JP4032911B2 - リニアモータ駆動式工作機械の主軸ヘッド落下防止装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、Y軸(上下方向)にリニアモータで昇降する主軸ヘッドをもつ工作機械において、停電等、工作機械への非通電時の主軸ヘッド落下防止技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
工作機械において、リニアモータにより駆動され、昇降する主軸ヘッドでは、停電、断線等の非常時や、工作機械の電源を落としたときにはリニアモータに対する通電が停止されてしまうので、電気的制御が不能となり主軸ヘッドが重力落下する不都合がある。こうした問題を解決するものとして、特許文献1には、昇降する主軸ヘッドの下部左右に電磁ブレーキを設け、停電時等にはその電磁ブレーキがばね力で電磁ブレーキの左右外側に配置した摩擦係合部材に押し付けられて主軸ヘッドの落下を防止している。また特許文献2では、昇降する主軸ヘッドの背面側にブレーキとブレーキ板とを備えている。さらに、特許文献3では、主軸ヘッドの昇降と共に周回するベルトなどのループ部材を設けて、非常時にはそのループ部材をブレーキ装置で挟持して主軸ヘッドの落下を防止している。
類似した技術にリニアモータによる位置決めを堅固とするためのブレーキ装置として特許文献4のものがある。これは、長いブレーキ板をその厚み方向両側から一対の直動シリンダで挟むようにしている。さらに、技術分野を異にするが、関連するブレーキ構造としては、特許文献5のものがあり、これは、ロッドを周囲から把持するブレーキ装置である。
【0003】
【特許文献1】
特開平2001−136726号公報
【特許文献2】
特開平6−297286号公報
【特許文献3】
特開平8−192330号公報
【特許文献4】
特開平10−249666号公報
【特許文献5】
実開平1−135207号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1では、電磁ブレーキで左右に突っ張って摩擦係合部材に押し付けて主軸ヘッドの落下を防止している。そのように左右に突っ張るので、摩擦係合部材が取り付けてあるコラムの剛性を高くしないとコラムに歪が生じて不都合である。特許文献2では上下方向の板を挟持しているようであるが、詳細が不明であり、また、主軸ヘッドの裏側にブレーキ装置が配置されており、ブレーキ装置の故障などの事態に対しては、主軸ヘッドを取り外すなど大掛かりな作業を要求されるため好ましくない。特許文献3では、ループ部材を掛け回すためのプーリが多数必要で構成が複雑となる問題がある。特許文献4のものを主軸ヘッドの落下防止に採用した場合、長い板を両側から夫々直動シリンダで挟んでおり、スペースを取る問題がある。
分野が異なる特許文献5のものでは、常時はばね力でブレーキが解除されていて、ブレーキが必要な時に圧空で動作するものであり、本願のように電源OFF時にブレーキをかけるものとは異なる動作である。その上、特許文献5には本願のようなリニアモータ駆動の主軸ヘッドの落下防止に特許文献5の技術を適用する旨の示唆はない。
本願は上記従来の特許文献記載の主軸ヘッドの落下防止構造に鑑み、コンパクトでしかも、メンテナンスが容易であり、ブレーキ作用時にコラム側に無理な力が作用しない、リニアモータ駆動の工作機械における上下方向移動の主軸ヘッドの落下防止装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題解決のため、本発明のリニアモータ駆動式工作機械の主軸ヘッド落下防止装置は、コラムに主軸ヘッドを昇降自在に案内し、コラムと主軸ヘッドとの間にリニアモータを設けて、そのリニアモータにより主軸ヘッドを昇降するようにした工作機械において、コラムの左右上下部にコラムから左右外方に突出するブラケットを固着し、コラムの左右側で夫々上下に対向するブラケット間にブレーキロッドを取り付けて主軸ヘッドの左右両外側位置に上下方向の一対のブレーキロッドを配置し、主軸ヘッドの左右両側には、ブレーキロッドが貫通して、リニアモータへの通電が断たれたときにブレーキロッドを半径方向外側から掴んで主軸ヘッドの落下を防止するブレーキ装置を夫々一体に取り付け、そのブレーキ装置には、ブレーキロッドが貫通してブレーキロッドに対して軸線方向に移動する本体と、本体に対してブレーキロッドの軸線方向へ移動してブレーキ解除位置とブレーキ位置に移動可能な動作部材と、本体に設けた上下方向の溝内に長手中間部を軸支して揺動するように設けたブレーキレバーと、動作部材がブレーキ位置に移動することでブレーキレバーを介してブレーキロッドを半径方向外方から掴むブレーキシューと、通常は前記動作部材をブレーキ解除位置に保持し、非通電時にはばね力で動作部材をブレーキ位置に移動させる動作機構とを備えたことを特徴とする。
