JP4033654B2 - 流動性、押出し性改良剤マスターバッチ - Google Patents

流動性、押出し性改良剤マスターバッチ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム材料の流動性、押出し性を良好とするマスターバッチに関し、更に詳しくは、特定のシランカップリング剤を含有するマスターバッチであって、混練後のコンパウンドの粘度変化が少ない流動性、押出し性改良剤マスターバッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)等のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れており、自動車用や家電製品等のシール部品や隙間うめ(詰め物)材として多く用いられている。これらの製品は、ゴムの連続押出し成形法によって得られる製品である。
【0003】
押出し用ゴム組成物としては、連続的に押出機にフィード可能であることが求められ、押出し前に予備成形されるリボン状コンパウンドが保管中に亀裂が入り割れないこと、また、ちぎれないことが必要である。
また、押出し成形中は、押出し断面が変化しないこと、つまり、ダイスウエル比が変化しないことが求められる。このダイスウエル比が変化するとグラスラン製品や窓枠製品の断面形状が変化することで製品のシール性能が低下し、製品化できないことになる場合がある。
【0004】
これに加えて、EPDMにカーボンブラック等のゴム充填剤を配合した押出し製品では、原因不明の異物が発生することが多々ある。原因を調査すべく、その異物部分を分析しても、ゴム基材と何ら変わらないものから構成されているとの結果となることが多い。これは、しばらくすると自然に解消され、また、ある時期に同じような不具合が発生するといった不可解な現象が発生することがある。
【0005】
例えば、ゴム充填剤としてカーボンブラックを配合した場合、混練による剪断エネルギーは、ポリマー中にカーボンブラックを分散させ、同時にカーボンゲルなる物理結合層を形成し、加硫ゴム材料としてはポリマー/カーボンブラック複合化により優れた機械的強度が発現されるといわれている。しかし、同時にカーボンブラック粒子に吸着しているポリマー分子を引きちぎる現象が起こると、そこで発生したラジカル同士が化学結合することにより、先に述べたカーボンゲルとは全く異なる性質を示し、固く、もろいコンパウンドになってしまう。押出し製品を成形するに当たり、この現象が発生すると前記の不具合が生じるのである。
このような問題を解決すべく、特開平7−138379号公報には、イオウやイオウ化合物といったラジカル捕捉を目的としてポリスルフィド化合物を配合することが開示されている。
【0006】
しかし、混練機中にこれらのイオウ又はイオウ化合物をポリマー100gに対して1.0×10-2mol程度投入すると、配合物中に配合されている酸化亜鉛(ZnO)の存在により、架橋反応が開始し、ゲル(やけ・化学的)を生じてしまう問題があった。その量の1/10である1.0×10-3mol程度配合すれば、混練機中のやけの心配はないが、その量では少なすぎるため、配合されたカーボンブラック周辺に十分にそれが分散されず、目的を果たせないという問題があった。つまり、ラジカルが発生しているカーボンブラック周辺に効果的にラジカル捕捉剤を分散させるゴム薬品が求められていた。
【0007】
本発明者らは、アルコキシシラン化合物は、該化合物が有するアルコキシ基等がカーボンブラック表面の活性基(-OH、-H、-CO-、-COOH)との親和性が高いため、素早く分散(展開)し、これらのラジカルを捕捉する効果を有することを発見した。しかし、このアルコキシシラン化合物は液体であるため、大きな混練機に投入するときには、投入口や混練されている部分に届くまでに混練機外壁に付着したりして、カーボンブラック/ポリマーが混ざり合っている肝心の場所に規定量添加できないという問題があった。また、ゴム秤量工程においても、液体は秤量しにくいため、敬遠される形態である。
混練機中の混練されている場所へアルコキシシラン化合物が外壁に付着することなく、運ばれる材料が求められていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アルコキシシラン化合物を含む固体状、特に、ゴム状ペレット、ゴム状シートのゴム薬品マスターバッチで存在し、そのマスターバッチがゴム秤量工程で秤量性が良好で、アルコキシシラン化合物のブリードもなく、シート、ペレット同士のくっつきもないものであって、かつ、そのマスターバッチが、前記アルコキシシラン化合物の配合量相応の効果を発現し、マスターバッチとして混練物に取り込まれるに際し、そのもの自身が異物となることなく、また、短時間に分散し、該化合物を使用する本来の目的であるゴム用押出機にフィードされる前に準備されるリボン状コンパウンドの割れやちぎれがなく、また、押出し断面形状が安定した押出し成形ゴム製品を得ることができ、また、型物成形においても射出成形でのリボンのちぎれがなく、型内流動性が優れ、機械的特性や良好な圧縮永久歪を有する製品が確実に得られることを可能とするマスターバッチを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の発明を包含する。
(1)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンと、必要に応じて非共役ポリエンとを共重合させてなるゴム(A)と、
DBP吸油量100ml/100g以上のゴム充填剤(B)と、
次式(I):
【化2】
