したスラリーの状態で粉砕してなることを特徴とする請求項6記載の多機能性フライアッシュの製造方法。
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