また、本発明は、ブレーキ装置の本体の中心にブレーキロッド貫通孔を設けると共に本体の外周の180度対称な位置に上下方向の溝を設け、各溝内にブレーキレバーをその長手中間部を軸支して揺動するように設け、ブレーキレバー先端にねじを螺合し、本体に溝とブレーキロッド貫通孔に開口するブレーキシュー案内孔をねじと対向するように設け、ブレーキシュー案内孔にブレーキシューを案内させ、ブレーキロッドが貫通するピストン体によって動作部材を構成し、そのピストン体の先端部分を先細りのテーパ面として、そのテーパ面をブレーキレバーの他端とブレーキロッドとの間に配置し、ピストン体を前記先細り方向に付勢して非通電時にはピストン体をブレーキ位置に移動させるブレーキばねを設けると共に、通電時ではピストン体を前記ブレーキばね力に抗してブレーキ解除位置に保持するシリンダ構造を備えて動作機構としたことを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
工作機械1のベース2上に、コラム3が左右方向のガイドレール4に移動自在に案内されている。ベース2上面には、リニアモータの固定子(固定マグネット)5aが取り付けられ、この固定子5aと対向するコラム3の下面には、可動子(コイル)5bが取り付けてあり、固定子5aと可動子5bとによりコラム3の左右移動用リニアモータ5が構成されている。移動コラム3は矩形の断面を成し、主軸ヘッド(昇降スライダ)6は、その前面部7の両側が後方に延びた側面部8,9となっていて、移動コラム3の前面3aと側面3bとに対向するように断面がコの字に形成されている。主軸ヘッド6は、移動コラム3の前面3aに取り付けた一対の昇降ガイドレール10,10と、左右側面3bに取り付けた昇降ガイドレール11,11との4本のガイドレールで上下方向に昇降自在に案内されている。移動コラム3の側面3bには、リニアモータの固定子(固定マグネット)12aが、主軸ヘッド6の側面部8,9の内側面(移動コラム3の側面3bとの対向面)には可動子(コイル)12bが取り付けてあり、これらの固定子12aと可動子12bとの間で主軸ヘッド6の昇降用リニアモータ12が構成され、可動子12bに励磁電流を流すことで、対向している前記固定子12aとの間で垂直方向のリニアモータ推力を生じさせて主軸ヘッド6を昇降するようになっている。
【0007】
主軸ヘッド6には前後方向に主軸支持部15が突出されている。主軸支持部15には主軸16が回転自在に設けてあり主軸モータMで回転される。主軸支持部15の、主軸ヘッド6から機台後方に突出した部分は、主軸ヘッド6が昇降移動するとき、移動コラム3に対して前後方向に貫通形成した長孔17内を昇降移動する。
移動コラム3の左右側面3b,3bの下端部と上面左右には、夫々移動コラム3から左右外方に突出するように夫々ブレーキロッド取り付け用のブラケット18,19が固着してある。移動コラム3の右(若しくは左)側で、上下に対向するブラケット18,19の間には、上下方向(主軸ヘッド6の移動方向と平行)のブレーキロッド20が取り付けてあり、こうして主軸ヘッド6の左右両外側に一対のブレーキロッド20が配置されている。
【0008】
一方、このブレーキロッド20が貫通して、昇降用リニアモータ12への通電が断たれたときにブレーキロッド20を半径方向外側から掴んで主軸ヘッド6の落下を防止するブレーキ装置21が、主軸ヘッド6の左右側面部8,9の上面に夫々取り付けブラケット22を介して一体に取り付けてある。図4に示すように、ブレーキ装置21において、本体23はシリンダチューブ24の上端に固着されている。本体23の中心にはブレーキロッド貫通孔25が形成されており、ブレーキロッド20が貫通している。本体23の外面には180°対称な位置に上下方向の2つの溝26が設けてあり(図5)、各溝26内にはブレーキレバー27がピン28により中間部を軸支されてロッド半径方向に揺動可能に取り付けてある。ブレーキレバー27の上端に螺合したねじ27aと対向して本体23には前記溝26とブレーキロッド貫通孔25とに開口するブレーキシュー案内孔29が形成され、この案内孔29にブレーキシュー30がブレーキロッド20の半径方向に近接離反移動するように案内されている。ブレーキレバー27の下端にはローラ31が回動自在に取り付けてあり、本体23後端の中心に形成した収容孔32内にその一部が臨んでいる。