Figure 0004033654
[式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基であり、R1は炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、nは0、1又は2であり、R2は炭素数1〜6の2価の直鎖状又は分岐状の炭化水素基であり、R3は炭素数6〜12のアリーレン基であり、m及びpは、それぞれ0又は1であり、かつ、mとpとが同時に0となることはなく、qは1又は2であり、Bは、qが1であるとき−SCN又は−SHであり、qが2であるとき−Sx−(式中、xは2〜8の整数である。)である。]
で示されるアルコキシシラン化合物(C)とからなる組成物であって、
(C)と(B)との重量比((C)/(B))が1.5〜0.6の範囲にあることを特徴とする組成物。
(2)ゴム充填剤(B)の窒素吸着比表面積が20〜150m2/gである前記(1)に記載の組成物。
(3)ゴム充填剤(B)がカーボンブラックである前記(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)ゴム(A)100重量部に対して、(B)と(C)との合計量が200〜1100重量部である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)ゴム(A)のエチレン/α−オレフィン比(モル比)が60/40〜80/20であり、かつ、極限粘度[η]が2.5〜7.0dl/gである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)更に、周期律表第6族の元素(但し、酸素を除く。)からなる単体及び/又は化合物(但し、前記式(I)で示されるアルコキシシラン化合物を除く。)並びに老化防止剤から選ばれる少なくとも一種を合計で10重量%以下含有する前記(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の組成物は、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンと、必要に応じて非共役ポリエンとを共重合させてなるゴム(A)と、DBP吸油量100ml/100g以上のゴム充填剤(B)と、前記式(I)で示されるアルコキシシラン化合物(C)とからなる組成物であって、(C)と(B)との重量比((C)/(B))が1.5〜0.6の範囲にあることを特徴とするものである。
本発明の組成物は、ゴム材料の流動性、押出し性を良好とするマスターバッチとして用いることができる。
【0011】
[エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム(A)]
本発明に用いるエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム(A)は、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンと、必要に応じて非共役ポリエンとを共重合、好ましくはランダム共重合させてなるゴムであって、以下のような特性を有しているものが好ましい。
【0012】
(i)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのモル比(エチレン/α−オレフィン)
エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム(A)は、(a)エチレンから導かれる単位と(b)炭素数3〜20のα−オレフィン(以下単に「α−オレフィン」ということがある。)から導かれる単位とを、通常60/40〜80/20、好ましくは70/30〜80/20のモル比[(a)/(b)]で含有している。
このモル比が前記範囲内にあると、マスターバッチとしての状態(形状)が安定し、かつ、混練時の環境温度に対してもそのマスターバッチの硬さが変化することが少なく、アルコキシシラン化合物(I)をすばやくカーボンブラック/ポリマー界面へ分散させることができる。
【0013】
(ii)極限粘度
エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム(A)の135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、2.5〜7.0dl/g、好ましくは3.5〜5.5dl/gである。
この極限粘度[η]が前記範囲内にあると、ゴム充填剤にアルコキシシラン化合物(I)が保持された状態を、マスターバッチとして形状を保持し、柔軟性、配合フィラー(カーボンブラック)へのアルコキシシラン化合物(I)の分散性が良好となる。
【0014】
エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム(A)における炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらのα−オレフィンのうち、炭素数3〜8のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが特に好ましい。
【0015】
エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム(A)は、エチレン及び炭素数3〜20のα−オレフィンに加えて、必要に応じて非共役ポリエンを共重合させてもよい。このような非共役ポリエンとしては、環状又は鎖状の非共役ポリエンを用いることができる。
【0016】
