JP4032726B2 - 魚介類の飼育方法及び飼料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、養殖魚介類の免疫活性を向上させ、養殖の生産性と養殖した魚介類の食品としての安全性を向上させる魚介類の飼育方法及び魚介類の飼育に用いる飼料に関する。
【0002】
【従来の技術】
魚介類の養殖は、経済的に確立して以来、生産量と対象魚種は、引き続き増加傾向にあり、さらに一層生産性と食品としての安全性の向上が求められるようになっている。とりわけ、高密度の飼育や水質の汚染による病気発生への対策が重要となっており、病気予防には、ビタミン、各種免疫賦活剤または生菌剤などの投与が、病気の治療には抗生物質、抗菌剤などの投与が行われてきた。しかし、抗生物質や抗菌剤などの薬剤の多用は、耐性菌の発生はもとより、水質を始めとする環境の汚染と生産物への残留が食品としての安全性の面で危惧される。
【0003】
そこで、抗生物質や抗菌剤などの病気治療用の薬剤の使用はできるだけ限定することが求められ、病気に罹らないようにするか、罹患しても被害が抑えられるようにする新たな対策が近年盛んに試みられるようになっている。具体的には、人間に使用される健康食品である、キトサン、生菌剤、ポリフェノール、ニンニク、漢方、グルタチオン、オリゴ糖、多糖類などの投与が例示される。また、酵母由来の成分を投与する方法として、自己消化などによる分解後の水溶性成分である酵母エキスを投与する方法(特開平7−184595)、酵母を出発原料として、数回のアルカリ抽出処理及び数回の酸抽出処理を行って不溶性酵母成分を回収することにより得られる純度の高いグルカンなどを投与する方法(特開平4−253703)などが例示できる。これらの酵母由来の成分の中には、免疫活性の向上効果をうたったものもある。しかし、実際の製品のカタログや文献には、免疫活性を維持するために、これらの酵母由来の成分を1週間ごとに間歇投与するように求めるものもある。このため業界では、通常、間歇投与が実施されており、日常的に給与する飼料に添加して用いることができず、必ずしも使い易い状況とはいえず、さらに効果の明確な物質が求められていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、食品のような安全なものから、魚介類の免疫活性を向上させる物質を見出し、使用することにより、魚介類の養殖における生産性の向上と環境保全、養殖される魚介類の食品としての安全性の向上を達成することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明者らは、安全で、かつ魚介類の免疫機能を向上させる物質を見出すために、種々の物質をスクリーニングした。その結果、酵母を自己消化法や蛋白質分解酵素を含んだ酵素剤処理で分解して得られる組成物であって、水溶性成分及び水不溶性成分を含む酵母分解組成物、特に前記水溶性成分と水不溶性成分の両成分を適度の比率で、具体的には乾燥重量で30:70から80:20の比率で含んでいる酵母分解組成物が、魚介類に対して優れた免疫賦活効果を示すこと、即ち従来から用いられている酵母エキスのような水溶性成分のみを投与したり、酵母細胞壁に由来する不溶性のグルカン類のみを投与するより、より優れた免疫賦活効果が達成できることを見出した。また、酵母の分解に使用する酵素剤を選択することにより、さらに優れた効果を示すことを見出した。
【0006】
即ち、本発明の第1は、酵母を蛋白質分解酵素を含む酵素剤処理により分解した後、水溶性成分を分離せず又は水溶性成分を分離除去することによって得られる酵素分解組成物であって、前記酵素剤処理に用いる酵素剤のグルカナーゼ活性総量が原料酵母乾燥重量1gあたり5unit以下であり、水溶性成分と水不溶性成分との比率が乾燥重量で30:70から80:20の範囲である酵母分解組成物を投与することにより免疫活性を向上させることを特徴とする魚介類の飼育方法である。また、本発明の第2は、前記酵母分解組成物を含んだ魚介類用の飼料である。
【0007】
本発明における酵母の分解方法は、自己消化法蛋白質分解酵素を含む酵素剤処理両者を併用してもよい。本発明で用いる酵母分解組成物中の水溶性成分と水不溶性成分との比率は、乾燥重量で30:70から80:20の範囲とする。前記酵母分解組成物中の水溶性成分と水不溶性成分との比率は、酵母を分解した後、必要に応じて水溶性成分を分離除去することによって前記の範囲に調整してもよい