【0009】
筒状のシリンダチューブ24の下端はシリンダカバー35で塞がれてシリンダ室が形成され、シリンダ室には動作部材としてのピストン体36が軸線方向移動可能に嵌装され、ピストン体36によりシリンダ室は上側シリンダ室37と下側シリンダ室38とに区画されている。シリンダカバー35には貫通孔39が形成してあり、この貫通孔39により下側シリンダ室38は常時外気と連通している。ピストン体36からは上方に向けてピストンロッド40が一体に突出され、ピストンロッド40の中心には前記ブレーキロッド20が挿通される挿通孔41が形成されている。ピストンロッド40の外周面は上方に向けて先細りとしたテーパ面42になっていて前記収容孔32内に突出しており、ブレーキロッド20と前記ローラ31との間に介在している。ピストンロッド40とシリンダカバー35との間には、ピストンロッド40を軸線上方に向けて絶えず付勢するブレーキばね43が介在してある。上側シリンダ室37に連通する給気ポート44がシリンダチューブ24に形成されている。給気ポート44は、通電状態で流路を開き非通電状態で流路を閉じる電磁開閉弁45を介して圧空源46に接続されている。電磁開閉弁45は工作機械1が通電スイッチ47を閉じて通電状態であるときには通電状態となるように電気的に連繋されている。ピストン体36の動作機構は、ピストン体36が収容されているシリンダチューブ24、ブレーキばね43等からなる単動シリンダ構造と、そのピストン体36の位置を制御する上記空圧配管構造とから構成されている。なお、工作機械1の主軸前方には、主軸軸線方向(前後方向)にボールネジ送り機構で進退するワークテーブル(図示せず)が配置されている。
【0010】
この構成では、工作機械1が通電状態においてリニアモータ5,12が電気制御されて移動コラム3が左右し、また、主軸ヘッド6が昇降し、ワークテーブルが前後移動されて、ワークテーブル上のワークWの所望の位置に対する加工が実行される。その通電状態では電磁開閉弁45が開いて上側シリンダ室37への圧空供給が行なわれているため前記ブレーキばね43力に抗してピストン体36が下後端まで押し下げられたブレーキ解除位置S1(図4の二点鎖線)に保持されている。これにより、テーパ面42がローラ31を半径方向外方に押さないので、ブレーキレバー27の先端がブレーキシュー30から離れてブレーキシュー30がブレーキロッド20を掴まない非ブレーキ状態にあり、主軸ヘッド6の昇降移動をブレーキ装置21が制限していない。
【0011】
一方、停電時等の非常時や、工作機械への通電を切って工作機械1が非通電状態となると昇降用リニアモータ12が制御できなくなり、主軸ヘッド6が自重により落下しようとする。しかし、非通電状態となると電磁開閉弁45が閉じ、これにより上側シリンダ室27への圧空供給が断たれてピストン体36がフリーとなり、前記ブレーキばね43のバネ力でピストン体36がブレーキ解除位置S1からブレーキ位置S2に上昇してピストンロッド40のテーパ面42がローラ31と係合してローラ31を外方に押し出し、これによって、ブレーキレバー27先端がブレーキロッド20に対して半径方向内側に閉じてブレーキシュー30によりブレーキロッド20をその軸線を挟んだ両側から把持する。こうして主軸ヘッド6の落下が防止される。このとき、ブレーキロッド20を軸線両側から掴むのでブレーキ動作により発生する力はブレーキロッド20のみに作用してコラム3にはなんら作用しないから、従来のようにコラム3側にブレーキによる力が発生せず、コラム3側に無理な荷重が生じない。
【0012】
ブレーキ装置21のメンテナンスを行なう場合、主軸ヘッド6の左右両外側にブレーキロッド20やブレーキ装置21が配置されているので主軸ヘッド6の背部側にあるものに比較して機台前方側からの接近性がよく、メンテナンスが容易である。
【0013】
【発明の効果】