環状の非共役ポリエンとしては、例えば、メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン等のジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,5−ノルボルナジエン等のトリエンが挙げられる。
【0017】
また、鎖状の非共役ポリエンとしては、例えば、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、6−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、6−エチル−1,6−オクタジエン、6−プロピル−1,6−オクタジエン、6−ブチル−1,6−オクタジエン、6−メチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,6−ノナジエン、6−エチル−1,6−ノナジエン、7−エチル−1,6−ノナジエン、6−メチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,6−デカジエン、6−メチル−1,6−ウンデカジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等のジエン;4−エチリデン−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−7−メチル−1,6−ノナジエン、4−エチリデン−6,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−6,7−ジメチル−1,6−ノナジエン、4−エチリデン−1,6−デカジエン、4−エチリデン−7−メチル−1,6−デカジエン、4−エチリデン−7−メチル−6−プロピル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−1,7−ノナジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、4−エチリデン−1,7−ウンデカジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ウンデカジエン、4−エチリデン−7,8−ジメチル−1,7−ノナジエン、4−エチリデン−7,8−ジメチル−1,7−デカジエン、4−エチリデン−7,8−ジメチル−1,7−ウンデカジエン、7−エチル−4−エチリデン−8−メチル−1,7−ウンデカジエン、4−エチリデン−7,8−ジエチル−1,7−デカジエン、4−エチリデン−9−メチル−1,8−デカジエン、4−エチリデン−8,9−ジメチル−1,8−デカジエン、4−エチリデン−10−メチル−1,9−ウンデカジエン、4−エチリデン−9,10−ジメチル−1,9−ウンデカジエン、4−エチリデン−11−メチル−1,10−ドデカジエン、4−エチリデン−10,11−ジメチル−1,10−ドデカジエン、3,7−ジメチル−1,4,8−デカトリエン等のトリエンが挙げられる。
これらの非共役ポリエンは、単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0018】
[ゴム充填剤(B)]
本発明で用いる主なゴム充填剤は、カーボンブラックで、これに必要に応じて、ケイ酸やケイ酸塩、クレー、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムが1種類以上ブレンドされてもよい。
【0019】
ゴム充填剤は、アルコキシシラン化合物(I)をマスターバッチ内で保持し、混練時には、混練機内にすばやく該化合物を分散させるものでなければならない。そのため、ゴム充填剤の窒素吸着比表面積は通常20〜250m2/g、好ましくは20〜150m2/g、更に好ましくは60〜120m2/gであり、DBP吸油量は100ml/100g以上、好ましくは150〜600ml/100g、更に好ましくは300〜500ml/100gである。ゴム充填剤の窒素吸着比表面積が250m2/gを超えると、本マスターバッチを配合することにより、そこで用いたカーボンブラック自身が製品の異物発生の原因となるため好ましくなく、20m2/gより少ないと、アルコキシシラン化合物がマスターバッチからブリードアウトするため好ましくない。ゴム充填剤のDBP吸油量が100ml/100g未満であると、アルコキシシラン化合物がマスターバッチからブリードアウトする、また、ペレットやシート形状にできない。
【0020】
カーボンブラックとしては、SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等を用いることができる。シリカの具体例としては、煙霧質シリカ、沈降性シリカ等が挙げられる。
これらのゴム充填剤は、メルカプトシラン、アミノシラン、ヘキサメチルジシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の反応性シランあるいは低分子量のシロキサン等で表面処理されていてもよい。
【0021】
[アルコキシシラン化合物(C)]
本発明の組成物は、アルコキシシラン化合物として、少なくとも、前記式(I)で示されるアルコキシシラン化合物を含有する。
前記式(I)において、Rで示される炭素数1〜10のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられ、特に炭素数1〜4のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が好ましい。
【0022】
