JP4034419B2 - 路盤材料として再利用するための脱水ケーキの処理方法 - Google Patents

路盤材料として再利用するための脱水ケーキの処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無機汚泥脱水ケーキの処理方法、とりわけ、砕石場の砕石洗浄排水の凝集処理に伴って発生する脱水ケーキの処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
砕石工場やダム工事現場から大量に発生する砕石洗浄排水は、通常、凝集剤を加えてシックナーに導き、そこでSS分(浮遊懸濁物)を沈降分離し、沈降スラッジはフィルタープレスで脱水し、上澄み液は、放流または洗浄水として再利用する方法が採用されている。ここで発生する脱水ケーキは産業廃棄物に該当するから、捨て場の確保がむずかしく、また、捨て場があっても処分費が高くついて採算を圧迫する要因になっている。浚渫汚泥脱水ケーキ、土木工事に伴う濁水処理の結果生じた脱水ケーキ、石材加工に伴う濁水処理の結果生じた脱水ケーキなども、同様に捨て場の確保がむずかしく、また、捨て場があっても処分費が高くついて問題になっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来、産業廃棄物として捨てられてきた無機汚泥脱水ケーキ、たとえば、砕石洗浄排水の凝集処理に伴って発生する脱水ケーキ等の無機汚泥脱水ケーキを物理的、化学的に処理し、路盤材料として再利用出来るようにする方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、無機汚泥脱水ケーキを必要に応じ解砕した後、水溶性高分子、とりわけ、カルボキシル基を含む水溶性合成高分子を加えてパドルミキサー等の混合機により混合造粒し、つぎに、セメント系固化剤及び/又は石灰系固化剤及び/又は生石灰を加えて、同じくパドルミキサー等の混合機により混合整粒し、さらに、分級工程を経た生成物を堆積、養生することからなる脱水ケーキの処理方法に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
脱水工程から得られる無機汚泥脱水ケーキの形状は、脱水機の種類で異なる。
例えば、スクリュープレスから発生する脱水ケーキは、はじめから解砕された状態で存在するが、フィルタープレスから発生する脱水ケーキは、小さいもので50cm角、大きいもので200cm角、厚み1〜5cmの盤状をしており、そのままでは混合機に投入出来ない。そこで、投入可能な大きさ、例えば、30cm角またはそれ以下の大きさに解砕してからパドルミキサー等の混合機に投入する。解砕の方法としては、フィルタープレスのケーキの落ち口に帯鉄製のカッターを長手方向に数本もうけ、ケーキが落下するとき、そのカッターに当たる事で解砕される方式が簡便であるが、より積極的な解砕の方法としては、多軸(3軸または4軸)のロータリーハンマーを有する解砕機、例えば、奥多摩工業社製のS−4Rや、回転するクシ刃と固定刃により解砕を伴う特開平4−281900号記載の方法などを用いるのがよい。
【0006】
必要に応じ解砕を終えた脱水ケーキは、次にパドルミキサー等の混合機に送られ、そこで水溶性高分子と混合される。水溶性高分子と混合が進むにつれて、造粒される。
水溶性高分子として使用できるのは、天然系では、ガム類またはその誘導体類、でんぷんまたはその誘導体類、アルギン酸ソーダ、半合成系では、セルロース誘導体類たとえばカルボキシルメチルセルロースなどである。
また、カルボキシル基を含む水溶性合成高分子としては、アクリル酸またはその塩とアクリルアミドとの共重合体、マレイン酸またはその塩と酢酸ビニルとの共重合体、アクリルアミドの単独重合体を部分加水分解したもの、アクリル酸ソーダの単独重合体などを使用できるが、好ましくはアクリル酸またはその塩とアクリルアミドとの共重合体が良い。共重合体の重合度は100万以上、好ましくは500万以上である。