【0008】
前記酵母分解組成物の投与量としては、魚介体重1kgあたり0.01〜1.0g/日とすることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、養殖魚介類の免疫活性を向上させることができる。また、従来の免疫賦活剤の場合には、通常7日間毎の間歇投与が必要なことが多いが、本発明によると、酵母分解組成物は間歇投与することなく持続的に免疫効果が得られ、日常的に給与する飼料に添加しておくことができ、給餌の煩雑さを省くことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で対象とする魚介類とは、魚類、甲殻類など、養殖される全ての魚介類が対象となる。魚類としては、例えばタイ、ブリ、アユ、フグ、ウナギ等の養殖されている食用の魚類が挙げられ、海産魚、淡水魚の別を問わない。さらに、食用の養殖魚のみでなく、金魚、熱帯魚など鑑賞用の養殖魚も対象とすることができる。また、甲殻類としてはクルマエビなどが挙げられる。対象となる魚介の大きさは、孵化直後から、稚魚、成魚の段階までの全ての段階の魚介であり、成長の段階を問わない。
【0011】
本発明で用いられる酵母としては、例えば、トルラ酵母、パン酵母、ビール酵母、清酒酵母、赤色酵母と称せられる、キャンディダ属、サッカロマイセス属、クルイベロマイセス属、ファフィア属などに属する酵母が挙げられる。上記酵母の培養条件は特に制限は無く、通常の培養条件で用いたものが使用可能である。さらに、市販のパン酵母、例えば商品名「カネカレッドイースト」(鐘淵化学工業(株)製)、商品名「オリエンタルイースト」(オリエンタル酵母(株)製)、商品名「ダイヤイースト」(協和醗酵工業(株)製)などを用いることもできる。又、乾燥した酵母でも、乾燥していない酵母でも使用可能である。
【0012】
本発明で用いる酵母分解組成物とは、酵母を自己消化法及び/又は蛋白分解酵素を含む酵素剤により分解することにより得られる組成物であり、その典型的な製造方法は特開平11−332510に記載されている。即ち、酵母分解組成物を得るための自己消化法としては、通常の酵母エキス製造に用いる方法でよく、例えば原料酵母を水に菌体乾燥重量として約10〜15%の濃度に懸濁させた後、60〜65℃にて5〜20秒間加熱処理を行い、次に食塩、酢酸エチルなどを添加し、40〜50℃、PH5〜9にて10〜24時間保持させることにより行うことができる。又、酵母に酵素剤を作用させて酵母分解組成物を得る方法としては、通常の酵母エキスを得る方法で良く、例えば、原料酵母を菌体乾燥重量として3〜30%の濃度となるように水に懸濁し、PH、温度、添加量を使用する酵素剤の好適の範囲にコントロールして分解反応をする。使用する酵素剤としては、エンドプロテアーゼ、エキソプロテアーゼなどの蛋白質分解酵素や溶菌酵素が使用可能であり、市販品としては、商品名「サモアーゼPC」(大和化成(株)製)、商品名「プロチンA」(大和化成(株)製)、商品名「プロチンAY−10」(大和化成(株)製)、商品名「YL−NL」(天野製薬(株)製)、商品名「ツニカーゼFn」(大和化成(株)製)、商品名「デナチームAP」(長瀬産業(株)製)などが例示できる。
【0013】
本発明で用いる酵母分解組成物は、上記のようにして分解後、分離工程を経ずに得たものでも、水溶性成分を一定程度分離除去して得られらものでもよいが、水溶性成分と水不溶性成分の比率が、乾燥重量当り30:70から80:20の範囲であることが必要である。それにより、分解によって得られる、次に述べるような酵母由来の成分が、効果的に魚介類の生体に影響を与え、免疫活性を向上させることができる。
【0014】
前記酵母分解組成物の主要成分は、水不溶性成分としては、細胞壁由来のβ−1,3グルカン及びβ−1,6グルカン、セルロース、前記グルカンの構成糖であるグルコースとマンノースとの共重合物であるグルコマンナン、前記グルカンと蛋白との複合物であるペプチドグルカン類、さらに不溶性の構成蛋白質が挙げられ、又、水溶性成分としては、アミノ酸、ペプタイド、各種糖類、ビタミン類、核酸成分が挙げられ、これら以外に脂質類も含有する。
【0015】