前記式(I)において、R1で示される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
前記式(I)において、R2で示される炭素数1〜6の2価の直鎖状又は分岐状の炭化水素基としては、例えばメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、ジメチルエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基等のアルキレン基;シクロヘキシリデン基等のアルキリデン基;ジフェニルメチレン基、ジフェニルエチレン基等のアリールアルキレン基が挙げられる。R3で示される炭素数6〜12のアリーレン基としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基が挙げられる。
【0023】
前記式(I)で示されるアルコキシシラン化合物としては、当該式中のBが−S4−であるトリアルコキシシラン化合物、例えばビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド[(CH3O)3Si−(CH23−S4−(CH23−Si(OCH33]、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド[(C25O)3Si−(CH23−S4−(CH23−Si(OC253]、ビス[3−(トリプロポキシシリル)プロピル]テトラスルフィド[(C37O)3Si−(CH23−S4−(CH23−Si(OC373]が好ましく、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド[(C25O)3Si−(CH23−S4−(CH23−Si(OC253]が更に好ましい。
【0024】
アルコキシシラン化合物(C)は、コンパウンドの見かけの活性化エネルギーの変化率を小さくし、混練中にコンパウンド中で発生するカーボンブラック/ポリマー界面を基点として発生する物理的ネットワークの形成を抑制する効果を有する。このネットワークの形成は、コンパウンド内で構造が変化したことを意味する。
【0025】
アルコキシシラン化合物(C)がネットワークを形成させない効果を発揮する理由は、当該アルコキシシラン化合物がその化学構造中にカーボンブラック表面の活性種(カルボキシル基、ラクトン、ヒドロキシル基、ケトン基、フェノール基)と素早く反応するアルコキシ基等を有しているため、混練中に素早くカーボンブラック表面を覆うこと、また、ポリスルフィド基を有しており、これがカーボンブラック/ポリマー界面とカーボンブラック/ポリマー界面同士を結ぶネットワーク形成基点(カーボンブラック/ポリマー界面)を安定化させる効果を有するからである。
【0026】
つまり、少ない量で、コンパウンド成形時に加工上の問題を引き起こす粘度上昇の原因発生場所であるカーボンブラック/ポリマー界面に素早く前記アルコキシシラン化合物が分散し、かつ、ネットワーク発生起点でラジカルを捕捉するためネットワークを形成させないことによる。更に、EPDM等のエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムとゴム充填剤とのマスターバッチ化による体積増加効果により混練機内のメカニカル的な分散力にも影響し、カーボンブラックへのゴム充填剤の分散が促進され確実に問題を解消することができる。
【0027】
本発明の組成物は、本発明のマスターバッチがペレット形状、シート形状を本発明の目的を果たすために保持する点において、アルコキシシラン化合物(C)とゴム充填剤(B)との重量比((C)/(B))が1.5〜0.6の範囲にあることが必要である。前記重量比((C)/(B))は、アルコキシシラン化合物のブリードアウト防止の点で、1.2〜0.7であることが好ましい。
【0028】
また、本発明の組成物は、本発明のマスターバッチがペレット形状、シート形状を本発明の目的を果たすために保持する点において、ゴム(A)100重量部に対して、(B)と(C)との合計量が200〜1100重量部であることが好ましく、400〜700重量部であることが更に好ましく、450〜650重量部であることがより好ましい。また、前記(B)と(C)との合計量が200重量部以上とすることにより、アルコキシシラン化合物のブリードアウトを防止できる。
【0029】
その他の成分
本発明の組成物には、必要に応じて、周期律表第6族の元素(但し、酸素を除く。)からなる単体及び/又は化合物(但し、前記式(I)で示されるアルコキシシラン化合物を除く。)並びに老化防止剤を単独で、又は2種以上の組み合わせで配合することができる。これらの成分の本発明組成物中の配合割合は、良好な加硫反応速度を維持する点から、合計で10重量%以下であることが好ましい。
【0030】
前記周期律表第6族の元素(但し、酸素を除く。)としては、例えばイオウ、セレニウム(セレン)、テルリウム(テルル)、ポロニウムのカルコゲン(酸素族元素)が挙げられる。