【0007】
水溶性高分子の添加量は、脱水ケーキから水分を除いた重量(無水重量)に対し外割りで天然系の場合にあっては、0.1〜2.6重量%、好ましくは0.2〜1.3重量%、半合成系の場合にあっては、0.1〜2.0重量%、好ましくは0.2〜1.3重量%、合成系の場合にあっては、0.02〜0.7重量%、好ましくは0.05〜0.4重量%である。それ以上では経済的に合わないし、それ以下では粒状化しない。なお、水分の重量については、JIS A 1203「土の含水量試験方法」に従って測定した。
水溶性高分子は、粉末で添加してもよいし、水溶性高分子の微粒を適当な液体に高濃度で分散させたものを添加してもよい。また、天然系、半合成系、合成系の水溶性高分子を適宜、組み合わせて使用しても良い。原料となる脱水ケーキの水分が不足し造粒できない場合は、若干量の水分を補足する。
【0008】
粒状化した脱水ケーキは、さらに、パドルミキサー等の混合機でセメント系固化剤及び/又は石灰系固化剤及び/又は生石灰と混合される。
本発明で用いるセメント系固化剤としては、ジオライトシリーズ(秩父小野田社製)、アサノクリーンセットシリーズ(日本セメント社製)、UKCシリーズ(宇部興産社製)などを挙げることが出来る。また、石灰系固化剤としては、マスターズシリーズ(奥多摩工業社製)、グリーンライムシリーズ(宇部マテリアルズ製)、リョウコウライムシリーズ(菱光石灰工業社製)などを挙げることが出来る。
固化剤としては、セメント系固化剤、石灰系固化剤、生石灰のうちから一種を選択して用いてもよいし、これらを二種以上組み合わせて用いても良い。石灰系固化剤や生石灰と混合すると水溶性高分子は水に不溶の形にかわり、安定性が向上する。
固化剤の添加量は、無機汚泥脱水ケーキから水分を除いた重量(無水重量)に対し、1〜13重量%、好ましくは2〜10重量%である。ここでいう添加量は、セメント系固化剤、石灰系固化剤、生石灰のうちから一種を選択して用いる場合は、その一種の添加量であり、これらを二種以上組み合わせて用いる場合は、その合計した量である。1重量%未満では必要な強度が得られないし、13重量%をこえると経済的に成り立たなくなるばかりでなく、造粒後の粒子同士が二次的に固結し、大きな塊となって、最終の分級工程ではじかれる可能性が高まる。
固化剤と混合される前の中間処理物の粒度は、40mm以上の粗い塊を10%以上含むが、パドルミキサーでセメント系固化剤及び/又は石灰系固化剤及び/又は生石灰と混合が進むにつれ整粒され、殆どが10mm以下の小粒状になる。
【0009】
水溶性高分子や固化剤と混合するためのパドルミキサーは、バッチ式でも連続式でも良い。連続式の場合、1台のものを両方の目的に、すなわち、前半を水溶性高分子との混合用として、後半を固化剤との混合用として使用してもよいし、2台のミキサーを準備し、水溶性高分子との混合用、固化剤との混合用に使い分けても良い。
なお、混合機としては、造粒性能に優れたパドルミキサーを用いることが好ましいが、これに限定されるわけでなく、リボンミキサー、ドラム式混合機、パン型ミキサーなどを用いて混合を行ってもよい。とくに固化剤との混合用には、より簡単な混合装置、たとえば、バイブレーテングシュート、邪魔板付シュートなど、水溶性高分子で造粒された粒子表面を固化剤で被覆できる装置であれば、どんなものでも使用できる。
また、水溶性高分子との混合、固化剤との混合の両方にパドルミキサーを用いる場合、いずれか一方のみパドルミキサーを用いる場合もあるが、特に両方の混合工程に用いることが好ましい。
【0010】
固化剤と混合された処理土は、振動篩で所定の粒度以上の粒をカットしてからヤードに運ばれ、堆積養生される。
分級後の処理物の粒子の大きさは、粒径1mm以上が95重量%以上で、かつ、粒径20mm以上が10%重量以下であるように調整するのが良い。
【0011】
養生期間は、3〜7日間である。養生につれ粒子内部でポゾラン反応が進行し、改良土の強度が上昇する。強度は、同じ添加量で比較すると、セメント系固化剤がもっとも強く、石灰系固化剤、生石灰の順にやや弱くなる。