以上のように本発明では、コラムの左右上下部にコラムから左右外方に突出するブラケットを固着し、コラムの左右側で夫々上下に対向するブラケット間にブレーキロッドを取り付けて主軸ヘッドの左右両外側位置に上下方向の一対のブレーキロッドを配置し、主軸ヘッドの左右両側には、ブレーキロッドが貫通して、リニアモータへの通電が断たれたときにブレーキロッドを半径方向外側から掴んで主軸ヘッドの落下を防止するブレーキ装置を夫々一体に取り付け、そのブレーキ装置には、ブレーキロッドが貫通してブレーキロッドに対して軸線方向に移動する本体と、本体に対してブレーキロッドの軸線方向へ移動してブレーキ解除位置とブレーキ位置に移動可能な動作部材と、本体に設けた上下方向の溝内に長手中間部を軸支して揺動するように設けたブレーキレバーと、動作部材がブレーキ位置に移動することでブレーキレバーを介してブレーキロッドを半径方向外方から掴むブレーキシューと、通常は前記動作部材をブレーキ解除位置に保持し、非通電時にはばね力で動作部材をブレーキ位置に移動させる動作機構とを備えているため、両側から直動シリンダで把持するものに対してコンパクトであり、さらに、ブレーキロッドに挟持力が作用するのみで、ブレーキロッドを取り付けたコラム側には何らブレーキによる力が発生せず、コラム側に無理な荷重が生じないという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】工作機械の正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】ブレーキ装置の正面拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【符号の説明】
1 工作機械
3 コラム
6 主軸ヘッド
12 リニアモータ
20 ブレーキロッド
21 ブレーキ装置
23 ブレーキ装置の本体
27 ブレーキレバー
30 ブレーキシュー
36 ピストン体(動作部材)
42 テーパ面
43 ブレーキばね
S1 ブレーキ解除位置
S2 ブレーキ位置

Claims (2)

  1. コラムに主軸ヘッドを昇降自在に案内し、コラムと主軸ヘッドとの間にリニアモータを設けて、そのリニアモータにより主軸ヘッドを昇降するようにした工作機械において、コラムの左右上下部にコラムから左右外方に突出するブラケットを固着し、コラムの左右側で夫々上下に対向するブラケット間にブレーキロッドを取り付けて主軸ヘッドの左右両外側位置に上下方向の一対のブレーキロッドを配置し、主軸ヘッドの左右両側には、ブレーキロッドが貫通して、リニアモータへの通電が断たれたときにブレーキロッドを半径方向外側から掴んで主軸ヘッドの落下を防止するブレーキ装置を夫々一体に取り付け、そのブレーキ装置には、ブレーキロッドが貫通してブレーキロッドに対して軸線方向に移動する本体と、本体に対してブレーキロッドの軸線方向へ移動してブレーキ解除位置とブレーキ位置に移動可能な動作部材と、本体に設けた上下方向の溝内に長手中間部を軸支して揺動するように設けたブレーキレバーと、動作部材がブレーキ位置に移動することでブレーキレバーを介してブレーキロッドを半径方向外方から掴むブレーキシューと、通常は前記動作部材をブレーキ解除位置に保持し、非通電時にはばね力で動作部材をブレーキ位置に移動させる動作機構とを備えたことを特徴とするリニアモータ駆動式工作機械の主軸ヘッド落下防止装置。
  2. ブレーキ装置の本体の中心にブレーキロッド貫通孔を設けると共に本体の外周の180度対称な位置に上下方向の溝を設け、各溝内にブレーキレバーをその長手中間部を軸支して揺動するように設け、ブレーキレバー先端にねじを螺合し、本体に溝とブレーキロッド貫通孔に開口するブレーキシュー案内孔をねじと対向するように設け、ブレーキシュー案内孔にブレーキシューを案内させ、ブレーキロッドが貫通するピストン体によって動作部材を構成し、そのピストン体の先端部分を先細りのテーパ面として、そのテーパ面をブレーキレバーの他端とブレーキロッドとの間に配置し、ピストン体を前記先細り方向に付勢して非通電時にはピストン体をブレーキ位置に移動させるブレーキばねを設けると共に、通電時ではピストン体を前記ブレーキばね力に抗してブレーキ解除位置に保持するシリンダ構造を備えて動作機構としたことを特徴とする請求項1記載のリニアモータ駆動式工作機械の主軸ヘッド落下防止装置。
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