前記周期律表第6族の元素(但し、酸素を除く。)からなる化合物のうち、イオウ化合物としては、例えば、塩化イオウ、二塩化イオウ等の無機イオウ化合物;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(OBS)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(4−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系化合物;チオカルバニリド、ジエチルチオウレア(EUR)、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレア、エチレンチオウレア等のチオウレア系化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(TRA)等のチウラム系化合物;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルル、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオカルバミン酸塩;モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド等のジスルフィド化合物;ザンテート系化合物;並びに(II):
【0031】
【化3】
(R−O−CS−S−)nn+ (II)
(式中、Rは炭素数1〜30のアルキル基であり、nは1〜3の整数であり、Mn+はn価の金属イオン又はアンモニウムイオンである。)
で示されるキサントゲン酸塩系加硫促進剤が挙げられる。
【0032】
また、本発明の組成物には、必要に応じて、軟化剤、加工助剤、老化防止剤を単独で、又は2種以上の組み合わせで配合することができる。これらの成分の本発明組成物中の配合割合は、アルコキシシラン化合物(I)のカーボンブラックへの分散を補助する点から、合計で40重量%以下であることが好ましい。
【0033】
前記軟化剤としては、通常ゴムに使用される軟化剤を用いることができる。具体的には、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、潤滑油、パラフィン系オイル、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;トール油;サブ(ファクチス);蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸及び脂肪酸塩;ナフテン酸;パイン油、ロジン又はその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系軟化剤;マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油等が挙げられる。マスターバッチの劣化や品質安定性を考慮すると、パラフィン系オイルが好ましい。これらの軟化剤の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム(A)100重量部に対して、通常50〜200重量部、好ましくは100〜150重量部である。
【0034】
前記加工助剤としては、通常のゴムの加工に使用される加工助剤を使用することができる。具体的には、リノール酸、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸の塩;前記高級脂肪酸のエステル類等が挙げられる。
前記老化防止剤としては、イオウ系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤等が挙げられる。
【0035】
イオウ系老化防止剤としては、通常ゴムに使用されるイオウ系老化防止剤が用いられる。
イオウ系老化防止剤としては、具体的には、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾールの亜鉛塩、2−メルカプトメチルイミダゾールの亜鉛塩等のイミダゾール系老化防止剤;ジミリスチルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリル−チオプロピオネート)等の脂肪族チオエーテル系老化防止剤などを挙げることができる。これらの中でも、特に2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリル−チオプロピオネート)が好ましい。
【0036】
フェノール系老化防止剤としては、通常ゴムに使用されるフェノール系老化防止剤が用いられる。
フェノール系老化防止剤としては、具体的には、スチレン化フェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、1−ヒドロキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、モノ−t−ブチル−p−クレゾール、モノ−t−ブチル−m−クレゾール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、ブチル化ビスフェノールA、2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ノニルフェノール)、2,2'−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2'−チオ−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオ−ビス(2−メチル−6−ブチルフェノール)、4,4'−チオ−ビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンゼン)スルフィド、2,2'−チオ[ジエチル−ビス3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)酪酸]グリコールエステル、ビス[2−(2−ヒドロキシ−5−メチル−3−t−ブチルベンゼン)−4−メチル−6−t−ブチルフェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、N,N'−ヘキサメチレン−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)、n−オクタデシル 3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、モノ(α−メチルベンゼン)フェノール、ジ(α−メチルベンジル)フェノール、トリ(α−メチルベンジル)フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸のジエチルエステル、カテコール、ハイドロキノンなどが挙げられる。