【0012】
本発明における無機汚泥脱水ケーキとしては、砕石工場やダム工事現場から大量に発生する砕石洗浄排水を処理した場合に生じる脱水ケーキが好適に用いられるが、浚渫汚泥脱水ケーキ、土木工事に伴う濁水処理の結果生じた脱水ケーキ、石材加工に伴う濁水処理の結果生じた脱水ケーキなども用いられる。
本発明では、改良土をもっぱら有価物として再利用することにあり、その具体的用途としては、路盤材料、参考例として、盛土材料、築堤材料、埋め戻し材料、裏込め材料などへの利用が考えられる。
特に好ましくは、路盤材料への利用である。路盤材料としての利用を考えた場合、処理土は、クラッシャーラン、粒度調整砕石、再生路盤材などと混合して用いるから、材料分離が起きにくい粒度分布が求められるほか、配合比を高くしても混合後の修正CBR値やPIが規格値内におさまるよう、処理土自体の強度をできるだけ高める必要がある。本発明における分級後の処理物の粒の大きさ、すなわち、1mm以上が95重量%以上で、かつ、20mm以上が10重量%以下という基準は、CBR値を高く保つことが出来、かつ、クラッシャーラン、粒度調整砕石、再生路盤材などと混合した場合、材料分離が起きにくい粒度の分布として決められたものである。
一方、参考例として、盛土材料、築堤材料、埋め戻し材料、裏込め材料などに利用する場合には、改良土をそのまま用いることが多いから、建設発生土利用技術マニュアル(土木研究センター発行)の土質区分基準に適応する品質(コーン指数等)が求められる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1〜5
砕石洗浄排水処理からでた脱水ケーキ(水分率23%)2キログラム(水分460g、無水部分1540g)を卓上型の混練機にとり、アクリルアミドとアクリル酸ソーダの共重合物(東亜合成社製A−140)の粉末を2グラム(脱水ケーキ無水部分に対し0.13重量%)添加し、3分間、練り混ぜた。次に、生石灰または石灰系固化剤(奥多摩工業社製マスターズ582)またはセメント系固化剤(秩父小野田セメント社製ジオライト10)を脱水ケーキ無水部分に対して1.3〜13重量%添加して1分間練り混ぜた。さらに処理物を篩にかけて1mm以下および10mm以上をカットした。こうして得られた処理物を3日間、室内で野積み養生後、15cmモールドに詰め、JIS A 1210締固め試験法に従い、2.5Kgランマーで3層67回突き固め、さらに、室内養生を6日間、水浸養生を4日間行い、JISA1211路床土支持力比試験方法に基づきCBR値を測定した。結果は表1の通りであった。
【0014】
【表1】
Figure 0004034419
「石灰系」は、奥多摩工業社製の石灰系固化剤マスターズ582を表す。
「セメント系」は、秩父小野田社製のセメント系固化剤ジオライト10を表す。
【0015】
実施例6〜9
砕石洗浄排水処理からでた脱水ケーキ(水分率23%)2キログラム(水分460g、無水部分1540g)を卓上型の混練機にとり、インド産天然グアガム(三栄薬品貿易扱い品)またはアルファー化でんぷん(日澱化学社製)またはアルギン酸ソーダ(日本触媒社製試作品)またはカルボキシメチルセルロース(日本製紙社製1400LC)を所定量添加し、3分間、練り混ぜた。次に、生石灰を脱水ケーキ無水部分に対して3.9重量%添加して1分間練り混ぜた。さらに処理物を篩にかけて1mm以下および10mm以上をカットした。こうして得られた処理物を3日間、室内で野積み養生後、15cmモールドに詰め、JIS A 1210締固め試験法に従い、2.5Kgランマーで3層67回突き固め、さらに、室内養生を6日間、水浸養生を4日間行い、JIS A 1211路床土支持力比試験方法に基づきCBR値を測定した。結果は表2の通りであった。
【0016】
【表2】
Figure 0004034419
(注)いずれも生石灰を脱水ケーキ無水部分に対して3.9重量%使用した。
【0017】
実施例10