尚、本発明でいう水不溶性成分は、乾燥重量5gの試料を水100mlに分散・溶解し、10000Gで10分間遠心分離し、沈降物を水100mlに分散・溶解、10000Gで10分間遠心分離する操作を2回繰り返して得られる沈降物の乾燥重量を水不溶性成分の乾燥重量とした。又、水溶性成分は、試料乾燥重量から前記水不溶性成分の乾燥重量を減じた値を水溶性成分の乾燥重量とした。
【0016】
さらに、本発明で用いる好ましい酵母分解組成物としては、酵素剤処理に使用する酵素剤のグルカナーゼ活性総量が、原料酵母乾燥重量1gあたり20unit以下となるように酵母に酵素剤を作用させて得られた酵母分解組成物である。グルカナーゼ活性総量が前記の範囲の酵素剤で酵母を分解処理することで、魚介類の免疫活性をより一層向上させることができる。前記酵素剤のグルカナーゼ活性総量のより好ましい範囲は、原料酵母乾燥重量1gあたり10unit以下であり、さらに好ましくは5unit以下である。尚、本発明でいうグルカナーゼ活性とは、酵素をサッカロマイセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)IFO 0309の凍結乾燥菌体1mgに35℃で作用させたときに、反応液の濁度(具体的には波長660nmにおける吸光度)を1分間あたり1%低下させる酵素量を1unitとして定義する。
【0017】
使用する酵素剤のグルカナーゼ活性総量を原料酵母乾燥重量1gあたり20unit以下にするためには、使用する各酵素のグルカナーゼ活性を予め測定して使用する酵素全体のグルカナーゼ活性を調整してもよいし、また使用する酵素全体のグルカナーゼ活性をまとめて測定して調整してもよい。但し、自己消化法との組み合わせでは、使用する酵素剤のグルカナーゼ活性のコントロールが困難な場合がある。従って、酵素剤処理による酵母の分解の実施態様としては、酵素剤処理による分解を単独で行うことが好ましい。
【0018】
さらに、酵母中の核酸成分をヌクレアーゼ、デアミナーゼ処理をして、イノシン酸、グアニル酸を酵母分解組成物中に生成させることにより、嗜好性の向上が達成されるが、本発明の目的には必須ではない。
【0019】
酵母を分解したのちは、必要に応じて水溶性成分を分離除去して、酵母分解組成物中の水溶性成分と水不溶性成分との比率が乾燥重量で30:70から80:20の範囲となるように調整する。水溶性成分を分離除去する方法としては、遠心分離、ろ過、静置分離など、通常の方法を採用することができる。こうして得られた酵母分解組成物は、常法により濃縮して、さらに水分を除去してペースト状にするか、公知の乾燥法で乾燥粉末状にすることにより、使用に供する。
【0020】
本発明による魚介類の飼育方法の好ましい実施の態様としては、上記酵母分解組成物の投与量が、一日に魚介体重1kgあたり0.01〜1.0gとなるように投与することである。投与量がこれより少なくては、所定の効果が得られず、これより多いと経済性などの点で生産性向上の目的が達成出来ない。酵母分解組成物は、単独で魚介類に投与してもよいし、飼料に混合して投与してもよい。飼料に混合する場合は、例えば飼料に対して0.1重量%添加するなどして、魚介が上記の量を摂取するようにすればよい。投与の方法は、あらかじめ飼料へ規定量の酵母分解組成物を配合して、例えばペレット状などに成型乾燥したものを通常の給餌作業と同様に行えばよい。投与の期間は、1日から飼育期間全体を通じて可能であり、間歇投与は必要でない。
【0021】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例1(試料1)は本発明の実施例ではなく、参考例である。
【0022】
(実施例1)
原料酵母としてサッカロミセス属に属するパン酵母(商品名「カネカレッドイースト」鐘淵化学工業(株)社製)300kg(乾燥菌体重量として100kg)を水700Lに懸濁して90℃で60分の加熱処理を行って、菌体内の酵素を失活させた。50℃に冷却後、NaOHでPHを6.3に調整し、プロテアーゼ(商品名「プロチンAY−10」大和化成(株)製)を酵母乾燥菌体重量に対し0.5%、細胞壁溶解酵素(商品名「ツニカーゼFn」大和化成(株)製)を酵母乾燥菌体重量に対し0.5%添加し、50℃で24時間攪拌しながら反応させた。その後、95℃で30分間加熱して酵素を失活させ、濃縮後、スプレー乾燥し、酵母分解組成物の試料1を得た。得られた組成物の重量は、95kgであった。このとき、使用した酵素剤のグルカナーゼ活性総量は、原料酵母乾燥重量1gあたり22.0unitであった。また、試料1中の水不溶性成分は33重量%(乾燥重量)であった。