特に好ましいフェノール系老化防止剤の例としては、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2'−チオ−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオ−ビス(2−メチル−6−ブチルフェノール)、4,4'−チオ−ビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどを挙げることができる。
【0037】
アミン系老化防止剤としては、通常ゴムに使用されるアミン系老化防止剤が用いられる。
アミン系老化防止剤としては、具体的には、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、ジオクチル化ジフェニルアミン(例えば、4,4'−ジオクチルジフェニルアミン)、ジフェニルアミンとアセトンとの高温反応生成物、ジフェニルアミンとアセトンとの低温反応生成物、ジフェニルアミンとアニリンとアセトンとの低温反応生成物、ジフェニルアミンとジイソブチレンとの反応生成物等のジフェニルアミン系老化防止剤;N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、n−イソプロピル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N'−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、N,N'−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N'−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N'−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニルオクチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系老化防止剤などが挙げられる。この中でも、特に4,4'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンが好ましい。
本発明において、イオウ系老化防止剤、フェノール系老化防止剤及びアミン系老化防止剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0038】
[マスターバッチの調製]
流動性、押出し性改良剤マスターバッチとして用いる本発明の組成物は、例えば、カーボンブラック及び/又はその他の充填剤等のゴム充填剤(B)とアルコキシシラン化合物(C)を先にインターナルミキサーに投入し、予めゴム充填剤(B)にアルコキシシラン化合物(C)を吸収させ、次に、エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム(A)を投入し、受けロールでシート出しするか、冷却させながら押出機に通し、ペレット又はシート形状のマスターバッチとして得ることができる。混練及びシート出し、あるいは、押出機によりペレット形状のマスターバッチを得るに当たり、アルコキシシラン化合物(C)の構造変化及びカーボンブラックへの分散性の低下を防止するため、すべての工程で温度を通常140℃以下、好ましくは120℃以下、更に好ましくは90℃以下に制御する。
【0039】
[ゴム組成物及びその加硫ゴム成形体の調製]
本発明のマスターバッチは、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサーを用いて、エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムに、ゴム充填剤としてカーボンブラック、加工助剤、亜鉛華、軟化剤等を配合する混練において、加工助剤や亜鉛華と同時に混練機に投入され、投入される量はその配合によって異なるが、カーボンブラックが多く配合されている系程、本発明のマスターバッチを多く投入することが望ましい。通常は、カーボンブラック100phrに対してマスターバッチ中のアルコキシシラン化合物が0.05〜6phrになるように配合される。例えば、マスターバッチ中のアルコキシシラン化合物の濃度が50%のときは、カーボンブラック100phrに対して0.1〜12phr配合されることが望ましい。混練温度80〜170℃で2〜20分間混練した後、イオウをオープンロールのようなロール類、あるいはニーダーを使用して、必要に応じて加硫促進剤、加硫助剤、発泡剤、発泡助剤を追加混合し、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出しすることにより、押出成形及び型成形用ゴム組成物を調製することができる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら限定するものではない。
なお、実施例及び比較例で用いた共重合体及び得られた製品の物性等の測定又は評価の方法は、以下のとおりである。