砕石洗浄排水処理からでた脱水ケーキ(水分率22%)2キログラム(水分440g、無水部分1560g)を卓上型の混練機にとり、アクリルアミドとアクリル酸ソーダの共重合物を2グラム(脱水ケーキ無水部分に対し0.13重量%)添加し、3分間、練り混ぜた。次に、生石灰または石灰系固化剤(奥多摩工業社製マスターズ582)を脱水ケーキ無水部分に対して3.8重量%添加して1分間練り混ぜた。処理物を3日間、室内で野積み養生後、生成物の粒度分布を測定した。結果を表3に示す。
【0018】
【表3】
Figure 0004034419
【0019】
実施例1〜9が示すように、フィルタープレスから排出された無機汚泥脱水ケーキを必要に応じ解砕した後、パドルミキサーで水溶性高分子を加えて混合造粒し、つぎに、同じくパドルミキサーでセメント系固化剤、または石灰系固化剤、または生石灰を加えて混合、整粒し、さらに、分級工程を経た生成物を数日間程度、堆積、養生することにより、強度に優れた粒状の改良土を得ることができる。
また、実施例10より、同様の方法で改良した改良土は、その74重量%以上が1mm以上9.52mm以下の粒状になっており、これを砕石に混合して路盤材料とする場合は粉末に比べて分離が起きにくいし、参考例として、盛土材料、築堤材料、埋め戻し材料、裏込め材料などとして利用する場合も、ハンドリング性がよいこと、水浸透性、通気性が高いことなどすぐれた特徴を有するから、高い費用を払って産業廃棄物として処分することに比較し、得られる経済効果は限りなく大きい。
【0020】
【発明の効果】
浚渫汚泥脱水ケーキ、土木工事に伴う濁水処理の結果生じた脱水ケーキ、石材加工に伴う濁水処理の結果生じた脱水ケーキなどの脱水ケーキを、産業廃棄物として処理する必要がなくなり、これらを路盤材料として有効利用することができる。

Claims (6)

  1. 無機汚泥脱水ケーキに水溶性高分子を加えて混合し、つぎにセメント系固化剤、石灰系固化剤、及び生石灰からなる一群から選ばれた一以上を加えて混合し、さらに、分級工程を経た生成物を堆積、養生することを含む路盤材料として再利用するための脱水ケーキの処理方法であって、上記セメント系固化剤、石灰系固化剤、及び生石灰からなる一群から選ばれた一以上の総添加量が、上記無機汚泥脱水ケーキの無水部分に対し1〜13重量%であり、上記分級工程後の処理物の粒子の大きさが、粒径1 mm 以上が95重量%以上で、かつ、粒径20 mm 以上が10重量%以下である、路盤材料として再利用するための脱水ケーキの処理方法
  2. 上記水溶性高分子が、ガム類、ガム類の誘導体類、でんぷん、でんぷんの誘導体類、アルギン酸ソーダ、及びセルロース誘導体類からなる一群から選ばれた一以上である請求項1に記載の路盤材料として再利用するための脱水ケーキの処理方法。
  3. 上記水溶性高分子が、カルボキシル基を含む水溶性合成高分子である請求項1に記載の路盤材料として再利用するための脱水ケーキの処理方法。
  4. 上記水溶性高分子の添加量が、上記無機汚泥脱水ケーキの無水部分に対し、天然系の場合にあっては0.1〜2.6重量%、半合成系の場合にあっては0.1〜2.0重量%、合成系の場合にあっては0.02〜0.7重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の路盤材料として再利用するための脱水ケーキの処理方法。
  5. 上記無機汚泥脱水ケーキが、砕石場の砕石洗浄排水の凝集処理に伴って発生する脱水ケーキである請求項1〜4のいずれかに記載の路盤材料として再利用するための脱水ケーキの処理方法。
  6. 上記水溶性高分子との混合と、上記セメント系固化剤、石灰系固化剤、及び生石灰からなる一群から選ばれた一以上との混合とのいずれか一方又は両方の混合に、パドルミキサーを使用する請求項1〜5のいずれかに記載の路盤材料として再利用するための脱水ケーキの処理方法。
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