【0023】
なお、参考として試料1中のβ−グルカン量を、以下に示す方法で測定した。すなわち、アミラーゼで、試料中の炭水化物を可溶化し、80%エタノールで多糖類を沈澱させ、水溶性の単糖、オリゴ糖を分離除去した後、得られた沈澱を塩酸で加水分解しグルコースを比色法で定量した。定量されたグルコース量の90%をβ−グルカン量とした。試料1の水不溶性成分の比率、β−グルカン量の測定結果を表1に示す。また、β−1,3/1,6−グルカンを主成分とする市販の免疫賦活剤(商品名「マクロガード」BIOTEC−MACKZYMAL社(ノルウェー)製)についての水不溶性成分及びβ−グルカン量の測定結果を表1に併せて示す。
【0024】
【表1】
Figure 0004032726
【0025】
試験に用いた飼料の配合率を表2に示す。対照区として小麦粉・魚粉を主体とした飼料を設定した。試験区としては、上記試料1を0.1重量%添加して試験飼料を調製した(試料1)。また、比較例として比較1では従来から免疫賦活剤として使用されている宮入菌体末(商品名「ミヤリサン」日本化薬(株)製)を試料1と同じく0.1重量%添加した。比較2ではβ−1,3/1,6−グルカンを主成分とする免疫賦活剤(商品名「マクロガード」BIOTEC−MACKZYMAL社(ノルウェー)製)を0.05重量%添加した。
【0026】
【表2】
Figure 0004032726
【0027】
ブリ当歳魚を用いて、試験飼料投与の試験を次のように実施した。すなわち、飼育試験は1月中旬から4月中旬までの90日間とした。供試魚は平均魚体重約1.0kgのブリ当歳魚を用い、2トン円形水槽に各区25尾ずつ収容した。給餌は1日1回飽食量を週6日給餌した(試料1は、1日に魚体重1kgあたり0.01g)。飼育期間中の平均水温は17.2±0.9(最低水温16.0℃、最高水温19.4℃)℃であった。
【0028】
飼育開始時から2週間後、4週間後、6週間後及び12週間後に各区より5尾をサンプリングし、心臓から採血して個体別に血漿リゾチーム活性、白血球の貪食能(貪食率および貪食指数)の測定を行い、免疫賦活効果を調べた。なお、血漿リゾチーム活性、白血球の貪食能の測定は次の手順にて行った。
【0029】
リゾチーム活性の測定は、松山らの方法(Matsuyama, H. Remy E. P. Mangindaan and T. Yano: Protective effect of schizophyllan and scleroglucan against Streptococcus sp. Infection in yellowtail(Seriola quinqueradiata). Aquaculture, 101, 197-203 (1992).)を改良して行った。簡単に述べると、96穴マイクロプレートに0.066Mリン酸緩衝液(PH=6.2)に懸濁させたMicrococcus lysodeikticussと分離した血漿を加え、マイクロプレートリーダーを用いて波長450nmにおける吸光度を測定した。リゾチーム活性は、下式(1)に示すように、1分間に吸光度が0.001減少する状態を1unitとして表した。
【0030】
unit= decrease in absorbance of 0.001/min・・・(1)
【0031】
白血球分離に用いる血液はリゾチーム活性に用いた血液と同じものを使用した。採取した血液をあらかじめガラス遠心管に準備したHISTOPAQUE−1077(Sigma社製)に重層し、400G、30分遠心し、形成された白濁層を取り出した後、洗浄して実験に供した。
【0032】
白血球の貪食能は、貪食率及び貪食指数を測定した。即ち、分離した白血球をチェンバースライドに1ウェル当たりの細胞が1×106個となるように添加し、2時間、20℃で培養した。培養後、残った細胞懸濁液を除去し、洗浄した後、オプソニン化したラテックスビーズを添加して、2時間、20℃で培養した。ラテックスビーズ懸濁液を除去し、洗浄した後、定法に従いメイ・グリュンワルド・ギザム(May-Grunwald Giemsa)染色を施して光学顕微鏡で観察した。貪食率及び貪食指数は以下の式(2)、(3)を用いて算出した。
【0033】