[135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]]
135℃のデカリン中でFitz-Simons型粘度計を用いた一点法により求めた。
[ブリードアウト性]
ゴム用50mm押出機で、直径8mmの丸形状の口金を用いて、2m/分の速度で棒状に押出し、長さ20mm毎にカットしてペレット状マスターバッチを作成した。
【0041】
上質紙を100mm×100mmにカットし、この紙の上に前記チップマスターバッチ5個をのせ、更に上質紙ではさみ、上からポリエチレン板(20g)をのせ、80gの重りが均等にかかるようにし、10分後下面用紙に染み出したアルコキシシラン化合物(C)の量を官能的に評価した。
5点:全く染み出していない。
4点:わずかにその存在が認められる。
3点:所々にその存在が認められる。
2点:ペレットが接触している面積はすべて染み出している。
1点:ペレットが接触している面積以上に多量に染み出している。
【0042】
[ペレット纏まり性]
ゴム用50mm押出機で、直径8mmの丸形状の口金を用いて、2m/分の速度で棒状に押出し、長さ20mm毎にカットしてペレット状マスターバッチを作成し、そのペレット形状を評価した。
良好:押出し直後のペレット形状を保持している。
悪い:押出し直後のペレット形状が崩れるあるいは保持しない。
【0043】
[シート成形性]
ゴム用50mm押出機でヘッド温度を75℃、口金 幅20mm、厚み10mmで3m/分で押出し、30cmに切断して、すぐにその両端を両手で1分間保持して、その形状を保持しているかどうかを以下の基準に従って評価した。
5点:押出されたシートの形状を保ち、自重による亀裂や押出しによるひびが全くない状態
4点:押出されたシートの形状を保ち、自重による亀裂や押出しによるひびが僅かに存在する状態
3点:押出されたシートの形状を保つが、自重による亀裂や押出しによるひびが多く存在する状態
2点:押出されたシートの形状を保たない。両手から崩れ落ちた状態。
1点:押出された材料が口金の形状にならず、粉状あるいはアルコキシシラン化合物とその他材料が分離した状態
【0044】
[引張試験]
JIS K6251(1997年)に従って、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、コンパウンドを150トンプレス機で170℃×10分の条件により加硫ゴムシートを得た。破断時の強度TBと伸びEBを測定した。
[圧縮永久歪試験]
JIS K6262(1997年)に従い、圧縮永久歪試験を行った。本試験片は、170℃×15分で得たものを用い、評価条件は70℃−22時間である。
【0045】
[リボン割れ試験]
幅10cm×厚み1.5cmのリボン状コンパウンドを長さ30cmに切断し、これを半分に折り曲げて端部を固定し、40℃オーブン中に24時間放置後、折り曲げ面を観察して、亀裂又は切断の有無を確認し、亀裂が発生した場合は、その中で最大の亀裂の長さを測定し、記録した。
[押出し製品・異物評価]
リボン状コンパウンドを60mm押出機で、押出し、マイクロ波加硫槽(UHF)(200℃−3kw)と熱空気加硫槽(HAV)(230℃)が直列につながれた成形ラインを用いて、引き取り速度7m/分で、平板製品を得、1m当たりの表面異物(0.03mm以上の異物)の個数を評価した。
【0046】
[加工性]
(1)混練機の投入口から混練羽のある混練場所へ通じる壁への付着の有無
16リットルバンバリーミキサーの投入口の中心から、マスターバッチ、又はマスターバッチの主成分であるアルコキシシラン化合物のみ(液体)を投入し、混練機壁に付着するかどうかを評価した。評価は、投入後、フローティングウエイトを降ろし、すぐに上昇させたときに、肉眼で確認できる範囲にアルコキシシラン化合物が認められるかどうかで判断した。
(2)秤量性
配合する量を秤量する際の作業性を以下の基準に従って評価した。
3点:小数点1の位まで秤量する場合、直ぐに目的の量を秤量用スパチュラーやはさみなどで準備できる。
2点:小数点1の位まで秤量する場合、その形状が崩れやすいため、直ぐに目的の量を秤量用スパチュラーやはさみなどで準備できない。
1点:液状のため、秤量用のカップに付着するため、投入する薬品の量を小数点1の位まで正確に秤量できない。
【0047】
実施例及び比較例で用いた成分は、次のとおりである。
エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム
(1)エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネンランダム共重合体(EPT−1):エチレンから導かれる単位とプロピレンから導かれる単位とのモル比(エチレン/プロピレン)78/22、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]4.5dl/g、ヨウ素価12
(2)エチレン・プロピレン共重合体(EPT−2):エチレンから導かれる単位とプロピレンから導かれる単位とのモル比(エチレン/プロピレン)70/30、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]2.7dl/g、ヨウ素価0
アルコキシシラン化合物
ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド[デグサ・ヒュルス社製、商品名Si−69]
ゴム充填剤
【0048】
【表1】
Figure 0004033654
*1 旭カーボン(株)の商品名