貪食率(%)=(ビーズを有した貪食細胞数÷計測された貪食細胞数)×100・・・(2)
貪食指数=(ビーズを有した貪食細胞数÷計測された貪食細胞数)×(摂取されたビーズ数÷計測された貪食細胞数)×100・・・(3)
【0034】
上記免疫賦活効果の測定結果のうち、リゾチーム活性の測定結果を図1に、白血球の貪食率の測定結果を図2に、さらに白血球の貪食指数を図3にそれぞれ示す。
【0035】
図1〜3から、水溶性成分及び水不溶性成分を含む試料1の酵母分解組成物を投与した場合は、従来のβ−グルカンを多く含む酵母由来組成物(比較2)以上の免疫賦活効果を有することが確認できる。
【0036】
(実施例2)
使用する酵素を、プロテアーゼ(商品名「YL−NL」天野製薬(株)製)酵母乾燥重量当り0.2%、及びプロテアーゼ(商品名「プロチンAY−10」大和化成(株)製)酵母乾燥重量当り0.5%とした以外は、実施例1と同様に酵素剤処理により酵母の分解反応を行った。酵素剤処理後、遠心分離して水溶性成分を一部除去し、残りの部分を乾燥させ、酵母分解組成物の試料2を得た。得られた組成物の重量は、45kgであった。試料2中の水不溶性成分の含有量は63重量%であった。なお、試料2中のβ−グルカン量は、16.5重量%であった。また、このとき、使用した酵素剤のグルカナーゼ活性総量は、酵母乾燥重量1gあたり1.1unitであった。
【0037】
試験に用いた飼料の配合率を表3に示す。対照区として小麦粉・魚粉を主体とした飼料を設定した。試験区としては、上記試料2の添加率を0.1重量%、0.5重量%、1.0重量%と変え、それに対応して試料中のその他成分(色素、強肝剤、賦形剤など)のうち賦形剤の量を調整して全部で100重量%となるようにして、試験飼料を調製した。
【0038】
【表3】
Figure 0004032726
【0039】
ブリ当歳魚を用いて、試験飼料投与の試験を次のように実施した。すなわち、飼育期間は10月中旬から11月中旬までの36日間とした。供試魚は平均魚体重約420gのブリ当歳魚を用い、1.5トン楕円形FRP水槽に各区25〜27尾収容した。給餌は1日1回飽食量を週6日間給与した(試料2は、1日に魚体重1kgあたり0.02g、0.10g又は0.21g)。飼育期間中の平均水温は23.5±0.7℃であった。
【0040】
飼育開始時、飼育開始2週間後及び4週間後に各区より5尾をサンプリングし、心臓から採血して個体別に血漿リゾチーム活性、白血球の貪食能(貪食率および貪食指数)の測定を行い、免疫賦活効果を調べた。飼育試験開始時における血漿リゾチーム活性、飼育開始2週間後における血漿リゾチーム活性、白血球の貪食率および貪食指数、さらに飼育開始4週間後におけるそれらの測定値を表4に示した。なお、各免疫能の測定方法は実施例1に準じて行った。
【0041】
【表4】
Figure 0004032726
【0042】
表4の結果から、酵母を所定のグルカナーゼ活性の酵素剤で分解した、水溶性成分と不溶性成分とを含む酵母分解組成物は、顕著な免疫賦活効果があることが分かる。
【0043】
(実施例3)
酵素剤処理による分解後、分離工程を経ずに濃縮して、乾燥する以外は、実施例2と同様な方法で処理をして、酵母分解組成物の試料3を得た。得られた試料3の重量は96kgで、また水不溶性成分の比率は31重量%、β−グルカンの含有量は9.4重量%であった。
【0044】
実施例1で用いたと同じ酵母分解組成物の試料1及び上記酵母分解組成物の試料3を用いて免疫賦活効果の確認試験を実施した。試験飼料は、市販のブリ稚魚用飼料(商品名「ハマチEP30」日本配合飼料(株)製)を対照とし、試料1および試料3をそれぞれ飼料重量に対して0.5%を水に懸濁させて対照飼料に混合攪拌し、充分に吸着させた。
【0045】
供試魚として平均魚重量約80gのブリ稚魚を用い、1.5トン円形水槽に各区400尾ずつ収容して6月下旬から7月上旬までの14日間飼育した。魚への給餌は、1日1回飽食量を週7日間給与した(試料1、試料3の摂取量は、いずれも魚体重1kgあたり0.15gであった)。飼育期間中の水温は平均26.0±0.6℃であった。
【0046】
試験開始時及び2週間後に各区より5尾をサンプリングし、心臓から採血し、実施例1と同様にして個体別に血漿リゾチーム活性を測定し、免疫賦活効果を比較確認した。その結果を表5に示す。
【0047】
【表5】
Figure 0004032726
【0048】
表5の結果から、水溶性成分及び水不溶性成分を含む酵母分解組成物が、免疫賦活効果があり、さらにグルカナーゼ活性総量が乾燥酵母1gあたり20unitを超える酵素剤を用いた処理により調製した試料1に比べて、グルカナーゼ活性総量が乾燥酵母1gあたり20unit以下の酵素剤を用いた処理により調製した試料3の酵母分解組成物は、さらに免疫賦活効果が強いことが確認できた。
【0049】
比較例
実施例2において、酵素剤処理後、遠心分離して上澄の部分を濃縮後、乾燥させた、水不溶性成分を含まない酵母分解成分を比較例3として調製した。
【0050】
水不溶性成分を含まない酵母分解組成物のサンプルとして上記比較例3、使用した酵素剤のグルカナーゼ活性総量が酵母乾燥重量1gあたり20unitを超えた条件で調製された水溶性成分と水不溶性成分とを含む酵母分解組成物である試料1、使用した酵素剤のグルカナーゼ活性総量が酵母乾燥重量1gあたり20unit以下の条件で調製された水溶性成分及び水不溶性成分を含む酵母分解組成物である試料3の3種類の酵母分解組成物サンプルを用いて免疫賦活効果の確認試験を実施した。
【0051】
試験飼料は、市販のブリ用EP飼料(商品名「ハマチEP120」日本配合飼料(株)製)を用いた。この飼料に対して外割りで各サンプル0.5%重量分を少量の水で懸濁して吸着させ、各試験区の飼料を調製した。
【0052】
供試魚として平均魚体重約400gのブリ当歳魚を用い、2トン円形水槽に各区70尾ずつ収容して、9月下旬から10月下旬まで36日間飼育した。魚への給餌量は、1日1回、試験開始時の魚体重に対して2.5%の重量とした(1日に魚体重1kgあたり各サンプル0.125g)。飼育期間中の水温は平均25.1±0.7℃であった。
【0053】
試験開始時、3日後、7日後、14日後のリゾチーム活性、白血球の貪食率、白血球の貪食指数を実施例1と同様にして測定した。その結果を表6及び図4、図5、図6に示す。
【0054】
【表6】
Figure 0004032726
【0055】
表6及び図4〜6の結果から、水不溶性成分を含まない比較例3に比べ、試料1及び試料3は免疫賦活効果が高く、また試料1より試料3がさらに免疫賦活効果が高いことが分かる。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、酵母を分解した水溶性成分と水不溶性成分とを含む組成物、さらには、前記水溶性成分と水不溶性成分の比率を調整した組成物を魚介類に投与することにより、魚介類の免疫活性を向上させることができ、魚介類の養殖の生産性向上と、安全な生産物の提供、さらに環境の汚染を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 リゾチーム活性測定結果を示すグラフ。
【図2】 白血球貪食率測定結果を示すグラフ。
【図3】 白血球貪食活性測定結果を示すグラフ。
【図4】 リゾチーム活性測定結果を示すグラフ。
【図5】 白血球貪食率測定結果を示すグラフ。
【図6】 白血球貪食活性測定結果を示すグラフ。

Claims (4)

  1. 酵母を蛋白質分解酵素を含む酵素剤処理により分解した後、水溶性成分を分離せず又は水溶性成分を分離除去することによって得られる酵素分解組成物であって、前記酵素剤処理に用いる酵素剤のグルカナーゼ活性総量が原料酵母乾燥重量1gあたり5unit以下であり、水溶性成分と水不溶性成分との比率が乾燥重量で30:70から80:20の範囲である酵母分解組成物を投与することを特徴とする魚介類の飼育方法。
  2. 酵母分解組成物の投与量が、魚介体重1kgあたり0.01〜1.0g/日であることを特徴とする請求項1に記載の魚介類の飼育方法。
  3. 魚介類が魚類である請求項1又は2に記載の魚介類の飼育方法。
  4. 酵母を蛋白質分解酵素を含む酵素剤処理により分解した後、水溶性成分を分離せず又は水溶性成分を分離除去することによって得られる酵素分解組成物であって、前記酵素剤処理に用いる酵素剤のグルカナーゼ活性総量が原料酵母乾燥重量1gあたり5unit以下であり、水溶性成分と水不溶性成分との比率が乾燥重量で30:70から80:20の範囲である酵母分解組成物を添加してなることを特徴とする魚介類の飼育に用いる飼料。
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