【0049】
(実施例1〜5及び比較例1〜5)
(1)マスターバッチの作成
ゴム充填剤とアルコキシシラン化合物を先にニーダールーダー(笠松化工研社製)に投入し、予めカーボンブラックにアルコキシシラン化合物を吸収させ、次に、ポリマーを投入し3分間混練した(充填率75%、混練温度72℃)。その後、一軸押出機を通過させ、直径2mm、長さ18mmのペレット形状のマスターバッチを得た。押出機は水冷しながら、温度を75℃に制御した。
【0050】
(2)加工性改良効果確認用配合
前記(1)で作成したマスターバッチ100重量部、三井EPT3090Eをポリマーとして100重量部(油展後重量110重量部)、SRF−Hカーボンブラック(旭カーボン(株)製、商品名:旭#50HG)90重量部、パラフィン系オイル(出光興産(株)製、商品名:ダイアナプロセスPW−380)70重量部、亜鉛華(堺化学工業(株)製、商品名:1号)5重量部及びステアリン酸1重量部を容量16リットルのバンバリーミキサー[(株)神戸製鋼所製]へ投入し、混練した。
【0051】
この混練は、充填率70%で、全配合を一括で投入する方法で行った。混練温度はコンパウンド排出時の温度が145℃であった。配合剤を全量投入後2分間混練し、フローティングウエイトを上昇させて掃除を行い、更に2分間混練して、受けロールである14インチロールへ排出した。
その後、コンパウンド温度が70℃以下になったことを確認して、加硫剤及び加硫促進剤を投入し、リボン割れ試験及び押出し製品・異物評価のための試験片を調製した。
【0052】
得られたコンパウンドを用いて、JIS記載の方法で試験片を作成し、前記の方法に従って引張試験及び圧縮永久歪試験を行った。また、前記の方法に従ってリボン割れ試験及び押出し製品・異物評価を行った。
なお、比較例1〜3は、ゴム充填剤(カーボンブラック)のDBP吸油量が低すぎると、アルコキシシラン化合物のブリードアウトの防止、及びシート化が困難であることを示す。
【0053】
比較例4は、マスターバッチの主成分であるアルコキシシラン化合物をそのままの状態(液体)で用いた例であり、混練している場所へ、投入した量のアルコキシシラン化合物が到達しなかったため、アルコキシシラン化合物が本来有している加工性、押出し性改良効果が発揮されない。
【0054】
比較例5は、加工性改良効果確認用配合に、本発明のマスターバッチを配合しない場合の例であり、これが配合されないと押出し製品の物(ブツ)が多くなり、また、得られたコンパウンドのリボンはリボン割れを起こす例である。
結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
Figure 0004033654
表2において、「オイル」は、パラフィン系オイル(出光興産(株)製、商品名:ダイアナプロセスPW−380)であり、マスターバッチ作製時の加工助剤又は柔軟性付与剤として添加される。
【0056】
【発明の効果】
本発明の組成物は、アルコキシシラン化合物を含む固体状、特に、ゴム状ペレット、ゴム状シートのゴム薬品マスターバッチとして用いることにより、アルコキシシラン化合物の混練機の壁への付着の防止、アルコキシシラン化合物の秤量性の向上が可能となり、更に、マスターバッチからのアルコキシシラン化合物のブリードアウトを防止することもできる。

Claims (6)

  1. エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンと、必要に応じて非共役ポリエンとを共重合させてなるゴム(A)と、
    DBP吸油量100ml/100g以上のゴム充填剤(B)と、
    次式(I):
    Figure 0004033654
    [式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、nは0、1又は2であり、Rは炭素数1〜6の2価の直鎖状又は分岐状の炭化水素基であり、Rは炭素数6〜12のアリーレン基であり、m及びpは、それぞれ0又は1であり、かつ、mとpとが同時に0となることはなく、qは1又は2であり、Bは、qが1であるとき−SCN又は−SHであり、qが2であるとき−Sx−(式中、xは2〜8の整数である。)である。]
    で示されるアルコキシシラン化合物(C)とからなるマスターバッチであって、
    (C)と(B)との重量比((C)/(B))が1.5〜0.6の範囲にあることを特徴とするマスターバッチ
  2. ゴム充填剤(B)の窒素吸着比表面積が20〜150m/gである請求項1記載のマスターバッチ
  3. ゴム充填剤(B)がカーボンブラックである請求項1又は2記載のマスターバッチ
  4. ゴム(A)100重量部に対して、(B)と(C)との合計量が200〜1100重量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載のマスターバッチ
  5. ゴム(A)のエチレン/α−オレフィン比(モル比)が60/40〜80/20であり、かつ、極限粘度[η]が2.5〜7.0dl/gである請求項1〜4のいずれか1項に記載のマスターバッチ
  6. 更に、周期律表第6族の元素(但し、酸素を除く。)からなる単体及び/又は化合物(但し、前記式(I)で示されるアルコキシシラン化合物を除く。)並びに老化防止剤から選ばれる少なくとも一種を合計で10重量%以下含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のマスターバッチ
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